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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113707
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20240816BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20240816BHJP
   B23B 23/00 20060101ALI20240816BHJP
   B23Q 1/76 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B24B41/06 C
B24B41/06 J
B24B5/04
B23B23/00 C
B23Q1/76 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018811
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C045
3C048
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034BB09
3C034BB32
3C034BB74
3C034BB77
3C034DD20
3C043AA03
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C045FD21
3C045FE07
3C045FE09
3C048BB16
3C048BC02
3C048EE06
(57)【要約】
【課題】工作物がセンタによって支持されることに起因して工作物の加工精度が低下することを抑制する。
【解決手段】円筒状の工作物を軸線回りに回転させながら、砥石で工作物の外周面を研削する研削装置は、工作物の軸線方向における基準位置において外周面に接触し、工作物を軸線回りに回転可能に支持する振れ止め装置と、工作物に回転力を付与する主軸装置と、軸線方向に工作物を挟み、工作物を軸線回りに回転可能に支持する一対のセンタとを備える。センタは、軸線方向において工作物の外側から工作物に接触する第1部材と、工作物の反対側から第1部材に接触する接触面を有し、第1部材を工作物に対して軸線方向に押し当てる第2部材とを有する。第2部材は、第1部材の軸線周りの回転と、軸線に垂直な方向における位置の変化とを許容し、かつ、第1部材の軸線方向における移動を規制するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の工作物を前記工作物の軸線回りに回転させながら、回転する砥石を前記軸線と交差する切込方向に接近させることで、前記砥石で前記工作物の外周面を研削する研削装置であって、
前記工作物の軸線方向における予め定められた基準位置において前記外周面に接触し、前記工作物を前記軸線回りに回転可能に支持する振れ止め装置と、
前記工作物に回転力を付与する主軸装置と、
前記軸線方向に前記工作物を挟み、前記工作物を前記軸線回りに回転可能に支持する一対のセンタと、を備え、
前記センタは、
前記軸線方向において前記工作物の外側から前記工作物に接触する第1部材と、
前記軸線方向において前記工作物の反対側から前記第1部材に接触する接触面を有し、前記第1部材を前記工作物に対して前記軸線方向に沿って押し当てる第2部材と、を有し、
前記第2部材は、前記第1部材の前記軸線回りの回転と、前記第1部材の前記軸線に垂直な方向における位置の変化とを許容し、かつ、前記第1部材の前記軸線方向における移動を規制するように構成されている、研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の研削装置であって、
前記第1部材は、前記工作物に向かって凸の球面状である第1球面部を有し、前記第1球面部において前記工作物に接触し、
前記第1球面部の外面は、前記工作物の端の前記軸線上の位置に形成されたセンタ穴の壁面に接している、研削装置。
【請求項3】
請求項2に記載の研削装置であって、
前記第1部材は、前記第2部材に向かって凸の球面状である第2球面部を有し、
前記接触面は、前記第2球面部と接触し、前記軸線方向に垂直な面として構成されている、研削装置。
【請求項4】
請求項3に記載の研削装置であって、
前記第1部材は、球状の部材である、研削装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の研削装置であって、
前記第1部材は、前記工作物の径方向において前記第1球面部よりも外側に突出した第1係合部を有し、
前記第2部材は、
前記工作物に向かって開口し、前記第1係合部を収容し、底面が前記接触面を構成する凹部と、
前記凹部の一部を前記工作物側から覆い、前記第1係合部に対して前記工作物側から係合可能に構成された第2係合部と、を有し、
前記第1部材は、前記第1係合部を前記凹部内に収容させるとともに、前記第1部材の前記工作物側の端部を前記凹部外へ突出させるように配置されることで、前記第2部材に取り付けられ、
前記第2部材は、前記凹部内に収容された前記第1係合部の前記軸線に垂直な方向における位置の変化を許容するように構成されている、研削装置。
【請求項6】
請求項5に記載の研削装置であって、
前記第2部材は、前記凹部が形成された本体部を有し、
前記第2係合部は、環状であり、前記本体部に対して脱着可能に構成され、
前記第2係合部の開口径は、前記第1球面部の径よりも大きい、研削装置。
【請求項7】
請求項1に記載の研削装置であって、
