(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113607
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240815BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240815BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240815BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240815BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/30
G09F9/00 359
G09F9/00 313
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018730
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
3D344
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AB01
2H149DA02
2H149DA12
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA14
2H199DA15
2H199DA20
2H199DA23
2H199DA24
2H199DA26
2H199DA30
2H199DA42
2H199DA43
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
5G435AA00
5G435AA01
5G435BB12
5G435BB19
5G435DD11
5G435FF05
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】虚像を表示するための表示部(WS)に対して投影画像を投影する画像投影装置(100)であって、画像光(L1)を照射する画像照射部(10)と、表示部(WS)に対して画像光(L1)を投影画像として投影する投影光学部(20)と、を備え、投影光学部(20)から照射される画像光(L1)は、表示部(WS)に対するP偏光を含んでおり、画像光(L1)の偏光方向を調整する偏光調整部(30)を備えている画像投影装置(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、
画像光を照射する画像照射部と、
前記表示部に対して前記画像光を前記投影画像として投影する投影光学部と、を備え、
前記投影光学部から照射される前記画像光は、前記表示部に対するP偏光を含んでおり、
前記画像光の偏光方向を調整する偏光調整部を備えていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光調整部は、所定方向の偏光を透過する偏光板であり、
前記所定方向は、前記投影光学部から照射される前記画像光の偏光方向と交差することを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光調整部は、入射角度に応じて偏光方向が変更される偏光補償板であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記偏光補償板は、湾曲して配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光調整部は、前記投影光学部と前記表示部の間に設けられていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記偏光調整部は、前記投影光学部から照射される前記画像光の少なくとも一部において、30度以内の範囲で偏光方向を調整することを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に画像照射部からの照射光を反射して視点に到達させる画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の画像投影装置においては、ウィンドシールドでの光の反射はP偏光の成分の反射率が低く、S偏光の成分の反射率が高いという傾向がある。このため、画像照射部から照射される照射光の偏光方向は、ウィンドシールドに対するS偏光となるように設定される。これにより、視点の位置に到達する照射光は、P偏光を含まないS偏光のみの光となる。
【0006】
