(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113608
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム、発電用システム、燃料製品の製造方法及び燃料製品
(51)【国際特許分類】
C10L 5/48 20060101AFI20240815BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240815BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20240815BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20240815BHJP
B09B 101/25 20220101ALN20240815BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20240815BHJP
【FI】
C10L5/48
B09B3/35 ZAB
B09B3/30
B09B5/00 M
B09B5/00 P
B09B5/00 Q
B09B101:25
B09B101:75
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018731
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】393004018
【氏名又は名称】株式会社ダイセキ
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 俊保
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 俊介
(72)【発明者】
【氏名】堀 詩茉
【テーマコード(参考)】
4D004
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA07
4D004AA46
4D004AB06
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA40
4H015AA01
4H015AA06
4H015AA12
4H015AA16
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA07
4H015BB03
4H015BB04
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】発熱量、塩素含有量及び硫黄含有量等の品質規格に合致した燃料製品とすること及びこの品質の均質化(ばらつきの少ないこと)を図る可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム、発電用システム、燃料製品の製造方法及び燃料製品を提供する。
【解決手段】可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する破砕手段と、破砕手段により破砕された破砕物を処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄手段と、洗浄手段により洗浄された洗浄物を処理拠点において脱水する脱水手段と、脱水手段により脱水された脱水物を処理拠点において乾燥する乾燥手段と、乾燥手段により乾燥された乾燥物である燃料基材を処理拠点において配合混合する配合手段と、配合手段により配合された燃料製品を利用拠点に搬送する搬送手段と、利用拠点において搬送された燃料製品を使用する燃焼手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する破砕手段と、
前記破砕手段により破砕された破砕物を処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄手段と、
前記洗浄手段により洗浄された洗浄物を前記処理拠点において脱水する脱水手段と、
前記脱水手段により脱水された脱水物を前記処理拠点において乾燥する乾燥手段と、
前記乾燥手段により乾燥された乾燥物である燃料基材を前記処理拠点において配合混合する配合手段と、
前記配合手段により配合された燃料製品を利用拠点に搬送する搬送手段と、
前記利用拠点において搬送された前記燃料製品を使用する燃焼手段と、を備えることを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項2】
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に前記プラスチック類を分別するプラスチック類分別手段を備える、請求項1に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項3】
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に異物除去手段を備える請求項1に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項4】
前記洗浄手段は、前記破砕する前、前記破砕と同時に、及び前記破砕する後の少なくとも一方に備えられる請求項1に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項5】
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、前記配合混合する前、又は前記燃焼手段を用いて燃焼する前に動物油、植物油、動植物油系廃油、鉱物油系廃油及び鉱物油系廃油から作られたリサイクル燃料油の少なくとも1つを配合する請求項1に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項6】
前記可燃性廃棄物は、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の少なくとも1つを含む請求項1に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項7】
前記可燃性一般廃棄物のうちの、発熱量並びに含有塩類濃度が各々異なる、前記紙類、前記繊維類、前記プラスチック類、前記生ごみ及び前記剪定枝・草木・花卉類、並びに、可燃性一般廃棄物、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の各配合割合を調整して発熱量及び含有塩類濃度のうちの少なくとも1つを調整する請求項1に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項8】
前記処理拠点は2以上であり、前記利用拠点は1つであり、前記各処理拠点から搬送された各燃料基材を配合し混合して燃料製品を製造する配合混合手段を備える請求項7に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項9】
前記調整後の発熱量は4,000cal/g以上である請求項7に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項10】
前記洗浄手段を備えることにより水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整するとともに、前記調整後の発熱量を4,000cal/g以上に調整する請求項7に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちの少なくとも一項に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステムは発電用に用いられるシステムであることを特徴とする発電用システム。
【請求項12】
紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類を含む可燃性一般廃棄物を含む可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する破砕工程と、
前記破砕工程により破砕された破砕物を前記処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄手段により洗浄された洗浄物を前記処理拠点において脱水する脱水工程と、
前記脱水手段により洗浄された脱水物を前記処理拠点において乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程により乾燥された乾燥物である燃料基材を前記処理拠点において配合混合する配合工程と、
前記配合手段により配合された燃料製品を利用拠点に搬送する搬送工程と、
前記利用拠点において搬送された前記燃料製品を使用する燃焼工程と、を備えることを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項13】
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に前記プラスチック類を分別するプラスチック類分別工程を備える請求項12に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項14】
