IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 柳澤 寧季の特許一覧

特開2024-113629天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。
<>
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図1
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図2
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図3
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図4
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図5
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図6
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図7
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図8
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図9
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図10
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図11
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図12
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図13
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図14
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図15
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図16
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図17
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図18
  • 特開-天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113629
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】天然素材のみで作る、防腐遅延効果の高い飯米とおにぎりの製造技術。
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240815BHJP
【FI】
A23L7/10 B
A23L7/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023030435
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】598146414
【氏名又は名称】柳澤 寧季
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 寧季
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC08
4B023LE14
4B023LK12
4B023LK13
4B023LK15
4B023LK20
4B023LP11
(57)【要約】
【課題】一般的に多く採用されている賞味期限を延長するための技術である防腐剤を添加して炊飯する製造方法では、食味に独特の重たい風味が残ってしまうために、美味しさを求める消費者からの支持を得ることが難しい。また、防腐剤は商品の原材料欄にも記載することになるので購買の際に美味しさや安心を求める消費者に容易に比較されてしまうため購買機会を失うことも予想される。
【解決手段】米の炊飯水に諸定量の梅酢を入れて炊飯することで、防腐添加剤のような化学的な原材料の使用や、特殊な製造方法に依ることなく、天然素材だけを使って、どのような炊飯手法にも対応した防腐遅延効果と、満足出来る食味を得ることが出来る炊飯技術を開発した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生米の炊飯水に梅酢を入れて炊飯する飯米の製造方法であって、前記炊飯水の梅酢の塩分濃度が1.31%以上であることを特徴とする飯米の製造方法。
【請求項2】
前記炊飯水の梅酢の塩分濃度が1.63%以上であることを特徴とする請求項1に記載の飯米の製造方法。
【請求項3】
前記炊飯水の梅酢の塩分濃度が2.19%以上であることを特徴とする請求項1に記載の飯米の製造方法。
【請求項4】
グリシン等に代表されるアミノ酸などの化学的な防腐添加剤を含有していないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飯米の製造方法。