しかし、外光が強い環境や雪道での走行時には、搭乗者が偏光サングラスを装着してウィンドシールドから外部を視認する場合がある。このとき、車外の物体によって反射された光もS偏光であるため、偏光サングラスはS偏光をカットしてP偏光を透過するように設定されている。したがって、偏光サングラスを装着した搭乗者には、ウィンドシールドで反射された照射光のS偏光が偏光サングラスでカットされてしまい、照射光によって結像された画像の視認が困難になるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、画像光を照射する画像照射部と、前記表示部に対して前記画像光を前記投影画像として投影する投影光学部と、を備え、前記投影光学部から照射される前記画像光は、前記表示部に対するP偏光を含んでおり、前記画像光の偏光方向を調整する偏光調整部を備えていることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の画像投影装置では、偏光調整部で画像光の偏光方向を調整するため、画像光の偏光方向の分布を表示部の曲面形状に応じて適切なものに設定でき、偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記偏光調整部は、所定方向の偏光を透過する偏光板であり、前記所定方向は、前記投影光学部から照射される前記画像光の偏光方向と交差する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記偏光調整部は、入射角度に応じて偏光方向が変更される偏光補償板である。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記偏光補償板は、湾曲して配置されている。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記偏光調整部は、前記投影光学部と前記表示部の間に設けられている。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記偏光調整部は、前記投影光学部から照射される前記画像光の少なくとも一部において、30度以内の範囲で偏光方向を調整する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
【
図2】偏光反射部40でのP偏光とS偏光の反射特性の一例を模式的に示すグラフである。
【
図3】偏光調整部30での画像光L1の入射角度と偏光方向の変化を示す模式図である。
【
図4】第2実施形態に係る画像投影装置110の構成を示す模式図である。
【
図5】第3実施形態に係る画像投影装置120の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
【0018】
図1に示すように画像投影装置100は、画像照射部10と、自由曲面ミラー20と、偏光調整部30を備えている。自由曲面ミラー20は、本発明における投影光学部を構成している。
図1中では、画像照射部10から照射された画像光L1および太陽光などの外光L0の代表的な光路を模式的に実線矢印で示している。また、画像投影装置100の外部には車両のウィンドシールドWSおよび偏光反射部40が設けられており、運転者等は視点eの位置から偏光反射部40を介して画像光L1による画像を視認する。
【0019】
画像照射部10は、情報処理部(図示省略)から画像情報を含んだ信号が供給されることで画像情報を含んだ照射光(画像光)L1を照射する装置である。画像照射部10から照射された画像光L1は自由曲面ミラー20に入射する。画像照射部10としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置、DMD(Degital Micro-mirror Device)、レーザ光源を用いたプロジェクター装置等が挙げられる。画像照射部10から照射される画像光L1は、図中に両矢印で示したように、ウィンドシールドWSに対してP偏光となる光を含むように構成されている。画像照射部10からの画像光L1が特定方向の偏光である場合には、その偏光面がウィンドシールドWSに対してP偏光となるように画像照射部10の表示面の向きを設定する。特定の偏光の画像光L1を照射する画像照射部10としては、液晶表示装置、レーザ光源を用いたプロジェクター装置、反射型液晶プロジェクター装置等が挙げられる。
【0020】
自由曲面ミラー20は、画像照射部10から照射された画像光L1が入射し、ウィンドシールドWS方向に反射する鏡である。自由曲面ミラー20の反射面形状は、曲率が一定ではなく二次元的に変化する自由曲面で構成されている。
図1では自由曲面ミラー20の形状として凹面鏡を示しているが、凸面鏡を用いるとしてもよく、平面鏡を用いるとしてもよい。また、
図1では自由曲面ミラー20で投影光学部を構成した例を示したが、複数枚の反射鏡を用いて画像光L1を繰り返し反射させてウィンドシールドWSに照射するとしてもよい。
【0021】
偏光調整部30は、画像光L1の偏光方向を調整する光学部材である。偏光調整部30の具体的な構成は限定されないが、光の入射角度に応じて偏光方向が変更される偏光補償板を用いることができる。偏光補償板の構成は限定されず、公知の材料および構造のものを用いることができ、一例としては富士フイルム社製WVフィルムやホログラフィック光学素子(HOE:Holographic Optical Element)等を用いることができる。
【0022】
図1に示した例では、偏光調整部30として偏光補償板を用い、偏光補償板を湾曲して配置されている。これにより、照射領域内における画像光L1の偏光補償板への入射角度が所定の分布を持ち、画像光L1の偏光方向も照射領域内において所定の分布をもったものとなる。
図1では、偏光調整部30を自由曲面ミラー20とウィンドシールドWSの間に設けた例を示したが、偏光調整部30を設ける位置は限定されず、自由曲面ミラー20と画像照射部10の間であってもよい。画像投影装置100から投影される画像光L1の最終的な偏光方向の分布を決定するためには、画像投影装置100における画像光L1の出射位置に偏光調整部30を配置することが好ましい。
