(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113601
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】蓋付結束バンド
(51)【国際特許分類】
B65D 63/10 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
B65D63/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018718
(22)【出願日】2023-02-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】522089468
【氏名又は名称】大林 憲二
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】大林 憲二
【テーマコード(参考)】
3E085
【Fターム(参考)】
3E085BA06
3E085BB02
3E085BC08
3E085BD03
3E085BD08
3E085BF10
3E085BG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、ロック機構付結束バンドにおいて、ヘッド部に通したテール部を引っ張って被結束物を結束し、引抜かれたバンド部を切り落とす後処理されるが、この切り口部が鋭利な刃物となってメンテナンス作業者の指先や手、腕など切ってしまうなど怪我の原因となることを回避し、安全なメンテナンス等の保全作業を可能とする蓋付結束バンド技術を提供する。
【解決手段】ヘッド部10とテール部20とをそれぞれ両端に有するバンド部30から構成されるロック機構付き結束バンド40に用いる補助部材50であって結束バンドのヘッド部からバンド部を引き抜き出して余剰分を切除した後のバンド部の切り口部を被覆する蓋体により、蓋体70の挿通12に設けた爪11と切除後のバンド部の切り口部60近傍の裏側に残存するセレーション41とがかみ合って係止される構成を採用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部(10)とテール部(20)とをそれぞれ両端に有するバンド部(30)から構成されるロック機構付き結束バンド(40)に用いる安全のための補助部材(50)であって
前記ヘッド部(10)の挿通穴(12)から前記バンド部(30)を引き抜き出した後に余剰分が切除された前記バンド部(30)の切り口部(60)を被覆する蓋体(70)により構成され、
該蓋体(70)には挿入穴(71)と爪(11)が設けられ、
該爪(11)と前記切り口部(60)の近傍に残存するセレーション(41)とがかみ合って係止されることを特徴とする結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項2】
ヘッド部(10)とテール部(20)とをそれぞれ両端に有するバンド部(30)から構成されるロック機構付き結束バンド(40)に用いる安全のための補助部材(50)であって
蓋体(70)と、繋ぎ部(90)によって構成され、
前記蓋体(70)は、前記ヘッド部(10)の挿通穴(12)から前記バンド部(30)を引き抜き出した後に余剰分が切除された前記バンド部(30)の切り口部(60)を被覆し、
繋ぎ部(90)は、前記バンド部(30)を挿通させて前記ロック機構付き結束バンド(40)に前記補助部材(50)を装着するための挿通穴(80)を有し、
前記蓋体(70)の挿入穴(71)には爪(11)が設けられ、
該爪(11)と前記切り口部(60)の近傍に残存するセレーション(41)とがかみ合って係止されることを特徴とする結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項3】
前記蓋体(70)と前記ヘッド部(10)とを係止する係着機構(100)が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項4】
前記蓋体(70)にフック(110)が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項5】
ヘッド部(10)とテール部(20)とをそれぞれ両端に有するバンド部(30)から構成されるロック機構付き結束バンド(40)に、蓋体(70)と繋ぎ部(90)が一体に成形されて成り、
