(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113715
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】火災感知器および火災報知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20240816BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G08B17/06 A
G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018830
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085CA26
5C085DA06
5G405AA01
5G405AA04
5G405AA06
5G405AD02
5G405BA01
5G405CA15
5G405CA36
5G405DA06
(57)【要約】
【課題】大幅な仕様変更やコストアップを招くことなく逆接続された火災感知器の存在を火災受信機側で検知もしくは把握することができる火災感知器およびその火災感知器を用いた火災報知システムを提供する。
【解決手段】信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器において、前記コモン端子とライン端子との間に、2つのツェナーダイオードが互いに逆方向であって直列形態に接続され、前記2つのツェナーダイオードのうち一方は電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有し、他方のツェナーダイオードは電源の直流電圧よりも低いツェナー電圧を有するように構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器であって、
前記コモン端子と前記ライン端子との間に、2つのツェナーダイオードが互いに逆方向であって直列形態に接続され、
前記2つのツェナーダイオードのうち一方は前記電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有し、他方のツェナーダイオードは前記電源の直流電圧よりも低いツェナー電圧を有していることを特徴とした火災感知器。
【請求項2】
信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器であって、
前記コモン端子と前記ライン端子との間に、前記電源からの正しい極性と逆の極性の直流電圧が印加されたときに所定の電流が流れる定電流ダイオードが接続されていることを特徴とした火災感知器。
【請求項3】
前記ライン端子と前記コモン端子との間に、前記電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードが前記定電流ダイオードと直列に逆方向接続されていることを特徴とした請求項2に記載の火災感知器。
【請求項4】
信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器であって、
前記コモン端子と前記ライン端子との間に、正しい極性とは逆の極性の直流電圧が前記電源より印加されたときに点灯する表示手段および前記電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードが直列形態に接続されていることを特徴とした火災感知器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の火災感知器と、前記信号線を介して前記火災感知器より既定の電圧信号または電流信号が入力されると火災発生の報知を行う火災受信機を備えた火災報知システムであって、
前記火災受信機は、
前記信号線に複数の前記火災感知器が接続された状態で電源が投入された直後に当該信号線から火災発生を示す電圧信号または電流信号が入力されると、火災発生の報知を行うとともに、
当該信号線に接続されている複数の火災感知器のいずれかにおいてコモン端子およびライン端子がコモン線およびライン線に逆接続されていると判定して逆接続の報知を行う
ことを特徴とした火災報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器および火災報知システムに関し、特に設置工事時に逆接続という配線ミスが起きても本運用開始前にその状態を把握することが可能な火災感知器および火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災報知システムの設置工事においては、感知器を火災受信機に接続するための回線となる配線を監視エリアの天井裏等に敷設し、各回線に適切な数の火災感知器を接続する作業が行われる。ここで、回線に接続される火災感知器の内部回路は極性を有しているため、上記作業に際しては、各回線を構成するL線(ライン線)、C線(コモン線)と呼ばれる2本の信号線に対して正しい極性で感知器を接続(正接続)する必要がある。感知器の動作に必要な電力は信号線から供給され、L線が電源線、C線がグランド線の役割を果たすからである。
