(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113722
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240816BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20240816BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240816BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240816BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L55/02
C08L25/12
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018840
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠哉
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC062
4J002BN143
4J002BN152
4J002CG011
4J002DJ047
4J002EW046
4J002EW048
4J002FD017
4J002FD206
4J002FD208
4J002GC00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】ポリカーボネート系樹脂本来の耐衝撃性を維持しつつ抗菌性および抗菌性持続性に優れる抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(B成分)10~45重量部、(C)B成分を除く衝撃改質剤(C成分)2~10重量部、(D)銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤(D成分)0.3~3重量部および(E)無機フィラー(E成分)0.2~7重量部を含むことを特徴とする抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(B成分)10~45重量部、(C)B成分を除く衝撃改質剤(C成分)2~10重量部、(D)銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤(D成分)0.3~3重量部および(E)無機フィラー(E成分)0.2~7重量部を含むことを特徴とする抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
A成分100重量部に対し、(F)リン系難燃剤(F成分)10~20重量部および(G)ドリップ防止剤(G成分)0.1~1重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
E成分がケイ酸塩鉱物(E-1成分)および金属酸化物(E-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
D成分がレーザー回折・散乱法により測定される平均粒径(D50)が1~3μmである銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
D成分が銀含有量が8~12重量%である銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関するものである。さらに詳細には、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、衝撃改質剤、銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤および無機フィラーよりなる樹脂本来の耐衝撃性を維持しつつ抗菌性および抗菌性持続性に優れる抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、一般に優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性および難燃性といった優れた特性から機械部品、自動車部品、電気・電子部品、事務機器部品などの多くの用途に用いられている。近年、衛生面や清潔志向に加え、既知および未知の病原菌の蔓延対策の観点から、トイレなどの住宅設備、冷蔵庫、エアコンなどの家電、医療機器、コンビ二エンスストアなどに設置されているATM(現金自動預け払い機)、POS端末、携帯電話、スマートフォンなどの不特定多数が使用し得る製品の外装や各種部品に抗菌性を付与した材料が求められている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に抗菌性を付与する方法としては、無機系の抗菌剤(例えば、リン酸カルシウム、ゼオライト、リン酸ジルコニウムなどに銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属イオンを担持させたもの)に各種リン系、フェノール系などの酸化防止剤、熱安定剤、酸変性オレフィンワックスを添加する方法が開示されている(特許文献1~3参照)が、ポリカーボネート樹脂組成物の機械特性、特に耐衝撃性や難燃性は考慮されておらず、また抗菌性も十分とはいえなかった。抗菌性を向上させる方法として、銀系および亜鉛系の抗菌剤を併用する方法なども開示されている(特許文献4参照)が、ポリカーボネート樹脂に配合した場合の種々の特性が十分とはいえず、また樹脂組成物の成形品における初期の抗菌性のみに着目し、樹脂組成物の成形品を外装や部品として実環境で各種製品として使用していくうえでの抗菌性の安定発現、すなわち抗菌性持続性(水や太陽光に曝される環境での抗菌性)は議論されていなかった。ポリカーボネート樹脂の特徴を損なわず抗菌性を付与する方法として、銀イオンを溶出するガラスを含む抗菌剤を添加する方法(特許文献5参照)や亜鉛系ガラス抗菌剤と銀系リン酸ジルコニウム抗菌剤を特定の割合で配合する方法(特許文献6参照)が開示されているが、耐衝撃性の維持や一定の難燃性は認められるものの抗菌性持続性は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-240125号公報
【特許文献2】特開平10-168294号公報
【特許文献3】特開平11-323117号公報
【特許文献4】特開2007-217300号公報
【特許文献5】特開2011-137068号公報
【特許文献6】特開2017-132913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明の目的は、ポリカーボネート系樹脂本来の耐衝撃性を維持しつつ抗菌性および抗菌性持続性に優れる抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート系樹脂にABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、衝撃改質剤、銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤および無機フィラーをそれぞれ特定の配合量で添加することにより樹脂本来の良好な耐衝撃性を維持しつつ抗菌性および抗菌性持続性に優れる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、上記課題は下記構成により解決される。
(構成1)
(A)ポリカーボネート系樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)ABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(B成分)10~45重量部、(C)B成分を除く衝撃改質剤(C成分)2~10重量部、(D)銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤(D成分)0.3~3重量部および(E)無機フィラー(E成分)0.2~7重量部を含むことを特徴とする抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成2)
A成分100重量部に対し、(F)リン系難燃剤(F成分)10~20重量部および(G)ドリップ防止剤(G成分)0.1~1重量部を含むことを特徴とする前項1に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成3)
E成分がケイ酸塩鉱物(E-1成分)および金属酸化物(E-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることを特徴とする前項1または2に記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成4)
D成分がレーザー回折・散乱法により測定される平均粒径(D50)が1~3μmである銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤であることを特徴とする前項1~3のいずれかに記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成5)
D成分が銀含有量が8~12重量%である銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤であることを特徴とする前項1~4のいずれかに記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成6)
前項1~5のいずれかに記載の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、樹脂本来の高い耐衝撃性を有しつつ様々な環境下における十分な抗菌性の安定発現および持続性を満たしていることから、不特定多数が使用し接触し得る、トイレ、洗面化粧台関連のプラスチック部品、タブレット、ノートパソコン、スマートフォン、デジタルカメラ、医療用モニター、POS、事務機、プリンター、テレビなどの外装、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、各種ボタンやスイッチ、ドアノブ、アミューズメント関連のプラスチック部品、モビリティ関連の各種プラスチック部品などに有用であり、特にUL94の燃焼規格V-0となる高い難燃性も付与できることからOA・EE用途に有用である。したがって、本発明の奏する産業上の効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0010】
<A成分:ポリカーボネート系樹脂>
本発明において使用されるポリカーボネート系樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0011】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ビフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましく、汎用されている。
【0012】
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ-トをA成分として使用することが可能である。
【0013】
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis-TMC”と略称することがある)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ-ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0014】
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)~(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBCFが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10~95モル%(より好適には50~90モル%、さらに好適には60~85モル%)であり、かつBCFが5~90モル%(より好適には10~50モル%、さらに好適には15~40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20~80モル%(より好適には40~75モル%、さらに好適には45~65モル%)であり、かつBis-TMCが20~80モル%(より好適には25~60モル%、さらに好適には35~55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0015】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0016】
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報及び特開2002-117580号公報等に詳しく記載されている。
【0017】
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05~0.15%、好ましくは0.06~0.13%であり、かつTgが120~180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160~250℃、好ましくは170~230℃であり、かつ吸水率が0.10~0.30%、好ましくは0.13~0.30%、より好ましくは0.14~0.27%であるポリカーボネート。
【0018】
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62-1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0019】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0020】