前記蓋体(70)は、前記ヘッド部(10)の挿通穴(12)から前記バンド部(30)を引き抜き出した後に余剰分が切除された前記バンド部(30)の切り口部(60)を被覆し、
繋ぎ部(90)は、前記バンド部(30)に前記蓋体(70)を連結し
前記爪(11)と前記切り口部(60)の近傍に残存させたセレーション(41)とがかみ合って係止されることを特徴とする安全蓋付き結束バンド(2)。
【請求項6】
前記蓋体(70)と前記ヘッド部(10)とを係止する係着機構(100)を有することを特徴とする請求項5に記載の安全蓋付き結束バンド(2)。
【請求項7】
前記蓋体(70)にフック(110)が設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の安全蓋付き結束バンド(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全な結束バンドに関し、詳しくは、結束バンド装着後に起こる、切りっぱなし部分での怪我を防止するための安全蓋付結束バンドの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結束バンドは、その名の通り、バラバラになったものを1つに束ねるバンド(ベルト)である。その主な用途は電気の配線やケーブルを束ねてまとめたり、パイプや柱に配線を留めるときなどに使われたりするものである。日本で結束バンドが使用されるようになったのは、50年程前であり、バンドの素材である樹脂の柔軟性を活かした締め付けやすさや、強い耐久力により、配線を結束するための資材として徐々に普及したものである。現在は様々なタイプがあり、最も一般的なものは、ナイロンなどの樹脂を一体成形したもので、基本的には一度結束するとロック機構により取り外しができなくなるというものである。そのため、一度結束したものを元に戻したいという場合は結束バンドそのものをニッパーなどでカットするしかない。ただし、最近ではリピートタイプといわれる、ロック部分をレバーで解除できるタイプも販売されており、繰り返し使えるものや、シリコンやエラストマーなどの弾性によって簡易的にロックするものなどもあって、より手軽に使用できるようになっている。
【0003】
また、係るロック機構付きの結束バンドはインシュロック(登録商標)やタイラップ(登録商標)などとも呼ばれており、四角い出っ張り(ヘッド)部分に、一方の先端を通し締めつけるだけでヘッド部分の爪がかみ合い、反対方向、つまり抜ける方向には動けなくなるといった構造になっているものをいい、素材は、主にナイロン樹脂が使われている。これはナイロン樹脂が非常に丈夫ということがあるとともに、ケーブルや配線などを結束した際に傷がつかないということや、比較的安価であるということから、多く利用されている。使われるナイロン樹脂は、ナイロン66やナイロン46などである。一般的なのはナイロン66で、安価で引っ張り強度も高く、比較的耐候性にも優れているというのが特長である。もう1つのナイロン46はナイロン66よりも耐熱性に優れ、さらに耐油性も高いことから、クルマのエンジンルームなど、より厳しい環境での使用に適している。他にナイロン11、ナイロン12なども使用されている。
【0004】
なお、係るナイロン製のロック機構付き結束バンドには白いものと黒いものがあるが、この違いは白いものは主に室内用で、黒いものは室外用となっている。係る色の違いについては、黒い結束バンドには紫外線遮蔽剤が添加されており、紫外線による劣化がおきにくくしたものであり、他方、白いものは遮蔽剤が添加されていないので、紫外線による劣化で破断してしまうことがあるため、使用する場所に合わせて選択するというものである。
【0005】
また、ポリプロピレン(PP)も結束バンドによく使われている材質である。強度も高く、耐熱性もあることに加えてナイロンよりも酸やアルカリといった薬品に強いのが特長であり、そのため医療器具などにも使わる材質である。
さらに、フッ素樹脂は、耐薬品性や耐熱性(170度くらいまで対応)、さらに耐寒性(-80度くらいまで対応)に耐候性、耐放射能性に優れた材質であり、フッ素樹脂が使われた結束バンドは高性能である。
【0006】
