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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113726
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】燃料分離装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/03 20060101AFI20240816BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20240816BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F01M11/03 L
F01M11/03 Z
F02M25/08 L
F02M25/08 Z
F01N3/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018857
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】平野 順
(72)【発明者】
【氏名】中路 貴之
(72)【発明者】
【氏名】腰山 祐一
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 帆稀
(72)【発明者】
【氏名】新関 旬
【テーマコード(参考)】
3G015
3G091
3G144
【Fターム(参考)】
3G015BB12
3G015EA06
3G091CA07
3G091HB08
3G144DA03
3G144GA15
3G144GA23
(57)【要約】
【課題】エンジンオイルより揮発性の高い燃料を用いるエンジンにおいて、エンジンオイルに混ざった燃料をエンジンオイルから分離し、エンジンオイルの潤滑性能の低下を抑制する。
【解決手段】燃料分離装置80は、排気浄化触媒20とエンジンオイルとの間で熱交換を行う熱交換器84と、一端がエンジン運転時の油面高さよりも低い位置でオイルパン101と接続され、他端が熱交換器84と接続される第1配管81と、一端がエンジン停止時の油面高さよりも低くかつエンジン運転時の油面高さよりも高い位置でオイルパン101と接続され、他端が熱交換器84と接続される第2配管82とを備える。第1配管81の他端は第2配管82の他端の高さより低い位置で熱交換器84に接続され、第1配管81の一端は、他端の高さより低い位置でオイルパン101に接続され、第2配管82の一端は、他端の高さと同じか又はより高い位置でオイルパン101に接続される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンオイルより揮発性の高い燃料を用いるエンジンにおいて、エンジンオイルに混ざった燃料をエンジンオイルから分離する燃料分離装置であって、
前記エンジンの排気管に設けられ、排気浄化触媒とエンジンオイルとの間で熱交換を行う熱交換器と、
一端が前記エンジンのオイルパンと接続され、他端が前記熱交換器と接続されて、前記オイルパンと前記熱交換器とを連通し、当該一端が、前記オイルパンのエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時の油面高さよりも低い位置で、前記オイルパンに接続されている第1配管と、
一端が前記オイルパンと接続され、他端が前記熱交換器と接続されて、前記オイルパンと前記熱交換器とを連通し、当該一端が、前記オイルパンのエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時の油面高さよりも高い位置で、前記オイルパンに接続されている第2配管と、
を備え、
前記第1配管の他端は、前記第2配管の他端の高さより低い位置で前記熱交換器に接続されており、
前記第1配管の一端は、前記第1配管の他端の高さより低い位置で前記オイルパンに接続されており、
前記第2配管の一端は、前記第2配管の他端の高さと同じか又はより高い位置で前記オイルパンに接続されている
ことを特徴とする燃料分離装置。
【請求項2】
前記熱交換器は前記排気浄化触媒の下側に配設されており、
前記熱交換器の最下部は、前記オイルパンのエンジン運転時の油面高さと同じか又はそれよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さよりも低く、
前記熱交換器の最上部は、前記オイルパンのエンジン運転時の油面高さよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さと同じか又はそれよりも低く、
前記熱交換器の熱交換部は、前記オイルパンのエンジン運転時の油面高さよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さと同じか又はそれよりも低いことを特徴とする請求項1に記載の燃料分離装置。
【請求項3】