前記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環式を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0021】
分岐ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物に、ドリップ防止性能などを付与できる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0022】
分岐ポリカーボネートにおける多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、2価フェノールから誘導される構成単位とかかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.01~1モル%、より好ましくは0.05~0.9モル%、さらに好ましくは0.05~0.8モル%である。
【0023】
また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造単位が生ずる場合があるが、かかる分岐構造単位量についても、2価フェノールから誘導される構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0024】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
【0025】
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法である界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマー固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などの反応形式は、各種の文献および特許公報などで良く知られている方法である。
【0026】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は、特に限定されないが、好ましくは1.8×104~4.0×104であり、より好ましくは2.0×104~3.5×104、さらに好ましくは2.2×104~3.0×104である。粘度平均分子量が1.8×104未満のポリカーボネート樹脂では、良好な機械的特性が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が4.0×104を超えるポリカーボネート樹脂から得られる樹脂組成物は、射出成形時の流動性に劣る点で汎用性に劣る。
【0027】
なお、前記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が前記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。殊に、前記範囲(5×104)を超える粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、樹脂のエントロピー弾性が向上する。その結果、強化樹脂材料を構造部材に成形する際に使用されることのあるガスアシスト成形、および発泡成形において、良好な成形加工性を発現する。かかる成形加工性の改善は前記分岐ポリカーボネートよりもさらに良好である。より好適な態様としては、A成分が粘度平均分子量7×104~3×105のポリカーボネート樹脂(A-1-1-1成分)、および粘度平均分子量1×104~3×104のポリカーボネート樹脂(A-1-1-2成分)からなり、その粘度平均分子量が1.6×104~3.5×104であるポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)(以下、“高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂”と称することがある)も使用できる。
【0028】
かかる高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)において、A-1-1-1成分の分子量は7×104~2×105が好ましく、より好ましくは8×104~2×105、さらに好ましくは1×105~2×105、特に好ましくは1×105~1.6×105である。またA-1-1-2成分の分子量は1×104~2.5×104が好ましく、より好ましくは1.1×104~2.4×104、さらに好ましくは1.2×104~2.4×104、特に好ましくは1.2×104~2.3×104である。
【0029】
高分子量成分含有ポリカーボネート樹脂(A-1-1成分)は前記A-1-1-1成分とA-1-1-2成分を種々の割合で混合し、所定の分子量範囲を満足するよう調整して得ることができる。好ましくは、A-1-1成分100重量%中、A-1-1-1成分が2~40重量%の場合であり、より好ましくはA-1-1-1成分が3~30重量%であり、さらに好ましくはA-1-1-1成分が4~20重量%であり、特に好ましくはA-1-1-1成分が5~20重量%である。
【0030】
また、A-1-1成分の調製方法としては、(1)A-1-1-1成分とA-1-1-2成分とを、それぞれ独立に重合しこれらを混合する方法、(2)特開平5-306336号公報に示される方法に代表される、GPC法による分子量分布チャートにおいて複数のポリマーピークを示すポリカーボネート樹脂を同一系内において製造する方法を用い、かかるポリカーボネート樹脂を本発明のA-1-1成分の条件を満足するよう製造する方法、および(3)かかる製造方法((2)の製造法)により得られたポリカーボネート樹脂と、別途製造されたA-1-1-1成分および/またはA-1-1-2成分とを混合する方法などを挙げることができる。
【0031】
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0032】
なお、本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20~30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mを算出する。
【0033】
本発明のポリカーボネート系樹脂としてポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を使用することも出来る。ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は下記一般式(1)で表される二価フェノールおよび下記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンを共重合させることにより調製される共重合樹脂であることが好ましい。
【0034】
【化1】
[上記一般式(1)において、R
1及びR
2は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~18のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~14のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1~4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式(2)で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。]
【0035】
【化2】
[上記一般式(2)においてR
11,R
12,R
13,R
14,R
15,R
16,R
17及びR
18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数6~14のアリール基及び炭素原子数7~20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R
19及びR
20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~14のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数7~20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1~10の整数、hは4~7の整数である。]
【0036】
【化3】
[上記一般式(3)において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R
9及びR
10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは10~300の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。]
【0037】
一般式(1)で表される二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,3’-ビフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’-ジフェニル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’-(1,3-アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。なかでも、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-スルホニルジフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-(4-ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’-スルホニルジフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記一般式(3)で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンとしては、例えば下記に示すような化合物が好適に用いられる。
【0039】
【0040】
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、オレフィン性の不飽和炭素-炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、2-アリルフェノール、イソプロペニルフェノール、2-メトキシ-4-アリルフェノールを所定の重合度を有するポリシロキサン鎖の末端に、ハイドロシリレーション反応させることにより容易に製造される。なかでも、(2-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンが好ましく、殊に(2-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサン、(2-メトキシ-4-アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、その分子量分布(Mw/Mn)が3以下であることが好ましい。さらに優れた高温成形時の低アウトガス性と低温衝撃性を発現させるために、かかる分子量分布(Mw/Mn)はより好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2以下である。かかる好適な範囲の上限を超えると高温成形時のアウトガス発生量が多く、また、低温衝撃性に劣る場合がある。
【0041】
また、高度な耐衝撃性を実現するためにヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のジオルガノシロキサン重合度(p+q)は10~300が適切である。かかるジオルガノシロキサン重合度(p+q)は好ましくは10~200、より好ましくは12~150、更に好ましくは14~100である。かかる好適な範囲の下限未満では、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体の特徴である耐衝撃性が有効に発現せず、かかる好適な範囲の上限を超えると外観不良が現れる。
【0042】
ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全重量に占めるポリジオルガノシロキサン含有量は0.1~50重量%が好ましい。かかるポリジオルガノシロキサン成分含有量はより好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。かかる好適な範囲の下限以上では、耐衝撃性や難燃性に優れ、かかる好適な範囲の上限以下では、成形条件の影響を受けにくい安定した外観が得られやすい。かかるポリジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン含有量は、1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0043】
本発明において、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は1種のみを用いてもよく、また、2種以上を用いてもよい。
また、本発明の妨げにならない範囲で、上記二価フェノール(I)、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)以外の他のコモノマーを共重合体の全重量に対して10重量%以下の範囲で併用することもできる。
【0044】
本発明においては、あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中における二価フェノール(I)と炭酸エステル形成性化合物の反応により末端クロロホルメート基を有するオリゴマーを含む混合溶液を調製する。