結束バンドは、主に複数の電線やケーブルを束ね、整えるプラスチック製配線結束材として使われてきた。1950年代以降、大量輸送機関、自動車、工業プラント、電気・通信機器の技術的発展に伴い、ケーブルマネジメントの需要がグローバルに拡大していく中で、結束バンドは、従来の紐による結束に代わり、プラスチックの柔軟性を活かした締め付けやすさ、耐久性の良さから、配線結束材として広く採用されるようになった。
【0007】
しかし、このように多様な用途に用いられる便利な結束バンドであるが、この結束バンドの取扱いによっては作業者に怪我を負わせてしまう場合があり、安全面において解決しなければならない課題を残すものであった。これは即ち、ロック機構付結束バンドにおいて、ヘッド部に通したテール部を引っ張って被結束物を結束し、引抜かれたバンド部(セレ-ション)はニッパーなどで切り落とされ、この切り口部が鋭利な刃物となってメンテナンス作業者の指先や手、腕など切ってしまうなど怪我の原因となる。係る事故防止対策としては、結束を行った作業者が引抜いたバンド部(セレ-ション)をヘッド部から突き出ないように丁寧に切除すれば良いわけであるが、神経を研ぎ澄ませた作業を強いることとなり作業負担が大きくなってしまうという問題がある。特に、自動車整備作業や電気配線工事のメンテナンス作業等では、刃物だらけの狭いところに手を入れるのと同様であり、大変危険である。
【0008】
係る問題を解決しようと従来からも種々の技術が提案されている。例えば、発明の名称を「電気接続箱へのワイヤーハーネスの固定構造及び固定方法」とし、解決しようとする課題を「 安価で省スペース化が可能であると共に、ワイヤーハーネスを電気接続箱に確実に固定・保持することが出来、しかも、ワイヤーハーネスを電気接続箱に固定・保持した後に不要となる蓋体を設ける必要がない電気接続箱へのワイヤーハーネスの固定構造を提供する。」とするもので、具体的な解決手段を「本発明は、ワイヤーハーネスを接続箱本体に固定する電気接続箱へのワイヤーハーネスの固定構造であって、ワイヤーハーネスの外周に巻き付けられて結束する結束バンドがワイヤーハーネスを結束する前に前記接続箱本体に固定されるバンド固定部を、前記接続箱本体の外周に設けた。これにより、結束バンドを介してワイヤーハーネスが電気接続箱に確実に固定・保持され、安価で省スペース化が可能となる。」としたものである。しかしながら、係る技術は、結束バンドを用いて被結束物であるワイヤーハーネスを電気設続箱へ固定するものであり、係る固定にはバンド固定部としての突起部や篏合凹部を設ける必要があり、被固定物に予め加工を施さなければならない。従って汎用性に欠けると考えられる。
【0009】
また、発明の名称を発明の名称を「筐体へのワイヤーハーネスの取付構造」とし、解決しようとする課題を「作業性が良く、かつ作業工程数を低減できるようにする。」とするもので、具体的な解決手段を「結束バンドは、ロック部及びバンド部を含む。ロック部は、バンド挿通孔及びバンドロック部を有する。バンド部には、バンド挿通孔内でバンドロック部に係合する係合部が、長手方向に連続して複数形成されている。箱体は、第1バンド取付部を有する。蓋体は、残余部を第1バンド取付部との間に挿入自在に構成される第2バンド取付部を有する。第2バンド取付部の第1バンド取付部との対向面に、係合部に係合するバンド係止部が設けられる。」としたものである。しかしながら、係る技術もバンドロック部に係合する係合部を箱体等に設けておく必要があるため、汎用性に欠けるという点で特許文献1と同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9-51624号
【特許文献2】特開2012-147537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ロック機構付結束バンドにおいて、ヘッド部に通したテール部を引っ張って被結束物を結束し、引抜かれたバンド部を切り落とすという処理がなされるが、この切り口部が鋭利な刃物となってメンテナンス作業者の指先や手、腕など切ってしまうなどの怪我の原因となることを回避し、安全なメンテナンス等の保全作業を可能とする蓋付結束バンド技術の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ヘッド部とテール部とをそれぞれ両端に有するバンド部から構成されるロック機構付き結束バンドに用いる補助部材であって前記結束バンドの前記ヘッド部から前記バンド部を引き抜き出して切除後のバンド部切り口部を被覆する蓋体と、前記結束バンドを挿通させるための挿通穴を有する繋ぎ部によって構成され、前記蓋体の前記挿通穴には爪が設けられ、該爪と前記切除後のバンド部切り口部の裏側に残存するセレーションとがかみ合って係止される構成を採用する。