前記熱交換器と、蒸発燃料を吸着可能なキャニスタとを連通し、前記熱交換器で蒸発した燃料を前記キャニスタに導く第3配管をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料分離装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記排気浄化触媒の外周を覆う排気浄化触媒保持マット、及び、該排気浄化触媒保持マットの外周を覆う排気管を介して、前記排気浄化触媒とエンジンオイルとの間で熱交換可能に構成されており、
前記熱交換器の熱交換部の温度が所定温度となるように前記排気浄化触媒保持マットの厚みが設定されることを特徴とする請求項3に記載の燃料分離装置。
【請求項5】
前記熱交換器は、
前記第1配管の他端が接続される第1室と、
前記第2配管の他端が接続され、前記第1室よりも上方に配設される第2室と、
前記第1室と前記第2室とを連通する連通部と、を有し、
前記第1室の外周に冷却フィンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンオイルに混ざった燃料をエンジンオイルから分離する燃料分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガソリンの代替燃料としてアルコール燃料(アルコール又はアルコールが添加されたガソリン等)を用いるアルコールエンジンが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-27004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエンジンにおいて、例えば、燃料がシリンダの内周面に付着し、その燃料がピストンリングの隙間等からクランクケース(オイルパン)に入り、エンジンオイルと混ざることがある。そして、燃料がエンジンオイルに混ざると、エンジンオイルの粘度が低下して潤滑性能の低下を招くという問題が生じる。特に燃料がアルコール燃料の場合、燃料が多いこともあり混入量が多くなり影響が大きい。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、エンジンオイルより揮発性の高い燃料を用いるエンジンにおいて、エンジンオイルに混ざった燃料をエンジンオイルから分離し、エンジンオイルの潤滑性能の低下を抑制することが可能な燃料分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料分離装置は、エンジンオイルより揮発性の高い燃料を用いるエンジンにおいて、エンジンオイルに混ざった燃料をエンジンオイルから分離する燃料分離装置であって、エンジンの排気管に設けられ、排気浄化触媒とエンジンオイルとの間で熱交換を行う熱交換器と、一端がエンジンのオイルパンと接続され、他端が熱交換器と接続されて、オイルパンと熱交換器とを連通し、当該一端が、オイルパンのエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時の油面高さよりも低い位置で、オイルパンに接続されている第1配管と、一端がオイルパンと接続され、他端が熱交換器と接続されて、オイルパンと熱交換器とを連通し、当該一端が、オイルパンのエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時の油面高さよりも高い位置で、オイルパンに接続されている第2配管とを備え、第1配管の他端は、第2配管の他端の高さより低い位置で熱交換器に接続されており、第1配管の一端は、第1配管の他端の高さより低い位置でオイルパンに接続されており、第2配管の一端は、第2配管の他端の高さと同じか又はより高い位置でオイルパンに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンオイルより揮発性の高い燃料を用いるエンジンにおいて、エンジンオイルに混ざった燃料をエンジンオイルから分離し、エンジンオイルの潤滑性能の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る燃料分離装置が適用されたアルコールエンジンの構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る燃料分離装置の構成(エンジン停止時の状態)を示す図である。
図3】第1実施形態に係る燃料分離装置の構成(エンジン運転時の状態)を示す図である。
図4】第2実施形態に係る燃料分離装置の構成を示す図である。
図5】第3実施形態に係る燃料分離装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、特に区別する必要がある場合を除いて、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。なお、本実施形態では、燃料としてアルコール燃料を用いるアルコールエンジンを例にして説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、図1図3を併せて用いて、第1実施形態に係る燃料分離装置80の構成について説明する。図1は、燃料分離装置80が適用されたアルコールエンジン(以下、単に「エンジン」ということもある)10の構成を示す図である。図2は、燃料分離装置80の構成(エンジン停止時の状態)を示す図である。図3は、燃料分離装置80の構成(エンジン運転時の状態)を示す図である。
