(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113645
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】景観グッズ
(51)【国際特許分類】
G09F 1/08 20060101AFI20240815BHJP
G09F 1/12 20060101ALI20240815BHJP
G09F 19/12 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G09F1/08 B
G09F1/12 A
G09F19/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139026
(22)【出願日】2023-08-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2023018619
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523046903
【氏名又は名称】有限会社富士洋行
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉良 雅貴
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でもって、鑑賞者により深い奥行き感を感知させることができる景観グッズを提供する。
【解決手段】所定の景観を鑑賞するための景観グッズXであって、景観グッズ本体1を備え、景観グッズ本体1は、鑑賞者Vの手前側から奥側に向かって延びる第一表示面S1が形成された近景表示部11と、近景表示部11の奥側に設けられ、第一表示面S1越しに視認可能な第二表示面S2が形成された中景表示部12と、を有し、第一表示面S1には、景観における近景が表示され、第二表示面S2には、景観における中景が表示され、第一表示面S1と第二表示面S2とのなす角αが鈍角となるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑賞者の手前側から奥側に沿って配置された複数の表示面が設けられることで、所定の景観を鑑賞可能な景観グッズであって、
前記表示面は、第一表示面が形成された近景表示部、第二表示面が形成された中景表示部及び第三表示面が形成された遠景表示部の内、少なくとも前記中景表示部及び前記遠景表示部を有し、
前記第二表示面には、前記景観における中景が表示され、
前記第三表示面には、前記景観における遠景が表示され、
前記第三表示面に表示される前記遠景は、前記第二表示面に表示される前記中景越しに視認可能に構成され、
前記第三表示面は、その上部が手前側に湾曲又は傾斜している、景観グッズ。
【請求項2】
前記第三表示面の上部を手前側に湾曲、又は平坦に展開可能な湾曲手段が設けられている、請求項1に記載の景観グッズ。
【請求項3】
前記中景表示部と、前記遠景表示部と、を有する景観グッズ本体を備え、
前記第二表示面と前記第三表示面とは、手前側から奥側に沿って間隔を空けて設けられている、請求項1に記載の景観グッズ。
【請求項4】
前記中景表示部の手前側に設けられた前記近景表示部をさらに有し、
前記第一表示面は、鑑賞者の手前側から奥側に向かって延び、前記第一表示面と前記第二表示面とのなす角が鈍角となるように構成されている、請求項3に記載の景観グッズ。
【請求項5】
前記近景表示部及び前記中景表示部は、それぞれ面状体であり、その周縁で互いに連接されている、請求項4に記載の景観グッズ。
【請求項6】
前記近景表示部及び前記中景表示部は、複数の折曲げ線により、屈曲及び平坦に展開可能な、一枚のカード状体として構成されている、請求項5に記載の景観グッズ。
【請求項7】
前記景観グッズ本体の外周を囲う筐体部をさらに備え、
前記筐体部は、前記景観グッズ本体を手前側から視認可能な開口部を有する、請求項3に記載の景観グッズ。
【請求項8】
前記遠景表示部は、前記筐体部の内周面に設けられている、請求項7に記載の景観グッズ。
【請求項9】
前記筐体部は、その内周面に設けられ、前記景観グッズ本体を照射する照明部を有する、請求項7に記載の景観グッズ。
【請求項10】
前記中景表示部及び前記遠景表示部は、一のフレキシブルディスプレイとして構成されている、請求項1に記載の景観グッズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土産品、記念品、展示品、展示装置などに供する景観グッズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、
図10に示すように、切り抜いた複数のカードを並べて、立体感や奥行き感を知覚することができる景観グッズZが存在する。
【0003】
このような景観グッズに係る発明として、特許文献1には、表紙を開けることで、ポップアップ3Dモデルが、平坦に折畳まれていた状態から、押し起こされ、或いは、引き起こされて、独立した中空立体構造にポップアップする景観グッズが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、平たい状態から開いて組み立てたものをしっかり開いたまま飾っておくことができる、或いはより多彩な立体模型を表現することができる景観グッズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3225611号公報
【特許文献2】特開2018-202115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記した従来の景観グッズは、
図11に示すように、通常、所望の景色や建物、オブジェクト等が印刷され、略垂直に配置された複数枚のカードZ1~Z3を、奥行き方向に並べることで、全てのカードが一体となり、鑑賞者に奥行き感、又は立体感を感じさせる。
【0007】
このように構成された景観グッズを鑑賞する際、鑑賞者の眼球は、通常、カードZ1、カードZ2、カードZ3(即ち、手前側から奥側)の順に、または逆順にピントを合わせ、奥行きを知覚する。
【0008】
このように、カードZ1、カードZ2、カードZ3それぞれにピントを合わせて知覚すると、従来の景観グッズは、各カードまでの焦点距離が飛び飛びであり、滑らかに連続していない。
このため、従来の景観グッズは、鑑賞者に一定の奥行き感を感知させられるものの、より深い奥行き感を感知させるために、未だ改良の余地がある。
【0009】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でもって、鑑賞者により深い奥行き感を感知させることができる景観グッズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、鑑賞者の手前側から奥側に沿って配置された複数の表示面が設けられることで、所定の景観を鑑賞可能な景観グッズであって、
