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  • 特開-回路基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113724
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240816BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240816BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018849
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槇尾 大介
【テーマコード(参考)】
5E316
5H770
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA35
5E316BB03
5E316BB06
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC32
5E316EE01
5E316GG28
5E316HH02
5E316HH17
5E316JJ03
5E316JJ12
5H770AA21
5H770PA22
5H770QA01
5H770QA08
5H770QA22
(57)【要約】
【課題】電気抵抗や熱抵抗を低減して、低インピーダンスで且つ放熱特性に優れた電力変換装置用の回路基板を提供する
【解決手段】回路基板は、入力部を一方の面側に配置し、且つ出力部を入力部に対して反対側となる面側に配置したパワー半導体1A,1Bと、パワー半導体1A,1Bを封止して平坦な上面と平坦な下面を形成しているプリプレグ2と、パワー半導体1A,1B及びプリプレグ2によって形成された平坦な上面に貼り付けられて、パワー半導体1A,1Bと導通する第一の銅箔3と、パワー半導体1A,1B及びプリプレグ2によって形成された平坦な下面に貼り付けられて、パワー半導体1A,1Bと導通する第二の銅箔4と、第二の銅箔4の少なくとも一部に塗布された導電性接着剤5と、導電性接着剤5を介して第二の銅箔に接着するバスバー7と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部を一方の面側に配置し、且つ出力部を前記入力部に対して反対側となる面側に配置したパワー半導体と、
前記パワー半導体を封止して平坦な上面と平坦な下面を形成しているプリプレグと、
前記パワー半導体及び前記プリプレグによって形成された前記平坦な上面に貼り付けられて、前記パワー半導体と導通する第一の銅箔と、
前記パワー半導体及び前記プリプレグによって形成された前記平坦な下面に貼り付けられて、前記パワー半導体と導通する第二の銅箔と、
前記第二の銅箔の少なくとも一部に塗布された導電性接着剤と、
前記導電性接着剤を介して前記第二の銅箔に接着するバスバーと、
を備えていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記パワー半導体は、前記入力部を上面側に配置し、且つ前記出力部を下面側に配置しており、
前記第一の銅箔に接続する入力コンデンサをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記パワー半導体は、前記入力部を下面側に配置し、且つ前記出力部を上面側に配置していることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項4】
前記パワー半導体がMOSFETであり、MOSFETのソースを一方の面側に配置し、ドレインをソースが配置されている面と反対側の面側に配置していることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項5】
前記バスバーの下面に、高熱伝導性のプリプレグが貼り付けられていることを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に関する。特に、電力変換装置に用いられる主回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置とは、交流電源から入力された電流を直流に変換したり、バッテリから入力される直流電流を交流に変換したり、入力された電力を異なる電圧に昇圧または降圧して出力する装置である。具体的には、DC/DCコンバータ、インバータ等の装置が該当する。近年の電力変換装置は、高出力に対応しつつ小型化することが求められている。また、高出力化した電力変換装置のパワー半導体は発熱量が増大するため、放熱性能の向上が求められている。
【0003】
従来の主回路基板は、アルミまたは銅の基板上に絶縁層を配置し、絶縁層の上に導体である銅箔を重ねて金属基板を形成し、この金属基板上にパッケージングされたパワー半導体を搭載している。特許文献1には、半導体素子と、熱伝導性を有する絶縁層が形成された金属基板と、半導体素子を第1所定位置に配置するための第1位置決め部材を有する樹脂部材と、を備え、半導体素子は、第1位置決め部材により第1所定位置に配置された状態で、金属基板の絶縁層上に接着剤により接着されている、半導体装置が開示されている。
【0004】