【0011】
エンジン10は、アルコール燃料(アルコール(メタノールやエタノール等)又はアルコールが添加されたガソリン等)を燃料として用いるアルコールエンジンである。エンジン10は、どのような型式のものでもよいが、例えば水平対向型の4気筒エンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)にアルコール燃料(以下、単に「燃料」ということもある)を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。
【0012】
エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気マニホールド圧力)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0013】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている(図1では片バンクのみ示した)。各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。吸気バルブ24を駆動する吸気カム軸と吸気カムプーリとの間には、吸気カムプーリと吸気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する吸気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブ24のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブ24の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0014】
同様に、排気カム軸と排気カムプーリとの間には、排気カムプーリと排気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する排気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブ25のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブ25の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0015】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ(図示省略)により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0016】
また、各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。
【0017】
排気管18の集合部の下流かつ排気浄化触媒20の上流には、空燃比センサ19が取り付けられている。空燃比センサ19としては、排気ガス中の酸素濃度、未燃ガス濃度に応じた信号(すなわち混合気の空燃比に応じた信号)を出力でき、空燃比をリニアに検出することができるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。
【0018】
LAFセンサ19の下流には排気浄化触媒20が配設されている。排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)及び窒素(N)に清浄化するものである。排気浄化触媒20の下流側には、排気音を低減する消音器(マフラ)43が取り付けられている。
【0019】
また、燃料タンク(図示省略)には、キャニスタ70が接続されている。キャニスタ70は、内部に活性炭等の吸着剤を有しており、燃料タンク内の蒸発燃料を一時的に吸着する。よって、燃料タンクの上部空間に溜まる燃料蒸発ガス(エバポ)は、キャニスタ70に導かれ、キャニスタ70内の活性炭等の吸着剤により一時的に吸着される。
【0020】
キャニスタ70には外気を導入するための大気ポート71が設けられている。また、キャニスタ70の上層の空間部は、インテークマニホールド11に、パージ通路72を通して連通されている。このパージ通路72には、ECU50によって開度が調節される可変流量電磁弁(以下「パージソレノイドバルブ」ともいう)73が介装されている。
【0021】
パージソレノイドバルブ73が開弁されてインテークマニホールド11における負圧がキャニスタ70のパージ通路72に作用すると、キャニスタ70内に大気ポート71から空気が導入され、キャニスタ70内の活性炭等に吸着されている燃料蒸発ガスが脱離される。脱離された燃料蒸発ガスは、大気ポート71から導入された空気と共にパージ通路72を通じてエンジン10のインテークマニホールド11に吸入される。そして、インテークマニホールド11に吸入された蒸発燃料は、エンジン10のシリンダ内で燃焼されて処理される。なお、後述する燃料分離装置80の第3配管83もキャニスタ70に接続されている(詳細は後述する)。
【0022】
