(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113648
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】トークン転送ロック制御プログラム、コンピュータ、トークン転送ロック制御方法、および許可状態変更プログラム。
(51)【国際特許分類】
G06F 21/62 20130101AFI20240815BHJP
【FI】
G06F21/62 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177677
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2023018768の分割
【原出願日】2023-02-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000103622.html(令和4年8月15日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://notes.com/morika_wa/n/n206063f8dbe8(令和4年8月16日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://twitter.com/dd_TicketMe/status/1598340974089904128(令和4年12月2日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://www.youtube.com/watch?v=jTPYgEqFxzw(令和4年12月12日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://corp.ticketme.jp/news/tips_003(令和5年1月10日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://nft-media.net/nft-production/nft-ticketme-nftfukubukuro/25090/(令和5年1月10日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://nishitama.keizai.biz/release/168381/(令和5年1月10日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://startupsearch.jp/startups/7010001227502(令和5年1月15日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://www.neweconomy.jp/posts/292162(令和5年1月30日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://news.yahoo.co.jp/articles/400ec5d5568fb91f45cef10968e9e28ce0b52609(令和5年1月30日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://ticketme.notion.site/27ca86cf2644412fb66a463a5874f45d(令和5年2月8日公開)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り https://twitter.com/TicketMe_Yeah(令和4年8月15日~令和5年2月8日公開)
(71)【出願人】
【識別番号】523047221
【氏名又は名称】株式会社チケミー
(74)【代理人】
【識別番号】100155402
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 真
(72)【発明者】
【氏名】宮下 大佑
(72)【発明者】
【氏名】坂元 勇介
(72)【発明者】
【氏名】船木 駿
(57)【要約】
【課題】対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理できるようにする。
【解決手段】トークン転送ロック制御プログラムが、プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行機能を実現させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、
所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行機能を実現させる、
トークン転送ロック制御プログラム。
【請求項2】
前記スマートコントラクトは前記許可状態を示す情報を有しており、
前記許可状態変更トランザクションは、前記許可状態を示す情報の値を変更させるトランザクションである、
請求項1に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに、
前記対象と紐づけられる主体の確定に応じて、前記トークンの前記許可状態を転送許可から転送不許可へと変更することを要求するリクエストである確定リクエストを受信する、確定リクエスト受信機能をさらに実現させ、
前記許可状態変更トランザクション発行機能では、受信した前記確定リクエストに係る前記対象に紐づけられた前記トークンについて、前記許可状態を転送許可から転送不許可へと変更する前記許可状態変更トランザクションを前記スマートコントラクトに対して発行する、
請求項1に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータに、
