(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113733
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及び画像読取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/52 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B65H3/52 330F
B65H3/52 330G
B65H3/52 330J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018870
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】並木 政樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 健大
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA01
3F343FB01
3F343FC01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JD09
3F343KB05
3F343LC07
3F343LC25
3F343LD10
3F343LD24
3F343LD30
3F343MB03
3F343MB14
3F343MC09
3F343MC12
(57)【要約】
【課題】分離ローラー7を駆動させる駆動源と、分離ローラー7の給送ローラーに対する押圧荷重を変更する駆動源の部分において、装置の小型化を進める上で工夫の余地がある。
【解決手段】媒体搬送装置9は、媒体載置部14に載置されている媒体3を給送する給送ローラー10と、給送ローラーとの間で媒体3をニップして媒体の分離を行う分離ローラー7であって、媒体を下流側に送る第1回転方向R1と、第1回転方向とは逆の第2回転方向R2に回転可能な分離ローラー7と、分離ローラーを給送ローラーに対して押し付ける押付部材11と、押付部材の押付力Pを変更する押付力変更部13と、分離ローラーの駆動力及び押付力変更部の駆動力を生成する単一の駆動源15とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体載置部に載置されている媒体を給送する給送ローラーと、
前記給送ローラーとの間で前記媒体をニップして前記媒体の分離を行う分離ローラーであって、前記媒体を搬送方向の下流側に送る第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転可能な分離ローラーと、
前記分離ローラーを前記給送ローラーに対して押し付ける押付力を発生する押付部材と、
前記押付部材の前記押付力を変更する押付力変更部と、
前記分離ローラーの駆動力及び前記押付力変更部の駆動力を生成する単一の駆動源と、
を備えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体搬送装置において、
前記押付力変更部は、
前記押付部材を押圧する押圧部を備え、
前記押圧部が前記押付部材を押圧する押圧荷重を変更することで、前記押付部材の押付力を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記押付力変更部は、
前記押圧部を備え、軸線回りに回転可能な長尺体と、
前記長尺体に固定され、前記駆動源の動力が伝達される動力被伝達歯車と、
前記押付部材の基端を保持し、前記押付力の方向に変位可能なベース部と、を備え、
前記ベース部は、前記駆動源の回転力が前記動力被伝達歯車、前記長尺体、及び前記押圧部を介して伝達されて変位することで、前記押圧荷重を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の媒体搬送装置において、
前記駆動源から前記押付力変更部へ駆動力を伝達する伝達経路にワンウェイクラッチを備え、
前記駆動源は、
順転するとき、前記分離ローラーに前記第2回転方向に回転させる駆動力を伝達し、
逆転するとき、前記押付力変更部に前記押付力を変更させる駆動力を、前記ワンウェイクラッチを介して伝達する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の媒体搬送装置において、
前記分離ローラーは、前記駆動源から前記駆動力が伝達される駆動力伝達状態と、前記駆動力が伝達されない駆動力非伝達状態と、に切り換え可能であり、
前記駆動源の逆転により、前記分離ローラーの前記駆動力伝達状態が前記駆動力非伝達状態に切り換わる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記媒体の厚みを検知する厚み検知部と、制御部と、を備え、
前記制御部は、前記厚み検知部の検知結果に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の媒体搬送装置において、
前記厚み検知部は、前記搬送方向において前記給送ローラーの下流に設けられ、
前記制御部は、
前記給送ローラーにより前記媒体を給送し、前記厚み検知部が前記媒体の厚みを検知可能な検知位置まで搬送し、
前記媒体を前記検知位置で止めた状態で、前記厚み検知部により前記媒体の厚みを検知させる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の媒体搬送装置において、
ユーザーから媒体の情報を受け付ける制御部を備え、
前記制御部は、前記媒体の情報に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の媒体搬送装置において、
前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する制御部を備え、
前記制御部は、前記押付部材の前記押付力を変更させるとともに、前記分離ローラーの回転速度を変更させる、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体の画像を読み取る読取部と、を備える
