(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113717
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】床材、床材の貼り付け方法および床材の取り外し方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20240816BHJP
E04F 15/04 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E04F15/02 G
E04F15/04 601Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018834
(22)【出願日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年10月19日~令和4年10月21日 朝日ウッドテック株式会社 新商品発表会「WOODTEC FAIR 2022」にて参考出品(東京国際フォーラム) (2)令和4年11月15日~令和4年11月17日 朝日ウッドテック株式会社 新商品発表会「WOODTEC FAIR 2022」にて参考出品(グランキューブ大阪)
(71)【出願人】
【識別番号】000213769
【氏名又は名称】朝日ウッドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真吾
(72)【発明者】
【氏名】正木 将平
(72)【発明者】
【氏名】米村 友恵
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA33
2E220AA51
2E220AA55
2E220AC01
2E220BA01
2E220BB03
2E220BC03
2E220BC06
2E220CA07
2E220DA02
2E220DA12
2E220DA13
2E220DA14
2E220DB09
2E220FA11
2E220FA13
2E220GA22X
2E220GA24Z
2E220GA25X
2E220GB32X
2E220GB43X
(57)【要約】
【課題】段差が生じることを防止できる床材、床材の貼り付け方法および床材の取り外し方法を提供する。
【解決手段】床材10の基材層12は、第1短辺部30、第2短辺部40、第1長辺部50および第2長辺部60を有する。第1短辺部30の表面側には、基材層12の長手方向における一方側に突出する第1突出部34が設けられ、第2短辺部40の裏面側には、基材層12の長手方向における他方側に突出する第2突出部44が設けられている。また、第1長辺部50には、基材層12の長手方向に延びる雄実部52が設けられ、第2長辺部60には、基材層12の長手方向に延びる雌実部62が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質でかつ厚み方向から見て略四角形状を有する基材層を備えた床材であって、
前記厚み方向から見て前記基材層の一の辺に平行な方向を長手方向とし、前記厚み方向から見て前記基材層の前記一の辺に隣接する他の一の辺に平行な方向を短手方向とし、前記基材層の前記長手方向における一方側の端部を第1短辺部、前記基材層の前記長手方向における他方側の端部を第2短辺部、前記基材層の前記短手方向における一方側の端部を第1長辺部、前記基材層の前記短手方向における他方側の端部を第2長辺部、前記厚み方向における一方側を表面側、前記厚み方向における他方側を裏面側とした場合に、前記基材層は、
前記第1短辺部の前記表面側において、前記長手方向における一方側に突出する第1突出部と、
前記第2短辺部の前記裏面側において、前記長手方向における他方側に突出する第2突出部と、
前記第1長辺部において前記長手方向に延びるように設けられた雄実部と、
前記第2長辺部において前記長手方向に延びるように設けられた雌実部と、
を備える、床材。
【請求項2】
前記基材層の前記裏面側に設けられる緩衝材をさらに備え、
前記基材層は、前記裏面側において開口し、前記短手方向の全長にわたって延び、かつ前記長手方向において互いに間隔を空けて形成された複数の裏溝を有し、
前記緩衝材は、前記複数の裏溝を覆うように設けられる、請求項1に記載の床材。
【請求項3】
再剥離および再貼り付け可能な貼り付け手段によって下地に貼り付けられる、請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
前記雄実部は、前記表面側に設けられかつ前記短手方向における前記一方側を向く第1側面、前記裏面側に設けられかつ前記短手方向における前記一方側を向く第2側面、および前記厚み方向において前記第1側面と前記第2側面との間に設けられかつ前記第1側面および前記第2側面よりも前記短手方向における前記一方側に突出する突出面を有し、
前記雌実部は、前記表面側に設けられかつ前記短手方向における他方側を向く第3側面、前記裏面側に設けられかつ前記短手方向における他方側を向く第4側面、および前記厚み方向において前記第3側面と前記第4側面との間に設けられかつ前記第3側面および前記第4側面よりも前記短手方向における前記一方側に凹む凹面を有する、請求項1または2に記載の床材。
【請求項5】
前記第1側面と前記突出面の先端との前記短手方向における距離は、1.5~2.5mmである、請求項4に記載の床材。
【請求項6】
前記長手方向に垂直な断面において、前記突出面の先端部の前記表面側の角部の曲率半径は、前記突出面の前記先端部の前記裏面側の角部の曲率半径よりも大きい、請求項4に記載の床材。
【請求項7】
請求項1または2に記載の複数の床材が再剥離可能な貼り付け手段によって貼り付けられた下地において、前記複数の床材のうちの一の床材が取り外された領域に、前記一の床材を再度貼り付ける方法であって、
前記一の床材の前記第2短辺部側の前記雄実部および前記雌実部が、前記短手方向の両側に位置する他の床材の前記雌実部および前記雄実部と本実結合するように、前記一の床材を前記第2短辺部側から前記領域に嵌め込み、
前記一の床材を前記長手方向における前記他方側に移動させて、前記第2突出部を前記長手方向における前記他方側に位置する床材の前記第1突出部の下に嵌め込むことによってあいじゃくり結合し、
前記一の床材の前記第1短辺部側の前記雌実部を前記短手方向における前記他方側に位置する床材の前記雄実部に嵌合させることによって前記一の床材の前記雌実部の全体を本実結合し、
前記一の床材の前記第1短辺部側において前記第1長辺部を持ち上げるとともに当該持ち上げた部分に隣り合う床材の前記第2長辺部を持ち上げ、前記持ち上げた前記第1長辺部の前記雄実部を前記持ち上げた前記第2長辺部の前記雌実部に嵌合させ、前記持ち上げた前記第1長辺部および前記第2長辺部を下地上に下すことによって、前記一の床材の前記雄実部の全体を本実結合するとともに、前記一の床材の前記第1突出部と前記長手方向において前記一の床材の前記一方側に位置する床材の前記第2突出部とをあいじゃくり結合する、床材の貼り付け方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の複数の床材が再剥離可能な貼り付け手段によって貼り付けられた床から一の床材を取り外す方法であって、