【0003】
しかるに、設置工事中における人為的な作業ミスにより、感知器側のL端子、C端子が回線のL線、C線に対して逆に接続されるおそれがある。なお、逆接続されたとしても、火災感知器の内部回路が破損しないよう各感知器に保護回路を設けたり、内部回路が動作しないようにしたりすることも可能であるが、感知器が動作しないと火災感知がなされないとともに、受信機側では逆接続の事実が把握できず、その状態が放置されかねない。
【0004】
そこで、例えば信号線としてのL線、C線と感知器との間に、整流機能を備えたダイオードブリッジ回路を設けることで、信号線から見た感知器の無極性化が図られ、逆接続されても正接続と同様に動作可能にした火災感知器に関する技術が特許文献1に開示されている。なお、特許文献1には、L-C端子間にサージ吸収用の一対のツェナーダイオードを、互いに逆向きの状態で直列に接続することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなダイオードブリッジ回路を設けた火災感知器は、素子数が多くなりコストアップを招くとともに、感知器の入り口の端子に印加される電圧は変わらないが、感知器の内部で動作する回路への印加電圧が低くなり火災受信機側で火災の判断を正確に行えなくなるおそれがあるという課題がある。
また、感知器回線を介して火災受信機との間でデータを送受信するデータ送信方式の火災報知システムにおいては、火災受信機側で感知器の逆接続状態を検知もしくは把握するために新たな信号を送出する機能を設けることも考えられる。しかし、そのような機能を追加するには、火災受信機の改造が必要であり、大幅な仕様変更やコストアップを招くという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、大幅な仕様変更やコストアップを招くことなく、逆接続された火災感知器の存在を火災受信機側で検知もしくは把握することができる火災感知器およびその火災感知器を用いた火災報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、
信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器において、
前記コモン端子と前記ライン端子との間に、2つのツェナーダイオードが互いに逆方向であって直列形態に接続され、
前記2つのツェナーダイオードのうち一方は前記電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有し、他方のツェナーダイオードは前記電源の直流電圧よりも低いツェナー電圧を有しているように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する火災感知器によれば、コモン端子およびライン端子にコモン線およびライン線が逆接続されると、2つのツェナーダイオードに電流が流れ、それによって生じた電流または電圧の変化を、信号線を介して火災受信機側で検出できるので、火災報知システムに既に仕様として採用されている信号を利用して、火災受信機側で感知器の逆接続状態を検知もしくは把握することができる。そのため、新たな信号を生成する機能を追加することなく、つまり大幅な仕様変更やコストアップを招くことなく逆接続された火災感知器の存在を火災受信機側で検知もしくは把握することができる。
【0010】
本出願の他の発明は、
信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器において、
前記コモン端子と前記ライン端子との間に、前記電源からの正しい極性と逆の極性の直流電圧が印加されたときに所定の電流が流れる定電流ダイオードが接続されているように構成したものである。
【0011】
上記のような構成を有する火災感知器によれば、コモン端子およびライン端子にコモン線およびライン線が逆接続されると、定電流ダイオードに電流が流れ、それによって生じた電流または電圧の変化を、信号線(感知器回線)を介して火災受信機側で検出できるので、火災報知システムに既に仕様として採用されている信号を利用して、火災受信機側で感知器の逆接続状態を検知もしくは把握することができる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記ライン端子と前記コモン端子との間に、前記電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードが前記定電流ダイオードと直列に逆方向接続されているように構成する。
かかる構成によれば、感知器の逆接続状態を検知もしくは把握可能にしつつ、ライン端子とコモン端子との間に接続された高耐圧のツェナーダイオードによって、感知器の内部回路をサージ電圧から保護することができる。
