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特開2024-11375モールドコア、リアクトル及びモールドコアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011375
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】モールドコア、リアクトル及びモールドコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20240118BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20240118BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20240118BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240118BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01F27/24 M
H01F27/24 K
H01F27/255
H01F27/26 130U
H01F27/26 130Q
H01F41/02 D
H01F37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113314
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】金子 真人
(72)【発明者】
【氏名】馬橋 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩太郎
(57)【要約】
【課題】ヨーク部の各脚部連結面を同一高さに揃えることができ、脚部の端面と脚部連結面との間に隙間が生じ難いモールドコア、このモールドコアを有するリアクトル、及びこのモールドコアの製造方法を提供する。
【解決手段】リアクトル1のモールドコア2は、リアクトル1のモールドコア2は、圧粉磁心により成り、複数の脚部32を連結するためのヨークコア41と、インサート成形によってヨークコア41をモールドするヨーク樹脂42とを備える。そして、ヨークコア41は、ギャップレスで一列に繋がる複数のコアブロック5に分割され、コアブロック5には、脚部32と一対一で連結する脚部側ブロック61が含まれている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧粉磁心により成り、複数の脚部を連結するためのヨークコアと、
インサート成形によって前記ヨークコアをモールドするヨーク樹脂と、
を備え、
前記ヨークコアは、ギャップを介することなく一列に繋がる複数のコアブロックに分割され、前記コアブロックには、前記脚部と一対一で連結する脚部側ブロックが含まれていること、
を特徴とするモールドコア。
【請求項2】
前記脚部側ブロックの各々は、対応の前記脚部の端面と連結する脚部連結面を有し、当該脚部連結面が同一平面に揃うように位置決めされた状態で、前記ヨーク樹脂に被覆されていること、
を特徴とする請求項1記載のモールドコア。
【請求項3】
前記ヨーク樹脂は、
前記脚部連結面が露出する脚部側開口部と、
前記脚部側開口部とは反対面に位置する背面開口部と、
を有すること、
を特徴とする請求項2記載のモールドコア。
【請求項4】
前記コアブロックには、前記脚部側ブロック間に介在する連絡ブロックが含まれ、
前記ヨーク樹脂は、樹脂の射出口痕であるゲート痕膨出部を有し、
前記ゲート痕膨出部は、前記連絡ブロックを被覆する被覆領域に形成されていること、
を特徴とする請求項1又は2記載のモールドコア。
【請求項5】
前記ヨークコアは、3個の前記コアブロックに分割され、
前記コアブロックには、2個の前記脚部側ブロックと、当該脚部側ブロック間に介在する連絡ブロックが含まれること、
を特徴とする請求項1又は2記載のモールドコア。
【請求項6】
前記ヨークコアは、5個の前記コアブロックに分割され、
前記コアブロックには、3個の前記脚部側ブロックと、2箇所の前記脚部側ブロック間に介在する2個の連絡ブロックが含まれること、
を特徴とする請求項1又は2記載のモールドコア。
【請求項7】
前記ヨークコアは、5個の前記コアブロックに分割され、
前記コアブロックには、3個の前記脚部側ブロックと、2箇所の前記脚部側ブロック間に介在する2個の前記連絡ブロックが含まれ、