【請求項5】
生米の炊飯水に梅酢を入れて炊飯された飯米、またはその飯米で製造されたおにぎりであって、前記炊飯水の梅酢の塩分濃度が1.31%以上であり、25℃で恒温保管したものを寒天培地で培養して一般生菌数を計測する試験における48時間経過時点での一般生菌数が10万個未満となる基準を満たすことを特徴とする飯米、またはその飯米で製造されたおにぎり。
【請求項6】
炊飯水の梅酢を米粒の内部全体に吸収して炊飯されている飯米、またはその飯米で製造されたおにぎりであって、25℃で恒温保管したものを寒天培地で培養して一般生菌数を計測する試験における48時間経過時点での一般生菌数が10万個未満となる基準を満たすことを特徴とする飯米、またはその飯米で製造されたおにぎり。
【請求項7】
生米の炊飯水に梅酢を入れて炊飯された米飯で製造されたおにぎりであって、前記炊飯水の梅酢の塩分濃度が1.31%以上であり、おにぎりの米飯の中の具材が干し漬物類や梅干し、干し大根漬、干し椎茸漬のいずれかであって、25℃で恒温保管したものを寒天培地で培養して一般生菌数を計測する試験における48時間経過時点での一般生菌数が10万個未満となる基準を満たすことを特徴とするおにぎり。
【請求項8】
グリシン等に代表されるアミノ酸などの化学的な防腐添加剤を含有していないことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のおにぎり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飯米の防腐遅延を有する製造方法に関する。詳しくは通常の方法で製造した飯米を常温(25℃)で48時間保存(25℃)した場合に比べて一般性菌数の数値を1/100~1/10,000に抑えることで消費期限を延ばした「化学物質を一切使用すること無く製造した、可食に適した飯米」を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飯米やおにぎり等の加工食品の保存性を向上させるために、グリシン等に代表されるアミノ酸等の防腐添加剤を用いたものが多く生産されている。
【0003】
東京都福祉保健局が、食中毒菌を塗ったシャーレに置いた梅干し等の抗菌性について実験している。結果は梅干しそのままの状態では梅干しの周囲だけで抗菌性が認められたが、10倍に希釈したものでは、抗菌性が認められなかった。この実験の結果を表に示す。
【表1】
【0004】
また、以下に示す非特許文献1では、米の容量3%以上のミツカン酢を炊飯後の飯米や残飯に添加することで一定の防腐効果が得られることを確認している。この実験では炊飯直後、炊飯6時間後、炊飯12時間後に米の容量3%以上のミツカン酢を飯米に添加して30℃の恒温機内で保管した飯米の腐敗の様子を調べている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】長井摂郎.“食品の調理法と保存性に関する研究(第1報).”栄養学雑誌18.5(1960):235-244
【0006】
梅干しや梅酢による防腐効果は、古来より伝承として言い伝えられて来たが、どの程度の量でどのような効果があるかは、先の東京都福祉保健局による実験の他は知られていない。この実験では梅干しをシャーレに置いて培養した結果、梅干しに接した周囲のみで防腐効果が認められただけだと報告されている。また、飯米と梅干しが接した場合や、梅酢での効果については何も説明されていない。
【0007】
非特許文献1の論文は炊飯後の、「飯」に対して酢を加えることで防腐遅延の効果が有るかを調べているが、飯米の製造技術では無い。また、梅酢については何も説明されていない。
非特許文献1のP241以降では弁当の飯や残飯に梅干しを入れることは、防腐効果があるように信じられているが、なんら防腐効果が無かったと報告している。
【0008】
従来から炊飯後の飯米に寿司酢を添加する方法で酢飯を作る方法が知られているが、この方法は飯米に調味液を均等に混ぜる技術が必要で、調理者の技量により出来上がった酢飯の風味等は大きく異なることは容易に想像できる。例えば「NHKあさイチ」(2019年5月29日放送)では「失敗しない酢飯」のレシピを紹介しているが、講師の銀座寿司幸の杉山衛氏の解説によれば寿司職人の修行では酢飯作りに4-5年かかると説明しているように、この方法で風味が良い酢飯を人力で作ることは大変な努力を必要とすることが判る。また、米の表面に直接調味料を混ぜている為に、食べる際の風味に塩味や酸味を強く感じてしまう為に寿司には適するが飯米として利用するには味覚の上で大きな障害となることが想像される。これは酢飯を通常の白米の代わりにして食事をすることが無いことで判るとおり明かである。更に、飯米を製造した後に調味液を添加する方法では作業工程や調理器具が増えるために菌が付着して飯米が汚染されるリスクが高まってしまう。
【0009】