【0013】
また、本出願の他の発明は、
信号線を構成するコモン線およびライン線に接続されるコモン端子およびライン端子を有し、前記信号線を介して火災受信機から電源の供給を受ける火災感知器において、
前記コモン端子と前記ライン端子との間に、正しい極性とは逆の極性の直流電圧が前記電源より印加されたときに点灯する表示手段および前記電源の直流電圧よりも高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードが直列形態に接続されているように構成したものである。
【0014】
上記のような構成を有する火災感知器によれば、コモン端子およびライン端子にコモン線およびライン線が逆接続されると、表示手段が点灯するので、感知器の逆接続状態を作業員が目視で把握することができる。また、ライン端子とコモン端子との間に接続された高耐圧のツェナーダイオードによって、感知器の内部回路をサージ電圧から保護することができる。
【0015】
さらに、本出願の他の発明は、上記のように構成された火災感知器と、前記信号線を介して前記火災感知器より既定の電圧信号または電流信号が入力されると火災発生の報知を行う火災受信機を備えた火災報知システムにおいて、
前記火災受信機は、
前記信号線に複数の前記火災感知器が接続された状態で電源が投入された直後に当該信号線から火災発生を示す電圧信号または電流信号が入力されると、火災発生の報知を行うとともに、
当該信号線に接続されている複数の火災感知器のいずれかにおいてコモン端子およびライン端子がコモン線およびライン線に逆接続されていると判定して逆接続の報知を行うように構成したものである。
【0016】
上記のような構成を有する火災報知システムによれば、感知器のコモン端子およびライン端子にコモン線およびライン線が逆接続されると、火災受信機でそれを検出して報知するため、感知器の設置作業中に誤接続があったことを容易に把握し、正しい状態に修正することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、新たな信号を生成する機能を追加することなく、従って大幅な仕様変更やコストアップを招くことなく逆接続された火災感知器の存在を火災受信機側で検知もしくは把握することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明が適用される火災報知システムの概略構成を示すシステム構成図である。
【
図2】(A)~(E)は信号線に接続される火災感知器の内部回路の実施例を示す回路構成図である。
【
図3】実施形態の火災感知器を備えた火災報知システムにおける感知器の逆接続状態の一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明が適用される火災報知システムの概略構成が示されている。
図1に示すように、火災報知システムは、火災受信機11と、該火災受信機11から延設された感知器回線としての信号線を構成するライン線(L線)12Aおよびコモン線(C線)12Bとの間に接続された複数の火災感知器13、L線とC線の終端間に接続された終端抵抗14などから構成されている。各火災感知器13は、信号線12A,12Bを介して、火災受信機11より例えばDC24Vのような直流電圧の供給を受ける。なお、
図1には、1対の信号線と該信号線に接続された複数(3個)の火災感知器が示されているが、例えばビルなど建物においては、フロアごとにそれぞれ信号線が敷設され、火災感知器が接続される。
【0020】
図2(A)~(E)には、信号線に接続される火災感知器13の内部回路の実施例が示されている。
このうち、
図2(A)の感知器は、L端子31AとC端子31Bとの間に、互いに逆向きの状態で直列に接続されたツェナーダイオードZD1およびZD2と、火災検出機能を有する感知器内部回路32およびこれと直列に接続された逆流防止用のダイオードD1とを設けたものである。このうち、ツェナーダイオードZD1は、高電圧が印加されたときに逆方向電流を流すことによって、感知器内部回路32を構成する素子を保護するための保護用の素子であって、火災受信機11より供給される直流電圧よりも高い例えば36Vのような高いツェナー電圧を有する素子が使用される。
【0021】
他方のツェナーダイオードZD2は、当該素子を備えた火災感知器13がL線とC線との間に逆接続されると、電流が流れて火災受信機11側で火災発生と判断する電圧を発生させるための素子で、数Vのような低いツェナー電圧を有する素子が使用される。なお、前述の特許文献1には、逆接続の一対のツェナーダイオードが記載されている(第4図)が、それらのツェナーダイオードはいずれも高いツェナー電圧を有する耐圧保護用の素子であり、本実施形態の感知器は、一方の素子(ZD2)のツェナー電圧および機能が、引用文献1の発明の感知器の耐圧保護回路とは異なっている。
【0022】