前記トークンについての前記許可状態を転送不許可から転送許可へと変更することを要求するロック解除リクエストを受信する、ロック解除リクエスト受信機能をさらに実現させ、
前記許可状態変更トランザクション発行機能では、受信した前記ロック解除リクエストに係る前記トークンについて、前記許可状態を転送不許可から転送許可へと変更する前記許可状態変更トランザクションを、前記スマートコントラクトに対して発行する、
請求項3に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項5】
前記対象が現実世界の物品である、請求項1に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項6】
前記対象がデジタルデータである、請求項1に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項7】
前記対象が、権利、証券、またはサービスの内容を特定する情報である、請求項1に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項8】
前記対象が、仮想空間上のオブジェクトである、請求項1に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
【請求項9】
プロセッサとメモリとを有し、
前記プロセッサが、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行処理を実行する、
コンピュータ。
【請求項10】
コンピュータによるトークン転送ロック制御方法であって、
所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行処理を含む、
トークン転送ロック制御方法。
【請求項11】
プログラムであって、
プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、
所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションを受信し、前記許可状態を変更する機能を実現させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の少なくとも一つは、トークン転送ロック制御プログラム、コンピュータ、トークン転送ロック制御方法、および許可状態変更プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックチェーン(Block chain)を用いた、非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)等の各種のトークンに関する技術が登場している。
【0003】
トークンは、現実世界の物品などのオブジェクトと紐づけることができる。また、トークンをマーケットプレイスなどで二次流通させることも既に行われている。
【0004】
特許文献1には、デジタルコンテンツの提供方法が記載されている。サーバ端末の制御部は、ユーザ端末からデジタルコンテンツの取引情報を受信し、取引情報をデジタルコンテンツと関連づけられたノンファンジブルトークンと関連づけられた取引情報としてブロックチェーンに記録する。取引情報は、少なくとも、デジタルコンテンツの権利者情報を含み、権利者情報は、著作権者情報及び/またはオーナー権者情報を含む。
【0005】
また、特許文献1には、商品に識別子等により関連づけられたノンファンジブルトークンを、他の取引情報とともにブロックチェーンネットワークに記録すること、ノンファンジブルトークンが、画像データ、動画データ等のデジタル情報に関する商品等の固有のデジタルアセットを示すことができること、および、商品がセカンダリマーケットにおいて取引されることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
NFTなどのトークンは、所定の対象と対応付けられることがある。対象の例として、現実世界の物品、デジタルデータ、および仮想空間上のオブジェクトなどがある。
【0008】
ここで、転々流通する所定の対象に対応する主体が確定することがある。例えば、対象が現実世界の物品、より特定的には商品である場合、ユーザAがその商品を購入すると、商品の所有者がユーザAであると確定する。すなわち商品に対応する主体がユーザAであると確定する。
【0009】
所定の対象に対応する主体が確定した場合であっても、上記のトークンは、マーケットプレイスなどにおいて上記の所定の対象とは別個独立に二次流通させることができる。このようなトークンのみの二次流通が行われた場合、所定の対象に対応する主体とは異なる主体にトークンが転送されることになる。例えば対象が現実世界の商品である場合、商品の所有者はユーザAであると確定しているにもかかわらず、その商品に紐づけられたトークンの所有者は、トークンの転送によってユーザAとは異なる者になり得る。これでは、対象とトークンとの間の紐づけを維持することができない。
【0010】
本発明の少なくとも一つの実施形態の目的は、上記課題を解決し、対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理できる、トークン転送ロック制御プログラム、コンピュータ、トークン転送ロック制御方法、および許可状態変更プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係るトークン転送ロック制御プログラムは、プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行機能を実現させる。