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に異物除去工程を備える請求項12に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項15】
前記洗浄工程は、前記破砕する前に備える、前記破砕と同時に、及び前記破砕する後の少なくとも一方に備える請求項12に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項16】
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、前記配合混合する前、又は前記燃焼手段を用いて燃焼する前に動物油、植物油、動植物油系廃油及び鉱物油系廃油及び鉱物油系廃油から作られたリサイクル燃料油の少なくとも1つを配合する請求項12に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項17】
前記可燃性廃棄物は、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の少なくとも1つを含む請求項12に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項18】
前記可燃性一般廃棄物のうちの紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類の配合割合、並びに、可燃性一般廃棄物とバイオマス由来の可燃性産業廃棄物と鉱物油由来の可燃性産業廃棄物との配合割合を調整して発熱量並びに含有塩類濃度を調整する請求項12に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項19】
前記処理拠点は2以上であり、前記利用拠点は1つであり、前記各処理拠点から搬送された各燃料基材を配合し混合して燃料製品を製造する配合混合工程を備える請求項18に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項20】
前記調整後の発熱量は4,000cal/g以上である請求項18に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項21】
前記洗浄工程を備えることにより水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整するとともに、前記調整後の発熱量を4,000cal/g以上に調整する請求項18に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【請求項22】
請求項12乃至21のうちの少なくとも1つに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項23】
可燃性一般廃棄物中に含まれる紙類の乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれる繊維類の乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれるプラスチック類の乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれる生ごみの乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれる剪定枝・草木・花卉類の乾燥脱水粉末と、含むことを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項24】
動物油の乾燥脱水粉末、植物油の乾燥脱水粉末、動植物油系廃油の乾燥脱水粉末及び鉱物油系廃油の乾燥脱水粉末の少なくとも1つの乾燥脱水粉末を含む請求項23に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項25】
バイオマス由来の可燃性産業廃棄物の乾燥脱水粉末及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の乾燥脱水粉末の少なくとも1つの乾燥脱水粉末を含む請求項23に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項26】
前記燃料製品は発電用に用いられる請求項22に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項27】
前記燃料製品は発電用に用いられる請求項23に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項28】
発電用に用いられる前記燃料製品はペレット状の成形品である前記請求項26に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【請求項29】
発電用に用いられる前記燃料製品はペレット状の成形品である請求項27に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム、発電用システム、燃料製品の製造方法及び燃料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許4231739号)には、 汚泥の再資源化方法 即ち、下水汚泥、生ごみ、食品廃棄物等の高含水率の汚泥を油温乾燥装置により乾燥し、セメントクリンカー製造用の燃料として用いることが記載されている。
特許文献2(実用新案2591492)には、家庭用生ゴミの減容装置、即ち、消滅 ゴミ処理室4内に廃油を入れて、減圧装置7による減圧と、ヒーター8による加熱を行うことで、油温が低温でもてんぷら状となり脱水乾燥減容化することが記載されている[0005]。
特許文献3(特開平02-253900)には、下水、産業排水等の汚泥を低揮発油と共に減圧釜で加熱脱水する第1工程、油分を分離して固形状汚泥を製造する第2工程、固形状汚泥と前記汚泥を混合して蒸気発生用のボイラーの燃料とする第3工程を備えることが記載されている。
特許文献4(特開平11-241081号)には、合成樹脂製廃棄物を含む生ゴミを減圧油温脱水後、粉砕し、篩にかけて、合成樹脂製粉砕物と生ゴミ処理粉砕物とに分離し、合成樹脂製粉砕物は燃料、生ゴミ処理粉砕物は飼料として用いることが記載されている。
特許文献5(特開2002-045301号)には、下部の供給口から熱油中に食品材料や生ゴミ等の被処理物を供給して、上部に浮上するまで間に熱油処理する熱油処理塔と、熱油処理塔から溢出する熱油と被処理物を流下させながら減圧処理する減圧処理流路を備えることが記載されている。
特許文献6(特公平07-041268号)には、残飯等の残滓汚泥から凝集体汚泥を生成する第一工程、脱水する第二工程、加温油室により空揚げ状形成物を得る第三工程、焼却炉で焼却する第四工程を備えることが記載されている。
特許文献7(特許4994414号)には、下水スラッジや生ゴミ等のスラッジと廃油に油中蒸発乾燥方法を適用して固形燃料が生産できる有機性スラッジ油中蒸発乾燥装置であり、蒸発乾燥が行われる油中蒸発乾燥タンクへ供給するスラッジ移送蒸発装置の排出側スクリュー径が小さくなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4231739号公報
【特許文献2】実用新案2591492号公報
【特許文献3】特開平02―253900号公報
【特許文献4】特開平11―241081号公報
【特許文献5】特開2002―045301号公報
【特許文献6】特公平07―041268号公報
【特許文献7】特許4994414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術には、下水汚泥、生ごみ、食品廃棄物等の高含水率の汚泥の再資源化方法(特許文献1)、家庭用生ゴミの減容装置又は減容方法(特許文献2)、下水、産業排水等の汚泥を処理して蒸気発生用のボイラーの燃料として利用する方法(特許文献3)、合成樹脂製廃棄物を含む生ゴミを処理して燃料及び飼料として利用する方法(特許文献4)、食品材料や生ゴミ等を処理する方法(特許文献5)、残飯等の残滓汚泥を処理して燃料として利用する方法(特許文献6)、及び下水スラッジや生ゴミ等を処理して固形燃料を製造する方法(特許文献7)が知られているが、
しかし、前記特許文献1~7においては、可燃性廃棄物の構成成分の一部を分離除去せずに且つ破砕・脱水乾燥手段等を用いて製造された燃料基材を所定の燃料品質に合致するように配合して調整することは記載されていない。
【0005】
更に、通常、可燃性廃棄物は80%程度の水分を含み、発熱量が2,000cal/g程度と少なく、一般的なバイオマス発電燃料である木チップ(4,000cal/g)や一般的な発電燃料である石炭等(7,000cal/g)の様に効率的な発電を行うことが困難である。
また、それら含有する水分は、焼却処理の工程で水蒸気となり、そのガスボリュームが大量となるため、巨大な排ガス処理設備を必要とし、焼却処理施設の増大、費用の増加を招いている。
更に、可燃性廃棄物に含まれる塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の塩類は、焼却処理時に腐食性ガス発生の要因となり、高価な耐食部材を必要とし設備の高額化を招いているだけでなく、腐食防止のための低温稼働を余儀なくされるため、廃棄物焼却炉で発電を行ういわゆるゴミ発電においても、燃焼温度を引き上げて発電効率を上げることが困難である。更に、含有塩類のうち塩素はダイオキシン生成の要因となり、硫黄は亜硫酸ガス発生の要因となるため、排ガス処理施設の増大と施設費用の高額化を招いている。
