(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113635
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】放熱構造および電力モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240815BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L25/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023100562
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】112104557
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】502121096
【氏名又は名称】朋程科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】蔡 欣昌
(72)【発明者】
【氏名】劉 敬文
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA06
5F136BA32
5F136BB05
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リフロー中の反りを低減する放熱構造及び電力モジュールを提供する。
【解決手段】放熱構造100aは、基板110および環状溝120を含む。基板110は、互いに対向する上表面111および下表面113を有する。環状溝120は、基板110の上表面111に構成され、基板100を構成領域Aと周辺領域Pに分割する。環状溝120は、構成領域Aと周辺領域Pの間に位置する。環状溝120の深さは、基板110の厚さの半分以下である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する上表面および下表面を有する基板と、
前記基板の前記上表面に構成され、前記基板を構成領域と周辺領域に分割する環状溝と、
を含み、
前記環状溝が、前記構成領域と前記周辺領域の間に位置し、前記環状溝の深さが、前記基板の厚さの半分以下である放熱構造。
【請求項2】
前記基板の前記下表面に別々に構成された複数の放熱フィンをさらに含む請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記環状溝と連通し、前記構成領域を少なくとも3つのサブ構成領域に分割する複数の第1補助溝をさらに含む請求項1に記載の放熱構造。
【請求項4】
前記環状溝と連通し、前記周辺領域の4つの角部にそれぞれ延伸する複数の第2補助溝をさらに含む請求項3に記載の放熱構造。
【請求項5】
前記環状溝の深さが、前記基板の厚さの5%~50%の間である請求項1に記載の放熱構造。
【請求項6】
互いに対向する上表面および下表面を有する基板と、
前記基板の前記上表面に構成され、前記基板を構成領域と周辺領域に分割して、前記構成領域と前記周辺領域の間に位置し、前記基板の厚さの半分以下の深さを有する環状溝と、
を含む放熱構造と、
前記放熱構造上に構成され、前記基板の前記構成領域内に位置する複数のラミネート基板と、
前記ラミネート基板上にそれぞれ構成され、それぞれ前記ラミネート基板に電気接続された複数のチップと、
を含む電力モジュール。
【請求項7】
前記放熱構造が、さらに、
前記基板の前記下表面に別々に構成された複数の放熱フィンを含む請求項6に記載の電力モジュール。
【請求項8】
前記放熱構造が、さらに、
前記環状溝と連通し、前記構成領域を少なくとも3つのサブ構成領域に分割する複数の第1補助溝を含み、前記ラミネート基板が、それぞれ前記サブ構成領域に対応して配置された請求項6に記載の電力モジュール。
【請求項9】
前記放熱構造が、さらに、
前記環状溝と連通し、前記周辺領域の4つの角部にそれぞれ延伸する複数の第2補助溝を含む請求項8に記載の電力モジュール。
【請求項10】
前記環状溝の深さが、前記基板の厚さの5%~50%の間である請求項6に記載の電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造および電力モジュールに関するものであり、特に、リフロー(reflow)中の反りを回避することのできる放熱構造およびその放熱構造を採用する電力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力モジュールは、現在、電力変換の主要なコア機器としてさまざまな製品において使用され、その中に電力部品が実装されている。電力モジュールの放熱基板がダイレクト銅クラッド(direct copper-clad)セラミック基板(direct bonded copper, DBC)チップ回路基板に接続されたとき、各材料の熱膨張係数が異なることにより、リフロー中に高温から低温に下がることによって引き起こされる熱変形量も異なるため、それにより、放熱基板の反りが発生し、全体的な構造信頼性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、リフロー中の反りを低減することのできる放熱構造を提供する。
【0004】