【0012】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係るコンピュータは、プロセッサとメモリとを有し、前記プロセッサが、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行処理を実行する。
【0013】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係るトークン転送ロック制御方法は、コンピュータによるトークン転送ロック制御方法であって、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行処理を含む。
【0014】
非限定的な観点によると、本発明の一実施形態に係る許可状態変更プログラムは、プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションを受信し、前記許可状態を変更する機能を実現させる。
【発明の効果】
【0015】
本願の各実施形態により1または2以上の不足が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するトークン転送ロック制御システムの構成の例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するバックエンドの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するトークン転送ロック制御システムの処理例を示すシーケンス図である。
【
図4】本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するトークンの転送処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の例について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する各実施形態の例における各種構成要素は、矛盾等が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。また、ある実施形態の例として説明した内容については、他の実施形態においてその説明を省略している場合がある。また、各実施形態の特徴部分に関係しない動作や処理については、その内容を省略している場合がある。さらに、以下で説明する各種フローやシーケンスを構成する各種処理の順序は、処理内容に矛盾等が生じない範囲で順不同である。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するトークン転送ロック制御システム100の構成の例を示すブロック図である。トークン転送ロック制御システム100は、サーバ10と、トークン転送ロック制御システム100のユーザが使用するユーザ端末20とを備える。ユーザ端末20A、20B、および20Cはそれぞれ、ユーザ端末20の一例である。トークン転送ロック制御システム100の構成はこれに限定されない。例えば、トークン転送ロック制御システム100は、単一のユーザ端末を複数のユーザが使用する構成であってよい。トークン転送ロック制御システム100が複数のサーバを備えてもよい。ユーザ端末20がサーバ10の機能を果たしてもよい。
【0019】
サーバ10とユーザ端末20は、コンピュータの一例である。サーバ10とユーザ端末20は、それぞれインターネットなどの通信ネットワーク30に通信可能に接続されている。通信ネットワーク30とサーバ10との間の接続、および通信ネットワーク30とユーザ端末20との間の接続は有線接続であっても無線接続であってもよい。例えば、ユーザ端末20は、通信事業者が管理する基地局と無線通信回線によるデータ通信を行うことにより、通信ネットワーク30と接続してよい。
【0020】
トークン転送ロック制御システム100は、サーバ10とユーザ端末20とを備えることにより、ユーザの操作に応じて各種処理を実行するための各種機能を実現する。
【0021】
サーバ10は、プロセッサ11と、メモリ12と、記憶装置13とを備える。プロセッサ11は、例えば、各種の演算および制御を行うCPU(Central Processing Unit)等の中央処理装置である。また、サーバ10がGPU(Graphics Processing Unit)を備える場合には、各種の演算および制御の一部をGPUによって行うようにしてもよい。サーバ10は、メモリ12に読み出したデータを用いて各種の情報処理をプロセッサ11にて実行し、得られた処理結果を必要に応じて記憶装置13に記憶させる。
【0022】
記憶装置13は、各種情報を格納する記憶媒体としての機能を有する。記憶装置13の構成は特に限定されないが、ユーザ端末20にかかる処理負荷を軽減させるといった観点から、トークン転送ロック制御システム100にて行われる制御に必要な各種情報を全て記憶可能な構成であってよい。このような例には、HDDやSSDがある。ただし、各種情報を記憶する記憶装置は、サーバ10がアクセス可能な状態で記憶領域を備えていればよく、例えば専用の記憶領域をサーバ10の外部に有する構成とされていてもよい。
【0023】
ユーザ端末20はユーザによって管理される。ユーザ端末20の例としては、例えば携帯電話端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、タブレット、据置型ゲーム装置、携帯型ゲーム装置などがある。ユーザ端末20は、ユーザが操作可能なVRゴーグル、ARグラス、スマートグラス、ARコンタクト、その他のウェアラブルデバイスであってもよい。
【0024】
ユーザ端末20は、通信ネットワーク30に接続し、サーバ10との通信を行うことにより各種処理を実行するためのハードウェアおよびソフトウェアを備える。複数のユーザ端末20のそれぞれは、サーバ10を介さずに互いに直接通信(ピアツーピア通信)を行うこともできる構成とされていてもよい。