前記基準位置における前記外周面の真円度および円周振れは、予め調整されている、研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レスト装置を有する研削装置が開示されている。この研削装置では、センタとレスト装置とによって回転可能に支持された長尺のワークを回転させながら、ワークの外周を研削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-78505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ワークをレスト装置によって支持することで、研削加工中のワークの撓みを抑制でき、撓みに起因するワークの加工精度の低下(例えば、真円度や円周振れの増加)を抑制できる。しかしながら、特許文献1では、例えば、ワークに形成されたセンタ穴の真円度や円周振れが比較的大きい場合、ワークがセンタによって支持されることに起因して、ワークの加工精度が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、円筒状の工作物を前記工作物の軸線回りに回転させながら、回転する砥石を前記軸線と交差する切込方向に接近させることで、前記砥石で前記工作物の外周面を研削する研削装置が提供される。この研削装置は、前記工作物の軸線方向における予め定められた基準位置において前記外周面に接触し、前記工作物を前記軸線回りに回転可能に支持する振れ止め装置と、前記工作物に回転力を付与する主軸装置と、前記軸線方向に前記工作物を挟み、前記工作物を前記軸線回りに回転可能に支持する一対のセンタと、を備える。前記センタは、前記軸線方向において前記工作物の外側から前記工作物に接触する第1部材と、前記軸線方向において前記工作物の反対側から前記第1部材に接触する接触面を有し、前記第1部材を前記工作物に対して前記軸線方向に沿って押し当てる第2部材と、を有する。前記第2部材は、前記第1部材の前記軸線回りの回転と、前記第1部材の前記軸線に垂直な方向における位置の変化とを許容し、かつ、前記第1部材の前記軸線方向における移動を規制するように構成されている。
このような形態によれば、第1部材と第2部材とによって工作物が軸線方向に拘束されつつ、工作物が第2部材に対して軸線に垂直な方向に移動することが許容される。そのため、センタによって工作物の軸線方向における移動を規制しつつ、振れ止め装置によって支持される基準位置の外周面を基準として、工作物を軸線回りに回転させることができる。従って、工作物がセンタによって支持されることに起因して工作物の加工精度が低下することを抑制できる。
(2)上記形態において、前記第1部材は、前記工作物に向かって凸の球面状である第1球面部を有し、前記第1球面部において前記工作物に接触し、前記第1球面部の外面は、前記工作物の端の前記軸線上の位置に形成されたセンタ穴の壁面に接する。このような形態によれば、工作物を軸線方向に拘束することと、工作物の軸線回りの回転を許容することとを容易に実現でき、第1部材に対する工作物の傾きを容易に許容できる。
(3)上記形態において、前記第1部材は、前記第2部材に向かって凸の球面状である第2球面部を有し、前記接触面は、前記第2球面部と接触し、前記軸線方向に垂直な面として構成されていてもよい。このような形態によれば、第2部材によって、第1部材の軸線回りの回転と、第1部材の軸線に垂直な方向における位置の変化とを容易に許容できる。
(4)上記形態において、前記第1部材は、球状の部材であってもよい。このような形態によれば、第1部材を容易に製造できる。
(5)上記形態において、前記第1部材は、前記工作物の径方向において前記第1球面部よりも外側に突出した第1係合部を有し、前記第2部材は、前記工作物に向かって開口し、前記第1係合部を収容し、底面が前記接触面を構成する凹部と、前記凹部の一部を前記工作物側から覆い、前記第1係合部に対して前記工作物側から係合可能に構成された第2係合部と、を有し、前記第1部材は、前記第1係合部を前記凹部内に収容させるとともに、前記第1部材の前記工作物側の端部を前記凹部外へ突出させるように配置されることで、前記第2部材に取り付けられ、前記第2部材は、前記凹部内に収容された前記第1係合部の前記軸線に垂直な方向における位置の変化を許容するように構成されていてもよい。そのため、第1部材が第2部材から脱落することを、第1係合部と第2係合部との係合によって抑制できる。
(6)上記形態において、前記第2部材は、前記凹部が形成された本体部を有し、前記第2係合部は、環状であり、前記本体部に対して脱着可能に構成され、前記第2係合部の開口径は、前記第1球面部の径よりも大きい。このような形態によれば、環状の第2係合部が本体部に対して脱着可能なので、第1部材を第2部材に容易に取り付けることができ、かつ、第2部材に取り付けられた第1部材の脱落を抑制できる。
(7)上記形態において、前記基準位置における前記外周面の真円度および円周振れは、予め調整されていてもよい。このような形態によれば、工作物の加工精度をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】研削装置の概略構成を示す説明図である。
図2】レスト台を示す側面図である。
図3】第1実施形態におけるセンタを説明する模式図である。
図4】第1部材とセンタ穴との関係を説明する断面図である。
図5】センタ保持部材に他のセンタが装着された様子を示す模式図である。
図6】第2実施形態におけるセンタを説明する断面図である。
図7】第3実施形態におけるセンタを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、研削装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。Z軸およびX軸は、水平面に平行な座標軸である。Y軸は、鉛直方向に平行な座標軸である。図1におけるX,Y,Z軸を表す矢印と、他の図におけるX,Y,Z軸を表す矢印とは、同じ方向を指し示している。向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。以下では、+Y方向のことを「上」、-Y方向のことを「下」ともいう。また、水平面に沿った方向のことを水平方向とも呼ぶ。また、X軸およびY軸に沿った平面のことをXY平面とも呼び、Y軸およびZ軸に沿った平面のことをYZ平面とも呼ぶ。
【0009】