前記表示面は、第一表示面が形成された近景表示部、第二表示面が形成された中景表示部及び第三表示面が形成された遠景表示部の内、少なくとも前記中景表示部及び前記遠景表示部を有し、
前記第二表示面には、前記景観における中景が表示され、
前記第三表示面には、前記景観における遠景が表示され、
前記第三表示面に表示される前記遠景は、前記第二表示面に表示される前記中景越しに視認可能に構成され、
前記第三表示面は、その上部が手前側に湾曲又は傾斜している。
【0011】
本発明によれば、簡易な構成でもって、鑑賞者により深い奥行き感を感知させることができる。
このことについて、人の視覚に関して本発明の発明者が得た知見に基づいて、下記に説明する。
【0012】
まず、人の視覚は、生理的奥行き手がかりと、絵画的奥行き手がかりと、がある。
前者の生理的奥行き手がかりは、ピントの調節、輻輳、両眼視差、運動視差等で、眼球等の生体が反応する。
後者の絵画的奥行き手がかりは、重なり合い、遠近法、肌理の勾配、陰影等で、片目でも知覚でき、イメージ等を知覚するものである。
本発明において注目するのは、主に生理的奥行き手がかりであるピントの調節、輻輳等であるが、他の生理的奥行き手がかりや絵画的奥行き手がかりも活用される。
【0013】
ここで、理解が容易となるように、人が見る現実世界を、近景・中景・遠景に分けて説明する。
現実世界におけるピントの調節は、近景では、眼球の水晶体が厚くなり、近景の位置に焦点が合う。
中景又は遠景では、水晶体が焦点距離に応じて薄くなる。特に遠景では、水晶体の厚みは一番薄くなり、ピントの調節は略一定である。
両眼による輻輳について、近景では輻輳角(両目の視線の交差角)が大きく、中景・遠景では、順番に輻輳角が小さくなる。
ただし、同じ視線上の近景・中景・遠景の比較であり、極端に両眼の中心軸が端部にずれたときは異なった値が出る。
【0014】
本発明の発明者は、ピントの調節や輻輳の程度を検証している際に、近景・中景・遠景で、鑑賞時の人の眼の行動パターンに顕著な違いがあることを発見した。
この行動パターンとは、ピントの調節や輻輳等の生理的奥行き手がかりが機能するときの規則的な類型であり、各領域で、眼球が特徴的な行動をするパターンのことである。
【0015】
例として、現実世界の近景で実物(例えば、目の前に机があり、机の上にはノートや鉛筆、コーヒーカップ等があり、少し離れた窓際には、花瓶に入った花等もある状況)を鑑賞する場合について、検証する。
【0016】
まず、現実世界で近景を見る際、焦点が合う対象が多く選択可能であるとき、人は、あちこちに眼球を回転させ、眼の焦点をあちこちに移動させる。
焦点距離についても、机の上のノートから、少し離れた花瓶等に焦点を合わせる。
【0017】
この際、ピントの調節は、前後にも頻繁に移動し、焦点を合せるために、水晶体の厚みが厚くなったり薄くなったりする現象が頻繁に起こる。
また、焦点が左右あちこちに移動することから、眼球も、焦点を合わせるため頻繁に回転する。
【0018】
両眼による輻輳角については、焦点位置が近いため、そもそも大きく、近景の範囲内で両眼の焦点位置が前後にも移動し、輻輳角は大きくなったり小さくなったりし、輻輳角の変化が激しくなる。
即ち、近景を見る際、水晶体の活動が活発となる。
【0019】
次に、現実世界で中景を見る際、例えば窓の外の樹木や隣の家など見る際では、近景を見る際より少し離れたところに焦点位置があり、焦点調節は、近景を見る際よりも前後の移動が少ない。
従って近景を見る際より、水晶体の厚みの変化の程度が小さい。
また、焦点を合わせる位置も、近景を見る際よりばらつきが少ないため、眼球の回転が近景を見る際よりも少なく、小さい。
さらに、眼球の回転角が小さく、回転角のばらつきも少ない。
【0020】
両眼による輻輳についても、近景を見る際と比較して、奥行き方向に焦点を中景の範囲で前後に動かす程度で、変化する角度が小さく、そもそも輻輳角が、近景を見る際より小さい。
即ち、中景を見る際、水晶体の活動は比較的安定している。
【0021】
次に、現実世界で遠景を見る際、焦点距離が略固定され、眼の水晶体の厚みの変化があまり起こらない。
遠景を見る際の眼球の回転も、中景を見る際より小さく、眼球の回転の頻度も中景を見る際より小さい。上下方向の眼球の回転もあるが、両眼による輻輳角は最も小さい。
即ち、遠景を見る際、水晶体の活動は不活発である。
【0022】
この様な知見を得た本発明の発明者が、上記した近景~遠景に相当する部分に、相対的に上記した現実世界で感じるような眼の行動パターンが起こり易くなるように、工夫を凝らしたものが本発明である。
【0023】
特に本発明では、第三表示面(遠景)は、その上部が手前側に湾曲又は傾斜しており、第三表示面は、第二表示面越しに視認可能となされている。
これにより、第三表示面に、遠景として例えば空を表示した場合、立体感があり、迫力の増した景観を表示することができ、景観グッズとしての完成度を高めることができる。
なお、当該効果の原理については、
図12を用いて、発明を実施するための形態において詳述する。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記第三表示面の上部を手前側に湾曲、または平坦に展開可能な湾曲手段が設けられている。
【0025】
このような構成とすることで、製造者等は、表示する景観に応じて、湾曲手段により第三表示面の上部を湾曲させることができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記中景表示部と、前記遠景表示部と、を有する景観グッズ本体を備え、前記第二表示面と前記第三表示面とは、手前側から奥側に沿って間隔を空けて設けられている。
【0027】
このような構成とすることで、第二表示面と前記第三表示面とが別の面として構成されていることで、中景及び遠景について、それぞれ個別に、製造者にとって所望の景観とすることができ、景観のバリエーションを容易に増やすことができる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記中景表示部の手前側に設けられた前記近景表示部をさらに有し、
前記第一表示面は、鑑賞者の手前側から奥側に向かって延び、前記第一表示面と前記第二表示面とのなす角が鈍角となるように構成されている。
【0029】
このような構成とすることで、本景観グッズの近景(第一表示面)に焦点位置を多く設け、且つ鑑賞者に焦点位置を選択できるようになり、鑑賞者は、本景観グッズの近景・中景を、相対的にそれぞれ識別し、深い奥行きを感知することができる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記近景表示部及び前記中景表示部は、それぞれ面状体であり、その周縁で互いに連接されている。