【0025】
ユーザ端末20には表示装置が内蔵されていてよい。また、ユーザ端末20に対して、表示装置が無線接続あるいは有線接続されていてもよい。なお、表示装置は極めて一般的な構成であるため、ここでは図示を省略している。表示装置は出力装置の一例である。ユーザがユーザ端末20を用いて各種の情報処理を行う場合、情報処理に必要な画面(情報処理画面)が画像として表示装置によって表示され、ユーザがこの画像を認識する。情報処理画面は例えば、ユーザ端末が備える表示装置の一例であるディスプレイや、ユーザ端末と接続された表示装置の一例であるディスプレイに表示される。
【0026】
ユーザ端末20は、プロセッサ21と、メモリ22と、記憶装置23とを備える。プロセッサ21は、例えば、各種の演算および制御を行うCPU(Central Processing Unit)等の中央処理装置である。また、ユーザ端末20がGPU(Graphics Processing Unit)を備える場合には、各種の演算および制御の一部をGPUによって行うようにしてもよい。ユーザ端末20は、メモリ22に読み出したデータを用いて各種の情報処理をプロセッサ21にて実行し、得られた処理結果を必要に応じて記憶装置23に記憶させる。記憶装置23は、各種情報を格納する記憶媒体としての機能を有する。
【0027】
ユーザ端末20には入力装置が内蔵されていてよい。また、ユーザ端末20に対して入力装置が無線接続あるいは有線接続されていてもよい。入力装置はユーザによる操作入力を受け付ける。ユーザによる操作入力に応じて、サーバ10が備えるプロセッサまたはユーザ端末20が備えるプロセッサが、各種の制御処理を実行する。入力装置の例として、スマートフォンやタブレット等が備えるタッチパネル画面、キーボード、マウス、ゲームパッド、ジョイスティック、その他のコントローラなどがある。
【0028】
その他、ユーザ端末20はスピーカ等の他の出力装置を備えていてよい。他の出力装置は、ユーザに対して音声、振動、その他の各種の情報を出力する。
【0029】
本実施形態においては、通信ネットワーク30にはブロックチェーンネットワーク60が含まれている。ブロックチェーンネットワーク60は、コンピュータ等の複数のノードによって構築されている。複数のノードの例として、
図1にはそれぞれがコンピュータであるノード6a、6b、6c、および6dが記載されている。これらはあくまで一例であり、ノードの数は4つでなくともよい。なお、ブロックチェーンネットワーク60は、図示した通信ネットワーク30とは別のネットワークとして構築されていてもよい。
【0030】
複数のノード6a~6dは、典型的にはピアツーピア型に相互接続され、ブロックチェーンネットワーク60を構築している。各ノードが備える記憶装置には分散型台帳が記憶されている。サーバ10またはユーザ端末20は、ブロックチェーンネットワーク60と通信可能に接続されていてよい。サーバ10またはユーザ端末20は、ブロックチェーンネットワーク60に含まれるノードとして機能してもよい。
【0031】
図2は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するバックエンドの構成を示すブロック図である。バックエンド4は、トークン転送ロック制御システム100に含まれる装置に実装される。当該装置は、例えば上述のサーバ10またはユーザ端末20であってよい。
【0032】
バックエンド4は、許可状態変更トランザクション発行部401、確定リクエスト受信部402、およびロック解除リクエスト受信部403を備える。バックエンド4を実装する装置が備えるプロセッサは、記憶装置に保持されたトークン転送ロック制御プログラムを参照し、そのプログラムを実行することにより、許可状態変更トランザクション発行部401、確定リクエスト受信部402、およびロック解除リクエスト受信部403を機能的に実現する。
【0033】
許可状態変更トランザクション発行部401は、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する機能を有する。
【0034】
確定リクエスト受信部402は、対象と紐づけられる主体の確定に応じて、トークンの許可状態を転送許可から転送不許可へと変更することを要求するリクエストである確定リクエストを受信する機能を有する。
【0035】
ロック解除リクエスト受信部403は、トークンについての許可状態を転送不許可から転送許可へと変更することを示すロック解除リクエストを受信する機能を有する。
【0036】
所定の対象は、トークンに対して紐づけることが可能な有体物または無体物を言う。例えば、所定の対象は現実世界の物品である。現実世界の物品の一例として、靴や本などの商品がある。
【0037】
所定の対象はデジタルデータであってもよい。デジタルデータの一例として、画像データ、動画データ、およびテキストデータなどがある。
【0038】
所定の対象は仮想的なオブジェクトであってもよい。仮想的なオブジェクトの一例として、仮想空間上に表示可能な仮想的な本などがある。仮想的な本は2Dまたは3Dのモデルデータであってよい。
【0039】
所定の対象は、権利、証券、またはサービスの内容を特定する情報であってもよい。権利の具体例としては、特許権、著作権、サービスの利用権などがあるが、これらには限定されない。権利を識別する識別IDや、権利の内容を特定する属性値などの情報が、トークンと紐づけられる。例えば、ある特許についての通常実施権をNFT化する場合は、通常実施権の基礎となる特許権の特許権者、その特許権の期間、通常実施権を許諾する範囲(地域、期間、実施行為)などを示す情報と、トークンとが紐づけられてよい。これら以外の情報が、権利の内容を特定する情報としてトークンと紐づけられてもよい。