また、通常、可燃性一般廃棄物の発熱量は事業系と一般家庭による内容の違いや、季節等によっても異なり一定せず、ばらつくため、「来たもの順に受け入れ処理を行う」現行のシステムでは、一定の稼働率や、最適な発電効率を追求することが困難となり、低稼働率を前提とした余剰能力が必要となり、施設の増大、高額化と発熱量の無駄、低効率の発電となる傾向がある。
【0006】
更に、現行の焼却処理施設の老朽化への対応と、効率化を図るため、複数の自治体をまとめ焼却処理施設を統合大規模化するための「処理施設広域化計画」が全国で進められている。
前記のように課題を抱えた現行システムのまま拠点の統合を図ることで、各家庭から収集した可燃ごみの輸送距離が伸び、輸送コストだけでなく、輸送時に発生する二酸化炭素の増大を招き、地球温暖化対策に逆行することになりかねない。
また、新たな焼却施設の設置については、ダイオキシン等排ガスの健康被害懸念からも当該予定地の地域住民の反発が生じる場合もあり、現行システムの延長上では解決の見通しが立ちにくい地域もある。
【0007】
本発明は、前記特許文献1~7の記載を鑑みるとともに、現状における前記課題を解決することを目的とするものである。即ち、本発明のシステム、発電用システム、燃料製品の製造方法及び燃料製品は、可燃性廃棄物を再利用して再生可能エネルギーとして活用することを目的とする。また、本発明は、発熱量、塩素含有量及び硫黄含有量等の品質規格に合致した燃料製品とすること及びこの品質の均質化(ばらつきの少ないこと)を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下に示される。
なお、以下の説明において、前記可燃性廃棄物は、「可燃性一般廃棄物」と「可燃性産業廃棄物」の総称であり、どちらか一方でも、両者の混合したものであってもかまわないものとする。
前記可燃性一般廃棄物は、通常、紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類を含む。
1.可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する破砕手段と、
前記破砕手段により破砕された破砕物を処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄手段と、
前記洗浄手段により洗浄された洗浄物を前記処理拠点において脱水する脱水手段と、
前記脱水手段により脱水された脱水物を前記処理拠点において乾燥する乾燥手段と、
前記乾燥手段により乾燥された乾燥物である燃料基材を前記処理拠点において配合混合する配合手段と、
前記配合手段により配合された燃料製品を利用拠点に搬送する搬送手段と、
前記利用拠点において搬送された前記燃料製品を使用する燃焼手段と、を備えることを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
2.前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に前記プラスチック類を分別するプラスチック類分別手段を備える、前記1.に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
3.前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に異物除去手段を備える前記1.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
4.前記洗浄手段は、前記破砕する前、前記破砕と同時に、及び前記破砕する後の少なくとも一方に備えられる前記1.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
5.前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、前記配合混合する前、又は前期燃焼手段を用いて燃焼する前に動物油、植物油、動植物油系廃油、鉱物油系廃油及び鉱物油系廃油から作られたリサイクル燃料油の少なくとも1つを配合する前記1.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
6.前記可燃性廃棄物は、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の少なくとも1つを含む前記1.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
7.前記可燃性一般廃棄物のうちの、発熱量並びに含有塩類濃度が各々異なる、前記紙類、前記繊維類、前記プラスチック類、前記生ごみ及び前記剪定枝・草木・花卉類、並びに、可燃性一般廃棄物、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の各配合割合を調整して発熱量及び含有塩類濃度のうちの少なくとも1つを調整する前記1.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
8.前記処理拠点は2以上であり、前記利用拠点は1つであり、前記各処理拠点から搬送された各燃料基材を配合し混合して燃料製品を製造する配合混合手段を備える前記7.記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
9.前記調整後の発熱量は4,000cal/g以上である前記7.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
10.前記洗浄手段を備えることにより水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整するとともに、前記調整後の発熱量を4,000cal/g以上に調整する前記7.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
【0009】
11.前記1.乃至10.のうちの少なくとも一項に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステムは発電用に用いられるシステムであることを特徴とする発電用システム。
【0010】
12.紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類を含む可燃性一般廃棄物を含む可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する破砕工程と、
前記破砕工程により破砕された破砕物を前記処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄手段により洗浄された洗浄物を前記処理拠点において脱水する脱水工程と、
前記脱水手段により洗浄された脱水物を前記処理拠点において乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程により乾燥された乾燥物である燃料基材を前記処理拠点において配合混合する配合工程と、
前記配合手段により配合された燃料製品を利用拠点に搬送する搬送工程と、
前記利用拠点において搬送された前記燃料製品を使用する燃焼工程と、を備えることを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
13.前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に前記プラスチック類を分別するプラスチック類分別工程を備える前記12.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
14.前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、又は前記配合混合する後に異物除去工程を備える前記12.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
15.前記洗浄工程は、前記破砕する前に備える、前記破砕と同時に、及び前記破砕する後の少なくとも一方に備える前記12.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
16.前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、前記配合混合する前、又は前記燃焼工程を用いて燃焼する前に動物油、植物油、動植物油系廃油及び鉱物油系廃油及び鉱物油系廃油から作られたリサイクル燃料油の少なくとも1つを配合する前記12.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
17.前記可燃性廃棄物は、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の少なくとも1つを含む前記12.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