【0045】
二価フェノール(I)のオリゴマーを生成するにあたり、本発明の方法に用いられる二価フェノール(I)の全量を一度にオリゴマーにしてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。
このオリゴマー生成反応の方式は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。
【0046】
炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、ホスゲン等のガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
【0047】
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、オリゴマーの形成に使用する二価フェノール(I)のモル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
【0048】
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレン等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、クロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
【0049】
オリゴマー生成の反応圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2~10時間で行われる。オリゴマー生成反応のpH範囲は、公知の界面反応条件と同様であり、pHは常に10以上に調製される。
【0050】
本発明はこのようにして、末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のオリゴマーを含む混合溶液を得た後、該混合溶液を攪拌しながら分子量分布(Mw/Mn)が3以下まで高度に精製された一般式(3)で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を二価フェノール(I)に加え、該ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該オリゴマーを界面重縮合させることによりポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合体を得る。
【0051】
【化5】
(上記一般式(3)において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R
9及びR
10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは10~300の自然数である。Xは炭素数2~8の二価脂肪族基である。)
【0052】
界面重縮合反応を行うにあたり、酸結合剤を反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜追加してもよい。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ピリジン等の有機塩基あるいはこれらの混合物などが用いられる。具体的には、使用するヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)、又は上記の如く二価フェノール(I)の一部を後添加モノマーとしてこの反応段階に添加する場合には、後添加分の二価フェノール(I)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との合計モル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより過剰量のアルカリを用いることが好ましい。
【0053】
二価フェノール(I)のオリゴマーとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との界面重縮合反応による重縮合は、上記混合液を激しく攪拌することにより行われる。
【0054】
かかる重合反応においては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。末端停止剤としては一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、トリブロモフェノールなどの他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ヒドロキシフェニルアルキル酸エステル、アルキルエーテルフェノールなどが例示される。その使用量は用いる全ての二価フェノール系化合物100モルに対して、100~0.5モル、好ましくは50~2モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
【0055】
重縮合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などの触媒を添加してもよい。
かかる重合反応の反応時間は、好ましくは30分以上、更に好ましくは50分以上である。所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。
【0056】
分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサンとすることができる。かかる分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。分岐ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂中の多官能性化合物の割合は、ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂全量中、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.005~0.9モル%、さらに好ましくは0.01~0.8モル%、特に好ましくは0.05~0.4モル%である。なお、かかる分岐構造量については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0057】
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は-20~50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5~10時間で行われる。
【0058】
場合により、得られたポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。
【0059】
得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。ポリカーボネート-ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂成形品中のポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは、1~60nmの範囲が好ましい。かかる平均サイズはより好ましくは3~55nm、更に好ましくは5~50nmである。かかる好適な範囲の下限未満では、耐衝撃性や難燃性が十分に発揮されず、かかる好適な範囲の上限を超えると耐衝撃性が安定して発揮されない場合がある。
【0060】
さらに、本発明におけるポリカーボネート系樹脂として、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、すなわち再生ポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては防音壁、自動車窓、透光屋根材、および自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、導光板、メガネレンズ、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
【0061】
<B成分:ABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物はB成分としてABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する。これらの樹脂は良好な成形加工性と、適度な耐熱性および難燃性を有しているため、これら特性のバランスを保つために好ましい樹脂である。
【0062】
本発明で使用するAS樹脂とは、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物を共重合した熱可塑性共重合体である。かかるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。また芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましく使用できる。AS樹脂中における各成分の割合としては、全体を100重量%とした場合、シアン化ビニル化合物が好ましくは5~50重量%、より好ましくは15~35重量%、芳香族ビニル化合物が好ましくは95~50重量%、より好ましくは85~65重量%である。更にこれらのビニル化合物に、上記記載の共重合可能な他のビニル系化合物を混合使用することもでき、これらの含有割合は、AS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。また反応で使用する開始剤、連鎖移動剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0063】
かかるAS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、好ましくは塊状重合によるものである。また共重合の方法も一段での共重合、または多段での共重合のいずれであってもよい。またかかるAS樹脂の還元粘度としては、好ましくは0.2~1.0dl/gであり、より好ましくは0.3~0.5dl/gである。還元粘度は、AS樹脂0.25gを精秤し、ジメチルホルムアミド50mlに2時間かけて溶解させた溶液を、ウベローデ粘度計を用いて30℃の環境で測定したものである。なお、粘度計は溶媒の流下時間が20~100秒のものを用いる。還元粘度は溶媒の流下秒数(t0)と溶液の流下秒数(t)から次式によって求める。
還元粘度(ηsp/C)={(t/t0)-1}/0.5
還元粘度が0.2dl/gより小さいと衝撃が低下し、1.0dl/gを越えると流動性が悪くなる場合がある。
【0064】
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン-ブタジエン共重合体等のガラス転位温度が-30℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5~80重量%であるのが好ましく、より好ましくは8~50重量%、特に好ましくは10~30重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、特にスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95~20重量%が好ましく、特に好ましくは50~90重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5~50重量%、芳香族ビニル化合物が95~50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部について無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0065】
本発明で使用するABS樹脂においては、ゴム粒子径は0.1~5.0μmが好ましく、より好ましくは0.15~1.5μm、特に好ましくは0.2~0.8μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよい。
【0066】
またABS樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体の還元粘度は、先に記載の方法で求めた還元粘度(30℃)が好ましくは0.2~1.0dl/g、より好ましくは0.3~0.7dl/gであるものである。
【0067】
またグラフトされたシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合はジエン系ゴム成分に対して、グラフト率(重量%)で表して20~200%が好ましく、より好ましくは20~70%のものである。
【0068】
かかるABS樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、特に塊状重合によるものが好ましい。更にかかる塊状重合法としては代表的に、化学工学 第48巻第6号415頁(1984)に記載された連続塊状重合法(いわゆる東レ法)、並びに化学工学 第53巻第6号423頁(1989)に記載された連続塊状重合法(いわゆる三井東圧法)が例示される。本発明のABS樹脂としてはいずれのABS樹脂も好適に使用される。また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。
【0069】
前記AS樹脂およびABS樹脂は、アルカリ(土類)金属量が低減されたものが良好な熱安定性や耐加水分解性などの点からより好適である。これらの樹脂中のアルカリ(土類)金属量は、好ましくは100ppm未満であり、より好ましくは80ppm未満であり、更に好ましくは50ppm未満であり、特に好ましくは10ppm未満である。かかる点からも塊状重合法によるAS樹脂およびABS樹脂が好適に使用される。さらに、かかる良好な熱安定性や耐加水分解性に関連して、AS樹脂およびABS樹脂において乳化剤を使用する場合には、該乳化剤は好適にはスルホン酸塩類であり、より好適にはアルキルスルホン酸塩類である。また凝固剤を使用する場合には、該凝固剤は硫酸または硫酸のアルカリ土類金属塩が好適である。