【0040】
所定の対象が証券の内容を特定する情報である場合、証券を識別する識別IDや、額面などの証券の属性値がトークンと紐づけられてよい。これら以外の情報が、権利の内容を特定する情報としてトークンと紐づけられてもよい。
【0041】
所定の対象がサービスの内容を特定する情報である場合、そのサービスを識別する識別ID、サービス内容を示す属性値、またはサービス内容を示すテキスト情報などがトークンと紐づけられてよい。これら以外の情報が、権利の内容を特定する情報としてトークンと紐づけられてもよい。
【0042】
所定の対象は前述の具体例には限られない。
【0043】
トークンとは、典型的には非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)を意味する。ただし、トークンは、対象と紐づけることが可能な他のタイプのトークンであってもよい。
【0044】
スマートコントラクト、およびトークンのアドレス間転送については、従来技術であるため詳しい説明は省略する。
【0045】
転送の許可状態は、転送許可と転送不許可の2つの状態を取る。許可状態は、例えばフラグとして実装されてよい。
【0046】
確定リクエストは、対象と紐づけられる主体の確定に応じて、トークンの許可状態を転送許可から転送不許可へと変更することを要求するリクエストである。例えば対象が現実世界の物品である場合、当該物品の所有者があるユーザだと確定した時に、確定リクエストが生成または送信される。例えばユーザが物品の購入サービスにおいて購入ボタンを押下した時などが、物品の所有者があるユーザだと確定した時に相当する。購入ボタンを押下することにより、当該物品の所有権が、購入ボタンを押下したユーザへと移ることが確定したことになるので、対象と紐づけられる(この例においては対象の所有権を取得した)主体が確定する。
【0047】
なお、ロック解除リクエストについては後述する。
【0048】
次に、本発明の実施形態におけるプログラム実行処理について説明する。
図3は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応するトークン転送ロック制御システムの処理例を示すシーケンス図である。
【0049】
フロントエンド2およびウォレット3は、典型的にはユーザ端末20に実装される。バックエンド4は、典型的にはサーバ10に実装される。バックエンド4は、ユーザ端末20に実装されてもよい。NFTコントラクト5は、ブロックチェーンネットワーク60上にデプロイされる。NFTコントラクト5は、スマートコントラクトとも呼ばれる。なお、NFTコントラクト5のブロックチェーンネットワークへのデプロイ自体は従来技術であるため、詳しい説明は省略する。
【0050】
フロントエンド2は、ユーザUからの操作情報を取得する(St101)。例えば対象が現実世界の物品である場合、ユーザUはユーザ端末20の購入ボタンを押下するなどして、当該物品の受取を確定させる。この場合の操作情報は、対象である物品の受取確定を示す情報である。
【0051】
対象がサービスである場合、ユーザUはユーザ端末20のサービス利用決定ボタンを押下するなどして、当該サービスの利用を確定させる。
【0052】
操作情報を受け取ったフロントエンド2は、ウォレット3に署名リクエストを送信する(St102)。フロントエンド2は、ウォレット3から署名結果を取得する(St103)。典型的には、バックエンド4への送信対象となるデータに対して、ウォレット3が管理するアカウントに対応する秘密鍵で署名が行われたデータが、ここでいう署名結果に対応する。
【0053】
フロントエンド2は、バックエンド4に上述の確定リクエストを送信する(St104)。バックエンド4は、当該確定リクエストを受信する。
【0054】
バックエンド4は、受信した確定リクエストについて、署名を検証する(St105)。
より具体的には、バックエンド4は、ウォレット3が管理するアカウントの公開鍵を用いて、確定リクエストについての署名を検証する。署名に問題がない場合、バックエンド4はNFTコントラクト5に許可状態変更トランザクションを発行する(St106)。本実施形態のステップSt106において発行される許可状態変更トランザクションは、受信した確定リクエストに係る対象に紐づけられたトークンについて、許可状態を転送許可から転送不許可へと変更するトランザクションである。換言すると、当該トランザクションは、トークンの転送についてロックをかけるロックトランザクションである。
【0055】
NFTコントラクト5は、発行された許可状態変更トランザクションを検証(St107)し、許可状態を変更する処理を行っても支障がないと検証できた場合、ロック処理(St108)を行う。ロック処理は、例えばNFTコントラクト5が有する情報である許可状態変更フラグを0から1に変更するなどの処理であってよい。本例においては、許可状態変更フラグの値の0は、トークンの転送が許可されている状態(転送許可状態)を示している。転送許可状態は、例えば転送についてロックされていないことを意味する。許可状態変更フラグの値の1は、トークンの転送が許可されていない状態(転送不許可状態)を示している。転送不許可状態は、例えば転送についてロックされていることを意味する。
【0056】
なお、ロック処理の具体的な実装方法は、上記のフラグ処理には限られない。例えば、転送許可状態および転送不許可状態は、0や1以外の情報として保存されていてもよい。
【0057】
NFTコントラクト5は、許可状態変更トランザクションの処理結果をバックエンド4に返す(St109)。
【0058】
バックエンド4は、ステップSt104で受信した確定リクエストについての処理結果を示すレスポンスをフロントエンド2に返す(St110)。
【0059】
フロントエンド2は、ユーザUに処理結果を表示する(St111)。
