(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113709
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】レンズフィルター
(51)【国際特許分類】
G03B 11/00 20210101AFI20240816BHJP
【FI】
G03B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018814
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】592159999
【氏名又は名称】株式会社ケンコー・トキナー
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】金子 茂生
【テーマコード(参考)】
2H083
【Fターム(参考)】
2H083AA01
2H083AA10
2H083AA16
2H083AA20
2H083AA26
(57)【要約】
【課題】光害の発生を抑制し、星などの点光源を強調することができるレンズフィルターを提供する。
【解決手段】レンズフィルター10は、カラードガラス1で構成され、少なくともおもて面2に拡散効果を有するパターン模様4を有する。このレンズフィルター10を用いることで、撮影時に発生する光害を防止することができ、色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整えると共に、星の明るさを分かりやすく表現し、星などの点光源を強調することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラードガラスで構成されたレンズフィルターであって、
少なくとも一方の面に、拡散効果を有するパターン模様が形成されている、
ことを特徴とするレンズフィルター。
【請求項2】
前記パターン模様が、エッチング処理により形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズフィルター。
【請求項3】
前記カラードガラスが、550nmから630nmに最大吸収波長領域を有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズフィルター。
【請求項4】
前記カラードガラスの前記一方の面の面積に対する前記パターン模様の面積が、50%から100%である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレンズフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置に装着されるフィルターユニットが開示されている(例えば、特許文献1)。通常のフィルターユニットは、偏光フィルターやNDフィルター、レンズ保護フィルター等を備えている。一方、撮影する対象に応じて、フィルターユニットに、光害をカットするための光害カットフィルターを配置することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光害カットフィルターは主に夜の撮影に使用され、光害カットフィルターを利用した場合、街明かりによる色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、かつ夜空らしい色合いに整えた写真を撮影することができる。特に、倉庫や工場などで使われる水銀灯や高速道路などで使われるナトリウムランプを撮影したときには効果が顕著である。これらの灯火はかなり遠くまで影響があるため、光害カットフィルターは、星景写真の撮影では常用フィルターと言え、価値がある。しかし、光害カットフィルターのみを利用した場合、1等星や3等星など、星の明るさを分かりやすく表現することや星などの点光源を強調することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整えると共に、星の明るさを分かりやすく表現し、星などの点光源を強調することができるレンズフィルターに関するものであり、本発明は、撮影時の光害の発生を解消すると共に、星などの点光源を強調できるレンズフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレンズフィルターは、カラードガラスで構成され、少なくとも一方の面に拡散効果を有するパターン模様が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレンズフィルターは、パターン模様がエッチング処理により形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るレンズフィルターは、カラードガラスが550nmから630nmに最大吸収波長領域を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るレンズフィルターは、カラードガラスの一方の面の面積に対するパターン模様の面積が50%から100%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るレンズフィルターは、少なとも一方の面に拡散効果を有するパターン模様が形成されているカラードガラスで構成される。そのため、このレンズフィルターを使用することで、光害の発生を防止することができ、色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整えることができ、かつ星の明るさを分かりやすく表現し、星などの点光源を強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズフィルターを示す図である。(a)は斜視図であり、(b)は側面図を示している。
【