18.前記可燃性一般廃棄物のうちの紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類の配合割合、並びに、可燃性一般廃棄物とバイオマス由来の可燃性産業廃棄物と鉱物油由来の可燃性産業廃棄物との配合割合を調整して発熱量並びに含有塩類濃度を調整する前記12.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
19.前記処理拠点は2以上であり、前記利用拠点は1つであり、前記各処理拠点から搬送された各燃料基材を配合し混合して燃料製品を製造する配合混合工程を備える前記18.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
20.前記調整後の発熱量は4,000cal/g以上である前記18.に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
21.前記洗浄工程を備えることにより水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整するとともに、前記調整後の発熱量を4,000cal/g以上に調整する請求項18に記載の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
【0011】
22.前記12.乃至21.のうちの少なくとも1つに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
23.可燃性一般廃棄物中に含まれる紙類の乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれる繊維類の乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれるプラスチック類の乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれる生ごみの乾燥脱水粉末と、
可燃性一般廃棄物中に含まれる剪定枝・草木・花卉類の乾燥脱水粉末と、含むことを特徴とする、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
24.動物油の乾燥脱水粉末、植物油の乾燥脱水粉末、動植物油系廃油の乾燥脱水粉末及び鉱物油系廃油の乾燥脱水粉末の少なくとも1つの乾燥脱水粉末を含む前記23.に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
25.バイオマス由来の可燃性産業廃棄物の乾燥脱水粉末及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の乾燥脱水粉末の少なくとも1つの乾燥脱水粉末を含む前記23.に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
26.前記燃料製品は発電用に用いられる前記22に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
27.前記燃料製品は発電用に用いられる前記23.に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
28.発電用に用いられる前記燃料製品はペレット状の成形品である前記26.に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
29.発電用に用いられる前記燃料製品はペレット状の成形品である前記27.に記載の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシステム、発電用システム、燃料製品の製造方法及び燃料製品は、可燃性廃棄物を再利用して再生可能エネルギーとして活用する大変優れたものであり、更に、本発明の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム、発電用システム、燃料製品の製造方法及び燃料製品によれば、以下に示す効果を達成することができる。
(1)所定の処理拠点で用いられる各可燃性廃棄物を処理して得られる各燃料基材を調整することにより、燃料製品の発熱量、塩素含有量及び硫黄含有量等の品質規格に合致するようにでき、しかも、この品質をより均質化(ばらつきの少ない)した燃料とすることができる。
(2)前記課題は、「可燃性廃棄物」を処理すべき廃棄物としてとらえ、処理を主眼に置いていることから発生する問題であり、本出願発明の内容のように、新たな視点すなわち、可燃性廃棄物をカーボンニュートラルな「国産バイオマス燃料の原料」として捉えなおし、社会的に効率よくエネルギーを得るために、それら可燃性廃棄物を原料として「国産バイオマス燃料を製造するために必要な加工」をすることで、解決することができる。
地球温暖化防止対策として期待されるバイオマス発電については、その燃料となるバイオマスが国内木材等では十分に賄えず、海外からの輸入品に頼っている状況であり、価格が割高になるだけでなく、海外からの輸送時に発生する二酸化炭素の発生も問題となっている。
本方法をもって、可燃ごみ処理の課題を解決し、バイオマス発電の抱える課題(安価で質・量ともに安定した国産燃料の確保)も解決することで、社会のカーボンニュートラルを広く強力に推し進めることが可能となる。
また、本発明によれば、「可燃性一般廃棄物」及び「可燃性産業廃棄物」のどちらか一方を含む可燃性廃棄物に含まれる有機性成分の燃料となる成分の全て、又はプラスチックを除いた場合はその残りである大部分を再利用して再生可能エネルギーとして有効に活用することができ、更にカーボンニュートラルな燃料としても活用することができる。特に可燃性一般廃棄物を含む場合はその効果をより高めることができる
更に、前記可燃性廃棄物が前記可燃性産業廃棄物からなる場合、又は前記一般廃棄物に前記可燃性産業廃棄物が含まれる場合、前記可燃性産業廃棄物中に含まれる有機性可燃成分の全てを再利用して再生可能エネルギーとして有効に活用することができる。また、ここに含まれる有機性可燃成分の全部又は多くが植物由来及び動物由来等の自然由来のときは、カーボンニュートラルな燃料として活用することができる。
【0013】
(3)また、「バイオマス燃料を製造するために必要な加工」とは、求められる有効成分(発熱量)を高め、望ましくない成分(水分・塩類等)を除外し、効率よく発電等の利用ができる品質の安定した燃料に加工する方法である。
例えば水分についていえば、事前に可燃性廃棄物を乾燥することで、水分による弊害を排除し、発熱量を向上させることができる。この乾燥を行う温度は廃棄物焼却のように800℃等の高温である必要はなく、常圧下でも100℃から150℃程度までで十分であり、減圧下で乾燥を行う際には50℃から150℃までで十分であり乾燥によるエネルギー消費を抑えることができるとともに、乾燥時に発生するガスは水蒸気のみであり、高額な排ガス処理設備も必要としない。また、周知の「油温減圧乾燥」等の乾燥効率の高い方法が望ましいが、排熱の利用等、状況に応じて乾燥方法の選択を行うことができる。
【0014】
(4)更に、塩類についていえば、可燃性廃棄物に含まれる、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の可溶性塩類を事前の水洗により、洗浄水側に溶出させて除去することができる。 また、事前に可燃ごみを破砕する場合は、効率よく水洗除去を行うことができるので、好ましい。尚、この洗浄水との接触方法は、特に限定されない。また、洗浄脱塩後の脱水処理も特に方法の限定はない。
更に、燃料化を前提とした可燃ごみを水洗することは、通常であれば、発熱量の低下を招く懸念があるが、本システム及び本製造方法では、その後に乾燥による水分除去を行うため問題とならない。発生する水洗水は、別途処理が必要となるが、可燃ごみのように固体ではないため、焼却処理の必要はなく、下水処理のような生物処理で十分であり、処理時の二酸化炭素発生量もわずかで済むこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】処理拠点において、原料となる可燃性廃棄物をそれぞれの発熱量、含有塩類濃度に応じて分別し、各々から製造された燃料基材を、発熱量、含有塩類濃度等の製品規格に合致するように配合混合したものを利用拠点に搬送し再生可能エネルギー燃料として利用するシステムを示すフロー図である。
【
図2】2つの処理拠点で製造された各燃料基材を1つの利用拠点に搬送しこれらを配合混合して再生可能エネルギー燃料として利用するシステムを示すフロー図である。
【
図3】処理拠点において、原料となる可燃性廃棄物をそれぞれの発熱量、含有塩類濃度に応じて分別し、各々から製造された燃料基材を、発熱量、含有塩類濃度等の製品規格に合致するように配合混合したものを利用拠点に搬送し再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法を示すフロー図である。
【
図4】2つの処理拠点と1つの利用拠点を備え、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0017】
1.可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用するシステム。
本システムの一例として、処理拠点において、原料となる可燃性廃棄物をそれぞれの発熱量、含有塩類濃度に応じて分別し、各々から製造された燃料基材を、発熱量、含有塩類濃度等の製品規格に合致するように配合混合したものを利用拠点に搬送し再生可能エネルギー燃料として利用するシステムを示すフローを