【0060】
以上のように、ステップSt108でロック処理が行われたトークンは、転送不許可状態となっているため、二次流通などによるアドレス間転送が出来なくなる。
【0061】
[トークンの転送処理例]
図4は、本発明の実施形態の少なくとも一つに対応する、トークンの転送処理例を示すフローチャートである。
【0062】
本例では、ユーザUの操作により、対象に紐づけられたトークンを第1アドレスから第2アドレスへと転送する処理を示す。ユーザUが操作するユーザ端末20にはフロントエンド2とウォレット3とが実装されている。第1アドレスは、ウォレット3が管理するユーザUのアカウントについてのアドレスである。第2アドレスは、ユーザUではない他者が管理するアカウントについてのアドレスである。
【0063】
なお、ユーザUによるユーザ端末20の操作、および、フロントエンド2が行う署名やリクエストの送付等の処理は、トークンの転送についての一般的な処理であるため、詳しい説明は省略する。
【0064】
フロントエンド2からトークンの転送リクエストを受信したバックエンド4は、第1アドレスから第2アドレスへのトークン転送トランザクションを、NFTコントラクト5に対して発行する(St201)。なお、バックエンド4は、トークン転送トランザクションの発行前に、トークン転送リクエストについての署名検証処理を行う。
【0065】
トークン転送トランザクションを受信したNFTコントラクト5は、トランザクションの検証を行った後、当該トークンは転送可能状態であるか否かを判定する(St202)。なお、転送状態がフラグとして実装されている場合、NFTコントラクト5は、転送状態を示すフラグの値が0であるか1であるかに基づいて、当該トークンは転送可能状態であるか否かを判定する。
【0066】
トークンが転送可能状態であった場合(St202:YES)、ステップSt203へと処理が遷移する。ステップSt203においてNFTコントラクト5は、トークンを第1アドレスから第2アドレスへと転送する処理を行う。
【0067】
トークンが転送可能状態ではなかった場合(St202:NO)、ステップSt203の処理は行われずに、
図4に示した処理が終了する。
【0068】
[転送ロックの解除]
上記は、対象とトークンとの間の紐づけを維持するために、トークンの許可状態を転送許可から転送不許可へと変更する、トークンの転送ロックに係る態様について説明した。一方、転送不許可から転送許可へと許可状態を変更したい場面、すなわちトークンの転送ロックを解除したい場面も考えられる。例えば、ユーザが購入した物品そのものを、他者に譲渡するような場合には、その物品に紐づけられたトークンの転送についても、転送ロックを解除することが求められる。
【0069】
そこで、本開示の実施形態に係るトークン転送ロック制御プログラムは、トークンについての許可状態を転送不許可から転送許可へと変更することを要求するロック解除リクエストを受信する、ロック解除リクエスト受信機能をさらに実現させる。そして、許可状態変更トランザクション発行部401では、受信したロック解除リクエストに係るトークンについて、許可状態を転送不許可から転送許可へと変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する。
【0070】
例えば、購入した商品を他者に譲渡する場合や、当該商品を紛失した場合などに、ユーザはフロントエンド2を実装するユーザ端末20を操作する。操作情報を取得したフロントエンド2は、バックエンド4に上述のロック解除リクエストを送信する。ロック解除リクエストを受信したバックエンド4は、NFTコントラクト5に対して許可状態変更トランザクションを発行する。
【0071】
以上に説明したように、本願の各実施形態により1または2以上の不足が解決される。なお、夫々の実施形態による効果は、非限定的な効果または効果の一例である。
【0072】
上述した各実施形態では、ユーザ端末20およびサーバ10は、自己が備える記憶装置に記憶されている各種制御プログラム(例えば、トークン転送ロック制御プログラム)に従って、上述した各種の処理を実行する。また、ユーザ端末20やサーバ10に限られない他のコンピュータが、自己が備える記憶装置に記憶されている各種制御プログラム(例えば、トークン転送ロック制御プログラム)に従って、上述した各種の処理を実行してもよい。
【0073】
また、トークン転送ロック制御システム100の構成は、上述した実施形態の例として説明した構成に限定されない。例えばユーザ端末が実行する処理として説明した処理の一部または全部をサーバが実行する構成としてもよいし、サーバが実行する処理として説明した処理の一部または全部をユーザ端末が実行する構成としてもよい。また、サーバが備える記憶部(記憶装置)の一部または全部をユーザ端末が備える構成としてもよい。すなわち、トークン転送ロック制御システム100における、ユーザ端末とサーバのどちらか一方が備える機能の一部または全部を、他の一方が備える構成とされていてもよい。
【0074】
また、プログラムが、上述した各実施形態の例として説明した機能の一部または全部を、通信ネットワークを含まない装置単体に実現させる構成としてもよい。
【0075】
[付記]
上述した実施形態の説明は、少なくとも下記発明を、当該発明の属する分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように記載した。
【0076】
[1]
プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、
所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行機能を実現させる、
トークン転送ロック制御プログラム。
【0077】
