(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113604
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】固体状オレフィン重合触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20240815BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018727
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 康寛
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 紀子
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 綾乃
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100CA01
4J100FA10
4J100FA22
4J100FA28
4J100FA29
4J100GB05
4J128AA01
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4J128AC26
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4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15A
4J128BC15B
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4J128DB03A
4J128EB02
4J128EC01
4J128GA09
4J128GA24
4J128GB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素環境下で接触させて、重合活性に優れた固体状オレフィン重合触媒を得る方法を提供すること。
【解決手段】(A)(A-1)マグネシウム含有化合物と、(A-2)周期表の第15族および第16族元素から選ばれる元素を含む化合物と、を含むマグネシウム含有化合物溶液と、(B)周期表の第1族、第2族および第13族元素から選ばれる金属元素(MB)を含む有機金属化合物とを、-20~10℃の温度範囲で接触させて得られるマグネシウム化合物粒子を、(A-4)脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素から選ばれる液状炭化水素化合物の存在下、(C)遷移金属錯体と、下記(i)および(ii)を満たす条件で接触させる工程を有する固体状オレフィン重合触媒の製造方法。(i)前記接触時の温度が30℃~90℃である。(ii)前記(i)の温度での接触時間が2~12時間である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(A-1)成分と(A-2)成分とを含むマグネシウム含有化合物溶液と、
(A-1)マグネシウム含有化合物
(A-2)周期表の第15族および第16族元素から選ばれる元素を含む化合物
(B)周期表の第1族、第2族および第13族元素から選ばれる金属元素(MB)を含む有機金属化合物とを、
-20~10℃の温度範囲で接触させて得られるマグネシウム化合物粒子を、
(A-4)脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素から選ばれる液状炭化水素化合物の存在下、
(C)遷移金属錯体と、下記(i)および(ii)を満たす条件で接触させる工程を有する固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
(i)前記接触時の温度が30℃~90℃である。
(ii)前記(i)の温度での接触時間が2~12時間である。
【請求項2】
前記(i)の温度が30~70℃である請求項1に記載の固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項3】
前記(ii)の時間が3~10時間である請求項1に記載の固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(A-4)液状炭化水素化合物が、脂肪族炭化水素である請求項1に記載の固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状オレフィン重合触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー微粒子の開発が活発化しており、産業上さまざまな用途で幅広く使用されている。なかでも、粒子形状が球形で粒度分布の狭いポリマー微粒子は、その加工性、流動性、表面物性のよさからフィルター、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤、コーティング剤などの用途に用いられている。これらポリマー粒子の材質は、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、メラミン樹脂系等の材料が知られており、これらは主として乳化重合で製造される。一方、ポリオレフィンの微粒子も知られている。ポリオレフィン微粒子は、結晶性や融点が高く、基本的にヘテロ原子を含まない炭化水素系の材料であることから、高い化学的安定性、具体的には耐水・耐油性、耐薬品性や生体安全性といった特長を活かし、さまざまな新材料、新用途が考案・実用化されている。
【0003】
たとえば、ポリエチレン系微粒子をそのまま、あるいは表面改質などを施したものは、化学や生物系物質の高効率な分離用カラム充填剤として、また高比表面積の吸着材や触媒担体などとして利用できる。また、薬物などの送達と除放を担わせた担体としての利用、分散性の悪い微粒子物質を均一に分散させるための散布剤や、化粧品素材として肌への良好な感触効果をもたらす安全性の高い微粒子材料に活用される。
【0004】
その他、リチウム電池やリチウムイオン2次電池のセパレータ用部材、光拡散・反射・反射防止などの機能を持った光学フィルター用部材、セラミックなどの焼結多孔体の高性能バインダー、通気性フィルムなどの賦孔材、免疫化学的活性物質固定化用担体、微小細孔・高比表面積焼結フィルター、滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填材および免疫診断薬用担体などが挙げられるなど機能性新材料用途への応用が積極的に検討されている。
【0005】
このような機能性新材料用途では、さらなる機能発現や性能・品質向上のために、より小さい粒径、より狭い粒度分布、粒子間の凝集のない、球状のポリエチレン系超微粒子が共通に切望されている。
【0006】
一方、ポリオレフィン微粒子は、乳化重合などの水を用いる重合が困難であり、得られる重合体の形状を制御することが一般的に困難である。現在までに知られているポリエチレン系微粒子の製造方法は、次の4つの手法、すなわち(1)機械的粉砕法(常温・冷凍粉砕、湿式粉砕、ジェット粉砕)、(2)噴霧法(乾燥、凝固)、(3)強制乳化法(溶融乳化、溶液乳化)、(4)懸濁重合法に大別できる。
【0007】
機械的粉砕法は、バルク状ポリマーを、たとえば衝撃力、剪断力などの粉砕エネルギーを直接ポリマーに与えて、微粒化する方法である。この方法によって得られる粒子の形状は、一般に不定形となり易く、そのため狭い粒度分布を示すポリエチレン系微粒子は得られ難い。
【0008】
次いで噴霧法は、バルク状ポリエチレンを溶剤に溶解したポリマー溶液や溶融状ポリマーなどの液状物質をノズルから噴霧後、乾燥・冷却により固化し、ポリマー微粒子を得る方法である。この方法で得られるポリエチレン系粒子は、噴霧された液状物質の表面張力により、真球度の高い微粒子となるが、いくつかの粒子の凝集体として得られることが多く、一般的に粒度分布は広い。また、ポリエチレン系樹脂の分子量によっては、ポリマー溶液の粘度が高くなり、噴霧の際に糸を引くなど微粒子状に噴霧できない。したがって、噴霧法は、高分子量のポリエチレン系樹脂への適用が難しい。