本発明は、また、上記の放熱構造を含み、構造全体の反りを効果的に低減して、構造信頼性を向上させることのできる電力モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の放熱構造は、基板および環状溝を含む。基板は、互いに対向する上表面および下表面を有する。環状溝は、基板の上表面に構成され、基板を構成領域と周辺領域に分割する。環状溝は、構成領域と周辺領域の間に位置する。環状溝の深さは、基板の厚さの半分以下である。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、前記放熱構造は、さらに、基板の下表面に別々に構成された複数の放熱フィンを含む。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、前記放熱構造は、さらに、環状溝と連通し、構成領域を少なくとも3つのサブ構成領域に分割する複数の第1補助溝を含む。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、前記放熱構造は、さらに、環状溝と連通し、周辺領域の4つの角部にそれぞれ延伸する複数の第2補助溝を含む。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、前記環状溝の深さは、基板の厚さの5%~50%の間である。
【0010】
本発明の電力モジュールは、放熱構造、複数のラミネート基板、および複数のチップを含む。放熱構造は、基板および環状溝を含む。基板は、互いに対向する上表面と下表面を有する。環状溝は、基板の上表面に構成され、基板を構成領域と周辺領域に分割する。環状溝は、構成領域と周辺領域の間に位置する。環状溝の深さは、基板の厚さの半分以下である。ラミネート基板は、放熱構造上に構成され、基板の構成領域内に位置する。チップは、それぞれラミネート基板上に構成され、それぞれラミネート基板に電気接続される。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、前記放熱構造は、さらに、基板の下表面に別々に構成された複数の放熱フィンを含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、前記放熱構造は、さらに、環状溝と連通し、構成領域を少なくとも3つのサブ構成領域に分割する複数の第1補助溝を含み、ラミネート基板は、それぞれサブ構成領域に対応して配置される。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、前記放熱構造は、さらに、環状溝と連通し、周辺領域の4つの角部にそれぞれ延伸する複数の第2補助溝を含む。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、前記環状溝の深さは、基板の厚さの5%~50%の間である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の放熱構造の設計は、基板の上表面に環状溝を構成する。環状溝の深さは、基板の厚さの半分以下であるため、リフロー中に基板によって生じた応力を解放することができる。したがって、本発明の放熱構造は、リフロー中の反りを低減することができ、本発明の放熱構造を採用する電力モジュールは、構造全体の反りを効果的に低減し、構造信頼性を向上させることができる。
【0016】
本発明の上記の特徴および利点を理解しやすく、かつ明確にするために、以下、実施形態を提供して、添付の図面とともに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の1つの実施形態に係る放熱構造の概略的斜視図である。
【
図1B】
図1Aの放熱構造を別の視角で示した概略的斜視図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る電力モジュールの概略的斜視図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る電力モジュールの概略的斜視図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る電力モジュールの概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1Aは、本発明の1つの実施形態に係る放熱構造の概略的斜視図である。
図1Bは、
図1Aの放熱構造の別の視角からの概略的斜視図である。
図1Cは、
図1AのI-I線に沿った概略的断面図である。
【0019】
図1A、
図1B、および
図1Cを同時に参照すると、本実施形態において、放熱構造100aは、基板110および環状溝120を含む。基板110は、互いに対向する上表面111および下表面113を有する。環状溝120は、基板110の上表面111に構成され、基板110を構成領域Aと周辺領域Pに分割する。環状溝120は、構成領域Aと周辺領域Pの間に位置する。環状溝120の深さDは、基板110の厚さTの半分以下である。
【0020】
詳細に説明すると、本実施形態において、基板110の材料は、例えば、銅またはアルミニウムなどの金属であるが、本発明はこれに限定されない。基板110の形状は、例えば、丸みを帯びた長方形であり、環状溝120と基板110の形状は、コンフォーマルに(conformally)配置されるように示されている。環状溝120は、基板110を貫通せず、好ましくは、環状溝120の深さDは、基板110の厚さTの5%~50%の間である。言い換えると、環状溝120の底部と基板110の上表面111の間には、高さの差があり、その高さの差が、環状溝120の深さDである。
図1Bに示すように、より好ましい放熱効果を得るために、本実施形態の放熱構造100aは、選択的に、基板110の下表面113上に別々に構成された複数の放熱フィン130を含んでもよい。本実施形態において、放熱フィン130の基板110上の正投影は、基板110の構成領域Aと重なるが、本発明はこれに限定されない。図示していない別の実施形態において、放熱構造は、放熱フィンを含まなくてもよいが、それでも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0021】