ことを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置及び画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例として、特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、分離ローラーで薄紙から厚紙までの様々な種類の媒体に対して好適な分離を実現することができるようにすることを意図して、分離ローラー15を駆動する第1駆動源25と、荷重変更手段120とがそれぞれ設けられている。荷重変更手段120は、切換歯車125を第1位置M1と第2位置M2との間で切り換えることにより、分離ローラー15の給送ローラー14に対する押圧荷重を変更することが開示されている(段落0129)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、前記分離ローラーを駆動させる駆動源と、前記分離ローラーの前記給送ローラー14に対する押圧荷重を変更する駆動源の部分において、装置の小型化を進める上で工夫の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る媒体搬送装置は、媒体載置部に載置されている媒体を給送する給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で前記媒体をニップして前記媒体の分離を行う分離ローラーであって、前記媒体を下流側に送る第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転可能な分離ローラーと、前記分離ローラーを前記給送ローラーに対して押し付ける押付部材と、前記押付部材の押付力を変更する押付力変更部と、前記分離ローラーの駆動力及び前記押付力変更部の駆動力を生成する単一の駆動源とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る画像読取装置は、後述する態様に記載の媒体搬送装置と、前記媒体の画像を読み取る読取部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る画像読取装置の内部構成を表す図。
【
図2】同実施形態1の動力伝達経路を示す要部平面図。
【
図3】同実施形態1の動力伝達経路を示す要部斜視図。
【
図4】同実施形態1の動力伝達経路を示す異なる方向から見た要部斜視図。
【
図5】同実施形態1の動力伝達経路を示す要部側断面図。
【
図8】同実施形態1の押付力変更部の動作を説明する図。
【
図9】同実施形態1のカムの位置をセンシングするセンサー部分の要部斜視図。
【
図10】実施形態1で媒体分離モードの切換えの自動化を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について先ず概略的に説明する。
上記課題を解決するため、本発明に係る媒体搬送装置の第1の態様は、媒体載置部に載置されている媒体を給送する給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で前記媒体をニップして前記媒体の分離を行う分離ローラーであって、前記媒体を下流側に送る第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転可能な分離ローラーと、前記分離ローラーを前記給送ローラーに対して押し付ける押付部材と、前記押付部材の押付力を変更する押付力変更部と、前記分離ローラーの駆動力及び前記押付力変更部の駆動力を生成する単一の駆動源と、を備えることを特徴とする。
ここで、「前記分離ローラーの駆動力及び前記押付力変更部の駆動力を生成する単一の駆動源」における「前記分離ローラーの駆動力」とは、前記分離ローラーを回転させる動力を意味し、「前記押付力変更部の駆動力」とは、前記押付力変更部を前記押付部材の前記押付力を変更するように動作させる動力を意味する。
【0009】
本態様によれば、前記分離ローラーを前記給送ローラーに対して押し付ける押付部材と、前記押付部材の押付力を変更する押付力変更部と、前記分離ローラーの駆動力及び前記押付力変更部の駆動力を生成する単一の駆動源とを備える。これにより、前記分離ローラーと前記押付力変更部とを駆動させる駆動力が共通の駆動源により伝達されるので、即ち駆動源が1つで済むので、厚み等の性状が異なる媒体を搬送する装置の小型化を進めやすい。
【0010】
本発明に係る媒体搬送装置の第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記押付力変更部は、前記押付部材を押圧する押圧部を備え、前記押圧部が前記押付部材を押圧する押圧荷重を変更することで、前記押付部材の押付力を変更することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記押付力変更部は、前記押圧部が前記押付部材を押圧する押圧荷重を変更することで、前記押付部材の押付力を変更する。これにより、前記押付部材の押付力の変更を簡単な構造で実現することができる。
【0012】
本発明に係る媒体搬送装置の第3の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記押付力変更部は、前記押圧部を備え、軸線回りに回転可能な長尺体と、前記長尺体に固定され、前記駆動源の動力が伝達される動力被伝達歯車と、前記押付部材の基端を保持し、前記押付力の方向に変位可能なベース部と、を備え、前記ベース部は、前記駆動源の回転力が前記動力被伝達歯車、前記長尺体、及び前記押圧部を介して伝達されて変位することで、前記押圧荷重を変更することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記押付力変更部は、前記押付部材の基端を保持し、前記押付力の方向に変位可能なベース部を備え、このベース部は、前記駆動源の回転力が前記動力被伝達歯車、前記長尺体、及び前記押圧部を介して伝達されて変位することで、前記押付部材を押圧する押圧荷重を変更する。これにより、前記押付力変更部による前記押圧荷重の変更を簡単な構造で実現することができる。
【0014】