【0009】
これに対し、乳化法は水性媒体中で乳化剤や分散剤の存在下、融点以上の温度でポリエチレン系樹脂を強制乳化する方法であるが、水性媒体中で溶融ポリマーに剪断をかけるため、上記2つの微粒化法に比べ、凝集粒子の少ない球状のポリエチレン系粒子が得られる特長がある。しかしながら、この方法によっても、ポリエチレン系樹脂の分子量が高くなるにつれ、狭い粒度分布を維持することが困難となり、さらに超高分子量ポリエチレンに対しては適用できない。また、使用した乳化剤が微粒子に残留するなどの問題もあり、用途が限られる場合もあった。
【0010】
本出願人は、形状が制御された微粒の固体状オレフィン重合触媒を用いて、直接エチレンモノマーから重合反応によって球形のポリエチレン系微粒子を製造する方法を報告している。(特許文献1、特許文献2)
この方法は、固体状オレフィン重合触媒成分の粒子形状および粒度分布が、生成するポリエチレン系微粒子の形状・粒度分布に直接反映する、いわゆるレプリカ効果により、ポリオレフィン微粒子を得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4828432号公報
【特許文献2】特許第5221848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記の特許文献1、2では、固体状オレフィン重合触媒を得るために、担体であるマグネシウム化合物粒子と、遷移金属錯体とをトルエンなどの芳香族炭化水素媒体の存在下で接触させている。一方、最近は市場からは、環境保護や安全性などの観点から、芳香族炭化水素媒体を使用しない方法を求める声がある。例えば、芳香族炭化水素の代わりに脂肪族炭化水素を用いた方法が求められることがある。
【0013】
本発明者らの検討によれば、例えば、特許文献1や特許文献2の実施例の方法を、全てデカン等の脂肪族炭化水素の存在下で実施すると、重合活性が低下したり、不定形の重合体が得られるなどの問題が発生した。これは主として、遷移金属錯体が脂肪族炭化水素環境下では、遷移金属錯体が十分に担体に担持されないことが原因であることも分かってきた。
【0014】
よって、本発明は、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素環境下で、重合活性に優れた固体状オレフィン重合触媒を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らの検討により、特定のマグネシウム含有化合物粒子と、遷移金属錯体とを特定の温度で、特定の時間、接触させることで、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素液体環境がであっても重合活性に優れた固体状オレフィン重合触媒が得られることを見出した。本発明は以下の要件によって特定される。
【0016】
[1]
(A)下記(A-1)成分と(A-2)成分とを含むマグネシウム含有化合物溶液と、
(A-1)マグネシウム含有化合物
(A-2)周期表の第15族および第16族元素から選ばれる元素を含む化合物
(B)周期表の第1族、第2族および第13族元素から選ばれる金属元素(MB)を含む有機金属化合物とを、
-20~10℃の温度範囲で接触させて得られるマグネシウム化合物粒子を、
(A-4)脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素から選ばれる液状炭化水素化合物の存在下、
(C)遷移金属錯体と、下記(i)および(ii)を満たす条件で接触させる工程を有する固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
(i)前記接触時の温度が30℃~90℃である。
(ii)前記(i)の温度での接触時間が2~12時間である。
【0017】
[2]
前記(i)の温度が30~70℃である[1]に記載の固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
【0018】
[3]
前記(ii)の時間が3~10時間である[1]または[2]に記載の固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
【0019】
[4]
前記(A-4)液状炭化水素化合物が、脂肪族炭化水素である[1]~[3]のいずれかに記載の固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る固体状オレフィン重合触媒の製造方法では、特定の温度範囲と、特定の反応時間とすることで、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素液体中であっても、十分な重合活性(好ましくは従来の芳香族炭化水素を用いる条件で得られる固体状オレフィン触媒と同等)を有する固体状オレフィン重合触媒を得ることが出来る。
【0021】
このような固体状オレフィン重合触媒は、芳香族炭化水素混入の可能性が極めて少ないので、より多くの用途に好適なオレフィン重合体を提供できると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る固体状オレフィン重合触媒の製造方法は、以下のように特定される。
(A)下記(A-1)成分と(A-2)成分とを含むマグネシウム含有化合物溶液と、
(A-1)マグネシウム含有化合物と
(A-2)周期表の15族、16族元素から選ばれる元素を含む化合物
(B)周期表の第1族、第2族および第13族元素から選ばれる金属元素(MB)を含む有機金属化合物とを
-20~10℃の温度範囲で接触させて得られるマグネシウム化合物粒子を、
(A-4)脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれる液状炭化水素化合物の存在下、
(C)遷移金属錯体と、下記(i)および(ii)を満たす条件で接触させる工程を有する固体状オレフィン重合触媒の製造方法。
(i)前記接触時の温度が30℃~90℃である。
(ii)前記(i)の温度での接触時間が2~12時間である。
【0023】
以下、上記の製造方法について、その詳細を説明する。
(マグネシウム化合物粒子の製造方法)
本発明で用いられるマグネシウム化合物粒子は、マグネシウム、周期表の第1族、第2族および第13族元素から選ばれる金属元素(MB)を含む粒子である。
前記粒子は、好ましくは、炭素原子数1~20のアルコキシ基をも含む。また好ましくは炭化水素溶媒に不溶である。
前記(A)マグネシウム含有化合物溶液(以下「(A)成分」ともいう。)は、
(A-1)マグネシウム含有化合物と
(A-2)周期表の第15族および第16族元素から選ばれる元素を含む化合物と
を含む。
【0024】
上記の(A-1)マグネシウム含有化合物としては、ハロゲン含有マグネシウム、アルコキシ基含有マグネシウム、カルボン酸のマグネシウム塩、グリニャール試薬などの代表される有機マグネシウム化合物などの公知のマグネシウム化合物を使用することが出来る。また、前記マグネシウム化合物は併用することも出来るし、途中でハロゲンなどと反応させてから使用することも出来る。前記のマグネシウム化合物は、好ましくはハロゲン含有マグネシウムであり、より好ましくはハロゲン化マグネシウムである。具体的なハロゲン化マグネシウムとしては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムが好ましく用いられる。このようなハロゲン化マグネシウムは市販品をそのまま使用してもよいし、別途アルキルマグネシウムから調製してもよい。後者の場合はハロゲン化マグネシウムを単離することなく用いることもできる。
【0025】
