(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113621
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】衣服用温度調節装置及び衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20240815BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20240815BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 101
A41D13/005 103
A41D13/05 156
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018765
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 量弘
(72)【発明者】
【氏名】仲田 幸博
(72)【発明者】
【氏名】佐古 かがり
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC13
3B011AC17
3B011AC18
3B011AC21
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC13
3B211AC17
3B211AC18
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】ペルチェ素子を有する温調部材を衣服に対して容易に装着することができる衣服用温度調節装置を提供すること。
【解決手段】電流が流れることで発熱又は吸熱するペルチェ素子12を有する温調部材10と、ペルチェ素子12を有する温調部材10を保持する保持部材20と、温調部材10を保持する保持部材20に設けられた係止部材31と、衣服に設けられると共に係止部材31が着脱可能に係止される被係止部材32と、を備える構成としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れることで発熱又は吸熱するペルチェ素子を有する温調部材と、
前記温調部材を保持する保持部材と、
前記保持部材に設けられた係止部材と、
衣服に設けられると共に、前記係止部材が着脱可能に係止される被係止部材と、を備える
ことを特徴とする衣服用温度調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載された衣服用温度調節装置において、
前記保持部材は、前記衣服の着用者の動きに追従可能な可撓性を有する
ことを特徴とする衣服用温度調節装置。
【請求項3】
請求項2に記載された衣服用温度調節装置において、
前記保持部材は、長手方向に延びる帯状の部材によって形成され、
前記温調部材は、前記保持部材の長手方向に所定の間隔をあけて複数配置されている
ことを特徴とする衣服用温度調節装置。
【請求項4】
請求項3に記載された衣服用温度調節装置において、
前記保持部材は、前記複数の温調部材の間の位置に、長手方向の長さを変更可能な伸縮機構を有する
ことを特徴とする衣服用温度調節装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載された衣服用温度調節装置において、
前記ペルチェ素子に流れる電流を制御する制御回路と、前記ペルチェ素子に給電するバッテリと、前記制御回路及び前記バッテリを収納した筐体と、を有する電源ユニットを備え、
前記温調部材は、前記筐体の外部でケーブルを介して前記電源ユニットに電気的に接続されている
ことを特徴とする衣服用温度調節装置。
【請求項6】
請求項5に記載された衣服用温度調節装置において、
前記制御回路は、前記ペルチェ素子に流れる電流を間欠的に変化させる
ことを特徴とする衣服用温度調節装置。
【請求項7】
請求項1に記載された衣服用温度調節装置が装着される衣服であって、
着用時に着用者に対向する位置に、前記被係止部材が設けられた
ことを特徴とする衣服。
【請求項8】
請求項7に記載された衣服において、
襟先が線ファスナーを介して開閉可能であって、前記線ファスナーを閉じることで起立する襟を備え、
前記被係止部材は、起立したときに前記着用者の首に対向する前記襟の内側面に設けられている
ことを特徴とする衣服。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載された衣服において、
前記着用者と身頃との間に送風する送風機を装着可能な取付孔が形成されている
ことを特徴とする衣服。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載された衣服において、
前記着用者に臨む身頃内側面に保冷剤又は保温剤を収納可能なポケットが形成されている
ことを特徴とする衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服用温度調節装置及び衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、伝熱部材が一端に固着されたペルチェ素子と、ペルチェ素子の他端に固着された熱伝導部とを有する温調部材を断熱基板によって支持すると共に、断熱基板を介して温調部材を衣服に装着する衣服用温度調節装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ペルチェ素子を衣服の生地に直接埋設し、ペルチェ効果を利用して温度調節を図る衣服が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4918302号公報