前項で説明した酢飯製造の困難さは、オバマ大統領を接待するために安倍晋三首相が夕食の会場に迎賓館では無く選んだ「すきやばし次郎」を取材したアメリカ映画『二郎は鮨の夢を見る』では、寿司の食味は酢飯が最重要だとする店主小野二郎の考えの基に、血の滲むような修行をする弟子たちの様子が密着ドキュメンタリーとして記録されている。文章にすると「飯に酢を混ぜる」だけのことであるが、調理者によって結果は大きく異なることと、酢飯のレシピでは酢だけでは味が整わないので、糖類を多量に加えることになるが、この状態で防腐遅延効果を有するかは不明である。したがって、酢飯については防腐遅延効果を期待して作られてはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
<個別課題A>
現在、一般的に多く採用されている賞味期限を延長するための技術である防腐剤を添加して炊飯する製造方法では、食味に独特の重たい風味が残ってしまうために、美味しさを求める消費者からの支持を得ることが難しい。また、防腐剤は商品の原材料欄にも記載することになるので購買の際に美味しさや安心を求める消費者に容易に比較されてしまうため購買機会を失うことも予想される。
<個別課題B>
米に重量比3%のミツカン酢を添加することで防腐遅延の効果がある飯が得られることは非特許文献1の項で既に述べたが、炊飯後の飯米に調味液を添加する方法は前記述のとおり職人的な熟練を要する作業となり、人手が変わることや気温湿度等の空気調和条件にも左右されるために、味覚に関する再現性は低くなってしまう。そこで、誰にでも容易に利用可能で再現性の極めて高い炊飯技術の実用性や必要性は高い。
<個別課題C>
飯米をおにぎりに加工するに当たっては、飯に僅かな塩味を加えることが一般的であるが、これも前項の酢飯と同様に熟練を要する作業であり手作業で味覚の均一な商品を作ることは高度な熟練と教育を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記<個別課題A>の課題を解決するために防腐添加剤のような化学的な原材料の使用や、特殊な製造方法に依ることなく、天然素材だけを使って、どのような炊飯手法にも対応した防腐遅延効果と、満足出来る食味を得ることが出来る炊飯技術を開発した。
【0012】
上記<個別課題B>の課題を解決するために、既存の炊飯手法で、特別の教育をすることなく、誰でも容易に炊飯可能な再現性の高い炊飯技術を開発した。
【0013】
上記<個別課題C>の課題については、防腐遅延効果がある梅酢炊飯技術で炊飯した飯米には、適度な塩味を感じることが出来るうえに、酸味は炊飯の際に揮発するためか、少ししか感じない。また、前項同様に高い再現性と簡便なプロセスで製造することが可能な炊飯技術である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は天然素材のみを原料として飯米を製造する技術なので、風味や味覚は極めて自然であり、防腐剤を添加する方法で製造された飯米に感じられる、独特の重たい風味や後味は無い。また、防腐剤を添加して炊飯する手法は主に大量調理の現場でおこなわれており、家庭や小規模の事業所で採用している例は少ない。
【0015】
本発明は、特別の設備や技術を用いることなく防腐遅延効果のある飯米が製造できる点でも画期的である。水道水に一定量の梅酢を添加して出来た梅酢水で炊飯するだけで、同様の品質と性能を持つ、防腐遅延効果のある飯米が極めて高い再現性を持って製造することが出来る炊飯技術であり、その製造は誰にでも容易におこなうことが出来る。
【0016】
本発明の防腐遅延効果のある飯米を使ってのおにぎり製造についても、防腐遅延効果のある飯米とタネとなる具材との関係を明らかにして、梅干しを始めとする干した野菜類の漬物を用いることで防腐遅延効果のあるおにぎりを製造することが出来る。
【0017】
本発明によれば、炊飯時に梅酢を添加した調味液で炊飯することで、極めて再現性の高い風味や食感の飯米が容易に製造できる。また、炊飯するにあたり特段の製造設備を導入する必要が無く、従来の白米を炊飯するのと全く同じ方法で製造が出来るので調理員に特別の教育をおこなう必要も無い。更に炊飯された飯米は既に防腐遅延の効果を有しているので、すぐに次工程へと進むことが出来る為に菌が付着して汚染されるリスクも白米と同等であり、特別の対策をとる必要が無い。また、炊飯水に含まれている梅酢を、米粒の内部全体に吸収して炊飯されている米飯で製造されたおにぎりである点で、従来のように炊飯後に酢をまぜた米飯とは飯の内部に浸透した状態が異なる米飯となっている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】 比較例1の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図2】 実施例1の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図3】 比較例3の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図4】 実施例2の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図5】 実施例3の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図6】 実施例4の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図7】 実施例5の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図8】 