(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113647
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】振動低減部材
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176459
(22)【出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2023018327
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 勇一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 力
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AD07
3J048BF01
3J048CB17
3J048CB18
3J048CB22
3J048CB24
(57)【要約】
【課題】特定の周波数の振動を効率的に大幅に低減することができ、構造が簡単で製造が容易な振動低減部材を提供する。
【解決手段】振動低減部材1が、開口部2を有するフレーム部3と、開口部2内に位置する振動部4を有する。振動部4は質量部5と接続片部6を有する。接続片部6は、開口部2の内周に接続された外側接続部6aと、質量部5に接続された内側接続部6bを含む。開口部2の内部の振動部4が位置する部分以外の空間は未充填である。質量部5と接続片部6がばねマス共振器を構成する。フレーム部3と質量部5と接続片部6は一体的に形成され、質量部5および接続片部6と、フレーム部3の、それらを包囲する部分は、同一の平面内に位置し、振動部4は少なくとも前記平面の面内方向に振動する。振動低減部材1の全体の固有振動数と、1つの振動部4の固有振動数との差が800Hz未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するフレーム部と、前記開口部内に位置する振動部と、を有し、
前記振動部は、質量部と、接続片部と、を有し、
前記接続片部は、前記開口部の内周に接続された外側接続部と、前記質量部に接続された内側接続部と、を含み、
前記開口部の内部の、前記振動部が位置する部分以外の空間は、未充填であり、
前記質量部と前記接続片部とがばねマス共振器を構成しており、
前記フレーム部と前記質量部と前記接続片部とは一体的に形成されており、互いに接続されている前記質量部および前記接続片部と、前記フレーム部の、少なくとも当該質量部および当該接続片部を包囲する部分とは、同一の平面内に位置しており、前記振動部は少なくとも前記平面の面内方向に振動し、
前記振動低減部材の全体の固有振動数と、1つの前記振動部の固有振動数との差が800Hz未満であることを特徴とする振動低減部材。
【請求項2】
前記振動低減部材の全体の固有振動数と、1つの前記振動部の固有振動数との差が300Hz以下である、請求項1に記載の振動低減部材。
【請求項3】
前記振動低減部材の全体の固有振動数が5Hz以上3000Hz以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項4】
前記振動部の固有振動数が5Hz以上3000Hz以下である、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項5】
前記フレーム部の振動方向と前記振動部の振動方向が一致している、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項6】
前記振動部は前記フレーム部よりも大きく振動する、請求項5に記載の振動低減部材。
【請求項7】
前記フレーム部に複数の前記開口部が設けられており、複数の前記開口部のそれぞれの内部に前記振動部が配置されている、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項8】
前記接続片部の前記外側接続部と前記内側接続部との間の中間部の少なくとも一部が、前記開口部の内周の1辺と平行に延びている、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項9】
前記接続片部の前記中間部の少なくとも一部が、前記振動部の振動方向と平行に延びている、請求項8に記載の振動低減部材。
【請求項10】
前記フレーム部と前記振動部とを有する単位構造が複数並んで配置されており、複数の前記単位構造が一体化している、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項11】
前記フレーム部と前記振動部とを有する板状の複数の単位構造が互いに連結され、前記単位構造の各々が側壁をそれぞれ構成する中空の角筒体が形成されている、請求項1または2に記載の振動低減部材。
【請求項12】
前記角筒体が複数並んで配置されており、複数の前記角筒体が一体化している、請求項11に記載の振動低減部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動低減部材に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な乗物や機器において振動の伝達を遮断するための振動低減部材が用いられている。特許文献1の制振構造体は、柱や壁で区画された内部空間を形成する骨格部と、骨格部に一端が連結されて内部空間内に延在する柱状の伝導部と、内部空間内にあり、伝導部に連結されているとともに伝導部に対して拡張している球状の励振部と、少なくとも励振部に接触する流動材と、を備えている。この制振構造体の骨格部と伝導部と励振部とは一体化されている。
【0003】
特許文献2の振動低減装置は、車体に装着されて一定空間を一定領域に区画する十字形状のフレームと、フレームによって区画される各領域のコーナー部に構成され、それぞれの固有振動数を有するように構成されて車体からフレームを通じて伝達される振動を遮断する振動子と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6911592号公報
