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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113713
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018827
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川添 信幸
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車線維持制御の実施中に発生し得る挙動乱れを事前に警告する。
【解決手段】車両制御装置10は、自車両20の走行車線Rを認識する車線認識部11と、走行車線R上を自車両20が走行するようにステアリング装置21を制御することで車線維持制御を実施する制御部12と、車線維持制御の実施中に発生した自車両20の挙動乱れを検知する検知部13と、検知部13で検知された挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶する記憶部16と、車線維持制御の実施中に、記憶部16に記憶されている発生地点に自車両20が到達する前に警告する報知部17と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行車線を認識する車線認識部と、
前記走行車線上を前記自車両が走行するようにステアリング装置を制御することで車線維持制御を実施する制御部と、
前記車線維持制御の実施中に発生した前記自車両の挙動乱れを検知する検知部と、
前記検知部で検知された前記挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶する記憶部と、
前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記発生地点に前記自車両が到達する前に警告する報知部と、を備える
ことを特徴とする、車両制御装置。
【請求項2】
前記検知部は、検知した前記挙動乱れのレベルを設定し、
前記記憶部は、前記発生地点の前記位置情報と対応づけて前記レベルを記憶し、
前記報知部は、所定の警告レベル以上の前記レベルで記憶されている前記発生地点について警告する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記走行車線の認識精度が低下する所定環境下では、前記レベルの設定に用いる特性値の変化量の閾値を、前記所定環境以外の通常環境下のときよりも高くする
ことを特徴とする、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記報知部は、前記走行車線の認識精度が低下する所定環境下では、前記警告レベルよりも一段階低い第二警告レベル以上の前記レベルで記憶されている前記発生地点について警告する
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記自車両のドライバーによって前記自車両の挙動乱れの発生地点として入力された任意地点の位置情報を取得する取得部をさらに備え、
前記記憶部は、前記取得部で取得された前記任意地点の位置情報を記憶し、
前記報知部は、前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記任意地点に前記自車両が到達する前に警告する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記自車両以外の他車両と通信して、前記他車両において挙動乱れの発生地点として記憶されている共有地点の位置情報を取得する通信部をさらに備え、
前記記憶部は、前記通信部で取得された前記共有地点の位置情報を記憶し、
前記報知部は、前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記共有地点に前記自車両が到達する前に警告する
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記車線維持制御中に、前記記憶部に記憶されている前記発生地点で前記自車両の挙動乱れが所定回数以上発生しなかった場合には、前記記憶部から当該発生地点の情報を削除する更新部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、自車両の走行車線を認識し、当該走行車線上を自車両が走行するように制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の走行車線を認識し、当該走行車線上を自車両が走行するように制御(車線維持制御,レーンキープ制御)を実施する車両制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、車載カメラによって検出された区画線(車線)に基づいて、自車両に搭載されている各種装置の動作を制御することで、自車両の車線内の走行を支援する運転支援装置(車両制御装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/064825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車線維持制御では、上述のように、認識された走行車線に基づいて自車両の制御が実施される。このため、例えば白線のかすれに起因して、走行車線の認識に突発的な乱れが生じた場合には、当該突発的な認識の乱れが車両の制御に影響し、車両の挙動乱れを招き得る。また、このような車両の挙動乱れが警告されることなく突発的に発生すると、ドライバーが不安を感じてしまう可能性がある。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、車線維持制御の実施中に発生し得る挙動乱れを事前に警告することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の車両制御装置は、以下に開示する態様又は適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