上記のトークン転送ロック制御プログラムによれば、対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0078】
[2]
前記スマートコントラクトは前記許可状態を示す情報を有しており、
前記許可状態変更トランザクションは、前記許可状態を示す情報の値を変更させるトランザクションである、
[1]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これにより、対象とトークンとの間の紐づけを維持可能とするか否かを、許可状態を示す情報として柔軟に管理することができる。
【0079】
[3]
前記コンピュータに、
前記対象と紐づけられる主体の確定に応じて、前記トークンの前記許可状態を転送許可から転送不許可へと変更することを要求するリクエストである確定リクエストを受信する、確定リクエスト受信機能をさらに実現させ、
前記許可状態変更トランザクション発行機能では、受信した前記確定リクエストに係る前記対象に紐づけられた前記トークンについて、前記許可状態を転送許可から転送不許可へと変更する前記許可状態変更トランザクションを前記スマートコントラクトに対して発行する、
[1]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これにより、例えばユーザが商品を購入するなどによって、対象と紐づけられた主体が確定した場合に、対象に紐づけられたトークンを転送不許可にし、当該対象とトークンとの間の紐づけを維持することができる。
【0080】
[4]
前記コンピュータに、
前記トークンについての前記許可状態を転送不許可から転送許可へと変更することを示すロック解除リクエストを受信する、ロック解除リクエスト受信機能をさらに実現させ、
前記許可状態変更トランザクション発行機能では、受信した前記ロック解除リクエストに係る前記トークンについて、前記許可状態を転送不許可から転送許可へと変更する前記許可状態変更トランザクションを、前記スマートコントラクトに対して発行する、
[3]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これにより、例えばユーザが購入した物品そのものを他者に譲渡するなどの場合に、トークンの転送ロックを解除し、転送を再び可能にすることができる。
【0081】
[5]
前記対象が現実世界の物品である、[1]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これによれば、現実世界の物品とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0082】
[6]
前記対象がデジタルデータである、[1]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これによれば、デジタルデータとトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0083】
[7]
前記対象が、権利、証券、またはサービスの内容を特定する情報である、[1]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これによれば、権利、証券、またはサービスの内容を特定する情報とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0084】
[8]
前記対象が仮想空間上のオブジェクトである、[1]に記載のトークン転送ロック制御プログラム。
これによれば、仮想空間上のオブジェクトとトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0085】
[9]
プロセッサとメモリとを有し、
前記プロセッサが、所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行処理を実行する、
コンピュータ。
【0086】
上記のコンピュータによれば、対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0087】
[10]
コンピュータによるトークン転送ロック制御方法であって、
所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションをスマートコントラクトに対して発行する、許可状態変更トランザクション発行処理を含む、
トークン転送ロック制御方法。
【0088】
上記のトークン転送ロック制御方法によれば、対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【0089】
[11]
プログラムであって、
プロセッサとメモリとを有するコンピュータに、
所定の対象に紐づけられたトークンの第1アドレスから第2アドレスへの転送の許可状態を変更する許可状態変更トランザクションを受信し、前記許可状態を変更する機能を実現させる、
プログラム。
【0090】
上記のスマートコントラクトプログラムによれば、対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の実施形態の一つによれば、対象とトークンとの間の紐づけの状態を柔軟に管理できる、トークン転送ロック制御プログラム、コンピュータ、およびトークン転送ロック制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0092】
2 フロントエンド
3 ウォレット
4 バックエンド
5 NFTコントラクト
6a~6d ノード
10 サーバ
11 プロセッサ
12 メモリ
13 記憶装置
20 ユーザ端末
21 プロセッサ
22 メモリ
23 記憶装置
30 通信ネットワーク
60 ブロックチェーンネットワーク
100 トークン転送ロック制御システム