(A-2)周期表の15族および第16族元素から選ばれる元素を含む化合物としては、アルコール類、フェノール類、エーテル類、カルボン酸類、アミン類、有機リン化合物等、溶液を形成できる化合物であれば、特に制限はなく、好ましくは、ヒドロキシ基を有する化合物である。
【0026】
より具体的には炭素原子数1~20のアルコール、またはフェノール化合物が好ましい。
特に好ましくは、炭素原子数1~20のアルコールである。
【0027】
炭素原子数1~20のアルコールやフェノールとしては、炭素原子数1~20のアルコキシ基に対応したアルコール、フェノール化合物を例示できる。具体的な化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-アミルアルコール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、n-オクタノール、ドデカノール、オクタデカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、クミルアルコール、i-プロピルベンジルアルコールなど、トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどのハロゲン含有アルコール、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどの低級アルキル基含有フェノールなどを例示するこができるが、これらの中ではメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、i-アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、2-オクチル-1-ドデカノールが好ましい。
【0028】
前記(A-1)マグネシウム含有化合物と(A-2)周期表の第15族および第16族元素から選ばれる元素を含む化合物とを接触させる態様としては、液体の炭化水素化合物存在下にて接触を行うのが好ましい態様である。この様な炭化水素化合物としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンジクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを例示することができる。
【0029】
これらの中でも、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれる炭化水素が好ましく、より好ましくは脂肪族炭化水素である。特に好ましくはデカンである。尚、上記の炭化水素化合物は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
【0030】
上記接触は、通常、加熱下にて行われる。加熱する場合は、その温度は使用する溶媒の沸点までの温度を任意に選択することができる。接触時間は接触温度にもよるが、たとえば溶媒としてn-デカンを使用し加熱温度130℃の条件下においては、約4時間の接触により、内容物が均一化現象を呈しこれが接触完了の目安となる。接触する際には、通常撹拌などにより接触を促す装置を利用して実施される。接触の開始時は通常不均一な系であるが、接触が進行するとともに内容物は徐々に均一化し、最終的には液状化する。
【0031】
前記マグネシウム化合物粒子の調製法としては、エチレン系重合体微粒子の製造に際して固体触媒成分の担体として使用する場合、重合して得られるエチレン系重合体微粒子の粉体性状の観点から完全液状化を経由する調製法が好ましい。
【0032】
このようにして調製された(A)マグネシウム化合物溶液は、接触時に使用した溶媒類を除去して用いてもよいし、溶媒を留去することなく使用してもよい。通常は溶媒を留去することなく次段の工程に供される。
【0033】
前記マグネシウム化合物粒子の製造方法は、上記の(A)マグネシウム化合物溶液と、(B)周期表第1族、第2族および第13族元素から選ばれる金属元素(MB)を含む有機金属化合物(以下「(B)成分」ともいう。)とを接触させる接触工程を有する。
【0034】
(B)有機金属化合物としては、グリニャール試薬などの有機マグネシウム化合物や、ブチルリチウムなどの有機アルカリ金属化合物等を挙げることできるが、工業的に好ましくは、以下の様なアルミニウム含有化合物を例示することが出来る。
AlRnX3-n ・・・(1)
【0035】
一般式(1)において、Rは炭素原子数1~20の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基を挙げることができる。Xは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子または水素原子を示す。nは1~3の実数を示し、好ましくは2または3である。Rが複数である場合、各Rは同じでも異なっていてもよく、Xが複数である場合、各Xは同じでも異なっていてもよい。有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が用いられる。すなわち、上記要件を満たす有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを例示できるが、これらの中では、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましい。
【0036】
前記マグネシウム化合物粒子の製造方法の大きなポイントの一つは、この接触方法および接触条件にある。具体的には、強力な剪断力で高速混合された(A)マグネシウム化合物液体と、(B)有機金属化合物とを接触させる方法が好ましい。(A)マグネシウム化合物液体の高速混合に用いる装置としては、一般に乳化機、分散機として市販されているものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業社製)、TKネオミクサー(特殊機化工業社製)ナショナルクッキングミキサー(松下電器産業社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(荏原製作所社製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業社製)、コロイドミル(日本精機社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業社製)などのバッチまたは連続両用乳化機、マイクロフルイダイザー(みづほ工業社製)、ナノメーカー、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVゴーリン(ゴーリン社製)などの高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業社製)などの膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業社製)などの振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)などの超音波乳化機などを挙げることができる。
【0037】
前記(A)マグネシウム化合物液体と前記(B)有機金属化合物との接触時、(A)マグネシウム化合物液体は、前記の様に炭化水素液体を含む溶液の状態が好ましい。(B)有機金属化合物は、溶媒に希釈して使用してもよい。通常はn-デカン、n-ヘキサンなどの脂肪族飽和炭化水素や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒に希釈された溶液として用いられる。本発明においては、(B)有機金属化合物を(A)マグネシウム化合物液体に添加する方法が好ましい方法である。
【0038】