前記ゲート痕膨出部は、前記連絡ブロックの少なくとも一方を被覆する前記被覆領域に形成されていること、
を特徴とする請求項4記載のモールドコア。
【請求項8】
前記脚部を更に備えること、
を特徴とする請求項1又は2記載のモールドコア。
【請求項9】
前記ヨーク樹脂は、固着具の締め付けによって前記脚部と締結される締結部を有し、
前記締結部は、前記脚部側ブロックを被覆する被覆領域に形成されていること、
を特徴とする請求項8記載のモールドコア。
【請求項10】
請求項8に記載のモールドコアと、
少なくとも1個の前記脚部に装着されるコイルと、
を備えること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項11】
複数の脚部を連結するためのヨークコアとなる圧粉磁心を形成する圧粉磁心形成工程と、
金型のうちの固定金型に前記ヨークコアを設置し、前記金型のうちのスライド金型で前記ヨークコアを前記固定金型に押し付けることで、前記ヨークコアを前記金型内にセットする金型セット工程と、
前記金型内に樹脂を射出することで、前記ヨークコアをヨーク樹脂でモールドする射出成型工程と、
を含み、
前記ヨークコアは、ギャップを介することなく一列に繋がる複数のコアブロックに分割され、前記コアブロックには、前記脚部と一対一で連結する脚部側ブロックが含まれており、
前記脚部側ブロックの各々は、対応の前記脚部の端面と連結する脚部連結面を有し、
前記圧粉磁心形成工程では、前記コアブロックを加圧成型及び焼鈍により個々に形成し、
前記固定金型は、同一高さに位置し、前記脚部連結面の各々を支持する各支持部を有し、
前記金型セット工程では、
前記脚部側ブロックの前記脚部連結面を前記各支持部に載置しつつ、前記固定金型に前記コアブロックを並設し、
前記スライド金型で前記脚部側ブロックを前記各支持部に押し付けることで、前記脚部連結面を同一平面に揃えるように位置決めすること、
を特徴とするモールドコアの製造方法。
【請求項12】
前記圧粉磁心形成工程では、前記コアブロック毎に前記圧粉磁心を形成すること、
を特徴とする請求項11記載のモールドコアの製造方法。
【請求項13】
前記コアブロックには、前記脚部側ブロック間に介在する連絡ブロックが含まれ、
前記射出成型工程では、前記連絡ブロックに向けて前記ヨーク樹脂を射出すること、
を特徴とする請求項11記載のモールドコアの製造方法。
【請求項14】
接着剤で前記脚部連結面に前記脚部を接着する連結工程を含むこと、
を特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載のモールドコアの製造方法。
【請求項15】
前記射出成型工程では、前記樹脂に、固着具の締め付けによって前記脚部と締結される締結部を形成し、
前記締結部を介して、前記樹脂でモールドされた前記ヨークコアに前記脚部を連結する連結工程を更に含むこと、
を特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載のモールドコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに挿入されるコアを樹脂によってモールドして成るモールドコア、このモールドコアを有するリアクトル、及びこのモールドコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。リアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、昇圧リアクトル、直列リアクトル、並列リアクトル、限流リアクトル、始動リアクトル、分路リアクトル、中性点リアクトル及び消弧リアクトル等が挙げられる。
【0003】
昇圧リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる。直列リアクトルは、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する。並列リアクトルは、並列回路間の電流分担を安定させる。限流リアクトルは、短絡時の電流を制限しこれに接続される。始動リアクトルは、機械を保護する電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する。分路リアクトルは、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する。中性点リアクトルは、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する。消弧リアクトルは、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる。