【0070】
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、10~45重量部であり、11~42.5重量部が好ましく、12~40重量部がより好ましい。B成分の含有量が、10重量部未満および45重量部を超えた場合、共に耐衝撃性が十分に維持されない。
【0071】
<C成分:B成分を除く衝撃改質剤>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物はC成分としてB成分を除く衝撃改質剤を含有する。衝撃改質剤はブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびシリコーン・アクリル複合ゴムからなる群より選ばれる1種のゴムに(メタ)アクリル酸エステル化合物を含む少なくとも1種の化合物をグラフト重合させてなるグラフト重合体であることが好ましく、コアシェル構造を有するグラフト重合体がより好ましい。コアシェル型グラフト重合体はガラス転移温度が10℃以下のゴム成分をコアとして、(メタ)アクリル酸エステル化合物、芳香族アルケニル化合物を始めとし、これらと共重合可能なビニル化合物から選択されたモノマーの1種または2種以上をシェルとして共重合されたグラフト共重合体である。
【0072】
C成分のゴム成分としては、ブタジエン系ゴム、ブタジエン-アクリル複合ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴム、イソブチレン-シリコーン複合ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-アクリルゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴムおよびこれらの不飽和結合部分に水素が添加されたものを挙げることができるが、燃焼時の有害物質の発生懸念という点から、ハロゲン原子を含まないゴム成分が環境負荷の面において好ましい。また、ゴム成分のガラス転移温度は好ましくは-10℃以下、より好ましくは-30℃以下であり、これらの点より、ゴム成分としては特にブタジエン系ゴム、アクリル系シリコーン・アクリル複合ゴムが好ましい。複合ゴムとは、2種のゴム成分を共重合したゴムまたは分離できないよう相互に絡み合ったIPN構造をとるように重合したゴムをいう。コアシェル型グラフト重合体において、そのコアの粒子径は重量平均粒子径において240~300nmが好ましく、250~290nmがより好ましく、260~280nmがさらに好ましい。240~300nmの範囲であればより良好な耐衝撃性が達成される。また、粒子径分布はピークを2つ有する複分散タイプが望ましく、100nmおよび300nm付近にピークを二つ有する複分散タイプが特に好ましく、単一ピークの単分散タイプより良好な耐衝撃性が達成される。
【0073】
ゴム成分にコアシェル型グラフト重合体のシェルとして共重合するビニル化合物における芳香族ビニルとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、アルコキシスチレン、ハロゲン化スチレン等を挙げることができる。またアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル等を挙げることができ、メタクリル酸メチルが特に好ましい。これらの中でも特にメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステルを必須成分として含有することが好ましい。より具体的には、メタクリル酸エステルはグラフト成分100重量%中(コアシェル型重合体の場合にはシェル100重量%中)、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上含有されることが好ましい。ガラス転移温度が10℃以下のゴム成分を含有する弾性重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの重合法で製造したものであってもよく、共重合の方式は一段グラフトであっても多段グラフトであっても差し支えない。また製造の際に副生するグラフト成分のみのコポリマーとの混合物であってもよい。さらに重合法としては一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また懸濁重合法において、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法、および連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数~数十μm径の細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法などを行ってもよい。コアシェル型のグラフト重合体の場合、その反応はコアおよびシェル共に、1段であっても多段であってもよい。
【0074】
かかる重合体は市販されており容易に入手することが可能である。例えば、ゴム成分としてブタジエンゴムを主成分とするものは、三菱ケミカル(株)製の「メタブレン Eシリーズ(シェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするE-875A、シェル成分がメチルメタクリレート・スチレンを主成分とするE-870Aなど)」が挙げられる。ゴム成分としてアクリルゴムを主成分とするものは、三菱ケミカル(株)製の「メタブレン Wシリーズ(シェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするW-600Aなど)」が挙げられる。ゴム成分としてシリコーン・アクリル複合ゴムを主成分とするものは三菱ケミカル(株)製の「メタブレン Sシリーズ(シェル成分がメチルメタクリレートを主成分とするS-2001、S-2030など)」が挙げられる。
【0075】
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、2~10重量部であり、好ましくは2.5~9重量部、より好ましくは3~8重量部である。C成分の含有量が、2重量部未満では耐衝撃性が向上せず、10重量部を超えると耐熱性が低下することにより抗菌性持続性が低下する。
【0076】
<D成分:銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤>
本発明の樹脂組成物はD成分として、銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤を含有する。かかる抗菌剤における銀の担持体は、シリカゲル、ガラス(アルミナホウケイ酸ガラスなど)、ゼオライト、アパタイトおよびリン酸ジルコニウムなどが知られているが、樹脂練り込み時の樹脂分解を抑制し耐衝撃性が維持できるリン酸ジルコニウムであることが必要である。すなわち、本発明の目的を達成するにはD成分は銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤であることが必須である。担持体がリン酸ジルコニウムでない場合、樹脂に練り込む際に、特にポリカーボネート樹脂系樹脂組成物においては分解により耐衝撃性が低下するばかりでなく、銀イオンの放出が促進されることにより抗菌性持続性が低下する。
【0077】
リン酸ジルコニウムは各構成イオンによって三次元網目構造を形成する結晶性化合物であり無機イオン交換体として広く知られており、イオン交換を利用して抗菌性を有する銀イオンを結晶構造中に交換することにより本発明に使用する銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤を得ることができる。そして、かかる銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤から銀イオンが溶出することで抗菌性が発現する。銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤の合成方法としては、焼成法、湿式法および水熱法などが公知である。例えば、特開2002-53756号公報に記載の水熱合成により得られた結晶リン酸リチウムジルコニウム中のリチウムを酸処理し、プロトンに置換し、さらにプロトンを銀イオンに置換後、乾燥し、高温で焼成して製造することができる。銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤としては、東亞合成(株)製の「ノバロン AGシリーズ(AG100、AG300およびAG1100)」が市販されており、容易に入手可能である。
【0078】
本発明における銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤のレーザー回折・散乱法により測定される平均粒径(D50)は、0.5~4μmが好ましく、0.75~3.5μmがより好ましく、1~3μmがさらに好ましい。かかる平均粒径(D50)が0.5μm未満であると樹脂組成物の成形品表面における表出効率が低下し抗菌性が発現しにくくなり、5μmを超えると耐衝撃性の低下が顕著になる場合がある。
【0079】
本発明における銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤の銀含有量は、銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤100重量%に対し、2~14重量%が好ましく、5~13重量%がより好ましく、8~12重量%がさらに好ましい。かかる銀含有量が、2重量%未満であると抗菌性および抗菌性持続性が不十分となり抗菌剤の添加量増で補おうとすると耐衝撃性が低下し得るため本発明の効果を最大限に発揮することにそぐわない場合があり、14重量%を超えると樹脂の熱分解が進行しやすくなり熱安定性に悪影響を及ぼし、耐衝撃性や難燃性の低下、著しい変色が発生する場合がある。
【0080】
D成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.3~3重量部であり、好ましくは0.4~2.5重量部であり、より好ましくは0.5~2重量部である。D成分の含有量が、0.3重量部未満の場合は抗菌性および抗菌性持続性が十分に発現せず、3重量部を超えると耐衝撃性の低下が顕著になるばかりでなく、貴金属の銀を含むことからも明白であるが樹脂組成物の大幅なコストアップに繋がる。
【0081】
<E成分:無機フィラー>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物はE成分として無機フィラーを含有する。かかる無機フィラーは、ケイ酸塩鉱物(E-1成分)および金属酸化物(E-2成分)からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることが、耐衝撃性や抗菌性、抗菌性持続性の観点から好ましい。なお、E-1成分およびE-2成分は、いずれかの成分を単独で使用してもよく、双方の成分を使用してもよい。
【0082】
<E-1成分:ケイ酸塩鉱物>
本発明におけるケイ酸塩鉱物とは、少なくとも金属酸化物成分とSiO2成分とからなる鉱物であり、オルトシリケート、ジシリケート、環状シリケート、および鎖状シリケートなどが好適である。ケイ酸塩鉱物は結晶状態を取るものであり、また結晶の形状は繊維状や板状などの各種の形状を取ることができる。
【0083】
ケイ酸塩鉱物は複合酸化物、酸素酸塩(イオン格子からなる)、固溶体のいずれの化合物でもよく、更に複合酸化物は単一酸化物の2種以上の組合せ、および単一酸化物と酸素酸塩との2種以上の組合せのいずれであってもよく、更に固溶体においても2種以上の金属酸化物の固溶体、および2種以上の酸素酸塩の固溶体のいずれであってもよい。ケイ酸塩鉱物は、水和物であってもよい。水和物における結晶水の形態はSi-OHとして水素珪酸イオンとして入るもの、金属陽イオンに対して水酸イオン(OH-)としてイオン的に入るもの、および構造の隙間にH2O分子として入るもののいずれの形態であってもよい。
【0084】
ケイ酸塩鉱物は、天然物に対応する人工合成物を使用することもできる。人工合成物としては、従来公知の各種の方法、例えば固体反応、水熱反応、および超高圧反応などを利用した各種の合成法、から得られたケイ酸塩鉱物が利用できる。
【0085】
各金属酸化物成分(MO)におけるケイ酸塩鉱物の具体例としては以下のものが挙げられる。ここでカッコ内の表記はかかるケイ酸塩鉱物を主成分とする鉱物等の名称であり、例示された金属塩としてカッコ内の化合物が使用できることを意味する。
【0086】
K2Oをその成分に含むものとしては、K2O・SiO2、K2O・4SiO2・H2O、K2O・Al2O3・2SiO2(カルシライト)、K2O・Al2O3・4SiO2(白リュウ石)、およびK2O・Al2O3・6SiO2(正長石)、などが挙げられる。
【0087】
Na2Oをその成分に含むものとしては、Na2O・SiO2、およびその水化物、Na2O・2SiO2、2Na2O・SiO2、Na2O・4SiO2、Na2O・3SiO2・3H2O、Na2O・Al2O3・2SiO2、Na2O・Al2O3・4SiO2(ヒスイ輝石)、2Na2O・3CaO・5SiO2、3Na2O・2CaO・5SiO2、およびNa2O・Al2O3・6SiO2(曹長石)などが挙げられる。
【0088】
Li2Oをその成分に含むものとしては、Li2O・SiO2、2Li2O・SiO2、Li2O・SiO2・H2O、3Li2O・2SiO2、Li2O・Al2O3・4SiO2(ペタライト)、Li2O・Al2O3・2SiO2(ユークリプタイト)、およびLi2O・Al2O3・4SiO2(スポジュメン)などが挙げられる。