【特許文献2】特開2020-91481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制振構造体では、骨格部の内部空間に流動材が充填されており、骨格部の振動は、骨格部に接触する流動材によって吸収されて減衰する。しかし、特許文献1では骨格部および流動材の材料や寸法や固有振動数については決められていない。すなわち、特許文献1は、特定の周波数の振動を重点的に抑えるものではない。また、特許文献1の制振構造体は、大きな振幅で振動する球状の励振部が流動材と接触および衝突することにより振動を低減するものであって、骨格部は振動低減に寄与しない。そして、特許文献1では、球状の励振部を形成するとともに、内部空間に流動材を充填して漏出しないように保持するため、制振構造体の製造が非常に煩雑である。
【0006】
特許文献2の振動低減装置は、フレームによって区画される各領域のコーナー部に振動子を有している。フレームは振動低減に実質的に寄与せず、振動子のみによって振動を遮断する構成である。しかし、現状では、特許文献2の振動低減装置よりもさらに大きな振動低減効果が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、特定の周波数の振動を効率的に大幅に低減することができ、構造が簡単で製造が容易な振動低減部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動低減部材は、開口部を有するフレーム部と、前記開口部内に位置する振動部と、を有し、前記振動部は、質量部と、接続片部と、を有し、前記接続片部は、前記開口部の内周に接続された外側接続部と、前記質量部に接続された内側接続部と、を含み、前記開口部の内部の、前記振動部が位置する部分以外の空間は、未充填であり、前記質量部と前記接続片部とがばねマス共振器を構成しており、前記フレーム部と前記質量部と前記接続片部とは一体的に形成されており、互いに接続されている前記質量部および前記接続片部と、前記フレーム部の、少なくとも当該質量部および当該接続片部を包囲する部分とは、同一の平面内に位置しており、前記振動部は少なくとも前記平面の面内方向に振動し、前記振動低減部材の全体の固有振動数と、1つの前記振動部の固有振動数との差が800Hz未満であることを特徴とする。
前記振動低減部材の全体の固有振動数と、1つの前記振動部の固有振動数との差が300Hz以下であってよい。
前記振動低減部材の全体の固有振動数が5Hz以上3000Hz以下であってよい。
前記振動部の固有振動数が5Hz以上3000Hz以下であってよい。
前記フレーム部の振動方向と前記振動部の振動方向が一致していてよい。
前記振動部は前記フレーム部よりも大きく振動してよい。
前記フレーム部に複数の前記開口部が設けられており、複数の前記開口部のそれぞれの内部に前記振動部が配置されていてよい。
前記接続片部の前記外側接続部と前記内側接続部との間の中間部の少なくとも一部が、前記開口部の内周の1辺と平行に延びていてよい。
前記接続片部の前記中間部の少なくとも一部が、前記振動部の振動方向と平行に延びていてよい。
前記フレーム部と前記振動部とを有する単位構造が複数並んで配置されており、複数の前記単位構造が一体化していてよい。
前記フレーム部と前記振動部とを有する板状の複数の単位構造が互いに連結され、前記単位構造の各々が側壁をそれぞれ構成する中空の角筒体が形成されていてよい。
前記角筒体が複数並んで配置されており、複数の前記角筒体が一体化していてよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、特定の周波数の振動を効率的に大幅に低減することができ、構造が簡単で製造が容易な振動低減部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の振動低減部材の正面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態の振動低減部材の斜視図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態の振動低減部材の斜視図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態の振動低減部材の斜視図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態の振動低減部材の斜視図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態の振動低減部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の振動低減部材1を示す平面図である。本実施形態の振動低減部材1は、矩形状の複数の開口部2を有するフレーム部3と、複数の開口部2のそれぞれの内部に位置する振動部4と、を有する。開口部2の内部に位置する振動部4は、質量部5と接続片部6とを有する。接続片部6は、矩形状の開口部2の内周に接続された外側接続部6aと、質量部5に接続された内側接続部6bとを含む。本実施形態の接続片部6の外側接続部6aと内側接続部6bとの間の中間部6cの少なくとも一部が、開口部2の内周の1辺と平行に延びている。そして、この中間部6cの少なくとも一部が、後述する振動部4の振動方向と平行に延びている。開口部2の内部の、振動部4が位置する部分以外の空間は、未充填の開放空間である。フレーム部3と質量部5と接続片部6とは同一の樹脂材料により一体的に形成されており、同一の平面内に位置している。その材料の一例としては、ヤング率が0.1MPa以上10GPa未満、好ましくは1MPa以上1GPa未満、より好ましくは5MPa以上500MPa未満の樹脂材料が挙げられる。
【0012】