前記一の床材の前記第1長辺部および前記一の床材の前記短手方向における前記一方側に位置する床材の前記第2長辺部を持ち上げて、前記一の床材の前記雄実部を、前記短手方向における前記一方側に位置する床材の前記雌実部から外し、
前記一の床材の前記第1短辺部側を持ち上げつつ、前記一の床材の前記雌実部を、前記短手方向において前記他方側に位置する床材の前記雄実部から外すとともに、前記一の床材の前記第2突出部を前記長手方向における前記他方側に位置する床材の前記第1突出部から外す、床材の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材、床材の貼り付け方法および床材の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等において、フリーアクセスフロアのような、機器および配線等を収容することができる収容空間を備えた下地構造が利用されている。このような構造の下地を有するオフィス等においては、下地の上に、仕上げ材としてタイルカーペットが敷設されることが多い。タイルカーペットは、機器、配線の交換および位置替え等の作業を行う際に容易に剥がすことができ、さらに剥がしたカーペットを作業後に貼り直して再利用することができるので、仕上げ材として好ましく利用されている。
【0003】
一方で、近年、木材利用促進、空間価値向上などの観点から、上記のような構造の下地の上に敷設する仕上げ材として、タイルカーペットに代えて木質床材が設けられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された床材は、長方形状の基材と、基材の表面に設けられた表面材とを有している。基材の短辺には、隣接して設置される床材と実結合される実部が形成され、基材の長辺には、治具を差し込むための凹部が形成されている。
【0005】
特許文献1の床材を仕上げ材として下地上に敷設する際には、長手方向に隣り合う床材の短辺同士が実結合されるので、短辺同士の接続部に段差が生じることを抑制できると考えられる。また、下地上に敷設された複数の床材のうちの一つの床材を下地から剥がす際には、剥がすべき床材の長辺と、その床材に隣り合う床材の長辺との間に治具を差し込むことによって、床材を容易に剥がすことができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の床材では、短手方向に隣り合う床材の長辺同士は、結合されていない。このため、下地に不陸または段差が生じた場合に、床材の長辺同士の接合部において段差が生じてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、段差が生じることを防止できる床材、床材の貼り付け方法および床材の取り外し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の床材、床材の貼り付け方法および床材の取り外し方法を要旨とする。
【0010】
(1)木質でかつ厚み方向から見て略四角形状を有する基材層を備えた床材であって、
前記厚み方向から見て前記基材層の一の辺に平行な方向を長手方向とし、前記厚み方向から見て前記基材層の前記一の辺に隣接する他の一の辺に平行な方向を短手方向とし、前記基材層の長手方向における一方側の端部を第1短辺部、前記基材層の前記長手方向における他方側の端部を第2短辺部、前記基材層の短手方向における一方側の端部を第1長辺部、前記基材層の前記短手方向における他方側の端部を第2長辺部、前記厚み方向における一方側を表面側、前記厚み方向における他方側を裏面側とした場合に、前記基材層は、
前記第1短辺部の前記表面側において、前記長手方向における一方側に突出する第1突出部と、
前記第2短辺部の前記裏面側において、前記長手方向における他方側に突出する第2突出部と、
前記第1長辺部において前記長手方向に延びるように設けられた雄実部と、
前記第2長辺部において前記長手方向に延びるように設けられた雌実部と、
を備える、床材。
【0011】
(2)前記基材層の前記裏面側に設けられる緩衝材をさらに備え、
前記基材層は、前記裏面側において開口し、前記短手方向の全長にわたって延び、かつ前記長手方向において互いに間隔を空けて形成された複数の裏溝を有し、
前記緩衝材は、前記複数の裏溝を覆うように設けられる、上記(1)に記載の床材。
【0012】
(3)再剥離および再貼り付け可能な貼り付け手段によって下地に貼り付けられる、上記(1)または(2)に記載の床材。
【0013】
(4)前記雄実部は、前記表面側に設けられかつ前記短手方向における前記一方側を向く第1側面、前記裏面側に設けられかつ前記短手方向における前記一方側を向く第2側面、および前記厚み方向において前記第1側面と前記第2側面との間に設けられかつ前記第1側面および前記第2側面よりも前記短手方向における前記一方側に突出する突出面を有し、
前記雌実部は、前記表面側に設けられかつ前記短手方向における他方側を向く第3側面、前記裏面側に設けられかつ前記短手方向における他方側を向く第4側面、および前記厚み方向において前記第3側面と前記第4側面との間に設けられかつ前記第3側面および前記第4側面よりも前記短手方向における前記一方側に凹む凹面を有する、
上記(1)または(2)に記載の床材。
【0014】
(5)前記第1側面と前記突出面の先端との前記短手方向における距離は、1.5~2.5mmである、上記(4)に記載の床材。
【0015】
(6)前記長手方向に垂直な断面において、前記突出面の先端部の前記表面側の角部の曲率半径は、前記突出面の前記先端部の前記裏面側の角部の曲率半径よりも大きい、上記(4)に記載の床材。
【0016】
(7)請求項1または2に記載の複数の床材が再剥離可能な貼り付け手段によって貼り付けられた下地において、前記複数の床材のうちの一の床材が取り外された領域に、前記一の床材を再度貼り付ける方法であって、
前記一の床材の前記第2短辺部側の前記雄実部および前記雌実部が、前記短手方向の両側に位置する他の床材の前記雌実部および前記雄実部と本実結合するように、前記一の床材を前記第2短辺部側から前記領域に嵌め込み、
前記一の床材を前記長手方向における前記他方側に移動させて、前記第2突出部を前記長手方向における前記他方側に位置する床材の前記第1突出部の下に嵌め込むことによってあいじゃくり結合し、
前記一の床材の前記第1短辺部側の前記雌実部を前記短手方向における前記他方側に位置する床材の前記雄実部に嵌合させることによって前記一の床材の前記雌実部の全体を本実結合し、
前記一の床材の前記第1短辺部側において前記第1長辺部を持ち上げるとともに当該持ち上げた部分に隣り合う床材の前記第2長辺部を持ち上げ、前記持ち上げた前記第1長辺部の前記雄実部を前記持ち上げた前記第2長辺部の前記雌実部に嵌合させ、前記持ち上げた前記第1長辺部および前記第2長辺部を下地上に下すことによって、前記一の床材の前記雄実部の全体を本実結合するとともに、前記一の床材の前記第1突出部と前記長手方向において前記一の床材の前記一方側に位置する床材の前記第2突出部とをあいじゃくり結合する、床材の貼り付け方法。
【0017】
(8)上記(1)または(2)に記載の複数の床材が再剥離可能な貼り付け手段によって貼り付けられた床から一の床材を取り外す方法であって、