【0004】
このリアクトルは主としてコイルとコアとから成る。コアは、2本以上の脚部と2本以上のヨーク部が閉環状に連なって形成されている。少なくとも1本の脚部にはコイルが装着されている。ヨーク部は、平行に延びる脚部の両端に分かれて配置され、脚部と直交して延び、各脚部を連結する。このようなリアクトルにおいて、コイルは、通電により巻数に従って磁束を発生させる。コアは、コイルが発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。そのため、コアには、軟磁性粉末を押し固めた圧粉磁心が多用されている。
【0005】
軟磁性粉末を脚部とヨーク部の各々の形状に合わせて押し固め、更に焼鈍する。出来上がった脚部とヨーク部を接着剤により接合したり、各々を樹脂で被覆してボルト等で螺合したりすることにより、脚部とヨーク部が連結した閉環状のコアが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5023096号公報
【特許文献2】特許第6780954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
軟磁性粉末を押し固めた加圧成型体を焼鈍したとき、圧粉磁心には各所で収縮が生じたり、反りが生じる虞がある。圧粉磁心の収縮や反りには軟磁性粉末の密度分布が関連し、軟磁性粉末の各所で収縮や反りにバラツキが生じる。圧粉磁心が大型化すると、圧粉磁心の各所で生じる収縮や反りのバラツキは大きくなる。
【0008】
ヨーク部の一面には、各脚部の端面が接触する脚部連結面が並ぶ。ヨーク部が大型化し、焼鈍に伴う収縮や反りによって、脚部連結面が並ぶ一面に生じる凹凸が顕著になると、ヨーク部に各脚部を突き合わせたとき、何れかの脚部の端面と脚部連結面との間に隙間が生じる。隙間は磁気抵抗となる。従って、コアの閉磁路中に設計と異なる隙間が生じると、磁気抵抗が設計と異なり増加し、インダクタンスの直流重畳特性の低下を招くなどの不都合が発生する。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、ヨーク部の各脚部連結面を同一高さに揃えることができ、脚部の端面と脚部連結面との間に隙間が生じ難いモールドコア、このモールドコアを有するリアクトル、及びこのモールドコアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本実施形態のモールドコアは、圧粉磁心により成り、複数の脚部を連結するためのヨークコアと、インサート成形によって前記ヨークコアをモールドするヨーク樹脂と、を備え、前記ヨークコアは、ギャップを介することなく一列に繋がる複数のコアブロックに分割され、前記コアブロックには、前記脚部と一対一で連結する脚部側ブロックが含まれている。
【0011】
前記脚部側ブロックの各々は、対応の前記脚部の端面と連結する脚部連結面を有し、当該脚部連結面が同一平面に揃うように位置決めされた状態で、前記ヨーク樹脂に被覆されているようにしてもよい。
【0012】
前記ヨーク樹脂は、前記脚部連結面が露出する脚部側開口部と、前記脚部側開口部とは反対面に位置する背面開口部と、を有するようにしてもよい。
【0013】
前記コアブロックには、前記脚部側ブロック間に介在する連絡ブロックが含まれ、前記ヨーク樹脂は、樹脂の射出口痕であるゲート痕膨出部を有し、前記ゲート痕膨出部は、前記連絡ブロックを被覆する被覆領域に形成されているようにしてもよい。
【0014】
前記ヨークコアは、3個の前記コアブロックに分割され、前記コアブロックには、2個の前記脚部側ブロックと、当該脚部側ブロック間に介在する連絡ブロックが含まれるようにしてもよい。
【0015】
前記ヨークコアは、5個の前記コアブロックに分割され、前記コアブロックには、3個の前記脚部側ブロックと、2箇所の前記脚部側ブロック間に介在する2個の連絡ブロックが含まれるようにしてもよい。
【0016】
前記ヨークコアは、5個の前記コアブロックに分割され、前記コアブロックには、3個の前記脚部側ブロックと、2箇所の前記脚部側ブロック間に介在する2個の前記連絡ブロックが含まれ、前記ゲート痕膨出部は、前記連絡ブロックの少なくとも一方を被覆する前記被覆領域に形成されているようにしてもよい。
【0017】
前記脚部を更に備えるようにしてもよい。
【0018】