上述したエアフローメータ14、LAFセンサ19、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。ここで、クランクシャフト10aの端部には、例えば、2歯欠歯した34歯の突起が10°間隔で形成されたタイミングロータ33aが取り付けられており、クランク角センサ33は、タイミングロータ33aの突起の有無を検出することにより、クランクシャフト10aの回転位置を検出する。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。
【0023】
これらのセンサは、電子制御装置(以下「ECU」という)50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ36、及び、車両の速度を検出する車速センサ37等の各種センサも接続されている。
【0024】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリ等によってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットルバルブ13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。
【0025】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力から回転角速度およびエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管負圧、アクセルペダル操作量、混合気の空燃比、及び、エンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、及び、スロットルバルブ13やパージソレノイドバルブ73等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
【0026】
ところで、エンジン本体の下部にはオイルパン101が取付けられており、オイルパン101の内部にエンジンオイルが貯留されている。エンジン10が運転(稼働)されると、オイルポンプにより、オイルパン101内のエンジンオイルがオイルストレーナ102を通して吸い上げられ、エンジン10の各部(エンジン10の動弁機構やクランクシャフト等の潤滑部)に送られる。その後、エンジン10の各部(潤滑部)に送られたエンジンオイルは、油滴となったり、エンジン10の内壁等を伝わり再びオイルパン101内に戻る(循環される)。
【0027】
また、エンジン10が停止されると、エンジン10の各部に送られていたエンジンオイルは、オイルパン101に戻る。よって、エンジン停止時のオイルパン101の油面高さは、エンジン運転時(稼働時)の油面高さよりも高くなる。
【0028】
ところで、アルコールエンジン10において、例えば、アルコール燃料がシリンダの内周面に付着し、そのアルコール燃料がピストンリングの隙間等からクランクケース(オイルパン101)に入り、エンジンオイルと混ざることがある。そして、アルコール燃料(アルコール)がエンジンオイルに混ざると、エンジンオイルの粘度が低下して潤滑性能の低下を招く。
【0029】
そのため、アルコールエンジン10は、エンジンオイルに混ざったアルコールをエンジンオイルから分離し、エンジンオイルの潤滑性能の低下を抑制する機能を有する燃料分離装置80を備えている。
【0030】
燃料分離装置80は、主として、第1配管81と、第2配管82と、第3配管83と、熱交換器84とを備えて構成されている。
【0031】
熱交換器84は、アルコールエンジン10の排気管18に設けられ、排気浄化触媒20とエンジンオイルとの間で熱交換を行う。熱交換器84は、例えば、排気浄化触媒20の下側(下面)に配設(配置)される。そして、熱交換器84は、天面(熱交換部)が排気管18及び排気浄化触媒保持マット201を介して排気浄化触媒20と接するように配設される。そのため、熱交換器84は、排気管18及び排気浄化触媒保持マット201を介して排気浄化触媒20と熱伝達可能とされている。すなわち、熱交換器84は、エンジンオイルが流入した場合に(エンジン停止時に)、排気浄化触媒20とエンジンオイルとの間で熱交換可能に構成されている。
【0032】
上述したように、熱交換器84は、排気浄化触媒20の外周を覆う排気浄化触媒保持マット(触媒担体保持マット)201、及び、該排気浄化触媒保持マット201の外周を覆う排気管18を介して、排気浄化触媒20とエンジンオイルとの間で熱交換可能に構成されている。ここで、排気浄化触媒20の温度は500℃~700℃に達するため、熱交換器84の熱交換部(エンジンオイルの受熱部)の温度(特にエンジン10が停止されたとき(直後)の温度)が、所定温度、すなわち、エンジンオイルの劣化を防止しつつアルコール(例えば、沸点78℃のエタノールや沸点65℃のメタノール等)の分離に適した温度(例えば200℃程度)となるように排気浄化触媒保持マット201の厚みが設定(調節)される。なお、排気浄化触媒保持マット(触媒担体保持マット)201は、排気浄化触媒(触媒コンバータ)20の触媒担体に巻かれて該触媒担体をケーシング(排気管18)に保持するマットである。
【0033】