前記一の床材の前記第1長辺部および前記一の床材の前記短手方向における前記一方側に位置する床材の前記第2長辺部を持ち上げて、前記一の床材の前記雄実部を、前記短手方向における前記一方側に位置する床材の前記雌実部から外し、
前記一の床材の前記第1短辺部側を持ち上げつつ、前記一の床材の前記雌実部を、前記短手方向において前記他方側に位置する床材の前記雄実部から外すとともに、前記一の床材の前記第2突出部を前記長手方向における前記他方側に位置する床材の前記第1突出部から外す、床材の取り外し方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、床材の貼り直しおよび貼り替えが容易になるとともに床に段差が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る床材を示す図である。
【
図2】
図2は、床材の長手方向における両端部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、長手方向に隣り合う床材同士の結合部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、床材の短手方向における両端部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、短手方向に隣り合う床材同士の結合部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、複数の床材によって構成された床を示す概略斜視図である。
【
図7】
図7は、床材の取り外し方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、床材の取り外し方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、一枚の床材が取り外された状態の床を示す概略斜視図である。
【
図10】
図10は、床材の貼り付け方法を説明するための図である。
【
図11】
図11は、床材の貼り付け方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、床材の貼り付け方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、床材の貼り付け方法を説明するための図である。
【
図14】
図14は、平面引張試験に用いた治具を示す概略図である。
【
図15】
図15は、平面引張試験方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(床材の構成)
以下、本発明の実施の形態に係る床材について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る床材を示す図であり、(a)は、床材を示す平面図であり、(b)は、(a)のb-b部分を示す概略断面図である。本実施形態に係る床材10は、例えば、フリーアクセスフロアのような、機器および配線等を収容することができる収容空間を有する下地上に敷設される。
【0021】
本実施形態では、床材10の長さは約900mmであり、幅は約145mmである。なお、床材10の長さおよび幅は上記の例に限定されず、たとえば、長さが約1800mmであってもよく、幅が約300mmであってもよい。床材10の寸法は、施工場所のモジュールに対応した寸法に適宜設定することができる。また、床材10の総厚が10mm以下であれば、タイルカーペットと見切りを設けて連続的に施工するなどの対応も可能となる。
【0022】
図1に示すように、床材10は、基材層12と、化粧材14と、緩衝材16とを備えている。基材層12は、木質でかつ厚み方向から見て略四角形状(本実施形態では、略長方形状)を有している。なお、以下の説明において単に厚み方向と記載する場合には、基材層12の厚み方向を意味する。また、本明細書においては、厚み方向における一方側を表面側とし、厚み方向における他方側を裏面側とする。化粧材14は、基材層12の表面側に設けられ、緩衝材16は、基材層12の裏面側に設けられている。
【0023】
床材10は、基材層12、化粧材14および緩衝材16を、接着剤によって互いに接着することによって製造される。接着剤としては、例えば、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、またはポリウレタン樹脂系などの合成樹脂系接着剤を用いることができる。また、接着剤として、ホットメルト接着剤を用いてもよい。なお、接着剤としては、合板の日本農林規格(JAS)の1類浸漬剥離試験に合格する耐水性を有する接着剤を用いることが好ましい。
【0024】
以下においては、まず、化粧材14および緩衝材16について説明した後、基材層12について詳細に説明する。
【0025】
化粧材14としては、例えば、突き板、挽き板、樹脂シート、または印刷紙を用いることができる。化粧材14の厚みは特に限定されないが、例えば、0.2~3.0mm程度である。なお、床材10が土足環境で使用される場合には、化粧材14の表面が摩耗しやすい。このため、基材層12が露出することを防止する観点から、化粧材14の厚みは、0.5mm以上であることが好ましい。
【0026】
化粧材14の表面には、縦溝、横溝、ハーフ溝等の化粧溝が形成される。ハーフ溝は、床材10の縁部に沿って形成され、複数の床材10を互いに接合して床を構成した際に、隣り合う他の床材10のハーフ溝との組合せによって、縦溝または横溝を形成する。なお、ハーフ溝を形成することによって、隣り合う床材との間に段差が発生しにくくなる。このため、段差の発生を抑制する観点から、化粧材14の四周にハーフ溝を形成することが好ましい。なお、床材10を土足環境で使用する場合には、化粧材14の表面の縦溝および横溝の数は極力少なくすることが好ましい。図示は省略するが、化粧材14の表面には、適宜塗装が行われる。
【0027】
緩衝材16は、基材層12に形成された後述する複数の裏溝12aを覆うように、基材層12の裏面側に設けられる。緩衝材16の材質については特に制限はないが、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペフなどの樹脂発泡体、または、ポリエステルなどの不織布を用いることができる。緩衝材16の厚みは、例えば、0.5~5.0mm程度である。
【0028】
床材10を下地上に貼り付ける際には、ピールアップ接着剤、粘着剤、両面テープ等の再剥離および再貼り付け可能な貼り付け手段によって、緩衝材16が下地に固定される。
【0029】
次に、基材層12について説明する。本実施形態では、基材層12は、基材合板20、樹脂含浸紙22,24および単板26を有する。基材合板20、樹脂含浸紙22,24および単板26は、上述の接着剤を用いて互いに接着される。
【0030】