【0031】
このような構成とすることで、景観グッズ本体を軽量化することができる。
【0032】
本発明の好ましい形態では、前記近景表示部及び前記遠景表示部は、複数の折曲げ線により、屈曲及び平坦に展開可能な、一枚のカード状体として構成されている。
【0033】
このような構成とすることで、景観グッズ本体の容易な量産、及び立体形状への形成を行うことができ、製造性が向上する。
【0034】
本発明の好ましい形態では、前記近景表示部及び前記遠景表示部の少なくとも何れか一方は、モニターであり、前記第一表示面及び前記第三表示面の少なくとも何れか一方は、前記モニターのディスプレイである。
【0035】
このような構成とすることで、近景表示部及び遠景表示部の何れか一方に表示する景観を、フレキシブルに変更することができ、本景観グッズの利便性が向上する。
【0036】
本発明の好ましい形態では、前記近景表示部、前記中景表示部及び前記遠景表示部は、一の折畳み線に沿って折畳み可能な一のモニターとして構成され、前記ディスプレイは、前記折畳み線を境に、前記第一表示面である第一ディスプレイと、前記第二表示面及び前記第三表示面を兼ねる第二ディスプレイとに区画され、前記第二ディスプレイには、前記中景及び前記遠景が重畳して表示される。
【0037】
このような構成とすることで、中景表示部も含めて多様な景観の表示、動画によるコンテンツ配信等が可能となり、本景観グッズの利便性が向上する。
【0038】
本発明の好ましい形態では、前記景観グッズ本体の外周を囲う筐体部を備え、前記筐体部は、前記景観グッズ本体を手前側から視認可能な開口部を有する。
【0039】
このような構成とすることで、景観グッズ本体の側方を隠すことができ、景観グッズ全体として、より立体的な空間を演出することができる。
【0040】
本発明の好ましい形態では、前記遠景表示部は、前記筐体部の内周面に設けられている。
【0041】
このような構成とすることで、景観グッズ本体の構成が簡素化される上、遠景の表示内容の変更も、筐体を差替える等して容易に行うことができる。
【0042】
本発明の好ましい形態では、前記筐体部は、その内周面に設けられ、前記景観グッズ本体を照射する照明部を有する。
【0043】
このような構成とすることで、景観グッズ本体の視認性を向上させることができる。
【0044】
本発明の好ましい形態では、前記中景表示部及び前記遠景表示部は、一のフレキシブルディスプレイとして構成されている。
【0045】
このような構成とすることで、景観をフレキシブルに変更することができる上、本景観グッズの軽量化、コンパクト化に資する。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、簡易な構成でもって、鑑賞者により深い奥行き感を感知させることができる景観グッズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の実施形態に係る展開状態の景観グッズ本体を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る景観グッズ本体と筐体部との分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る景観グッズを示す図であって、(a)PP´線断面概略図、(b)QQ´線断面概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る景観グッズの変更例を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る景観グッズの原理を説明するための図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る景観グッズの原理を説明するための図である。
【
図14】従来技術の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
<構成>
以下、
図1~
図3を用いて、本発明の実施形態に係る景観グッズについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る景観グッズを示す。
【0049】
図1及び
図2に示すように、景観グッズXは、景観グッズ本体1と、景観グッズ本体1の外周を囲う筐体部2と、を備えている。
また、景観グッズXは、鑑賞者の手前側から奥側に沿って配置された複数の表示面が設けられることで、所定の景観を鑑賞可能なものである。
【0050】
なお、以下、説明の便宜上、
図1のx軸方向を左右方向、y軸方向を上下方向とする。
また、
図1において、景観グッズ本体1に設けられた折曲げ線La~Lkを、破線或いは一点鎖線で示しており、破線は山折線、一点鎖線は谷折線である。
さらに、
図1において、点線の四角枠は、屈曲された景観グッズ本体1を筐体部2に格納した際の、筐体部2における開口部Oの位置を示している。
【0051】
景観グッズ本体1は、立体的な構成体とした状態で、鑑賞者V(
図9参照)の手前側から奥側に向かって延びる第一表示面S1が形成された近景表示部11と、近景表示部11の奥側に設けられ、第一表示面S1越しに視認可能な第二表示面S2が形成された中景表示部12と、中景表示部12の奥側に設けられ、第三表示面S3が形成された遠景表示部13と、を有している。
【0052】
なお、中景表示部12と遠景表示部13とは、別体に構成され、これにより、第二表示面S2と第三表示面S3とは、手前側から奥側に沿って間隔を空けて設けられている。
また、本実施形態において、複数の表示面は、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13のことであるが、近景表示部11は必ずしも必須の構成ではなく、中景表示部12及び遠景表示部13のみが、景観グッズ本体1における表示面として構成されていても良い。
【0053】
第一表示面S1には近景が、第二表示面S2には中景が、第三表示面S3には遠景が、それぞれ表示される。
また、本実施形態において、第一表示面S1及び第三表示面S3は、製造時点で予め近景表示部11及び遠景表示部13それぞれに印刷されていても良いし、製造後に一枚の画像を近景表示部11及び遠景表示部13それぞれに貼付けることで構成されても良い。
【0054】
ここで、特に
図1に示すように、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13は、それぞれ面状体であり、その周縁で互いに連接されており、複数の折曲げ線La~Lkにより、屈曲及び平坦に展開可能な、一枚のカード状体Cとして構成されている。
なお、上記の一枚のカード状体Cは、素手で屈曲及び展開可能、且つ所定の剛性を有するもので、例えば、ボール紙等の厚紙が好適に用いられる。
【0055】