ここで開示する車両制御装置は、自車両の走行車線を認識する車線認識部と、前記走行車線上を前記自車両が走行するようにステアリング装置を制御することで車線維持制御を実施する制御部と、前記車線維持制御の実施中に発生した前記自車両の挙動乱れを検知する検知部と、前記検知部で検知された前記挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶する記憶部と、前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記発生地点に前記自車両が到達する前に警告する報知部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の車両制御装置によれば、車線維持制御の実施中に発生し得る挙動乱れを事前に警告できる。したがって、ドライバーに対して、挙動乱れが発生する前に挙動乱れの発生の可能性を認識させることができ、仮に、ドライバーがハンドルから手を離していたとしても、ハンドルを握ることを促すことができる。よって、ドライバーの車線維持制御に対する過信や、挙動乱れの発生時にドライバーが感じる不安を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両制御装置が適用された車両とその周辺の道路とを示す模式図である。
図2図1の車両制御装置のブロック図である。
図3図1の車両がカーブを走行する場合に、図2の車両制御装置で認識された走行車線の曲率半径の変化を、時系列で示すグラフである。
図4】特性値として曲率半径が用いられる場合に、各レベルの設定に用いる閾値を示した表である。
図5】特性値として図1の車両の現在位置が用いられる場合に、各レベルの設定に用いる閾値を示した表である。
図6】特性値として操舵角が用いられる場合に、各レベルの設定に用いる閾値を示した表である。
図7図2の車両制御装置の検知部で実施される処理を説明するためのフローチャート例である。
図8図2の車両制御装置の報知部で実施される制御を説明するためのフローチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態としての車両制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0010】
[1.概要]
図1は、本実施形態の車両制御装置10(以下、単に「制御装置10」とよぶ)が適用された車両20とその周辺の道路とを示す模式図であり、図2は、本実施形態の制御装置10のブロック図である。制御装置10は、車両20を制御する電子制御装置(コンピューター)である。以下、制御装置10により制御される車両20を、「自車両20」ともよぶ。なお、制御装置10は、図1及び図2に示すように自車両20に搭載されるものであってもよく、自車両20の外部に設けられて自車両20を遠隔で制御するものであってもよい。
【0011】
制御装置10は、自車両20のドライバーに代わって、自車両20のステアリング装置21(図2参照)を制御する車線維持制御を実施するものである。車線維持制御において、制御装置10は、自車両20の前方の車線R(走行車線)を認識して、認識した車線Rに基づいて自車両20に車線R上を走行させる。車線Rの認識は、例えば、自車両20に搭載されたカメラ23(図2参照)で撮影された画像データに基づいて行われる。なお、車線維持制御は、例えば、高速道路を走行中に実施される。
【0012】
ところで、上述のような車線認識制御では、図1に示すように、自車両20が走行する実際の車線Rr(以下、「実車線Rr」ともよぶ)を区画する左右の白線WLの一部にかすれSCが生じていた場合に、実車線Rrとは異なる形状で車線Rを一時的に誤認識してしまうことがある。なお、図1では、白線WLのかすれSCを破線で示し、誤認識した車線Rを二点鎖線で示している。また、上述のような車線Rの誤認識は、白線WLのかすれSCに限らず、例えば、カメラ23が取得した画像データに乱れが生じた場合にも生じ得る。
【0013】
このような車線Rの誤認識が生じた場合、制御装置10は、誤認識した車線Rに基づいて、一時的に、ステアリング装置21を誤操作することがある。これにより、予期しない振動(以下、「挙動乱れ」とよぶ)が自車両20に生じ、自車両20のドライバーを不安に感じさせる可能性がある。
【0014】
そこで、本実施形態の制御装置10は、車線維持制御の実施中に発生した挙動乱れを検知するとともに検知した挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶し、今後、自車両20が当該発生地点を走行する前に「挙動乱れが発生する可能性があること」を警告する。制御装置10による警告は、例えば、自車両20に搭載された報知装置22(図2参照)を用いて実施される。これにより、制御装置10は、ドライバーの車線維持制御に対する過信や、挙動乱れの発生時にドライバーが感じる不安を低減する。
【0015】
また、本実施形態において、制御装置10は、車線維持制御の実施中に発生した挙動乱れの程度に基づいて当該挙動乱れのレベルを設定して、設定したレベルを位置情報とともに記憶する。レベルは、例えば、レベル1~5の五段階で設定され、挙動乱れの程度が大きいものほど大きい値が設定される。制御装置10は、記憶されている発生地点のうち、所定の警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告する。例えば、警告レベルが3に設定されている場合、制御装置10は、レベル3以上で記憶されている発生地点(すなわち、レベル3,レベル4,レベル5の各発生地点)について警告する。これにより、制御装置10は、不要警報による煩わしさの低減を図る。
【0016】
さらに、本実施形態において、制御装置10は、自車両20のドライバーによって自車両20の挙動乱れの発生地点として入力された任意地点の位置情報を記憶する。すなわち、任意地点とは、ドライバーが、車線維持制御での走行中に挙動が乱れたと感じて記憶させた場所のことである。当該任意地点の入力は、例えば、自車両20に搭載された入力装置24により手動で行われる。
【0017】
また、本実施形態において、制御装置10は、自車両20とは別の車両30(以下、「他車両30」とよぶ)で挙動乱れの発生地点として記憶されている共有地点の位置情報を記憶する。つまり、制御装置10は、自車両20の制御装置10と同様の機能を持つ他車両30の制御装置において記憶されている挙動乱れの発生地点(任意地点を含んでよい)を、共有地点として取得して記憶する。これにより、制御装置10は、例えば自車両20がまだ走行したことがない場所についても、挙動乱れが発生し得るという情報を取得できる。当該共有地点の情報の取得は、例えば、自車両20に搭載された通信装置25を介して行われる。そして、制御装置10は、自車両20が任意地点や共有地点を走行する前に「挙動乱れが発生する可能性があること」を警告する。