【特許文献2】特開2004-263325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の衣服用温度調節装置は、断熱基板の非身体面と衣服との間に、衣服内の空気を流すと共に、衣服に形成された排気孔を介して衣服の外に空気を排出する流路を有している。ここで、衣服用温度調節装置が有する電動ファンが衣服に形成された排気孔に取り付けられており、衣服用温度調節装置は、衣服に対する位置が規定されてしまう。そのため、衣服用温度調節装置を衣服に対して容易に装着することが難しかった。また、ペルチェ素子が生地に埋設された衣服では、ペルチェ素子を予め生地に埋設する必要があり、既存の衣服にペルチェ素子を容易に装着できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ペルチェ素子を有する温調部材を衣服に対して容易に装着することができる衣服用温度調節装置及び衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の衣服用温度調節装置は、電流が流れることで発熱又は吸熱するペルチェ素子を有する温調部材と、前記温調部材を保持する保持部材と、前記保持部材に設けられた係止部材と、衣服に設けられると共に、前記係止部材が着脱可能に係止される被係止部材と、を備える構成とした。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明の衣服は、上記記載の衣服用温度調節装置が装着される衣服であって、着用時に着用者に対向する位置に、前記被係止部材が設けられた構成とした。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明の衣服用温度調節装置及び衣服は、ペルチェ素子を有する温調部材を衣服に対して容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の衣服用温度調節装置を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の温調装置を模式的に示す断面図である。
【
図3】実施例1の温調装置及び保持部材の取付構造を示す説明図である。
【
図5】実施例1の衣服用温度調節部材を衣服に装着した状態を示す要部断面図である。
【
図6】実施例1の衣服用温度調節装置が装着された衣服から排出される空気を示す説明図である。
【
図7】実施例1の衣服用温度調節装置が装着された衣服から排出される空気を示す説明図である。
【
図9】第1変形例の衣服用温度調節装置を示す要部斜視図である。
【
図10A】ペルチェ素子に印加される電圧と時間との関係を示すグラフである。
【
図10B】ペルチェ素子への給電状態と時間との関係を示すグラフである。
【
図11】第2変形例の衣服用温度調節装置を示す要部斜視図である。
【
図12】第3変形例の衣服用温度調節装置を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の衣服用温度調節装置及び衣服を実施するための形態は、図面に示す実施例1に基づいて以下のように説明される。なお、以下の説明では、「上下」「左右」「前後」等の用語は、衣服100を着用する着用者を基準として用いられる。
【0011】
実施例1の衣服用温度調節装置1は、衣服100(
図4参照)に着脱可能に装着され、電気を利用して衣服100の着用者の身体を冷却又は加温するものである。実施例1の衣服用温度調節装置1は、
図1に示されたように、一対の温調部材10と、各温調部材10を保持する保持部材20と、保持部材20に設けられた係止部材31と、衣服100に設けられると共に係止部材31が着脱可能に係止される被係止部材32と、電源ユニット40と、を備えている。
【0012】
一対の温調部材10は、それぞれ同一構造を有しており、
図2に示されたように、それぞれ、ケーシング11と、ペルチェ素子12と、ヒートシンク13と、冷却ファン14と、リング部材15と、を有している。
【0013】
ケーシング11は、合成樹脂等の絶縁素材によって形成され、円筒状の本体部11aと、本体部11aの外周面に形成されたフランジ部11bと、を有している。本体部11aは、一方の端部が開放しており、ペルチェ素子12が嵌合している。本体部11aの他方の端部には、格子状の区画壁11cが形成され、通気性を有している。さらに、本体部11aの外周面には、他方の端部からフランジ部11bまでの間にネジ溝11dが形成されている。
【0014】
ペルチェ素子12は、ペルチェ効果を利用した板状の半導体素子である。なお、ペルチェ効果とは、異なる2種類の金属に電流を流すことで、一方の金属から他方の金属へ熱が移動したり、n型半導体とp型半導体との接合部に電流を流すことで、一方の半導体から他方の半導体へ熱が移動したりする現象である。
【0015】
ペルチェ素子12は、電流が流れることで吸熱又は発熱する温調面12aと、電流が流れることで温調面12aとの間で熱の移動が生じる被温調面12bと、を有している。温調面12aが吸熱するか発熱するかは、ペルチェ素子12に流れる電流の向きに応じて決まる。つまり、ペルチェ素子12は、印加される電圧の極性が反転されることによって、温調面12aの吸熱と発熱とが切り替えられる。なお、温調面12aが吸熱するとき、被温調面12bは発熱し、温調面12aが発熱するとき、被温調面12bは吸熱する。
【0016】