【0023】
ウィンドシールドWSは、車両の運転席前方に設けられており、車両の外部からの光を視点eの方向に対して透過する。また、ウィンドシールドWSは車両の外部からの光のうち少なくとも可視光を透過するため、太陽光などの外光L0が上方から車内に入射した場合にも、外光L0の一部は自由曲面ミラー20にまで到達する。また、ウィンドシールドWSの内部には偏光反射部40が設けられている。
図1では、簡便化のためにウィンドシールドWSの断面形状を平坦な板状として描いているが、実際の車両においては上下方向および左右方向に曲率を有する曲面で構成されている。さらに画像光L1が投影されるウィンドシールドWSの領域は、運転席側とされてウィンドシールドWSの左右方向の中央から偏った位置であり、左右非対称な曲面で構成されている。
【0024】
偏光反射部40は、ウィンドシールドWSの内部に設けられた光学部材であり、入射した光のS偏光成分の反射率が低く、P偏光成分の反射率が高い光学特性を有している。
図1に示した例では、偏光反射部40は略平板状のフィルム形状として構成されており、ウィンドシールドWSの内部に埋め込まれている。
図1では偏光反射部40をウィンドシールドWSの一部に設けた例を示したが、ウィンドシールドWSの全面に設けるとしてもよい。
【0025】
図2は、偏光反射部40でのP偏光とS偏光の反射特性の一例を模式的に示すグラフである。グラフの横軸は偏光反射部40の表面に垂直な方向を0度とし、0度から傾斜した角度を入射角度として示している。またグラフの縦軸は、偏光反射部40の0度方向と光の入射方向を含む面内方向での偏光(P偏光)の反射率を実線で示し、P偏光に垂直なS偏光の反射率を破線で示している。
図2に示すように偏光反射部40は、ウィンドシールドWSに対するP偏光の反射率が大きく、S偏光の反射率が小さい光学特性を有している。また、P偏光は入射角度が小さいと反射率が小さく、入射角度が増加するにしたがって反射率が増加する。また、
図2に示したように偏光反射部40は、ウィンドシールドWSのブリュースター角近傍においてP偏光の反射率が75%以上と高い反射率であり、S偏光の反射率が10%程度と低い反射率となっている。
図2に示したような光学特性を有する偏光反射部40としては、3M社製の偏光反射フィルム(WCF-PVB)や、特表2006-512622号公報に記載されたものを用いることができる。
【0026】
また、
図1では表示部としてウィンドシールドWSの内部に偏光反射部40を設けた例を示したが、ウィンドシールドWSとは別に表示部としてコンバイナーを用意し、コンバイナーの内部に偏光反射部40を設け、自由曲面ミラー20からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、表示部は車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点eに対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。視点eは、車両の運転者または搭乗者の目(アイボックス)であり、画像光L1がアイボックスに入射して網膜に光が到達することで、運転者または搭乗者は結像された虚像を視認する。
【0027】
虚像は、偏光反射部40で反射された画像光L1が運転者等の視点(アイボックス)eに到達した際に、空間中に結像されたように表示される。虚像が結像される位置は、画像照射部10から照射された光が、自由曲面ミラー20および偏光反射部40で反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。このとき運転者または搭乗者は、ウィンドシールドWSよりも遠方の結像位置に虚像が存在するように認識する。ここで、虚像の結像位置は、主として投影光学部の合成焦点距離に依存する。ウィンドシールドWSが平坦面ではなく曲面形状であったとしても、曲率半径が自由曲面ミラー20と比較して大きいため、ウィンドシールドWSによる光学的パワーの影響は無視できる程度である。
【0028】
図1に示したように、画像照射部10からの画像光L1はウィンドシールドWSに対するP偏光を含んでおり、自由曲面ミラー20で反射された画像光L1もP偏光を含んでいる。また、画像光L1は一部が偏光調整部30で偏光方向が変更されるが、主としてP偏光を含んでいる。したがって、P偏光を含んだ画像光L1は偏光調整部30を透過して偏光反射部40に到達する。偏光反射部40は
図2に示したようにP偏光の反射率が高いため、画像光L1のP偏光成分も良好に反射されて視点eに到達する。したがって、虚像はP偏光によって投影されるものとなり、搭乗者が偏光サングラスを装着している場合であっても良好に視認することが可能となる。
【0029】
また、ウィンドシールドWSに対する画像光L1の入射角度は、ブリュースター角となるように設定されていることが好ましい。ブリュースター角では、画像光L1のP偏光はウィンドシールドWSの表面でほとんど反射されず、ウィンドシールドWSを構成するガラス内部に取り込むことができる。
図2に示したように、偏光反射部40は入射角度が50度近傍のブリュースター角でも高い反射率を有しており、ウィンドシールドWSの表面で僅かに反射された画像光L1の輝度よりも、偏光反射部40で反射される画像光L1の輝度のほうが大きくなる。これにより、ウィンドシールドWSの表面と偏光反射部40の両者で画像光L1のP偏光が反射されて、虚像が2重に視認されることを抑制することができる。