【0018】
本実施形態において、制御装置10に記憶されている発生地点の情報は、所定の条件が成立すると削除される。ここで、所定の条件とは、記憶されている発生地点で自車両20の挙動乱れが所定回数N以上発生しなかった場合が挙げられる。このように、制御装置10は、記憶されている発生地点の情報を適宜削除することで、不要警報による煩わしさの低減を図る。
【0019】
例えば、記憶されている発生地点の白線WLが整備された場合には、当該発生地点での挙動乱れが生じにくくなる。制御装置10は、このような場合に発生地点の情報を適宜削除することで、不要警報による煩わしさを低減できる。なお、制御装置10は、発生地点に限らず、記憶した任意地点及び共有地点についても同様に、上記の所定の条件が成立したことを以て当該地点の情報を削除してもよい。また、この場合、自車両20の制御装置10と同様の機能を持つ他車両30の制御装置において、同様に削除された発生地点の情報を取得したことを、所定の条件としてもよい。つまり、制御装置10は、他車両30の制御装置において記憶されていた発生地点の情報が削除された旨の情報を取得した場合に、対応する共有地点の情報を削除してもよい。
【0020】
[2.装置(ハードウェア)構成]
図2を参照しながら、各装置構成について詳述する。制御装置10は、上述の通り、車両20を制御する電子制御装置(コンピューター)であり、マイクロプロセッサー(中央処理装置),メモリ(メインメモリ),記憶装置(ストレージ),インタフェース装置などが内蔵される。
【0021】
制御装置10の制御対象には、自車両20のステアリング装置21及び報知装置22が含まれる。ステアリング装置21は、自車両20の図示しないステアリングシャフトへ操舵トルクを付与して操舵角SAを変更又は維持するアクチュエータを備えた操舵装置である。車線維持制御の実施中において、ステアリング装置21は、制御装置10から伝達された信号に基づいて、ステアリングシャフトへ付与される操舵トルクを変更又は維持する。一方で、車線維持制御の非実施中には、ステアリング装置21は、ドライバーがハンドルに加える操舵操作に応じて操舵トルクを変更または維持する。
【0022】
報知装置22は、上述の通り、自車両20の乗員に対して「挙動乱れが発生する可能性があること」を報知する装置である。報知装置22としては、車載ディスプレイ,警告灯,スピーカなどが例示され、表示による報知や音声による報知により、おもにドライバーに対して警告する。
【0023】
制御装置10に情報を入力する入力装置には、自車両20のカメラ23,入力装置24,通信装置25,測位装置26が含まれる。また、自車両20の操舵角センサ27及び操舵角速度センサ28も上記の入力装置に含まれる。制御装置10は、これらの各種装置から得られる情報に基づいて、制御対象の作動状態を制御する。
【0024】
カメラ23は、自車両20の周囲の状況を撮影する撮像装置である。カメラ23で撮影された画像データは、制御装置10に伝達される。なお、カメラ23で撮影される画像データは、静止画であってもよく動画であってもよい。カメラ23の設置位置は、少なくとも自車両20の前方の道路を撮影可能な位置に設定される。例えば、カメラ23は、自車両20の前端部と運転席側の側方(サイドミラーの内部)とに内蔵される。
【0025】
入力装置24は、上述の通り、自車両20のドライバーが任意地点を登録するための装置である。入力装置24としては、自車両20の運転席付近に設けられたタッチパネルやハンドルに設けられたスイッチ,マイクなどが例示される。
【0026】
通信装置25は、車外のコンピューターと通信を行うことで、他車両30から共有地点の情報を取得する電子制御装置である。通信装置25は、例えば、クラウド40上に格納された共有地点の情報を、移動体通信網を利用したインターネット経由の無線通信を行うことで取得してよい。また、他車両30が無線通信に対応している場合には、通信装置25は、自車両20と他車両30との車車間通信を行うことで、直接的に共有地点の情報を取得してよい。或いは、通信装置25は、自車両20又は制御装置10のソフトウェアの更新時に、車外のコンピューターと有線通信を行うことで、共有地点の情報を取得してよい。
【0027】
測位装置26は、GNSS(Global Navigation Satellite System,全球測位衛星システム)や図示しない車速センサの検出情報などに基づいて、自車両20の現在位置Pの位置情報(緯度や経度や高度)を計測するものである。測位装置26には、自車両20が通行可能な道路の形状や配置を縮尺してなる地図情報が記憶されていてもよい。この場合、測位装置26は、当該地図情報に基づいて、自車両20の現在位置Pを精度よく特定してもよい。また、測位装置26は、現在位置Pの道路形状や、現在位置Pよりも前方の位置情報を当該地図情報から取得し、取得した情報を制御装置10に伝達してもよい。
【0028】
操舵角センサ27は、操舵角SAを検出するセンサである。操舵角速度センサ28は、ハンドルの操作速度である操舵角速度SVを検出するセンサである。なお、操舵角速度センサ28を省略し、制御装置10において、操舵角センサ27で検出された操舵角SAを微分することで操舵角速度SVを算出してもよい。
【0029】
[3.制御構成]
制御装置10には、上述の制御(車線維持制御、及び、報知に関する制御)を実施する機能要素として、認識部11(車線認識部),制御部12,検知部13,取得部14,通信部15,記憶部16,報知部17及び更新部18が設けられる。
【0030】
認識部11及び制御部12は、上述の車線維持制御を実施するための要素である。検知部13は、車線維持制御の実施中に発生した挙動乱れを検知する要素である。取得部14は、任意地点の位置情報を取得する要素であり、通信部15は、共有地点の位置情報を取得する要素である。
【0031】
また、記憶部16は、各地点の位置情報を記憶するための要素である。報知部17は、車線維持制御の実施中に、記憶部16に記憶されている各地点について警告するための要素である。更新部18は、所定の条件が成立した場合に、記憶部16に記憶されている各地点の情報を削除(更新)する要素である。