フレーム部3と質量部5と接続片部6とを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PLA樹脂(ポリ乳酸樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)などが用いられることが望ましい。また、この樹脂材料として用いられる各種の架橋(加硫)ゴムとしては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム(U)(光硬化性ウレタンゴムを含む)、シリコーンゴム(Q)などが望ましい。また、この樹脂材料として用いられる各種の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが望ましい。これらの樹脂材料は単一組成の重合体であってもよいし、樹脂材料が複数混合されたものであってもよいし、各種のオイルや添加剤を含んだ組成物の状態であってもよい。また、これらの樹脂材料はバイオマス由来の樹脂材料であってもよい。
【0013】
樹脂材料として用いられる架橋(加硫)ゴムの一例であるウレタンゴムの原料となるイソシアネート成分としては、ポリイソシアネート単量体およびポリイソシアネート誘導体が挙げられる。ポリイソシアネート単量体としては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体、脂環族ポリイソシアネート単量体、芳香族ポリイソシアネート単量体、および、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、および、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。これらは単独で使用でき、また、2種類以上併用することもできる。
【0014】
ポリイソシアネート誘導体としては、上記したポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変成体が挙げられる。より具体的には、ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、多量体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。また、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートも挙げられる。これらは、単独で使用でき、また、2種類以上併用することもできる。
【0015】
ウレタンゴムの原料となるアルコール成分としては、1価の高分子量アルコールまたは多価の高分子量アルコール(高分子量ポリオール)が好ましい。1価の高分子量アルコールとしては、例えば、片末端封鎖マクロジオールが挙げられる。片末端封鎖マクロジオールとしては、例えば、ノニオン性基を含有する片末端封鎖マクロジオールが挙げられる。ノニオン性基は、例えば、片末端がアルコキシ基により封止されたポリオキシエチレン基である。ノニオン性基を含有する片末端封鎖マクロジオールとしては、例えば、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、アルキル基で片末端が封止されたアルコキシエチレングリコール(モノアルコキシポリエチレングリコール)が挙げられる。アルキル基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。アルキル基として、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチルおよびt-ブチルが挙げられ、好ましくは、メチルおよびエチルが挙げられる。片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとして、より具体的には、メトキシポリオキシエチレングリコール(MPEG)、および、エトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0016】
多価の高分子量アルコールとしては、公知のマクロポリオールが挙げられる。マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらは、単独で使用でき、また、2種類以上併用することもできる。多価の高分子量アルコールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0017】
ウレタンゴムの1種である光硬化性ウレタンゴムの含有成分としては、例えばヒドロキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。ヒドロキシ基含有不飽和化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和基、および、1つ以上のヒドロキシ基を併有する化合物である。エチレン性不飽和基含有基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、プロペニルエーテル基、アリルエーテル基およびビニルエーテル基が挙げられる。なお、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを示す。これらのエチレン性不飽和基含有基のうち、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
【0018】
エチレン性不飽和基含有基が(メタ)アクリロイル基である場合、ヒドロキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを示す。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、モノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシルモノ(メタ)アクリレート、モノヒドロキシルポリ(メタ)アクリレート、および、ポリヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。モノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートは、1分子中に、ヒドロキシ基を1つ有し、(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物である。モノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HE(M)A)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートは、1分子中に、ヒドロキシ基を複数有し、(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物である。ポリヒドロキシルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。モノヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートは、1分子中に、ヒドロキシ基を1つ有し、(メタ)アクリロイル基を複数有する化合物である。モノヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートは、1分子中に、ヒドロキシ基を複数有し、(メタ)アクリロイル基を複数有する化合物である。ポリヒドロキシルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