また、本実施形態の感知器においては、感知器内部回路32と直列に接続されたダイオードD1は、感知器がL線とC線との間に正しく接続されると、電流を流して感知器内部回路32を正常に動作させる一方、感知器がL線とC線との間に逆接続されると、電流が流れるのを阻止して感知器内部回路32を非動作状態にさせるように機能する。
【0023】
図2(B)に示されている感知器は、L端子31AとC端子31Bとの間に、ツェナーダイオードZD1と定電流ダイオードCRD1を、それぞれL端子31A側にカソード端子が来るようにして直列に接続したものである。ツェナーダイオードZD1は、高いツェナー電圧(例えば36V)を有する耐圧保護用の素子である。一方、定電流ダイオードCRD1は、加える電圧や負荷抵抗が変化しても常に一定の電流を流すことのできる素子で、ピンチオフ電流(定電流になる値)は、その電流が流れると受信機側で火災発生と判断することができる値、例えば数mA程度とされる。
【0024】
また、
図2(B)の感知器は、
図2(A)の感知器と同様に、L端子31AとC端子31Bとの間に、感知器内部回路32と直列に接続された逆流防止用のダイオードD1が設けられている。
図2(B)の感知器は、感知器がL線とC線との間に正しく接続されると、ダイオードD1が電流を流して感知器内部回路32を正常に動作させる一方、感知器がL線とC線との間に逆接続されると、電流が流れるのを阻止して感知器内部回路32を非動作状態にさせる。また、感知器が逆接続されると、定電流ダイオードCRD1およびツェナーダイオードZD1に順方向電圧が印加されるため電流が流れ、それによってL線とC線にも電流が流れるので、受信機側で火災発生と判断することができる。
【0025】
図2(C)に示されている感知器は、L端子31AとC端子31Bとの間に、ツェナーダイオードZD1と発光ダイオードLED1および抵抗R1を、L端子31A側にZD1とLED1のカソード端子が来るようにして直列に接続したものである。ツェナーダイオードZD1は、高いツェナー電圧(例えば36V)を有する耐圧保護用の素子である。
また、
図2(A)の感知器と同様に、L端子31AとC端子31Bとの間には、感知器内部回路32と直列に接続された逆流防止用のダイオードD1が設けられている。
【0026】
図2(C)の感知器は、感知器がL線とC線に逆接続されると、発光ダイオードLED1およびツェナーダイオードZD1に順方向電圧が印加されるため電流が流れ、それによってL線とC線にも電流が流れるので受信機側で火災発生と判断することができる。また、発光ダイオードLED1に電流が流れることによって発光する状態になる。従って、作業員が発光を視認して逆接続が発生していることを把握することができる。また、ツェナーダイオードZD1に順方向電圧が印加されるため電流が流れ、それによってL線とC線にも電流が流れるので、受信機側で火災発生(逆接続)と判断することができる。
なお、感知器の筐体がプラスチックである場合、発光ダイオードLED1を筐体の壁部に近い箇所に実装することにより、筐体の素材を透過して光が漏れるため、視認することができるようになる。また、発光ダイオードLED1の視認性を向上させるため、実装箇所の近傍の筐体の壁部に、薄肉部あるいは透孔を形成するようにしても良い。
【0027】
図2(D)に示されている感知器は、
図2(A)の感知器の変形例を示すもので、ツェナーダイオードZD2と並列に、直列形態の発光ダイオードLED1および抵抗R1を接続したものである。
図2(D)の感知器は、
図2(A)の感知器と同様な機能を有しているとともに、感知器がL線とC線に逆接続されると、発光ダイオードLED1に電流が流れることによって発光する状態になる。従って、作業員が発光を視認して逆接続が発生していることを把握することができる。また、ツェナーダイオードZD1に順方向電圧が印加されるため電流が流れ、それによってL線とC線にも電流が流れるので、受信機側で火災発生(逆接続)と判断することができる。
【0028】
図2(E)に示されている感知器は、
図2(B)の感知器の変形例を示すもので、ツェナーダイオードZD1と定電流ダイオードCRD1との間に、発光ダイオードLD1を直列に接続したものである。
図2(E)の感知器は、
図2(B)の感知器と同様な機能を有しているとともに、感知器がL線とC線に逆接続されると、発光ダイオードLED1に電流が流れることによって発光する状態になる。従って、作業員が発光を視認して逆接続が発生していることを把握することができる。また、ツェナーダイオードZD1に順方向電圧が印加されるため電流が流れ、それによってL線とC線にも電流が流れるので、受信機側で火災発生(逆接続)と判断することができる。
【0029】
次に、上記実施形態の火災感知器13を、監視エリアの天井裏等に敷設されている感知器回線を構成するL線とC線に接続して天井面等に設置する作業と、逆接続の判定の仕方について説明する。
火災感知器13をL線とC線に接続して設置する作業は、通常、火災受信機11をメンテナンスモード(工事モード)に切り替えた状態、もしくは火災受信機11の電源をオフにした状態で実施される。なお、メンテナンスモードは、火災受信機11に設けられているモード切替え手段を操作することによって設定され、メンテナンスモードにおいては、L線はC線と同様に接地電位(0V)となる。