研削装置100は、円筒状の工作物Wを工作物Wの軸線RX回りに回転させながら、回転する砥石31を軸線RXと交差する切込方向に接近させることで、砥石31で工作物Wの外周面を研削する円筒研削盤として構成されている。より詳細には、研削装置100は、砥石31を工作物Wに対して接触させると共に、工作物Wと砥石31とを相対的に移動させることで工作物Wの外周面を研削する。本実施形態では、切込方向は、-X方向である。また、軸線RXは、Z軸に沿っている。軸線RXに沿った方向のことを軸線方向とも呼ぶ。軸線方向は、軸線RXに沿う一方側の方向とその反対方向とを両方含む。以下では、工作物Wの軸線RX回りの回転のことを、単に「工作物Wの回転」とも言う。
【0010】
工作物Wは、例えば、金属やセラミックによって形成される。本実施形態における工作物Wは、シート状の部材を搬送するための搬送ロールであり、軸線方向に沿ってその外径が段階的に変化する形状を有している。より詳細には、工作物Wは、その軸線方向における中央部を構成する第1部分Waと、第1部分Waの-Z方向側に位置する第2部分Wbと、第1部分Waの+Z方向側に位置する第3部分と、第2部分Wbの-Z方向側に位置する第4部分Wdと、第3部分Wcの+Z方向側に位置する第5部分Weとを有する。第2部分Wbおよび第3部分Wcの径は、第1部分Waの径より小さい。第4部分Wdおよび第5部分Weの径は、第2部分Wbおよび第3部分Wcの径よりも小さい。また、第4部分Wdおよび第5部分Weは、それぞれ、軸線RXに対する真円度および円周振れが予め所定の水準に調整された基準部分である。基準部分における真円度および円周振れは、例えば、予め研削加工されることで調整される。本実施形態では、工作物Wの研削加工において、第4部分Wdおよび第5部分Weは研削されず、第4部分Wdおよび第5部分Weを真円度および円周振れの基準として、第1部分Waから第3部分Wcが研削される。なお、他の実施形態では、工作物Wは、円筒状を有する任意の工作物であってよく、例えば、本実施形態とは異なる形状の搬送ロールであってもよいし、搬送ロールとは異なる工作物であってもよい。
【0011】
研削装置100は、ベッド10と、支持部20と、砥石台30と、テーブル移動装置40と、砥石台移動装置50と、制御装置60と、駆動回路65,66,67と、下部シュー駆動回路91および側部シュー駆動回路92と、振れ止め装置70とを備える。
【0012】
ベッド10は、支持部20と、砥石台30と、テーブル移動装置40と、砥石台移動装置50とを支持する。ベッド10は、例えば、鋳鉄により形成される。ベッド10の上面には、支持部20がZ軸方向に沿って移動するための摺動面と、砥石台30がX軸方向に沿って移動するための摺動面が形成されている。
【0013】
支持部20は、テーブル21と、主軸装置22と、心押台29と、振れ止め装置70とを備える。支持部20は、工作物Wが軸線RX回りに回転可能となるように、工作物Wを支持する。
【0014】
テーブル21は、ベッド10の上面に配置されている。テーブル21の上面には、主軸装置22と心押台29と振れ止め装置70とが取り付けられている。
【0015】
本実施形態では、工作物Wは、一対のセンタ105と、振れ止め装置70とによって、軸線RX回りに回転可能に支持される。一対のセンタ105は、それぞれ、軸線RX上に配置され、工作物Wを軸線方向に挟んで支持する。一方のセンタ105は、主軸装置22に設けられている。他方のセンタ105は、心押台29に設けられている。なお、センタ105の構成の詳細については後述する。
【0016】
主軸装置22は、工作物Wに回転力を付与する。主軸装置22は、工作物Wの-Z方向側に配置されている。主軸装置22は、上述したセンタ105に加え、主軸台23と、主軸モータ24と、回転面板(主軸とも呼ばれる)26とを有する。
【0017】
主軸台23は、回転面板26を軸線RX回りに回転可能に支持し、テーブル21上に固定されている。回転面板26の工作物W側の端面には、軸線RXと平行に伝達部材Tが固定されている。伝達部材Tは、工作物Wの-Z方向側の端部に取り付けられた回し金La(ケレとも呼ばれる)に、回転伝達可能に回転方向に係合する。
【0018】
主軸モータ24は、主軸台23によって支持されている。主軸モータ24は、制御装置60による制御下で回転し、回転面板26を回転駆動する。回転面板26の回転数は、主軸モータ24の回転数が制御されることによって制御される。主軸モータ24は、主軸エンコーダ25を有している。主軸エンコーダ25の回転数信号は、駆動回路65にフィードバックされる。
【0019】
本実施形態では、主軸モータ24の回転駆動力は、回転面板26と回し金Laと伝達部材Tとを介して、工作物Wに伝達される。このように回転駆動力が工作物Wに伝達されることで、工作物Wが軸線RX回りに回転する。
【0020】
心押台29は、Z軸方向において、工作物Wを挟んで主軸装置22と対向するように設けられている。上述したように、心押台29は、センタ105を有する。
【0021】
砥石台30は、ベッド10の上面に配置されている。砥石台30は、砥石31と、砥石軸32と、砥石回転モータ33とを有する。
【0022】
砥石31は、その軸線である砥石回転軸BX回りに回転することによって、工作物Wの外周面を研削加工する。本実施形態では、砥石回転軸BXは、軸線RXと平行、つまり、Z軸と平行である。砥石31は、コアと砥石層とを有している。コアは、円盤状であり、鉄等の金属によって形成されている。コアは、ボルト等により砥石軸32に対して着脱可能に連結される。砥石層は、コアの外周に円盤状に設けられている。砥石層は、砥粒と結合材とを混合して焼き固めることによって形成される。砥粒としては、例えば、CBN(Cubic Boron Nitride:立方晶窒化ホウ素)や、ダイヤモンドが使用される。砥石層が工作物Wと接触することにより、工作物Wの外周が研削される。以下では、砥石31が工作物Wを研削する点を、研削点と呼ぶ。
【0023】
砥石31は、砥石軸32の砥石回転軸BX上の一端に固定支持されている。砥石軸32は、図示しない軸受を介して、砥石回転軸BX回りに回転可能に、砥石台30に支持されている。
【0024】