本発明に係る媒体搬送装置の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、前記駆動源から前記押付力変更部へ駆動力を伝達する伝達経路にワンウェイクラッチを備え、前記駆動源は、順転するとき、前記分離ローラーに前記第2回転方向に回転させる駆動力を伝達し、逆転するとき、前記押付力変更部に前記押付力を変更させる駆動力を、前記ワンウェイクラッチを介して伝達することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記駆動源は、順転するときは前記分離ローラーに前記第2回転方向に回転させる駆動力を伝達し、逆転するときは前記押付力変更部に前記押付力を変更させる駆動力を、前記ワンウェイクラッチを介して伝達する。これにより、前記駆動源の前記順転を前記逆転に切り換えることで、前記駆動源の駆動力を前記押付力変更部に伝達する状態を簡単に実現することができる。即ち、前記押付部材の前記押付力の変更を、前記駆動源の前記順転を前記逆転に切り換えるだけで容易に行うことができる。
更に、前記ワンウェイクラッチを備えるので、前記駆動源が前記順転に変わったときには前記駆動力が前記押付力変更部に伝達されない状態になる。即ち、前記押付力変更部の状態はそのまま維持され、以って前記押付部材の前記押付力は変更された状態で維持される。
【0016】
本発明に係る媒体搬送装置の第5の態様は、第4の態様に従属する態様であって、前記分離ローラーは、前記駆動源から前記駆動力が伝達される駆動力伝達状態と、前記駆動力が伝達されない駆動力非伝達状態とに切り換え可能であり、前記駆動源の逆転により、前記分離ローラーの前記駆動力伝達状態が前記駆動力非伝達状態に切り換わることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記駆動源の逆転により、前記分離ローラーの前記駆動力伝達状態が前記駆動力非伝達状態に切り換わる。これにより、前記分離ローラーを、前記駆動力非伝達状態にして、即ち前記駆動力が伝達されないで回転フリーな状態にしての使用が可能になる。具体的には、ユーザーが媒体を一枚ずつ送る、即ち分離処理の必要が無い所謂「手差しモード」での給紙を容易に実現することができる。
【0018】
本発明に係る媒体搬送装置の第6の態様は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、前記媒体の厚みを検知する厚み検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記厚み検知部の検知結果に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記制御部は、前記厚み検知部の検知結果に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する。これにより、前記媒体の厚みに応じて前記押付部材の前記押付力を自動的に変更することが可能になる。
【0020】
本発明に係る媒体搬送装置の第7の態様は、第6の態様に従属する態様であって、前記厚み検知部は、前記搬送方向において前記給送ローラーの下流に設けられ、前記制御部は、前記給送ローラーにより前記媒体を給送し、前記厚み検知部が前記媒体の厚みを検知可能な検知位置まで搬送し、前記媒体を前記検知位置で止めた状態で、前記厚み検知部により前記媒体の厚みを検知させることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記制御部は、前記給送ローラーにより前記媒体を前記厚み検知部の厚み検知位置まで搬送し、前記媒体を前記検知位置で止めた状態で前記媒体の厚みを検知させる。これにより、前記媒体の厚みをより精度よく検知することができる。
【0022】
本発明に係る媒体搬送装置の第8の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、ユーザーから媒体の情報(紙種、厚み)を受け付ける制御部を備え、前記制御部は、前記媒体の情報に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記制御部は、ユーザーから受け付ける前記媒体の紙種や厚み等の情報に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する。これにより、前記媒体の厚みを検知する手段を設けなくても、ユーザーに入力された前記媒体の情報に基づいて、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更することができる。
【0024】
本発明に係る媒体搬送装置の第9の態様は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つの態様に従属する態様であって、前記押付力変更部を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する制御部を備え、前記制御部は、前記押付部材の前記押付力を変更させるとともに、前記分離ローラーの回転速度を変更させることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、前記制御部は、前記押付部材の前記押付力を変更させるとともに、前記分離ローラーの回転速度を変更させる。これにより、前記分離ローラーの回転速度を媒体に合わせて変更することで、一層適切な分離を行うことができる。
【0026】
また、本発明に係る画像読取装置の態様は、第1の態様から第9の態様のいずれか一つの態様の媒体搬送装置と、前記媒体の画像を読み取る読取部とを備えることを特徴とする。
本態様によれば、画像読取装置として、前記媒体搬送装置における各態様の効果を得ることができる。
【0027】
[実施形態]
以下、本発明に係る媒体搬送装置の実施形態と、この媒体搬送装置を備える画像読取装置について、図面に基づいて具体的に説明する。
以下の説明においては、互いに直交する3つの軸を、各図に示すように、それぞれX軸、Y軸、Z軸とする。3つの軸(X,Y,Z)の矢印の示す方向が各方向の+方向であり、その逆が-方向である。Z軸方向は鉛直方向即ち重力が作用する方向に相当し、+Z方向が鉛直上方を示し、-Z方向が鉛直下方を示す。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に相当する。+Y方向が装置の前方向を示し、-Y方向が装置の後方向を示す。+X方向が装置の右方向を示し、-X方向が装置の左方向を示す。
【0028】
[実施形態1]
<画像読取装置>
本実施形態の画像読取装置1は、媒体の画像を読み取り可能なスキャナーである。ここで、前記画像は、前記媒体に視覚的に記録されているものを意味し、例えば文字、図形、表、絵、写真等である。前記媒体は、シートに限らず、カード、冊子等も含まれる。