【0030】
この状態で、作業員が複数の感知器の設置を火災受信機11に近い側から遠い側へ順次進めて行く途中で、例えば
図3に示すように、感知器13BをL線とC線に対して逆接続してしまったとする。すると、作業員は逆接続をしたことに気が付かないので、通常は、感知器13B以降の感知器は逆接続となる。
その後、全ての回線の全ての感知器の設置が完了した段階で、メンテナンスモードから本運用モードに切り替える、もしくは火災受信機11の電源を投入する。すると、
図3のような逆接続された感知器があると、
図2(A)の感知器の場合には逆接続の感知器のツェナーダイオードZD2に、また
図2(B)の感知器の場合には逆接続の感知器の定電流ダイオードCRD1に電流が流れるため、当該逆接続の感知器のある回線を構成するL線とC線に電流が流れることとなる。
【0031】
ところで、火災受信機には、電流の増加を検出して火災発生を判定するタイプと、電圧の変化を検出して火災発生を判定するタイプとがあり、前者のタイプの火災受信機を使用したシステムでは、火災受信機11がC線より流れ込む電流が所定値以上増加したことを検出すると、火災発生と判断して火災発生を報知する。また、後者のタイプの火災受信機を使用したシステムでは、火災受信機11がL線の電圧が所定値以上低下したことを検出すると、火災発生と判断して火災発生を報知(表示または音出力)する。
【0032】
ここで、メンテナンスモードから本運用モードへの切り替え直後、もしくは感知器設置完了後に火災受信機11の電源を投入した段階では、火災が発生していることは考えられないので、火災発生の状況を感知したときには、火災受信機11は逆接続の感知器があると判断して、その旨を報知することができる。従って、受信機の前で待機している工事監督者が作業現場にいる作業員に対して携帯電話で連絡をして、接続の確認要請を行い、逆接続が見つかれば修正を行うことができる。また、火災受信機11が火災発報をした場合には、作業員が当該エリアへ赴いて火災発生の有無を確認して、火災が発生していない場合には、感知器の逆接続が発生していると判断して接続確認を行うようにしても良い。
【0033】
一方、
図2(C)~(E)の感知器を使用した火災報知システムにおいては、
図3のような逆接続された感知器があると、メンテナンスモードから本運用モードへの切り替え直後、もしくは感知器設置が完了して火災受信機11の電源を投入した直後に、感知器の内部の発光ダイオードLED1が点灯するので、作業員は逆接続の感知器の存在およびどの感知器で逆接続がなされているのかを容易に把握することができる。そして、
図3の場合には、逆接続の感知器のうち最も火災受信機11に近い感知器を見つけて配線への接続を修正することによって、逆接続の状態を解消して正しい接続状態に修正することができる。
【0034】
以上説明したように、上記実施形態の火災感知器を用いた火災報知システムにおいては、感知器の設置作業の途中で、感知器のL端子31Aを誤ってC線に、またC端子31Bを誤ってL線に接続してしまって感知器の逆接続状態が生じたとしても、設置終了後の火災受信機11におけるモード切り替えまたは電源投入によって、いずれかの感知器に逆接続状態が発生していることを把握することができる。
【0035】
また、上記実施形態の火災感知器は、逆接続状態の発生に伴う不具合を回避するために感知器の信号の出入り口にダイオードブリッジ回路を設ける場合に比べて回路構成を簡素にし易く、その場合コストアップを抑えることができる。また、ダイオードブリッジ回路を設けると、L線とC線の電圧振幅が小さくなり、本運用モードにおける火災検出精度が低下するおそれがあるが、上記実施形態の火災感知器を用いた火災報知システムにおいては、L線とC線の電圧振幅の減少を回避することができるので、本運用モードにおける火災検出精度を低下させるおそれがないという利点がある。
【0036】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、印加される電圧または流れる電流量の変化により受信機が火災発生を判定するとしていたが、火災判定の代わりに短絡検出や過電流検出でも同様に感知器の逆接続を検出するように構成することができる。
また、
図2(A)~(E)の実施例や変形例におけるツェナーや定電流ダイオード、発光素子、抵抗などの各素子の順序は図示のものに限定されず、異なる順序でL端子31AとC端子31Bとの間に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0037】
11 火災受信機
12A L線(信号線)
12B C線(信号線)
13 火災感知器
14 終端抵抗
31A L端子
31B C端子
32 感知器内部回路
ZD1,ZD2 ツェナーダイオード
CRD1 定電流ダイオード
LED1 発光ダイオード