上記の接触工程は、通常0.6時間~10時間実施することが好ましい。接触系内の徐熱能力が十分であれば短時間の添加で済ませることができ、一方、能力が不十分な場合は長時間かけて添加するのがよい。有機アルミニウム化合物の添加は一括して添加してもよいし、何回かに分けて分割添加をしてもよい。この際、-20~10℃の温度範囲で接触させる工程を設ける。特には、(A)マグネシウム化合物液体と(B)有機金属化合物とを最初に接触させる際に上記の温度の範囲内で実施することが好ましい。この様な工程を含むことは、微小粒径の粒子を安定して得るのに有利な場合が多い。また、前記温度での接触では、(A)マグネシウム化合物液体のマグネシウム原子(Mg)と(B)有機金属化合物の金属原子(MB)とのモル比([MBr]/[Mgr])が、0.9~1.2の範囲であることが好ましい。より好ましい下限値は1.00、さらに好ましくは1.01である。一方、より好ましい上限値は1.17、さらに好ましくは1.15である。
【0039】
前記(A)マグネシウム化合物液体と(B)有機金属化合物との接触温度は、前記工程以外では、より高い温度にすることが出来る。例えば、30~130℃である。より好ましい下限値は40℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは60℃である。一方、より好ましい上限値は110℃、さらに好ましくは1000℃、特に好ましくは90℃である。
【0040】
また、(A)マグネシウム化合物液体と(B)有機金属化合物との接触工程全体での(A)マグネシウム化合物液体と(B)有機金属化合物の使用量は、(A)マグネシウム化合物液体のマグネシウム原子の量(Mgr)と、(B)有機金属化合物の金属元素(MB)の原子の量(MBr)とのモル比((Mgr)/(MBr)))で2.5~10であることが好ましい。より好ましい下限値は2.6であり、さらに好ましくは2.7である。一方、より好ましい上限値は9.0であり、さらに好ましくは8.0であり、特に好ましくは7.0である。
【0041】
上記(A)マグネシウム化合物液体と(B)有機金属化合物との接触工程での好ましい形態を以下に述べる。
(A)マグネシウム化合物液体と前記一般式(1)で表される(B)有機金属化合物の接触として、好ましい態様について、特に(B)有機金属化合物として有機アルミニウム化合物を用いた場合を説明する。例えばマグネシウム化合物の炭化水素希釈溶液と、炭化水素溶媒に希釈した有機アルミニウム化合物とを接触させるなどの両液状物の反応による手段が好ましい。その際に生成する粒子は、その形成条件によって形状や大きさなどが異なる場合があるが、形状、粒径が揃った固体生成物を得るためには、前述のように高剪断・高速混合を維持しつつ、急速な粒子形成反応を避けるのが好ましく、たとえばマグネシウム化合物と有機アルミニウム化合物とを互いに液状状態で接触混合して相互反応によって固体生成物を形成させる場合には、それらの接触によって急速に固体が生じないような低い温度で両者を混合した後、昇温して徐々に固体生成物を形成させるのが好ましい。この方法によれば、固体生成物の超微粒領域での粒径制御が容易で、粒度分布の極めて狭い超微粒で球状の固体生成物を得やすい。
【0042】
前記マグネシウム化合物粒子を重合触媒の担体として用いた重合用固体触媒成分を用いることにより、球形で粒度分布の極めて狭いエチレン系重合体微粒子を製造することができる。
【0043】
上記の様な方法で得られるマグネシウム化合物粒子は、(A)マグネシウム化合物液体由来のマグネシウムの原子[Mg]と、(B)有機金属化合物由来の金属元素(MB)の原子[MB]とを有する。その組成(モル比)は、(マグネシウム原子の含有モル量[Mg])/(前記金属元素(MB)の原子の含有モル量[MB])が、5.0以上、20以下である。前記の好ましい下限値は6.0、より好ましくは7.0、さらに好ましくは8.0である。一方、好ましい上限値は18、より好ましくは17、さらに好ましくは16であり、特に好ましくは15である。
【0044】
通常、上記の様な方法で得られる微粒子は、球状となる場合が多いが、表面に凹凸を有する形状になる場合もある。
【0045】
平均粒子径、分散
本発明で使用される上記のマグネシウム化合物粒子の平均粒子径は、0.05~30μmの範囲であることが好ましい。より好ましい下限値は0.1μm、さらに好ましくは0.2μm、特に好ましくは、0.25μmである。一方、より好ましい上限値は20μm、さらに好ましくは15μm、特に好ましくは、10μmである。上記の方法は、特に微粒子を得るのに適した方法なので、その観点での好ましい上限値は3μm、より好ましくは2μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは0.9μmである。
【0046】
本発明で使用される平均粒子径(体積平均径)および分散は、走査型電子顕微鏡装置(例えば、日立ハイテク社製TM4000型走査型電子顕微鏡装置)を用い、数グラムの測定サンプル中の任意の3か所の画像を撮影し、得られたSEM写真から画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(例えば、マウンテック社MacView)によって測定される。このソフトウェアを用いれば、粒度分布の指標となる「分散」の値を得ることも出来る。この方法は、前記のマグネシウム化合物粒子にも、後述するオレフィン重合体粒子にも適用できる。
【0047】
マグネシウム化合物粒子の粒径が小さすぎる場合は、それを含むオレフィン重合用触媒を用いて得られるオレフィン重合体の粒子径と重合活性とから、常法により算出することも出来る。これは、固体状オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合して得られる固体状重合体粒子の形状は、前記固体状オレフィン重合用触媒の形状と相似形になるという経験則に基づく方法である。この為、オレフィン重合体粒子の形状制御方法として、オレフィン重合用触媒の形状制御は重要な意味を持つ。
【0048】
前記マグネシウム化合物粒子は、オレフィン重合用触媒((C)遷移金属錯体)を担持して固体状オレフィン重合触媒とすることが出来る、所謂担体として使用できる。また、その触媒を用いてオレフィンを重合させると、オレフィン重合体を製造することが出来る。その際、得られるオレフィン重合体は、オレフィンの重合量にもよるが、小粒径のオレフィン重合体粒子を得やすい。
【0049】
(マグネシウム化合物粒子を(C)遷移金属錯体と接触させる工程)
本発明に係る固体状オレフィン重合触媒(以下「固体触媒成分」ともいう。)の製造方法は、上記の方法で製造されるマグネシウム化合物粒子を、(A-4)脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素から選ばれる液状炭化水素化合物の存在下、(C)遷移金属錯体と、所定の条件で接触させる工程を有している。
【0050】
以下に、先ず前記固体触媒成分について説明する。
本発明において「担持」とは、ヘキサン、デカンおよびトルエンから選ばれる少なくとも1種の溶媒に、常圧下、室温で1分~1時間撹拌しても、(C)遷移金属錯体の溶媒への溶解分が各1重量%以下である状態のことをいう。
【0051】
前記マグネシウム化合物粒子すなわち、マグネシウム含有担体成分を用いた固体触媒成分の調製に用いる(C)遷移金属錯体については、特に限定はないが、たとえば、以下の文献に開示されたものを使用することができる。
1)特開平11-315109号
2)特開2000-239312号
3)EP-1008595号
4)WO01/55213号
5)特開2001-2731号
6)EP-1043341号
7)WO-98/27124号
8)Chemical Review 103, 283 (2003)
9)Bulletin of the Chemical Society of Japan 76, 1493 (2003)
10)Angewandte Chemie, Internatinal Edition.English 34 (1995)
11)Chemical Review 8, 2587 (1998) 2587
【0052】
本発明においては、上記の文献に開示された遷移金属化合物の中でも遷移金属錯体を用いる。
【0053】