近景表示部11は、その一表面が第一表示面S1である近景表示部本体11aと、近景表示部本体11aから下方に延設された下方補強部11bと、近景表示部本体11aから右方に延設された側方補強部11cと、を有している。
なお、
図1(及び
図2、
図3、
図5、
図9)において、第一表示面S1に斜線のハッチングを施している。
【0056】
近景表示部本体11aは、左右方向に長い略長方形状に構成され、その上縁で、折曲げ線Laを介して、後述する第一中景表示部12aと連接している。
【0057】
下方補強部11bは、左右方向に長い略長方形状に構成され、その左右幅が近景表示部本体11aの左右幅と略同一であり、折曲げ線Lbを介して、近景表示部本体11aと連接している。
【0058】
側方補強部11cは、上下方向に長い略長方形状に構成され、その上下幅が近景表示部本体11aの上下幅よりも小さい舌片状に構成され、折曲げ線Lcを介して、近景表示部本体11aと連接している。
【0059】
中景表示部12は、第一中景表示部12aと、
図3等において示す第二中景表示部12bと、を有している。
【0060】
第一中景表示部12aは、本実施形態においては、その上縁がレーザーカッター等で加工されることで、全体として(即ち、表面及び裏面双方で)、複数の建築物が並んだ景観を表示する第二表示面S2となされている。
また、第一中景表示部12aの左端には、折曲げ線Ldを介して糊代部gが連接されている。
そして、第一中景表示部12aは、折曲げ線Ldにより折曲げられた糊代部gが、第二側方部13cに接着されることで、第一側方部13bと第二側方部13cとの間に懸架される。
【0061】
第二中景表示部12b(
図3(b)参照)は、
図2において図示していないが、カード状体Cを
図2のように屈曲させた際、第一中景表示部12aよりも手前側であって、近景表示部本体11aに立設されるように設けられている。
詳述すれば、第二中景表示部12bは、近景表示部本体11aに切込みを設け、この切込みに挿込まれる態様で設けられている。
これにより、
図3(b)点線にて示すように、近景表示部本体11aに当接するように、切込みを回動軸として第二中景表示部12bを折畳むことができる。
【0062】
また、第二中景表示部12bは、近景表示部本体11aの左右両端に設けられている。
即ち、第二中景表示部12bは、視線の中心部分には存在せず、景観として、例えば視線の周辺部に大きな木や高い建物を表現したい場合に設けることができる。
【0063】
遠景表示部13は、その一表面に第三表示面S3が形成された遠景表示部本体13aと、遠景表示部本体13aから左方に延設された第一側方部13bと、遠景表示部本体13aから右方に延設された第二側方部13cと、遠景表示部本体13aから上方に延設された上方部13dと、第一側方部13bの上方から左方に延設された懸架部13eと、を有している。
なお、第三表示面S3は、
図1における裏面側に形成され、
図1(及び
図2、
図5)において、当該領域に斜線のハッチングを施している。
【0064】
遠景表示部本体13aは、略長方形状に構成され、その左縁及び右縁で、折曲げ線Le、Lfを介して、第一側方部13b及び第二側方部13cと連接している。
【0065】
第一側方部13bは、略逆L字状に構成され、その下部において、折曲げ線Lgを介して、第一中景表示部12aの右縁と連接している。
なお、近景表示部11は、第一側方部13bとは連接されていない。
【0066】
第二側方部13cは、略コ字状に構成されている。
【0067】
上方部13dは、互いに折曲げ線Lhで連接され、左右方向に略長方形状に構成された、第一上方部13d1と、第二上方部13d2と、により構成されている。
【0068】
第一上方部13d1は、その左右幅が遠景表示部本体13aの左右幅よりも狭く、第三表示面S3の左右幅よりも広くなるように構成され、折曲げ線Liを介して、遠景表示部本体13aと連接している。
また、第一上方部13d1の左縁及び右縁から下方に向かって延びる切込みnにより、上方部13dと、遠景表示部本体13aにおける各切込みn間の部分と、を前後に湾曲させることができる。
【0069】
第二上方部13d2は、その左右幅が第一上方部13d1よりも広く、遠景表示部本体13aよりも狭くなるように構成されており、両端部が、それぞれ左方及び右方に突設して構成されている。
【0070】
懸架部13eは、左右方向に長い略長方形状に構成され、折曲げ線Ljを介して、第一側方部13bの上方に連接されている。
また、懸架部13eの左端には、折曲げ線Lkを介して糊代部gが連接されている。
そして、懸架部13eは、折曲げ線Lkにより折曲げられた糊代部gが、第二側方部13cにおける上方の突設部分に接着されることで、第一側方部13bと第二側方部13cとの間に懸架される。
【0071】
上記の通り構成された景観グッズ本体1は、各折曲げ線La~Lkに沿って屈曲され、各糊代部gが第二側方部13cに接着されることで、
図2に示すように、立体的な構成体として形成される。
【0072】
このとき、第一表示面S1と第二表示面S2とのなす角αが鈍角となるように構成されている。
即ち、本実施形態において、景観グッズ本体1が立体的な構成体として形成された際、第一表示面S1は、手前側から奥側に向かうに伴って上方に傾斜し、第二表示面S2は、上下方向に沿って立設されるように、構成されている。
なお、なす角αは、後述する変更例も含めて、例えば95度~100度程度が好ましく、100度以上としても良い。
【0073】
また、第二表示面S2(第一中景表示部12a)の上方に空間が設けられることで、第三表示面S3は、第二表示面S2越しに視認可能に構成されている。
【0074】
ここで、近景・中景・遠景は、一定の奥行きを有する景観の中で、鑑賞者からの距離によって区切られる所定の景観を示すものであり、近景・中景・遠景それぞれにどのような景観を割当てるかについては、製作者の意図等により任意に決定できる。
ただし、一の景観の中での区切りであるため、近景・中景・遠景それぞれについて、鑑賞者に、観念的に関連がある印象を与えるものであることが望ましい。
【0075】
本実施形態において、中景を示す第二表示面S2は、上記の通り、複数の建築物が並んだ景観であるため、近景を示す第一表示面S1には、例えば、車道や歩道等の路面、海面等の画像を表示することができる。
この他、場合によっては、集落等の低層建物における屋根の集合等も面のように認識できるので、第一表示面S1に表示可能である。
また、遠景を示す第三表示面S3には、例えば、空模様や、これに高層の建築部が映った背景等の画像を表示することができる。
なお、第一表示面S1に表示される景観(画像)は、適宜幾何補正を施して表示することが好ましい。
【0076】
筐体部2は、特に
図2に示すように、正面部21、背面部22、第一側面部23及び第二側面部24により、全体として、四角筒状体に構成されており、景観グッズ本体1の外周を囲うものである。