【0030】
また
図1に示したように、太陽光などの外光L0はウィンドシールドWSの上方から入射する。ここで、車両の外部から入射する外光L0はあらゆる偏光方向の成分が含まれた無偏光であるが、P偏光の成分は偏光反射部40で車両の外部に向けて反射され、S偏光の成分のみがウィンドシールドWSを透過して自由曲面ミラー20まで到達する。したがって、外光L0のうちP偏光成分は偏光反射部40でカットされ、画像照射部10に到達する光量を抑制することができる。これにより、外光L0が画像照射部10に到達することによる温度上昇を抑制して、画像照射部10の劣化を防止することができる。
【0031】
上述したように、ウィンドシールドWSは上下方向および左右方向に曲率を有しており、画像光L1が照射される領域はウィンドシールドWSの中央から偏った位置となっている。つまり、ウィンドシールドWSの表面および偏光反射部40への画像光L1の照射領域内では、面内において傾斜方向が僅かに異なっている。このような傾斜方向が異なる面に対して、偏光方向が全て同じ方向である画像光L1を投影した場合には、入射位置の傾斜方向に対応して偏光成分が分離され、P偏光成分とS偏光成分が生じてしまう。このように画像光L1の入射位置による偏光成分の分離が生じると、S偏光成分がウィンドシールドWSの表面で反射されるとともに、偏光反射部40で反射されるP偏光成分が減少し、2重の虚像が結像されて視認性が悪化してしまう。
【0032】
そこで本実施形態では、偏光調整部30を湾曲させて配置して、ウィンドシールドWSおよび偏光反射部40の傾斜角度に適した偏光方向となるように、偏光調整部30を透過する画像光L1に偏光方向の分布を変更する。ここで、画像光L1の偏光方向の分布を変更するとは、自由曲面ミラー20から照射される画像光L1の少なくとも一部において、30度以内の範囲で偏光方向を調整することをいう。ウィンドシールドWSの形状は車種や個体差によって異なっているため、偏光調整部30で偏光方向を調整することで車種や個体差に応じた適切な偏光分布の画像光L1をウィンドシールドWSに対して投影することができる。また、画像投影装置100における画像光L1の出射位置に偏光調整部30を設けることで、画像投影装置100を車両に搭載する組付け工程の最後に、ウィンドシールドWSの傾斜方向に対して位置合わせをすることができる。
【0033】
図3は、偏光調整部30での画像光L1の入射角度と偏光方向の変化を示す模式図である。本実施形態では
図3に示したように、偏光調整部30として湾曲させた偏光補償板を用いる。図中の矢印は画像光L1の進行方向を示し、図中の両矢印は画像光L1における偏光方向を模式的に示している。
【0034】
図3に示したように、偏光調整部30は偏光補償板が湾曲して配置されているため、画像光L1の位置によって入射角度が異なるものとなる。画像光L1のうち偏光補償板に垂直に入射した領域では、偏光補償板を通過した際にもP偏光は維持される。このP偏光を基準として、他の位置での偏光方向の変換について説明する。偏光補償板の法線方向に対して傾斜角をもって入射した領域では、傾斜角度に応じてP偏光成分の一部がS偏光成分に変換されて、基準となるP偏光方向とは異なるP偏光成分とS偏光成分を含む偏光方向となる。
図3においては、左側に示した位置ではP偏光が偏光補償板を通過した後にP
1+S
1という偏光方向とされ、右側に示した位置ではP
2+S
2という偏光方向とされる。
【0035】
したがって、偏光調整部30を透過した画像光L1は、照射される領域の面内における位置によって偏光方向が異なる分布を有するものとなる。この偏光方向の分布は、偏光調整部30である偏光補償板の光学特性と湾曲形状によって定まる。したがって、画像光L1の照射領域におけるウィンドシールドWSの傾斜方向に対して、偏光補償板の湾曲形状を対応させることで、各位置におけるウィンドシールドWSの傾斜方向と画像光L1の偏光方向を適切に設定することができる。
【0036】
図3に示した例では、偏光補償板に垂直に入射して透過した画像光L1は、基準となるP偏光のみでウィンドシールドWSに到達し、ウィンドシールドWSの傾斜方向に対してP偏光成分のみとなる。この位置では基準となるP偏光の方向は、画像光L1の入射方向とウィンドシールドWSの法線方向を含んだ面内の偏光である。
【0037】
偏光補償板に所定の傾斜角度で入射した画像光L1は、基準となるP偏光とは異なるP1+S1またはP2+S2いう偏光方向としてウィンドシールドWSに到達する。この位置ではウィンドシールドWSの法線方向は、基準となるP偏光が入射した位置よりも水平方向への傾斜成分を有しており、P1+S1またはP2+S2いう偏光方向のうちS1、S2の成分を打ち消す方向となっている。したがって、この位置ではウィンドシールドWSの法線方向と画像光L1の偏光方向の関係は、P1またはP2というP偏光成分のみとなる。これにより、ウィンドシールドWSの表面でのS偏光成分の反射は抑制され、P偏光成分はブリュースター角でウィンドシールドWS内に取り込まれて、偏光反射部40によって良好に反射される。
【0038】
上述したように、本実施形態の画像投影装置100では、偏光調整部30で画像光L1の偏光方向を調整するため、画像光L1の偏光方向の分布をウィンドシールドWSの曲面形状に応じて適切なものに設定でき、偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る画像投影装置110の構成を示す模式図である。