前記の(C)遷移金属錯体として、下記の構造の化合物を特に好ましい例として挙げることが出来る。
【0054】
【化1】
〔式中、MはZrまたはHfを示し、mは1または2の整数を示し、Aは2位に一つ以上のアルキル置換基を有する6員環炭化水素基を示し、飽和でも不飽和でもよく、R
1~R
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
また、mが2の場合にはR
1~R
5で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(但し、R
1同士が結合されることはない)、(4-m)はMの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0055】
本発明で用いることが出来る遷移金属化合物は、公知の化合物を制限なく用いることが出来るが、例えば前記の特許文献1、特許文献2に具体例として開示されている化合物を例示することが出来る。その一部を以下の様に紹介する。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
また、前記(C)遷移金属錯体としては、以下の一般式(8)で表される化合物でもよい。
RQ(Pz1)i(Pz2)3-iMYmZn (8)
【0061】
上記一般式(8)中、RQ(Pz1)i(Pz2)3-iは3座のアニオン配位子、または中性配位子であり、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基よりなる群から選ばれる基を示す。ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記一般式(7)中のXの説明で例示した基を挙げることができる。
【0062】
上記一般式(8)中、Qはホウ素、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、および鉛よりなる群から選ばれる4価の基を示し、ホウ素、炭素、ケイ素が特に好ましい。
上記一般式(8)中、Pz1は、少なくとも3位が無置換アリ-ル(Aryl)基、置換アリ-ル(Aryl)基、炭素原子数3以上のアルキル基、シクロアルキル基、アミノ基またはオキシ炭化水素基などで置換されたピラゾリル基である。無置換アリ-ル(Aryl)基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基などを例示することができ、置換アリ-ル(Aryl)基としては前記無置換アリ-ル(Aryl)基の核水素の一つまたは複数個が炭素原子数1~20のアルキル基、アリール基やアラルキル基で置換されたものが挙げられる。好ましいPz1は、3位が2,4,6-Trimethylphenyl基、2,4,6-Triisopropylphenyl基、2,3,4,5,6-Pentamethylphenyl基、4-Tert-Butyl-2,6-Dimethylphenyl基で置換されたものであり、3位が2,4,6-Trimethylphenyl基で置換されたものが特に好ましい。
【0063】
Pz2は無置換ピラゾリル基あるいは置換ピラゾリル基を示す。置換ピラゾリル基としては、前記Pz1と同一であってもよく、さらには3位以外の任意の位置に前記置換アリール基の置換基として例示した基が置換されたものであってもよい。
【0064】
上記一般式(8)中、Mは周期表第3~11族から選ばれる遷移金属原子を示し、具体的にはスカンジウム、イットリウム、ランタノイド類、アクチノイド類の第3族金属原子、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの第4族金属原子、バナジウム、ニオブ、タンタルの第5族金属原子、クロム、モリブデン、タングステンの第6族金属原子、マンガン、テクネチウム、レニウムの第7族金属原子、鉄、ルテニウム、オスミウムの第8族金属原子、コバルト、ロジウム、イリジウムの第9族金属原子、ニッケル、パラジウム、白金の第10族金属原子、銅、銀、金の第11族金属原子である。これらのうちでは第3族金属原子、第4族金属原子、第5族金属原子、第6族金属原子が好ましく、この中でもイットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロムなどの遷移金属が好ましく、また、遷移金属原子Mの原子価状態が、2価、3価または4価である周期律表第4族あるいは第5族の遷移金属原子がさらに好ましく、特にチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムが好ましい。遷移金属原子Mがチタン、バナジウムの場合は3価であることが特に好ましい。
【0065】
Xは水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基を示し、Yは電子供与性基を有する中性配位子を示し、mはMの価数を満たす数であり、また、mが2以上の場合は、Xで示される複数の原子または基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよく、nは、0~3の整数を示す。
なおXが酸素原子である場合には、MとXとは二重結合で結合する。
【0066】
mが2以上の場合は、Xで示される複数の原子または基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
mはMの価数を満たす数であり、遷移金属原子Mの価数とXの価数により決定され、これら正負の価数が中和されるような数である。ここで遷移金属原子Mの価数の絶対値をa、Xの価数の絶対値をbとするとa-2=B×nの関係が成り立つ。より具体的には、たとえばMがTi4+であり、XがCl-であればnは2となる。
【0067】
また、上記一般式(8)中、Yは、電子供与性基を有する中性配位子を示し、Yの個数を表すnは、0ないし3の整数を示し、好ましくは1または2である。電子供与性基とは、金属に供与できる不対電子を有する基であり、Yは電子供与性を有する中性配位子であればどのようなものであってもよい。中性配位子Yとしては具体的には、たとえばジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、フラン、ジメチルフラン、アニソール、ジフェニルエーテル、メチル-t-ブチルエーテルなどの鎖状または環状の飽和または不飽和エーテル類、たとえばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、p-トルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和アルデヒド類、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、n-ブチロフェノン、ベンジルメチルケトンなどの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和ケトン類、たとえばホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、n-バレルアミド、ステアリルアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、N,N-ジメチル-n-ブチルアミドなどの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和アミド類、たとえば無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸などの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和無水物、たとえばスクシンイミド、フタルイミドなどの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和イミド類、たとえば