ウレタンゴムを含む3Dプリンター用硬化性樹脂組成物の原料となるラジカル反応性希釈剤としては、例えば、芳香族炭化水素骨格を有する反応性化合物、脂環式炭化水素骨格を有する反応性化合物、鎖状脂肪族炭化水素骨格を有する反応性化合物、鎖状エーテル骨格を有する反応性化合物、脂環式エーテル骨格を有する反応性化合物、アミド骨格を有する反応性化合物、オキシアルキレン骨格を有する反応性化合物、(メタ)アクリロイル基およびビニル基併有化合物、ポリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、および、不飽和カルボン酸アリルエステルが挙げられる。
【0020】
芳香族炭化水素骨格を有する反応性化合物としては、例えば、3-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、および、α-メチルスチレンが挙げられる。脂環式炭化水素骨格を有する反応性化合物としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、および、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。鎖状脂肪族炭化水素骨格を有する反応性化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、および、ラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。鎖状エーテル骨格を有する反応性化合物としては、例えば、2-エチルヘキシル-ジグルコール(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環式エーテル骨格を有する反応性化合物としては、例えば、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、および、4-(メタ)アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。アミド骨格を有する反応性化合物としては、例えば、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。なお、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを示す。オキシアルキレン骨格を有する反応性化合物としては、例えば、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリロイル基およびビニル基併有化合物としては、例えば、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、および、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を示す。ポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、上記したモノヒドロキシルモノ(メタ)アクリレート(例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)が挙げられる。不飽和カルボン酸アリルエステルとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、および、ジアリルイタコネートが挙げられる。これらは、単独で使用でき、また、2種類以上併用することもできる。
【0021】
本実施形態の振動低減部材1では、接続片部6がばねとして機能することにより、質量部5と接続片部6とがばねマス共振器を構成している。このばねマス共振器は、フレーム部3と質量部5と接続片部6とが位置する平面の面内方向に振動する。本実施形態では、フレーム部3に同一の矩形状の複数の開口部2が形成され、各開口部2に同一形状の振動部4が配置されている。従って、同一特性の複数のばねマス共振器が並んで位置する構成になっている。ただし、フレーム部3に1つの開口部2のみが設けられており、その開口部2の内部に1つの振動部4(1つのばねマス共振器)が設けられている構成にすることもできる。
【0022】
本実施形態の振動低減部材1では、振動低減部材1の全体の固有振動数と、1つの振動部4の固有振動数とが近接している。具体的には、振動低減部材1の全体の固有振動数と、1つの振動部4の固有振動数との差が800Hz未満であり、300Hz以下であることがより好ましく、200Hz以下であることがさらに好ましい。このように、振動低減部材1の全体の固有振動数と振動部4の固有振動数とが近接していると、振動低減部材1が共振する際に振動部4も同時に共振し、それによって、振動低減部材1の全体の振動が減衰する。振動低減部材1の全体の固有振動数および振動部4の固有振動数は5Hz~3000Hzであり、減衰することが望まれる振動の周波数と概ね一致することが好ましい。さらに、振動低減部材1の全体の固有振動数と、1つの振動部4の固有振動数はいずれも、10Hz以上2500Hz以下であることが好ましく、20Hz以上1500Hz以下であることがより好ましい。これらの固有振動数の好ましい範囲は、振動低減対象となる一般的な固体伝搬振動の周波数帯であり、この周波数帯をターゲットとすると振動低減部材1の構造の寸法が設計しやすくなる。そして、この振動低減部材1は、特に、振動低減部材1のフレーム部3と質量部5と接続片部6とが位置する平面の面内方向(例えば