【0013】
また、本発明は、前記蓋体と前記ヘッド部が係止する係着機構を有する構成を採用することもできる。
【0014】
また、本発明は、前記蓋体にフックが設けられている構成を採用することもできる。
【0015】
また、本発明は、ヘッド部と、テール部とをそれぞれ両端に有する前記バンド部と、前記バンド部切り口部を被覆する蓋体と、から構成される前記ロック機構付き結束バンドであって、前記ヘッド部には爪が設けられ、前記バンド部の裏側には前記爪とかみ合って係止するセレーションが設けられ、前記テール部を前記バンド部の一端側に配置される前記ヘッド部の前記挿入穴に差し込むことで前記セレーションと前記爪がかみ合い、前記テール部は抜ける方向には動けなくなり、逆に締めつける方向には動けるので、引っ張ればそれだけ強く締まりロックするロック機構を有する結束バンドにおいて、前記バンド部切り口部を被覆する蓋体が繋ぎ部を介して前記バンド部と一体に成形されている構成を採用することもできる。
【0016】
また、本発明は、前記蓋体と前記ヘッド部とが係止する係着機構を有する構成を採用することもできる。
【0017】
また、本発明は、前記蓋体にフックが設けられている構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0018】
また、本発明に係る蓋付結束バンドによれば、結束後に切り落とされた切り口部が鋭利な刃物となってメンテナンス作業者の指先や手、腕など切ってしまうなど怪我の原因となることを回避し、メンテナンス等の保全作業を安全に行えるという優れた効果を発揮する。
【0019】
また、本発明に係る蓋付結束バンドにおいて、バンド部の余り部分を切除後、切り口部を被覆する蓋体と、繋ぎ部によって構成される補助部材とする結束バンド用安全蓋によれば、既存の結束バンドにも利用できるという優れた効果を発揮する。
【0020】
また、本発明に係る蓋付結束バンドによれば、切除後のバンド部切り口部を被覆する蓋体が繋ぎ部によって結束バンドと一体に構成されることから、蓋体着け忘れがないという優れた効果を発揮する。
【0021】
また、本発明に係る蓋付結束バンドにおいて、蓋体に、フックが設けられる構成を採用した場合には、被結束物を結束した後、さらに被結束物を追加して結束したい場合などにおいて大変便利である、
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る結束バンド用安全蓋の基本構成を説明する基本構成説明図である。
【
図2】既存結束バンド装着型の安全蓋の基本構成を説明する基本構成説明図である。
【
図3】本発明に係る安全蓋と一体型の結束バンドの基本構成を説明する基本構成説明図である。
【
図4】本発明に係る安全蓋付き結束バンドにおいてフックを設けた構成を説明する実施例説明図である。
【
図5】本発明に係る結束バンド用安全蓋の使用状態を説明する使用状態説明図である。
【
図6】本発明に係る安全蓋付き結束バンドの使用状態を説明する使用状態説明図である。
【
図7】本発明に係る蓋体にフックを設けた構成の使用状態を説明する使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ヘッド部とテール部とをそれぞれ両端に有するバンド部から構成されるロック機構付き結束バンドに用いる補助部材又はこれらが一体に構成して成るものであって、前記結束バンドの前記ヘッド部から前記バンド部を引き抜き出して切除後のバンド部の切り口部を被覆する蓋体と、前記結束バンドを挿通させるための挿通穴を有する繋ぎ部によって構成され、前記蓋体の前記挿通穴には爪が設けられ、該爪とバンド部を切除した切り口部の裏側に残存するセレーションとがかみ合って係止される構成であることを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0024】
図1は、本発明に係る結束バンド用安全蓋の基本構成を説明する基本構成説明図であり、
図1(a)は既存のロック機構付きの結束バンド40の平面図であり、
図1(b)は既存のロック機構付きの結束バンド40の正面図あり、