砥石回転モータ33は、砥石台30内に、砥石軸32と同軸に配置されている。砥石回転モータ33は、砥石軸32を砥石回転軸BX回りに所定の回転数で回転駆動する。砥石回転モータ33の駆動のオンオフは、制御装置60によって制御される。砥石軸32が回転駆動することにより、砥石31は砥石回転軸BX回りに回転する。
【0025】
テーブル移動装置40は、テーブル21に接続されており、テーブル21をZ軸方向に沿って移動させる。テーブル移動装置40は、テーブル移動モータ41を有する。テーブル移動モータ41は、制御装置60による制御下で、テーブル21を移動させるための駆動力を発生させ、テーブル21の位置を制御する。テーブル移動モータ41は、テーブルエンコーダ42を有している。テーブルエンコーダ42の位置信号は、駆動回路66にフィードバックされる。
【0026】
砥石台移動装置50は、砥石台30に接続されており、砥石台30をX軸方向に沿って移動させる。砥石台移動装置50は、砥石台移動モータ51を有する。砥石台移動モータ51は、制御装置60による制御下で、砥石台30を移動させるための駆動力を発生させ、砥石台30の位置を制御する。砥石台移動モータ51は、砥石台エンコーダ52を有している。砥石台エンコーダ52の位置信号は、駆動回路67にフィードバックされる。
【0027】
制御装置60は、研削装置100の動作を制御する。制御装置60は、砥石回転モータ33の駆動のオンオフ制御や、駆動回路65への回転数指令の付与や、駆動回路66,
67への位置指令の付与や、下部シュー駆動回路91および側部シュー駆動回路92への位置指令の付与を実行する。
【0028】
制御装置60は、CPU61と、記憶部62と、表示部63とを備える。記憶部62は、研削装置100を動作させるためのプログラムを記憶する。より詳細には、記憶部62には、例えば、工作物Wを研削加工する加工処理を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU61は、記憶部62に記憶されたプログラムを実行することにより、種々の機能を制御装置60に実現させる。表示部63は、例えば、液晶ディスプレイとして構成され、研削装置100に関する各種情報を表示する。表示部63は、例えば、タッチ式のディスプレイとして構成され、制御装置60の操作部として機能してもよい。
【0029】
振れ止め装置70は、工作物Wの基準位置にある外周面に接触している。本実施形態では、基準位置は、工作物WのZ方向における予め定められた位置を表す。本実施形態における基準位置は、その位置における外周面の真円度および円周振れが所定以下となるように予め加工(研削)調整された位置である。本実施形態では、基準位置として、第1基準位置P1と第2基準位置P2とが設けられている。第1基準位置P1は、上述した工作物Wの基準部分である第4部分Wdに対応する位置である。第2基準位置P2は、同様に、工作物Wの第5部分Weに対応する位置である。
【0030】
本実施形態における振れ止め装置70は、第1基準位置P1と第2基準位置P2とに対応して、一対のレスト台71を有している。各レスト台71は、それぞれ、工作物Wの各基準位置に対応するようにZ方向に位置調整され、テーブル21上に固定されている。
【0031】
図2は、本実施形態におけるレスト台71を示す側面図である。図2は、第2基準位置P2に対応するレスト台71を示している。図2では、砥石31が破線によって模式的に示されている。また、図2では、主軸装置22や心押台29が省略されている。図2に示すように、レスト台71は、基準位置において工作物の外周面に接触するシュー72と、シュー72を移動させるシュー送り装置80とを有している。本実施形態におけるシュー送り装置80は、シュー72を径方向に移動させる。「径方向」とは、工作物Wの径に沿った方向のことを指す。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、各シュー送り装置80に対応して、下部シュー駆動回路91と側部シュー駆動回路92とが1組ずつ設けられている。
【0033】
図2に示すように、本実施形態におけるシュー72は、下部シュー73と、側部シュー74とを有している。側部シュー74は、X方向において、工作物Wを挟んで砥石31と反対側から工作物Wに接触する。つまり、側部シュー74は、X方向において、研削点と反対側から工作物Wに接触する。本実施形態における側部シュー74は、X方向に沿った軸状を有しており、工作物W側の端部、つまり、+X方向側の端部が、第1レスト台Rt1内から+X方向に突出するように配置されている。側部シュー74は、後述する側部シュー送り装置86によって、移動軸線SXに沿って移動可能に構成されている。移動軸線SXは、XY平面に平行であり、軸線RXと交差する。本実施形態では、移動軸線SXは、X方向に沿っている。そのため、側部シュー74は、工作物Wの-X方向側から工作物Wに対して+X方向に接触する。なお、移動軸線SXは、側部シュー74から工作物Wに向かうほど高くなるように、X軸に対して傾斜していてもよい。
【0034】
下部シュー73は、工作物Wの下側から工作物Wに接触する。より詳細には、本実施形態では、下部シュー73は、工作物Wの下側、かつ、X方向において工作物Wを挟んで側部シュー74と反対側から工作物Wに接触する。本実施形態では、下部シュー73は、方向d1に沿った軸状を有しており、工作物W側の端部、つまり、上端部が、第1レスト台Rt1内から上側に突出するように配置されている。下部シュー73は、後述する下部シュー送り装置81によって、移動軸線UXに沿って移動可能に構成されている。移動軸線UXは、XY平面に平行であり、軸線RXと交差する。本実施形態では、移動軸線UXは、上方へ向かうほど側部シュー74に近くなるように、Y軸に対して傾斜している。そのため、下部シュー73は、工作物Wに対して、X方向側および+Y方向側に向かう方向d1に接触する。このような配置により、工作物Wの外面は、基準位置において、下部シュー73によって下から支持されるとともに、下部シュー73と側部シュー74とによってX方向に挟まれるように支持される。
【0035】