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチルなどの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和エステル類、たとえばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンなどの鎖状あるいは環状の飽和または不飽和アミン類、たとえばピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、キノリン、イソキノリン、2-メチルピリジン、ピロール、オキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、インドールなどの含窒素複素環式化合物類、たとえばチオフェン、チアゾールなどの含イオウ複素環式化合物類、たとえばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、たとえばアセトにトリル、ベンゾニトリルなどの飽和または不飽和ニトリル類、たとえば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどの無機塩類、一酸化炭素、二酸化炭素等の無機化合物類、たとえば前述の有機金属化合物(B)などもが例示出来る。さらに、これらの化合物の一部がたとえばアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボニル基、アミノ基などの置換基によって置換された化合物であってもよい。上記式(7)中のYとしては、これらの中性配位子のうち、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、含窒素複素環式化合物類、無機塩類が好ましい。
【0068】
上記一般式(8)中、iは1~3の整数であり、好ましくは2または3である。
本発明においては、上記要件を満たす特定の遷移金属化合物の中では、[hydrobis(3-mesitylpyrazol-1-yl)(5-mesitylpyrazol-1-yl)]borate zirconium trichloride、あるいは[hydrotris(3-mesitylpyrazol-1-yl)]borate zirconium trichlorideが特に好ましい。
【0069】
また、遷移金属錯体はこれらの中性配位子を介して、ダイマー、トリマーあるいはオリゴマー等の複合体を形成していてもよく、またあるいはこれらの中性配位子を介して、例えばμ-オキソ化合物などの架橋構造を形成していてもよい。
【0070】
前記マグネシウム化合物粒子に(C)遷移金属錯体を担持させる方法は、(A-4)脂肪族炭化水素化合物および脂環族炭化水素化合物から選ばれる液状炭化水素化合物の環境下で行う。前記の炭化水素化合物は、例えば、常温、常圧では気体となるような化合物であっても、使用時に高圧条件等で液状化して用いることも可能である。特には脂肪族炭化水素である事が好ましい。
【0071】
上記の炭化水素化合物の具体的な例としては、マグネシウム化合物粒子の製造方法で例示した脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素と同様の物を挙げることが出来る。
上記の炭化水素化合物液体中、マグネシウム化合物粒子と(C)遷移金属錯体とを接触させることで、マグネシウム化合物粒子に(C)遷移金属錯体を担持させることが出来る。この接触工程での温度を30~90℃の範囲とすることが本発明では肝要である。前記の好ましい下限値は32℃、より好ましくは34℃である。一方、好ましい上限値は80℃、より好ましくは70℃、特に好ましくは60℃である。上記の範囲よりも低温では、マグネシウム化合物粒子に(C)遷移金属錯体が担持し難くなり、固体状オレフィン触媒としての重合活性が低くなることがある。また、担持されない(C)遷移金属錯体が残留することがあるので、不定形の重合体が複製する場合がある。上記の範囲よりも高温でも固体状オレフィン重合触媒としての重合活性が低下することがある。これは主に遷移金属錯体の変質によると推測される。
【0072】
また、本発明での上記の温度条件での接触時間は、2~12時間である。好ましい下限値は2.5時間であり、より好ましくは3.0時間であり、さらに好ましくは3.5時間であり、特に好ましくは3.8時間である。一方、好ましい上限値は10時間であり、より好ましくは9時間であり、さらに好ましくは8時間であり、特に好ましくは7.5時間である。
【0073】
前述の通り、(A-4)脂肪族炭化水素化合物および脂環族炭化水素化合物から選ばれる液状炭化水素化合物中での上記成分の接触で、重合活性に優れた固体状オレフィン重合触媒が芳香族炭化水素化合物中に比して、やや得難い傾向がある事を本発明者らは見出した。この理由は現時点で不明であるが、主として、前記(C)遷移金属錯体が脂肪族炭化水素化合物や脂環族炭化水素化合物中に溶解し難い、分散し難い(クラスター状態になっていることも考えられる)ことが要因の一つであろうと考える。この溶解や分散のし難さは、上記の温度範囲であっても大きくは変わらない場合もある。この様な状況で、好適な重合活性を有する固体状オレフィン重合触媒が得られる理由も現時点では不明である。一方、本発明者らは以下のように推測している。
【0074】
上記の遷移金属錯体は、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素では溶解しない、もしくはクラスター状態で、マグネシウム化合物粒子に担持され難い態様となっていると推測できる。しかしながら、マグネシウム化合物粒子の粒子表面は比較的活性が高く、粒子径が比較的小さいので比表面積が広く、粒子間の相互作用も多い環境であろうと考えることが出来る。この様な環境下では、マグネシウム化合物粒子表面と遷移金属錯体(固体やクラスター等)とが接触した際に、ミクロ的に遷移金属錯体が溶解し易くなり、次第に芳香族炭化水素中での遷移金属錯体に近い状態になるのではないかと推測される。この様な相互作用は、上記のように室温よりも温度を高めることで経時的に促進されるのであろう。
この様な要因により、特定の温度と特定の接触時間を選択することにより、脂肪族炭化水素化合物や脂環族炭化水素化合物中でも重合活性に優れた固体状オレフィン触媒を製造できるのであろう。
【0075】
上記の条件の範囲内での接触工程の終了後、生成した固体部を濾取することが出来る。更には、前記の脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素化合物で得られた固体を洗浄することも出来る。また、このような操作を室温よりも高い温度で実施することも出来る。この様な温度としては、前記の通り、30~90℃であることが好ましい。この様にして固体状オレフィン重合触媒を得ることが出来る。この固体状オレフィン重合触媒は、乾燥した状態で得る子も出来るし、前記の脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素のスラリーや、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素でウェット状態とすることも出来る。
【0076】
上記のような方法は、特に粒径の小さなマグネシウム化合物粒子を得易い傾向がある。前記マグネシウム化合物粒子が微粒子の場合、それを重合触媒の固体触媒成分の担体として用い、スラリー重合、気相重合などを実施することによって得られる重合体、例えばエチレン系重合体微粒子も粒径が小さ鋳物を得易いことは自明である。また、得られた重合体を変性することによって得られる重合体である官能基含有エチレン系重合体微粒子も同様に粒径が小さい傾向がある。
【0077】
上記の様な触媒を用いると、後述するエチレンやプロピレンなどのオレフィンを重合させることにより、微小粒径のエチレン系重合体粒子等のオレフィン重合体粒子や、使用するオレフィン等の重合性二重結合を有する化合物によっては、官能基含有オレフィン重合体粒子(例:官能基含有エチレン系重合体粒子)を得ることが出来る。また、前記のエチレン系重合体粒子を変性する事でも官能基含有エチレン系重合体粒子を得ることが出来る。