図1に示したように、画像読取装置1は、媒体3の画像を読み取る読取部51,52と、媒体3を搬送経路2に沿って搬送方向Fに搬送し、搬送方向Fにおいて、読取部51の上流に設けられた第1搬送ローラー4と、読取部51より下流に位置する他の読取部52の上流に設けられた第2搬送ローラー6と、読取部52の下流に設けられた第3搬送ローラー8とを備えている。
第1搬送ローラー4の搬送方向Fにおける上流には、給送ローラー10と分離ローラー7のローラー対が配置されている。給送ローラー10は、不図示の駆動源の動力によって回転する駆動ローラーであり、媒体3を搬送方向Fに向かって搬送する。分離ローラー7は、後述する駆動源15の動力によって回転する駆動ローラーであり、複数枚の媒体3から媒体を1枚に分離するローラーである。
ここで、分離ローラー7はリタードローラーが使われている。分離ローラー7は、駆動源15の動力によって媒体3を搬送方向Fの上流側に送る第2回転方向R2に回転する。分離ローラー7は、不図示のトルクリミッタを備えており、分離された媒体3を搬送する場合トルクリミッタに設定値を超えるトルクがかかるので媒体3を搬送方向Fに下流側に送る第1回転方向R1に回転する。
分離ローラー7の上流にはピックローラー12が配置されている。ピックローラー12は、給送ローラー10と同じ駆動源の動力によって回転する駆動ローラーであり、媒体3を搬送方向Fに向かって搬送する。
本実施形態では、第3搬送ローラー8の下流に湾曲反転経路18が設けられている。湾曲反転経路18には第4搬送ローラー20、第5搬送ローラー22、排出ローラー24が、搬送方向Fに沿ってこの順番で配置されている。
【0029】
図1において、符号14は読取対象となる媒体3をセットする媒体載置部であり、符号16は読取が済んだ媒体3が排出される排出受け部である。
媒体載置部14は、上下に移動するように構成されている。媒体載置部14にセットされている媒体3を搬送方向Fに送る場合は、先ず媒体載置部14が上方(+Z方向)に移動し、セットされている媒体3の最上位に位置するものがピックローラー12に接触した状態で停止する。その状態でピックローラー14が回転することで媒体3が搬送方向Fに送られ、媒体3の先端が給送ローラー10と分離ローラー7のローラー対のニップ位置26に達する。
【0030】
媒体3が複数枚で送られる重送状態の場合は、分離ローラー7によって1枚に分離され、その1枚が第1搬送ローラー4により搬送方向Fに搬送され、読取部51で媒体3の第1面の画像の読み取りが実行される。更に、読取部51で読み取りが実行された媒体3は、第2搬送ローラー6により搬送され、読取部52で媒体3の第1面と反対側の第2面の画像の読み取りが実行される。
読取部52で読み取りが実行された媒体3は、第3搬送ローラー8によって湾曲反転経路18に送られ、第4搬送ローラー20、第5搬送ローラー22により搬送され、排出ローラー24によって排出受け部16には排出される。
【0031】
<媒体搬送装置>
本実施形態では、画像読取装置1は媒体搬送装置9を備えている。媒体搬送装置9の構造について、
図1から
図8に基いて以下説明する。
媒体搬送装置9は、
図1に示したように、媒体載置部14に載置されている媒体3を給送する給送ローラー10と、給送ローラー10との間で媒体3をニップして媒体3の分離を行う分離ローラー7とを備えている。分離ローラー7は、上記の通りリタードローラーであり、媒体3を搬送方向Fの下流側に送る第1回転方向R1と、第1回転方向R1とは逆の第2回転方向R2に回転可能である。更に、媒体搬送装置9は、分離ローラー7を給送ローラー10に対して押し付ける押付力P(
図8)を発生する押付部材11と、押付部材11の押付力Pを変更する押付力変更部13と、分離ローラー7の駆動力及び押付力変更部13の駆動力を生成する単一の駆動源15とを備えている。
ここで、分離ローラー7の駆動力とは、分離ローラー7を回転させる動力を意味し、押付力変更部13の駆動力とは、押付力変更部13を押付部材11の押付力Pを変更するように動作させる動力を意味し、単一の駆動源15から伝達される。
次に、駆動源15から分離ローラー7への動力伝達経路と、駆動源15から押付力変更部13への動力伝達経路について説明する。
【0032】
≪駆動源から分離ローラーへの動力伝達経路≫
図2から
図4に基づいて駆動源15から分離ローラー7への動力伝達経路について説明する。
駆動源15を成すモーターの動力、即ち回転力が、モーターピニオン28から第1歯車30、第2歯車32、第3歯車34、第4歯車36に順次伝わる。第1歯車30、第2歯車32、第3歯車34及び第4歯車36は、動力の伝達を受ける大径歯車と、前記動力を次に伝える小径歯車から成る段付き歯車で形成されている。第1歯車30と第3歯車34は、軸38に取り付けられている。第2歯車32と第4歯車36は、軸40に取り付けられている。
第4歯車36は大径歯車361と小径歯車362から成る。大径歯車361はワンウェイクラッチ17にもギア接続されておりワンウェイクラッチ17に動力を伝達する。一方、小径歯車362は接続歯車19にギア接続されていて接続歯車19に動力を伝達する。接続歯車19は第5歯車42にギア接続されていて第5歯車42に動力を伝達する。第5歯車42は一体に回転する伝達歯車44(
図4)を有している。
図4に示したように、伝達歯車44は、第6歯車46を介して第7歯車48(
図4)に動力を伝達する。第7歯車48は、分離ローラー7が一体に回転するように固定されている軸50に固定されている。駆動源15の動力が上記各伝達を経て第7歯車48に伝わると軸50が回転し、それにより分離ローラー7が回転する。
【0033】
≪駆動源から押付力変更部への動力伝達経路≫
図2から
図4に基づいて駆動源15から押付力変更部13への動力伝達経路について説明する。
駆動源15からワンウェイクラッチ17までの動力伝達経路は上記と同じである。ワンウェイクラッチ17は、駆動源15が順転する場合、即ち分離ローラー7を第2回転方向R2に回転させる動力を伝達する場合は空転し、同軸で位置する伝達歯車54に動力が伝わらない。即ち、ワンウェイクラッチ17の空転によってワンウェイクラッチ17より動力伝達方向における下流には動力が伝達されない。
一方、駆動源15が逆転する場合は、ワンウェイクラッチ17と伝達歯車54が接続状態となって一体に回転する。伝達歯車54は第8歯車56にギア接続されていて第8歯車56に動力を伝達する。第8歯車56は、押付力変更部13が備える動力被伝達歯車21にギア接続されていて、動力被伝達歯車21に動力が伝達される。