前記ヨーク樹脂は、固着具の締め付けによって前記脚部と締結される締結部を有し、前記締結部は、前記脚部側ブロックを被覆する被覆領域に形成されているようにしてもよい。
【0019】
また、上記の目的を達成するため、本実施形態に係るリアクトルは、このモールドコアと、少なくとも1個の前記脚部に装着されるコイルと、を備える。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、本実施形態に係るモールドコアの製造方法は、複数の脚部を連結するためのヨークコアとなる圧粉磁心を形成する圧粉磁心形成工程と、金型のうちの固定金型に前記ヨークコアを設置し、前記金型のうちのスライド金型で前記ヨークコアを前記固定金型に押し付けることで、前記ヨークコアを前記金型内にセットする金型セット工程と、前記金型内に樹脂を射出することで、前記ヨークコアをヨーク樹脂でモールドする射出成型工程と、を含み、前記ヨークコアは、ギャップを介することなく一列に繋がる複数のコアブロックに分割され、前記コアブロックには、前記脚部と一対一で連結する脚部側ブロックが含まれており、前記脚部側ブロックの各々は、対応の前記脚部の端面と連結する脚部連結面を有し、前記圧粉磁心形成工程では、前記コアブロックを加圧成型及び焼鈍により個々に形成し、前記固定金型は、同一高さに位置し、前記脚部連結面の各々を支持する各支持部を有し、前記金型セット工程では、前記脚部側ブロックの前記脚部連結面を前記各支持部に載置しつつ、前記固定金型に前記コアブロックを並設し、前記スライド金型で前記脚部側ブロックを前記各支持部に押し付けることで、前記脚部連結面を同一平面に揃えるように位置決めする。
【0021】
前記圧粉磁心形成工程では、前記コアブロック毎に前記圧粉磁心を形成するようにしてもよい。
【0022】
前記前記コアブロックには、前記脚部側ブロック間に介在する連絡ブロックが含まれ、前記射出成型工程では、前記連絡ブロックに向けて前記ヨーク樹脂を射出するようにしてもよい。
【0023】
接着剤で前記脚部連結面に前記脚部を接着する連結工程を含むようにしてもよい。
【0024】
前記射出成型工程では、前記樹脂に、固着具の締め付けによって前記脚部と締結される締結部を形成し、前記締結部を介して、前記樹脂でモールドされた前記ヨークコアに前記脚部を連結する連結工程を更に含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ヨークコアの各脚部連結面を同一平面に揃えることが容易になり、脚部の端面と脚部連結面との間に隙間が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態のモールドコアを示す斜視図である。
図2】モールドコアの分解図である。
図3】ヨークコアの斜視図である。
図4】ヨークコアの分解図である。
図5】圧粉磁心形成工程を示すフローチャートである。
図6】脚部側ブロックの位置合わせを示す模式図である。
図7】脚部側ブロックの位置決めを示す模式図である。
図8】ヨーク樹脂を一方から見た斜視図である。
図9】ヨーク樹脂を他方から見た斜視図である。
図10】第2の実施形態のモールドコアを示す模式図である。
図11】第3の実施形態のモールドコアを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、各実施形態のリアクトルについて説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0028】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るリアクトルについて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態のリアクトル1の主構成を示す斜視図であり、図2は、モールドコア2の分解図である。図1及び図2では、説明の都合上、コイルを省いている。
【0029】
図1及び図2に示すように、このリアクトル1はモールドコア2を備えている。モールドコア2は、1個又は複数個が辺を共有して連なった閉環状を有する。また、リアクトル1は、モールドコア2に装着されるコイル(不図示)を備えている。コイルは、導電線を巻軸に沿って1ターンごとに巻位置をずらしながら螺旋状に巻回された巻線である。
【0030】
コイルは、リアクトル1が組み込まれる回路からの通電により巻数に従って磁束を発生させるインダクタであり、回路に誘導性リアクタンスを導入する。モールドコア2は、インサート成形によりモールド樹脂で被覆された圧粉磁心である。圧粉磁心は、磁性粉末を押し固めて焼鈍して成る。即ち、モールドコア2は、コイルが発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路である。