基材合板20として用いられる合板の厚みおよび樹種は特に限定されず、広葉樹合板、針葉樹合板などの種々の合板を用いることができる。合板のプライ数も特に限定されない。本実施形態では、例えば、プライ数が奇数の合板(3プライ、5プライ、7プライ合板等)を用いることが好ましい。基材合板20の厚みは、例えば、3~15mmに設定される。基材合板20の厚みは、12mm以下であることが好ましく、9mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることがさらに好ましい。なお、基材合板20としては、合板の日本農林規格(JAS)の1類浸漬剥離試験に合格する耐水性を有する合板(T1合板)を用いることが好ましい。この場合、水濡れが生じる環境下(土足で使用される環境等)において床材10を利用する場合でも、床材10の劣化を十分に抑制できる。
【0031】
樹脂含浸紙22は、基材合板20の表面側に設けられ、樹脂含浸紙24は、基材合板20の裏面側に設けられている。樹脂含浸紙22,24は、原紙に樹脂を含浸させた構成を有する。本実施形態では、合板の日本農林規格(JAS)の平面引張試験に準じて常態(水濡れしていない状態)で測定した樹脂含浸紙22,24の剥離時または破壊時における最大荷重から算出される強度(接着力)が30kgf/cm2以上となるように、樹脂含浸紙22,24が構成される。なお、具体的な平面引張試験方法は後述する。常態における樹脂含浸紙22,24の上記強度は、35kgf/cm2以上であることが好ましく、40kgf/cm2以上であることがより好ましく、45kgf/cm2以上または50kgf/cm2以上であることがさらに好ましい。
【0032】
また、本実施形態では、樹脂含浸紙22,24を23℃の水中に24時間浸漬した後に、上記平面引張試験に準じて水に濡れた状態で測定した樹脂含浸紙22,24の剥離時または破壊時における最大荷重から算出される強度(接着力)が20kgf/cm2以上となるように、樹脂含浸紙22,24が構成される。具体的な平面引張試験方法は後述する。樹脂含浸紙22,24を23℃の水中に24時間浸漬した後に測定される樹脂含浸紙22,24の上記強度は、25kgf/cm2以上であることが好ましく、30kgf/cm2以上であることがより好ましく、35kgf/cm2以上または40kgf/cm2以上であることがさらに好ましい。
【0033】
樹脂含浸紙22,24の原紙としては、例えば、クラフト紙、薄葉紙、チタン紙などを用いることができる。本実施形態では、例えば、坪量が50~200g/m2の原紙が用いられる。原紙に含浸させる樹脂としては、メラミン樹脂、ユリア・メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂などを用いることができる。本実施形態では、樹脂を乾燥させた後の樹脂含浸紙22,24の坪量は、例えば、100~400g/m2である。また、乾燥後の樹脂含浸紙22,24の樹脂率(樹脂量(g)/樹脂含浸紙重量(g))は、例えば、50%以上である。
【0034】
樹脂含浸紙22,24の厚さは特に限定されないが、床材10の耐傷性を十分に確保する観点から、0.1mm以上であることが好ましい。また、床材10の剛性が高くなって防音性能が低下することを防止する観点からは、樹脂含浸紙22,24の厚さは、0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましい。樹脂含浸紙22,24の厚さは、0.2~0.3mmであることがさらに好ましい。
【0035】
単板26は、樹脂含浸紙24の裏面側に設けられている。単板26としては、例えば、突き板または挽き板を用いることができる。単板26の厚みは特に限定されないが、例えば、0.2~3.0mm程度である。本実施形態では、化粧材14の種類や厚みに合わせて、単板26の厚みや樹種を変更することで、床材10の表裏の反りバランスを調整することができる。
【0036】
本実施形態では、基材層12には、複数の裏溝12aが形成されている。複数の裏溝12aは、基材層12の裏面側において開口し、基材層12の短手方向の全長にわたって延びるように形成され、かつ基材層12の長手方向において互いに間隔を空けて形成されている。なお、以下の説明において単に長手方向と記載する場合には、基材層12の長手方向を意味し、単に短手方向と記載する場合には、基材層12の短手方向を意味する。
【0037】
本実施形態では、裏溝12aは、基材層12を上下方向に貫通しない大きさに形成されている。厚み方向における裏溝12aの深さは特に限定されないが、基材合板20として5プライ合板を用いる場合、例えば、裏溝12aの上端の位置(狙い位置)が基材合板20の表面側から2層目または4層目となるように裏溝12aが形成される。裏溝12aの深さが大きい方が床材10の剛性が低下し、床材10の貼り直し作業は容易になる。この観点からは、裏溝12aの上端の位置(狙い位置)が基材合板20の表面側から2層目となるように裏溝12aを形成することが好ましい。
【0038】
図2は、基材層12の長手方向における両端部を示す断面図である。具体的には、
図2(a)は、基材層12の長手方向における一方側の端部30(以下、第1短辺部30と記載する。)を示す断面図であり、
図2(b)は、基材層12の長手方向における他方側の端部40(以下、第2短辺部40と記載する。)を示す断面図である。なお、
図2には、基材層12の短手方向に垂直な断面が示されている。また、
図2には、基材層12に加えて、化粧材14および緩衝材16が示されている。
【0039】
図1および
図2に示すように、第1短辺部30の裏面側には、長手方向における一方側を向く第1端面32が設けられ、第1短辺部30の表面側には、第1端面32よりも長手方向における一方側に向かって突出する第1突出部34が設けられている。
【0040】
第2短辺部40の表面側には、長手方向における他方側を向く第2端面42が設けられ、第2短辺部40の裏面側には、第2端面42よりも長手方向における他方側に向かって突出する第2突出部44が設けられている。
【0041】
図3に示すように、下地1上に複数の床材10が敷設された床において、任意の床材10の第1突出部34の下方に、長手方向に隣り合う他の床材10の第2突出部44が嵌め込まれている。すなわち、本実施形態に係る床材10では、第1突出部34および第2突出部44は、あいじゃくり実として機能する。
【0042】
なお、本実施形態では、
図3に示すように、第1突出部34と第2突出部44とがあいじゃくり結合した際に、厚み方向において第1突出部34と第2突出部44との間に隙間が形成されるように、第1突出部34および第2突出部44が形成される。
【0043】
本実施形態では、下地1上に複数の床材10が敷設された床において、任意の床材10の第1突出部34は、長手方向に隣り合う他の床材10の第2端面42に対向する。また、任意の床材10の第2突出部44は、長手方向に隣り合う他の床材10の第1端面32に対向する。
【0044】
図2に示すように、第1端面32と第1突出部34の先端との長手方向における距離D1は、第2端面42と第2突出部44の先端との長手方向における距離D2よりも大きい。これにより、