図1のA方向)の振動の伝達を抑える。言い替えると、振動低減部材1は、フレーム部3と質量部5と接続片部6とが位置する平面が、振動の伝達を抑えることが望まれる方向(A方向)と平行になるように配置されることが好ましい。この振動低減部材1は、厚さが幅の同等以下であることが好ましい。そして、振動の伝達を抑えることが望まれる経路内に振動部4が位置している。
【0023】
本実施形態の振動低減部材1は、材料や基本的な構造を変えることなく、固有振動数を変更させることで、主に減衰させる振動の周波数を変えることができる。一例としては、フレーム部3の大きさや剛性を変えることによって、振動低減部材1の全体の固有振動数を変えることができる。具体的には、フレーム部3の大きさ(特に、振動が伝達する方向(A方向)の長さ)を大きくしたり、その太さを細くしたり、その剛性を小さくしたりすることにより、振動低減部材1の全体の固有振動数を低くすることができ、それらの反対に調整すると振動低減部材1の全体の固有振動数を高くすることができる。同様に、振動部4の各部の寸法等を変えることにより、振動部4の固有振動数を変えることができる。一例としては、接続片部6の長さや太さを変えることや、接続片部6と質量部5との接続部分(内側接続部6b)の数や大きさを変えることや、質量部5の寸法および質量を変えることにより、振動部4の固有振動数を変えることができる。具体的には、接続片部6の長さを長くしたり、その太さを細くしたり、接続片部6と質量部5との接続部分の数や大きさを低減したり、質量部5の寸法を大きくし、その質量を大きくしたりすることにより、振動部4の固有振動数を低くすることができ、それらの反対に調整すると振動部4の固有振動数を高くすることができる。また、ヤング率が小さい材料によって形成すると、振動低減部材1の全体の固有振動数も振動部4の固有振動数も低くなる。
【0024】
以上説明したように各部の寸法等を調整することにより、振動低減部材1の全体の固有振動数と振動部4の固有振動数とをいずれも、低減させたい振動の周波数に近づけるとともに、振動低減部材1の全体の固有振動数と振動部4の固有振動数とをできるだけ近づけるようにする。それによって、特定の周波数の振動を低減して、振動伝達を抑制することができる。本実施形態によると、低減させたい振動と同じ方向(A方向)に振動低減部材1が振動する。この時、フレーム部3が振動すると同時に振動部4も振動し、フレーム部3の振動方向と振動部4の振動方向が一致している。特に質量部5と接続片部6とからなるばねマス共振器の作用により質量部5がフレーム部3よりも大きく振動し、それによってフレーム部3の振動は低減される。振動の伝達経路中に振動低減部材1が位置しており、低減させたい振動と同じ方向に振動部4が振動するため、振動低減効果が極めて大きい。そして、本実施形態の接続片部6は、外側接続部6aと内側接続部6bとの間の中間部6cの少なくとも一部が、低減させたい振動の方向と平行に延びており、内側接続部6bは、低減させたい振動の方向と実質的に直交する方向において質量部5に繋がっている。そのため、質量部5がフレーム部3よりも大きく振動することができ、フレーム部3の振動を低減する作用が働く。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の振動低減部材1では、開口部2を有するフレーム部3と質量部5と接続片部6とからなる構造自体により、振動を低減させることができる。すなわち、本実施形態の振動低減部材1は、樹脂材料の特性や組成等によって振動の低減を図る構成ではない。しかも、低減することが望まれる振動の周波数に合わせて振動低減部材1の各部の寸法等を調整することで、材料を変更することなく所望の振動低減効果が得られる。そのため、本実施形態の振動低減部材1は、材料の自由度が高く、所望の固有振動数になるように様々な材料を用いることができる。本実施形態の振動低減部材1は、一般に防振用として用いられることはない材料から形成されていても、優れた振動低減効果を奏することができる。また、フレーム部3と振動部4とが同一平面内に位置しており形状が単純であり、しかも同一の樹脂材料で一体形成することができる。従って、例えば射出成形、3Dプリンターによる成形、あるいは樹脂成形品にフレーム部3および振動部4を除く部分を除去する加工等を行うことにより、容易に製造できる。そして、振動低減部材1の大きさは、用途や減衰させる振動の周波数帯に応じて任意に設定することができる。振動低減部材1の開口部2および振動部4の数も任意に設定することができる。
【0026】
以上説明した構成の振動低減部材1は、例えば、自動車等の乗物、ドローン等の無人航空機や建物等の内部の平面部材(図示しないが、例えば鉄板やトリムなど)の上に載置され、防振ゴム、防音材等として用いられる。また、この構成の振動低減部材1は、洗濯機、冷蔵庫、食器洗浄機、電子レンジ、エアコンなど家電製品や各種産業用機器などの内部に設置され、モーターや圧縮機などの回転体から伝搬される振動を減少させることができる。また、この構成の振動低減部材は、室外機、モーターや重機などの振動源と、床や地面などの間に設置される防振パッドとして用いることができる。この振動低減部材1では、フレーム部3の固有振動数と振動部4の固有振動数とが近いため、平面部材の振動に合わせてフレーム部3が共振する際に、振動部4も同時に共振し、フレーム部3および平面部材の振動が減衰する。このように、フレーム部3と振動部4とがともに作用して、振動低減部材1が載置された平面部材の振動が低減する。
【0027】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の振動低減部材10について
図2を参照して説明する。
図1に示す第1の実施形態の振動低減部材1は厚さ3mm程度の薄板状であるが、
図2に示す振動低減部材10は、厚さが10cm程度の直方体状である。この振動低減部材10でも、厚いフレーム部3および振動部4が一体形成されており、特定の周波数の振動を効果的に低減することができる。この振動低減部材10の厚さは用途に応じて任意に設定されるが、幅より大きく10m以下であることが好ましく、5cm以上100cm以下であることがより好ましい。より好ましい範囲に近づくほどに、取り扱いの観点や振動低減量の観点から、振動低減部材1として好適なサイズとなる。