熱交換器84の最下部(下端面)は、オイルパン101のエンジン運転時(稼働時)の油面高さと同じか又はそれよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さよりも低いことが好ましい。一方、熱交換器84の最上部(上端面)は、オイルパン101のエンジン運転時の油面高さよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さと同じか又はそれよりも低いことが好ましい。また、熱交換器84の熱交換部(エンジンオイルが排気管18と接触する箇所)は、オイルパン101のエンジン運転時の油面高さよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さと同じか又はそれよりも低いことが好ましい。このようにすれば、エンジン運転時に、エンジンオイルが熱交換器84内に残ることなくオイルパン101に戻される。また、エンジン停止時に、効率よく熱交換が行われる。
【0034】
また、熱交換器84は、その内部に、水平方向又は略水平方向に伸びるバッフルプレート(仕切り板)85が設けられている。すなわち、熱交換器84は、その内部が、バッフルプレート85によって上下に分けられた迷路構造とされている。そのため、エンジン停止時に、対流により、エンジンオイルが、熱交換器84の下部(第1配管81の他端)から流入し、バッフルプレート85に沿って流れた後、バッフルプレート85が切れた箇所から上部側に上がり、そこで熱交換が行われて昇温され、その後、第2配管82の他端からオイルパン101側へ流出する。
【0035】
第1配管81は、一端(一方の端部)がアルコールエンジン10のオイルパン101と接続され、他端(他方の端部)が熱交換器84と接続されて、オイルパン101と熱交換器84とを連通する。
【0036】
第1配管81は、一端(一方の端部)が、オイルパン101のエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時(稼働時)の油面高さよりも低い位置で、オイルパン101に接続されている。また、第1配管81の一端(一方の端部)は、第1配管81の他端(他方の端部)の高さ(位置)より低い位置でオイルパン101に接続されている。このように、第1配管81のオイルパン101側が低くされているため、エンジン運転時に、エンジンオイルが熱交換器84内に残ることなくオイルパン101に戻される。
【0037】
第1配管81の他端(他方の端部)は、第2配管82の他端(他方の端部)の高さ(位置)より低い位置で熱交換器84に接続されている。
【0038】
第2配管82は、一端(一方の端部)がオイルパン101と接続され、他端(他方の端部)が熱交換器84と接続されて、オイルパン101と熱交換器84とを連通する。
【0039】
第2配管82は、一端(一方の端部)が、オイルパン101のエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時(稼働時)の油面高さよりも高い位置で、オイルパン101に接続されている。また、第2配管82の一端(一方の端部)は、第2配管82の他端(他方の端部)の高さ(位置)と同じ(水平)か又はより高い位置でオイルパン101に接続されている。このように、第2配管82は、水平又はオイルパン101側が高くされているため、エンジン停止時に、熱交換により昇温されたエンジンオイルがスムーズにオイルパン101側に流れ出す。そして、エンジンオイルが熱交換器84とオイルパン101との間でスムーズに対流する。
【0040】
第3配管83は、熱交換器84の上部と、蒸発燃料を吸着可能なキャニスタ70とを連通し、熱交換器84で蒸発したアルコールをキャニスタ70に導く。そのため、熱交換器84で蒸発したアルコールは、キャニスタ70に導かれ、吸着される。そして、次のエンジン運転時に、パージされて、エンジン10で燃焼される。よって、熱交換器84で蒸発した(分離された)アルコールが環境(大気)に放出されることが防止される。
【0041】
上述したように構成されることにより、エンジン10が停止されると、エンジンオイルがオイルパン101に戻り、オイルパン101の油面が上昇してエンジンオイルが熱交換器84に流入する(図2参照)。そして、熱交換器84において排気浄化触媒20の熱でエンジンオイルが加熱(昇温)されることにより、アルコールが蒸発してエンジンオイルから分離される。なお、分離されたアルコールは第3配管83を通してキャニスタ70に送られる。
【0042】
また、熱交換器84上部(熱交換部付近)のエンジンオイルが、熱交換器84下部のエンジンオイルよりも温度が高くなることにより、第1配管81及び第2配管82を通して、オイルパン101と熱交換器84との間でエンジンオイルの対流が生じる。すなわち、熱交換器84→第2配管82→オイルパン101→第1配管81→熱交換器84の経路でエンジンオイルの対流が生じる。そのため、エンジンオイルが対流しつつ、エンジンオイル全体からアルコールが分離(除去)される。なお、エンジン10を停止すると排気浄化触媒20の温度が徐々に下がるため、エンジン停止後30分程度経過すると対流が収まり出し、その後、対流が停止する。また、アルコールの蒸発(分離)も停止する。
【0043】