図3に示すように、任意の床材10の第1突出部34が、隣り合う他の床材10の第2端面42に接触した状態において、第1端面32と第2突出部44との間に隙間が形成される。このように第1短辺部30および第2短辺部40を形成することによって、複数の床材10を敷設した際に、長手方向に隣り合う2つの床材10の表面側に隙間が生じることを抑制することができる。なお、距離D2は、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがさらに好ましい。すなわち、第1突出部34と第2突出部44との掛り代は、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
なお、下地1の構造は特に限定されないが、本実施形態では、床材10は、例えば、フリーアクセスフロアのような、機器および配線等を収容することができる収容空間を有する下地1上に敷設される。この場合、下地1は、例えば、略正方形状(500mm×500mm)の複数のパネルによって構成される。下地1の材質は特に制限されないが、例えば、スチール製の下地1、樹脂製の下地1、またはMDF、パーティクルボード、および合板などの木質の下地1を用いることができる。なお、フリーアクセスフロア以外の下地に床材10を敷設してもよい。
【0046】
図4は、基材層12の短手方向における両端部を示す断面図である。具体的には、
図4(a)は、基材層12の短手方向における一方側の端部50(以下、第1長辺部50と記載する。)を示す断面図であり、
図4(b)は、基材層12の短手方向における他方側の端部60(以下、第2長辺部60と記載する。)を示す断面図である。なお、
図4には、基材層12の長手方向に垂直な断面が示されている。また、
図4には、基材層12に加えて、化粧材14および緩衝材16が示されている。
【0047】
図1(a)および
図4(a)に示すように、第1長辺部50には、長手方向に延びるように雄実部52が設けられている。また、
図1(a)および
図4(b)に示すように、第2長辺部60には、長手方向に延びるように雌実部62が設けられている。
【0048】
図4(a)に示すように、雄実部52は、第1側面52a、第2側面52bおよび突出面52cを有する。第1側面52aは、雄実部52の表面側に設けられかつ短手方向における一方側を向くように形成されている。第2側面52bは、雄実部52の裏面側に設けられかつ短手方向における一方側を向くように形成されている。突出面52cは、厚み方向において第1側面52aと第2側面52bとの間に設けられかつ第1側面52aおよび第2側面52bよりも短手方向における一方側に突出するように形成されている。本実施形態では、長手方向に垂直な断面において、突出面52cの先端部の表面側の角部53aの曲率半径は、突出面52cの先端部の裏面側の角部53bの曲率半径よりも大きい。
【0049】
図4(b)に示すように、雌実部62は、第3側面62a、第4側面62bおよび凹面62cを有する。第3側面62aは、雌実部62の表面側に設けられかつ短手方向における他方側を向くように形成されている。第4側面62bは、雌実部62の裏面側に設けられかつ短手方向における他方側を向くように形成されている。凹面62cは、厚み方向において第3側面62aと前記第4側面62bとの間に設けられかつ第3側面62aおよび第4側面62bよりも短手方向における一方側に凹むように形成されている。
【0050】
図5に示すように、下地1上に複数の床材10が敷設された床において、任意の床材10の雌実部62の凹面62cに、短手方向に隣り合う他の床材10の雄実部52の突出面52cが嵌め込まれている。すなわち、本実施形態に係る床材10では、雄実部52および雌実部62は、本実として機能する。
【0051】
なお、本実施形態では、
図5に示すように、雄実部52と雌実部62とが本実結合した際に、厚み方向において突出面52cと凹面62cとの間に隙間が形成されるように、雄実部52および雌実部62が形成される。
【0052】
本実施形態では、下地1上に複数の床材10が敷設された床において、任意の床材10の第1側面52aは、短手方向に隣り合う他の床材10の第3側面62aに対向する。また、任意の床材10の第2側面52bは、長手方向に隣り合う他の床材10の第4側面62bに対向する。本実施形態では、任意の床材10の第1側面52aが、隣り合う他の床材10の第3側面62aに接触した際に、短手方向において、第2側面52bと第4側面62bとの間、および突出面52cと凹面62cとの間にそれぞれ隙間が形成される。このように雄実部52および雌実部62を形成することによって、複数の床材10を敷設した際に、短手方向に隣り合う2つの床材10の表面側に隙間が生じることを抑制することができる。
【0053】
図4(a)に示すように、第1側面52aと突出面52cの先端との短手方向における距離D3は、作業性の観点からは、2.5mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。また、実外れを防止する観点からは、距離D3は、1.5mm以上であることが好ましい。
【0054】
なお、
図5に示すように、雌実部62において、凹面62cよりも表面側の部分を上顎部63aと称し、凹面62cよりも裏面側の部分を下顎部63bと称する。上述の距離D3は、上顎部63aと突出面52cとの掛り代に相当する。下顎部63bと突出面52cとの掛り代D4は、作業性の観点からは、2.0mm以下であることが好ましい。実外れを防止する観点からは、掛り代D4は、1.0mm以上であることが好ましい。
【0055】
(貼り直し方法)
次に、床材10の貼り直し方法について説明する。まず、複数の床材10が再剥離可能な貼り付け手段によって下地に貼り付けられた床から、一枚の床材10を取り外す方法について説明する。
【0056】
(取り外し方法)
図6は、複数の床材によって構成された床を示す概略斜視図である。
図6に示す床2は、上述の床材10と同様の構成を有する複数の床材10A~10Gを含む。以下においては、床材10B~10Gに囲まれた床材10Aを取り外す場合を例に挙げて、床材の取り外し方法を説明する。なお、
図6に示す床2においては、短手方向における床材10Aの一方側に床材10B,10Cが設けられ、短手方向における床材10Aの他方側に床材10F,10Gが設けられ、長手方向における床材10Aの一方側に床材10Dが設けられ、長手方向における床材10Aの他方側に床材10Eが設けられる。
【0057】
床材10Aを取り外す際には、まず、床材10Aの雄実部52を、床材10B,10Cの第2長辺部60から外す。本実施形態では、例えば、
図7に示すように、床材10Aの第1長辺部50および床材10Bの第2長辺部60を持ち上げることによって、床材10Aの雄実部52を床材10Bの雌実部62から外す。具体的には、例えば、
図7に破線で示す位置を図示しない吸着盤等によって持ち上げることによって、床材10Aの雄実部52を床材10Bの雌実部62から外す。同様に、吸着盤等を用いて、床材10Aの第1長辺部50および床材10Cの第2長辺部60を持ち上げることによって、床材10Aの雄実部52を床材10Cの雌実部62から外す。これにより、床材10Aの雄実部52の全体が、床材10B,10Cの第2長辺部60から外れる。なお、床材10Aの第1長辺部50および床材10B,10Cの第2長辺部60において吸着盤等によって持ち上げる位置は適宜変更してよい。また、床材10Bよりも床材10Cを先に持ち上げてもよい。
【0058】
その後、
図7および