また、筐体部2は、正面部21において、景観グッズ本体1を手前側から視認可能な、略長方形状の開口部Oを有している。
【0077】
上記の通り構成された筐体部2に、立体的な構成体として形成した景観グッズ本体1を、上方の開口から格納することで、景観グッズXが構成される。
【0078】
このとき、景観グッズ本体1の筐体部2への格納にあたり、それぞれに設けられた着脱手段tにより、景観グッズ本体1を筐体部2へ取付ける。
詳述すれば、着脱手段tは、景観グッズ本体1における第一側方部13b及び第二側方部13cにそれぞれ設けられた着脱用舌片t1と、筐体部2における第一側面部23及び第二側面部24にそれぞれ設けられ、各着脱用舌片t1に対応する着脱用スリットt2と、により構成されている。
【0079】
各着脱用舌片t1は、第一側方部13b及び第二側方部13cの上部及び下部にそれぞれ設けられた、略長方形状のカード状体であり、その上端部のみが、第一側方部13b及び第二側方部13cに接着されている。
各着脱用スリットt2は、それぞれ、手前側から奥側に向かって形成された、一対の切込みとして構成されている。
【0080】
このような構成により、各着脱用舌片t1を各着脱用スリットt2に対して縫うように挿し込むことで(矢印d1)、景観グッズ本体1が筐体部2に安定的に取付けられる。
【0081】
ここで、
図2及び
図3(a)に示すように、上方部13dについて、折曲げ線Lh、Liをそれぞれ折曲げることで、第二上方部13d2の左右端部の一面が、遠景表示部本体13aに当接する。
これにより、遠景表示部本体13a(第三表示面S3)の上部が、部分的に手前側に湾曲した態様となる。
即ち、上方部13d及び各切込みnでもって、第三表示面S3の上部を手前側に湾曲させる湾曲手段rが構成されている。
また、湾曲手段rにおいて、上方部13dを折曲げ線Lh、Liに沿って展開することで、第三表示面S3の上部を平坦な状態に戻す(展開する)ことができる。
【0082】
なお、本実施形態において、湾曲手段rは必ずしも必須の構成ではなく、遠景表示部13に予め折癖が付けられることにより、その上部が湾曲していても良い。
また、遠景表示部13の上部は、丸みを帯びた湾曲の他、直線的に傾斜した態様であっても良い。
【0083】
また、
図3に示すように、景観グッズ本体1は、カード状体Cとは別体に構成され、第二表示面S2及び第三表示面S3(遠景表示部本体13a)との間に配置される、補助景観表示部14を有していても良い。
【0084】
補助景観表示部14は、例えば、第二表示面S2のような複数の建築物が並んだ景観等を、レーザーカッターによる加工、或いは写真にて表示するものであっても良いし、各表示面S1~S3に表示される近景・中景・遠景と総合して、鑑賞者に、観念的に関連がある印象を与えるものであれば、表示される景観は特に限定されない。
また、補助景観表示部14は、その左右端部に糊代部gが設けられ、各糊代部gが第一側方部13b及び第二側方部13cに接着されることで、上記位置に配置される。
【0085】
なお、
図3(a)における点線は、折曲げ線La、Lbにより展開された(矢印d2)、近景表示部11(及び第二中景表示部12b)を示している。
【0086】
<変更例>
以下、
図4~
図10を用いて、景観グッズXの変更例について説明する。
【0087】
例えば、
図4に示すように、筐体部2は、その内周面に設けられ、景観グッズ本体1を照射する照明部Lや、筐体部2全体の底面を構成する底面部Bを有していても良い。
【0088】
照明部Lは、例えば、正面部21や底面部Bの少なくとも何れか一方に設けることができる。
【0089】
照明部Lを正面部21に設ける場合、例えば、
図4(a)に示すように、正面部21について、各側面部23、24よりも上方向に長くすることで、延設部Eを形成する。
そして、延設部Eを、上方部13dのように複数の折曲げ線でもって折曲げることで、略三角柱状体が形成されるような構成とすることができる(矢印d3)。
これにより、延設部Eが略三角柱状体となされた際、下方の傾斜面に照明部Lが配置されるように、延設部Eに照明部Lを設けておくことで、照明部Lを、景観グッズ本体1全体を好適に照射する照射方向とすることができる。
【0090】
照明部Lを底面部Bに設ける場合、例えば、
図4(a)に示すように、底面部Bを背面部22の下縁に、屈曲及び展開可能に連接する構成とすることができる(矢印d4)。
これにより、照明部Lの着脱やメンテナンス等を迅速に行うことができる。
なお、この変更例において、照明部LのON/OFF等に必要な、電源、配線、スイッチ等が当然に設けられることとなるが、
図4においてはその図示を省略している。
【0091】
また、例えば、
図4(b)に示すように、底面部Bについて、筐体部2と別体に構成され、正面部21等他の部分よりも厚みのある板状体として構成しても良い。
これにより、景観グッズX全体の載置時の安定性が向上する。
なお、この変更例における底面部Bは、二段の段付き形状に構成され、下段の上面に正面部21、背面部22、第一側面部23及び第二側面部24の下端が当接されている。
【0092】
また、例えば、
図5に示すように、近景表示部11及び遠景表示部13を、モニターMとしても良く、この場合、第一表示面S1及び第三表示面S3は、各モニターMのディスプレイdとなる。
モニターMは、例えば、スマートフォンや市販のモバイルモニター等をある程度平坦な略長方形状体のものを好適に用いることができる。
【0093】
近景表示部11をモニターMとする場合、例えば、各側面部23、24に、手前側から奥側に向かうに伴って上方に傾斜する切欠きk1を設け、正面部21に、各切欠きk1に連接する切欠きk2を設けることで、
図5に示すように、この切欠きk1、k2にモニターMを挿通する構成とすることができる。
なお、このとき、中景表示部12は、例えば、その左右両端に糊代部gを設けておき、各側面部23、24の内面に接着する構成とすることができる。
【0094】
遠景表示部13をモニターMとする場合、例えば、各側面部23、24に挿通孔hを設け、
図5に示すように、この各挿通孔hにモニターMを挿通する構成とすることができる。
【0095】
なお、
図5において、近景表示部11及び遠景表示部13の何れもモニターMとした変更例を示したが、何れか一方がモニターMであっても良い。
【0096】
また、例えば、
図6及び
図7に示すように、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13が、一枚のカード状体Cとして連接されておらず、分離して構成されていても良い。
【0097】
この変更例において、近景表示部11は、左右に側方補強部11cを設け、
図7(a)(及び
図7(b))に示すように、各側面部23、24に設けられた円形の貫通孔mに挿通させる構成とすることができる。