【0032】
なお、これらの要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0033】
認識部11は、車線Rを認識するものである。認識部11は、例えば、カメラ23によって撮影された画像データを取得し、取得した画像データから白線WLやガードレールといった実車線Rrを区画する物体を抽出(識別)する。そして、認識部11は、取得した画像データ内での抽出した物体の位置や形状から、自車両20の前方の車線Rの形状や、車線Rの曲率半径Cを認識する。認識部11で認識された車線Rの情報(車線Rの形状や曲率半径C)は、制御部12に伝達される。なお、認識部11は、自車両20の現在位置Pの道路形状を測位装置26から取得して、取得した情報とカメラ23から取得した画像データとを用いて、車線Rを認識してもよい。
【0034】
制御部12は、認識部11から伝達された情報に基づき、ステアリング装置21を制御することで車線維持制御を実施するものである。制御部12は、例えば、認識部11で認識された車線Rの曲率半径Cを取得するとともに、操舵角センサ27で検出された操舵角SAを取得し、操舵角SAの変更の要否を判断する。制御部12は、操舵角SAを変更する必要がないと判断した場合には、操舵角SAを維持する旨の信号をステアリング装置21に伝達する。一方で、制御部12は、操舵角SAを変更する必要があると判断した場合には、認識した車線R上を自車両20に走行させるために必要となる目標操舵角を算出する。そして、制御部12は、操舵角SAを変更する旨の信号と併せて算出した目標操舵角をステアリング装置21に伝達する。
【0035】
検知部13は、上述の通り、車線維持制御の実施中に発生した挙動乱れを検知するものである。本実施形態において、検知部13は、所定時間の間における特性値の変化量dが所定の基準量D以上となることを以て、挙動乱れが発生したことを検知する。特性値は、挙動乱れが発生する際に変動するパラメータである。特性値としては、例えば、認識部11で認識された曲率半径Cや、測位装置26から伝達された自車両20の現在位置P、操舵角センサ27から伝達された操舵角SA、操舵角速度センサ28から伝達された操舵角速度SVなどが挙げられる。また、所定時間は、瞬間的な(突発的な)特性値の変化量dを計測できる程度に短い時間(例えば、0.5[sec])に設定される。
【0036】
検知部13は、例えば、特性値として曲率半径Cが用いられる場合、ある時刻に認識された曲率半径Cと所定時間の経過後に認識された曲率半径Cとの差を、変化量dC(以下、「曲率変化量dC」ともよぶ)として算出する。そして、検知部13は、算出した曲率変化量dCが基準量D(例えば、200[m])以上となった場合に、挙動乱れが発生したことを検知する。
【0037】
ここで、図3を参照しながら、特性値として曲率半径Cが用いられる場合に、検知部13によって挙動乱れが発生したと検知される流れについてさらに詳述する。図3は、実際の曲率半径(以下、「実曲率半径Cr」とよぶ)が400[m]のカーブを自車両20が走行する場合に、認識部11で認識された車線Rの曲率半径Cの変化を、時系列で示すグラフである。図3では、自車両20が上記のカーブに差し掛かる前の時刻を時刻t0とし、自車両20が上記のカーブを通過したあとの時刻を時刻tnとする。自車両20は、時刻t0から時刻tnまでの間の時刻t1~t5で上記のカーブを走行するものとする。時刻t0及び時刻tnの時点において、自車両20は、直線に近い曲率半径(例えば、実曲率半径Crが1000[m])の道路を走行するものとする。
【0038】
図3では、車線維持制御の実施中に挙動乱れが発生しない場合の曲率半径Cの変化を実線で示す。また、上記のカーブを走行中に挙動乱れが発生した場合の曲率半径Cの変化を破線で示す。図3に実線で示すように、車線維持制御の実施中に挙動乱れが発生しない場合、曲率半径Cは、時刻t0の時点で直線に近い値(約1000[m])が認識される。そして、曲率半径Cは、時刻t0から時刻t1にかけて、直線に近い値よりも徐々に低い値となり、時刻t1から時刻t5では、上記のカーブの実曲率半径Cr(すなわち、400[m])に近い値が認識される。また、曲率半径Cは、時刻t4から時刻tnにかけて、徐々に高い値となり、時刻tnの時点で直線に近い値(約1000[m])が認識される。
【0039】
一方で、時刻t1から時刻t5までの間の時刻t2から時刻t4までの間で、挙動乱れが発生した場合、曲率半径Cは、図3に破線で示すように、急激に変動する。言い換えれば、時刻t2から時刻t4までの間で、認識部11で認識された車線Rの曲率半径Cが急激に変動することで、制御部12によりステアリング装置21が誤操作されて、結果として挙動乱れが生じる。このとき、時刻t2で認識された曲率半径C(C=400[m])と所定時間経過後の時刻t3で認識された曲率半径C(C=1000[m])との間には、600[m]の差が生じる。検知部13は、この差を曲率変化量dCとして算出する。そして、検知部13は、算出した曲率変化量dCが基準量D(例えば、200[m])以上であることから、挙動乱れが発生したことを検知する。
【0040】
検知部13は、挙動乱れを検知した時点(図3では、時刻t3の時点)における自車両20の現在位置Pの位置情報を測位装置26から取得し、取得した位置情報を発生地点の位置情報として記憶部16に伝達する。さらに、本実施形態の検知部13は、算出した曲率変化量dCから挙動乱れのレベルを設定して、設定したレベルを発生地点の位置情報とともに記憶部16に伝達する。
【0041】
検知部13は、例えば、図4の表に基づき曲率変化量dCから挙動乱れのレベルを設定する。図4は、特性値として曲率半径Cが用いられる場合に、各レベルの設定に用いる閾値(下限値及び上限値)を示した表である。検知部13は、算出した曲率変化量dCがどのレベルの閾値の範囲内にいるかを判断し、該当するレベルを挙動乱れのレベルとして設定する。例えば、上述の図3のケースでは、曲率変化量dCが600[m]であるので、図4の表の2列目の閾値によれば、このときの挙動乱れには、最も高いレベル5が設定される。なお、最も低いレベル1の下限値には、挙動乱れの検知に係る基準量Dの値が設定される。
【0042】