そして、ペルチェ素子12は、温調面12aが吸熱しているとき、温調面12aに身体等の物体が接することで物体を冷却する。また、ペルチェ素子12は、温調面12aが発熱しているとき、温調面12aに身体等の物体が接することで物体を加温する。実施例1の衣服用温度調節装置1では、ペルチェ素子12に印加される電圧の極性が、温調面12aが吸熱するように設定されており、実施例1の温調部材10は冷却目的で使用される。
【0017】
さらに、実施例1のペルチェ素子12は、温調面12aが露出した状態でケーシング11の一方の端部に嵌合し、ケーシング11によって保持されている。
【0018】
ヒートシンク13は、ケーシング11の内部に設けられ、ペルチェ素子12の被温調面12bに接触して配置されている。ヒートシンク13は、ペルチェ素子12の熱を吸熱し、フィンを介して放散する。
【0019】
冷却ファン14は、ケーシング11の内部に設けられ、ヒートシンク13と区画壁11cの間に配置されている。冷却ファン14は、ペルチェ素子12への通電と同じタイミングで駆動され、ヒートシンク13が放散した熱をケーシング11の外部に排出する。
【0020】
そして、ペルチェ素子12及び冷却ファン14には、電源ユニット40に着脱可能に接続されるケーブル16が設けられている。ケーブル16は、ペルチェ素子12及び冷却ファン14をそれぞれ電源ユニット40内の制御回路41に電気的に接続する電線である。実施例1では、ペルチェ素子12に設けられたケーブル16と冷却ファン14に設けられたケーブル16とが、ケーシング11の内部で一つにまとめられてから、ケーシング11の外部に引き出されている。さらに、各温調部材10のケーシング11から引き出されたケーブル16は、一つにまとめられ、先端にコネクタプラグ16aが設けられている。コネクタプラグ16aは、電源ユニット40の筐体43に形成されたコネクタソケット43aに着脱可能に接続される。このため、温調部材10は、筐体43の外部でケーブル16を介して電源ユニット40に電気的に接続される。
【0021】
また、実施例1のケーブル16は、途中位置にスイッチ17が設けられている。スイッチ17は、押しボタン式であり、押下される回数に応じて電源ユニット40の制御回路41に所定の指令を出力する。すなわち、制御回路41は、スイッチ17の押下回数に応じて、起動/停止したり、ペルチェ素子12に流れる電流の大きさを変化させたりする。
【0022】
リング部材15は、合成樹脂等の絶縁素材によって形成され、ケーシング11の本体部11aを挿入可能なリング状部材である。リング部材15の内周面には、ネジ溝が形成されており、本体部11aの外周面に形成されたネジ溝11dに螺合する。
【0023】
保持部材20は、長手方向に延びる帯状の部材によって形成され、衣服100の着用者の動きに追従可能な可撓性を有している。なお、実施例1の保持部材20は、断熱性を有するアクリルやポリプロピレン等の樹脂製プレートによって形成されている。しかしながら、保持部材20は、温調部材10を保持できればよいため、例えば布帛や発泡樹脂シート等によって形成されてもよい。
【0024】
また、保持部材20には、一対の温調部材10をそれぞれ保持するための一対の取付用開口部21が形成されている。各取付用開口部21は、保持部材20を貫通した貫通孔であり、温調部材10のケーシング11を挿入可能な円形を呈している(
図3参照)。また、一対の取付用開口部21は、長手方向に所定の間隔をあけて形成されている。このため、一対の温調部材10は、保持部材20の長手方向に所定の間隔をあけて保持される。
【0025】
そして、保持部材20は、衣服100に装着されたときに着用者に対向する内側面20aと、衣服100に対向する外側面20bと、を有しており、
図3に示されたように、取付用開口部21には、内側面20a側からケーシング11が挿入される。このときケーシング11は、区画壁11cが形成された他方の端部が取付用開口部21に挿入される。また、リング部材15は、保持部材20の外側面20b側からケーシング11に螺合される。これにより、保持部材20は、フランジ部11bとリング部材15との間に挟み込まれ(
図2参照)、温調部材10を保持する。なお、温調部材10は、
図2に示されたように、保持部材20に保持された際、保持部材20の内側面20aと外側面20bのそれぞれから突出する。
【0026】
係止部材31は、保持部材20の外側面20bに設けられている。実施例1の係止部材31は、温調部材10の取付位置である取付用開口部21ごとに、各取付用開口部21を挟んで一つずつ配置されている。
【0027】
被係止部材32は、衣服100の内側(実施例1では、襟104の内側面104a)に設けられる。実施例1の被係止部材32は、係止部材31ごとに一つずつ対応して設けられ、係止部材31が係止されて保持部材20が衣服100に取り付けられた際、保持部材20に対して衣服100の生地を弛みなく沿わせることが可能な位置に配置される。すなわち、取付用開口部21を挟んで配置された一対の係止部材31の間隔L1(
図3参照)と、当該係止部材31に対応する被係止部材32の間隔L2(
図3参照)とは、ほぼ同じ長さに設定される。
【0028】
ここで、係止部材31及び被係止部材32は、互いに着脱可能に係止すればよいので、例えば、スナップボタン、鉤ホック、ボタンとボタンホール、面ファスナー、テープスナップ等を用いることができる。なお、実施例1の係止部材31及び被係止部材32は、スナップボタンによって構成されている。
【0029】