次に、押付力変更部13の構成を説明する。
【0034】
<押付力変更部>
図5から
図8に示したように、押付力変更部13は、押付部材11を押圧する押圧部23を備えている。押付部材11は、ここではコイルスプリングで構成され、その一端が分離ローラー7を保持するホルダー25に接続されて保持されている。
本実施形態では、
図6に示したように、押付力変更部13は、押圧部23を備え、軸線27の回りに回転可能な長尺体29と、長尺体29に固定され、駆動源15の動力が伝達される動力被伝達歯車21(
図5、
図6)と、押付部材11の基端を基端保持部47で保持し、押付力Pの方向に変位可能なベース部31とを備えている。ベース部31は、駆動源15の回転力が動力被伝達歯車21、長尺体29、及び押圧部23を介して伝達されて変位することで、押付部材11を押圧する押圧荷重Lを変更する。この押圧荷重Lの変更により、押付部材11の押付力Pを変更することができる。
【0035】
図7、
図8に示したように、ベース部31は、回動軸33に回動軸33を回動支点として自由端35が回動可能に設けられている。回動軸33は、媒体搬送装置9の本体フレームに取り付けられ、X軸方向に延設されている。ベース部31は、基端37が回転軸33に取り付けられている。ベース部31には板バネ39が固定されている。
図8の左端の図と右端の図に示したように、押圧部23の押圧面41が、板バネ39の押圧作用点43に接触した状態で押すことで、弾性的にバランスした状態における押圧荷重Lが発生する。一方、
図8の中央の図に示したように、押圧部23の押圧面41が板バネ39の押圧作用点43から外れてベース部31の上面45に接した状態になると、板バネ39の弾性力がかからなくなるので押圧荷重Lが小さくなる。
【0036】
また、本実施形態では、分離ローラー7は、駆動源15から前記駆動力が伝達される駆動力伝達状態と、前記駆動力が伝達されない駆動力非伝達状態と、に切り換え可能に構成されている。
図5と
図8の左端と中央の両方の図の状態が駆動力伝達状態に対応する。
図8の右端の図の状態が駆動力非伝達状態に対応する。
駆動源15の逆転により、分離ローラー7の前記駆動力伝達状態が前記駆動力非伝達状態に切り換わるように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0037】
図5に示したように、本実施形態では、接続歯車19は、その軸53がL字形状の揺動アーム55の一端57に取り付けられている。
図5と
図8の左端と中央の両方の図は、接続歯車19が第5歯車42と噛み合っている状態、即ち駆動力伝達状態である。
揺動アーム55は第4歯車36の軸40に取り付けられている。軸40は揺動アーム55が揺動する際の揺動支点となる。L字形状の揺動アーム55の他端59にはカムフォロア61が形成されている。一方、押付力変更部13の動力被伝達歯車21の側面63にはカム65が突設されている。
動力被伝達歯車21が駆動源15から逆転の動力が伝達されて軸線27を回転中心として時計回りに回転すると、カム65が同方向に、即ち時計回りの周方向に移動する。カム65の前記周方向への移動により、カム65がカムフォロア61と接触する位置が
図8に示したように変わる。即ち、カム65が周方向に移動すると、カム65のカムフォロア61との接触位置が移動する。これにより、駆動源15からの動力は、カムフォロア61を介して揺動アーム55に伝達され、揺動アーム55が軸40を揺動支点として揺動する。この揺動アーム55の揺動により、接続歯車19が第5歯車42から離れた状態(
図8の右端の図)に、即ち駆動力非伝達状態に変えることができる。この点については、追って更に詳しく説明する。
【0038】
本実施形態では、
図1に示したように、媒体3の厚みを検知する厚み検知部49と、制御部71を備えている。ここでは、厚み検知部49は、給送ローラー10の搬送方向Fにおける下流の位置に配置されているが、給送ローラー10の上流に設けられていてもよい。厚み検知部49は、媒体の厚みの検知結果から、媒体3の種類がいわゆる普通紙である、厚紙である、薄紙である等の媒体の種類の区別が可能なものが使われる。ここでは、厚み検知部49として超音波式センサーが使われており、媒体3の重送状態の検知も可能となっている。尚、厚み検知部49は、媒体3の厚みが検知できればよく、光学式センサーでもよい。
制御部71は、厚み検知部49の検知結果に基づいて、押付力変更部13を駆動させて押付部材11の押付力Pを変更するように構成されている。換言すると、制御部71は、厚み検知部49の検知結果に基づいて、分離ローラー7による媒体の分離モードを自動で切り換えることが可能に構成されている。この自動切換えの点については、追って更に詳しく説明する。
【0039】
ここでは、制御部71は、給送ローラー10により媒体3を給送し、厚み検知部49が媒体3の厚みを検知可能な検知位置まで搬送し、媒体3を前記検知位置で厚み検知部49により媒体3の厚みを検知させるように構成されている。尚、制御部71は、給送ローラー10により媒体3を給送し、厚み検知部49が媒体3の厚みを検知可能な検知位置まで搬送し、媒体3を前記検知位置で止めた状態で、厚み検知部49により媒体3の厚みを検知させるように構成してもよい。
制御部71は、CPU、フラッシュROM、及びRAMを備えている。CPUはフラッシュROMに格納されたプログラムに従って各種演算処理を行い、画像読取装置1全体の動作を制御する。記憶手段の一例であるフラッシュROMは読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリである。記憶手段の一例であるRAMには、一時的に各種情報が格納される。
【0040】
<変形例>
媒体3が先行媒体及び後続媒体を含む複数枚の状態で搬送経路2を搬送される場合に、厚み検知部49により検知された前記先行媒体の厚みに基づいて、前記後続媒体に対する押付力変更部13の押付力Lを変更させるように構成してもよい。
ジャム等の搬送エラーは、前記後続媒体の先端がめくれたり折れたりすることにより生じやすい。本構成によれば、前記先行媒体の厚みに応じて前記後続媒体に対する押付力Lを変更するので、分離をより適切に行うことができる。
尚、画像読取の1ジョブ終了後には、押付力変更部13の状態を通常モードに戻すことが望ましい。
【0041】
<実施形態1の動作の説明>
≪分離ローラーの分離モードの切り換え≫