近年の電力変換装置のパワー半導体モジュールには、高い電力密度に対応するための専用のモジュールが開発されている。この専用のパワー半導体モジュールは、金属の上に絶縁層を配置し、絶縁層の上に導体である銅板を重ね、その上にたとえばFET等のパワー半導体のチップを搭載してボンディングワイヤー等で接続したものを、モールドして形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3235421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、金属基板上にパッケージングされた半導体を搭載する場合、パッケージングの外側に入出力端子を配置していた。このため、入力コンデンサと主回路素子の間のインピーダンスを下げることに限界があり、結果として電気抵抗や熱抵抗を大きく下げることが困難であった。このような課題は、専用のパワー半導体モジュールであっても同様であり、モールドした構造上入出力端子の位置が制限されるため、入力コンデンサと主回路素子の間のインピーダンスを下げることに限界があった。また、基板面積の有効活用にも限界があり、小型化が困難になっていた。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、従来よりも電気抵抗や熱抵抗を低減して、低インピーダンスで且つ放熱特性に優れた電力変換装置用の回路基板を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回路基板に関する。本発明の回路基板は、入力部を一方の面側に配置し、且つ出力部を入力部に対して反対側となる面側に配置したパワー半導体と、パワー半導体を封止して平坦な上面と平坦な下面を形成しているプリプレグと、パワー半導体及びプリプレグによって形成された平坦な上面に貼り付けられて、パワー半導体と導通する第一の銅箔と、パワー半導体及びプリプレグによって形成された平坦な下面に貼り付けられて、パワー半導体と導通する第二の銅箔と、第二の銅箔の少なくとも一部に塗布された導電性接着剤と、導電性接着剤を介して第二の銅箔に接着するバスバーと、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の回路基板のパワー半導体は、入力部を上面側に配置し、且つ出力部を下面側に配置しており、第一の銅箔に接続する入力コンデンサをさらに備えていることが好ましい。
【0010】
本発明の他の形態として、回路基板のパワー半導体は、入力部を下面側に配置し、且つ出力部を上面側に配置することができる。
【0011】
本発明の回路基板は、パワー半導体をMOSFETとし、MOSFETのソースを一方の面側に配置し、ドレインをソースが配置されている面と反対側の面側に配置することができる。
【0012】
本発明の回路基板は、バスバーの下面に、高熱伝導性のプリプレグを貼り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回路基板は、入力部を一方の面側に配置し、且つ出力部を入力部に対して反対側となる面側に配置したパワー半導体をプリプレグによって封止して平坦な上面と平坦な下面を形成している、そして、平坦な上面と平坦な下面のそれぞれに銅箔を貼り付けることでパワー半導体と銅箔との間で導通をとり、その銅箔に銅バスバーを貼り付けて基板を形成することで、銅バスバーを熱拡散に利用して放熱性を高めることができる。
【0014】
本発明の回路基板は、平坦な上面と下面が形成されていることで、基板表面に他の素子等を実装することができ、基板表面を活用できる。
【0015】
本発明の回路基板は、第一の銅箔と第二の銅箔に自由にパターンを形成することができ、自由度の高い配線が可能となる。
【0016】
本発明の回路基板は、第一の銅箔に入力コンデンサを接続することでインピーダンスを下げることができ、入力コンデンサを小型化することができる。
【0017】
本発明の回路基板は、バスバーの下面に高熱伝導性のプリプレグが貼り付けられていることで絶縁性能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施例の回路基板の断面図である。
図2図2は本発明の回路基板に封止されたパワー半導体の断面図である。を
図3図3は、上面に入力コンデンサを配置し、下面にヒートシンクを配置した回路基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る回路基板を、電力変換装置の主回路基板として具現化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。さらに、主回路基板の製造方法を、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の実施形態は例示であって、特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。
【0020】
以下、本明細書において、上下左右という相対的な方向を示す用語は、図1に示した回路基板Sにおける上下左右の方向を基準として定義されているものとする。
【0021】
本実施形態の回路基板は、パワー半導体1と、プリプレグ2と、銅箔3と、バスバー7とを備えている。図1に、2個のパワー半導体1A,1Bを含んでスイッチング回路を形成した回路基板Sを示す。回路基板Sは、さらに多くのパワー半導体を含むことができる。パワー半導体としては、ダイオード、トランジスタ、またはこれらを集積した集積回路を適用することができる。