図1に示す。
また、2つの処理拠点で製造された各燃料基材を1つの利用拠点に搬送しこれらを配合混合して再生可能エネルギー燃料として利用するシステムを示すフロー図を
図2に示す。
本発明は可燃性廃棄物を再生可能エネルギー源として利用するシステムであって、
前記可燃性廃棄物である可燃性廃棄物Aを処理拠点において破砕する破砕手段11と、
前記破砕手段により破砕された破砕物を前記処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄手段12と、
前記洗浄手段により洗浄された洗浄物を前記処理拠点において脱水する脱水手段13と、
前記脱水手段により脱水された脱水物を前記処理拠点において乾燥する乾燥手段14と、
前記乾燥手段により乾燥された乾燥物である燃料基材Cを可燃性廃棄物Aと異なる発熱量、含有塩類濃度を持つ可燃性廃棄物Bを同様に加工した燃料基材Dと所定の燃料規格に合致させるように配合混合手段16で配合混合し燃料製品Eとし、利用拠点に搬送する搬送手段15と、
搬送された前記燃料製品Eを前記利用拠点において使用する燃焼手段17、を備えることを特徴とする。
【0018】
(1)可燃性廃棄物A、B
前記可燃性廃棄物は、「可燃性一般廃棄物」と「可燃性産業廃棄物」の総称であり、どちらか一方でも、両者の混合したものであってもかまわない。
前記可燃性一般廃棄物は、通常、紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類を含む。前記以外に、金属類及び無機物類の異物並びにその他のものを含むことができる。前記紙類、繊維類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類は、原則、動植物由来ゴミであるためバイオマス系廃棄物であり、燃料として利用する際にはカーボンニュートラルな燃料となる。プラスチック類の多くは、汚れが付着した容器やプラスチック以外の物との複合材、ごみ袋等により構成され、これは通常、石油系材料からなるため非バイオマス系廃棄物であるが、廃棄物から作られたリサイクル燃料については、単純焼却を回避し化石燃料の代替となることで、二酸化炭素の排出削減となるので、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」においてもカーボンニュートラルな燃料として認められている。また、植物等の天然由来の原料から作られるプラスチックであれば、バイオマス系廃棄物であり、それを原料として製造される燃料は、カーボンニュートラルな燃料となる。
【0019】
前記「可燃性産業廃棄物」は、可燃性である有機成分を含む廃棄物であり、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物のみならず、その他の有機化合物等を製造又は加工等を行う工場等から排出される可燃性産業廃棄物をも含む。
前記バイオマス由来の可燃性産業廃棄物とは、動植物由来、自然由来及びそれらを原料とした食品等の加工製品由来の可燃性廃棄物をいい、例として、製紙スラッジ、木材加工後のおがくず・端材、食品製造から発生する野菜くず・肉・魚、お茶がら、コーヒーがら、ジュース搾りかす、焼酎かす、搾油後の搾りかす、豆腐のおから、売れ残りの弁当及び動物死骸等、更に、動植物油を扱う事業から生じる動植物油及びそれらのリサイクル油等が挙げられる。前記その他の可燃性産業廃棄物の例としては、金属加工工場等から発生する切削廃油、焼入れ・焼き鈍し等の熱処理廃油、自動車ディーラーや車両整備工場等から発生するエンジンオイル廃油、各種機械整備等で発生する油圧作動廃油やギアー廃油、食品製造工場等から発生する廃食用油及び化学品製造工場や電子部品製造工場等から発生するアルコール類やアミン類、脂肪酸類等を含む廃棄物等が挙げられる。前記アルコール類やアミン類、脂肪酸類等を含む廃液のうち低級アルコール類や低級アミン類及び低級脂肪酸類の廃棄物は発熱量が少ないものの例であり、その他は発熱量が多いものの例である。
【0020】
前記処理拠点での処理対象となる可燃性一般廃棄物中の各成分ゴミの割合は、通常、全体を100重量部(以下、「部」という。)とすると、紙類が32~37部(平均的には35部)、繊維類が4~8部(平均的には6部)、プラスチック類が19~23部(平均的には21部)、生ごみが17~21部(平均的には19部)、剪定枝・草木・花卉類が17~21部(平均的には19部)程度である。従ってこの点において各ゴミ成分の割合、更にそのごみの最終的に燃料として燃焼させる場合の品質(燃焼製品品質)(例えば発熱量、塩素含有量、硫黄含有量、ナトリウム及びカリウム成分含有量、灰分全体の含有量、粒度等)の安定性を確保するために、分別可能な範囲で分別したうえで加工、配合することができる。また、異なる処理拠点からの可燃性廃棄物や加工した燃料基材の配合等を行うことができる。
一般に、生ごみに比べ剪定枝・草木・花卉類は、最終的な燃料基材にした際の発熱量が高く、含有塩類濃度が低いため、分別したうえで、配合割合をコントロールすることで燃料製品に必要な品質を得ることができる。
同様に、可燃性産業廃棄物は、その排出内容により、発熱量や含有塩類濃度が異なるため、あらかじめ、それら燃料加工に必要な成分、性状の情報を把握したうえで、分別し、他の可燃性廃棄物と配合することにより安定した品質の燃料製品とすることができる。
【0021】
また、当初の処理前の可燃性一般廃棄物中の各成分ゴミ(紙類、繊維類、プラスチック類、生ごみ及び剪定枝・草木・花卉類等)の含有割合は特に限定されず、収集する家庭、季節及び地域等により異なる。通常、処理拠点においては、そのエリア内での各家庭のごみが集荷場に集められこれらを処理施設に集めて、その処理拠点での処理用廃棄物とする。従って、処理拠点が複数ある場合は、それぞれのゴミの内容、性状が大きく異なる場合がある。安定した品質の燃料製品を得るために、各処理拠点で製造した燃料基材F、Gを利用拠点または、他の処理拠点において配合を行うことができる。
例えば、可燃性廃棄物Aから適量のサンプルを採取し、燃料基材C又はFを試作し、同様に可燃性廃棄物Bから燃料基材D又はGを試作した上で、それぞれの燃料基材の発熱量、含有塩類濃度を分析評価し、燃料製品規格に合致する配合比率を選定し、燃料製品の品質を調整することができる。この場合、
図1及び
図3に示すように処理拠点が1つの場合、その処理拠点にて、可燃性廃棄物の種類や回収地域又は回収日時等が異なるロットの可燃性廃棄物A、Bの各燃料基材C,Dの配合により調整することができる。この調整により発熱量、塩素含有量及び硫黄含有量等の品質規格に合致するようにできるが、これに限らず、例えば、この品質に合致する燃料基材同士であってもこれらを配合して品質がより均質化した燃料(ばらつきの少ない燃料)とすることができるし、増量することにより搬送効率を高めることができる。また、
図2及び
図4に示すように、処理拠点2,3が異なる可燃性廃棄物A、Bの各燃料基材F,Gの品質が異なり規格に合致しない場合、それらを配合して調整することができる。更に、
図1及び
図3の燃料基材Dの代わりに、又は
図2及び
図4の燃料基材Gの代わりに発熱量の多い油類を用いて発熱量を調整することもできる。その場合、1つの処理拠点の場合その処理拠点にて燃料製品を製造してそこで燃焼させることもできるし、他の利用拠点まで搬送して用いることもできる。尚、前記油類を配合しない場合においても、1つの処理拠点のときその処理拠点にて燃料製品を製造してそこで燃焼させることもできるし、他の利用拠点まで搬送して用いることもできる。
【0022】
また、前記一方の燃料基材C又はFがその燃料品質規格に合致している場合は他の燃料基材D又はGを配合することなくそのまま燃料製品とすることができる。更に、その一方の発熱量が多かった場合はそれが少ない他の燃料基材を配合して発熱量規格に合致させることができる。また、この配合割合は、全量同士でもよいし、規格に合致するような配合割合とすることもできる。
また、前記の調整は、塩素含有量、硫黄含有量についても同様に調整することができる。
更に、燃料規格の全ての品質(発熱量、塩素含有量、硫黄含有量、粒径等)に合致するように配合することが好ましい。この粒径については脱水乾燥粉末をふるい手段(装置)にかけて所定範囲の粒径とすることができる。
また、可燃性産業廃棄物由来の2つの異なる燃料基材(例えばC,D)において、燃料基材Cと他の燃料基材Dとの配合により発熱量及び塩素、硫黄の含有量を前記のようにして調整できる。例えば、前記に示すような発熱量が少ない可燃性産業廃棄物由来の発熱量が少ない燃料基材と、前記に示すような発熱量が多い可燃性産業廃棄物由来の発熱量が多い燃料基材と、を配合して発熱量が品質規格に合致するようにすることができる。更に、可燃性産業廃棄物由来の燃料基材と可燃性一般廃棄物由来の燃料基材との配合により発熱量及び塩素、硫黄の含有量を前記のようにして調整できる。
【0023】
前記可燃性廃棄物は、「バイオマス由来の可燃性産業廃棄物」及び「鉱物油由来の可燃性産業廃棄物」の各可燃性産業廃棄物の少なくとも1つを含むことができる。
前記「バイオマス由来の可燃性産業廃棄物」は、動植物由来の素材からなるので、燃料に加工することで、バイオマス燃料となるとともに利用時にもカーボンニュートラルである燃料ともなるものである。
また、「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、 廃プラスチック類及びその他政令(第2条)で定める廃棄物をいうとされている。