図8の左端の図は通常分離モードに対応する状態であり、
図8の中央の図は薄媒体分離モードに対応する状態である。ここで、通常分離モードとは、いわゆる普通紙や厚紙と称される媒体3を分離ローラー7で適切に分離することができるモードである。薄媒体分離モードとは、普通紙より厚みが薄い薄紙と称される媒体3を分離ローラー7で紙ジャム等の発生の虞を低減した状態で分離することができるモードである。
通常分離モードも薄媒体分離モードも、媒体載置部14上から媒体3の搬送がピックローラー12によって始まり、分離ローラー7のところで分離して一枚の媒体3を搬送方向Fに搬送する場合は、駆動源15は順転している。
【0042】
≪通常分離モードから薄媒体分離モードへの切り換え≫
通常分離モードから薄媒体分離モードに切り換える場合は、駆動源15を順転ではなく逆転させる。この逆転方向の動力は、上記した動力伝達経路を介してワンウェイクラッチ17まで伝わり、逆転の場合は更に伝達歯車54に伝わり、第8歯車56を介して押付力変更部13が備える動力被伝達歯車21に伝わる(
図3)。これにより押付力変更部13が駆動し、押圧部23の位置は、
図8の左端の図に示した位置から回動して
図8の中央の図に示した位置に変わる。この状態になると駆動源15の逆転は制御部71の制御を受けて停止する。押圧部23がこの状態になると、押圧部23の押圧面41が板バネ39の押圧作用点43から外れ、圧縮状態にある押付部材11の弾性反力によってベース部31は回動軸33を回動支点として自由端35が-Z方向に回動する。換言すると、ベース部31は押付部材11の押付力Pの方向であって分離ローラー7から離れる方向に変位する。
そして、押圧部23の押圧面41がベース部31の下面45に接した状態になると、ベース部31は-Z方向への回動が止まる。ベース部31の前記-Z方向への回動により、押付部材11を押圧する押圧荷重Lが通常分離モードより小さくなる。これにより、圧縮状態の押付部材11はその全長が伸びることができ、その結果、押付力Pが小さくなり、薄媒体分離モードの状態になる。
【0043】
この状態で駆動源15を順転させることで、薄媒体分離モードでの媒体3の分離が行われる。この順転の動力はワンウェイクラッチ17まで伝達されるが、押付力変更部13には伝わらないので、薄媒体分離モード、即ち
図8の中央の図に示した押圧部23とベース部31の接触状態はそのまま維持される。以って、薄紙に適した押付力Pでの分離動作を分離ローラー7に行わせることができる。
【0044】
≪薄媒体分離モードから通常分離モードへの切り換え≫
薄媒体分離モードから通常分離モードに切り換える場合は、駆動源15を逆転させて動力被伝達歯車21を介して長尺体29を軸線27回りに回転させ、押圧部23を
図8の中央の図の位置から更に時計回りに回動させる。そして、押圧部23を
図8の左端の図の位置まで回動させて止める。この状態では、押圧部23の押圧面41が、板バネ39の押圧作用点43に接触しており、ベース部31は回動軸33を回動支点として自由端35が上方に回動した状態になっている。換言すると、ベース部31は押付部材11の押付力Pの方向であって分離ローラー7に近づく方向に変位した状態になっている。これにより、押圧荷重Lが板バネ39の弾性力が加わって薄媒体分離モードより大きい通常分離モードに変わる。
【0045】
≪駆動力伝達状態から駆動力非伝達状態への切り換え≫
図8の左端と中央の両方の図の下部と、
図8の右端の図の下部に、揺動アーム55と、カム65及びカムフォロア61と、接続歯車19及び第5歯車42の位置関係を模式的に示した。動力被伝達歯車21が回転すると、押圧部23が軸線27回りに回動すると共に、カム65も周方向に移動する構造であるので、
図8の左端と中央の両方の図と右端の図のそれぞれの図において、押圧部23の位置とカム65の位置は対応している。
以下の説明では、カム65のカムフォロア61に対する接触位置が
図8の左端の図に示した位置であるとき、その位置をポジション1と称する。カム65のカムフォロア61に対する接触位置が
図8の中央の図に示した位置であるとき、その位置をポジション2と称する。カム65のカムフォロア61に対する接触位置が
図8の右端の図に示した位置であるとき、その位置をポジション3と称する。
【0046】
カム65がポジション1にある状態は、前記通常分離モードに対応している。カム65がポジション2にある状態は前記薄媒体分離モードに対応している。カム65がポジション1とポジション2にあるときは、即ちカム65がカムフォロア61の最上部67に位置していない状態では、
図8の左端と中央の両方の図に示したように、揺動アーム55は接続歯車19と第5歯車42とが噛み合った状態を維持できる位置に回動している。
動力被伝達歯車21が回転して、カム65がポジション2の位置よりも更に時計回りの周方向に移動し、ほぼ一周すると、カム65はポジション3の位置に移動する。ポジション3では、
図8の右端の図に示したように、カム65はカムフォロア61の最上部67に接触する。これにより、揺動アーム55が軸40を揺動中心として時計回りに揺動する。この揺動により、接続歯車19が第5歯車42から離れ、駆動力伝達状態から駆動力非伝達状態に切り換わる。
【0047】
この駆動力非伝達状態は、分離ローラー7による分離の必要が無い、ユーザーが媒体3を一枚ずつ搬送経路2に差し込んで給送ローラー10或いは搬送ローラー4で搬送方向に送る場合に利用される。この場合をいわゆる「手差しモード」と称することが多いので、ここではそれを用いる。この手差しモードは、超厚紙と称される媒体やもろい紙と称される媒体を搬送する場合に使われることが多い。
手差しモードの状態(
図8の右端の図)で、駆動源15を少し回転すると、カム65がポジション3からポジション1に移動し、
図8の左端の図に示した通常分離モードの状態に変わる。
【0048】
≪ポジション1とポジション2とポジション3のセンシング≫
本実施形態では、カム65がポジション1とポジション2とポジション3のいずれに位置するかをセンシングできるように構成されている。
図6と
図9に示したように、発光部と受光部の対から成る第1センサー66と第2センサー68がY軸方向に所定の間隔を空けて媒体搬送装置9の本体フレームに設置されている。また、長尺体29には遮光片70が設けられている。第1センサー66及び第2センサー68に対する遮光片70の挙動は、制御部71によって制御される。
【0049】