【0078】
以下、得られることが期待されるオレフィン重合体粒子(特にエチレン系重合体粒子(以下「本発明のエチレン系重合体粒子」ともいう。))とオレフィン重合触媒について記載する。
【0079】
[エチレン系重合体微粒子の製造方法]
以下に、本発明のエチレン系重合体微粒子の製造方法を述べる。
本発明のエチレン系重合体微粒子は、
前記固体状オレフィン重合触媒、すなわち前記マグネシウム化合物粒子に、(C)遷移金属錯体が担持された固体触媒成分と、
有機金属化合物、さらに所望により
非イオン性界面活性剤と
から構成される重合触媒成分の存在下に、エチレンを単独で、またはエチレンと炭素原子数3~6の直鎖または分岐のα-オレフィン、環状オレフィン、極性基含有オレフィン、ジエン、トリエンおよび芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種以上のモノマーとを重合させることで得ることができる。
【0080】
重合触媒成分に含まれる前記有機金属化合物は、主として重合反応系内の有害な不純物を不活性化する成分(スカベンジャー)として用いられる。勿論、オレフィン重合の助触媒として機能する可能性もある。この様な性能を示す公知の有機金属化合物であれば、特に制限はない。この様な有機金属化合物として具体的には上記の(B)有機金属化合物を上げることが出来、好ましくは上述した一般式(1):AlRnX3-nで表されるアルミニウム含有化合物(例えば、トリイソブチルアルミニウム)が挙げられる。勿論、公知のオレフィン重合用触媒に用いられる、有機金属オキシ化合物等の有機金属化合物等を用いることも出来る。
【0081】
前記モノマーの詳細は後述する。
以下、本発明の固体状オレフィン重合触媒で得られるオレフィン重合体微粒子として、エチレン重合体微粒子を例として説明する。
【0082】
[エチレン系重合体微粒子]
本発明の一例であるエチレン系重合体微粒子の好ましい例としては、以下のような態様を挙げることが出来る。
【0083】
この態様は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~50dl/gの範囲にあり、目開き37μmメッシュ篩を少なくとも95重量%以上が通過し、平均粒子径(d)が、3μm≦d≦25μmという特徴を有する。
【0084】
以下、各要件が規定する粒子性状の測定方法、ならびにその製造方法について述べる。
極限粘度[η]
前記極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃にて測定した値である。すなわち、造粒ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηSPを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηSP/Cの値を極限粘度[η]として求める。
[η]=lim(ηSP/C), (C→0)
【0085】
前記のエチレン系重合体微粒子は、極限粘度[η]が0.1~50dl/gの範囲であることが必要であり、好ましくは、0.15~50dl/gであり、より好ましくは0.2~50dl/gの範囲にある。極限粘度[η]が0.1dl/gより大きいようなエチレン系重合体微粒子では、重合時の発熱によるポリマー粒子の部分的な溶融や、スラリー重合時において重合溶媒中へ生成ポリマーの一部が溶出する可能性がない。したがって、ポリマーの粒子形状の崩壊や、ポリマー粒子間の凝集が生じないことが予測される。
また、極限粘度[η]が6dl/g以上、好ましくは10dl/g以上であると、耐摩耗性、耐衝撃性、自己潤滑性に優れる。
【0086】
目開き37μmメッシュ篩での通過量
前記エチレン系重合体微粒子は、振動篩または超音波式振動篩を用い、目開き37μmのメッシュ篩(Tyler #400)を95重量%以上通過するものであり、より好ましくは98重量%以上、さらに好ましくは99.7%以上、最も好ましくは100%通過するものである。すなわち、通過量が95重量%より多いエチレン系重合体微粒子とは、粗大粒子の存在量が少ないことを意味する。このようなポリマー粒子では、粗大粒子の存在によって、流動性や分散性が低下し、パウダーとしてのパッキングの理想である最密充填が阻害されることがない。
【0087】
平均粒子径、分散
本発明で使用される平均粒子径(体積平均径)および分散は、走査型電子顕微鏡装置(例えば、日立ハイテク社製TM4000型走査型電子顕微鏡装置)を用い、数グラムの測定サンプル中の任意の3か所の画像を撮影し、得られたSEM写真を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(例えば、マウンテック社MacView)によって測定される。このソフトウェアを用いれば、粒度分布の指標となる「分散」の値を得ることも出来る。
【0088】
本発明の固体状オレフィン重合触媒は、特に小粒径の重合体粒子を得るのに好適であり、そのような重合体微粒子の平均粒子径(d)は3μm≦d≦25μm、好ましくは3μm≦d≦10μmである。
【0089】
エチレン系重合体微粒子の平均粒子径が3μm以上であると、成形に際しての取り扱いが比較的容易であり、周囲の環境を微粒子で汚染し難い。そのため、各種精密機器や衛生用品などの製造工程で用いられても環境汚染による品質不具合の制御が容易となる。
【0090】
また、衣服などに付着したり、人体に吸入されたりする可能性が減るため、作業環境の安全性の確保にも優れる。さらに焼結フィルターなどの圧縮成形に際しても比較的取り扱いし易く、かつ金型パッキング性に優れることから、孔径が均一なフィルターを効率よく得ることができる。
【0091】
また、平均粒子径が25μm以下、特に10μm以下であると、粒子の質量当たりの比表面積が大きく、化学や生物系物質の高効率な分離用カラムの充填剤、吸着剤、触媒担体として好適に使用できる。さらに、エチレン系重合体微粒子の性状は、成形後の物性に影響を与え、焼結フィルターの素材として孔径が小さいフィルターを得ることができる他、化粧品素材として肌への良好な感触効果を得ることができる。
【0092】
また、前記エチレン系重合体微粒子の構成成分は、エチレンに由来する構成単位が90~100モル%、炭素原子数3~6の直鎖または分岐α-オレフィン、環状オレフィン、極性基含有オレフィン、ジエン、トリエンおよび芳香族ビニル化合物から選ばれる1種以上のモノマーに由来する構成単位が0~10モル%からなることを特徴とする。炭素原子数3~6の直鎖、または分岐α-オレフィンとしてはプロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテンが挙げられ、この中ではプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンが好ましい。
【0093】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0094】
極性基含有オレフィンとしてはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などのα,β-不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのα,β-不飽和カルボン酸金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β-不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジルなどが挙げられる。
【0095】
ジエン、トリエンとしてはブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン;7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエンが挙げられる。