本実施形態におけるシュー送り装置80は、下部シュー73を移動させる下部シュー送り装置81と、側部シュー74を移動させる側部シュー送り装置86とを有している。下部シュー送り装置81および側部シュー送り装置86は、レスト台71に設けられている。
【0036】
下部シュー送り装置81は、サーボモータ82と、カップリング83と、ボールネジ84と、方向転換機構85とを有する。ボールネジ84のネジ軸は、X軸に沿って配置され、カップリング83を介してサーボモータ82の出力軸に連結されている。ボールネジ84のボールネジナットは、方向転換機構85に連結されている。方向転換機構85は、直動カム機構として構成されている。下部シュー73は、方向転換機構85の従動節として、方向転換機構85がボールネジ84によってX方向に移動するのに伴って、移動軸線UXに沿って移動するように構成されている。制御装置60は、下部シュー駆動回路91を介してサーボモータ82の回転角度を制御することで、下部シュー73を移動軸線UXに沿って移動させ、下部シュー73の位置を制御する。
【0037】
側部シュー送り装置86は、サーボモータ87と、カップリング88と、ボールネジ89とを有する。ボールネジ89のネジ軸は、X軸に沿って配置され、カップリング88を介してサーボモータ87の出力軸に連結されている。ボールネジ89のボールネジナットは、側部シュー74に連結されている。制御装置60は、側部シュー駆動回路92を介してサーボモータ87の回転角度を制御することで、側部シュー74を移動軸線SXに沿って移動させ、側部シュー74の位置を制御する。なお、下部シュー送り装置81や側部シュー送り装置86の構成は、下部シュー73や側部シュー74を移動させることができる構成であれば、上記に限らず任意であってよい。
【0038】
図3は、本実施形態におけるセンタ105を説明する模式図である。図3は、主軸台23に設けられたセンタ105を模式的に示している。図3では、伝達部材Tおよび回し金Laが省略されている。センタ105は、その工作物Wと反対側の端部に、テーパ部109を有している。テーパ部109は、後述する第2部材121の一部である。テーパ部109の外形は、その径が軸線方向において外側に向かうほど減少する円錐台状である。第2部材121は、主軸台23の軸線RX上の位置に設けられたセンタ保持部材27内のテーパ穴CHにテーパ部109がテーパ嵌合されることで、主軸台23に装着される。図3では、センタ保持部材27にハッチングが付されている。また、センタ保持部材27に装着された第2部材121の軸線方向における外側の端部CEを、軸状の部材によって外側から内側に押すことで、テーパ部109のテーパ嵌合が解除され、第2部材121が主軸台23から離脱する。このような構成により、センタ保持部材27には、センタ105を含め、種々のセンタが着脱可能である。なお、主軸台23に装着された第2部材121には、主軸モータ24の回転駆動力が伝達されない。そのため、第2部材121は、主軸モータ24によって回転しない。また、図3には示されていないが、心押台29に備えられたセンタ105も、主軸装置22に備えられたセンタ105と略同様に構成されている。
【0039】
図3に示すように、センタ105は、第1部材111と、上述した第2部材121とを有している。第1部材111は、軸線方向において、工作物Wの外側から工作物Wに接触する。本実施形態では、第1部材111は、球状の部材であり、例えば、鉄鋼製やステンレス鋼製の鋼球によって構成される。第1部材111は、工作物Wに向かって凸の球面状である第1球面部115と、第2部材121に向かって凸の第2球面部117とを有しているとも言える。第1球面部115の少なくとも一部は、工作物Wの端Egの軸線RX上の位置に形成されたセンタ穴HL内に配置されている。より詳細には、第1球面部115は、後述するように、その外面がセンタ穴HLの壁面TWに接するようにセンタ穴HLに嵌め込まれている。
【0040】
第2部材121は、軸線方向において工作物Wの反対側から第1部材111に接触する接触面125を有しており、第1部材111を工作物Wに対して軸線方向に押し当てる。つまり、第1部材111は、第2部材121と工作物Wとの間に配置され、第2部材121と工作物Wとによって挟まれる。本実施形態における第2部材121は、全体として軸状の部材であり、その軸方向がZ軸に沿うように配置されている。上述したテーパ部109は、第2部材121の軸線方向における外側の端部を構成する。第2部材121は、例えば、鉄鋼やステンレス鋼によって形成される。本実施形態における接触面125は、第2球面部117と接触し、軸線RXに垂直な面として構成されている。
【0041】
第2部材121は、上記のように構成されることで、第1部材111の軸線RX回りの回転と、第1部材111の軸線RXに垂直な方向における位置の変化とを許容し、かつ、第1部材111の軸線方向に沿った移動を規制する。つまり、本実施形態では、第2部材121によって、第1部材111の軸線RX回りの回転とともに、第1部材111の軸線RXに対するX方向およびY方向における位置の変化が許容され、かつ、第1部材111のZ方向に沿った移動が規制される。
【0042】
図4は、本実施形態における第1部材111とセンタ穴HLとの関係を説明する断面図である。図4に示すように、第1球面部115の外面は、センタ穴HLの壁面TWに接している。センタ穴HLの壁面TWとは、より具体的には、センタ穴HLのテーパ穴の壁面のことを指す。このように第1球面部115を構成する場合、センタ穴HLのパイロット穴径dやセンタ穴HLのテーパ穴径Dやセンタ穴HLの角度θに応じて、第1球面部115が壁面TWに接するように、第1球面部115の直径d1を設定すればよい。なお、本明細書において、「テーパ穴」の意味には、B形のセンタ穴における面取り部を含まない。
【0043】