図9の上の図に示したように、遮光片70が第1センサー66の光路に位置するときはポジション3である、即ち手差しモードであると制御部71によって判定される。
図9の下の図に示したように、遮光片70が第2センサー68の光路に位置するときはポジション2である、即ち薄媒体分離モードであると制御部71によって判定される。遮光片70が第1センサー66と第2センサー68の間の前記所定の間隔の部分に位置するときはポジション1である、即ち通常分離モードであると制御部71によって判定される。
尚、カム65がポジション1とポジション2とポジション3のいずれに位置するかをセンシングするセンサーの構造は、上記構造に限定されないことは勿論である。
【0050】
パーソナルコンピューター即ちパソコンと画像読取装置1が接続されており、「媒体の種類」や「両面読取である」等の情報を、パソコンの設定画面を見ながら入力して画像読取装置1の読取動作を設定して行うタイプの画像読取装置1がある。
本実施形態によれば、このタイプの画像読取装置1において、制御部71は、厚み検知部49の検知結果として、例えば「薄紙」であるとの情報が送られと、適用する媒体分離モードは「薄媒体分離モード」であると判定する。更に、制御部71は、「薄媒体分離モード」で搬送すると共に、パソコンに前記判定の結果、即ち「薄媒体分離モード」であると判定結果を前記パソコンに送る。これにより、パソコンの設定画面に「現在薄媒体分離モードです」等の表示をさせることで、ユーザーの使い勝手を向上させることができる。
【0051】
≪厚み検知部による媒体分離モードの切り換えの自動化≫
図10のフローチャートにより、制御部71が厚み検知部49により媒体分離モードの切り換えを自動化する構成について、その制御手順の一例を説明する。
先ず、ステップS1で、ユーザーがパソコンの設定画面を見ながら媒体3の種類、即ち厚紙、普通紙、薄紙等の種類についての指定において、「自動」を選択したかを判定する。なお、「自動」が選択された場合、画像読取装置1が媒体3の種類を自動で判断する。Yesの場合は、ステップS2に進み、分離ローラー7や給送ローラー10、ピックローラー12等の駆動をONとして媒体3の搬送を開始する。搬送される媒体3の先端が厚み検知部49の検知位置に達すると媒体3の厚みの検知が行われ、ステップS3で、その検知結果が現在の媒体分離モードと一致しているかについて判定が行われる。
ステップS3がNoの場合はステップS4に進む。ステップS4で分離ローラー7等の駆動が停止され、搬送が止まる。続いて、ステップS5で、媒体分離モードの切り替えが行われ、媒体3の種類に適した媒体分離モードに切り替えられる。続いてステップS6に進む。
ステップS3がYesの場合、その時点での媒体分離モードが媒体3の種類に適していると判定し、ステップS7に進む。
ステップS6で、分離ローラー7等の駆動をONして媒体3の搬送を再開する。
ステップS1がNoの場合はステップS9に進む。ステップS9で、ユーザーに選択された媒体3の種類に適した媒体分離モードに設定される。続いてS10に進み、分離ローラー7等の駆動をONとして媒体3の搬送が開始され、ステップS7に進む。
次に、ステップS7で、読取部51,52による画像の読み取りが行われる。
続いてステップS8で、読取対象の媒体3が未だ残っているかが判定され、残っている場合、即ちYesの場合はステップS2に戻る。一方、Noの場合は終了となる。
【0052】
搬送される媒体3の先端が厚み検知部49の検知位置に達し、媒体3を前記検知位置で止めた状態で、即ち分離ローラー7等の駆動が停止された状態で、厚み検知部49により媒体3の厚みを検知させるように構成した場合は、ステップS3以降は以下のようになる。
ステップS3でYesの場合は、分離ローラー7等の駆動をONして媒体3の搬送を再開してステップS7に進む。ステップS3でNoの場合は、既に分離ローラー7等の駆動が停止されているので、即ちステップS4の状態になっているので、ステップS5に進む。
【0053】
≪厚み検知部による媒体分離モードの切り換えの自動化の変形例≫
(1)ステップS8でYesの場合、1つのジョブとして複数の媒体3を読み取らせるモードが選択されているとき、ステップS7に戻ってもよい。1つのジョブで複数の媒体3を読み取らせるとき、複数の媒体3の種類は同じであることが多い。よって、ジョブでの最初の1枚のみ媒体分離モードの判定を行い、後続の媒体3に対する媒体分離モードの判定を省略してもよい。これにより、読み取りに係る時間を短縮することができる。
(2)1つのジョブで異なる種類の複数の媒体3を読み取らせる混載モードを画像読取装置1が備えてもよい。この場合、媒体3毎に媒体3の種類に適した媒体分離モードに切り替えることが好ましい。よって、媒体3毎に媒体分離モードの判定を行ってもよい。
(3)ステップS1がNoの場合にステップS2に進んでもよい。言い換えると、ステップ1を省略してもよい。すなわち、ユーザーの媒体3の種類の選択に拘わらず、媒体分離モードの判定を行ってもよい。ユーザーが誤った媒体3の種類を選択してしまった場合であっても、媒体3の種類に適した媒体分離モードに切り替えることができる。
(4)これらの変形例は変形例同士或いは実施例と適宜組み合わせてもよい。
【0054】
<実施形態1の効果の説明>
(1)本実施形態では、分離ローラー7を給送ローラー10に対して押し付ける押付部材11と、押付部材11の押付力Pを変更する押付力変更部13と、分離ローラー7の駆動力及び押付力変更部13の駆動力を生成する単一の駆動源15とを備える。これにより、分離ローラー7と押付力変更部13とを駆動させる駆動力が共通の駆動源15により伝達されるので、即ち駆動源15が1つで済むので、厚み等の性状が異なる媒体3を搬送する装置の小型化を進めやすい。
(2)また、本実施形態では、押付力変更部13は、押圧部23が押付部材11を押圧する押圧荷重Lを変更することで、押付部材11の押付力Pを変更する。これにより、押付部材11の押付力Pの変更を簡単な構造で実現することができる。
【0055】
(3)また、本実施形態では、押付力変更部13は、押付部材11の基端を基端保持部7で保持し、押付力Pの方向に変位可能なベース部31を備え、このベース部31は、駆動源15の回転力が動力被伝達歯車21、長尺体29、及び押圧部23を介して伝達されて変位することで、押付部材11を押圧する押圧荷重Lを変更する。これにより、押付力変更部13による押圧荷重Lの変更を簡単な構造で実現することができる。