これにより、近景表示部11が、各貫通孔mに挿通された各側方補強部11cによって全体が支持され、各側方補強部11cを軸に屈曲及び展開が可能である(矢印d5)
なお、上記支持態様の安定性を担保するため、展開状態における各側方補強部11cの上下方向の長さを、各貫通孔mの直径と略同一に構成することが好ましい。
さらに、側方補強部11cの左右端部を各貫通孔mの直径より長くし、段付き形状とすることで、この段部が各貫通孔mに引っかかるようにして、不意の脱離を防止する構成とすることができる。
【0098】
また、この変更例において、遠景表示部13は、上方部13dを有しておらず、
図7(c)に示すように、各側面部23、24に複数のコ字状の切込みを入れ、これを内方に折曲げることで、この舌片を湾曲手段rとすることができる。
即ち、この舌片に遠景表示部本体13aの上部を係止させることで、上方部13dを設けずとも、遠景表示部本体13aの上部を湾曲させることができる。
なお、舌片(湾曲手段r)を内方に折曲げる前の状態に戻すことで、第三表示面S3の上部を平坦な状態に戻す(展開する)ことができる。
【0099】
また、この変更例において、中景表示部12は、
図7(b)に示すように、
図5における変更例と同様に、その左右両端に糊代部gを設ける構成とすることができる。
これにより、各糊代部gが各側面部23、24の内面に接着されることで、中景表示部12が近景表示部11の上方に配置される。
なお、遠景表示部13についても、
図7(c)に示すように、その左右両端に、糊代部gを設ける構成とすることができ、これらが各側面部23、24の内面に接着されることで、遠景表示部13が中景表示部12の後方に配置される。
【0100】
また、例えば、
図8に示すように、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13は、一の折畳み線Fに沿って折畳み可能な一のモニターM´として構成されていても良い。
【0101】
詳述すれば、モニターM´におけるディスプレイdは、折畳み線Fを境に、第一表示面S1である(即ち近景が表示される)第一ディスプレイd1と、第二表示面S2及び第三表示面S3を兼ねる第二ディスプレイd2とに区画されている。
また、第二ディスプレイd2には、中景及び遠景が重畳して表示されている。
なお、モニターM´は、既知のヒンジ機構(図示せず)等により、折畳み線Fに沿って折畳み及び展開が可能である。
【0102】
この変更例において、中景と遠景が同一のディスプレイ(第二ディスプレイd2)に表示されるが、例えば、映像の視点が横方向に動いたとき、絵画的奥行き知覚である運動視差に基づいて、手前側(建物等の中景)と奥側(雲や山等の遠景)が前後に分離して知覚することができる。
これに加え、第一ディスプレイd1に幾何補正して表示された、奥行きのある近景を感知することで、鑑賞者は、深い奥行きを感じる。
【0103】
また、この変更例において、第二ディスプレイd2では、中景と遠景とが物理的に分離していないが、動画にすることで、例えば、表示された映像の視点が左右方向に移動することで、運動視差により、これらははっきりと分離して知覚できる。
さらに、この左右方向への移動において、第二ディスプレイd2に表示された中景及び遠景について、中景を遠景よりも大きく(速く)移動させることで、運動視差により前後を明確に知覚することができる。
【0104】
なお、この変更例において、第一ディスプレイd1と第二ディスプレイd2とは、折畳み線Fを境に分離された二つのディスプレイであっても良いし、一のモニター共に折畳み線Fを境に折畳み可能な、フォルダブルディスプレイとして構成されていても良い。
また、この変更例において、筐体部2は、必ずしも必須の構成ではない。
【0105】
また、
図9に示すように、遠景表示部13は、筐体部2の内周面に設けられていても良い。
【0106】
詳述すれば、
図9に示す例において、景観グッズ本体1は、
図2等に示した例から、遠景表示部13に相当する箇所が切除されている。
また、
図9に示す筐体部2は、
図2等に示した例から、背面部22に切込みn等が設けられることで、湾曲手段rを含む遠景表示部13が構成されている。
【0107】
このような構成とすることで、景観グッズ本体1の構成が簡素化される上、遠景の表示内容の変更も、筐体部2を差替える等して容易に行うことができる。
【0108】
【0109】
詳述すれば、
図10に示す例において、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13は、一のフレキシブルディスプレイDとして構成されている。
また、フレキシブルディスプレイDは、縦長の略直方体状に構成された筐体部2の開口部Oを覆うように、開口部Oに嵌込まれて設けられている。
【0110】
なお、図示は省略するが、筐体部2の外面等には、フレキシブルディスプレイDの表示のON・OFFを切替える電源ボタン等が設けられていても良い。
また、その表示内容は、例えば、フレキシブルディスプレイDのタッチセンサでもって、画面上から直接変更可能であって良く、近景を表示しない表示内容としても良い。
また、この変更例においても、他の変更例のように、湾曲状態と平坦とを切り替えられる湾曲手段が設けられていても良い。
【0111】
ここで、
図10に示す景観グッズXは、筐体部2自体の上方が手前側に湾曲しており、これに伴い開口部Oもその上部が湾曲している。
そして、この開口部Oに嵌め込まれたフレキシブルディスプレイDも、筐体部2の形状に合わせて、上部が湾曲している。
なお、筐体部2やフレキシブルディスプレイDの上部は、
図10に示す丸みを帯びた湾曲の他、直線的に傾斜した態様であっても良い。
【0112】
このような構成とすることで、メモリに保存した多数の静止画及び動画を鑑賞することができる上、動画を再生するときに発生する運動視差も感知でき、より立体感のある映像を鑑賞することできる。
また、再生する映像の構図を変化させることで、近景・中景・遠景、中景・遠景、遠景のみ等の組合わせで映像を表示できる。
【0113】
以下、本変更例において表示する映像の作成方法について説明する。
元になる映像は、動画撮影カメラで撮影した動画から作るのが一般的であるが、3DCGで作った映像からでも製作できる。
ここでは、動画用カメラで撮影した動画について、特に動画像の一枚一枚の映像で前景・中景・遠景が一枚の画像に収まった場合を説明する。
なお、一般的には秒30コマで撮影するが、より多くても少なくても良い。動画は静止画が複数枚つづいた画像の集合体である。
【0114】
平面のディスプレイに表示するときは、そのまま加工しないで表示すれば、平面の画像として鑑賞できる。
このところ、
図10に示す景観グッズXでは、上部が湾曲した表示面(フレキシブルディスプレイD)に表示するが、そのまま表示すると、手前に湾曲した部分の映像部分は大きく見える。同時に鑑賞者の焦点距離が手前側になる。