また、係止部材31及び被係止部材32は、温調部材10や保持部材20の大きさ、重さ、衣服100に対する保持部材20の取付位置等に応じて、数や位置等を任意に設定することができる。さらに、衣服100に対する保持部材20の取付位置を変更可能にするため、被係止部材32は、係止部材31よりも多く設けられてもよい。
【0030】
電源ユニット40は、制御回路41と、バッテリ42と、制御回路41及びバッテリ42を収納した筐体43と、を有している。
【0031】
制御回路41は、CPUやメモリ等を備え、ペルチェ素子12に印加される電圧の大きさや、ペルチェ素子12及び冷却ファン14の給電状態等を制御することで、ペルチェ素子12に流れる電流を制御する。バッテリ42は、ペルチェ素子12及び冷却ファン14に給電される電力の電力源である。
【0032】
そして、制御回路41とバッテリ42とは、筐体43の内部で電気的に接続されている。また、一対の温調部材10の各ペルチェ素子12及び冷却ファン14は、それぞれ筐体43の外部でケーブル16を介して制御回路41と電気的に接続されている。ペルチェ素子12及び冷却ファン14は、制御回路41を介してバッテリ42から給電される。
【0033】
実施例1の制御回路41は、停止状態のときにスイッチ17が押下されることで起動し、バッテリ42からペルチェ素子12及び冷却ファン14への給電を開始する。また、制御回路41は、起動中にスイッチ17が押下されることで、押下回数に応じてペルチェ素子12及び冷却ファン14に印加される電圧の大きさを変化させる。そして、制御回路41は、スイッチ17が所定回数押下されたら停止する。制御回路41の停止に伴い、バッテリ42からペルチェ素子12及び冷却ファン14への給電が停止される。
【0034】
なお、ペルチェ素子12は、印加される電圧が高いほどペルチェ素子12に流れる電流が高くなり、温調面12aと被温調面12bとの間の熱移動量が多くなる。つまり、ペルチェ素子12は、印加される電圧が高いほど温調性能が高くなり、実施例1ではペルチェ素子12による冷却効果が高くなる。
【0035】
実施例1の衣服用温度調節装置1が装着される衣服100は、
図4に基づいて、以下のように説明される。
【0036】
衣服100は、着用者が上半身に着る上衣(ジャンパー)であり、綿や化繊等で織られた布帛や不織布等からなる生地によって形成されている。衣服100を形成する生地は、伸縮性や難燃性等の任意の性質を有していてもよい。また、生地は、部分的に異なる素材であってもよいし、すべて同じ素材であってもよい。そして、衣服100は、着用者の胴体の前側(胸部及び腹部)を覆う前身頃101と、着用者の胴体の後側(背中)を覆う後身頃102と、着用者の腕を覆う一対の袖103と、着用者の首元を覆う襟104と、を有している。
【0037】
なお、実施例1では、袖103は着用者の腕を全て覆う長袖であるが、半袖や七分袖、五分袖等であってもよい。また、衣服100は、袖103が設けられていないベストタイプであってもよい。さらに、衣服100は、内部の空気が漏れることを防止するため、裾105に伸縮性を有するゴムや、ドローコード等が設けられている。なお、衣服100は、ゴム等を設ける以外にも、裾105にシャーリングやギャザーを形成することで、裾105と着用者との隙間を抑えてもよい。
【0038】
前身頃101は、
図4に示されたように、身幅方向の中央部から左前身頃101aと右前身頃101bとに左右に分かれる。左前身頃101aと右前身頃101bの間は、線ファスナー101cによって開閉自在である。線ファスナー101cは、左前身頃101a及び右前身頃101bの裾105から襟104に至るまで延びている。なお、前身頃101は、腰ポケットや胸ポケット等、任意の位置に設けられたポケットを有していてもよい。
【0039】
後身頃102は、左右方向中央部を挟んで対称となる位置に、一対の取付孔102aが形成されている。取付孔102aは、図示しない送風機を衣服100に装着するための円形の貫通孔である。
【0040】
送風機は、図示しないファン用バッテリから電力が供給されることで駆動する電動ファンであり、衣服100の内部に送風する。衣服100は、送風機によって着用者と身頃(前身頃101及び後身頃102)との間に空気(外気)が送り込まれ、衣服100内の温度調節が図られる。なお、送風機は、衣服用温度調節装置1が有するバッテリ42から給電されてもよい。この場合、バッテリ42をファン用バッテリとして共用することができ、衣服100に掛かる重量の軽減を図ることができる。
【0041】
また、実施例1の後身頃102には、取付孔102aの周縁部を補強する補強部材102bが設けられている。補強部材102bは、取付孔102aに重複する貫通孔が形成された合成樹脂等で形成された板部材である。補強部材102bは、後身頃102に直接縫着されてもよいし、後身頃102とは異なる別の布で覆われ、当該別の布を後身頃102に縫着することにより、後身頃102に固定されてもよい。
【0042】
さらに、実施例1の衣服100では、取付孔102aの開口縁に沿ってパイピングテープ102cが設けられている。パイピングテープ102cは、補強部材102bと共に取付孔102aの開口縁を覆っている。
【0043】
なお、後身頃102の内側(着用者側)には、送風ファンとファン用バッテリを電気的に接続するケーブルや、ペルチェ素子12及び冷却ファン14と制御回路41とを電気的に接続するケーブル16等を保持するための面ファスナー等が設けられていてもよい。さらに、後身頃102の内側(着用者側)には、電源ユニット40やファン用バッテリを収納するための内ポケットが設けられていてもよい。
【0044】