【0031】
これにより、リアクトル1は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品となる。尚、モールド樹脂は、コイルと圧粉磁心を電気的に絶縁し、圧粉磁心を機械的な損耗から防ぎ、モールドコア2の形態を保持するために、圧粉磁心を被覆するものである。
【0032】
モールドコア2は、複数の脚部32と一対のヨーク部31を備えている。例えば、モールドコア2は、2本の脚部32と一対のヨーク部31を有し、脚部32とヨーク部31が交互に配列されて1個の閉環形状を成す。複数の脚部32は、同長であり、端部を揃えて同一平面上に平行に並ぶ。コイルは、少なくとも1本の脚部32にコイルが装着されればよく、また全ての脚部32に装着されていてもよい。
【0033】
ヨーク部31は、脚部32を連結する。このヨーク部31は、脚部32の両端に分かれて配置される。ヨーク部31は、脚部32と直交して延び、複数の脚部32を連結している。ヨーク部31の長さは、両外側の脚部32の外周面間距離と同長であり、両外側の脚部32の両端は、ヨーク部31の両端に接続している。
【0034】
このヨーク部31は、圧粉磁心であるヨークコア41と、このヨークコア41を被覆するモールド樹脂であるヨーク樹脂42を備えている。ヨークコア41には、脚部32の脚部端面32aと対面する位置に、脚部連結面63が設定されている。脚部連結面63は、接着剤によって脚部端面32aと接着される領域である。ヨークコア41と脚部32は、脚部連結面63と脚部端面32aを向かい合わせて連結される。
【0035】
この脚部連結面63は、脚部端面32aと同大同形状か、又は脚部端面32a全体を包含する広さを有する。ヨーク樹脂42には脚部側開口部71が形成されている。この脚部側開口部71は、脚部連結面63を完全に露出させている。例えば、モールドコア2が2本の脚部32を有する場合、各ヨーク部31には、それぞれ2箇所の脚部連結面63が配され、脚部側開口部71を通じて露出している。
【0036】
図3は、ヨーク部31が備えるヨークコア41の斜視図である。ヨークコア41は、複数のコアブロック5に分割されている。複数のコアブロック5は一列に連なることで、ヨークコア41を形成している。尚、脚部32も圧粉磁心を樹脂でインサート成形して成り、この脚部32を構成する圧粉磁心である脚部コア43も、複数のコアブロック9が一列に連なって形成されている。
【0037】
図4は、ヨークコア41の分解図である。コアブロック5は、隣接するコアブロック5と対向する面が、ブロック間連結面64になっている。コアブロック5は、互いのブロック間連結面64を対面させてギャップを介すること無くギャップレスで連設されている。即ち、コアブロック5間に隙間は無く、またコアブロック間5間に接着剤の層が介在しない。コアブロック5は、接着剤が塗布されずにブロック間連結面64同士を直に突き合わせて、ヨーク樹脂42によるインサート成形によって固定される。
【0038】
ヨークコア41において、コアブロック5は、脚部側ブロック61と連絡ブロック62に大別される。脚部側ブロック61は、脚部32と一対一で連結するコアブロック5である。連絡ブロック62は、脚部側ブロック61間に介在するコアブロック5である。脚部連結面63は、面全域が、脚部32の脚部端面32aと対向する脚部側ブロック61にある。換言すれば、1個の脚部側ブロック61につき1面の脚部連結面63が包含され、脚部連結面63が隣の連絡ブロック62に跨がって存在しないように、コアブロック5は分割されている。
【0039】
例えば、モールドコア2が2本の脚部32を有する場合、各ヨーク部31は、中心に位置する1個の連絡ブロック62と、連絡ブロック62の両脇に繋がり、対応の脚部32と連結する2個の脚部側ブロック61に分割されている。
【0040】
このようなヨーク部31の各コアブロック5の製造方法は次の通りである。図5は、圧粉磁心形成工程を示すフローチャートである。圧粉磁心は、磁性粉末を混合する粉末混合工程(ステップS01)、磁性粉末をコアブロック5に加圧成型する加圧成型工程(ステップS02)及び加圧成型工程を経た成型体を焼鈍する焼鈍工程(ステップS03)を経て作製される。
【0041】