【0115】
これにより、鑑賞者は、物理的奥行きを知覚するが、湾曲部の映像が大きく見える欠点がある。
このため、映像全体として、鑑賞者がディスプレイの鑑賞者視点より見たとき、湾曲部のみが大きく見えるので、この部分を縮小する。
また、この際、鑑賞者が平面の表示面に表示したときと同じような大きさの映像が見えるように補正することが望ましい。
【0116】
以下、本変更例における運動視差について説明する。
運動視差は、対象または視点が移動した場合に発生する。1枚の映像では発生しない。
例えば、映像の撮影視点が画面の横方向に動いた場合は、手前部分の場所ほど横方向の移動量が大きく、遠景にいくほど移動量が小さい映像になる。これはアニメでも頻繁に使われている。
この場合、そもそも、フレキシブルディスプレイDの上部の湾曲部の映像のみが大きく見える欠点がある。
【0117】
次に、映像の撮影視点が画面の奥行き方向に動いた場合、具体的には、電車や飛行機が移動した場合について説明する。
映像内の視点が奥行き方向に移動するので、まず映像の撮影視点が奥行き方向に移動する。
これにより、映像の各部の要素が徐々に大きくなり、その場所を通過し次に見える映像の要素が大きくなって見える。このような映像は、映像の中に入っていくような没入感を発生させ、感知できる。
しかし、この場合も、上記同様に、フレキシブルディスプレイDの上部の湾曲部の映像のみが大きく見える欠点がある。
【0118】
上記どちらの場合も、映像全体として、鑑賞者がディスプレイの鑑賞者視点より見たとき、湾曲部の映像のみが大きく見えるため、この部分を縮小する。
また、この際、鑑賞者が平面の表示面に表示したときと同じような大きさの映像が見えるように補正するのが望ましい。
【0119】
<原理>
以下、
図11及び
図12を用いて、景観グッズXについて、鑑賞者Vにより深い奥行き感を感知させることができる原理について説明する。
【0120】
<<各表示面の配置関係に関する原理>>
人は現実世界で奥行きを知覚し、深さを感じるとき、奥行き方向に長い(深い)オブジェクトがあるとき、このオブジェクトの表面に眼の焦点を合わせ、表面を舐めるように奥行き方向(または手前方向)に焦点を移動することで、深い奥行きを感じると言われている。
【0121】
そして、景観グッズ本体1の第一表示面S1上においても、開口部Oを介して略正面から景観グッズ本体1を視認することで、スケールとしては小さいものの、同様の現象が発生することが確認できた。
【0122】
具体的には、
図11に示すように、鑑賞者Vの視点について、第一表示面S1を鑑賞するとき、その焦点は点p1から点p2まで連続的に変化し、眼球が膨張収縮して調節が変化する。その上、焦点は、第一表示面S1の全領域であちこちに移動できる。
このとき、眼球の回転についても、焦点を左右に動かすことが可能なので、大きく回転する。また、輻輳角についても、点p1から点p2で大きく異なり、輻輳角も大きく、変化量も大きい。
【0123】
このように、眼球が景観グッズ本体1を鑑賞することで、第一表示面S1の中で、鑑賞者の連続した焦点の移動が発生し、上記した、現実世界で行うような眼の行動パターンが発生することで、深い奥行きを感知する。
【0124】
より詳述すれば、近景表示部11では、焦点は第一表示面S1上のどこにでも焦点を合わすことができ、焦点候補が多数あり、これらの焦点位置にピント及び輻輳が合う。
また、中景表示部12では、第二表示面S2上までの距離を焦点位置として、ピント及び輻輳が合う。
【0125】
さらに、遠景表示部13では、第三表示面S3上までの距離を焦点位置(例えば点p3等)として、ピント及び輻輳が合う。
なお、遠景表示部13は、中景表示部12よりも奥に位置していることから、その焦点位置は、他の表示面に比して一番遠く、輻輳角は一番小さい。
【0126】
このように、景観グッズ本体1上の焦点位置の配置位置と分布数とが、現実世界のそれと酷似しており、近景・中景・遠景を総合すると、現実世界での眼の行動パターンと酷似している現象を、景観グッズXにおいて発生させることができる。
【0127】
<<湾曲手段に関する原理>>
まず、実世界において、観察者の視点の前方方向に限ると、観察者の位置下部から地面が奥行き方向に続いていく。
【0128】
次に、上空面の空へと続くが、空は、観察者の上空の観察位置に相当する箇所から奥行き方向に続いている。正確には地球が丸いので円弧状曲面になっており、特に観察者は空を下から見上げるので、そのように見える。
そして、この地面と空との間に、建物や樹木等が奥行き方向に配置されている。本発明は、このことに注目している。
【0129】
ここで、仮に、第三表示面S3の上部が湾曲手段rにより湾曲せず、平面的に立設している場合、第二表示面S2(建物等の中景)越しに見える第三表示面S3(空)は、
図12(b)に示すように、第二表示面S2側寄りの焦点距離(B2)よりも、より上側の上空の位置は焦点距離(B1)の方が大きくなる。
実世界に置き換えた場合、空を表示した第三表示面S3は、その上部が手前に位置し、その下部が奥側に位置する態様が正確であるため、これは実世界の態様と大きく矛盾する。
【0130】
このところ、本願発明では、湾曲手段rを設けることで、
図12(a)に示すように、第二表示面S2側寄りの焦点距離(A2)よりも、より上側の上空の位置は焦点距離(A1)の差(A1-A2)が、より小さくなるように、上部を湾曲させられるため、実世界の態様に近づける、または整合させることができる。
【0131】
図12(a)は、湾曲した第三表示面S3の断面を示しているが、この図では、第三表示面S3の変曲点は視線の上の方にある。直線から曲面になる始点が変曲点であるが、この位置は任意の位置に設定できる。
従って、例えば、変曲点が下方にある場合と上方にある場合とによって湾曲面の湾曲の位置が変わる。同時にこの曲面の曲率も任意である。
これらを総合すると多様な曲面が設定可能である。
【0132】
また、この断面図において、必ずしもA1<A2にならない。
従って、第二表示面S2と第三表示面S3、それぞれの面の位置を見る距離(焦点距離)の差(A1-A2)は、第三表示面S3が立設している場合は上に行くほど大きくなるが、第三表示面S3が湾曲している場合は、湾曲することによってその差を小さくすることができる。
場合によっては、値をマイナスにすることができる。マイナスの値になると第三表示面S3の上方の焦点距離A1が、第三表示面S3の下方の焦点距離A2より小さくできる。
また、差(A1-A2)の値が、マイナスにならない場合であっても、現実と景観グッズの見え方(視覚現象)の矛盾をより小さくすることができる(即ち、第三表示面S3を湾曲手段rにより湾曲させることで、第三表示面S3の上方の焦点距離A1と、下方の焦点距離A2の差をより小さくすることができる)。
【0133】