実施例6の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図9】 比較例2の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図10】 実施例7の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図11】 実施例8の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図12】 実施例9の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図13】 実施例10の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図14】 比較例4の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図15】 比較例5の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図16】 比較例6の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図17】 比較例7の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図18】 比較例8の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
図19】 比較例9の一般生菌数分析の試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を以下に説明する。試料の調製については、生米は富山県産単一原料米の玄米(2021年産米)を精米したものを1合あたり150g。炊飯水は紀州産の南高梅を漬けるのに用いた梅酢(塩分濃度20.0%(モール法により測定)、PH2程度)を水道水で希釈した。希釈した梅酢水(PH3程度)を生米150gあたり196-200g程度加えて炊飯した。 これを表2に示す。
尚、本出願の明細書において「生米」とは炊いたり煎(い)ったりなどしていない米の意味として使用していて、精米された状態のものを指している。
【表2】
【0020】
どの程度に希釈した梅酢水で炊飯することで防腐遅延の効果が得られるかを比較する数値は梅酢水の塩分濃度を指標とすることにした。具体的には希釈した梅酢水の数値は、希釈後の塩分濃度(原液/希釈倍率)で比較した。梅酢は梅と塩を漬けることにより出来る「梅干し」を得る際に出来る副産物であり、梅酢だけを製造しているわけでは無いので、生産ロットや製造場所により塩分濃度差がある。このため梅酢の塩分濃度を測定して塩分量を指標とすることで違う種類の梅酢を使用する際にも基準となるようにした。実際の調理では米の品種や乾燥具合、また季節により生米の重量に対する水分量の割合は変化させることになることが普通なので、梅酢の重量を生米と比較するのではなく、あくまで炊飯に用いる梅酢水の塩分濃度により比較することにした。このことにより炊飯時に加える水の量の加減に係わらず、同じ風味の飯米を得ることが出来るため利用方法が簡便になる利点がある。ここで報告した原液となる梅酢は単一容器に入れられたものを使用した。
【0021】
農林水産省の令和2年(2020年)の作況調査によれば梅の収穫量は全国で約7万1100トンとなっており、産地では1位は和歌山県4万1300トン(58%)、2位は群馬県5190トン、3位は福井県1500トンとなっている。1位の和歌山県の生産量は2位の8倍、3位の28倍と圧倒的な生産量を誇っている。和歌山県で生産されている主な品種は1902年に発見されたアンズに近い南高梅と呼ばれる大粒で肉厚な品種であり、市場に流通している梅干しの多くも南高梅の梅干漬となっている。このため試料に用いる梅酢は大量に生産されて品質が安定していて且つ同等品質のものが、再入手の容易な紀州産の梅酢とした。
【0022】
生米については農家より直接購入した2021年産米玄米を保管したものを、直近に精米して使用した。現実には米が収穫されてからの時間の経過と共に米の水分量が失われていくことや、保管方法によってもその品質は異なるので、玄米保管した生米を使用する直前か数日前に精米したものを使用した。実際の製造現場では新米を使える期間は限定されてしまうので、新米は使用しなかった。
【0023】
防腐遅延効果と塩分濃度の関連を実験したものは食塩を水道水で攪拌したものを使用した。試料の配合割合は表2と同じものとした。
【0024】
試料の分析は公的な第三者機関である富山県食品研究所に依頼をした。試料は食品衛生法に基づいた一般生菌数の分析を依頼し、25℃で恒温保管したものを標準寒天培地で培養したもので分析した。
【0025】
検査試料とする飯米は関東型と呼ばれる三角形のおにぎり型で製造したものを試料とした。大きさは飯米で70-100gを一個の試料とした。従って試料が「飯」であるか「おにぎり」であるかに係わらず、すべての試料の表面積や形状は同等程度のもので保管されたものを比較したことになる。
【0026】
防腐遅延効果が認められる飯米おにぎり型に、具材となるタネを入れた加工食品である「おにぎり」についても、その防腐効果を調べた。
【0027】