図1(c)は本発明に掛かる結束バンド用安全蓋の三面図であり、
図1(d)は蓋体70を装着した既存のロック機構付きの結束バンド40を用いた結束状態において蓋体70を装着した状態を示し、
図1(e)は切り口部60を蓋体70で被覆している状態の断面を示し、
図1(f)はヘッド部10に蓋体70を係着させるための機構を示している。
図1(g)はヘッド部10にテール部20からバンド部30を挿通させて結束させた後、余剰分のバンド部30をニッパー等で切り取った切り口部60がヘッド部10から突き出すように切断し、係る切り口部60を被覆するように蓋体70をヘッド部10に装着する状態を示している。
【0025】
ロック機構付きの結束バンド40の構成については、各部位のそれぞれに名称がついており、テール部を差し込むヘッド部10(爪11)、裏側がギザギザしているバンド部30(セレーション41)、ヘッド部10を差し込む端っこの部分であるテール部20(シェブロン)の3つで構成されている。
【0026】
結束バンド用安全蓋1は、ヘッド部とテール部20とをそれぞれ両端に有するバンド部30から構成されるロック機構付き結束バンド40に用いる補助部材50であって、前記結束バンド40の前記ヘッド部10から前記バンド部30を引き抜き出して余剰分を切除した切り口部60を被覆する蓋体70と、前記結束バンド40を挿通させるための挿通穴80を有する繋ぎ部90によって構成され、前記蓋体70の前記挿入穴71には爪11が設けられ、該爪11と、前記切除後のバンド部の切り口部60の裏側に残存するセレーション41とがかみ合って係止されることを基本構成とするものである。
【0027】
安全蓋付き結束バンド2は、ヘッド部10と、テール部20とをそれぞれ両端に有するバンド部30と、該バンド部30の切り口部60を被覆する蓋体70とが一体に構成されるロック機構付きの結束バンド40であって、前記ヘッド部10には爪11が設けられ、前記バンド部30の裏側には前記爪11とかみ合って係止するセレーション41が設けられ、テール部20をバンド部30の一端側に配置されるヘッド部10の挿通穴12に差し込むことでセレーション41と爪11がかみ合い、テール部20は抜ける方向には動けなくなり、逆に締めつける方向には動けるので、引っ張ればそれだけ強く締まりロックするロック機構を有する結束バンドであり、これに切り口部60を被覆する蓋体70が繋ぎ部90を介して前記バンド部40と一体に成形されている構成を採用したものである。
【0028】
ヘッド部10は、バンド部30の一端側に設けられ、テール部20を挿通させるための挿入穴12と、爪11を有し、該爪11をバンド部30のセレーション41に引っ掛けて保持する爪11を備える部分である。テール部20をバンド部30の一端側に配置されるヘッド部10の挿通穴12に差し込むことで前記セレーション41と前記爪11がかみ合い、前記テール部20は抜ける方向には動けなくなり、逆に締めつける方向には動けるので、引っ張ればそれだけ強く締まり、ロックするロック機構を発揮させるものである。
【0029】
爪11は、ヘッド部10及び蓋体70に設けられのもので、ロック機構付き結束バンド40のバンド部30の片面に成形されるセレーション41に噛み合わせ、一方方向には引っ張れるが、他方の方向に動けなくさせるための部材である。
【0030】
テール部20は、ロック機構付き結束バンド40のバンド部30において、ヘッド部10側とは反対側の端部に成形される部分であり、シェブロンとも呼ばれている。挿通穴12に挿入しやすいように先細り形状とするのが良い。
【0031】
バンド部30は一端にヘッド部10を備え、他端にはテール部20を備え、これらを繋ぐ薄い平ベルト状である。係る薄い平ベルト状の表面はツルツルとしており裏面にはセレーション41が設けられて成るものである。
【0032】
ロック機構付き結束バンド40は、ヘッド部10と、テール部20とをそれぞれ両端に有するバンド部30とから構成され、ヘッド部10には爪11が設けられ、バンド部40の裏側には爪11とかみ合って係止するセレーション41が設けられ、テール部20をバンド部30の一端側に配置されるヘッド部10の前記挿通穴12に差し込むことでセレーション41と爪11がかみ合い、テール部20は抜ける方向には動けなくなり、逆に締めつける方向には動けるので、引っ張ればそれだけ強く締まりロックするロック機構を有する結束バンドである。
【0033】