【0089】
BaOをその成分に含むものとしては、BaO・SiO2、2BaO・SiO2、BaO・Al2O3・2SiO2(セルシアン)、およびBaO・TiO2・3SiO2(ベントアイト)などが挙げられる。
【0090】
CaOをその成分に含むものとしては、3CaO・SiO2(セメントクリンカー鉱物のエーライト)、2CaO・SiO2(セメントクリンカー鉱物のビーライト)、2CaO・MgO・2SiO2(オーケルマナイト)、2CaO・Al2O3・SiO2(ゲーレナイト)、オーケルマナイトとゲーレナイトとの固溶体(メリライト)、CaO・SiO2(ウォラストナイト(α-型、β-型のいずれも含む))、CaO・MgO・2SiO2(ジオプサイド)、CaO・MgO・SiO2(灰苦土カンラン石)、3CaO・MgO・2SiO2(メルウイナイト)、CaO・Al2O3・2SiO2(アノーサイト)、5CaO・6SiO2・5H2O(トバモライト、その他5CaO・6SiO2・9H2Oなど)などのトバモライトグループ水和物、2CaO・SiO2・H2O(ヒレブランダイト)などのウォラストナイトグループ水和物、6CaO・6SiO2・H2O(ゾノトライト)などのゾノトライトグループ水和物、2CaO・SiO2・2H2O(ジャイロライト)などのジャイロライトグループ水和物、CaO・Al2O3・2SiO2・H2O(ローソナイト)、CaO・FeO・2SiO2(ヘデンキ石)、3CaO・2SiO2(チルコアナイト)、3CaO・Al2O3・3SiO2(グロシュラ)、3CaO・Fe2O3・3SiO2(アンドラダイト)、6CaO・4Al2O3・FeO・SiO2(プレオクロアイト)、並びにクリノゾイサイト、紅レン石、褐レン石、ベスブ石、オノ石、スコウタイト、およびオージャイトなどが挙げられる。
【0091】
さらにCaOをその成分に含むケイ酸塩鉱物としてポルトランドセメントを挙げることができる。ポルトランドセメントの種類は特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中よう熱、耐硫酸塩、白色などのいずれの種類も使用できる。更に各種の混合セメント、例えば高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどもB成分として使用できる。
またその他のCaOをその成分に含むケイ酸塩鉱物として高炉スラグやフェライトなどを挙げることができる。
【0092】
ZnOをその成分に含むものとしては、ZnO・SiO2、2ZnO・SiO2(トロースタイト)、および4ZnO・2SiO2・H2O(異極鉱)などが挙げられる。
【0093】
MnOをその成分に含むものとしては、MnO・SiO2、2MnO・SiO2、CaO・4MnO・5SiO2(ロードナイト)およびコーズライトなどが挙げられる。
【0094】
FeOをその成分に含むものとしては、FeO・SiO2(フェロシライト)、2FeO・SiO2(鉄カンラン石)、3FeO・Al2O3・3SiO2(アルマンジン)、および2CaO・5FeO・8SiO2・H2O(テツアクチノセン石)などが挙げられる。
【0095】
CoOをその成分に含むものとしては、CoO・SiO2および2CoO・SiO2などが挙げられる。
【0096】
MgOをその成分に含むものとしては、MgO・SiO2(ステアタイト、エンスタタイト)、2MgO・SiO2(フォルステライト)、3MgO・Al2O3・3SiO2(バイロープ)、2MgO・2Al2O3・5SiO2(コーディエライト)、2MgO・3SiO2・5H2O、3MgO・4SiO2・H2O(タルク)、5MgO・8SiO2・9H2O(アタパルジャイト)、4MgO・6SiO2・7H2O(セピオライト)、3MgO・2SiO2・2H2O(クリソライト)、5MgO・2CaO・8SiO2・H2O(透セン石)、5MgO・Al2O3・3SiO2・4H2O(緑泥石)、K2O・6MgO・Al2O3・6SiO2・2H2O(フロゴバイト)、Na2O・3MgO・3Al2O3・8SiO2・H2O(ランセン石)、並びにマグネシウム電気石、直セン石、カミントンセン石、バーミキュライト、スメクタイトなどが挙げられる。
【0097】
Fe2O3をその成分に含むものとしては、Fe2O3・SiO2などが挙げられる。
【0098】
ZrO2をその成分に含むものとしては、ZrO2・SiO2(ジルコン)およびAZS耐火物などが挙げられる。
【0099】
Al2O3をその成分に含むものとしては、Al2O3・SiO2(シリマナイト、アンダリューサイト、カイアナイト)、2Al2O3・SiO2、Al2O3・3SiO2、3Al2O3・2SiO2(ムライト)、Al2O3・2SiO2・2H2O(カオリナイト)、Al2O3・4SiO2・H2O(パイロフィライト)、Al2O3・4SiO2・H2O(ベントナイト)、K2O・3Na2O・4Al2O3・8SiO2(カスミ石)、K2O・3Al2O3・6SiO2・2H2O(マスコバイト、セリサイト)、K2O・6MgO・Al2O3・6SiO2・2H2O(フロゴバイト)、並びに各種のゼオライト、フッ素金雲母、および黒雲母などを挙げることができる。
【0100】
上記ケイ酸塩鉱物の中でも好適であるのはタルク、マイカおよびワラストナイトであり、特に好適であるのは耐衝撃性維持の観点からタルクである。
【0101】
(タルク)
本発明におけるタルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO2・3MgO・2H2Oで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiO2を56~65重量%、MgOを28~35重量%、H2O約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFe2O3が0.03~1.2重量%、Al2O3が0.05~1.5重量%、CaOが0.05~1.2重量%、K2Oが0.2重量%以下、Na2Oが0.2重量%以下などを含有している。タルクの粒子径は、沈降法により測定される平均粒径が0.1~15μm(より好ましくは0.2~12μm、さらに好ましくは0.3~10μm、特に好ましくは0.5~5μm)の範囲であることが好ましい。さらに、かさ密度を0.5(g/cm3)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0102】
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
【0103】
(マイカ)
マイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10~100μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは平均粒径が20~50μmのものである。マイカの平均粒径が10μm未満では剛性に対する改良効果が十分でなく、100μmを越えても剛性の向上が十分でなく、衝撃特性等の機械的強度の低下も著しく好ましくない。マイカは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmのものを好ましく使用できる。より好ましくは厚みが0.03~0.3μmである。アスペクト比としては好ましくは5~200、より好ましくは10~100のものを使用できる。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効であり、その結果樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる。
【0104】
(ワラストナイト)
ワラストナイトの繊維径は0.1~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.1~3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。
【0105】
本発明のワラストナイトは、その元来有する白色度を十分に樹脂組成物に反映させるため、原料鉱石中に混入する鉄分並びに原料鉱石を粉砕する際に機器の摩耗により混入する鉄分を磁選機によって極力取り除くことが好ましい。かかる磁選機処理によりワラストナイト中の鉄の含有量はFe2O3に換算して、0.5重量%以下であることが好ましい。
【0106】
ケイ酸塩鉱物(より好適には、マイカ、タルク、ワラストナイト)は、表面処理されていないことが好ましいが、シランカップリング剤、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの各種表面処理剤で表面処理されていてもよい。さらに各種樹脂、高級脂肪酸エステル、およびワックスなどの集束剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0107】
<E-2成分:金属酸化物>
本発明における金属酸化物とは、樹脂に練り込んで使用される充填材として公知のあらゆる金属酸化物が使用し得る。かかる金属酸化物は特にケイ酸塩鉱物以外の金属酸化物から選択される。具体例としては、特に制限はないが、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化鉛、酸化クロム、酸化コバルト、酸化タングステン、および酸化銅などが挙げられる。かかる金属酸化物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0108】
樹脂組成物に含有した際の耐衝撃性の維持、抗菌性および抗菌性持続性の向上の観点から、樹脂練り込み用に白色顔料として広く使われる酸化チタンや酸化亜鉛が好ましい。
【0109】
かかる金属酸化物の形状としては、例えば、球状、繊維状、紡錘状、棒状、針状などが挙げられるが、耐衝撃性の維持には球状が特に好ましい。かかる金属酸化物の平均一次粒径は、0.1~3μmであることが好ましく、0.15~2μmであることがより好ましい。かかる平均粒径は、0.1μm未満であると抗菌性および抗菌安定性の改善効果に乏しく、3μmを超えると耐衝撃性の低下に繋がる場合がある。
【0110】
E成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.2~7重量部であり、好ましくは0.2~6重量部、より好ましくは0.2~5重量部である。E成分の含有量が、0.2重量部未満では抗菌性および抗菌性持続性の向上効果が見られず、7重量部を超えると耐衝撃性が低下する。
【0111】
<F成分:リン系難燃剤>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物はF成分としてリン系難燃剤を含有することができる。かかるリン系難燃剤は、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物などの有機リン化合物や赤リンなどが挙げられ、その中でもリン酸エステルおよびホスファゼンが好ましい。リン酸エステルは、リン酸とアルコール化合物またはフェノール化合物とのエステル化合物をいう。かかるリン酸エステルおよびホスファゼンは難燃性の向上に効果的であり、かつ可塑化効果があるため、耐熱性の低下はあるものの、本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物の成形加工性を高められる点で有利である。
【0112】
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などが挙げられる。
【0113】
レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシリル)ホスフェートの市販品としては、大八化学工業(株)製の「PX-200」が挙げられる。レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)の市販品としては、大八化学工業(株)製の「CR-733S」が挙げられる。ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)の市販品としては、大八化学工業(株)製の「CR-741」が挙げられる。
【0114】
ホスファゼン化合物は、分子中にリン原子と窒素原子とを含有することにより、樹脂組成物に難燃性を付与することができる。ホスファゼン化合物は、ハロゲン原子を含まず、分子中にホスファゼン構造を持つ化合物であれば特に限定されない。ここでいうホスファゼン構造とは、式:-P(R2)=N-[式中、R2は有機基]で表される構造を表す。ホスファゼン化合物は一般式(4)、(5)で表される。
【0115】
【化6】
(式中、X
1、X
2、X
3、X
4は、水素、水酸基、アミノ基、またはハロゲン原子を含まない有機基を表す。また、nは3~10の整数を表す)。
【0116】
上記一般式(4)、(5)中、X1、X2、X3、X4で表されるハロゲン原子を含まない有機基としては、例えば、アルコキシ基、フェニル基、アミノ基、アリル基等が挙げられる。
【0117】
ホスファゼン化合物の市販品としては、(株)伏見製薬所製の「FP-100」「FP-110」「FP-110T」などが挙げられる。
【0118】
F成分の含有量は、A成分100重量部に対し、10~20重量部であることが好ましく、より好ましくは11~19重量部、さらに好ましくは12~18重量部である。F成分の含有量が10~20重量部の範囲を超えた場合は高度の難燃性が達成できない場合があり、かつ20重量部を超えた場合は樹脂の可塑化効果が高すぎるため銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤が樹脂組成物の成形品内部に沈降および埋没しやすくなるため成形品表面に顔出ししにくくなり抗菌性および抗菌性持続性が低下する場合があるばかりでなく、耐熱性も著しく低下し樹脂組成物の使途が制限される場合がある。
【0119】