磁性粉末は軟磁性粉末である。この磁性粉末としては、鉄を主成分とし、純鉄粉、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが挙げられる。磁性粉末は、アモルファス合金でもよいし、ナノ結晶合金粉末であってもよい。磁性粉末は1種類でなく、2種類以上の混合粉でもよい。
【0042】
この磁性粉末は、粉砕法により作製されたものでも、アトマイズ法により作製されたものでもよい。粉砕法では、FeSiAl合金の金属塊をゾークラッシャー、ハンマーミル、アトリションミル、スタンプミル又はボールミル加工等によって機械的に粉砕する。アトマイズ法は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水ガスアトマイズ法のいずれでもよい。
【0043】
磁性粉末は、絶縁樹脂で被覆されてもよい。絶縁樹脂は、磁性粉末の全表面を覆うように付着していてもよく、磁性粉末の一部の表面を覆うように付着していてもよいし、これらの両方の態様が混在していてもよい。また、この絶縁樹脂は、磁性粉末の各粒子に付着していてもよいし、粒子の凝集体の表面に付着していてもよいし、これらの両方の態様が混在していてもよい。粒子や凝集体の一部表面を覆うとき、絶縁樹脂は、点状に分散して付着していてもよいし、塊状に分散して付着していてもよいし、これらの態様が混在していてもよい。
【0044】
絶縁樹脂としては、シラン化合物、シリコーンレジン又はこれらの両方を使用することができる。例えば、磁性粉末が、シラン化合物とシリコーンレジンの両方で被覆される場合、シラン化合物とシリコーンレジンが各層に分かれていてもよいし、各種類が混合された単層であってもよい。絶縁樹脂と磁性粉末とを混合した後は、特に限定はされないが所定温度環境下に晒して乾燥させる。
【0045】
加圧成型工程では、絶縁被覆された磁性粉末をコアブロック5の形状に加圧成型することにより、成型体を形成する。成型時の圧力は例えば10~20ton/cmであり、平均で12~15ton/cm程度が好ましい。加圧成型工程に先立って潤滑剤を混合させておいてもよい。
【0046】
焼鈍工程では、加圧成型工程を経た成型体を加熱して歪を除去する。加熱環境としては、不活性雰囲気中若しくは還元雰囲気中又は大気中である。不活性雰囲気及び還元雰囲気中は、反応性ガスが低量であり、不活性ガス又は中性ガスで満たされた雰囲気である。反応性ガスは、酸素、水蒸気又は炭素ガス等である。不活性ガスは、アルゴンやヘリウム等である。中性ガスは、窒素やアンモニア等である。
【0047】
図6は、このように製造されたヨーク部31の各コアブロック5の位置合わせを示す模式図である。各脚部側ブロック61は、ヨークコア41をコアブロック5に分割したことにより、独立して可動となっている。各脚部側ブロック61は、独立に位置調整され、全脚部連結面63が同一の基準平面Ssと一致するように位置決めされている。これにより、ヨーク部31に各脚部32を突き合わせたとき、何れかの脚部32の脚部端面32aと脚部連結面63との間に隙間が生じる虞が低減している。
【0048】
例えば、各脚部側ブロック61は、例えばヨークコア41を被覆するヨーク樹脂42を射出成型するための金型セット工程を経て位置決めすればよい。金型セット工程では脚部側ブロック61を押圧することによって所要位置に位置決めする。金型への押圧による位置決めによれば、樹脂成形と同時に、ヨーク樹脂42によって、位置決めされた脚部側ブロック61を固定することができる。
【0049】
図7は、脚部側ブロック61の位置決めを示す模式図である。図7に示すように、金型セット工程では、まず、ヨーク部31を構成する脚部側ブロック61と連絡ブロック62を固定金型(下型)Mfdに載置する。2個の脚部32を有するモールドコア2を作製する場合、1個の連絡ブロック62の各ブロック間連結面64に両脇の脚部側ブロック61のブロック間連結面64を接触させるように、固定金型(下型)Mfd内に一列に並設する。
【0050】
固定金型(下型)Mfdは、脚部32と同数の支持部Msを有する。支持部Msは、固定金型(下型)Mfdから金型内に突き出た支持台である。この支持部Msは、平坦が同一の基準平面Ss上に拡がり、平坦が脚部32の脚部端面32aと同じ広さを有し、同間隔で離れて立設されている。この支持部Msに、一対一で対応させて脚部側ブロック61の脚部連結面63を合わせて、脚部側ブロック61が載置される。尚、固定金型(下型)Mfdには、連結ブロック62を支持する突起部Mscも突出している。
【0051】