そして、「バイオマス由来の可燃性産業廃棄物」とは、動植物由来、自然由来及びそれらを原料とした食品等の加工製品由来の可燃性廃棄物をいい、例として、製紙スラッジ、木材加工後のおがくず・端材、食品製造から発生する野菜くず・肉・魚、お茶がら、コーヒーがら、ジュース搾りかす、焼酎かす、搾油後の搾りかす、豆腐のおから、売れ残りの弁当及び動物死骸等、更に、動植物油を扱う事業から生じる動植物油及びそれらのリサイクル油等が挙げられる。
前記「鉱物油由来の可燃性産業廃棄物」は動植物由来でなく鉱物油由来であるのでバイオマス燃料とならないものの、鉱物油系の廃油から作られたリサイクル燃料油、鉱物油由来の合成樹脂、プラスチック類からなる産業廃棄物から作られたリサイクル燃料については、単純焼却を回避し化石燃料の代替となることで、二酸化炭素の排出削減となるので利用時においてカーボンニュートラルな燃料と認められている。
【0024】
(2)各構成手段
前記破砕手段は、前記可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する手段である。
破砕するものであればよく、特に限定されない。
その例としては、一軸式破砕機、二軸式破砕機、四軸式破砕機、ハンマーミル等が挙げられ、このうち二軸式破砕機が好ましい。特に可燃性産業廃棄物中に破砕すべき固体形状物等が存在しない場合は、この破砕手段を省略することもできる。
前記「処理拠点」とは、可燃性廃棄物を処理する拠点(場所)であり、多くは、一般ごみの収集拠点であることが多い。しかし、それに限らず各地等の各処理用廃棄物を収集してそれらをまとめて処理する場合はその処理をする拠点とすることができる。
【0025】
前記洗浄手段は、前記破砕手段により破砕された破砕物を処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する手段である。
前記洗浄手段は被洗浄物を浸漬し一定時間後に洗浄水を抜去するか又はこの被洗浄物を引き上げる等のものでも良いし、被洗浄物に放水又は噴霧する手段でも良い。
前記「水溶液」とは水に溶解する水溶性成分(例えば水溶性アルコール、アルカリ成分(水酸化ナトリウム水酸化、カリウム等)又は酸性成分(塩酸、硫酸等)等を溶解させたものである。この水又は水溶液にて溶解させたい成分の種類により又はpH調整したい場合により、適宜、選択することができる。
可燃性廃棄物に含まれる塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の塩類は、焼却処理時に腐食性ガス発生の要因となり、高価な耐食部材を必要とし設備の高額化を招いているだけでなく、腐食防止のための低温稼働を余儀なくされるため、廃棄物焼却炉に発電を併設するいわゆるゴミ発電において、燃焼温度を引き上げて発電効率を上げることができない。また、含有塩類のうち塩素はダイオキシン生成の要因となり、硫黄は亜硫酸ガス発生の要因となるため、排ガス処理施設の増大と施設費用の高額化を招いている。
しかし、可燃性廃棄物から燃料を得るための加工手段である前記洗浄手段により、可燃性廃棄物に含まれる、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の可溶性塩類を事前の水洗により、洗浄水側に溶出させで除去することができる。
効率よく水洗除去を行うために、事前に可燃ごみを破砕することが望ましい。洗浄水との接触方法は、特に限定されない。また、洗浄脱塩後の脱水処理も特に方法の限定はない。
燃料化を前提とした可燃ごみを水洗することは、通常であれば、発熱量の低下を招く懸念があるが、本システムでは、その後に乾燥による水分除去を行うため問題とならない。発生する洗浄水は、別途処理が必要となるが、可燃ごみのように固体ではないため、焼却処理の必要はなく、下水処理のような生物処理で十分であり、処理時の二酸化炭素発生量もわずかで済むことができる。
【0026】
前記脱水手段は、前記洗浄手段により洗浄された洗浄物を処理拠点において脱水する手段である。
前記脱水手段により、含有塩類を溶解した水分を効率的に除くことで、残留する塩類濃度を低減させるとともに、これにより被対象物の重量及び容量を低減させることができ、次の乾燥工程を効率的に行うことができる。この脱水手段としては、フィルタープレス、スクリュープレス、ベルトプレス及び遠心脱水等を挙げることができる。
尚、破砕、洗浄、脱水の手段については、最終的な燃料基材とする際に必要な塩類濃度まで低減できればよく、その順番や、方法に限定はない。例えば、水中で破砕する方法や、破砕中に水を噴霧し、破砕と洗浄を同時に行う方法であってもよい。また、塩類濃度低減の目的のために、各手段を繰り返し用いてもよい。例えば、対象となる可燃性廃棄物の性状によっては、洗浄により外部に付着した塩類や異物を除いたうえで、破砕し、その後、破砕より露出した内部の塩類を再度洗浄によって取り除くこともできる。
【0027】
前記乾燥手段は、前記脱水手段により脱水された脱水物を処理拠点において乾燥する手段である。前記乾燥手段により被対象物の重量を低減させることができる。
この乾燥手段としては、加熱手段、減圧加熱手段及び油温乾燥手段(減圧してもしなくても良い。)を挙げることができる。この乾燥手段としては、周知の「油温減圧乾燥」等の乾燥効率の高い手段が望ましいが、排熱の利用等、状況に応じて乾燥方法の選択を行うことができる。
また、これらの加熱温度も特に限定されないが、加熱エネルギーの節約及び水分の減少により重量及び容量の低減を図れば良いという観点から、100~150℃程度までの低温が好ましい。
可燃性廃棄物は通常80%程度の水分を含み、発熱量が2,000cal/g程度と少ないので、一般的なバイオマス発電燃料である木チップ(4,000cal/g)や一般的な発電燃料である石炭等(7,000cal/g)の様に効率的な発電を行うことができない。また、それら含有する水分は、廃棄物焼却処理の工程では水蒸気となり、そのガスボリュームが大量となるため、巨大な排ガス処理設備を必要とし、焼却処理施設の増大、費用の増加を招いている。従って、前記乾燥脱水手段を備えてこれを実践することは大変有用である。
本発明における前記乾燥手段は、前記に説明するように、事前に可燃性廃棄物を乾燥することで、水分による弊害を排除し、発熱量を向上させるものである。
前記乾燥脱水を行う温度は廃棄物焼却のように800℃等の高温である必要はなく、100℃から200℃程度(好ましくは常圧下でも100℃から150℃程度までが好ましく、減圧下で乾燥を行う際には50℃から150℃までが好ましい。)で十分であり、乾燥によるエネルギー消費を抑えることができるとともに、乾燥時に発生するガスは水蒸気のみであり、高額な排ガス処理設備も必要としない。
前記乾燥手段としては、乾燥効率の高い油温減圧乾燥等が望ましいが、これに限定されず、排熱の利用等、状況に応じて前記に示す乾燥手段の選択を行うことができる。
【0028】
前記搬送手段は、前記乾燥脱水手段により乾燥脱水された乾燥脱水物である燃料基材Cを利用拠点に搬送する手段である。この燃料基材C,D(更に後記するF,Gも)の形状は特に限定されず、固体状(粉末状、粒状、成形品状を含む。)でも液体状でも良い。
前記搬送手段は、搬送ができる手段であれば適用でき、特に限定されないが、車両(車及び鉄道等)により運搬する手段、パイプラインで直送する運送手段、コンベアで搬送する手段等が挙げられる。
【0029】
また、前記処理拠点は1つに限らず、2以上とすることができる。尚、前記処理拠点が2つの場合のフローを
図2に示す。前記利用拠点の数も特に限定されないが、通常、1つであり、複数の各処理拠点2、3から搬送された各燃料基材F、Gを混合する配合混合手段16を備えることができる。
前記可燃性一般廃棄物は、各処理拠点即ち各地域の実情により、その可燃性一般廃棄物の発熱量が各々異なったり、前記紙類、前記繊維類、前記プラスチック類、前記生ごみ及び前記剪定枝・草木・花卉類、並びに、可燃性一般廃棄物、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の各配合割合が異なったりしていることが多い。即ち、発熱量が少ない前記紙類及び前記繊維類の配合割合が多い廃棄物の場合、これに、その発熱量が多い前記生ごみ及び前記剪定枝・草木・花卉類の割合が多い廃棄物、及び/又は、発熱量が多いバイオマス由来の可燃性産業廃棄物(食品製造から発生する野菜くず・肉・魚、ジュース搾りかす、焼酎かす、搾油後の搾りかす、豆腐のおから、売れ残りの弁当等)及び/又は鉱物油由来の可燃性産業廃棄物を配合して一定以上の発熱量(4,000cal/g以上)を安定的に確保できるものとすることができる。この場合は、木チップ同様にバイオマス発電所で用いる燃料として代替利用ができる。さらに必要な発熱量を引き上げた配合とすることで高発熱量(7,000cal/g以上)を確保した燃料は石炭に代わる発電用燃料として有効に利用できることとなる。
前記バイオマス由来の可燃性産業廃棄物を配合する場合はバイオマス燃料となり、前記「鉱物油由来の可燃性産業廃棄物」を配合する場合であってもカーボンニュートラルな燃料となり、いずれも大変、社会的に有用なものとなる。尚、これらの特有の産業廃棄物に限らず、前記に示すような有機性の可燃性廃棄物を含めることもできる。
【0030】