本実施形態において、工作物Wを研削装置100に装着する場合、例えば、まず、振れ止め装置70に工作物Wを載置する。次に、第1部材111の第1球面部115の外面が壁面TWに接するように、各第1部材111をセンタ穴HLに嵌め込む。その後、第2部材121を+Z方向に移動させることで、第2部材121によって第1部材111を工作物Wに押し当てる。このようにすることで、工作物Wが、軸線方向において、第1部材111を介して、第2部材121によって外側から挟まれて支持される。なお、第1部材111をセンタ穴HLに嵌め込むに際して、例えば、第1部材111と工作物Wとが離間することを抑制するために、第1球面部115の外面や壁面TWにグリスを塗布し、グリスの粘着力で第1部材111を壁面TWに固着させてもよい。この場合、グリスの粘度は、例えば、少なくとも第1部材111が第2部材121によって壁面TWに押し当てられるまでの間、第1球面部115を壁面TWに固着可能な程度に大きければよい。
【0044】
図5は、センタ保持部材27に他のセンタ300が装着された様子を示す模式図である。センタ300は、センタ105とは違って、一般的なセンタとして構成されており、第1部材111と第2部材121とを有していない。図5では、センタ300のテーパ部301は、図3で説明したセンタ105と同様に、センタ保持部材27のテーパ穴CHにテーパ嵌合されている。センタ300は、その先端部302をセンタ穴HLに挿入させることで、工作物Wを支持する。
【0045】
本実施形態では、第4部分Wdおよび第5部分Weの真円度および円周振れを所定以下に調整するための研削と、第4部分Wdおよび第5部分Weを基準とした第1部分Waから第3部分Wcの研削とを、工作物Wを振れ止め装置70に支持させたまま続けて実行できる。この場合、例えば、第4部分Wdおよび第5部分Weを研削する際に図5に示したセンタ300によって工作物Wを支持でき、第1部分Waから第3部分Wcを研削する際に図3に示したセンタ105によって工作物Wを支持できる。より詳細には、まず、図5に示すように、工作物Wをセンタ300および振れ止め装置70によって支持させた状態で、工作物Wを軸線RX周りに回転させながら、第4部分Wdや第5部分Weを砥石31によって研削する。その後、図3に示すように、センタ300に代えてセンタ105をセンタ保持部材27に装着し、工作物Wをセンタ105および振れ止め装置70によって支持させた状態で、工作物Wを軸線RX周りに回転させながら、第1部分Waから第3部分Wcを砥石31によって研削する。
【0046】
以上で説明した本実施形態における研削装置100によれば、振れ止め装置70は、工作物Wの外周面の基準位置に接触し、工作物Wを軸線RX回りに回転可能に支持する。一対のセンタ105は、工作物Wを軸線RX方向において両側から挟み込む。センタ105は、軸線方向において工作物Wの外側から工作物Wに接触する第1部材111と、軸線方向において工作物Wの反対側から第1部材111に接触する接触面125を有し、第1部材111を工作物Wに対して軸線方向に沿って押し当てる第2部材121とを有する。第2部材121は、第1部材111の軸線RX回りの回転を許容するとともに、第1部材111の軸線RXに垂直な方向における位置の変化を許容し、かつ、第1部材111の軸線方向における移動を規制するように構成されている。
【0047】
このようにすれば、工作物Wが、センタ105を構成する第1部材111と第2部材121とによって軸線RX方向に移動しないように拘束されつつ、工作物Wが第2部材121に対して軸線RXに垂直な方向に移動することが許容される。そのため、例えば、センタ穴HLの真円度や円周振れが工作物Wの基準位置における真円度や円周振れより大きい場合であっても、センタ105によって工作物Wの軸線RX方向における移動を規制しつつ、振れ止め装置70によって支持される基準位置の外周面を基準として、工作物Wを軸線RX回りに回転させることができる。従って、工作物Wがセンタ105によって径方向に支持されることに起因して工作物Wの加工精度が低下することを抑制できる。また、例えば、振れ止め装置70のみによって工作物Wを支持する形態と比較して、研削加工中における工作物Wの軸方向の位置ズレを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、第1部材111は、第1球面部115を有し、第1球面部115の外面は、センタ穴HLの壁面TWに接している。このようにすれば、工作物Wを軸線方向に拘束することと、工作物Wの軸線RX回りの回転を許容することとを容易に実現でき、第1部材111に対する工作物Wの傾きを容易に許容できる。
【0049】
また、本実施形態では、第1部材111は、第2球面部117を有し、接触面125は、第2球面部117と接触し、軸線方向に垂直な面として構成されている。そのため、第2部材121によって、第1部材111の軸線RX回りの回転と、第1部材111の軸線RXに垂直な方向における位置の変化とを容易に許容できる。
【0050】
また、本実施形態では、第1部材111は、球状の部材である。そのため、第1部材111を容易に製造できる。
【0051】
また、本実施形態では、工作物Wの基準位置における外周面は、その真円度および円周振れが所定以下となるように予め研削されている。そのため、工作物Wの基準位置における外周面を振れ止め装置70によって支持することで、工作物Wの基準位置以外における外周面を研削するときの加工精度をより向上できる。
【0052】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態におけるセンタ106を説明する断面図である。本実施形態における第1部材112は、第1実施形態とは違って、球状の部材ではない。また、第1部材112は、第2球面部117を有していない。また、本実施形態における第2部材122は、本体部141と第2係合部145とを有している。なお、第2実施形態におけるセンタ106や研削装置100の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0053】