襟104は、衣服100の着用時に折り返される襟羽根を有しておらず、着用者の首Nに沿って起立する立ち襟(スタンドカラー)である。実施例1の襟104は、前身頃101を開閉する線ファスナー101cを介して襟先が開閉可能であって、線ファスナー101cを閉じることで起立する。
【0045】
また、襟104は、起立したときに着用者の首Nに臨む内側面104aに、四個の被係止部材32が設けられている。これにより、四個の被係止部材32は、着用者の首回りに沿って配置され、衣服100は、襟104の内側面104aに、衣服用温度調節装置1を装着可能となる(
図5等参照)。
【0046】
実施例1の衣服用温度調節装置1及び衣服100の作用は、以下のように説明される。
【0047】
実施例1の衣服用温度調節装置1を使用するには、予め被係止部材32が衣服100の所定の位置(実施例1では襟104の内側面104a)に設けられる。そして、まず、一対の温調部材10がそれぞれ保持部材20に取り付けられる。このとき、
図3に示されたように、温調部材10は、ケーシング11の他方の端部が、保持部材20の内側面20a側から、保持部材20に形成された取付用開口部21に差し込まれる。また、リング部材15は、保持部材20の外側面20b側に配置され、ケーシング11の取付用開口部21から突出した部分が差し込まれる。そして、リング部材15がケーシング11に螺合されることで、取付用開口部21の周縁領域がフランジ部11bとリング部材15に挟まれ、温調部材10が保持部材20に取り付けられる。
【0048】
なお、温調部材10は、保持部材20に保持された状態で、ペルチェ素子12の温調面12aが保持部材20の内側面20a側に露出する(
図1及び
図2参照)。
【0049】
次に、保持部材20に設けられた係止部材31が、衣服100の襟104に設けられた被係止部材32に係止される。これにより、保持部材20が襟104に取り付けられ、温調部材10は、保持部材20を介して衣服100に装着される。そして、このとき、温調部材10は、ケーシング11の区画壁11cが襟104に接触すると共に、ペルチェ素子12の温調面12aが衣服100の内部に臨む。
【0050】
保持部材20が襟104に取り付けられた後、ケーブル16の先端に設けられたコネクタプラグ16aが、電源ユニット40の筐体43に形成されたコネクタソケット43aに接続される。これにより、ペルチェ素子12及び冷却ファン14は、電源ユニット40の制御回路41に電気的に接続され、衣服用温度調節装置1の衣服100への装着が完了する。なお、電源ユニット40は、衣服100に設けられた内ポケット等に収納される。
【0051】
そして、着用者は、衣服用温度調節装置1が装着された衣服100を着用する。このとき、着用者は、線ファスナー101cを閉じて襟104を起立させる。これにより、
図5に示されたように、襟104に取り付けられた衣服用温度調節装置1が首Nの周りに配置され、ペルチェ素子12の温調面12aが首Nに接触する。
【0052】
温調面12aが首Nに接触したら、着用者は、スイッチ17を押下し、制御回路41を起動させる。これにより、バッテリ42からペルチェ素子12及び冷却ファン14への給電が開始され、ペルチェ素子12に電流が流れて温調面12aが吸熱する。また、冷却ファン14が駆動する。そして、衣服用温度調節装置1は、温調面12aに接触した着用者の首Nを直接冷却する。
【0053】
このように、実施例1の衣服用温度調節装置1は、ペルチェ素子12を有する温調部材10と、温調部材10を保持する保持部材20と、保持部材20に設けられた係止部材31と、衣服100に設けられると共に、係止部材31が着脱可能に係止される被係止部材32と、を備えている。そのため、実施例1の衣服用温度調節装置1では、被係止部材32が衣服100に設けられ、温調部材10を保持する保持部材20に設けられた係止部材31が被係止部材32に係止されることで、ペルチェ素子12を有する温調部材10を衣服100に対して容易に装着することができる。これにより、着用者は、既存の衣服100に対して衣服用温度調節装置1を後付けすることができる。
【0054】
また、着用者は、衣服用温度調節装置1を使用しないときには、係止部材31を被係止部材32から外すことで、衣服用温度調節装置1を衣服100から取り外すことができる。これにより、着用者は、一般的なファン付き作業着として衣服100を着用することができる。
【0055】
なお、実施例1では、係止部材31と被係止部材32とがスナップボタンによって構成されている。そのため、着用者は、保持部材20を引っ張ることで係止部材31を被係止部材32から外すことができ、温調部材10を衣服100から容易に取り外すことができる。
【0056】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、温調部材10が保持部材20を介して衣服100に装着された際、保持部材20に対して衣服100(襟104)が弛みなく沿い、温調部材10は、ケーシング11の区画壁11cが襟104に接触する。このため、実施例1の衣服用温度調節装置1は、衣服100が着用者に対して締め付けられることで、衣服100によって温調部材10が押さえられる。これにより、実施例1の衣服用温度調節装置1は、ペルチェ素子12の温調面12aと着用者との密着性を向上させ、温調効果を高めることができる。
【0057】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、保持部材20が、着用者の動きに追従可能な可撓性を有している。そのため、実施例1の衣服用温度調節装置1は、着用者の首Nの動きに合わせて保持部材20を襟104と一体的に変形させることができる。これにより、実施例1の衣服用温度調節装置1は、ペルチェ素子12の向きを首Nの動きに応じて変化させ、ペルチェ素子12と着用者との密着性の低下を抑制することができる。