ところで、車線認識の精度が低下する所定環境下では、この所定環境下以外の環境下(以下「通常環境下」という)よりも、認識部11での車線Rの認識精度が低下し、誤認識が発生し得る。所定環境としては、例えば、雨天時や降雪時、カメラ23が光源(例えば太陽)の方向を向いている逆光時などが挙げられる。これにより、通常環境下では挙動乱れとして検知されない位置が、所定環境下では誤って挙動乱れとして検知され得る。
【0043】
そこで、本実施形態の検知部13は、所定環境下では各レベルの設定に用いる特性値の閾値を、通常環境下のときよりも高くする。具体的には、検知部13は、自車両20の走行中の環境が所定環境下であるか否かを判断する。所定環境下であるか否かを判断は、例えば、カメラ23で撮影された画像データに基づいて判断される。そして、検知部13は、所定環境下であると判断した場合に、通常環境下における上記の閾値よりも高い閾値に変更する。これにより、所定環境下であっても、通常環境下と同様のレベル設定を実現できる。
【0044】
例えば、特性値として曲率半径Cが用いられる場合には、検知部13は、図4の3列目に示すように各レベルの設定に用いる特性値の閾値を100[m]ずつ引き上げる。これにより、記憶部16に過度に発生地点が登録されることが抑制されるので、不要警報による煩わしさの低減が図られる。なお、所定環境下では、挙動乱れの検知に係る基準値Dも引き上げられてよい。図4の表が用いられる場合、所定環境下では基準値Dが300[m]とされてよい。
【0045】
上述の検知部13の説明では、特性値として曲率半径Cが用いられる場合について説明したが、検知部13は、特性値として曲率半径C以外のパラメータが用いられる場合にも同様の方法で挙動乱れを検知し、挙動乱れのレベルを設定してよい。
【0046】
例えば、特性値として自車両20の現在位置Pが用いられる場合には、検知部13は、ある時刻に測位装置26から取得した現在位置Pと所定時間の経過後に取得した現在位置Pとの差(主に、車幅方向についての差)を、変化量dP(以下、「位置変化量dP」ともよぶ)として算出する。そして、検知部13は、算出した位置変化量dPが基準量D(例えば、0.5[m])以上となった場合に、挙動乱れが発生したことを検知する。
【0047】
挙動乱れが発生したことを検知した場合、検知部13は、挙動乱れを検知した時点(この場合、上記の所定時間の経過後の時点)における自車両20の現在位置Pの位置情報を、発生地点の位置情報として記憶部16に伝達する。さらに、本実施形態の検知部13は、例えば図5の表に基づき、算出した位置変化量dPから挙動乱れのレベルを設定して、設定したレベルを発生地点の位置情報とともに記憶部16に伝達する。図5は、特性値として現在位置Pが用いられる場合に、各レベルの設定に用いる閾値(下限値及び上限値)を示した表である。図5に例示する特性値(現在位置P)に基づく判断は、上述した図4の場合と同様である。また、上述と同様、所定環境下において、特性値(現在位置P)の閾値を通常環境下のときよりも高くしてもよい。
【0048】
また、特性値として操舵角SAが用いられる場合には、検知部13は、ある時刻に操舵角センサ27から取得した操舵角SAと所定時間の経過後に取得した操舵角SAとの差を、変化量dSA(以下、「操舵角変化量dSA」ともよぶ)として算出する。そして、検知部13は、算出した操舵角変化量dSAが基準量D(例えば、10[度])以上となった場合に、挙動乱れが発生したことを検知する。
【0049】
挙動乱れが発生したことを検知した場合、検知部13は、挙動乱れを検知した時点における自車両20の現在位置Pの位置情報を、発生地点の位置情報として記憶部16に伝達する。さらに、本実施形態の検知部13は、例えば図6の表に基づき、算出した操舵角変化量dSAから挙動乱れのレベルを設定して、設定したレベルを発生地点の位置情報とともに記憶部16に伝達する。図6は、特性値として操舵角SAが用いられる場合に、各レベルの設定に用いる閾値(下限値及び上限値)を示した表である。図6に例示する特性値(操舵角SA)に基づく判断は、上述した図4の場合と同様である。また、上述と同様、所定環境下において、特性値(操舵角SA)の閾値を通常環境下のときよりも高くしてもよい。
【0050】
検知部13は、特性値として操舵角速度SVが用いられる場合にも、同様の方法で処理を行なってよい。また、検知部13は、特性値として、曲率半径C,現在位置P,操舵角SA及び操舵角速度SVのいずれか1つを用いるのではなく、2つ以上のパラメータを用いて挙動乱れが発生したことを検知してもよい。
【0051】
取得部14は、任意地点の位置情報を取得するものである。取得部14による任意地点の位置情報の取得は、車線維持制御の実施中であるか否かに問わず行われてよい。取得部14は、入力装置24から任意地点の位置情報を取得し、取得した情報を記憶部16に伝達する。なお、入力装置24により任意地点のレベルを設定できる場合には、取得部14は、任意地点の位置情報と併せて当該任意地点のレベルを記憶部16に伝達してもよい。
【0052】
通信部15は、共有地点の位置情報を取得するものである。通信部15による共有地点の位置情報の取得は、車線維持制御の実施中であるか否かに問わず行われてよい。通信部15は、通信装置25から共有地点の位置情報を取得し、取得した情報を記憶部16に伝達する。なお、通信装置25が共有地点の位置情報とともに当該共有地点のレベルを取得した場合には、通信部15は、共有地点の位置情報と併せて当該任意地点のレベルを記憶部16に伝達してもよい。
【0053】
記憶部16は、検知部13,取得部14及び通信部15のそれぞれから伝達された情報を記憶するものである。詳述すると、記憶部16は、検知部13から伝達された発生地点の位置情報を記憶する。また、検知部13から発生地点の位置情報と併せてレベルが伝達された場合、記憶部16は、発生地点の位置情報と対応づけて伝達されたレベルを記憶する。
【0054】
同様に、記憶部16は、取得部14から伝達された任意地点の位置情報を記憶し、取得部14から任意地点の位置情報と併せてレベルが伝達された場合には、当該任意地点の位置情報と対応づけて伝達されたレベルを記憶する。また、記憶部16は、通信部15から伝達された共有地点の位置情報を記憶し、通信部15から共有地点の位置情報と併せてレベルが伝達された場合には、当該共有地点の位置情報と対応づけて伝達されたレベルを記憶する。
【0055】
報知部17は、車線維持制御の実施中において、記憶部16に記憶されている各地点に自車両20が到達する前に、自車両20のドライバーに対して警告を実施するものである。報知部17は、例えば、現在位置Pよりも前方の位置情報を測位装置26から取得することで、各地点に自車両20が到達する前に警告を行う。