第1部材112は、全体として略円筒形状を有し、その軸方向がZ方向に沿うように配置されている。第1部材112は、先端部131と、胴部132と、第1係合部133とによって構成されている。先端部131は、第1部材112の工作物W側の端を含む部分である。先端部131は、工作物Wに向かって+Z方向に突出するドーム形状を有しており、第1球面部115を有している。胴部132は、Z方向において先端部131と第1係合部133との間に配置された略円筒形状の部分であり、第1係合部133の径d3よりも小さい径d2を有している。本実施形態では、第1係合部133は、径方向において第1球面部115よりも外側に突出した鍔状である。つまり、第1係合部133の径d3は、第1球面部115の径よりも大きい。本実施形態における第1係合部133は、第1部材112の第2部材122側の端面PLを構成している。端面PLは、軸線方向に垂直な面として構成されている。先端部131と胴部132と第1係合部133とは、それぞれ同軸に位置するように一体に形成されている。このように先端部131と胴部132と第1係合部133とを形成する場合、例えば、旋盤で金属材料を切削することによって第1部材112を製造すればよい。
【0054】
第2部材122の本体部141は、軸状の部材であり、その軸方向がZ軸に沿うように配置されている。本体部141の+Z方向側の端部には、第1係合部133を収容する凹部143が形成されている。凹部143は、工作物Wに向かって開口しており、凹部143の開口部Opの開口形状は、本体部141の中心軸を中心とする円形状である。開口部Opの底面は、円形状の面であり、軸線RXと垂直な接触面126を構成している。接触面126は、端面PLと接する。開口部Opの開口径d4は、第1係合部133の径d3よりも大きい。また、開口部OpのZ方向に沿った高さh1は、第1係合部133のZ方向に沿った厚みt1よりも大きい。
【0055】
第2係合部145は、第1係合部133に工作物W側から係合可能に構成されている。本実施形態における第2係合部145は、略円環状の部材であり、その軸方向がZ軸に沿うように、Z方向において本体部141と工作物Wとの間に配置されている。第2係合部145は、本体部141に対してボルト等の固定具(図示せず)を介して脱着可能に固定されている。第2係合部145は、本体部141に装着される場合には、本体部141に対して+Z方向側から接触するように固定具を介して本体部141に固定される。
【0056】
第2係合部145のX方向およびY方向における中央部に形成された貫通孔146の開口形状は、円形状である。貫通孔146の開口径d5は、凹部143の開口径d4よりも小さい。このような構成により、第2係合部145は、凹部143の一部を+Z方向から覆っている。また、貫通孔146の開口径d5は、胴部132の径d2よりも大きく、かつ、第1係合部133の径d3よりも小さい。
【0057】
第1部材112は、開口部Op内に第1係合部133の全体と胴部132の一部とが配置されるように、かつ、先端部131と胴部132の一部とが貫通孔146を介して開口部Op内から外へと+X方向に突出するように配置されることで、第2部材122に取り付けられている。この状態で、本体部141の中心軸と第1部材112の中心軸とが一致する場合、第1係合部133の外周面と開口部Opの内周面との間に隙間Gp1が形成され、かつ、胴部132の外周面と貫通孔146の内周面との間には隙間Gp2が形成される。隙間Gp1および隙間Gp2は、パイロット穴径dよりも小さい。また、接触面126と端面PLとが接触した状態で、第1係合部133の+X方向側の面と第2係合部145の-X方向側の面との間には、隙間Gp3が形成される。このように隙間Gp1、隙間Gp2および隙間Gp3が形成されることで、第2係合部145と係合された第1係合部133の軸線RXに垂直な方向における位置の変化が許容され、第1部材112の軸線RX回りの回転と軸線RXに対する位置の変化とが許容される。工作物Wは、工作物Wの基準位置の外周面を基準として軸線RX回りに回転する場合、この基準位置における真円度や円周振れに対応する分だけ、軸線RXに垂直な方向に移動する。隙間Gp1および隙間Gp2は、この第1部材112の移動を許容するのに要する隙間以上であればよい。また、センタ穴HLの真円度や円周振れが工作物Wの基準位置における真円度や円周振れより大きい場合、隙間Gp1および隙間Gp2は、工作物Wの回転時に、第1部材111が、センタ穴HLの真円度や円周振れに対応する分、軸線RXに垂直な方向に移動することを許容できる程度に大きい隙間であると好ましい。
【0058】
本実施形態では、第1部材112を第2部材122に取り付ける場合、まず、第1係合部133の全体と胴部132の一部とを凹部143の開口部Op内に配置する。その後、環状の第2係合部145を、先端部131によって貫通孔146が+Z方向に貫かれるように、本体部141の+Z方向側から本体部141に装着する。
【0059】
なお、本実施形態においても、第1球面部115の外面は、センタ穴HLの壁面TWに接している。このように構成する場合、第1球面部115の曲率半径を、第1実施形態で説明した直径d1と略同様に、センタ穴HLの寸法や角度に基づいて定めればよい。
【0060】
以上で説明した第2実施形態における研削装置100によれば、第1部材112は、径方向において第1球面部115よりも外側に突出した第1係合部133を有し、第2部材122は、その底面が接触面126を構成し、第1係合部133を収容する凹部143と、凹部143の一部を工作物W側から覆い、第1係合部133に対して工作物W側から係合可能に構成された第2係合部145とを有する。第1部材111は、第1係合部133を凹部143内に収容させるとともに、第1部材112の工作物W側の端部を凹部143外へ突出させるように配置されることで、第2部材122に取り付けられている。第2部材122は、凹部143内に収容された第1係合部133の軸線RXに垂直な方向における位置の変化を許容するように構成されている。そのため、第1部材112が第2部材122から脱落することを、第1係合部133と第2係合部145との係合によって抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、第2係合部145は、環状であり、凹部143が形成された本体部141に対して脱着可能に構成されており、第2係合部145の開口径d5は、第1球面部115の径よりも大きい。このような構成によれば、環状の第2係合部145が本体部141に対して脱着可能なので、第1部材112を第2部材122に容易に取り付けることができ、かつ、第2部材121に取り付けられた第1部材111の脱落を抑制できる。