防腐遅延効果が認められた試料として、梅干と漬物があった。梅干し原料は野梅系で、わが国古来種である氷見稲積梅を江戸時代からの伝統的な製法で作られた、塩分濃度の高い梅干しを赤紫蘇漬けにした赤色の梅干しを用いた。大根と椎茸は低温乾燥させた後にグリシン等に代表されるアミノ酸などの化学的な防腐添加剤を含まない調味液に浸けたものを使用した。
【0028】
防腐遅延効果が認められなかった試料として、鰹節、卵、肉を調理したものや、十分に乾燥することなく調味液に浸けただけの漬物等では飯米だけの場合よりも腐敗が速く進行した。
【0029】
1.31%以上の塩分濃度の梅酢水で炊飯した飯米した飯米には防腐遅延効果が認められた。
食塩水濃度3.5%で炊飯した飯米には防腐遅延効果が認められなかった。
【0030】
本発明の実施例と比較例を以下に説明する。なお、本明細書においては、各実施例と各比較例以外に、水道水のみで炊飯したものを「基準例」として設定している。この水道水のみで炊飯した「基準例」と各実施例と各比較例の生菌分析試験の時間結果を比較することで評価指標としている。
【0031】
まずは比較例1から説明する。
【比較例1】
梅酢水の塩分濃度が0.99%となるように20%塩分濃度の梅酢を水道水で希釈した梅酢水で炊飯したものを比較例1とする。これは梅酢9.9グラムに対して水を190.6グラム加えて塩分濃度が0.99%となるようにした梅酢水である。この比較例1と、水道水のみで炊飯したもの(基準例)の時間による細菌数の増え方を比較したところ両者に大きな違いは認められなかった。梅酢水の塩分濃度は小数点以下3桁目を四捨五入して表記することにした。図1に一般生菌数分析の試験結果を示す。図1の黒丸が比較例1で白丸が基準例の試験結果を表している。
なお、図1の縦軸は生菌数を表しており、試験条件的な理由による検出限界値の100のラインと、旧「衛生規範」(厚生労働省令・2020年6月廃止)に定められていた2種類の総菜類の微生物規格基準である未加熱処理製品100万個/gと加熱処理製品10万個/gのうち、数値が厳しい加熱処理製品10万個/gの方を、望ましいとされる上限値として100,000のラインをグラフに記入している。また、横軸は試験開始からの経過時間を表している(以下の試験結果を表すグラフの軸表示でも同様)
試験に使った梅酢のpHを独Merck KGaA社のpH試験紙0-14で測定したところ梅酢原液では、およそpH2程度を示した。この溶液を炊飯直前に調合して炊飯用の梅酢水とした。
試験は隔離されていない通常の設備室内で空調をすること無くおこなった。使用した器具類は洗米用の竹虎・3合竹ざる、一般的な合成樹脂性の白色まな板、木屋・木曽ひのき三角おにぎり型(1個取り)、一般的な合成樹脂性のしゃもじを用いた。器具の消毒は特におこなわず前日に洗浄して自然乾燥したものを使用した。調理の工程は前記述の器具を手洗いしたうえでおこなった。炊飯した飯米は、おにぎり型に成型してプラスチック製容器に移して保管した。炊飯器は家庭用圧力IH炊飯器TIGER社 JKP-G 5合炊き を用いた。以上の条件は特記なき場合は以下の実施例も同じ条件とした。
完成した飯米はおにぎり型に成型した後に市販の使い捨て透明惣菜容器に、検体品目ごとに3個づつ入れたものを1検体とした。おにぎり型に成型後、速やかに人の出入りが無く空調がされない隔離室にて放冷した。
分析依頼時間は初発(検査開始からの時間0時間)、48時間後、72時間後の3回とした。分析の品質は食品衛生法に基づいた一般生菌数の分析に適合した内容として、検体を25℃で恒温保管したものとした。
煮沸消毒やアルコール消毒をすることが無い状態で調理された飯米等が、どの程度の防腐品質を得ることが出来るのかを実験してみた。
結果は水道水で炊飯したものも0.99%塩分濃度の梅酢水で炊飯したものでは大きな違いは見られなかった。48時間後には、どちらも一般生菌数が100万個程度となり食品衛生法に示された、可食に適した細菌数の限界値に近い結果となった。
初発の一般生菌数は水道水による炊飯で600個、0.99%塩分濃度の梅酢水による炊飯で400個とまずまずの試験成績であったが、違いは測定誤差程度であり、0.99%塩分濃度の梅酢水による炊飯では、製造直後から防腐の性能を有していないことが読み取れる。
72時間経過した後にはカビの発生や異臭があることにより腐敗と判定した。
【実施例1】
梅酢21.9グラムに対して水を178.4グラム加えて塩分濃度が2.19%となるようにした梅酢水で炊飯したものを実施例1とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図2に試験結果を示す。
試験に使った梅酢水のpHを独Merck KGaA社のpH試験紙0-14で測定したところおよそpH3程度を示した。
結果は初発より検出限界値以下となり製造直後から防腐の性能を有している。
25℃保管48時間経過においても一般生菌数は検出限界値以下であり防腐遅延効果を有していることが明らかに確認された。
72時間経過した後にはカビの発生や異臭の発生により腐敗と判定した。
【比較例3】
食塩70グラムに対して水を330グラム加えて塩分濃度が3.5%となるようにした食塩水で炊飯したものを比較例3とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図3に試験結果を示す。