【0028】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態の振動低減部材11の縮小斜視図が
図3に示されている。本実施形態では、第2の実施形態の振動低減部材10と同様な構成のフレーム部3と振動部4とを有する単位構造を有し、複数の単位構造10が横方向に並んで配置された構成である。この複数の単位構造10が一体的に形成されて振動低減部材11が構成されている。この振動低減部材11によると、広いスペースにおいて特定の周波数の振動を効果的に低減することができる。この振動低減部材11の大きさは用途に応じて任意に設定されるが、幅と厚さが10cm以上10m以下で高さが10mm以上500mm以下であることが好ましく、幅と厚さが20cm以上300cm以下で高さが20mm以上200mm以下であることがより好ましい。より好ましい範囲に近づくほどに、取り扱いの観点や振動低減量の観点から、振動低減部材1として好適なサイズとなる。
【0029】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態の振動低減部材12が
図4に示されている。本実施形態の振動低減部材12は平面形状が正方形の中空の角筒体である。本実施形態では、第1の実施形態の振動低減部材1と同様な構成のフレーム部3と振動部4とを有する板状の複数の単位構造を有し、複数の単位構造1が互いに連結され、単位構造1の各々が側壁をそれぞれ構成する中空の角筒体(本実施形態の振動低減部材12)が形成されている。この振動低減部材12でも、各単位構造1のフレーム部3および振動部4が一体形成されており、特定の周波数の振動を効果的に低減することができる。4つの単位構造1は一体に形成されていてもよく、また別々に形成された後に接合されていてもよい。ただし、各単位構造1はそれぞれ一体成形品である。
【0030】
本実施形態の振動低減部材12では、第1~3の実施形態とは異なり、中央の空洞部分の周囲に、
図4の左右方向に延びる面と、
図4の奥行き方向(前後方向)に延びる面とが存在する。この構成の場合、互いに接続されている質量部5および接続片部6と、フレーム部3の、当該質量部5および当該接続片部6を包囲する部分とは、同一の平面内に位置している。すなわち、
図4の左右方向に延びる面内に位置して互いに接続されている質量部5および接続片部6は、開口部2内に位置してフレーム部3の一部分に包囲されており、フレーム部3の、その質量部5および接続片部6を包囲する部分は、その質量部5および接続片部6と同様に
図4の左右方向に延びる面内に位置している。そして、
図4の奥行き方向に延びる面内に位置して互いに接続されている質量部5および接続片部6は、開口部2内に位置してフレーム部3の一部分に包囲されており、フレーム部3の、その質量部5および接続片部6を包囲する部分は、その質量部5および接続片部6と同様に
図4の奥行き方向に延びる面内に位置している。
【0031】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態の振動低減部材13の縮小斜視図が
図5に示されている。本実施形態では、第4の実施形態の振動低減部材12と同様な構成の角筒体を有し、複数の角筒体12が縦方向および横方向に並んで配置された構成である。この複数の角筒体12が一体的に形成されて振動低減部材13が構成されている。この振動低減部材13によると、広いスペースにおいて特定の周波数の振動を効果的に低減することができる。この振動低減部材13の大きさは用途に応じて任意に設定されるが、幅と厚さが10cm以上10m以下で高さが10mm以上500mm以下であることが好ましく、幅と厚さが20cm以上300cm以下で高さが20mm以上200mm以下であることが好ましい。より好ましい範囲に近づくほどに、取り扱いの観点や振動低減量の観点から、振動低減部材として好適なサイズとなる。
【0032】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態の振動低減部材14の平面図が
図6に示されている。本実施形態の振動低減部材14は、
図1に示す第1の実施形態の振動低減部材1と類似した構成であるが、振動部4の接続片部6が第1の実施形態と異なっている。本実施形態の接続片部6は、両端に、矩形状の開口部2の内周に接続された外側接続部6aをそれぞれ有し、両端の外側接続部6aの間に、質量部5に接続された内側接続部6bを有する。すなわち、この接続片部6は、2つの外側接続部6aと、それらの間に位置する1つの内側接続部6bとを有する。本実施形態の接続片部6は、外側接続部6aと内側接続部6bとの間の中間部6cの少なくとも一部が、低減させたい振動の方向(A方向)と平行に延びており、内側接続部6bは、低減させたい振動の方向において質量部5に繋がっている。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。本実施形態の振動低減部材14でも第1の実施形態の振動低減部材1と同様な効果が得られる。本実施形態の振動低減部材14は、接続片部6と質量部5との接続部分(内側接続部6b)の数が第1の実施形態の振動低減部材1よりも少ないため、振動部4の固有振動数が第1の実施形態よりも低くなる。従って、第1の実施形態よりも低い周波数帯の振動を低減させることに適している。そして、振動低減部材14の全体の固有振動数も、振動部4の固有振動数と同様に低くなるように、フレーム部3の形状や寸法が調整される。
【0033】
振動低減部材の用途や低減させたい振動の周波数に応じて、以上説明した第1~6の実施形態の振動低減部材のいずれかを選択して採用することや、第1~6の実施形態の構成を適宜に組み合わせることや、振動低減部材の各部の構成を適宜に変更することができる。
【実施例0034】
本発明の具体的な実施例と比較例について以下に説明する。