要約すると、環状溝120は、基板110の上表面111に構成され、環状溝120の深さDは、基板110の厚さTの半分以下であるため、リフロー中に基板110によって生じた応力を解放することができる。そのため、本実施形態の放熱構造100aは、リフロー中の反りを低減することができる。
【0022】
図2は、本発明の1つの実施形態に係る電力モジュールの概略的斜視図である。
図2を参照すると、本実施形態において、電力モジュール10aは、上述した放熱構造100a、複数のラミネート基板200(概略的に3つ示す)、および複数のチップ300(概略的に3つ示す)を含む。ラミネート基板200は、放熱構造100a上に別々に構成され、基板110の配置領域A内に位置する。ラミネート基板200は、例えば、ダイレクトボンド銅(direct bonded copper, DBC)基板であるが、本発明はこれに限定されない。チップ300は、それぞれラミネート基板200上に構成され、それぞれラミネート基板200に電気接続される。ここで、チップ300は、例えば、ワイヤ400を介してラミネート基板200に電気接続されるが、本発明はこれに限定されない。
【0023】
環状溝120の設計によって、本実施形態の放熱構造100aは、リフロー中に基板110によって生じた応力を解放し、反りを低減することができるため、本実施形態の放熱構造100aを使用する電力モジュール10aは、構造全体の反りを効果的に低減し、構造信頼性を向上させることができる
【0024】
注意すべきこととして、以下の実施形態は、上述した実施形態の構成要素の参照番号および内容の一部を引き続き使用するため、同じ参照番号を用いて同じまたは類似する構成要素を示し、同じ技術内容の説明を省略する。省略した部分の説明については、上述した実施形態を参照することができるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0025】
図3は、本発明の別の実施形態に係る電力モジュールの概略的斜視図である。
図2および
図3を同時に参照すると、本実施形態の電力モジュール10bは、
図2の電力モジュール10aに類似する。両者の違いは、本実施形態において、放熱構造100bが、さらに、環状溝120と連通する複数の第1補助溝140を含み、構成領域Aを少なくとも3つのサブ構成領域A1、A2、およびA3に分割することである。すなわち、サブ構成領域A1、A2、およびA3は、第1補助溝140によって分離される。上から見ると、環状溝120および第1補助溝140は、目字形状、すなわち、目字形状の溝として示されている。ラミネート基板200は、それぞれサブ構成領域A1、A2、およびA3に対応して配置される。サブ構成領域A1、A2、およびA3の面積は、ラミネート基板200の面積よりもわずかに大きい。
【0026】
環状溝120および第1補助溝140の設計によって、本実施形態の放熱構造100bは、リフロー中に基板110によって生じた応力を解放し、反りを低減することができるため、本実施形態の放熱構造100bを使用する電力モジュール10bは、構造全体の反りを効果的に低減し、構造信頼性を向上させることができる。
【0027】
図4は、本発明の別の実施形態に係る電力モジュールの概略的斜視図である。
図3および
図4を同時に参照すると、本実施形態の電力モジュール10cは、
図3の電力モジュール10bに類似する。両者の違いは、本実施形態において、放熱構造100cが、さらに、環状溝120と連通し、周辺領域Pの4つの角部Cにそれぞれ延伸する複数の第2補助溝150を含む。上から見ると、環状溝120および第1補助溝140は、目字形状、すなわち、目字形状の溝として示されており、第2補助溝150は、角部Cに延伸する四角の溝である。
【0028】
環状溝120、第1補助溝140、および第2補助溝150の設計によって、本実施形態の放熱構造100cは、リフロー中に基板110によって生じた応力を解放し、反りを低減することができるため、本実施形態の放熱構造100cを使用する電力モジュール10cは、構造全体の反りを効果的に低減し、構造信頼性を向上させることができる。
【0029】
以上のように、本発明の放熱構造の設計は、基板の上表面に環状溝を構成する。環状溝の深さは、基板の厚さの半分以下であるため、リフロー中に基板によって生じた応力を解放することができる。したがって、本発明の放熱構造は、リフロー中の反りを低減することができ、本発明の放熱構造を採用する電力モジュールは、構造全体の反りを効果的に低減し、構造信頼性を向上させることができる。
【0030】
上記の実施形態を参照しながら本発明について説明したが、これらの実施形態は、本発明を限定する意図はない。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、いくつかの変更および修正を行うことができる。そのため、本発明の保護範囲は、添付された請求項によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の放熱構造および電力モジュールは、構造全体の反りを効果的に低減して、構造信頼性を向上させることができ、電力モジュールの分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
100a 放熱構造
110 基板
111 上表面
113 下表面
120 環状溝
130 放熱フィン
A 構成領域
P 周辺領域
【外国語明細書】