【0058】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、保持部材20が、長手方向に延びる帯状の部材によって形成されている。また、温調部材10が、保持部材20の長手方向に所定の間隔をあけて一対配置されている。
【0059】
これにより、実施例1の衣服用温度調節装置1は、保持部材20を衣服100の襟104に沿って配置させ、着用者の首Nの周りを取り囲むことができる。そして、実施例1の衣服用温度調節装置1は、温調部材10の温調面12aを着用者の首元の太い血管(頸動脈や頸静脈等)に対向させることが可能である。すなわち、衣服用温度調節装置1が襟104に取り付けられた場合では、衣服用温度調節装置1は、ペルチェ素子12を用いて着用者の首元の太い血管を直接冷却することができる。
【0060】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1は、ペルチェ素子12に流れる電流を制御する制御回路41と、ペルチェ素子12に給電するバッテリ42と、制御回路41及びバッテリ42を収納した筐体43と、を有する電源ユニット40を備えている。そして、温調部材10は、筐体43の外部でケーブル16を介して電源ユニット40に電気的に接続されている。
【0061】
これにより、実施例1の衣服用温度調節装置1は、温調部材10と電源ユニット40とを別体にすることができる。このため、実施例1の衣服用温度調節装置1は、温調部材10の重量の増加を抑制し、重量を分散させることができる。これにより、実施例1の衣服用温度調節装置1は、衣服用温度調節装置1が装着された衣服100を着用した際の着用者の負担を軽減することができる。
【0062】
なお、実施例1の衣服用温度調節装置1は、保持部材20が樹脂製プレートによって形成されている。これにより、衣服用温度調節装置1は、保持部材20の軽量化を図ることができ、さらに着用者の負担を軽減できる。
【0063】
また、実施例1の衣服100では、襟104の襟先が、前身頃101を開閉する線ファスナー101cによって開閉可能であって、襟104は、線ファスナー101cを閉じることで起立する。そして、実施例1の衣服100では、起立したときに着用者の首Nに対向する襟104の内側面104aに、衣服用温度調節装置1の被係止部材32が設けられており、襟104の内側面104aに衣服用温度調節装置1を装着可能である。
【0064】
これにより、実施例1の衣服100は、ペルチェ素子12を有する温調部材10を襟104に容易に装着させることができる。また、襟104の内側面104aに衣服用温度調節装置1が装着されることで、衣服100は、着用者の頸動脈や頸静脈といった首元の太い血管に温調部材10を対向させ、着用者の温調効果が高い部位を直接的に冷却或いは加温することができ、温調効果を高めることができる。
【0065】
さらに、実施例1の衣服100では、線ファスナー101cを閉じることで襟104が首Nに当接し、これに伴って、衣服用温度調節装置1の温調部材10が首Nに向かって押さえつけられる。このため、実施例1の衣服100は、温調部材10が有するペルチェ素子12と着用者の首Nとの密着性を容易に向上させることができる。
【0066】
また、実施例1の衣服100では、襟104の襟先が線ファスナー101cによって開閉可能であるため、襟104の首Nに対する締め付け具合を、線ファスナー101cの閉じ具合が変更されることによって調整することができる。具体的には、線ファスナー101cのスライダ101d(
図7参照)の位置が、着用者の顔に近いほど、襟104の首Nに対する締め付け具合が強くなる。そして、襟104が首Nに対して強く締めつけられるほど、温調部材10のペルチェ素子12は首Nに強く接触する。一方、線ファスナー101cのスライダ101dの位置が、着用者の顔から離れるにしたがって襟104が次第に開き、襟104の首Nに対する締め付け具合が弱くなる。そして、襟104の首Nに対する締め付け具合が弱くなるほど、温調部材10のペルチェ素子12は、首Nから離れる。
【0067】
このため、実施例1の衣服100は、着用者の体格に合わせた線ファスナー101cの締め具合によって、着用者の体格に応じた適切な状態でペルチェ素子12を着用者の首Nに接触させることができる。すなわち、実施例1の衣服100は、着用者の体格差があっても、同一の衣服用温度調節装置1を用いて、着用者の冷却や加温を行うことができる。
【0068】
また、実施例1の衣服100は、後身頃102に送風機を装着可能な取付孔102aが形成されている。そのため、実施例1の衣服100は、取付孔102aに送風機が装着された場合、送風機によって衣服100の中に空気を取り込んで、着用者を冷却することができる。すなわち、実施例1の衣服100は、温調部材10による着用者の冷却と、空気の送風による着用者の冷却とを併用することができ、冷却効果の向上を図ることができる。
【0069】
また、衣服100に取り込まれた空気は、
図6に矢印で示されたように、襟104と着用者の首Nとの間の隙間から、衣服100の外に排出される。このとき、衣服用温度調節装置1が襟104に装着され、温調部材10が首Nに接触している。このため、実施例1の衣服100は、