図8に示すように、床材10Aの第1短辺部30側を持ち上げつつ、床材10Aの雌実部62を、床材10F,10Gの雄実部52から外すとともに、床材10Aの第2短辺部40の第2突出部44(
図8参照)を床材10Eの第1短辺部30の第1突出部34から外す。これにより、下地1から床材10Aが取り外され、
図9に示すように下地1の領域1aが露出する。なお、本実施形態では、
図1に示したように、基材層12には、複数の裏溝12aが形成されている。これにより、床材10Aを長手方向に容易に撓ませることができる。その結果、床2から床材10Aを容易に取り外すことができる。
【0059】
(貼り付け方法)
次に、上記のようにして床材10Aが取り外された下地1の領域1aに、床材10Aを再度貼り付ける方法について説明する。
【0060】
本実施形態では、
図9および
図10に示すように、まず、床材10Aの第2短辺部40側の雄実部52および雌実部62が、短手方向の両側に位置する床材10C,10Fの雌実部62および雄実部52と本実結合するように、床材10Aを第2短辺部40側から領域1aに嵌め込む。なお、
図10では、上記のように、床材10Aの第2短辺部40側が床材10C,10Fの間に嵌め込まれているが、床材10B,10Gの間に嵌め込まれてもよい。
【0061】
次に、
図10および
図11に示すように、床材10Aを長手方向における他方側(本実施形態では、床材10E側)に移動させて、床材10Aの第2突出部44を床材10Eの第1突出部34の下に嵌め込む。これにより、床材10Aの第2突出部44と床材10Eの第1突出部34とがあいじゃくり結合されるとともに、床材10Aの第2短辺部40側の雌実部62が床材10Gの雄実部52に本実結合される。
【0062】
さらに、
図11に示すように、床材10Aの第1短辺部30側の雌実部62を床材10Fの雄実部52に嵌合させる。これにより、床材10Aの雌実部62の全体が床材10F,10Gの雄実部52に本実結合される。
【0063】
なお、本実施形態においては、床材10Aの裏面には、ピールアップ接着剤等の再剥離可能な貼り付け手段が設けられている。このため、床材10Aを長手方向に円滑に移動させるためには、床材10Aの裏面が下地1に接触していないことが好ましい。そこで、本実施形態では、例えば、
図12に示すように、床材10Aを床材10F(床材10G)に対して傾けて雌実部62の上顎部63aを雄実部52の突出面52c上に載せた状態で、床材10Aを長手方向に移動させて、床材10Aの位置決めを行う。本実施形態では、例えば、床材10Aの第1長辺部50側を吸着盤等によって持ち上げることによって、床材10Aを傾けることができる。その後、雌実部62の下顎部63b側を雄実部52側に押し込む。これにより、
図5に示すように、雌実部62と雄実部52とが本実結合される。なお、本実施形態では、雌実部62の下顎部63b側を雄実部52側に押し込む際に、下顎部63bと突出面52cとが互いに干渉しないように、雄実部52および雌実部62の形状および寸法が設定されている。
【0064】
次に、
図13に示すように、床材10Aの第1短辺部30側において第1長辺部50を持ち上げるとともに当該持ち上げた部分に隣り合う床材10Cの第2長辺部60を持ち上げて、持ち上げた第1長辺部50の雄実部52を持ち上げた第2長辺部60の雌実部62に嵌合させる。具体的には、例えば、
図13に破線で示す位置を吸着盤等によって持ち上げることによって、雄実部52を雌実部62に嵌合させる。その後、持ち上げた第1長辺部50および第2長辺部60を下地1上に下す。これにより、
図6に示すように、床材10Aの雄実部52の全体が床材10B,10Cの雌実部62に本実結合されるとともに、床材10Aの第1突出部34と床材10Dの第2突出部44とがあいじゃくり結合される。これにより、床材10Aの貼り直しが完了する。
【0065】
なお、上記の説明においては、下地1から取り外した床材10Aを下地1上に貼り直す場合について説明したが、取り外した床材10Aとは別の床材10を下地1上に貼り付けてもよい。すなわち、本発明に係る床材は、床材を貼り直す際だけでなく、床材を他の床材に貼り替える際にも好適に利用できる。
【0066】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る床材10では、第1短辺部30には、表面側において突出するように第1突出部34が設けられ、第2短辺部40には、裏面側において突出するように第2突出部44が設けられている。このため、複数の床材10によって床2を構成する際に、長手方向に隣り合う床材10同士を、あいじゃくり結合することができる。この場合、長手方向に隣り合う床材10同士の結合を容易に解除することができ、下地1から床材10を容易に取り外すことができる。また、下地1から取り外した床材10を下地1に再度貼り付ける際に、長手方向に隣り合う床材10同士を容易に結合することができる。すなわち、本実施形態に係る床材10によれば、下地1からの床材10の取り外しおよび床材10の下地1への貼り付けが容易になる。
【0067】
一方で、第1長辺部50には雄実部52が設けられ、第2長辺部60には雌実部62が設けられている。このため、複数の床材10によって床2を構成する際に、短手方向に隣り合う床材10同士を、本実結合することができる。これにより、下地1に不陸または段差が生じたとしても、床材10の長辺同士の接合部において段差が生じることを十分に防止することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る床材10では、第1短辺部30および第2短辺部40にあいじゃくり実を形成するとともに、第1長辺部50および第2長辺部60に本実部を形成することによって、床材10の下地1からの取り外しおよび下地1への貼り付けを容易にしつつ、床材10同士の接合部において段差が生じることを防止している。
【0069】
なお、第1長辺部および第2長辺部に加えて、第1短辺部および第2短辺部にも本実を形成した場合には、長手方向に隣り合う床材同士の第1短辺部および第2短辺部を本実結合する際に、床材の裏面を下地に接触させながら床材の位置決めを行う必要がある。この場合、床材の裏面に設けられた接着剤等の影響によって、床材を円滑に移動させることは難しい。一対の長辺部および一対の短辺部の全て(四辺の全て)が本実の場合、一対の長辺部およびいずれか一方の短辺部の実を隣接する床材の実に嵌合させた時点で、残りの短辺部の実は、隣接する床材の実に重なり乗り上げることになる。このため、床材を下地1に実質的に貼り付けることができない。つまり、短辺部にある雄実の突出部を除去するか、雌実の下顎部を除去しなければ、下地1の領域1aに床材を収めることができない。一方、本実施形態に係る床材10では、上記のように、第1短辺部30および第2短辺部40には、あいじゃくり実が形成されている。この場合、
図10および