前記洗浄手段を備えることにより、水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分(特に灰分)、及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整することができる。例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウム等)等の水溶性塩成分、更に塩化ナトリウム及び塩化カリウム等の塩素成分、硫酸ナトリウム等の硫黄成分を低減又は除去することができる。これにより燃焼させた場合の燃焼炉の被害を低減できるし、また安全な排気ガスとすることもできる。
また、塩素成分及び硫黄成分が非水溶性成分由来の場合は、例えば前記水又は水溶液による洗浄手段にて除去しにくいので、例えば、分析の結果塩素成分及び硫黄成分を多く含む燃料基材に、分析の結果この含有がないか又はその含有量が少ない他の燃料基材を配合して調整することができる(
図1~4参照)。
【0031】
更に、可燃性廃棄物に含まれる塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の塩類は、焼却処理時に腐食性ガス発生の要因となり、高価な耐食部材を必要とし設備の高額化を招いているだけでなく、腐食防止のための低温稼働を余儀なくされるため、廃棄物処理を目的とした廃棄物焼却炉を使って発電を行ういわゆるゴミ発電においても燃焼温度を引き上げて発電効率を十分に上げることができない場合がある。また、含有塩類のうち塩素はダイオキシン生成の要因となり、硫黄は亜硫酸ガス発生の要因となるため、排ガス処理施設の増大と施設費用の高額化を招くことが考えられる。
しかし、前記の本発明の前記手段を用いれば、以下の効果が得られて大変有用である。
可燃性廃棄物に含まれる、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の可溶性塩類を事前の水洗により、洗浄水側に溶出させで除去することができる。効率よく水洗除去を行うために、事前に可燃ごみを破砕することが望ましい。洗浄水との接触方法は、特に限定されない。また、洗浄脱塩後の脱水処理も特に方法の限定はない。燃料化を前提とした可燃ごみを水洗することは、通常であれば、発熱量の低下を招く懸念があるが、本システムでは、その後に乾燥による水分除去を行うため、そのような問題が生じにくい。発生する水洗水は、別途処理が必要となるが、可燃ごみのように固体ではないため、焼却処理の必要はなく、下水処理のような生物処理で十分であり、処理時の二酸化炭素発生量もわずかで済むという利点がある。
【0032】
前記発熱量は特に限定されず、目的及び用途等により適宜のものとすることができる。
この発熱量を4,000cal/g以上(又は4,000~10,000cal/g程度,好ましくは6,000以上、9,000cal/g以下等)とすることができる。このようにした場合は、発電燃料としても利用でき、しかも、バイオマス燃料又は発電利用にもカーボンニュートラルな燃料としての利用となるので環境にもやさしい有用な発電燃料となる。
【0033】
前記可燃性廃棄物のうち、可燃性産業廃棄物については、発生される内容、工程によって発熱量が各々異なる。
また、可燃性一般廃棄物の発熱量も事業系と一般家庭による内容の違いや、季節等によっても異なり一定しないため、「来たもの順に受け入れ処理を行う」現行の処理システムでは、一定の稼働率や、最適な発電効率を追求することができず、低稼働率を前提とした余剰能力が必要となり、施設の増大、高額化と発熱量の無駄、低効率発電を招くこととなる。
それに対し、本発明では、前記紙類、前記繊維類、前記プラスチック類、前記生ごみ及び前記剪定枝・草木・花卉類、並びに、可燃性一般廃棄物、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の各配合割合を調整して発熱量のばらつきを調整することができる。
また、一定した発熱量、望ましくはバイオマス発電向けの代替燃料として利用できる4,000cal/g以上の発熱量(又は4,000~10,000cal/g程度,好ましくは6,000以上、9,000cal/g以下等)、さらに望ましくは石炭火力発電等の高効率発電燃料に求められる7,000cal/g以上の発熱量を安定して備えるために、前述の乾燥と合わせ、発熱量変動を把握したうえで、不足分を、高い発熱量を備えた油によって補い安定化を図ることができる。この使用する油は、カーボンニュートラルの推進のために動植物油由来のものが望ましいが、我が国では「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」において、鉱物油由来廃油から作られたリサイクル燃料油についても、"単純焼却を回避し化石燃料の代替となることで、二酸化炭素の排出削減となる"ことからカーボンニュートラルな燃料と認められており、鉱物油由来の廃油から作られたリサイクル燃料油でも構わない。
更に、前記乾燥手段において、油温減圧乾燥手段を用い、その付着した利用油をそのまま発熱量の調整に用いることは、工程の効率化から望ましいが、この手段に限るものではない。
【0034】
また、可燃性廃棄物をその発熱量のみならず含有塩類等についても事前に把握し、分別のうえ、適切な原料配合により安定した製品品質を確保することも有効である。例えば、一般廃棄物のうち、草木類は乾燥により有効な発熱量を持ち、塩類含有も少ないため、事前分別のうえで他の可燃性廃棄物との配合することにより安定した発熱量の製品とすることができる。配合して混合する配合混合工程は、乾燥の前であっても、乾燥後であってもかまわない。可燃性産業廃棄物を原料としての利用する際は、特に、ものによって性状が大きく異なるため、事前の性状把握とそれに応じた分別と配合が重要でありまた有効となる。
前記のように発熱量を4,000cal/g以上(又は4,000~10,000cal/g程度,好ましくは6,000以上、9,000cal/g以下等)に調整し、更に、水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整する場合は、これらの両者、即ち、発熱量を4,000cal/g以上(又は4,000~10,000cal/g程度,好ましくは6,000以上、9,000cal/g以下等)にするとともに前記塩分(灰分)及び有害元素成分(塩素成分、硫黄成分等)をなくすか又は低減されたものとすることができる。従って、例えば発電燃料等の燃料としての品質規格に合ったバイオマス燃料又はカーボンニュートラルな燃料を提供できる。
【0035】
前記搬送手段は、前記処理拠点にて製造された前記燃料基材を利用拠点まで搬送する手段である。この搬送手段としては、車両(車及び鉄道等)により運搬する手段、パイプラインで直送する運送手段、コンベアで搬送する搬送手段等が挙げられる。
【0036】
前記配合手段は、前記処理拠点内で、それぞれ製造した燃料基材を配合し混合する手段である。
前記処理拠点は1つとしても良いが、2以上とし、且つ前記利用拠点は1つとすることができる。前記各処理拠点において、製造可能な燃料基材の発熱量等の性状が異なる場合にはそれぞれの処理拠点から搬送された各燃料基材を配合し混合することができる。
前記利用拠点は、前記複数の各処理拠点から搬送された各燃料基材を配合し混合する混合手段を備えることもできる。この混合手段は特に限定されず、所定容器内に複数の燃料製品を投入しこれらを撹拌機等で混合するもの等とすることができる。
【0037】
前期各手段についてはシステムとしての例示であり、設備コストや必要とされる処理能力などの条件に応じて、複数の処理手段を並列設置し、分別した可燃性廃棄物ごとに専用の処理手段として用いてもよいし、同じ処理手段を分別した可燃性廃棄物ごとに使い分けたうえで、それぞれから得られる燃料基材を分別貯留したうえで、配合混合してもよい。
更に、分別した可燃性廃棄物ごとに必要とされる手段が異なる場合には、不要な処理手段を省いたり、処理手段の途中から合流・配合のうえ一緒に加工を行うこともできる。
【0038】
現行の焼却処理施設の老朽化への対応と、効率化を図るため、複数の自治体をまとめ焼却処理施設を統合大規模化するための「処理施設広域化計画」が全国で進められている。
上記のように課題を抱えた現行システムのまま拠点の統合を図ることで、各家庭から収集した可燃ごみの輸送距離が伸び、輸送コストだけでなく、輸送時に発生する二酸化炭素の増大を招き、地球温暖化対策に逆行することになりかねない。
また、新たな焼却施設の設置については、ダイオキシン等排ガスの健康被害懸念からも当該予定地の地域住民の反発も強く、現行システムの延長上では解決の見通しが立っていない地域も多い。
一方、前記処理拠点は1つとしても良いが、2以上とし、且つ前記利用拠点は1つとすることができる。即ち、これにより処理施設広域化を図ることができる。
また、水分除去により、含水率80%の可燃ごみを水分2%まで乾燥した場合、重量は元の可燃ごみの約5分の一程度に減量する。従って、地域ごとに「燃料化加工施設」を設置し、燃料加工によって減量した製品である「バイオマス燃料」をバイオマス発電施設等の燃料需要施設に移送する"ハブアンドスポーク方式"を具体化することで、「焼却処理施設広域化計画」のように、可燃ごみの輸送長距離化によるコストの増加や、無駄な二酸化炭素排出量の増加を防ぐことができる。更に、燃料化加工時には、ダイオキシン類等の有害ガスの発生もなく、バイオマス発電所等の燃料利用施設においても、塩類除去加工によりそれら懸念が払しょくされるため、立地に対する住民の懸念も解消できる。