図5に示されたように、温調部材10の厚さの分だけ、襟104と首Nとの間に隙間を確保することができる。これにより、実施例1の衣服100は、着用者の体格に拘らず、首回りに一定の隙間を確保することができ、衣服100に取り込まれた空気を安定的に排出することができる。この結果、衣服100は、空気の送風による冷却効果の低下を抑制することができる。
【0070】
また、実施例1の衣服100は、衣服100内の空気を排出する位置(首回り)に温調部材10を配置させるため、衣服100内からの排気によってペルチェ素子12の放熱を促進することできる。しかも、実施例1では、保持部材20が耐熱性を有する樹脂プレートであり、衣服100内の空気が首回りから排気されるため(
図7参照)、温調部材10から排出された熱が衣服100の中に回り込むことを防止できる。
【0071】
すなわち、実施例1の衣服100では、襟104に取り付けられた保持部材20によって、襟104と首Nとの間の隙間がペルチェ素子12の温調側(吸熱側)と放熱側(発熱側)とに仕切られる。また、実施例1の衣服100は、衣服100に装着された送風機による送風で、衣服100内の空気が外へと押し出される。この結果、衣服100は、温調部材10から排出された熱が温調側へと回り込むことを防止できる。
【0072】
以上、本発明の衣服用温度調節装置及び衣服は、実施例1に基づいて説明されたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0073】
実施例1の衣服100は、襟先が線ファスナー101cを介して開閉可能であって、線ファスナー101cを閉じることで起立する襟104を備えており、被係止部材32が、起立したときに着用者の首Nに対向する襟104の内側面104aに設けられている例が示された。しかしながら、本発明の衣服は、着用されたときに着用者に対向する位置であれば、任意の位置に被係止部材32を設けることができる。すなわち、本発明の衣服は、例えば
図8に示された第1変形例の衣服100Aのように、着用時に着用者の背中や腰等に対向する位置に被係止部材32が設けられてもよい。
【0074】
これにより、第1変形例の衣服100Aは、着用者の任意の位置(例えば背中や腰等)にペルチェ素子12を接触させ、任意の位置の冷却や加温を行うことができる。
【0075】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、保持部材20が長手方向に延びる帯状の部材によって形成され、一対の温調部材10が保持部材20の長手方向に所定の間隔をあけて配置された例が示された。しかしながら、本発明の衣服用温度調節装置は、
図9に示された第1変形例の衣服用温度調節装置1Aのように、保持部材20Aが一つの温調部材10を保持するものであってもよい。この場合、保持部材20Aが実施例1の保持部材20よりも小さくなり、衣服100Aに取り付けやすくなる。
【0076】
なお、図示していないが、保持部材20が三個以上の温調部材10を保持するものであってもよい。さらに、保持部材20が複数の温調部材10を保持する場合、複数の温調部材10は、任意の配置で保持部材20に保持される。つまり、複数の温調部材10は、実施例1に示されたような、保持部材20が延びる方向である長手方向に沿って配置されていなくてもよい。
【0077】
また、本発明の衣服は、第1変形例の衣服100Aのように、衣服100Aの内側に保冷剤又は保温剤(不図示)を収納可能なポケット106を備えるものであってもよい。ポケット106は、前身頃101及び後身頃102の内側(着用者に臨む面)に設けられた内ポケットである。第1変形例の衣服100Aでは、ポケット106が複数設けられている。なお、ポケット106が設けられる位置やポケット106の数は任意に設定可能である。また、ポケット106は、衣服用温度調節装置1の装着位置に重複しない位置に設けられることが望ましい。
【0078】
これにより、第1変形例の衣服100Aは、ポケット106に保冷剤又は保温剤を収納することができる。そして、第1変形例の衣服100Aは、温調部材10のペルチェ素子12による温調効果と、保冷剤や保温剤による温調効果を併用し、衣服100Aの冷却効果や加温効果を向上させることができる。
【0079】
また、実施例1の衣服100及び第1変形例の衣服100Aは、いずれも後身頃102に送風機を装着可能な取付孔102aが形成された例が示された。しかしながら、本発明の衣服は、取付孔102aが形成されておらず、送風機を装着しないで着用される衣服、すなわち一般的な作業着等であってもよい。
【0080】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、制御回路41が、起動中にスイッチ17が押下される回数に応じてペルチェ素子12及び冷却ファン14に印加される電圧の大きさを変化させる例が示された。しかしながら、制御回路41は、予め設定されたプログラムによって、ペルチェ素子12に流れる電流を自動で間欠的に変化させてもよい。
【0081】
つまり、例えば、制御回路41は、
図10Aに示されたように、ペルチェ素子12に印加される電圧を所定時間ごとに変化させ、ペルチェ素子12に流れる電流の大きさを間欠的に変化させてもよい。この場合、制御回路41は、給電開始から時刻t1が経過するまでは、ペルチェ素子12に印加する電圧を比較的高い値(Hi)に設定し、時刻t1から時刻t2の間は、電圧を比較的低い値(Low)に設定する。さらに、制御回路41は、時刻t2から時刻t3の間は、再びペルチェ素子12に印加する電圧を比較的高い値(Hi)に設定し、時刻t3から時刻t4の間は、電圧を比較的低い値(Low)に設定し、時刻t4以降は、電圧を比較的高い値(Hi)に設定する。
【0082】