(4)また、本実施形態では、駆動源15は、順転するときは分離ローラー7に第2回転方向R2に回転させる駆動力を伝達し、逆転するときは押付力変更部13に押付力Pを変更させる駆動力を、ワンウェイクラッチ17を介して伝達する。これにより、駆動源15の前記順転を前記逆転に切り換えることで、駆動源15の駆動力を押付力変更部13に伝達する状態を簡単に実現することができる。即ち、押付部材11の押付力Pの変更を、駆動源15の前記順転を前記逆転に切り換えるだけで容易に行うことができる。
更に、ワンウェイクラッチ17を備えるので、駆動源15が前記順転に変わったときには前記駆動力が押付力変更部13に伝達されない状態になる。即ち、押付力変更部13の状態はそのまま維持され、以って押付部材11の押付力Pは変更された状態で維持されることになる。
【0056】
(5)また、本実施形態では、駆動源15の逆転により、分離ローラー7の前記駆動力伝達状態が前記駆動力非伝達状態に切り換わる。これにより、分離ローラー7を、前記駆動力非伝達状態にして、即ち前記駆動力が伝達されないで回転フリーな状態にしての使用が可能になる。具体的には、ユーザーが媒体3を一枚ずつ送る、即ち分離処理の必要が無い所謂「手差しモード」での給紙を容易に実現することができる。
(6)また、本実施形態では、制御部71は、厚み検知部49の検知結果に基づいて、押付力変更部13を駆動させて押付部材11の押付力Pを変更する。これにより、媒体3の厚みに応じて押付部材11の押付力Pを自動的に変更することが可能になる。
(7)また、本実施形態において、制御部71は、給送ローラー10により媒体3を厚み検知部49の厚み検知位置まで搬送し、媒体3を前記検知位置で止めた状態で媒体3の厚みを検知させる構成にすると、媒体3の厚みをより精度よく検知することができる。
【0057】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る媒体搬送装置9について説明する。実施形態1と同一部分については同一符号を付して、その構成及び対応する効果の説明は省略する。
制御部71は、実施形態1と同様に押付力変更部13を駆動させて押圧荷重Lを変更し、これにより押付部材11の押付力Pを変更する、即ち媒体分離モードを変更するように構成されている。本実施形態では、制御部71は、押付部材11の押付力Pを変更させるとともに、更に分離ローラー7の回転速度を変更させるように構成されている。
【0058】
具体的には、駆動源15であるモーターを回転させる電流を増減することで、モーターの回転速度を変え、これにより分離ローラー7の回転速度を変更することができる。本実施形態では、通常分離モードでは分離ローラー7の回転速度は26mm/sになるように設定され、薄媒体分離モードでは分離ローラー7の回転速度は13mm/sになるように設定されている。これらの回転速度は一例のものである。
本実施形態では、制御部71は、感圧紙や古紙を分離する強分離モードも実行可能に構成されている。この強分離モードは、押付力変更部13は薄媒体分離モードの状態で、分離ローラー7の回転速度が一例として52mm/sになるように設定されている。このように回転速度を上げることで、押付部材11の押付力Pは同じでも、媒体3の分離能力を高めることができる。
【0059】
[実施形態3]
次に、実施形態3に係る媒体搬送装置9について説明する。実施形態1と同一部分については同一符号を付して、その構成及び対応する効果の説明は省略する。
本実施形態では、制御部71は、ユーザーから媒体3の情報を受け付けるように構成されている。具体的には、ユーザーが前記パソコンの設定画面を見ながら媒体3の紙種や厚み等についての情報を入力することで、制御部71はその情報を受け付けるように構成されている。そして、制御部71は、媒体3の前記情報に基づいて、押付力変更部13を駆動させて前記押付部材の前記押付力を変更する、即ち媒体分離モードを変更するように構成されている。
本実施形態によれば、実施形態1の厚み検知部49の検知結果を使わなくて済むので、厚み検知部49を省くことができる。
尚、厚み検知部49の検知結果を使う制御と、厚み検知部49の検知結果を使わない実施形態3の制御とから、ユーザーがいずれかを選択して、選択された制御が実行されるように構成してもよい。
【0060】
〔他の実施形態〕
本発明に係る媒体搬送装置9及び媒体搬送装置9を備える画像読取装置1は、以上述べた実施形態の構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことは勿論可能である。
上記実施形態では、駆動源15から分離ローラー7への駆動力を伝達する動力伝達経路には、接続歯車19が配置され、揺動アーム55を揺動させることで、動力伝達状態と動力非伝達状態を切り換える構造の場合を説明した。この揺動する接続歯車19に代えてワンウェイクラッチを備えることで、動力伝達状態と動力非伝達状態を切り換えるようにしてもよい。
また、駆動力伝達状態から駆動力非伝達状態への切り換えは、駆動源15とは別のモーターにより行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…画像読取装置、2…搬送経路、3…媒体、4…第1搬送ローラー、
6…第2搬送ローラー、7…分離ローラー、8…第3搬送ローラー、
9…媒体搬送装置、10…給送ローラー、11…押付部材、12…ピックローラー、
13…押付力変更部、14…媒体載置部、15…駆動源、16…排出受け部、
17…ワンウェイクラッチ、18…湾曲反転経路、19…接続歯車、
20…第4搬送ローラー、21…動力被伝達歯車、22…第5搬送ローラー、
23…押圧部、24…排出ローラー、25…ホルダー、26…ニップ位置、
27…軸線、28…モーターピニオン、29…長尺体、30…第1歯車、
31…ベース部、32…第2歯車、33…回動軸、34…第3歯車、35…自由端、
36…第4歯車、37…基端、38…軸、39…板バネ、40…軸、41…押圧面、
42…第5歯車、43…押圧作用点、44…伝達歯車、45…下面、
46…第6歯車、48…第7歯車、49…厚み検知部、50…軸、51…読取部、
52…読取部、53…軸、54…伝達歯車、55…揺動アーム、56…第8歯車、
58…一端、59…他端、61…カムフォロア、63…側面、65…カム、
66…第1センサー、67…最上部、68…第2センサー、70…遮光片、
71…制御部、361…大径歯車、362…小径歯車、
L…押圧荷重、P…押付力、R1…第1回転方向、R2…第2回転方向