試験に使った食塩水のpHを独Merck KGaA社のpH試験紙0-14で測定したところおよそpH5-6程度を示した。
分析依頼時間は初発、24時間後、48時間後の3回とした。分析の品質は食品衛生法に基づいた一般生菌数の分析に適合した内容として、検体を25℃で恒温保管したものとした。
結果は水道水で炊飯したものも3.5%塩分濃度の食塩水で炊飯したものでは大きな違いは見られなかった。48時間後には、どちらも一般生菌数が100万個程度となり食品衛生法に示された、可食に適した細菌数の限界値に近い結果となった。
初発の一般生菌数は水道水による炊飯で600個、3.5%塩分濃度の食塩水で検出限界値以下の試験成績であったので、3.5%塩分濃度の食塩水は、製造直後には防腐の性能を有していることが読み取れる。
しかし、24時間後には11万個と急速に増加した。この試験から防腐性能は塩分以外の成分が関係していることが考えられる。
【実施例2】
梅酢20.0グラムに対して水を176.1グラム加えて塩分濃度が2.04%となるようにした梅酢水で炊飯したものを実施例2とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図4に試験結果を示す。
当日は合計5検体を11時10分に富山県食品研究所に持ち込み、分析依頼をした。
結果は梅酢の塩分濃度を図2で示した2.19%で炊飯したものよりも48時間後での一般生菌数の数値は増えているが望ましい上限値としている10万個は大きく下回り可食に適した結果となった。
図には参考に塩分濃度0.99%での結果も記載してある。
【実施例3】
梅酢18.5グラムに対して水を179.0グラム加えて塩分濃度が1.87%となるようにした梅酢水で炊飯したものを実施例3とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図5に試験結果を示す。
当日は合計5検体を11時10分に富山県食品研究所に持ち込み、分析依頼をした。
結果は梅酢の塩分濃度を図2で示した2.19%で炊飯したものよりも48時間後での一般生菌数の数値は増えているが望ましい上限値としている10万個は大きく下回り可食に適した結果となった。
図には参考に塩分濃度0.99%での結果も記載してある。
【実施例4】
梅酢16.0グラムに対して水を180.4グラム加えて塩分濃度が1.63%となるようにした梅酢水で炊飯したものを実施例4とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図6に試験結果を示す。
当日は合計5検体を11時10分に富山県食品研究所に持ち込み、分析依頼をした。
結果は梅酢の塩分濃度を図2で示した2.19%で炊飯したものよりも48時間後での一般生菌数の数値は増えているが望ましい上限値としている10万個は大きく下回り可食に適した結果となった。
図には参考に塩分濃度0.99%での結果も記載してある。
【実施例5】
梅酢14.1グラムに対して水を186.5グラム加えて塩分濃度が1.41%となるようにした梅酢水で炊飯したものを実施例5とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図7に試験結果を示す。
当日は合計4検体を10時に富山県食品研究所に持ち込み、分析依頼をした。
結果は梅酢の塩分濃度を図2で示した2.19%で炊飯したものよりも48時間後での一般生菌数の数値は増えているが望ましい上限値としている10万個は下回り可食に適した結果となった。
図には参考に塩分濃度0.99%での結果も記載してある。
【実施例6】
梅酢13.2グラムに対して水を189.0グラム加えて塩分濃度が1.31%となるようにした梅酢水で炊飯したものを実施例6とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図8に試験結果を示す。
当日は合計4検体を10時に富山県食品研究所に持ち込み、分析依頼をした。
結果は梅酢の塩分濃度を図2で示した2.19%で炊飯したものと48時間後での一般生菌数の数値は測定誤差程度の数値となり防腐遅延効果が認められる結果となった。
図には参考に塩分濃度0.99%での結果も記載してある。
【比較例2】
梅酢12.0グラムに対して水を188.4グラム加えて塩分濃度が1.20%となるようにした梅酢水で炊飯したものを比較例2とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図9に試験結果を示す。
当日は合計4検体を10時に富山県食品研究所に持ち込み、分析依頼をした。
結果は梅酢の塩分濃度を図1で示した0.99%で炊飯したものよりと48時間後での一般生菌数の数値は変わらない程度まで増えてしまい、食品衛生法に示された、可食に適した細菌数の限界値に近い結果となり、望ましい上限値を上回る結果となった。
図には参考に塩分濃度0.99%での結果も記載してある。
【0032】
ここからは、具材を入れたおにぎりの実施例と比較例を説明する。
【実施例7】
梅酢40グラムに対して水を545グラム加えて塩分濃度が1.37%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に梅干しをタネとして加えたものを実施例7とし、図10に試験結果を示す。