このように、制御回路41がペルチェ素子12に印加される電圧を所定時間ごとに変化させることで、ペルチェ素子12に流れる電流の大きさは間欠的に変化する。これにより、制御回路41は、ペルチェ素子12の温調性能を所定時間ごとに変える(揺らがせる)ことができる。そして、このような制御回路41を有する衣服用温度調節装置は、ペルチェ素子12による温調効果に対する着用者の感覚慣れを抑制し、着用者に冷たさや温かさといった温調効果を感じさせやすくできる。さらに、バッテリ42の省エネ運転にも寄与する。
【0083】
なお、制御回路41は、ペルチェ素子12に流れる電流を間欠的に変化させればよい。そのため、例えば、
図10Bに示されたように、制御回路41は、ペルチェ素子12への給電状態を所定時間ごとに変更し、ペルチェ素子12に間欠的に電流が流れるようにしてもよい。すなわち、制御回路41は、給電開始から時刻t1が経過するまでは、ペルチェ素子12に給電し(給電状態=ON)、時刻t1から時刻t2の間は、ペルチェ素子12への給電を停止する(給電状態=OFF)。ペルチェ素子12への給電が停止されることにより、温調面12aの発熱又は吸熱は停止する。そして、制御回路41は、時刻t2から時刻t3の間は、再びペルチェ素子12に給電(給電状態=ON)し、時刻t3から時刻t4の間は、給電を停止(給電状態=OFF)し、時刻t4以降は、ペルチェ素子12に給電する(給電状態=ON)。
【0084】
ペルチェ素子12は、給電が停止されることで電流が流れず、温調面12aによる吸熱又は発熱が停止する。この結果、制御回路41は、ペルチェ素子12に流れる電流を間欠的に変化させ、ペルチェ素子12の温調性能を所定時間ごとに変えることができる。
【0085】
なお、制御回路41は、電圧や給電状態の変更(切替)時間(時刻t1から時刻t2までの時間や、時刻t2から時刻t3までの時間等)を、任意に設定することができる。当該時間は、一定間隔に設定されてもよいし、温調面12aの温度や着用者の体温等に応じて設定されてもよい。さらに、当該時間は、温調面12aや着用者から離れた位置(例えば、後述する保持部材20の位置等)における周辺温度に応じて設定されてもよい。
【0086】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、長手方向に延びる帯状の部材によって形成された保持部材20の長さが一定(変化しない)である例が示された。しかしながら、
図11に示された第2変形例の衣服用温度調節装置1Bや、
図12に示された第3変形例の衣服用温度調節装置1Cのように、長手方向に延びる保持部材20xが、一対の温調部材10の間の位置に、伸縮機構22を有するものであってもよい。伸縮機構22は、保持部材20xの長手方向の長さを変更する機構である。
【0087】
ここで、第2変形例の衣服用温度調節装置1Bが有する伸縮機構22は、保持部材20xを蛇腹状に屈曲することで形成されている。第2変形例の衣服用温度調節装置1Bが有する伸縮機構22は、蛇腹部分が伸縮することで保持部材20の長手方向の長さを変更する。
【0088】
また、第3変形例の衣服用温度調節装置1Cが有する伸縮機構22では、保持部材20xが二つに分割されると共に、分割された端部20α、20βが重ねられる。そして、一方の端部20αに長手方向に延びるスリット22aが形成され、他方の端部20βにスリット22aに挿入される突起部22bが形成される。第3変形例の衣服用温度調節装置1Cが有する伸縮機構22は、二つに分割された保持部材20xが相対的に長手方向に移動されることで、保持部材20の長手方向の長さを変更する。
【0089】
また、第2変形例の衣服用温度調節装置1B及び第3変形例の衣服用温度調節装置1Cでは、保持部材20xの長手方向の長さが変化するため、例えば、係止部材31及び被係止部材32は、面ファスナーによって構成されることが好ましい。この場合、係止部材31は、取付用開口部21の長手方向の両側に配置され、被係止部材32は、長手方向に沿って延びている。そして、被係止部材32の長さL3は、取付用開口部21を挟んで配置された一対の係止部材31の間隔L1よりも、伸縮機構22によって保持部材20が伸長する長さ分だけ長くなるように設定される。
【0090】
これにより、第2変形例の衣服用温度調節装置1B及び第3変形例の衣服用温度調節装置1Cは、着用者の体格に合わせて保持部材20の長手方向の長さが調整され、温調部材10を着用者の所望の位置に接触させることができる。
【0091】
また、第2変形例の衣服用温度調節装置1B及び第3変形例の衣服用温度調節装置1Cは、係止部材31及び被係止部材32が例えば面ファスナーによって構成されることで、任意の長さに調整された保持部材20xを衣服100に取り付けることができる。
【0092】
また、実施例1の衣服用温度調節装置1では、ペルチェ素子12に印加される電圧の極性が、温調面12aが吸熱するように設定された例が示されたが、これに限らない。衣服用温度調節装置1は、例えば、ペルチェ素子12に印加される電圧の極性が、温調面12aが発熱するように設定されて、温調部材10を加温目的で使用するようにしてもよい。また、衣服用温度調節装置1は、ペルチェ素子12に印加される電圧の極性が制御回路41によって切り替え可能にされ、温調部材10が冷却と加温をそれぞれできるものであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 衣服用温度調節装置
10 温調部材
12 ペルチェ素子
20 保持部材
31 係止部材
32 被係止部材
40 電源ユニット
41 制御回路
42 バッテリ
100 衣服
104 襟
102a 取付孔