<G成分:ドリップ防止剤>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、G成分としてドリップ防止剤を含有することができる。このドリップ防止剤の含有により、成形品の物性を損なうことなく、良好な難燃性を達成することが可能となる。
【0120】
G成分のドリップ防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。中でも好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0121】
フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万~1000万、好ましくは200万~900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。
【0122】
かかるフィブリル形成能を有するPTFEの市販品としては、例えば、ダイキン工業(株)の「ポリフロン MPA FAシリーズ(FA-500HおよびFA-5601など)」を挙げることができる。PTFEの水性分散液の市販品としては、ダイキン工業(株)製の「ポリフロン PTFE Dシリーズ(D-111およびD-210Cなど)」を代表として挙げることができる。
【0123】
混合形態のPTFEとしては、(1)PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い、共凝集混合物を得る方法(特開昭60-258263号公報、特開昭63-154744号公報などに記載された方法)、(2)PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4-272957号公報に記載された方法)、(3)PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06-220210号公報、特開平08-188653号公報などに記載された方法)、(4)PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9-95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、さらに該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11-29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これら混合形態のPTFEの市販品としては、三菱ケミカル(株)製の「メタブレン Aシリーズ(A-3750およびA-3800」などを挙げることができる。
【0124】
混合形態におけるPTFEの割合としては、PTFE混合物100重量%中、PTFEが1~60重量%が好ましく、より好ましくは5~55重量%である。PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、PTFEの良好な分散性を達成することができる場合がある。なお、上記F成分の割合は正味のドリップ防止剤の量を示し、混合形態のPTFEの場合には、正味のPTFE量を示す。
【0125】
G成分の含有量は、A成分100重量部に対して、0.1~1重量部であることが好ましく、より好ましくは0.15~0.95重量部、さらに好ましくは0.2~0.9重量部である。G成分の含有量が、0.1重量部未満では十分な難燃性が得られない場合があり、1重量部を超えると耐衝撃性が低下するばかりか、メルト粘度上昇に伴い成形加工性を損なったりPTFE凝集物が生じやすくなり成形品外観に悪影響を及ぼしたりする場合がある。
【0126】
また、本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される有機系重合体に使用されるスチレン系単量体としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基およびハロゲンからなる群より選ばれた1つ以上の基で置換されてもよいスチレン、例えば、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチル-スチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、フルオロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、およびトリブロモスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレンが例示されるが、これらに制限されない。前記スチレン系単量体は単独又は2つ以上の種類を混合して使用することができる。
【0127】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される有機系重合体に使用されるアクリル系単量体は、置換されてもよい(メタ)アクリレート誘導体を含む。具体的に前記アクリル系単量体としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、アリール基、及びグリシジル基からなる群より選ばれた1つ以上基により置換されてもよい(メタ)アクリレート誘導体、例えば(メタ)アクリロ二トリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレート、炭素数1~6のアルキル基、又はアリール基により置換されてもよいマレイミド、例えば、マレイミド、N-メチル-マレイミドおよびN-フェニル-マレイミド、マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸が例示されるが、これらに制限されない。前記アクリル系単量体は単独又は2つ以上の種類を混合して使用することができる。これらの中でも(メタ)アクリロ二トリルが好ましい。
【0128】
コーティング層に用いられる有機重合体に含まれるアクリル系単量体由来単位の量は、スチレン系単量体由来単位100重量部に対して好ましくは8~11重量部、より好ましくは8~10重量部、さらに好ましくは8~9重量部である。アクリル系単量体由来単位が8重量部より少ないとコーティング強度が低下することがあり、11重量部より多いと成形品の表面外観が悪くなり得る。
【0129】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレン系混合体は、残存水分含量が0.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.4重量%、さらに好ましくは0.1~0.3重量%である。残存水分量が0.5重量%より多いと難燃性に悪影響を与えることがある。
【0130】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレン系混合体の製造工程には、開始剤の存在下でスチレン系単量体及びアクリル単量体からなるグループより選ばれた1つ以上の単量体を含むコーティング層を分岐状ポリテトラフルオロエチレンの外部に形成するステップが含まれる。さらに、前記コーティング層形成のステップ後に残存水分含量を0.5重量%以下、好ましくは0.2~0.4重量%、より好ましくは0.1~0.3重量%となるように乾燥させるステップを含むことが好ましい。乾燥のステップは、例えば、熱風乾燥又は真空乾燥方法のような当業界に公知にされた方法を用いて行うことができる。
【0131】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレン系混合体に使用される開始剤は、スチレン系及び/又はアクリル系単量体の重合反応に使用されるものであれば制限なく使用され得る。前記開始剤としては、クミルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロゲンパーオキサイド、およびポタシウムパーオキサイドが例示されるが、これらに制限されない。本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体には、反応条件に応じて前記開始剤を1種以上使用することができる。前記開始剤の量は、ポリテトラフルオロエチレンの量及び単量体の種類/量を考慮して使用される範囲内で自由に選択され、全組成物の量を基準として0.15~0.25重量部使用することが好ましい。
【0132】
本発明におけるポリテトラフルオロエチレン系混合体は、懸濁重合法により下記の手順にて製造を行った。
まず、反応器中に水および分岐状ポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(固形濃度:60%、ポリテトラフルオロエチレン粒子径:0.15~0.3μm)を入れた後、攪拌しながらアクリルモノマー、スチレンモノマーおよび水溶性開始剤としてクメンハイドロパーオキサイドを添加し80~90℃にて9時間反応を行なった。反応終了後、遠心分離機にて30分間遠心分離を行うことにより水分を除去し、ペースト状の生成物を得た。その後、生成物のペーストを熱風乾燥機にて80~100℃にて8時間乾燥した。その後、かかる乾燥した生成物の粉砕を行い本発明のポリテトラフルオロエチレン系混合体を得た。
【0133】
かかる懸濁重合法は、特許3469391号公報などに例示される乳化重合法における乳化分散による重合工程を必要としないため、乳化剤および重合後のラテックスを凝固沈殿するための電解質塩類を必要としない。また乳化重合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン混合体では、混合体中の乳化剤および電解質塩類が混在しやすく取り除きにくくなるため、かかる乳化剤、電解質塩類由来のナトリウムイオンとカリウムイオンを低減することは難しい。本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン系混合体は、懸濁重合法で製造されているため、かかる乳化剤、電解質塩類を使用しないことから混合体中のナトリウムイオンとカリウムイオンの含有量を低減することができ、熱安定性および耐加水分解性を向上することができる。
【0134】
また、本発明ではドリップ防止剤として被覆分岐PTFEを使用することができる。被覆分岐PTFEは分岐状ポリテトラフルオロエチレン粒子および有機系重合体からなるポリテトラフルオロエチレン系混合体であり、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの外部に有機系重合体、好ましくはスチレン系単量体由来単位及び/又はアクリル系単量体由来単位を含む重合体からなるコーティング層を有する。前記コーティング層は、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの表面上に形成される。また、前記コーティング層はスチレン系単量体及びアクリル系単量体の共重合体を含むことが好ましい。
【0135】
被覆分岐PTFEに含まれるポリテトラフルオロエチレンは分岐状ポリテトラフルオロエチレンである。含まれるポリテトラフルオロエチレンが分岐状ポリテトラフルオロエチレンでない場合、ポリテトラフルオロエチレンの添加が少ない場合の滴下防止効果が不十分となる。分岐状ポリテトラフルオロエチレンは粒子状であり、好ましくは0.1~0.6μm、より好ましくは0.3~0.5μm、さらに好ましくは0.3~0.4μmの粒子径を有する。0.1μmより粒子径が小さい場合には成形品の表面外観に優れるが、0.1μmより小さい粒子径を有するポリテトラフルオロエチレンを商業的に入手することは難しい。また0.6μmより粒子径が大きい場合には成形品の表面外観が悪くなる場合がある。本発明に使用されるポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量は1×104~1×107が好ましく、より好ましくは2×106~9×106であり、一般的に高い分子量のポリテトラフルオロエチレンが安定性の側面においてより好ましい。粉末又は分散液の形態いずれも使用され得る。被覆分岐PTFEにおける分岐状ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、被覆分岐PTFEの総重量100重量部に対して、好ましくは20~60重量部、より好ましくは40~55重量部、さらに好ましくは47~53重量部、特に好ましくは48~52重量部、最も好ましくは49~51重量部である。分岐状ポリテトラフルオロエチレンの割合がかかる範囲にある場合は、分岐状ポリテトラフルオロエチレンの良好な分散性を達成することができる場合がある。
【0136】
<その他の成分>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物には、他にリン系安定剤、フェノール系安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料などを本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0137】
以下、具体的に説明する。
(i)リン系安定剤
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、加水分解を促進させない程度において、リン系安定剤を含有することができる。かかるリン系安定剤の含有により成形加工時の熱分解を抑制し、良好な耐衝撃性や難燃性の維持に効果がある。
【0138】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0139】