試験は隔離されていない飲食店営業の基準に適合した設備室内で空調をしておこなった。使用した器具類は洗米用の大型の金ざると金属製のボウル、一般的な合成樹脂性の白色まな板、一般的な合成樹脂性のしゃもじ、住友・PEおにぎり型Bタイプ(3個取り)、飯米を一旦木製のはんがいに空けて70度から37度まで放冷したものを用いた。器具の消毒は全て熱湯で煮沸消毒して自然乾燥したものを使用した。手洗いは腕までして、さらにゴム手袋を着用した上で高純度アルコール製剤のパストリーゼ77でまな板や手袋を消毒した。調理した飯米の成型は前記述の器具でおにぎり型に成型して、とろろ昆布で包み具材料となる氷見稲積梅干しを入れた。販売用に用いるの同じ紙製袋の口を折り曲げて、3個のおにぎりを入れて同じ空間で保管した。炊飯器は家庭用圧力スチームIHタイプ炊飯器日立社RZ-WW3000M 5.5合炊き を用いて3合(生米450g)を炊飯した。
この試験は少ない塩分濃度で比較的大量に調理して販売する場合を想定しておこなった。また、場所や器具及び調理者が変わることで結果に不具合が起きないことを確認する目的もあった。
当日は他に前日の16時から梅酢水に浸漬させた生米で炊飯したものと、おかかの具を入れたおにぎりと合計3検体を富山県食品研究所に持ち込み分析依頼をした。
分析依頼時間は初発、24時間後、48時間後の3回とした。分析の品質は食品衛生法に基づいた一般生菌数の分析に適合した内容として、検体を25℃で恒温保管したものとした。
結果は初発より検出限界値以下となり製造直後から良好な成績を有していた。
25℃保管24時間経過で一般生菌数は250個、48時間経過においても一般生菌数は400個であり防腐遅延効果を有していることが明らかであると確認した。
【実施例8】
梅酢40グラムに対して水を545グラム加えて塩分濃度が1.37%となるようにした梅酢水を前日の16時から浸漬させて炊飯した飯米に梅干しをタネとして加えたものを実施例8とし、上記実施例7と同様な試験方法で試験した。図11に試験結果を示す。
結果は実施例7と測定誤差程度の差しか見られなかった。
このことで前日から生米を梅酢水に浸漬させておいても防腐遅延効果が得られることを確認した。
飯米とタネの違いよる防腐遅延効果の測定
おにぎりの製造では非特許文献1のP241では弁当の飯や残飯に梅干しを入れることはpHになんら変化がなく「防腐効果は全く認められなかった」と報告しているが、実施例7と実施例8の結果から「防腐遅延効果のある飯米と組み合わせることで、梅干を入れたおにぎりには防腐遅延効果のあることを発見した。
野菜類を干すことで水分量を減らした後に、調味液に浸けた漬物類でも同様に、おにぎりとして防腐遅延効果のあることがわかった。
当然のことであるが、梅干しや野菜類を浸した調味液はグリシン等に代表されるアミノ酸などの化学的な防腐添加剤を含まない無添加のものを使用した。
【実施例9】
梅酢40グラムに対して水を545グラム加えて塩分濃度が1.37%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に梅干し干大根漬をタネとして加えたものを具材とした飯米を白とろろ昆布で包んだ漬物おにぎりを実施例9とし、上記実施例7と同様な試験方法で試験した。図12に試験結果を示す。
他に梅おかか具を入れたおにぎりと合計2検体を翌日の9時頃に富山県食品研究所に持ち込み分析依頼をした。
分析依頼時間は初発、24時間後、48時間後の3回とした。分析の品質は食品衛生法に基づいた一般生菌数の分析に適合した内容として、検体を25℃で恒温保管したものとした。
結果は初発まで17時間以上経過していたが検出限界値以下となり製造直後から良好な成績を有している。
25℃保管24時間経過でも一般生菌数は検出限界値以下、48時間経過においても一般生菌数は600個であり防腐遅延効果を有していることが明らかであると確認した。
【実施例10】
梅酢21.9グラムに対して水を178.4グラム加えて塩分濃度が2.19%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に干椎茸漬をタネとして加えたものを具材とした漬物おにぎりを実施例10とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図13に試験結果を示す。
結果は初発の一般生菌数は200個となり製造直後から良好な成績を有している。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は1800個と増加をはじめ、48時間経過においては一般生菌数は8万個と増加したが望ましい上限値を下回り、可食に適した防腐遅延効果を有していることを確認した。
【比較例4】
梅酢69.0グラムに対して水を603.0グラム加えて塩分濃度が2.29%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に紫蘇実醤油漬をタネとして加えたものをを具材として、おにぎり型に成型した漬物おにぎりを実施例11とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図14に試験結果を示す。
結果は初発の一般生菌数は3200個となった。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は4万5千個と増加していき、48時間経過においては一般生菌数は790万個となり初期腐敗の状態になっていることを確認した。