固定金型(下型)Mfdに各コアブロック5を並設した後、固定金型(下型)Mfdの反対側から固定金型(上型)Mfuとスライド金型Maを被せる。そして、スライド金型Maで各脚部側ブロック61を固定金型(下型)Mfdの支持部Msに押し付ける。これにより、各脚部側ブロック61の脚部連結面63は、同一平面である基準平面Ssに揃えられる。
【0052】
尚、コアブロック5の列は、列の並び方向に沿って両脇からも金型で押さえ付けられており、ブロック間連結面64同士が密着するため、ヨークコア41内に隙間が発生し、ヨークコア41内に樹脂が形成されることを阻止している。
【0053】
固定金型(上型)Mfuには、ヨーク樹脂42となる樹脂を射出するゲートMgが開口している。ゲートMgは、脚部側ブロック61を避け、連絡ブロック62と対向する位置に開口している。固定金型(下型)Mfdと固定金型(上型)Mfuとスライド金型Maで内部を密閉した後、ヨークコア41をヨーク樹脂42でモールドする射出成型工程に移り、このゲートMgから樹脂を射出し、ヨークコア41の周囲をヨーク樹脂42で被覆する。
【0054】
樹脂の射出時、脚部側ブロック61にはゲートMgからの射出圧が直接かかることはないので、脚部側ブロック61が射出圧により煽られて、脚部連結面63が基準平面Ssから外れる虞が低減されている。そして、基準平面Ssに揃えられた各脚部連結面63は、ヨーク樹脂42による脚部側ブロック61の被覆により位置が維持される。
【0055】
ヨーク樹脂42の材質としては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合が挙げられ、絶縁性及び耐熱性を備えている。ヨーク樹脂42には熱伝導性のフィラーを混入させてもよい。
【0056】
図8は、ヨーク樹脂42を有するヨーク部31を一方から見た斜視図であり、図9は、ヨーク樹脂42を有するヨーク部31を他方から見た斜視図である。図8及び図9に示すように、射出成型工程を経ることによって、ヨークコア41にはヨーク樹脂42が被覆される。連絡ブロック62を覆う連絡ブロック被覆領域75には、ヨーク樹脂42の射出口痕であり、連結ブロック被覆領域75から膨出したゲート痕膨出部74が膨出している。
【0057】
ヨーク樹脂42には、支持部Msの当接により脚部側開口部71が形成され、脚部側開口部71から脚部連結面63全域が露出している。脚部側開口部71の反対には、背面開口部72が形成されている。背面開口部72は、脚部連結面63を支持部Msに押し付けるためにスライド金型Maを当接させた際の跡であり、脚部側ブロック61が露出している。この背面開口部72からも放熱できる。尚、背面開口部72は、スライド金型Maと脚部側ブロック61との直接接触を防止するための樹脂プレートで埋められていてもよい。
【0058】
脚部側開口部71が形成された面と直交する一側面と、その側面には、コアブロック5を列方向に沿って金型で狭持して出来た狭持開口部73が形成され、この狭持開口部73からも放熱できる。狭持開口部73の一方は、固定金型(下型)Mfdと当接して形成され、大きな矩形状を有し、狭持開口部73の他方は、スライド金型Maと当接して形成され、複数のL字のスリット形状になっている。
【0059】
更に、ヨーク樹脂42からは、脚部連結面63を挟むように締結部81が突出する。脚部32にも脚部端面32aを挟むように締結部82が備えられている(図3参照)。ヨーク部31と脚部32は、脚部連結面63と脚部端面32aとの接着に加えて、締結部81,82同士のボルトやネジを用いた締結により連結している。ボルトやネジで螺合する際には、脚部連結面63と脚部端面32aとの間の接着層に大きなトルクが発生するが、脚部連結面63が基準平面Ssに位置決めされて密着していることにより、トルクによるヨーク部31と脚部32との離間が抑制される。
【0060】
そして、このヨーク部31には、ボルトを挿通可能な金属製のステー83もヨーク樹脂42の形成時にインサート成形されている(図1参照)。リアクトル1は、このステー83を介して回路上に実装できる。
【0061】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態のリアクトル1が備えるモールドコア2を示す模式図である。図10に示すように、モールドコア2は、3本の脚部32を備えるようにしてもよい。3本の脚部32の少なくとも1本にコイルが装着される。3本の脚部32を備えるモールドコア2において、ヨークコア41は、例えば5個のコアブロック5に分割される。5個のコアブロック5が個々に圧粉磁心形成工程、金型セット工程及び樹脂射出工程を経て製造される。5個のコアブロック5は、3個の脚部側ブロック61と2個の連絡ブロック62となる。