さらに他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0140】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができる。好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0141】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。なかでもテトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0142】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0143】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0144】
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上の混合物を用いても良い。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物およびホスホナイト化合物との併用が好ましい。
【0145】
リン系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~0.5重量部が好ましく、0.02~0.3重量部がより好ましく、0.03~0.1重量部がさらに好ましい。かかる含有量が、0.01重量部未満では成形加工時の熱分解抑制が十分にできず耐衝撃性や難燃性の維持に効果が見られない場合があり、0.5重量部を超えると成形加工時の熱分解を助長し耐衝撃性や難燃性が低下する場合がある。
【0146】
(ii)フェノール系安定剤
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物はフェノール系安定剤を含有することができる。フェノール系安定剤としては一般的にヒンダードフェノール、セミヒンダードフェノール、レスヒンダードフェノール化合物が挙げられるが、ポリカーボネート系樹脂およびスチレン系樹脂を含む樹脂に熱安定処方を施すという観点で特にヒンダードフェノール化合物が好適に用いられる。
【0147】
かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
【0148】
上記化合物の中でも、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよび3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく使用される。
【0149】
上記フェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
フェノール系安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~1重量部が好ましく、0.03~0.9重量部がより好ましく、0.05~0.8重量部がさらに好ましい。かかる含有量が、0.01重量部未満では成形加工時の熱分解抑制が十分にできず耐衝撃性や難燃性の維持に効果が見られない場合があり、1重量部を超えると成形加工時の熱分解を助長し耐衝撃性や難燃性が低下する場合がある。
【0150】
(iii)離型剤
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、成形加工時の金型離型性向上や成形品の歪み低減などのために、本発明の効果を発揮する範囲で、離型剤を含有することができる。
【0151】
かかる離型剤としては、公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物(シリコーンオイルやオルガノシロキサンなど)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。
【0152】
かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは、1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよく、炭素数としては3~32の範囲が好ましく、5~30の範囲がより好ましい。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが例示される。本発明における脂肪酸エステルでは多価アルコールがより好ましい。
【0153】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ベヘン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸がさらに好ましい。
【0154】
ステアリン酸やパルミチン酸など上記の脂肪族カルボン酸は通常、牛脂や豚脂などに代表される動物性油脂およびパーム油やサンフラワー油に代表される植物性油脂などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって、本発明の脂肪酸エステルの製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる脂肪族カルボン酸、殊にステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。
【0155】
上記脂肪酸エステルは、部分エステルおよび全エステル(フルエステル)のいずれであってもよい。しかしながら部分エステルでは通常水酸基価が高くなり高温時の樹脂の分解などを誘発しやすいことから、より好適にはフルエステルである。かかる脂肪酸エステルにおける酸価は、熱安定性の観点から20以下が好ましく、4~20がより好ましく、4~12がさらに好ましい。なお、酸価は実質的に0を取り得る。加えて、かかる脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1~30が好ましく、かかる脂肪酸エステルのヨウ素価は10以下が好ましい。なお、ヨウ素価は実質的に0を取り得る。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0156】
上記離型剤は、1種のみならず2種以上の混合物を用いても良い。
離型剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01~2重量部が好ましく、0.05~1.5重量部がより好ましく、0.1~1重量部がさらに好ましい。かかる範囲においては、耐衝撃性や難燃性を損なうことなく良好な離型性および離ロール性を付与できる。
【0157】
(iv)紫外線吸収剤
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、耐光性を付与することを目的に紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、等が挙げられる。それらの中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0158】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ルなどが例示される。また2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や、2-(2’―ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0159】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系化合物が好適な例として挙げられる。さらに、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示したヒドロキシフェニルトリアジン系化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物も例示される。
【0160】
上記紫外線吸収剤は単独を用いても良く、2種以上の混合物で用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、耐光性を必要としない場合および/または樹脂組成物の機械的特性(特に耐衝撃性など)の低下抑制を考慮する場合、実質的に0重量部が望ましい。しかしながら多くの用途では耐光性が求められるため、耐光性を付与する場合は、紫外線吸収剤の含有量は、A成分100重量部に対し、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.3重量部以下がさらに好ましい。かかる含有量が1重量部を超えると上記の如く樹脂組成物の機械的特性低下が顕著となるだけでなく紫外線吸収剤による光吸収により着色する場合がある。
【0161】
(v)染顔料
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かしたさらに良好な意匠効果を付与することができる。また極微量の染顔料による着色、かつ鮮やかな発色性を有する樹脂組成物もまた提供可能である。
【0162】
本発明における蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
【0163】
上記蛍光染料以外の染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。さらに本発明の樹脂組成物はメタリック顔料を配合して良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、各種板状フィラーに金属被膜または金属酸化物被膜を有するものが好適である。
染顔料の含有量は、A成分100重量部に対し、0.00001~1重量部が好ましく、0.00005~0.5重量部がより好ましい。
【0164】
(vi)他の樹脂やエラストマー
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の効果を発揮する範囲において、少割合含有することもできる。
【0165】
かかる他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
【0166】
かかるエラストマーとしては、例えば、イソブチレン/イソプレンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
【0167】
(vii)その他の添加剤
その他、抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物には、成形品に種々の機能の付与や特性改善のために、それ自体知られた添加物を少割合配合することができる。これら添加物は本発明の目的を損なわない限り、通常の配合量である。
【0168】
かかる添加剤としては、摺動剤(例えばPTFE粒子)、着色剤(例えば、カーボンブラックなど上記染顔料以外の顔料および染料)、光拡散剤(例えば、アクリル架橋粒子、シリコーン架橋粒子、極薄ガラスフレークなど)、無機系蛍光体(例えば、アルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、結晶核剤、ラジカル発生剤、赤外線吸収剤(熱線吸収剤)、およびフォトクロミック剤などが挙げられる。
【0169】
<抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物の製造>
本発明における抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば、A~E成分、任意にF、G成分およびその他の添加剤を、それぞれV型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などの予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどによりかかる予備混合物の造粒を行い、その後ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練した後にペレタイザー等の機器によりペレット化する方法が挙げられる。
【0170】
<抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の製造>
本発明における抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物は、通常上述の方法で得られたペレットを射出成形して各種成形品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常のコールドランナー方式の成形方法だけでなく、ランナーレスを可能とするホットランナーによって製造することも可能である。また射出成形においても、通常の成形方法だけでなく、ガスアシスト射出成形、射出圧縮成形、超高速射出成形、射出プレス成形、二色成形、サンドイッチ成形、インモールドコーティング成形、インサート成形、発泡成形(超臨界流体を利用するものを含む)、急速加熱冷却金型成形、断熱金型成形および金型内再溶融成形、並びにこれらの組合せからなる成形方法等を使用することができる。
【0171】
また本発明における樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
【0172】
さらに樹脂組成物から形成された成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。表面処理としては、加飾塗装、ハードコート、撥水・撥油コート、親水コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、電磁波吸収コート、発熱コート、帯電防止コート、制電コート、導電コート、並びにメタライジング(メッキ、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、溶射など)などの各種の表面処理を行うことができる。
【0173】