【比較例5】
梅酢69.0グラムに対して水を603.0グラム加えて塩分濃度が2.29%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に鶏そぼろをタネとして加えたものを具材とした飯米をおにぎり型に成型したものを実施例12とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。図15に試験結果を示す。
結果は初発の一般生菌数は1万3千個とまずまずの成績となった。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は3万5千個と増加をはじめ、48時間経過においては一般生菌数は1800万個となり腐敗に近い状態になっていることを確認した。
【比較例6】
梅酢69.0グラムに対して水を603.0グラム加えて塩分濃度が2.29%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米にひき肉と卵をタネとして加えたものを具材とした飯米を押し寿司型に成型したものを実施例13とし、上記比較例1と同様な試験方法で試験した。成型する型材は米Hormel Foods Corporationのスパムおにぎり型で成型したものを海苔で巻いた。図16に試験結果を示す。
結果は初発の一般生菌数は2100個となった。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は120万個と急激に増加をはじめ、48時間経過においては一般生菌数は7500万個となりほぼ腐敗した状態になっていることを確認した。
【比較例7】
梅酢40グラムに対して水を545グラム加えて塩分濃度が1.37%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米におかか昆布をタネとして加えたものを具材とした飯米をおにぎり型に成型して白とろろ昆布で包んだものを実施例14とし、実施例7と同様な試験方法で試験した。図17に試験結果を示す。
結果は初発の一般生菌数は8100個となった。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は480万個と急激に増加をはじめ、48時間経過においては一般生菌数は7400万個となりほぼ腐敗した状態になっていることを確認した。
【比較例8】
梅酢40グラムに対して水を545グラム加えて塩分濃度が1.37%となるようにした梅酢水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に、加熱殺菌して水分を十分に飛ばした梅かつおをタネとして加えたものを具材とした飯米をおにぎり型に成型したものを実施例15とし、実施例7と同様な試験方法で試験した。図18に試験結果を示す。
結果は初発の一般生菌数は1万6千個個となった。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は1万3千個と防腐遅延効果が認められたが、48時間経過においては一般生菌数は8500万個と急激に増加してほぼ腐敗した状態になっていることを確認した。
【比較例9】
食塩70グラムに対して水を330グラム加えて塩分濃度が3.5%となるようにした食塩水で炊飯した防腐遅延効果がある飯米に梅干しをタネとして加えたものをで炊飯したものを実施例16とし、上記比較例1と同様な試験方法で成形した飯米に氷見稲積干をタネに挿入して試験した。図19に試験結果を示す。
試験に使った食塩水のpHを独Merck KGaA社のpH試験紙0-14で測定したところおよそpH5-6程度を示した。
当日は他に飯米成形しただけのものと合計2検体を16時50分に富山県食品研究所に持ち込み分析依頼をした。
分析依頼時間は初発、24時間後、48時間後の3回とした。分析の品質は食品衛生法に基づいた一般生菌数の分析に適合した内容として、検体を25℃で恒温保管したものとした。
結果は初発の一般生菌数は4800個となった。
25℃保管24時間経過では一般生菌数は140万個と急激に増加をして、48時間経過においては一般生菌数は横ばいの350万個となり可食の限界数値を僅かに上回る状態になっていることを確認した。
この数値は図3に示した梅干しを入れない3.5%食塩水で炊飯した飯米の結果を上回る数値となった。
以上の試験から防腐性能を有しない飯米に梅干しを入れることは、防腐に関しては効果が無かったと報告した非特許文献1の記述を確認することが出来た。また同じ飯米を使用した比較例3の場合よりも腐敗の進行が早いことから、製造方法等に起因する理由からか、逆効果となる可能性を孕んでいるとも考えられる。
【0033】
上記の実施例と比較例の結果を表に整理すると、表3、表4のようになる。表3は飯米試料(飯米をおにぎり形状にした試料)の一般生菌数分析結果の表である。表4は具材入りのおにぎり試料の一般生菌数分析結果の表である。表において試験結果の○印は48時間経過後の可食に適した評価結果であったものを表し、×印は48時間経過後の可食に適さない評価結果となったものを表している。
【表3】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19