【0096】
芳香族ビニル化合物としては、たとえばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンなどが挙げられ、これらの中の1種または2種以上が用いられる。
【0097】
また上記のエチレン系重合体微粒子は種々の成形方法を用いた成形体とすることできる。上記のエチレン系重合体微粒子および官能基含有エチレン系重合体微粒子は、粒径が小さく、球状の形状を特徴とするので、その特徴をそのまま生かすことが出来る成形法を用いて得られる成形体が好ましい例となる。具体的にはエチレン系重合体微粒子を型に押し込みながら充填した後、重合体の融点以下の温度で圧縮する圧縮成形や、前記圧縮した後、融点以上の温度で溶融圧縮する所謂溶融プレス成形法等により所望形状と機能を有する成形体を得ることができる。また、成形品の要求性能に応じて、他の樹脂を併用したり、さらに各種添加剤を混合して成形することもできる。また、粒子径が小さいので、比較的分子量が高い重合体であっても溶融状態になり易いので、高分子量重合体の押出成形や射出成型などに利用すると、フィッシュアイ等が少ないフィルムやシート、射出成形体を得ることが期待できる。
【0098】
前記のエチレン系重合体微粒子および/または官能基含有エチレン系重合体微粒子を成形して得られる成形体としては、光拡散フィルム、電子ブック基材、リチウム電池やリチウムイオン二次電池のセパレータ用部材、光学フィルター用部材、電子ペーパー用部材、通気性フィルムなどの賦孔材、焼結フィルターを例示することができる。
【0099】
また、本発明のエチレン系重合体微粒子および官能基含有エチレン系重合体微粒子は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤および、化粧品(ファウンデーション)の素材、樹脂改質剤、滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用添加剤、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填材、免疫診断薬用担体、液晶基板のギャップを作るスペイサー、触媒担体として好適に使用することができる。
【0100】
さらに、前記のエチレン系重合体微粒子および官能基含有エチレン系重合体微粒子は、粒径が小さいことから、孔径、いわゆるポアザイズが小さく、かつ均一な孔径を有する、すなわち孔径分布が狭い多孔体である焼結体を得ることができ、該焼結体は、工業用水の濾過用フィルター、飲料水、ジュース、ワイン、酒類などの濾過用として好ましく利用することができる。
【0101】
また、本発明の官能基含有エチレン系重合体微粒子を使用して焼結体を製造することにより、焼結体製造後に変性する必要がなく、かつ均一に変性された焼結体を得ることができる。
【実施例0102】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(重合体粒子の平均粒子径の測定方法)
日立ハイテク社製TM4000型走査型電子顕微鏡装置を用い、数グラムの測定サンプル中の任意の3か所の画像を撮影し、得られたSEM写真を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(マウンテック社MacView)によって決定した。
【0103】
(重合活性(マイレージ))
得られた重合体粒子のMg含有率を島津製作所社製ICPE-9820型ICP測定装置を用いて測定し、常法によってMg金属基準の重合活性を算出した。
【0104】
[実施例1]
成分(B1)の調製
無水塩化マグネシウム95.2g(1.0モル)、デカン332ml、2-エチル-1-ヘキサノール260.5g(2.0モル)および2-オクチル-1-ドデカノール298.6g(1.0モル)を混合し、140℃で3時間反応を行い均一溶液(成分(A1))を得た。
【0105】
マグネシウム化合物粒子(X-1)の調製
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、成分(A)50ml(マグネシウム原子換算で50ミリモル)、精製デカン400mlを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM-0.8Sを用い、回転数20000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム 56ミリモル(Al/Mg=1.12m.r.)を、1時間にわたって滴下装入した。その後、液温を5時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム92.5ミリモル(トータルのAl/Mg=2.97m.r.)を、1時間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、デカンにて充分洗浄し、100mlのデカンを加えてマグネシウム化合物粒子(X-1)のデカンスラリーとした。得られたマグネシウム化合物粒子(X-1)の平均粒子径は0.7μmであった。
その他の結果については、表1に示した。
【0106】
マグネシウム化合物粒子(X-1)を用いた固体状オレフィン重合触媒の合成
窒素置換した200mLのガラス製反応器にデカン71mLを入れ、攪拌下、上記で調製したマグネシウム化合物粒子(X-1)のデカンスラリー19ml(Mg原子換算で4.1mmol)を装入した。次に、下記式で表される遷移金属錯体のデカンスラリー(Zr原子換算で0.0023mmol/mL)10mLを滴下し、35℃で4時間反応させた。その後、反応物を濾過し、デカン50mlで2回洗浄、濾過した後、デカン100mLを加えて固体状オレフィン重合触媒(1)のデカンスラリーを調製した。得られた固体状オレフィン重合触媒(1)のスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.000164mmol/mLであった。(供給した遷移金属錯体の72モル%が担持された。)
【0107】
【0108】
エチレンの重合
充分に窒素置換した内容積1000mlのステンレス製オートクレーブに、デカン500mlを装入し、室温でエチレン100リットル/hrを15分間流通させ、液相および気相を飽和させた。続いて65℃に昇温した後、エチレンを0.4リットル/hrで流通させたまま、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(Al原子で1.0mmol/ml) 1.25ml、固体状オレフィン重合触媒(1)のスラリーを3.9ml(Mg原子換算で0.16mmol、Zr原子換算で0.00064mmol)を加え、温度を維持したまま5分間攪拌し、その後、エマルゲン90ミリグラムを加えた。
【0109】
その後、オートクレーブを閉鎖系とし、水素10ミリリットルを加え、70℃に昇温した後、エチレンを1.0リットル/時間の速度で供給し、圧力が0.35MPaGに到達した以降は0.35MPaGを保つようにエチレンを供給した。70℃昇温後のエチレンの供給量が56リットルになった時点でエチレンの供給を止め、オートクレーブを冷却し、エチレンを脱圧した。(エチレンの供給時間:97分)得られたポリマースラリーを濾過後、ヘキサンで洗浄し、80℃で10時間減圧乾燥することにより、ポリマー62gを得た。
【0110】
[実施例2~4、比較例1~2、参考例1]
以下、表1に示した条件とした以外は、実施例1と同様にして、固体状オレフィン重合触媒を製造し、これを用いてポリマーを得た。結果を表1に示した。
【0111】
【0112】
上記の実施例、比較例、参考例の内容より、本発明の要件を満たす方法で製造した固体状オレフィン重合触媒を用いると、炭化水素化合物媒体を用いても、従来知られているキシレンなどの芳香族化合物媒体を用いた方法と同様、高い重合活性で優れた粒度分布を有するオレフィン重合体微粒子を得ることが出来ることが分かる。