以下に説明する実施例1~2と比較例1~6の構造は、材料としてスチレン系エラストマー組成物(HottyPolymer社製「TPE60A」)を用い、熱溶解積層方式(FDM方式)の3Dプリンター造形により作製した。3Dプリンターのノズルの直径は0.2mmであった。なお、同様の方法で造形した厚さ2mmのシートを用いて、周波数10Hz、昇温速度5℃/min、測定温度-100℃~190℃、設定歪0.18%(>1.00E+08Pa)の条件で動的引張粘弾性測定を実施し、この測定結果より得られた24.9℃における貯蔵弾性率を本材料のヤング率とすると、本材料のヤング率は49.6MPaであった。
【0035】
一方、以下に説明する実施例3と比較例7~8の構造は、材料としてウレタンゴムを用い、液槽光重合方式(VPP式)の3Dプリンター造形により作製した。材料であるウレタンゴムは、ウレタンアクリレート(合成法は後述する)とアクリルモノマーA(株式会社日本触媒製「AOMA」)とアクリルモノマーB(大阪有機化学工業株式会社製「4-HBA」)とを、重量比率でウレタンアクリレート:アクリルモノマーA:アクリルモノマーB=50:40:10で混合し、さらにラジカル重合開始剤(株式会社IGM製「Irgacure819」)を3phr、酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製「Irganox245」)を0.1phr添加した混交組成物に、光照射を行って造形中に反応させることにより得た。
【0036】
ウレタンアクリレートの合成法について説明する。窒素雰囲気下で、ガラス製のセパラブルフラスコに、数平均分子量10000のポリオキシプロピレングリコールと1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを投入した。次いで、ポリオキシプロピレングリコールと1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物を80℃に昇温した。次いで、混合物にウレタン化触媒(エチルヘキサン酸スズ(II))を投入した。その投入量は、混合物に対するウレタン化触媒が10ppmになるように調整した。その後、混合物を80℃で4時間反応させた。これにより、第2イソシアネート基末端プレポリマーと、未反応の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを含む粗生成物を得た。次いで、粗生成物を薄膜蒸留(160~170℃、70~100Pa)し、第2イソシアネート基末端プレポリマーを精製した。次いで、セパラブルフラスコに、第2イソシアネート基末端プレポリマーと2-ヒドロキシエチルアクリレートとを投入した。それらの投入量は、2-ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基に対する、第2イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比が1.0となるように調整した。次いで、第2イソシアネート基末端プレポリマーと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの混合物を70℃に昇温した。次いで、混合物に、ウレタン化触媒(エチルヘキサン酸スズ(II))を投入した。その投入量は、混合物に対するウレタン化触媒が200ppmとなるように調整した。その後、混合物を70℃で4時間反応させた。これにより、ウレタンアクリレートを得た。なお、同様の方法で造形した2mm厚のシートを用いて、段落[0034]に記載した条件で動的引張粘弾性測定を実施し、この測定結果より得られた24.9℃における貯蔵弾性率を本材料のヤング率とすると、本材料のヤング率は27.2MPaであった。
【0037】
[実施例1]
図1に示す第1の実施形態の振動低減部材1を作製して、振動低減部材1の全体の固有振動数と、個々の振動部4の固有振動数とを確認するとともに、この振動低減部材1の振動低減効果を求めた。具体的には、図示しないが、振動低減部材1の底面を加振台上に載置し、振動低減部材1のフレーム部3と質量部5と接続片部6とが位置する平面の面内方向(
図1のA方向)に対して10000Hz以下の周波数範囲で同一強度の振動を与え、レーザー振動計で振動低減部材1の各周波数における振動状態を把握した。通常は、加振台上の平板状の部材は、その固有振動数付近の周波数では加振台の振動強度よりも大きい振動強度を示し、それ以外の周波数では加振台の振動強度と同じ振動強度を示す。振動低減効果とは、それぞれの周波数で振動低減部材1の振動が加振台の振動よりも何dB低減したかを表す。振動低減効果は、加振台の振動と比べて最大で20dB以上の振動低減効果があった場合を◎(振動低減効果大)、最大で8dB以上20dB未満の振動低減効果があった場合を〇(振動低減効果あり)、振動低減効果が最大でも8dB未満であった場合や加振台と同等の振動強度であった場合を×(振動低減効果なし)と判定した。本実施例の振動低減部材1は、ヤング率が49.6MPaのスチレン系エラストマーからなり、幅が19mm、高さが41mm、厚さが3mmの板状である。振動低減部材1の全体の固有振動数は1010Hzで、個々の振動部4の固有振動数は1190Hzであり、それらの差は180Hzであった。本実施例の振動低減部材1の振動低減効果は大(◎)であった。
【0038】
[実施例2]
図6に示す第6の実施形態の振動低減部材14を作製して、振動低減部材14の全体の固有振動数と、個々の振動部4の固有振動数とを確認するとともに、この振動低減部材14の振動低減効果を求めた。本実施例の振動低減部材14は、実施例1と同様にヤング率が49.6MPaのスチレン系エラストマーからなり、幅が15.2mm、高さが41mm、厚さが3mmの板状である。振動低減部材14の全体の固有振動数は760Hzで、個々の振動部4の固有振動数は1020Hzであり、それらの差は260Hzであった。本実施例の振動低減部材14は振動低減効果あり(○)であった。
【0039】
[実施例3]
本実施例の振動低減部材1は、ヤング率が27.2MPaのウレタンゴムからなり、実施例1と同一の構造を有する。振動低減部材1の全体の固有振動数は690Hzで、個々の振動部4の固有振動数は980Hzであり、それらの差は290Hzであった。本実施例の振動低減部材1は振動低減効果あり(〇)であった。
【0040】
[比較例1]
比較例1として、