【0062】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態におけるセンタ107を説明する断面図である。本実施形態における第1部材113は、第2実施形態と同様に、球状の部材ではない。また、第1部材113は、第2実施形態とは異なり、第2球面部117を有している。なお、第3実施形態におけるセンタ107や研削装置100の構成のうち、特に説明しない部分については、第2実施形態と同様である。
【0063】
第1部材113は、第2実施形態と同様に、全体として略円筒形状を有している。本実施形態では、第1部材113は、先端部131と、胴部132と、第1係合部133と、後端部134とによって構成されている。後端部134は、第1部材112の第2部材123側の端を含む部分であり、第2部材123に向かって-Z方向に突出するドーム形状を有している。従って、本実施形態における第1係合部133は、第2実施形態とは異なり、第1部材113の第2部材123の端を構成していない。後端部134は、第2球面部117を有している。第2球面部117の径d6は、第2部材123の開口部Opの開口径d4よりも小さく、本実施形態では、第1係合部133の径d3よりも小さい。なお、径d6とは、第2球面部117の軸線RXに垂直な断面における最大径のことを指す。後端部134は、先端部131等と同軸に位置するように、先端部131等と一体に形成されている。第1部材113は、第2実施形態と同様に、例えば、旋盤で金属材料を切削することによって製造される。
【0064】
第2部材123は、第2実施形態と同様に、本体部142と第2係合部145とを有している。本体部142に形成された凹部144の開口部OpのZ方向に沿った高さh2は、第1係合部133と後端部134との合計の厚みt2より大きい。
【0065】
第1部材113は、開口部Op内に第1係合部133および後端部134の全体と、胴部132の一部とが配置されるように、かつ、先端部131と胴部132の一部とが、貫通孔146を介して開口部Op内から外へと+X方向に突出するように配置されることで、第2部材123に取り付けられている。本実施形態においても、この状態で、本体部142の中心軸と第1部材112の中心軸とが一致する場合、第2実施形態と同様に隙間Gp1や隙間Gp2が形成される。また、接触面126と後端部134の-Z方向側の端点とが接触した状態で、第1係合部133の+Z方向側の面と第2係合部145の-X方向側の面との間には、隙間Gp3が形成される。
【0066】
以上で説明した第3実施形態における研削装置100によっても、工作物Wが第1部材113と第2部材123とによって軸線方向に支持されつつ、工作物Wが第2部材121に対して軸線RXに垂直な方向に移動することが許容される。そのため、工作物Wがセンタ107によって支持されることに起因して工作物Wの加工精度が低下することを抑制できる。また、第2実施形態と同様に、第1部材113が第2部材123から脱落することを、第1係合部133と第2係合部145との係合によって抑制できる。また、第2係合部145が本体部142に対して脱着可能なので、第1部材113を第2部材123に容易に取り付けることができる。
【0067】
D.他の実施形態:
(D-1)上記実施形態では、第1球面部115は、その外面が、センタ穴HLの壁面TWに接するように構成されている。これに対して、第1球面部115は、軸線RX回りの回転と、軸線RXに垂直な方向における位置の変化とが許容され、軸線方向における移動が規制されるように構成されていれば、その外面が壁面TWに接するように構成されなくてもよい。例えば、第1球面部115は、その外面が壁面TWに接するのではなく、センタ穴HLの壁面TWとパイロット穴の壁面との間の角部に接触するように構成されていてもよい。具体的には、第1球面部115をその突出方向に沿って見たときの第1球面部115の径が、テーパ穴径D以上となるように、第1球面部115の寸法を設定すればよい。
【0068】
(D-2)上記実施形態において、第2部材121の第1部材111との接触面125は、軸線方向に垂直な面として構成されているが、このように構成されていなくてもよい。この場合、例えば、第2実施形態において、接触面126が、+Z方向に向かって凸の曲面状に構成されていてもよい。
【0069】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…ベッド、20…支持部、21…テーブル、22…主軸装置、23…主軸台、24…主軸モータ、25…主軸エンコーダ、26…回転面板、27…センタ保持部材、29…心押台、30…砥石台、31…砥石、32…砥石軸、33…砥石回転モータ、40…テーブル移動装置、41…テーブル移動モータ、42…テーブルエンコーダ、50…砥石台移動装置、51…砥石台移動モータ、52…砥石台エンコーダ、60…制御装置、61…CPU、62…記憶部、63…表示部、65…駆動回路、66…駆動回路、67…駆動回路、70…振れ止め装置、71…レスト台、72…シュー、73…下部シュー、74…側部シュー、80…シュー送り装置、81…下部シュー送り装置、82…サーボモータ、83…カップリング、84…ボールネジ、85…方向転換機構、86…側部シュー送り装置、87…サーボモータ、88…カップリング、89…ボールネジ、91…下部シュー駆動回路、92…側部シュー駆動回路、100…研削装置、105,106,107…センタ、109…テーパ部、111,112,113…第1部材、115…第1球面部、117…第2球面部、121,122,123…第2部材、125,126…接触面、131…先端部、132…胴部、133…第1係合部、134…後端部、141,142…本体部、143,144…凹部、145…第2係合部、146…貫通孔、300…他のセンタ、301…テーパ部、302…先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7