図11に示すように、床材10を傾斜させた状態で、第1短辺部30および第2短辺部40を容易に結合させることができる。このため、本実施形態では、床材10を傾斜させた状態で移動させて、第1短辺部30および第2短辺部40を結合することができる。これにより、床材10の裏面に接着剤等が設けられている場合でも、床材10の位置決めを容易に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態に係る床材10では、基材層12には、複数の裏溝12aが形成されている。複数の裏溝12aは、基材層12の裏面側において開口し、基材層12の短手方向の全長にわたって延び、かつ基材層12の長手方向において互いに間隔を空けて形成されている。このように複数の裏溝12aを形成することによって、床材10を長手方向に容易に撓ませることができる。これにより、下地1からの床材10の取り外しおよび下地1への床材10の貼り付けが容易になる。
【0071】
また、基材層12に複数の裏溝12aを形成することによって、下地1に不陸または段差が生じていたとしても、床材10の裏面側をその不陸等に追従して変形させることができる。これにより、床2において不陸等が生じることを十分に抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る床材10では、基材層12の裏面側において、複数の裏溝12aを覆うように、緩衝材16が設けられている。これにより、床材10と床材10の下面に設けられたピールアップ接着剤等の貼り付け手段との間で発生するタック音(剥離音)を抑制することができる。床材10に吸湿又は乾燥等の影響により反りが生じたとき、ピールアップ接着剤等の貼り付け手段の接着面から部分的に床材10が浮いてしまう恐れがある。床材10が浮いた状態で、歩行などにより上面から荷重が掛かると、床材10は接着面に一時的に接触するが荷重が解かれると再度接着面から浮いてしまう。この際に、タック音(剥離音)が発生する。タック音(剥離音)は、床材10の反りが元に戻らない限り、繰り返し発生する為、床材10の裏面には緩衝材16を備えることが好ましい。緩衝材16は床材10の反りに追従できるので、貼り付け手段の接着面から床材10が浮くことはなくタック音(剥離音)が発生することがなくなる。
【0073】
また、床材10に加わる衝撃を基材層12において吸収することができるので、床材10が意図せずに下地1から剥がれることを防止することができる。
【0074】
また、基材層12が緩衝材16を介して下地1に固定されるので、床材10を下地1から剥がす際に基材層12に大きな負荷がかかることを防止できる。その結果、基材層12の破損を抑制することができる。
【0075】
また、
図4に示したように、本実施形態に係る床材10においては、長手方向に垂直な断面において、突出面52cの先端部の表面側の角部53aの曲率半径は、突出面52cの先端部の裏面側の角部53bの曲率半径よりも大きい。このように、角部53aの曲率半径を大きくすることによって、
図12に示すように、突出面52cに対して上顎部63aを滑らせやすくなり、雄実部52と雌実部62との結合が容易になる。
【0076】
なお、上述の実施形態では、基材層12が、基材合板20、樹脂含浸紙22,24および単板26を備える場合について説明したが、基材層12を構成する材料は上述の例に限定されず、公知の種々の木質の基材層と同様の材料によって基材層12を構成することができる。
【0077】
(実験1)
本実施形態に係る床材10では、基材合板20の表裏面側に樹脂含浸紙22,24が設けられ、さらに表面側には化粧材14、裏面側には単板26が設けられている。本発明者らによる実験の結果、化粧材14および基材層12によって構成される部分が表裏対称の構成となるように各層を設けることによって、床材10の初期形状の反り、ならびに吸湿および乾燥条件下における変形を十分に防止できることが分かった。以下、本発明者らが行った実験について説明する。
【0078】
本実験では、実施例1の床材および実施例2の床材を作製した。実施例1の床材(長さ:900mm、幅:142.8mm)は、
図1に示した床材10と同様の構成を有している。なお、化粧材14として厚さが0.5mmのメイプルの単板を用い、基材合板20として厚さが5.4mmのメランティ合板(5プライのT1合板)を用い、単板26として厚さが0.3mmのメイプルの単板を用い、緩衝材16として厚みが0.8mmの不織布を用いた。樹脂含浸紙22,24の厚みはそれぞれ、0.2mmとした。樹脂含浸紙22,24としてはそれぞれ、クラフト紙にユリア・メラミン樹脂(メラミン樹脂が主成分)を含浸させたものを用いた。
【0079】
基材層12には、64本の裏溝12aを形成した。各裏溝12aの幅は1.5mmとした。また、各裏溝12aは、化粧材14の表面から裏溝12aの底面までの残り代が2.3mmとなるように、基材合板20の上から2層目深さまで形成した。
【0080】
実施例2の床材は、樹脂含浸紙24を備えていない点を除いて、実施例1の床材と同様の構成を有している。
【0081】
本発明者らは、上記の構成を有する実施例1および2の床材をそれぞれ16枚ずつ作製し、得られた床材の幅反りおよび長さ反りを測定した。具体的には、床材を平滑なテーブル上に載置し、幅方向および長さ方向の反りの矢高を測定した。下記の表1に測定結果を示す。なお、下記の表1に示す測定結果は、16枚の床材の測定結果の平均値である。また、下記の表1において、反りの測定結果が正の値である場合には、床材の表面側が凸状となるように変形したことを意味し、測定結果が負の値である場合には、床材の表面側が凹状となるように変形したことを意味する。
【0082】
【0083】
表1に示すように、床材10を構成する材料を表裏対称となるように配置した実施例1の床材では、初期形状の幅反りを十分に抑制できることが分かった。
【0084】
本発明者らはさらに、上記の構成を有する実施例1および2の床材に対して、乾燥試験および吸湿試験を行った。乾燥試験では、床材を、温度40℃、湿度30%の乾燥環境に2週間放置し、試験前後の幅反りおよび長さ反りの変化量を求めた。吸湿試験では、床材を、温度30℃、湿度90%の吸湿環境に2週間放置し、試験前後の幅反りおよび長さ反りの変化量を求めた。また、乾燥試験および吸湿試験のそれぞれにおいて、試験前後の床材の含水率を測定した。下記の表2に試験結果を示す。なお、幅反りおよび長さ反りについては、表1の幅反りおよび長さ反りと同様に測定した。また、下記の表2において幅反りおよび長さ反りの変化率は、含水率変化量1%当たりの反りの変化量を意味する。
【0085】
【0086】
表2に示すように、床材10を構成する材料を表裏対称となるように配置した実施例1の床材では、含水率が1%変化したときの反りの変化量を十分に小さくできることが分かった。すなわち、床材10を構成する材料を表裏対称となるように配置することによって、反りの発生を十分に抑制できることが分かった。
【0087】
(実験2)
【0088】
本発明者らは、床材が水濡れしたときに生じる問題について検討を行った。具体的には、基材合板と化粧材との間に木質繊維板を設けた床材について、水濡れしたときに生じる問題について詳細な検討を行った。その結果、床材が水濡れした際に、木質繊維板が水分を吸収することによって木質繊維板の強度が低下し、化粧材が剥離しやすくなることが分かった。また、水分を吸収することによって木質繊維板の寸法が変化し、床材に反りが発生しやすくなることが分かった。一方で、木質繊維板の代わりに樹脂含浸紙を用いることによって、水分吸収による上記のような床材の寸法変化を抑制できることが分かった。また、基材合板の裏面側に単板を設ける場合には、基材合板と単板との間に樹脂含浸紙を設けることによっても、水分吸収による床材の寸法変化を抑制できることが分かった。