図4に示すように画像投影装置110は、画像照射部10と、自由曲面ミラー20と、偏光調整部30と、二分の一波長板50を備えている。本実施形態では、二分の一波長板50を画像照射部10と自由曲面ミラー20の間に配置している。
【0040】
二分の一波長板50は、照射光(画像光)L1の光路上に配置され、互いに直交するファスト軸とスロー軸において、二分の一波長だけ位相差を生じさせる光学部材である。また、二分の一波長板50のファスト軸は、画像光L1のS偏光成分およびP偏光成分とそれぞれ45度異なるように配置されている。
【0041】
図4に示したように、本実施形態の画像投影装置110では、画像照射部10からの画像光L1はウィンドシールドWSに対するS偏光とされている。二分の一波長板50では、S偏光の偏光方向とファスト軸が45度異なっているため、二分の一波長板50を透過した画像光L1はP偏光となる。
【0042】
二分の一波長板50でP偏光に変換された画像光L1は、自由曲面ミラー20で反射されて偏光調整部30を透過して、ウィンドシールドWSに対して投影される。上述したように偏光調整部30を透過した画像光L1は、
図4に示したように照射領域内で偏光方向の分布を有するように変換されてウィンドシールドWSに到達する。したがって、ウィンドシールドWSの各位置における水平方向への傾斜角度によって、画像光L1に含まれるS偏光成分が打ち消される。
【0043】
本実施形態の画像投影装置110でも、偏光調整部30で画像光L1の偏光方向を調整するため、画像光L1の偏光方向の分布をウィンドシールドWSの曲面形状に応じて適切なものに設定でき、偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能となる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る画像投影装置120の構成を示す模式図である。
図5に示すように画像投影装置120は、画像照射部10と、自由曲面ミラー20と、偏光調整部30と、二分の一波長板50を備えている。本実施形態では、二分の一波長板50を自由曲面ミラー20と偏光調整部30の間に配置している。
【0045】
図5に示したように、本実施形態の画像投影装置120では、画像照射部10からの画像光L1はウィンドシールドWSに対するS偏光とされている。S偏光の画像光L1は自由曲面ミラー20で反射されて二分の一波長板50に到達する。二分の一波長板50では、S偏光の偏光方向とファスト軸が45度異なっているため、二分の一波長板50を透過した画像光L1はP偏光となる。
【0046】
二分の一波長板50でP偏光に変換された画像光L1は、偏光調整部30を透過してウィンドシールドWSに対して投影される。上述したように偏光調整部30を透過した画像光L1は、
図5に示したように照射領域内で偏光方向の分布を有するように変換されてウィンドシールドWSに到達する。したがって、ウィンドシールドWSの各位置における水平方向への傾斜角度によって、画像光L1に含まれるS偏光成分が打ち消される。
【0047】
本実施形態の画像投影装置120でも、偏光調整部30で画像光L1の偏光方向を調整するため、画像光L1の偏光方向の分布をウィンドシールドWSの曲面形状に応じて適切なものに設定でき、偏光サングラス等を使用した場合にも視認性を確保することが可能となる。
【0048】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態から第3実施形態では、偏光調整部30として偏光補償板を用いた例を示したが、所定方向の偏光を透過する偏光板を偏光調整部30として用いるとしてもよい。
【0049】
一例としては、画像照射部10から所定方向の偏光で画像光L1を照射するが、車種や製造誤差によってウィンドシールドWSの傾斜方向が画像光L1の偏光方向と一致していない場合を想定する。この場合には、ウィンドシールドWSに到達した画像光L1は、傾斜方向に対応したP偏光成分とS偏光成分が含まれてしまう。これにより、ウィンドシールドWS表面で反射されるS偏光と偏光反射部40で反射されるP偏光で、虚像の2重結像が生じて視認性が低下する。
【0050】
そこで、偏光調整部30である偏光板が透過する偏光方向をウィンドシールドWSの傾斜に対応させて配置することで、ウィンドシールドWSの傾斜方向におけるS偏光成分をカットする。これにより、ウィンドシールドWSに到達する画像光L1は、ウィンドシールドWSの傾斜方向に対してP偏光となり、虚像の2重結像を抑制して視認性を向上させることができる。
【0051】
偏光板と画像光L1の偏光方向の角度差が30度よりも大きい場合には、偏光板を透過する画像光L1の光量が低下して虚像の輝度が低下してしまう。したがって、偏光調整部30である偏光板が透過する偏光方向と、画像照射部10が照射した画像光L1の偏光方向の角度差は、30度以内の範囲であることが好ましい。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100,110,120…画像投影装置
10…画像照射部
20…自由曲面ミラー(投影光学部)
30…偏光調整部
40…偏光反射部
50…二分の一波長板