【0056】
報知部17は、例えば、記憶部16を参照して、取得した前方の位置情報と略同位置と見做される位置情報を持つ地点が記憶部16に記憶されているか否かを判定する。そして、報知部17は、当該判定が成立した場合に、報知装置22を制御することで、「挙動乱れが発生する可能性があること」を警告する。
【0057】
上述の通り、本実施形態の制御装置10は、所定の警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告する。このような制御を実施するために、報知部17には、警告を実施するか否かの基準となる警告レベルが設定される。警告レベルは、例えば、予め設定されるものであってもよく、ドライバーによって任意に設定,変更されるものであってもよい。この場合、報知部17は、上記判定が成立した場合であっても(すなわち、記憶部16に、これから到達する発生地点が記憶されていたとしても)、該当する発生地点のレベルが警告レベル未満であれば、警告を実施しない。これにより、警告レベルよりも低いレベルで記憶されている発生地点についての警告が抑制されるので、警告による煩わしさの低減が図られる。
【0058】
ところで、上記の所定環境下では、認識部11で車線Rの誤認識が生じやすいうえ、誤認識が生じた場合の誤認識の程度(度合い)が通常環境下よりも大きくなり得る。これにより、所定環境下では、記憶部16に記憶されている発生地点のレベルよりも高いレベルに相当する挙動乱れが発生する可能性がある。例えば、通常環境下でレベル2として設定された発生地点を自車両20が走行する際、所定環境下では、レベル3相当の挙動乱れが発生する可能性がある。
【0059】
そこで、本実施形態の報知部17は、所定環境下では、警告を実施するか否かの基準となる警告レベルを一段階下げる。具体的には、警告レベルよりも一段階低い第二警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告する。例えば、報知部17は、カメラ23で撮影された画像データに基づいて、自車両20の現在の走行中の環境が所定環境下であるか否かを判断する。そして、所定環境下であると判断した場合には、第二警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告する。例えば、警告レベルとして「3」が設定されている場合には、報知部17は、「3」よりも一段階低い「2」を第二警告レベルとする。そして、第二警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点(すなわち、レベル2以上の発生地点)について警告する。これにより、所定環境下においても、通常環境下と同等の挙動乱れが発生する可能性がある地点について警告することができる。
【0060】
更新部18は、上述の通り、所定の条件が成立した場合に、記憶部16に記憶されている各地点の情報を削除(更新)するものである。更新部18は、例えば上述の通り、記憶部16に記憶されている各地点で自車両20の挙動乱れが所定回数N以上発生しなかった場合に、当該地点の情報を記憶部16から削除する。所定回数Nは、例えば、5回に設定される。
【0061】
一例を詳述すると、更新部18は、車線維持制御の実施中に、測位装置26から現在位置Pを取得するとともに、記憶部16を参照して、取得した現在位置Pの位置情報が登録された地点の有無を判定する。更新部18は、当該判定が成立した場合に、検知部13による検知結果を取得する。更新部18は、取得した検知結果が挙動乱れを検知していない旨を示す場合には、当該地点で挙動乱れが発生しなかったことを記憶する。そして、更新部18は、当該地点での挙動乱れが発生しなかった回数をカウントし、この回数が所定回数N以上となった場合に、当該地点の情報を記憶部16から削除する。なお、更新部18は、記憶部16に記憶されている地点の情報を削除する場合には、当該地点の情報を削除する旨を車載ディスプレイに表示し、ドライバー同意の上で削除してもよい。
【0062】
[4.フローチャート]
図7は、検知部13で実施される処理を説明するためのフローチャート例であり、図8は、報知部17で実施される制御を説明するためのフローチャート例である。図7及び図8のフローチャートは、いずれも車線維持制御が実施されているときに所定の演算周期で繰り返し実施され、車線維持制御が終了したら終了する。なお、図7のフローチャートは、車線維持制御での走行中に検知した発生地点に関する情報を記憶するためのフローチャートであり、図8のフローチャートは、車線維持制御での走行中に、記憶されているレベルに応じて報知するためのフローチャートであるため、これらが実施されるタイミング(環境)は互いに異なる。
【0063】
はじめに、図7のフローチャートについて説明する。ステップS1では、走行中の自車両20の環境が所定環境下であるか否かが判定される。ステップS1において、所定環境下であると判定された場合には、ステップS2に進む。
【0064】
ステップS2では、発生地点のレベルの設定に用いる閾値が高められて、ステップS3に進む。なお、ステップS2では、閾値が高められることに伴って、基準量Dが引き上げられてよい。例えば、特性値として曲率半径Cが用いられる場合には、閾値が図4の3列目のように高められて、基準値Dが200[m]から300[m]に引き上げられる。これにより、所定環境下で過度に挙動乱れが検知されることが抑制される。また、所定環境下では、上述の通り、認識部11で生じた車線Rの誤認識の程度が通常環境下よりも大きくなり得る。しかし、ステップS2で実施される処理のように閾値が高められることで、所定環境下で検知された挙動乱れの発生地点のレベルを適切に設定できる。
【0065】
一方で、ステップS1において、所定環境下でない、すなわち、通常環境下であると判定された場合には、閾値(及び基準量D)が変更されることなく、ステップS3に進む。つまり、この場合、発生地点のレベルの設定に用いる閾値及び基準量Dには、規定の値が適用される。特性値として曲率半径Cが用いられる場合を例示すると、閾値には図4の2列目の閾値が適用されて、基準値Dには200[m]が適用される。
【0066】