【0089】
以上のことから、本発明者らは、基材合板と化粧材との間および/または基材合板と裏面側の単板との間に、十分な強度を有する樹脂含浸紙を用いれば、水濡れが生じる環境下においても、床材の変形を抑制しつつ、優れた耐傷性を確保できると考えた。
【0090】
そこで、本発明者らは、常態(水濡れしていない状態)において十分な強度を有しているHDF、および水分吸収を抑制して寸法変化を抑制できる樹脂含浸紙について、常態条件および湿潤条件の剥離強度(接着力)を比較する試験を行った。具体的には、本発明者は、合板の日本農林規格(JAS)の別記3の平面引張試験に準じて、以下に説明する試験を行った。
【0091】
図14は、試験に用いた治具を示す概略図であり、(a)は治具の正面図、(b)は治具の平面図である。
図14に示すように、本試験に用いた治具100は、金属製の上側治具102と金属製の下側治具104とを含む。上側治具102は、一辺が20mmの四角形状の底面102aを有する。下側治具104は、一辺が50mmの四角形状の上面104aを有する。
図14(b)に示すように、上側治具102は、下側治具104の中央の上方に配置される。
【0092】
本試験では、試験対象として、厚みが0.4mmのHDF、および厚みが0.2mmの樹脂含浸紙を用意した。樹脂含浸紙としては、原紙としてクラフト紙を用い、ユリア・メラミン樹脂(メラミン樹脂が主成分)を含浸させたものを用意した。樹脂含浸率(樹脂量(g)/原紙重量(g))は113%であり、樹脂含浸紙の坪量は170.2g/m2であった。
【0093】
図15は、試験方法を説明するための図である。常態条件の試験を行う際には、
図15(a)に示すように、試験対象(HDFおよび樹脂含浸紙)から、一辺が50mmの四角形状の試料106を切り出して、エポキシ系接着剤によって、上側治具102の底面102aおよび下側治具104の上面104aに接着する。その状態で、24時間以上養生する。
【0094】
次に、試料106の中央部において一辺が20mmの四角形を描くように、上側治具102の底面102aの外縁に沿って、カッター等によって切れ込みを入れる。この切れ込みは、試料106の上面から下面に達する深さの切れ込みとする。
【0095】
その後、
図15(b)に示すように、上側治具102の位置を固定して、下側治具104を下方に移動させて、試料106に対して平面引張試験を行う。具体的には、下側治具104を2mm/minの速度で下方に移動させて、試料106の剥離時または破壊時における最大荷重を測定する。そして、測定した最大荷重から下記の(1)式によって、強度(接着力)を算出する。
強度(kgf/cm
2)=最大荷重(kgf)/4(cm
2) ・・・(1)
【0096】
湿潤条件の試験を行う際にも、上述の常態条件の試験と同様に、試験対象(HDFおよび樹脂含浸紙)から、一辺が50mmの四角形状の試料106を切り出して、エポキシ系接着剤によって、上側治具102の底面102aおよび下側治具104の上面104aに接着し、24時間以上養生する。その後、上述の常態条件の試験と同様に、試料106の中央部において一辺が20mmの四角形を描くように、上側治具102の底面102aの外縁に沿って切れ込みを入れる。
【0097】
次に、上記切れ込みから試料106内に水分を染み込ませて湿潤状態を模擬するために、上側治具102、下側治具104および試料106を、23℃の水中に24時間浸漬する。その後、水に濡れたままの試料106に対して、上述の常態条件の試験と同様に平面引張試験を行い、強度(接着力)を算出する。
【0098】
なお、本発明者らは、常態条件について、HDFおよび樹脂含浸紙それぞれから複数の試料106を切り出し、上記の試験を行った。湿潤条件についても同様に、HDFおよび樹脂含浸紙それぞれから複数の試料106を切り出し、上記の試験を行った。下記の表1に試験結果を示す。
【0099】
【0100】
上記の表3に示すように、HDFに比べて、樹脂含浸紙の強度は十分に高くなった。特に、湿潤条件における樹脂含浸紙の強度の最小値であっても、常態条件におけるHDFの強度の最大値よりも高くなった。このことから、床材において、基材合板と化粧材との間および/または基材合板と裏面側の単板との間に、適切な樹脂含浸紙を設けることによって、水濡れが生じた場合でも、床材の耐傷性が低下することを防止できると考えられる。
【0101】
一方で、樹脂含浸紙であっても、HDFと同様に、水分を吸収することによって強度が低下することが分かった。具体的には、樹脂含浸紙の湿潤条件の強度は、常態条件の強度に比べて20%程度低下することが分かった。
【0102】
以上の点を考慮して、本発明者らは、常態条件において30kgf/cm2以上の強度を有する樹脂含浸紙を基材合板と化粧材との間および/または基材合板と裏面側の単板との間に設ければよいと考えた。この場合、仮に、床材に水濡れが生じて樹脂含浸紙の強度が20~25%程度低下したとしても、HDFを設けた床材の常態条件における耐傷性と同等以上の耐傷性を維持しつつ、床材の反りの発生を十分に抑制できると考えられる。特に、湿潤条件において20kgf/cm2以上の強度を有する樹脂含浸紙を基材合板と化粧材との間および/または基材合板と裏面側の単板とに設けることによって、床材に水濡れが生じたとしても、HDFを設けた床材の常態条件の耐傷性と同等以上の耐傷性を確実に維持できる。
【0103】
(変形例)
上述の実施形態では、基材層12が厚み方向から見て略長方形状を有する場合について説明したが、基材層の形状は上述の例に限定されない。例えば、
図16に示す床材10aのように、基材層12が厚み方向から見て略平行四辺形状を有していてもよい。
【0104】
上述の実施形態では、基材層12を厚み方向から見た場合に、互いに平行な一対の辺の長さが、互いに平行な他の一対の辺の長さよりも長いが、基材層の4つの辺の長さが略等しくてもよい。この場合には、厚み方向から見て、基材層の一の辺に平行な方向を長手方向とし、基材層の上記一の辺に隣接する他の一の辺に平行な方向を短手方向と定義する。例えば、
図17に示す床材10bのように、基材層12が厚み方向から見て略ひし形形状を有する場合が考えらえる。
図17の床材10bでは、厚み方向から見て、基材層12の4つの辺13a~13dのうちの一の辺13c(または辺13d)に平行な方向を長手方向とし、上記一の辺13c(または辺13d)に隣接する他の一の辺13a(または辺13b)に平行な方向を短手方向と定義する。言い換えると、厚み方向から見て、第1突出部34が設けられた辺13a(または第2突出部44が設けられた辺13b)に直交する方向を長手方向とし、雄実部52が設けられた辺13c(または雌実部62が設けられた辺13d)に直交する方向を短手方向と定義する。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、床材の貼り直しおよび貼り替えが容易になるとともに床に段差が生じることを防止できる。
【符号の説明】
【0106】
1 下地
2 床
10,10a,10b 床材
12 基材層
14 化粧材
16 緩衝材
20 基材合板
22,24 樹脂含浸紙
26 単板