なお、人間が利用する奥行き手がかりは、調節や輻輳等といった生理的奥行き手がかりと、ものの陰重、肌理の勾配や陰影等の絵画的奥行き手がかりがある。
ここで、上記生理的奥行き手がかりが知覚できる距離は、せいぜい20m程度であると言われている。
このところ、実世界では、空の雲等までの距離は、非常に距離があるので上記生理的奥行き手がかりは機能しない。この部分では、観察者が知覚するのは、上記絵画的奥行き手がかりである。
しかし、実世界を縮小した景観グッズXの大きさは、一般的に20mより小さく、景観グッズXを鑑賞する観察者の眼球には上記生理的奥行き手がかりが十分働く。
【0134】
このように、景観グッズXの観察者の眼球は、調節や輻輳等といった生理的奥行き手がかりが必ず働くため、それらによる効果が必須となり、且つ多少不正確でも、生理的奥行き手がかりを知覚する環境下で、大筋で実世界と矛盾しない、または実世界との矛盾を小さくすることが求められる。
このため、
図12(a)に示したような態様とすることで、
図12(b)に示したような、本来の眼球の生理的奥行き手がかりと現在視認している画像とが異なる現象である、という矛盾をより低減し、従来品(
図13参照)よりも不快感が少なく快適、且つよりリアルに、景観を鑑賞することができる。
【0135】
<効果>
本実施形態によれば、上記の通りの原理でもって、簡易な構成で、鑑賞者Vにより深い奥行き感を感知させることができる。
【0136】
また、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13を、それぞれ面状体とし、その周縁で互いに連接することで、景観グッズ本体1を軽量化することができる。
【0137】
また、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13について、これらをカード状体Cとして構成とすることで、景観グッズ本体1の容易な量産、及び立体形状への形成を行うことができ、製造性が向上する。
【0138】
また、第三表示面S3が形成された遠景表示部13により、鑑賞者Vに、より複雑、且つ立体的な景観を視認させることができる。
【0139】
また、近景表示部11及び遠景表示部13の少なくとも何れか一方をモニターMとすることで、何れか一方に表示する景観を、フレキシブルに変更することができ、景観グッズXの利便性が向上する。
【0140】
また、近景表示部11、中景表示部12及び遠景表示部13を、一の折畳み線Fに沿って折畳み可能な一のモニターM´として構成することで、中景表示部12も含めて多様な景観の表示、動画によるコンテンツ配信等が可能となり、景観グッズXの利便性が向上する。
【0141】
また、筐体部2により、景観グッズ本体1の側方を隠すことができ、景観グッズX全体として、より立体的な空間を演出することができる。
【0142】
また、照明部Lを設けることにより、景観グッズ本体1の視認性を向上させることができる。
【0143】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0144】
例えば、
図3において、中景表示部12が、第一中景表示部12a及び第二中景表示部12bの2枚で構成されている例を示したが、第一中景表示部12aのみでも良いし、3枚以上設けられる(近景表示部本体11aに2枚以上立設される)構成としても良い。
【0145】
また、
図1等において、第二表示面S2が、第一中景表示部12aの上縁がレーザーカッター等で加工されることで形成されている例を示したが、第一表示面S1や第三表示面S3と同様に、第一中景表示部12aに所定の画像を表示する構成としても良い。
【0146】
また、景観グッズ本体1において、遠景表示部13は、必須の構成ではないし、第二表示面S2に建築物の内装を表示し、第一表示面S1に建築物の床面を表示しても良い。
【0147】
また、第一表示面S1と第二表示面S2とのなす角αは鈍角であれば良く、景観グッズXを所定の載置面に載置した際、第一表示面S1が載置面と略平行となり、第二表示面S2が手前側から奥側に向かって傾斜する構成としても良い。
この場合、鑑賞者Vが、斜め上方から景観グッズ本体1を視認することで、本実施形態において、略正面から景観グッズ本体1を視認した際と同様の奥行き感を感知することができる。
【符号の説明】
【0148】
X 景観グッズ
1 景観グッズ本体
11 近景表示部
12 中景表示部
13 遠景表示部
S1 第一表示面
S2 第二表示面
S3 第三表示面
C カード状体
2 筐体部
21 正面部
22 背面部
23 第一側面部
24 第二側面部
O 開口部
L 照明部
E 延設部
B 底面部
D フレキシブルディスプレイ
V 鑑賞者
【手続補正書】
【提出日】2023-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑賞者の手前側から奥側に沿って配置された複数の表示面が設けられることで、所定の景観を鑑賞可能な景観グッズであって、
前記表示面は、第一表示面が形成された近景表示部、第二表示面が形成された中景表示部及び第三表示面が形成された遠景表示部の内、少なくとも前記中景表示部及び前記遠景表示部を有し、
前記第二表示面には、前記景観における中景が表示され、
前記第三表示面には、前記景観における遠景が表示され、
前記第三表示面に表示される前記遠景は、前記第二表示面に表示される前記中景越しに視認可能に構成され、
前記第三表示面は、その上部が手前側に湾曲又は傾斜している、景観グッズ。
【請求項2】
前記第三表示面の上部を手前側に湾曲、又は平坦に展開可能な湾曲手段が設けられている、請求項1に記載の景観グッズ。
【請求項3】
前記中景表示部と、前記遠景表示部と、を有する景観グッズ本体を備え、
前記第二表示面と前記第三表示面とは、手前側から奥側に沿って間隔を空けて設けられている、請求項1に記載の景観グッズ。
【請求項4】
前記中景表示部の手前側に設けられた前記近景表示部をさらに有し、
前記第一表示面は、鑑賞者の手前側から奥側に向かって延び、前記第一表示面と前記第二表示面とのなす角が鈍角となるように構成されている、請求項3に記載の景観グッズ。
【請求項5】
前記近景表示部及び前記中景表示部は、それぞれ面状体であり、その周縁で互いに連接されている、請求項4に記載の景観グッズ。
【請求項6】
前記近景表示部及び前記中景表示部は、複数の折曲げ線により、屈曲及び平坦に展開可能な、一枚のカード状体として構成されている、請求項5に記載の景観グッズ。
【請求項7】
前記景観グッズ本体の外周を囲う筐体部をさらに備え、
前記筐体部は、前記景観グッズ本体を手前側から視認可能な開口部を有する、請求項3に記載の景観グッズ。
【請求項8】
前記遠景表示部は、前記筐体部の内周面に設けられている、請求項7に記載の景観グッズ。
【請求項9】
前記筐体部は、その内周面に設けられ、前記景観グッズ本体を照射する照明部を有する、請求項7に記載の景観グッズ。