一方、エンジン運転時(稼働時)には、オイルパン101からエンジンオイルが吸い上げられてエンジン各部(潤滑部)に供給されることにより、オイルパン101の油面高さが低下して、エンジンオイルが熱交換器84からオイルパン101に流出する(図3参照)。そのため、エンジンオイルの温度上昇による劣化が防止される。また、エンジンオイルがエンジン各部の潤滑等に有効利用される。
【0044】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、エンジン10が停止されると、エンジンオイルがオイルパン101に戻り、オイルパン101の油面が上昇してエンジンオイルが熱交換器84に流入する。そして、熱交換器84において排気浄化触媒20の熱でエンジンオイルが加熱(昇温)されることにより、アルコールが蒸発してエンジンオイルから分離される。また、熱交換器84上部(熱交換部付近)のエンジンオイルが、熱交換器84下部のエンジンオイルよりも温度が高くなることにより、第1配管81及び第2配管82を通して、オイルパン101と熱交換器84との間でエンジンオイルの対流が起こる。そのため、エンジンオイルを対流させつつ、エンジンオイル全体からアルコールを分離(除去)することができる。その結果、エンジンオイルに混ざったアルコールをエンジンオイルから分離し、エンジンオイルの潤滑性能の低下を抑制することが可能となる。
【0045】
一方、エンジン運転時(稼働時)には、オイルパン101からエンジンオイルが吸い上げられてエンジン各部(潤滑部)に供給されることにより、オイルパン101の油面高さが低下して、エンジンオイルが熱交換器84からオイルパン101に流出する。そのため、エンジンオイルの温度上昇による劣化を防止することができる。また、エンジンオイルをエンジン各部の潤滑等に有効利用することができる。
【0046】
本実施形態によれば、第1配管81の一端が、エンジン運転時の油面高さよりも低い位置で、オイルパン101に接続されている。また、第1配管81の一端が、第1配管81の他端の高さより低い位置でオイルパン101に接続されている。このように、第1配管81のオイルパン101側が低くされているため、エンジン運転時に、エンジンオイルを熱交換器84内に残すことなくオイルパン101に戻すことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、第2配管82の一端が、オイルパン101のエンジン停止時の油面高さよりも低く、かつ、エンジン運転時の油面高さよりも高い位置で、オイルパン101に接続されている。また、第2配管82の一端は、第2配管82の他端の高さと同じ(水平)か又はより高い位置でオイルパン101に接続されている。このように、第2配管82は、水平又はオイルパン101側が高くされているため、エンジン停止時に、熱交換により昇温されたエンジンオイルをスムーズにオイルパン101側に流出させることができる。そして、エンジンオイルを熱交換器84とオイルパン101との間でスムーズに対流させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、熱交換器84が排気浄化触媒20の下側に配設され、熱交換器84の最下部が、オイルパン101のエンジン運転時の油面高さと同じか又はそれよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さよりも低くされる。一方、熱交換器84の最上部が、オイルパン101のエンジン運転時の油面高さよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さと同じか又はそれよりも低くされる。また、熱交換器84の熱交換部が、オイルパン101のエンジン運転時の油面高さよりも高く、かつ、エンジン停止時の油面高さと同じか又はそれよりも低くされる。そのため、エンジン停止時に、熱交換器84とオイルパン101との間でエンジンオイルを円滑に対流させつつ、エンジンオイルからアルコールを分離することができる。また、エンジン運転時に熱交換器84内にエンジンオイルが残ることを防止できる(すなわち、エンジンオイルをオイルパン101に戻すことができる)。さらに、エンジン停止時に、効率よく熱交換を行うことができる。
【0049】
本実施形態によれば、熱交換器84の上部と、キャニスタ70とが連通され、熱交換器84で蒸発したアルコールがキャニスタ70に導かれる。そのため、熱交換器84で蒸発したアルコールは、キャニスタ70に導かれ、吸着される。そして、次のエンジン運転時に、パージされて、エンジン10で燃焼される。よって、熱交換器84で蒸発した(分離された)アルコールが環境(大気)に放出されることを防止できる。
【0050】
本実施形態によれば、熱交換器84の内部に、水平方向又は略水平方向に伸びるバッフルプレート85が設けられている。すなわち、熱交換器84の内部が、バッフルプレート85によって上下に分けられた迷路構造とされている。そのため、エンジン停止時に、対流により、エンジンオイルが、熱交換器84の下部(第1配管81の他端)から流入し、バッフルプレート85に沿って流れた後、バッフルプレート85が切れた箇所から上部側に上がり、そこで熱交換が行われて昇温され、その後、第2配管82の他端からオイルパン101側へ流出する。よって、熱交換器84の下部から上部へのオイルの流れ(対流)を円滑にすることができ、熱交換器上部(熱交換部)での熱交換を効率よく行うことができる。