図2】本発明の実施形態に係るエッチング面の面積が異なるレンズフィルターを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るレンズフィルターを利用し撮影した写真画像である。(a)はレンズフィルターを取り付けた状態で撮影した写真画像を示し、(b)はレンズフィルターを取り付けていない状態で撮影した写真画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るレンズフィルターは、カラードガラスで構成され、少なくとも一方の面に拡散効果を有するパターン模様が形成されている。また、本発明に係るレンズフィルターはパターン模様がエッチング処理により形成され、本発明に係るレンズフィルターのカラードガラスは、550nmから630nmに最大吸収波長領域を有する。さらに、本発明に係るレンズフィルターは、カラードガラスの一方の面の面積に対するエッチング面の面積が50%から100%とすることもできる。本発明に係るレンズフィルターは、光害の発生を防止することができ、色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整えることができ、かつ星の明るさを分かりやすく表現し、星などの点光源を強調することができるものである。
【0013】
本実施形態では、デジタル一眼レフカメラに使用するレンズフィルター10を、
図1及び
図2を参照し説明する。
【0014】
レンズフィルター10は、
図1(a)に示すように、円形状のカラードガラス1で構成され、透過する光を吸収し、光量を減光して光の透過率を下げる特性を有する。カラードガラスは、ガラスに着色成分が添加されたものであり、各種遷移金属イオン、希土類イオン、有色コロイド等によって着色される。カラードガラス1は550nmから630nmに最大吸収波長領域を有するものが好ましく、このレンズフィルター10には、例えば、厚みが1mmから3mmのものを使用する。
【0015】
レンズフィルター10は、
図1(b)に示すように、カラードガラス1のおもて面(一方の面)2の全体がエッチング処理により、拡散効果を有するパターン模様4が形成され、うら面3(他方の面)はエッチング処理されていない。エッチング処理は、フォトリソグラフィによって実施する。なお、拡散効果を有するパターン模様4は、エッチング処理による方法に限定されず、公知の方法により、適宜形成することができる。
また、エッチング処理されている層の厚みは、例えば、150nmから200nmである。なお、エッチング処理されている層の厚みは適宜変更することで、所望の拡散効果を得ることができる。
【0016】
レンズフィルター10は、エッチング面(パターン模様)4が被写体側となるように配置される。このレンズフィルター10は、レンズの前側やレンズの後側、レンズの中間に配置することで使用される。
【0017】
次に、本実施形態に係るレンズフィルターの作用効果について説明する。
【0018】
本実施形態に係るレンズフィルター10を使用して撮影した夜景を
図3(a)に示し、レンズフィルター10を使用せずに撮影した夜景を
図3(b)に示した。
レンズフィルター10を装着せずに撮影した写真画像では、光害が発生していることが分かる。特に、山と星空の境目付近は、光害の影響が顕著に発生している。また、星の明るさが分かりにくく、星の光が強調されない(
図3(b))。
一方、本実施形態に係るレンズフィルター10を装着し撮影した場合、光害の発生を抑制し、色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整えることができる(
図3(a))。さらに、点光源である星の光が強調され、かつ星の明るさが分かりやすく表現されていることが分かった。
【0019】
本実施形態に係るレンズフィルター10は、カラードガラスで構成され、目的の波長の光を吸収することができる。そのため、このレンズフィルター10を利用することで、光害の発生を防止することができ、色かぶりを抑え、夜空をすっきりとコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整えることができる。さらに、本実施形態に係るレンズフィルター10は、少なくとも一方の面にエッチング面4が形成され、光の拡散が調整される。そのため、レンズフィルター10を利用することで、星の明るさを分かりやすく表現し、星などの点光源を強調することができる。
【0020】
同様な効果を得る場合、複数枚のレンズフィルターを使用しなければならず、装着する位置を確認したり、時間がかかるため、取り付けの手間や煩わしさが生じていた。
本実施形態に係るレンズフィルター10は、1枚のカラードガラスで構成されているため、取り付ける位置を間違えることが防止されると共に、複数枚のレンズフィルターの取り付けの際生じる手間や煩わしさが解消される。
【0021】
複数のレンズフィルターを取り付けて、撮影した場合、写真の四方にケラレが発生するおそれがあるが、本実施形態に係るレンズフィルター10は、1枚のカラードガラス1で構成され、複数のレンズフィルターを使用しないため、ケラレが発生することが防止される。また、このレンズフィルター10を利用することで、フレアゴーストをも防ぐこともできる。
【0022】
以上の通り、本実施形態に係るレンズフィルター10は、色かぶりを抑え、夜空をコントラストよく見せ、夜空らしい色合いに整え、星の明るさを分かりやすく表現し、星などの点光源を強調できると共に、取り付けの煩わしさやケラレの発生を解消することができる。
【0023】
本実施形態に係るレンズフィルター10は、カラードガラス1のおもて面2及びうら面3の両面全体にエッチング面4を形成することもできる。その他、カラードガラス1のエッチング面4の面積を変更することができる。具体的には、カラードガラス1のおもて面2(うら面3)の面積に対し、エッチング面4の面積を50%から100%とすることができる。エッチング面4は、
図2に示すように、カラードガラス1の一方側(例えば、上側)をエッチング面4とする。このレンズフィルター10を使用することで、撮影する風景の上側が星空、下側が地上である場合に、光害を防止しつつ、星空の星の光がより強調され、星の明るさが分かりやすい写真を撮影することができる。
【0024】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【0025】
例えば、本実施形態では、カラードガラスを使用したレンズフィルターに関し説明したが、透明なガラス基板にエッチング処理を施したものをレンズフィルターとして使用することもできる。また、本発明のレンズフィルターは、光害を防止し、かつ光の拡散効果を有すれば良く、複数枚のカラードガラスを組み合わせたものでも良い。例えば、微粉末を含む接着層を介してカラードガラス同士を接着させ、レンズフィルターとして使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 カラードガラス
2 おもて面(一方の面)
3 うら面(他方の面)
4 エッチング面(パターン模様)
10 レンズフィルター