セレーション41は、バンド部30の裏面に設けられるギザギザの形状から成り、爪11によって係るギザギザの段差部に引っ掛けて保持し、セレーション41と爪11とがかみ合うことで、テール部20は抜ける方向には動けなくなり、逆に締めつける方向には動けるようにするための段差が連続して設けられるものである。なぜ一度通してしまうと抜けなくなるのかというと、バンド部30に設けたセレーション41が釣り針のかえしのような形状となっているからであり、一旦このセレーションに爪11がかみ合ってしまうと、先端は抜ける方向には動けなくなり、逆に締めつける方向には動けるので、引っ張ればそれだけ強く締まり固定されるというものである。その強度は非常に強く、結束バンドを一旦締めつけてしまうと素手で引き抜くのはまず無理であり、また引きちぎるのも困難となる。
【0034】
被結束物Kは、ロック機構付き結束バンド40によって結束されるものであって、例えば、電設工事から電子機器、自動車、航空機、鉄道まで多様な精密性が重視される用途において、信頼性の高い配線・配管などがその対象となり、また、このような精密性は必要のない一般的・家庭的な電源コード等の配線も含むものである。
【0035】
補助部材50は、所謂ロック機構付き結束バンド40を安全に使用するため、補助する部材のことである。ロック機構付き結束バンド40の使用の際、ヘッド部10に通したテール部20を引っ張って被結束物Kを結束し、引抜かれたバンド部30を切り落とすという処理がなされるが、この切り口部60が鋭利な刃物となって後に行うメンテナンス等の作業者の指先や手、腕など切ってしまうなどの怪我の原因となる。そこで、補助部材50は、係る切り口部60を被覆して、ロック機構付き結束バンド40が使用された機械設備等での怪我を抑止する構成としたものである。
【0036】
切り口部60は、ヘッド部の挿通穴12に通したテール部20を引っ張って被結束物Kを結束し、引抜かれたバンド部を切り落とすという処理がなされるが、この切り口部60が鋭利な刃物となり、後に行うメンテナンス等の作業者の指先や手、腕など切ってしまうなどの怪我の原因となる。係る怪我を防止する手段としては、ヘッド部10からバンド部30が突出しないように丁寧に切り落とせば良いわけであるが、係る丁寧な作業には神経を使わなければならず、結束作業において余計な負担を強いるものである。本発明では係る切り口部60を適当に突き出した所で切り取れば良く、その切り口部60の突き出し量は例えば蓋体70の挿入穴71の穴の深さを8mm程度のものを用いる場合であれば3mm~6mm程度とすれば、蓋体70内に切り口部60を収納して被覆できるとともに、係る切り口部60の近傍に残存するセレーション41に爪11を引っ掛けることで、蓋体70をヘッド部10に係止でき、これまでむき出しとなっていた切り口部60を原因とする怪我の回避を可能とする。
【0037】
蓋体70は、結束部においてこれまでむき出しとなっていた切り口部60を被覆する蓋である。係る蓋体70には挿入穴71を有して切り口部60を収容し、挿入穴71内に設けた爪11により、バンド30に残存しているセレーション41に係止させて、突出してしまった切り口部60を被覆して、係る切り口部60の存在を原因とする怪我を回避可能とする部材である。
【0038】
挿入穴71は、蓋体70に設けられるとともに、該蓋体70内に切り口部60を収納して被覆するための穴である。なお、係る挿入穴71は
図1(e)に示したような貫通穴でもよく、又は
図2(e)に示したように入り口側が開口し出口側が閉塞する穴であってもよい。
【0039】
挿通穴80は、繋ぎ部90に設けられる穴であって、係る挿通穴80へロック機構付き結束バンド40のバンド部30を挿通させ、ロック機構付き結束バンド40の補助部材50として装着させるための穴である。
【0040】
繋ぎ部90は、蓋体70をロック機構付き結束バンド40に設けるための部材である。係る繋ぎ部90により、仮に蓋体70が脱落した場合でも紛失することはない。
【0041】
係着機構100は、ヘッド部10と蓋体70を係止する機構である。例えば、切り口部60の突き出し量が小さく、危険な存在ではあるが、バンド部30の裏側のセレーション41に爪11が引っかからない場合がある。そこで、
図1(f)及び
図2(f)に例示したような係着機構100により、ヘッド部10と蓋体70を係着させる構成を採用することが望ましい。
【0042】