【0039】
2.可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する発電用システム
本システムは発電用に用いられるものである。
この発電システムは、可燃性廃棄物を原料として加工手段の組み合わせによって得られる燃料製品の発熱量を4,000cal/g以上(又は4,000~10,000cal/g程度,好ましくは6,000以上、9,000cal/g以下等)にするとともに前記塩分(灰分)及び有害元素成分(塩素成分、硫黄成分等)をなくすか又は低減されたものとすることができ、更に、発電燃料等の燃料としての品質規格に合ったバイオマス燃料又はカーボンニュートラルな燃料とすることができるので、可燃性廃棄物処理システムとしても国産の再生可能エネルギーを利用するシステムとしても大変優れたものである。
【0040】
3.可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法。
本製造方法の一例として、処理拠点において、原料となる可燃性廃棄物A、Bをそれぞれの発熱量、含有塩類濃度に応じて分別し、各々から製造された燃料基材C、Dを、発熱量、含有塩類濃度等の製品規格に合致するように配合混合したものを利用拠点に搬送し再生可能エネルギーとして利用する燃料製品Eの製造方法を
図3に示す。
また、2つの処理拠点2,3と1つの利用拠点4を備え、それぞれの処理拠点で製造した燃料基材F、Gを利用拠点4に搬送し、配合混合したものを再生可能エネルギーとして利用する燃料製品Hの製造方法を
図4に示す。
更に、前記「システム」において説明しているように、
図3の燃料基材Dの代わりに、又は
図4の燃料基材Gの代わりに発熱量の多い油類を用いて発熱量を調整することもできる。その場合、1つの処理拠点の場合その処理拠点にて燃料製品を製造してそこで燃焼させることもできるし、他の利用拠点まで搬送して用いることもできる。また、前記油類を配合しない場合においても、1つの処理拠点のときその処理拠点にて燃料製品を製造してそこで燃焼させることもできるし、他の利用拠点まで搬送して用いることもできる。
本発明の、可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品の製造方法は、前記可燃性廃棄物を処理拠点において破砕する破砕工程と、
前記破砕工程により破砕された破砕物を前記処理拠点において水又は水溶液にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程により洗浄された洗浄物を前記処理拠点において脱水する脱水工程と、
前記脱水工程により脱水された脱水物を前記処理拠点において乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥手段により乾燥された乾燥物である燃料基材Cを
前記可燃性廃棄物Aと異なる発熱量、含有塩類濃度を持つ可燃性廃棄物Bを同様に加工した燃料基材Dを所定の燃料規格に合致させるように前記処理拠点において配合混合手段で配合混合し燃料製品Eとし、利用拠点に搬送し、搬送された前記燃料製品Eを前記利用拠点において使用する燃焼工程と、を備えることを特徴とする。
【0041】
前記破砕する前に前記プラスチック類を分別することができる。
分別したプラスチック類をマテリアルとして再利用する場合には、新規のプラスチック消費の削減ができ、ひいては原料である石油資源の消費が削減されるため好ましい。
また、分別したプラスチック類を、前述の加工工程を経て燃料基材としたうえで、安定した品質の燃料製品を製造するために配合することができる。
前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後又は前記乾燥する後に異物除去工程を備えることができる。
前記洗浄工程は、前記破砕する前に備える、前記破砕と同時に、又は前記破砕する後の少なくとも一方に備えることができる。
前記破砕する前、前記破砕する後、前記洗浄する後、前記脱水する後、前記乾燥する後、配合混合する前、又は前記燃焼工程を用いて燃焼する前に動物油、植物油、動植物油系廃油、鉱物油系廃油及び鉱物油系廃油から作られたリサイクル燃料油の少なくとも1つを配合することができる。
前記可燃性廃棄物は、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の少なくとも1つを含むことができる。
また、例えば
図3に示すように1つの処理拠点1において製造された燃料製品Eをこの処理拠点1にて使用することもできるし、これを他の利用拠点まで搬送しここで使用することもできる。更に、例えば燃料基材Cを分析したところ燃料品質に合致する場合は、他の燃料基材Dと配合混合することもなくそのまま燃料として使用できる。
【0042】
前記可燃性一般廃棄物のうちの、発熱量並びに含有塩類濃度が各々異なる、前記紙類、前記繊維類、前記プラスチック類、前記生ごみ及び前記剪定枝・草木・花卉類、並びに、可燃性一般廃棄物、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の各配合割合を調整して発熱量並びに含有塩類濃度を調整した燃料製品を配合する配合工程を備えることができる。これにより、前記システムにおける説明と同様の効果を備える。
前記処理拠点は2以上であり、前記利用拠点は1つであり、前記各処理拠点から搬送された各燃料製品を配合する配合工程を備えることができる。これにより、前記システムにおける説明と同様の効果を備える。
即ち、また、可燃性廃棄物をその発熱量のみならず含有塩類等についても事前に把握し、分別のうえ、適切な原料配合により安定した製品品質を確保することも有効である。
更に、水溶性塩分及び水溶性塩素分を除去して前記水溶性塩分及び前記水溶性塩素分の各含有量を調整する場合は、これらの両者、即ち、配合調整後の発熱量を4,000cal/g以上(又は4,000~10,000cal/g程度,好ましくは6,000以上、9,000cal/g以下等)にするとともに前記塩分(灰分)及び有害元素成分(塩素成分、硫黄成分等)をなくすか又は低減されたものとすることができる。従って、例えば発電燃料等の燃料としての品質規格に合ったバイオマス燃料又は利用時にカーボンニュートラルな燃料を提供できる。これにより適切な可燃性廃棄物の処理と、国産バイオマス燃料の提供による脱炭素社会の構築を図ることができる。
また、可燃ごみの輸送長距離化によるコストの増加や、無駄な二酸化炭素排出量の増加を防ぐことができる。更に、燃料化加工時には、ダイオキシン類等の有害ガスの発生もなく、バイオマス発電所等の燃料利用施設においても、塩類除去加工によりそれら懸念が払しょくされるため、立地に対する住民の懸念も解消できる。
本「製造方法」における発明即ち技術事項の説明は、前記「システム」における説明を「システム」を「工程」に実質置き換えて全て適用できる。
【0043】
4.燃料製品
本可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品は前記製造方法に示される各発明により製造されたものである。
また、他の発明の可燃性廃棄物を再生可能エネルギーとして利用する燃料製品は、可燃性一般廃棄物中に含まれる紙類の乾燥脱水粉末と、可燃性一般廃棄物中に含まれる繊維類の乾燥脱水粉末と、可燃性一般廃棄物中に含まれるプラスチック類の乾燥脱水粉末と、可燃性一般廃棄物中に含まれる生ごみの乾燥脱水粉末と、可燃性一般廃棄物中に含まれる剪定枝・草木・花卉類の乾燥脱水粉末と、含むものとすることができる。
前記他の発明の燃料製品は、動物油の乾燥脱水粉末、植物油の乾燥脱水粉末、動植物油系廃油の乾燥脱水粉末及び鉱物油系廃油の乾燥脱水粉末の少なくとも1つの乾燥脱水粉末を含むものとすることができる。
また、前記他の発明の燃料製品は、バイオマス由来の可燃性産業廃棄物の乾燥脱水粉末及び鉱物油由来の可燃性産業廃棄物の乾燥脱水粉末の少なくとも1つの乾燥脱水粉末を含むものとすることができる。
前記本燃料製品又は前記他の本燃料製品は発電用に用いられるものとすることができる。
前記本燃料製品又は前記他の本燃料製品の形状は特に限定されず、粉末形状でも良いし、これを成形して得られたペレット状、ブロック状等の成形品であっても良い。この成形は圧縮成形等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は燃料製品、特に発電用燃料製品に利用される。更に、本燃料製品は地球にやさしいバイオマス燃料又はカーボンニュートラルな燃料に利用される。
また、「可燃性廃棄物」をカーボンニュートラルな「国産バイオマス燃料の原料」として捉えなおし、社会的に効率よくエネルギーを得るために、それら可燃性廃棄物を原料として「国産バイオマス燃料を製造するために必要な加工」をすることで、解決することができる。
更に、本発明は、可燃ごみ処理の課題を解決し、バイオマス発電の抱える課題(安価で質・量ともに安定した国産燃料の確保)も解決することで、社会のカーボンニュートラルを広く強力に推し進めることに利用される。
【符号の説明】
【0045】
1,2,3;処理拠点、4;利用拠点、
11,21;破砕手段、破砕工程、12,22;洗浄手段、洗浄工程、
13,23;脱水手段、脱水工程、14,24;乾燥手段、乾燥工程、
15,25;搬送手段、搬送工程、16;配合混合手段、配合混合工程、
17;燃焼手段、
A,B;可燃性廃棄物、C,D,F,G;燃料基材、E,H;燃料製品。