図7に示すように振動低減部材を備えていない平板材15を作製した。本比較例の平板材15は、実施例1と同様にヤング率が49.6MPaのスチレン系エラストマーからなり、幅が19mm、高さが41mm、厚さが3mmの板状である。本比較例の平板材15は振動部を有しておらず、平板材15の固有振動数は1680Hzであった。本比較例は振動低減効果なし(×)であった。
【0041】
[比較例2]
比較例2においても、
図7に示す比較例1の平板材15とほぼ同じ平板材を作製した。本比較例の平板材は、幅が15.2mmであること以外は、比較例1の平板材15と同じ構成である。本比較例の平板材の固有振動数は1720Hzであり、振動低減効果なし(×)であった。
【0042】
[比較例3]
比較例3として、
図8に示すように、高さが低いフレーム部3に1つの開口部2を有し、その開口部2の内部に、実施例1と同様な振動部4を有する構成の部材16を作製した。本比較例の部材16は、実施例1と同様にヤング率が49.6MPaのスチレン系エラストマーからなり、幅が19mm、高さが15mm、厚さが3mmの板状である。本比較例の部材16の全体の固有振動数は1990Hzで、振動部4の固有振動数は1190Hzであり、それらの差は800Hzであった。本比較例の部材16は振動低減効果なし(×)であった。
【0043】
[比較例4]
比較例4として、
図9に示すように、高さが低いフレーム部3に1つの開口部2を有し、その開口部2の内部に、
図6に示す第6の実施形態の振動低減部材14と同様な振動部4を有する構成の部材17を作製した。本比較例の部材17は、実施例1と同様にヤング率が49.6MPaのスチレン系エラストマーからなり、幅が15.2mm、高さが15mm、厚さが3mmの板状である。本比較例の部材17の全体の固有振動数は1890Hzで、振動部4の固有振動数は1020Hzであり、それらの差は870Hzであった。本比較例の部材17は振動低減効果なし(×)であった。
【0044】
[比較例5]
比較例5として、
図10に示すように、
図1に示す実施例1の振動低減部材1に類似した部材18を作製した。本比較例の部材18は、接続片部6が、質量部5とそれに最も近接する開口部2の内周とを最短距離で繋ぐごく短いものであって、外側接続部6aと内側接続部6bとの間の中間部6cがほとんど存在しないものである。接続片部6以外の構成は、実施例1の振動低減部材1と同じ構成である。本比較例の部材18は、実施例1と同様にヤング率が49.6MPaのスチレン系エラストマーからなり、幅が19mm、高さが41mm、厚さが3mmの板状である。本比較例の部材18の全体の固有振動数は1010Hzで、個々の振動部4の固有振動数は3001Hz以上であり、それらの差は極めて大きかった。本比較例の部材18は振動低減効果なし(×)であった。
【0045】
[比較例6]
比較例6として、
図10に示す比較例5の部材18とほぼ同じ部材を作製した。本比較例の部材は、幅が15.2mmであること以外は、比較例5の部材18と同じ構成である。本比較例の振動低減部材の固有振動数は760Hzで、個々の振動部4の固有振動数は3001Hz以上であり、それらの差は極めて大きかった。本比較例の部材は振動低減効果なし(×)であった。
【0046】
[比較例7]
比較例7の部材16は、比較例3と同様の構造であり、ヤング率が27.2MPaのウレタンゴムからなる。本比較例の部材16の全体の固有振動数は1800Hzで、振動部4の固有振動数は980Hzであり、それらの差は820Hzであった。本比較例の部材16は振動低減効果なし(×)であった。
【0047】
[比較例8]
比較例8の部材18は、比較例5と同様の構造であり、ヤング率が27.2MPaのウレタンゴムからなる。本比較例の部材18の全体の固有振動数は690Hzで、個々の振動部4の固有振動数は3001Hz以上であり、それらの差は極めて大きかった。本比較例の部材18は振動低減効果なし(×)であった。
【0048】
[比較例9]
図11に比較例9の部材19を示している。本比較例の部材19は、開口部2を有するフレーム部3と、開口部2の内部に位置する4つの振動部4とを有している。各振動部4は矩形状の開口部2の内周の四つの角部にそれぞれ配置されており、質量部5と接続片部6とをそれぞれ有している。接続片部6は、開口部2の内周の各角部に接続された外側接続部6aと、質量部5に接続された内側接続部6bと、を含む。本比較例の部材19は、ヤング率が3.1MPaのシリコーンからなり、幅が10mm、高さが10mm、厚さが10mmの中空の立方体状である。部材19の全体の固有振動数は1280Hzで、個々の振動部4の固有振動数は900Hzであり、それらの差は380Hzであった。本比較例の部材19は振動低減効果なし(×)であった。
【0049】
[結果]
前述した本発明の実施例1~3と比較例1~9とを対比すると、本発明の振動低減部材1,14によって振動低減効果が得られることが判る。特に、実施例1~3と比較例3~8とを対比すると、振動低減部材1,14の全体の固有振動数と、1つの振動部4の固有振動数との差が800Hz未満であると振動低減効果があり、300Hz以下であると特に大きな振動低減効果が得られることがわかる。そして、振動低減部材1,14の全体の固有振動数と、1つの振動部4の固有振動数との差が200Hz以下であると、さらに大きな振動低減効果が得られる。また、実施例1と実施例3とを対比すると、同一の構造でも低ヤング率の材料を使用した場合、より低周波数帯で振動低減効果が得られることが判る。
【0050】
また、比較例9の部材19では、接続片部6は矩形状の開口部2の内周の角部に位置しており開口部2の隣接する2辺に固定されて拘束され、振動の方向および大きさが限定されている。すなわち、接続片部6はばねとして十分に機能できず、接続片部6と質量部5とはばねマス共振器を構成していない。そのため、あまり大きな振動低減効果が得られない。これに対し、本発明の実施例1~3の接続片部6の中間部6cの少なくとも一部が開口部2の内周の1辺と平行に延びており、かつ、中間部6cの少なくとも一部が振動部4の振動方向と平行に延びている。そして、接続片部6はばねとして良好に作用し、接続片部6と質量部5とはばねマス共振器として機能する。そのため、大きな振動低減効果が得られる。