ステップS3では、特性値の変化量dが算出される。続くステップS4では、算出した変化量dが基準量D以上であるか否かが判定される。ステップS4において、変化量dが基準量D以上でないと判定された場合には、挙動乱れは検知されていないものとして、このフローをリターンする。
【0067】
一方で、ステップS4において、変化量dが基準量D以上であると判定された場合には、挙動乱れが検知されたものと判断して、検知された挙動乱れの発生地点を記憶部16に記憶させる処理(ステップS5~S7の処理)が実施される。すなわち、ステップS5では、自車両20の現在位置Pの位置情報が取得される。続くステップS6では、算出した変化量dに基づき、当該発生地点のレベルが設定される。そして、ステップS7では、取得した発生地点の位置情報と設定したレベルとが記憶部16に伝達され、フローをリターンする。
【0068】
次に、図8のフローチャートについて説明する。ステップS11では、自車両20の前方の位置情報と略同位置と見做される位置情報の地点が記憶部16に記憶されているか否かが判定される。ステップS11において、判定が成立していなければ、すなわち、自車両20の前方の位置情報と略同位置と見做される位置情報の地点が記憶部16に記憶されていなければ、警告は不要であると判断されて、このフローをリターンする。
【0069】
一方で、ステップS11において、判定が成立した場合には、ステップS12に進む。ステップS12では、走行中の自車両20の環境が、所定環境下であるか否かが判定される。
【0070】
ステップS12において、所定環境下でない、すなわち、通常環境下であると判定された場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、ステップS11の成立に該当する地点のレベルが警告レベル以上であるか否かが判定される。ステップS13において、当該地点のレベルが警告レベル以上であると判定された場合には、ステップS15に進み、報知装置22が制御され、このフローをリターンする。これにより、ドライバーに対して「挙動乱れが発生する可能性があること」が警告される。一方で、ステップS13において、当該地点のレベルが警告レベル未満であると判定された場合には、警告は不要であると判断されて、このフローをリターンする。
【0071】
また、ステップS12において、所定環境下であると判定された場合には、ステップS14に進む。ステップS14では、ステップS11の成立に該当する地点のレベルが、警告レベルよりも一段階低い第二警告レベル以上であるか否かが判定される。ステップS14において、当該地点のレベルが第二警告レベル以上であると判定された場合には、ステップS15に進み、報知装置22が制御され、このフローをリターンする。これにより、ドライバーに対して「挙動乱れが発生する可能性があること」が警告される。一方で、ステップS14において、当該地点のレベルが第二警告レベル未満であると判定された場合には、警告は不要であると判断されて、このフローをリターンする。
【0072】
[5.効果]
(1)上述の制御装置10では、検知部13が、車線維持制御の実施中に発生した自車両20の挙動乱れを検知する。また、記憶部16が、検知部13で検知された挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶する。このように、車線維持制御の実施中に実際に発生した挙動乱れを検知し、当該挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶することで、白線WLのかすれSCに起因する挙動乱れなど、実際に自車両20が走行してみないとわからない挙動乱れについて警告できる。よって、車線維持制御に対する信頼性をより向上できる。
【0073】
また、上述の制御装置10では、車線維持制御の実施中に、記憶部16に記憶されている発生地点に自車両20が到達する前に警告する。これにより、車線維持制御の実施中に発生し得る挙動乱れを事前に警告できる。したがって、ドライバーに対して、挙動乱れが発生する前に挙動乱れの発生の可能性を認識させることができ、仮に、ドライバーがハンドルから手を離していたとしても、ハンドルを握ることを促すことができる。よって、ドライバーの車線維持制御に対する過信や、挙動乱れの発生時にドライバーが感じる不安を低減できる。
【0074】
(2)記憶部16は、発生地点の位置情報と対応づけて当該発生地点のレベルを記憶し、報知部17は、所定の警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告する。これにより、警告レベルよりも低いレベルで記憶されている発生地点についての警告が抑制されるので、警告による煩わしさを低減できる。
【0075】
(3)また、検知部13は、所定環境下では、レベルの設定に用いる特性値の変化量dの閾値を、通常環境下のときよりも高くする。これにより、所定環境下で検知された挙動乱れの発生地点のレベルが、本来設定したいレベル(通常環境下で設定されるレベル)と乖離することを低減でき、適切にレベルを設定できる。
【0076】
(4)また、報知部17は、所定環境下では、警告レベルよりも一段階低い第二警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告する。これにより、通常環境下で警告される発生地点と同等の挙動乱れが生じる可能性がある発生地点について、所定環境下においても警告できる。よって、車線維持制御に対する信頼性をより向上できる。
【0077】
(5)制御装置10には、任意地点の位置情報を取得する取得部14が設けられる。また、報知部17は、車線維持制御の実施中に、任意地点に自車両20が到達する前にも警告を実施する。このように、制御装置10がドライバーによって登録された任意地点についても警告することで、制御装置10の利便性を向上できる。
【0078】
(6)また、制御装置10には、共有地点の位置情報を取得する通信部15が設けられ、報知部17は、車線維持制御の実施中に、共有地点に自車両20が到達する前にも警告を実施する。このように、他車両30に記憶されている地点についての情報を取得及び記憶することで、自車両20が走行したことがない地点についても情報を記憶でき、自車両20が初めて走行するときから警告を発することができる。よって、挙動乱れの発生時にドライバーが感じる不安をより低減できるとともに、制御装置10の利便性を向上できる。
【0079】