<耐衝撃性>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物からなるISO179に準拠して23℃に状態調節した試験片のノッチ付シャルピー衝撃強さは、20kJ/m2以上が好ましく、30kJ/m2以上がより好ましく、40kJ/m2以上がさらに好ましい。かかる好適な範囲未満であると、各種用途において適用が難しく、特に強度が求められる筐体や外装などへの適用は難しい。なお、かかるノッチ付シャルピー衝撃強さを測定した値の上限は、測定機の検出上限の制約以外は特に限定されないが、100kJ/m2以下で十分に性能を発揮する。
【0174】
<抗菌性>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物からなる試験片のJIS Z 2801に準拠した黄色ぶどう球菌および大腸菌に対する抗菌活性値は、それぞれ2.0以上であることが好ましく、3.0以上がより好ましく、4.0以上がさらに好ましい。かかる抗菌活性値が2.0未満であると抗菌効果が不十分である。なお、かかる試験片は状態調節や前処理は施していないものである(以下、前処理なし、または前処理なし試験片と呼ぶことがある)。
【0175】
<抗菌性持続性>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物からなる試験片に「耐水処理」(50℃の水に16時間浸漬処理)を施した耐水処理試験片および「耐光処理」(キセノンアーク灯試験機にて、300~400nmの波長範囲における照射強度60W/m2、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%および水噴霧なしの条件で100時間処理)を施した耐光処理試験片はいずれについてもJIS Z 2801に準拠した黄色ぶどう球菌および大腸菌に対する抗菌活性値は、2.0以上であることが好ましく、3.0以上がより好ましく、4.0以上がさらに好ましい。かかる抗菌活性値が2.0未満であると抗菌効果が不十分であり、各種用途での実使用における抗菌性の持続的な安定発現が達成できず、また水が存在する環境や高湿環境、太陽光など紫外線に晒される環境にて抗菌性が損なわれる可能性がある。
【0176】
<難燃性>
本発明の抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物において、F成分およびG成分を含有する場合、かかる樹脂組成物からなる試験片(厚み1.5mm)のUL 94に準拠した垂直燃焼試験での燃焼定格は、V-0が好ましい。かかる燃焼定格がV-0を下回ると、高度な難燃性を要求される用途への適用は難しい。
【実施例0177】
以下に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。特記しない限り、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法に従った。
【0178】
(抗菌性ポリカーボネート樹脂組成物の評価)
(1)耐衝撃性(ノッチ付きシャルピー衝撃強さ)
下記の方法にて作製した試験片(幅10mm、長さ80mm、厚み4.0mm)のノッチ付きシャルピー衝撃強さをISO179に準拠して測定した。
【0179】
(2)抗菌性(前処理なし、抗菌活性値)
下記の方法にて作成した角板成形品(幅150mm、長さ150mm、厚さ2mm)を切削して得られた試験片(幅50mm、長さ50mm、厚さ2mm)を用い、JIS Z 2801に準拠して以下の条件にて試験を実施した。
*菌液濃度:1/500普通ブイヨン培地(1/500NB)
*菌液滴下量:0.4mL(被覆フィルム:表面積16cm2のポリエチレンフィルム)
*培養温湿度:35℃、90%RH
*培養時間:24時間
*使用細菌:黄色ぶどう球菌(NBRC12732)、大腸菌(NBRC3972)
*清浄化方法:エタノールを含侵させた脱脂綿による拭き取り
なお、抗菌性は以下の基準にて抗菌活性値をもって評価した。
抗菌活性値=log10(無加工試験片の24時間後の生菌数)-log10(抗菌加工試験片の24時間後の生菌数)
◎:抗菌活性値が、上記使用細菌2種のいずれに対しても、3.5以上
○:抗菌活性値が、上記使用細菌2種のいずれに対しても、2.0以上
×:抗菌活性値が、上記使用細菌2種のうち少なくとも1種に対し、2.0未満
なお、抗菌加工試験片は抗菌剤を含む樹脂組成物(下記の実施例および比較例に挙げる樹脂組成物)からなる試験片を指す。一方で、無加工試験片はかかる抗菌剤を含む樹脂組成物から抗菌剤のみを除いた樹脂組成物からなる試験片を指す。
【0180】
(3)抗菌性持続性(耐水処理/耐光処理、抗菌活性値)
下記の方法にて作製した角板成形品(幅150mm、長さ150mm、厚さ2mm)を切削して得られた試験片(幅50mm、長さ50mm、厚さ2mm)に対し、下記条件の耐水処理または耐光処理を施した。
*耐水処理:バッチ内で50℃に保温したイオン交換水に16時間浸漬処理を実施した。
*耐光処理:キセノンアーク灯試験機にて、300~400nmの波長範囲における照射強度60W/m2、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%および水噴霧なしで100時間処理を実施した。なお、かかる試験片の被照射面を、JIS Z 2801準拠試験での試験面(菌接種面)とした。
それぞれ得られた耐水処理試験片および耐光処理試験片を用い、JIS Z 2801に準拠した試験を上記(2)抗菌性と同様に実施し、同様の基準で評価した。
【0181】
(4)難燃性
米国UL LLC(Underwriters Laboratories Limited Liability Company)が定めるUL 94垂直燃焼試験に従い、下記方法にて作製した厚み1.5mmの成形品(幅12.5mm、長さ125mm、厚み1.5mm)を試験片として用い、燃焼試験を実施した。難燃性は、かかる試験結果をもって燃焼定格を判断し、V-0、V-1、V-2およびnot Vに分類して評価した。
【0182】
[実施例1~17、比較例1~9]
表1および表2に示す組成にて、A~E成分およびその他の成分を、V型ブレンダーを用いて均一に混合して混合物を得た。スクリュー径30mmのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製;TEX30α-38.5BW-3V)を用いて、かかる混合物を第1供給口より計量器を用いて所定の割合となるように供給し、シリンダー温度およびダイス温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaにて溶融混錬し、ダイスより吐出されるストランドを水浴にて冷却したのちペレタイザーでストランドカットを行い、ペレットを得た。なお、ここでいう第1供給口とはダイスから最も離れた供給口である。得られたペレットの一部は、100~110℃で5時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)製;SE130EV-A)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃にて各種評価用の成形品を作製した。
各評価結果を表1および表2に示した。
【0183】
[実施例18~36]
表3に示す組成にて、F成分のF-1を除く、A~G成分およびその他の成分を、V型ブレンダーを用いて均一に混合して混合物を得た。スクリュー径30mmのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製;TEX30α-38.5BW-3V)を用いて、かかる混合物を第1供給口より計量器を用いて所定の割合となるように供給し、シリンダー温度およびダイス温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量25kg/h、ベントの真空度3kPaにて溶融混錬し、ダイスより吐出されるストランドを水浴にて冷却したのちペレタイザーでストランドカットを行い、ペレットを得た。F成分のF-1を添加する場合は、80℃に加熱した状態で液注装置を用いて第1供給口と第2供給口の間に位置する第3供給口から所定の割合になるよう押出機に供給した。なお、ここでいう第1供給口とはダイスから最も離れた供給口であり、第2供給口とは押出機のダイスと第1供給口の中間に位置する供給口である。得られたペレットの一部は、80~90℃で5時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)製;SE130EV-A)を用いて、シリンダー温度240℃、金型温度60℃にて各種評価用の成形品を作製した。
各評価結果を表3に示した。
【0184】
なお、表1~表3中の記号表記の各成分は下記の通りである。
(A成分)
A:芳香族ポリカーボネート樹脂[帝人(株)製;パンライト L-1225WP(製品名)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを繰返し骨格とする粘度平均分子量22,400の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー]
【0185】
(B成分)
B-1:ABS樹脂[東レ(株)製;トヨラック 700-314(製品名)、乳化重合法により製造されたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体]
B-2:ABS樹脂[TRINSEO HOLDINGS ASIA PTE.LTD.製;MAGNUM A371(製品名)、塊状重合法により製造されたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体]
B-3:AS樹脂[日本A&L(株)製;ライタック-A BS-207(製品名)、GPC測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量98,000のアクリロニトリル-スチレン共重合体)
【0186】
(C成分)
C-1:ブタジエン系コアシェル型グラフト重合体[(株)カネカ製;カネエース M-724(製品名)、コアがブタジエンゴムを主成分とし、シェルがメチルメタクリレートとスチレンを主成分とする、コアシェル構造を有するグラフト共重合体]
C-2:ブタジエン系コアシェル型グラフト重合体[(株)カネカ製;カネエース M-711(製品名)、コアがブタジエンゴムを主成分とし、シェルがメチルメタクリレートを主成分とする、コアシェル構造を有するグラフト共重合体)
【0187】
(D成分)
D-1:銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤[東亞合成(株)製;ノバロン AG1100(製品名)、レーザー回折・散乱法により測定された平均粒径(D50)が1.1μm、銀含有量10%]
D-2(比較用):銀担持ガラス抗菌剤[シナネンゼオミック(株)製;ゼオミック KM10D(製品名)、レーザー回折・散乱法により測定された平均粒径(D50)が10μm]
【0188】
(E成分)
(E-1成分)
E-1:タルク[(株)勝光山鉱業所製;ビクトリライト TK-RC(製品名)]
(E-2成分)
E-2-1:二酸化チタン[石原産業(株)製;タイペーク PC-3(製品名)、平均一次粒径0.21μm]
E-2-2:酸化亜鉛[レーザー回折・散乱法により測定された平均粒径(D50)が1.1μm]
【0189】
(F成分)
F-1:リン系難燃剤[大八化学工業(株)製;CR-741(製品名)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル]
F-2:リン系難燃剤[大八化学工業(株)製;PX-200(製品名)、レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシリルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル]
【0190】
(G成分)
G-1:ドリップ防止剤[ダイキン工業(株)製;ポリフロン MPA FA-500H(製品名)、ポリテトラフルオロエチレン]
G-2:ドリップ防止剤[三菱ケミカル(株)製;メタブレン A-3750(製品名)、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル共重合物で被覆されたポリテトラフルオロエチレン(ポリテトラフルオロエチレン含有量50重量%)]
【0191】
(その他の成分)
STB-1:リン系安定剤[(株)ADEKA製;アデカスタブ 2112(製品名)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト]
STB-2:フェノール系安定剤[(株)ADEKA製;アデカスタブ AO-50(製品名)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
WAX:脂肪酸エステル系離型剤[日油(株)製;ユニスター H-476-S(製品名)、ペンタエリスリトールテトラステアレート]
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
表1および表2から、ポリカーボネート系樹脂にABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、衝撃改質剤、銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤および無機フィラーを所定量含有させることにより、良好な耐衝撃性を維持しつつ抗菌性および実使用環境における抗菌性の安定発現に繋がる抗菌性持続性(樹脂組成物成形品の水および光曝露後抗菌性)に優れることがわかる。
【0196】
さらに、表3から、ポリカーボネート系樹脂にABS樹脂およびAS樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、衝撃改質剤、銀担持リン酸ジルコニウム抗菌剤および無機フィラーに加え、リン系難燃剤およびドリップ防止剤を所定量含有させることにより、良好な耐衝撃性、抗菌性および抗菌性持続性ばかりでなく高度な難燃性をも高次元で満足することがわかる。