【0022】
パワー半導体1A、1Bは、プリプレグ2によって封止されている。パワー半導体1A,1Bとプリプレグ2によって、回路基板Sには、平坦な上面と下面が形成されている。本実施形態におけるプリプレグ2には、ガラスエポキシ繊維に樹脂を含浸させた材料が好適に適用される。
【0023】
第一の銅箔3は、パワー半導体1A,1Bとプリプレグ2によって形成された平坦な上面に貼り付けられ、第一の銅箔3とパワー半導体1A,1Bの入力部とが接触し、導通している。また、第二の銅箔4は、パワー半導体1A,1Bとプリプレグ2によって形成された平坦な下面に貼り付けられ、第二の銅箔4とパワー半導体1A,1Bの入力部とが接触し、導通している。第一の銅箔3および第二の銅箔4と、パワー半導体1A,1Bとは、ハーフブリッジ回路を形成する。
【0024】
パワー半導体1は、入力部を一方の面に配置し、出力部を他方の面に配置している。図2に、パワー半導体1に、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を適用した場合であって、ソース12を下面側に配置しドレイン13を上面側に配置したMOSFETを模式的に示す。ゲート11の配置は上面側と下面側のどちらに配置することもできるが、図2ではゲート11とソース12を同じ下面側に配置した例を示している。
【0025】
好適な実施形態では、第一の銅箔3および第二の銅箔4は、それぞれ、プリプレグ2に貼り付ける前にエッチングして所望のパターンを形成しておくことができる。別形態として、第一の銅箔3をパワー半導体1A,1Bとプリプレグ2の上面に貼り付けた後エッチング処理を行い、さらに第二の銅箔4をパワー半導体1A,1Bとプリプレグ2の下面に貼り付けた後にエッチング処理を行って所望のパターンを形成することが可能である。
【0026】
パターンが形成された第二の銅箔4にはバスバー7が接着されている。第二の銅箔4とバスバー7の接着のために、第二の銅箔4の大電流導通経路の形成が必要な箇所には高熱伝導性の導電性接着剤5が塗布されて、導電性接着層が形成されている。また、第二の銅箔4とバスバー7との間で絶縁が必要な箇所には、高熱伝導性のプリプレグ6が配置されている。導電性接着剤5および高熱伝導性のプリプレグ6を介して、バスバー7が第二の銅箔4に接着されている。導電性接着剤5および高熱伝導性のプリプレグ6は、共に、たとえば3.0W/mK以上の熱伝導性を有する材料が適用される。
【0027】
バスバー7には、銅バスバーが好適に適用される。パワー半導体1A,1Bは、銅バスバー7によって熱を拡散させ放熱することができるので、回路基板S全体の放熱特性が向上する。
【0028】
図3に示すように、バスバー7の下面にさらに高熱伝導性のプリプレグ6’を配置して絶縁性能を付与するとともに、プリプレグ6’の下面にヒートシンク8を接着してさらに放熱性を向上させることができる。
【0029】
また、第一の銅箔3の上面に入力コンデンサ9を配置することができる。第一の銅箔3に直接接することで、インピーダンスを下げることが可能であり、入力コンデンサ9を小型化できる。さらに、入力コンデンサ9の上面に入力基板10を配置することで、入力基板10は第一の銅箔3から最短距離で接続することになり、一層のインピーダンスの低減が実現される。
【0030】
別形態として、本発明の回路基板Sについて、パワー半導体1の入力部を下面側に配置し、且つ出力部を上面側に配置した場合であっても、同様に放熱性を高めた回路基板Sを得ることができる。
【0031】
回路基板Sは、たとえば以下の製造方法によって、製造することができる。
- パワー半導体1の入力部を一方の面側に配置し、出力部を前記入力部に対して反対側となる面側に配置するように、パワー半導体1をパッケージングする工程。
- プリプレグ2によって、パワー半導体1とプリプレグ2とが平坦な上面と平坦な下面とを形成するように、パワー半導体1をモールディングする封止工程。
- 第一の銅箔3を、パワー半導体1とプリプレグ2とで形成された平坦な上面に貼り付けて、第一の銅箔3とパワー半導体1とを導通させる工程。
- 第二の銅箔4を、パワー半導体1とプリプレグ2とで形成された平坦な下面に貼り付けて、第二の銅箔4とパワー半導体1とを導通させる工程。
- 第二の銅箔4の下面の電流導通経路となる箇所に導電性接着剤5を塗布して導電性接着剤層を形成し、第二の銅箔4の電流導通経路以外の箇所に、高熱伝導性のプリプレグを塗布する工程。
- 導電性接着剤5とプリプレグ6によって第二の銅箔4にバスバー7を接着する工程。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る回路基板は、特に電力変換装置に好適に搭載される。電力変換装置は、車両、発電機、その他各種の産業用機器または家庭用機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
S 回路基板
1,1A,1B パワー半導体
2 プリプレグ
3 第一の銅箔
4 第二の銅箔
5 導電性接着剤
6,6’ プリプレグ
7 バスバー
8 ヒートシンク
9 入力コンデンサ
10 入力基板
11 ゲート
12 ソース
13 ドレイン
図1
図2
図3