フック110は、蓋体70にフック110を設けたもので、例えば、電気配線を結束した後に追加して配線したい場合、結束バンドをニッパー等で切断して最初からのやり直しにならないようにするものである。また、エアーホースのように電気配線とは異なる種類のものに利用することもできるので本発明の利便性を高める部材である。また素材に塑性変形しやすい金属などを用いて自由に形状変形できるものとしたり、逆に曲げ強度の大きい素材にしてエアーホース配管等に対応できるようにするなど、素材については適宜選択すれば良い。なお、形状は
図4に示した略C字状に限定されるものではなく、略S字状等でも良い。
【0043】
図2は、既存結束バンド装着型の安全蓋の基本構成を説明する基本構成説明図であり、
図2(a)は既存のロック機構付きの結束バンド40の平面図であり、
図2(b)は既存のロック機構付きの結束バンド40の正面図あり、
図2(c)は本発明に係る既存結束バンド装着型の安全蓋の説明図であり、
図2(d)は蓋体70を装着した既存のロック機構付きの結束バンド40を用いた結束状態において繋ぎ部90の挿通穴80にバンド部30を挿通させて、結束バンド装着型の安全蓋を既存のロック機構付きの結束バンド40へ装着した状態を示し、
図2(e)は切り口部60を蓋体70で被覆している状態の断面を示し、
図2(f)はヘッド部10に蓋体70を係着させるための機構を示している。
図2(g)はヘッド部10にテール部20からバンド部30を挿通させて結束させた後、余剰分のバンド部30をニッパー等で切り取った切り口部60がヘッド部10から突き出すように切断し、係る切り口部60を被覆するように蓋体70をヘッド部10に装着する状態を示している。
【0044】
図3は、本発明に係る安全蓋と一体型の結束バンドの基本構成を説明する基本構成説明図であり、
図3(a)は、既存のロック機構付きの結束バンド40と蓋体70が繋ぎ部90によって一体的に形成されている状態の平面図を示し、
図3(b)は、既存のロック機構付きの結束バンド40と蓋体70が繋ぎ部90によって一体的に形成されている状態の正面図を示し、
図3(c)は、蓋体70を装着した既存のロック機構付きの結束バンド40を用いた結束状態において一体に形成される繋ぎ部90によって蓋体70が既存のロック機構付きの結束バンド40へ装着された状態を示している。
【0045】
図4は、本発明に係る安全蓋付き結束バンドにおいてフックを設けた構成を説明する実施例説明図であり、
図4(a)は、既存のロック機構付きの結束バンド40と蓋体70が繋ぎ部90によって一体的に形成され更に蓋体70にフック110が設けられている状態の平面図を示し、
図3(b)は、既存のロック機構付きの結束バンド40と蓋体70が繋ぎ部90によって一体的に形成され更に蓋体70にフック110が設けられている状態の正面図を示し、
図3(c)は、蓋体70を装着した既存のロック機構付きの結束バンド40を用いた結束状態において一体に形成される繋ぎ部90によってフック付きの蓋体70が既存のロック機構付きの結束バンド40へ装着された状態を示している。
【0046】
図5は、本発明に係る安全蓋付き結束バンドの使用状態を説明する使用状態説明図であり、
図5(a)は、被結束物Kに対して、結束バンド用安全蓋1を既存のロック機構付き結束バンド40に用いて結束する状態を示し、
図5(b)は、突き出して不要となったバンド部30をニッパー等で切取った状態を示し、
図5(c)は、切り取ったバンド部30の切り取り部60の残存部分を蓋体70で被覆した状態を示している。
【0047】
図6は、本発明に係る安全蓋付き結束バンド2の使用状態を説明する使用状態説明図であり、
図6(a)は、被結束物Kに安全蓋付き結束バンド2を用いて結束する状態を示し、
図6(b)は、突き出して不要となったバンド部30をニッパー等で切取った状態を示し、
図6(c)は、切り取ったバンド部30の切り取り部60の残存部分を蓋体70で被覆した状態を示している。
【0048】
図7は、本発明に係る蓋体にフックを設けた構成の使用状態を説明する使用状態説明図である。図に示すとおり、蓋体70にフック110を設けた構成では、結束した箇所にフック110が設けられることにより、被結束物K1の他に配線や配管等の他の被結束物K2の追加に対応することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る蓋付結束バンドによれば、結束バンドの切断部に蓋体が付くことにより、手を切ったりすることなく安全に利用することができ、需要が大きい結束バンドが益々利用されることが考えられ、産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 結束バンド用安全蓋