【0051】
本実施形態によれば、排気浄化触媒20の外周を覆う排気浄化触媒保持マット201、及び、該排気浄化触媒保持マット201の外周を覆う排気管18を介して、排気浄化触媒20とエンジンオイルとの間で熱交換可能に構成されており、熱交換器84の熱交換部の温度が所定温度(例えば、200℃程度)となるように排気浄化触媒保持マット201の厚みが設定(調節)される。そのため、熱交換器84(熱交換部)の温度を、エンジンオイルの劣化を防止しつつアルコールの分離に適した温度(所定温度)に調節することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、図4を用いて第2実施形態に係る燃料分離装置80Bについて説明する。図4は、燃料分離装置80Bの構成を示す図である。なお、図4において上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0053】
上述した第1実施形態では、排気浄化触媒20の径方向に沿った断面が円形であったが、燃料分離装置80Bでは、排気浄化触媒20Bの径方向に沿った断面が楕円形に形成されている点で上述した第1実施形態と異なっている。なお、その他の構成は、上述した第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態によれば、例えば、レイアウトの要請上、排気浄化触媒のサイズを小型化(すなわち、排気浄化触媒の断面積を小さく)しなければならない場合であっても、排気浄化触媒20Bの断面を楕円形とすることにより、断面が円形の場合よりも、エンジンオイルとの接触面積(熱交換部の面積)を増やすことができる。すなわち、スペース効率を高めることができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、図5を用いて第3実施形態に係る燃料分離装置80Cについて説明する。図5は、燃料分離装置80Cの構成を示す図である。なお、図5において上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0056】
燃料分離装置80Cは、熱交換器84に代えて、熱交換器84Cを備えている点で、上述した第1実施形態に係る燃料分離装置80と異なっている。
【0057】
熱交換器84Cは、第1配管81の他端(他方の端部)が接続される第1室84C1と、第2配管82の他端(他方の端部)が接続され、第1室84C1よりも上方(鉛直上方)に配設(配置)される第2室84C2と、第1室84C1と第2室と84C2を連通する連通部84C3とを有して構成されている。
【0058】
また、第1室84C1の外周に冷却フィン84C4が設けられている(形成されている)。なお、その他の構成は、上述した第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態によれば、熱交換器84Cが、上下方向(鉛直方向に)2室に分けられており、かつ、下側の第1室84C1に冷却フィン84C4が設けられている。すなわち、下側の第1室84C1が別体とされ、冷却フィン84C4が設定されている。そのため、エンジン運転時(車両走行時)に、走行風により冷却フィン84C4が冷却されて第1室84C1が冷却されるため、熱交換器84C内(第1室84C1内)にエンジンオイルが残ったとしても、そのエンジンオイルが熱により劣化することを抑制(防止)できる。なお、アルコールの分離はエンジン停止時(車両停止時)に行われるため、冷却フィン84C4に走行風が当たることはなく、外気による積極的な冷却は行われない。よって、アルコールの蒸発(分離)は妨げられない。また、特に、本実施形態は、レイアウト上、高さ方向のスペースを確保しずらい場合に有効な構成となる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、熱交換器84を排気浄化触媒20(排気管18)の下側に配設(配置)したが、例えば、熱交換器84を排気浄化触媒20(排気管18)の側面や上側に配設(配置)してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、本発明を、駆動力源としてアルコールエンジン10を用いるエンジン車に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、駆動力源としてガソリンエンジンを用いるエンジン車や、駆動力源としてアルコールエンジン10やガソリンエンジンに加えて電動モータなどを用いるHEV(ハイブリッド車)や、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 アルコールエンジン
101 オイルパン
102 ストレーナ
18、18B 排気管
19 空燃比センサ
20、20B 排気浄化触媒
201、201B 排気浄化触媒保持マット
43 消音器(マフラ)
50 ECU
70 キャニスタ
80、80B、80C 燃料分離装置
81 第1配管
82 第2配管
83 第3配管
84、84B、84C 熱交換器
84C1 第1室
84C2 第2室
84C3 連通部
84C4 冷却フィン
85 バッフルプレート
図1
図2
図3
図4
図5