(7)制御装置10には、記憶部16に記憶されている発生地点で自車両20の挙動乱れが所定回数N以上発生しなかった場合に、記憶部16から当該発生地点の情報を削除する更新部18が設けられる。このように、更新部18により、記憶部16に記憶されている発生地点の情報が適宜削除されることで、不要警報の発生を抑制できる。したがって、警告の煩わしさを低減できる。
【0080】
[6.その他]
上述の制御装置10の構成及び制御装置10で実施される制御は一例である。また、制御装置10によって制御される自車両20の構成も一例である。制御装置10は、少なくとも、認識部11,制御部12,検知部13,記憶部16及び報知部17を備えていればよい。例えば、自車両20には、カメラ23に代えて、又は、加えて、電波探知機(レーダー)が設けられてよい。この場合、認識部11は、カメラ23で撮像された画像データに代えて、又は、加えて、レーダーで検知された情報に基づいて車線Rの認識を行ってよい。
【0081】
制御装置10が共有地点の情報を取得しない場合、通信部15は省略されてよい。この場合、自車両20の通信装置25は省略されてよい。また、通信部15は、通信装置25から共有地点の位置情報を取得するものでなくてもよい。例えば、通信部15が、通信装置25としての機能を有し、自車両20の外部のコンピューターと通信を行うことで共有地点の位置情報を取得するものであってもよい。この場合、自車両20の通信装置25は省略されてよい。
【0082】
制御装置10が任意地点の情報を取得しない場合、取得部14は省略されてよい。この場合、自車両20の入力装置24は省略されてよい。また、制御装置10が記憶部16に記憶されている地点の情報を削除しない場合、更新部18は省略されてよい。更新部18での処理に用いられる所定回数Nは5回に限らず、適宜設定されてよい。
【0083】
検知部13による、発生地点のレベルの設定処理や、所定環境下での閾値の変更処理は必須ではない。検知部13は、少なくとも、車線維持制御の実施中に発生した挙動乱れを検知するものであればよい。また、検知部13による挙動乱れの検知方法も上述のものに限らない。検知部13は、例えば、自車両20の振動を検知することで、自車両20の挙動乱れを検知してもよい。検知部13が特性値として操舵角SAや操舵角速度SVを用いない場合には、自車両20の操舵角センサ27や操舵角速度センサ28は、省略されてもよい。
【0084】
報知部17は、所定の警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告するものでなくてもよく、例えば、記憶部16に記憶されている全ての地点について警告するものであってもよい。また、報知部17は、所定環境下であるか通常環境下であるかに関わらず、所定の警告レベル以上のレベルで記憶されている発生地点について警告するものであってもよい。
【0085】
[7.付記]
上記の実施例や変形例に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
自車両の走行車線を認識する車線認識部と、
前記走行車線上を前記自車両が走行するようにステアリング装置を制御することで車線維持制御を実施する制御部と、
前記車線維持制御の実施中に発生した前記自車両の挙動乱れを検知する検知部と、
前記検知部で検知された前記挙動乱れの発生地点の位置情報を記憶する記憶部と、
前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記発生地点に前記自車両が到達する前に警告する報知部と、を備える
ことを特徴とする、車両制御装置。
【0086】
[付記2]
前記検知部は、検知した前記挙動乱れのレベルを設定し、
前記記憶部は、前記発生地点の前記位置情報と対応づけて前記レベルを記憶し、
前記報知部は、所定の警告レベル以上の前記レベルで記憶されている前記発生地点について警告する
ことを特徴とする、付記1に記載の車両制御装置。
【0087】
[付記3]
前記検知部は、前記走行車線の認識精度が低下する所定環境下では、前記レベルの設定に用いる特性値の変化量の閾値を、前記所定環境以外の通常環境下のときよりも高くする
ことを特徴とする、付記2に記載の車両制御装置。
【0088】
[付記4]
前記報知部は、前記走行車線の認識精度が低下する所定環境下では、前記警告レベルよりも一段階低い第二警告レベル以上の前記レベルで記憶されている前記発生地点について警告する
ことを特徴とする、付記2又は3に記載の車両制御装置。
【0089】
[付記5]
前記自車両のドライバーによって前記自車両の挙動乱れの発生地点として入力された任意地点の位置情報を取得する取得部をさらに備え、
前記記憶部は、前記取得部で取得された前記任意地点の位置情報を記憶し、
前記報知部は、前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記任意地点に前記自車両が到達する前に警告する
ことを特徴とする、付記1~4のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【0090】
[付記6]
前記自車両以外の他車両と通信して、前記他車両において挙動乱れの発生地点として記憶されている共有地点の位置情報を取得する通信部をさらに備え、
前記記憶部は、前記通信部で取得された前記共有地点の位置情報を記憶し、
前記報知部は、前記車線維持制御の実施中に、前記記憶部に記憶されている前記共有地点に前記自車両が到達する前に警告する
ことを特徴とする、付記1~5のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【0091】
[付記7]
前記車線維持制御中に、前記記憶部に記憶されている前記発生地点で前記自車両の挙動乱れが所定回数以上発生しなかった場合には、前記記憶部から当該発生地点の情報を削除する更新部をさらに備える
ことを特徴とする、付記1~6のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【符号の説明】
【0092】
10 制御装置(車両制御装置)
11 認識部(車線認識部)
12 制御部
13 検知部
14 取得部
15 通信部
16 記憶部
17 報知部
18 更新部
20 自車両,車両
21 ステアリング装置
30 他車両
d 特性値の変化量
N 所定回数
R 車線(走行車線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8