2 安全蓋付き結束バンド
10 ヘッド部
11 爪
12 挿通穴
20 テール部
30 バンド部
40 ロック機構付き結束バンド
41 セレーション
50 補助部材
60 切り口部
70 蓋体
71 挿入穴
80 挿通穴
90 繋ぎ部
100 係着機構
110 フック
K 被結束物
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部(10)とテール部(20)とをそれぞれ両端に有するバンド部(30)から構成されるロック機構付き結束バンド(40)に用いる安全のための補助部材(50)であって
前記ヘッド部(10)の挿通穴(12)から前記バンド部(30)を引き抜き出し、前記ヘッド部(10)内に設けられた爪(11)と前記バンド部(30)に設けられるセレーション(41)がかみ合って係止した後に余剰分が切除された前記バンド部(30)の切り口部(60)を被覆する蓋体(70)により構成され、
該蓋体(70)には挿入穴(71)と爪(11)が設けられ、
該爪(11)と前記切り口部(60)の近傍に残存する前記セレーション(41)とがかみ合って前記ヘッド部(10)と前記蓋体(70)とが結合されることを特徴とする結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項2】
ヘッド部(10)とテール部(20)とをそれぞれ両端に有するバンド部(30)から構成されるロック機構付き結束バンド(40)に用いる安全のための補助部材(50)であって
蓋体(70)と、繋ぎ部(90)によって構成され、
前記蓋体(70)は、前記ヘッド部(10)の挿通穴(12)から前記バンド部(30)を引き抜き出し、
前記ヘッド部(10)内に設けられた爪(11)と前記バンド部(30)に設けられるセレーション(41)がかみ合って係止した後に余剰分が切除された前記バンド部(30)の切り口部(60)を被覆し、
繋ぎ部(90)は、前記バンド部(30)を挿通させて前記ロック機構付き結束バンド(40)に前記補助部材(50)を装着するための挿通穴(80)を有し、
前記蓋体(70)の挿入穴(71)には爪(11)が設けられ、
該爪(11)と前記切り口部(60)の近傍に残存する前記セレーション(41)とがかみ合って前記ヘッド部(10)と前記蓋体(70)とが結合されることを特徴とする結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項3】
前記蓋体(70)と前記ヘッド部(10)とを係止する係着機構(100)が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項4】
前記蓋体(70)にフック(110)が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の結束バンド用安全蓋(1)。
【請求項5】
ヘッド部(10)とテール部(20)とをそれぞれ両端に有するバンド部(30)から構成されるロック機構付き結束バンド(40)に、蓋体(70)と繋ぎ部(90)が一体に成形されて成り、
前記蓋体(70)は、前記ヘッド部(10)の挿通穴(12)から前記バンド部(30)を引き抜き出し、前記ヘッド部(10)内に設けられた爪(11)と前記バンド部(30)に設けられるセレーション(41)がかみ合って係止した後に余剰分が切除された前記バンド部(30)の切り口部(60)を被覆し、
繋ぎ部(90)は、前記バンド部(30)に前記蓋体(70)を連結し
前記爪(11)と前記切り口部(60)の近傍に残存させた前記セレーション(41)とがかみ合って前記ヘッド部(10)と前記蓋体(70)とが結合されることを特徴とする安全蓋付き結束バンド(2)。
【請求項6】
前記蓋体(70)と前記ヘッド部(10)とを係止する係着機構(100)を有することを特徴とする請求項5に記載の安全蓋付き結束バンド(2)。
【請求項7】
前記蓋体(70)にフック(110)が設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の安全蓋付き結束バンド(2)。