【0062】
両外側に脚部側ブロック61が配置され、脚部側ブロック61と連絡ブロック62が1個ずつ交互に配されて、コアブロック5が一列に並ぶ。ブロック間連結面64同士は、ギャップレスで接続される。3個の脚部側ブロック61の一つ一つに脚部連結面63が配され、3面の脚部連結面63は固定金型(下型)Mfdの支持部Msによって同一の基準平面Ssに揃うように位置決めされ、ヨーク樹脂42で固定される。ゲートMgは、脚部側ブロック61を避け、2個の連絡ブロック62のうちの1個又は両方に対向するように配置されている。
【0063】
更に、モールドコア2は、例えば4本以上の脚部32を備え、ヨーク部31は、脚部32と同数の脚部側ブロック61と、脚部32よりも1個少ない数の連絡ブロック62を備え、脚部側ブロック61と連絡ブロック62は、両外側に脚部側ブロック61を配置した上で、1個ずつ交互に配されるようにしてもよい。
【0064】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態のリアクトル1が備えるモールドコア2を示す模式図である。1本の脚部32に対して1個の脚部側ブロック61が備えられ、1個の脚部側ブロック61につき1面の脚部連結面63が設定されていれば、各脚部側ブロック61を独立して基準平面Ssに位置決めできる。
【0065】
従って、ヨークコア41は、脚部32の数と合致する脚部側ブロック61を有し、脚部側ブロック61のブロック間連結面64同士を、連絡ブロック62を介在させることなく、直接接続するようにしてもよい。
【0066】
(作用効果)
このように、各実施形態のリアクトル1のモールドコア2は、リアクトル1のモールドコア2は、圧粉磁心により成り、複数の脚部32を連結するためのヨークコア41と、インサート成形によってヨークコア41をモールドするヨーク樹脂42とを備える。そして、ヨークコア41は、ギャップを介することなく一列に繋がる複数のコアブロック5に分割され、コアブロック5には、脚部32と一対一で連結する脚部側ブロック61が含まれているようにした。
【0067】
圧粉磁心を加圧成型及び焼鈍するときには、成型体の各所に収縮や反り等の変形が伴う。各所の変形のバラツキは、加圧成型及び焼鈍する成型体が大きくなるほど顕著なる。一方、このモールドコア2では、ヨークコア41が複数のコアブロック5に分割されている。コアブロック5は、ヨークコア41全体を1個の成型体として加圧成型及び焼鈍する場合と比べれば、各所の変形のバラツキは小さくなる。
【0068】
従って、このモールドコア2では、脚部側ブロック61が有する脚部連結面63が同一平面に揃い易く、脚部32の脚部端面32aと脚部連結面63との間に隙間が生じ難くなる。そして、磁気抵抗が設計と近似し易く、インダクタンスの直流重畳特性の低下を抑制できる。
【0069】
また、このモールドコア2は、次のような製造方法を採ることができる。即ち、このモールドコア2の製造方法には、圧粉磁心形成工程と金型セット工程と射出成型工程とが含まれるようにした。圧粉磁心形成工程では、複数の脚部32を連結するためのヨークコア41となる圧粉磁心を形成する。ヨークコア41は、ギャップを介することなく一列に繋がる複数のコアブロック5に分割され、圧粉磁心形成工程では、コアブロック5を加圧成型及び焼鈍により個々に形成する。
【0070】
そして、金型セット工程では、固定金型(下型)Mfdにヨークコア41を設置し、スライド金型Maでヨークコア41を固定金型(下型)Mfdに押し付けることで、ヨークコア41を金型内にセットする。このとき、金型セット工程では、脚部側ブロック61の脚部連結面63を固定金型(下型)Mfdの各支持部Msに載置しつつ、固定金型(下型)Mfdにコアブロック5を並設する。スライド金型Maで脚部側ブロック61を支持部Msに押し付け、脚部連結面63を同一平面である基準平面Ssに揃えるように位置決めする。
【0071】
最後に、この金型セット工程を経て、射出成形工程では、金型内に樹脂を射出することで、ヨークコア41をヨーク樹脂42でモールドする。これにより、脚部側ブロック61の各々は、対応の脚部32の脚部端面32aと連結する脚部連結面63を有し、当該脚部連結面63が同一平面に揃うように位置決めされた状態で、ヨーク樹脂42に被覆されることとなる。従って、脚部側ブロック61が有する脚部連結面63が同一平面に揃い、脚部32の脚部端面32aと脚部連結面63との間に隙間が更に生じ難くなる。そして、磁気抵抗が設計と更に近似し易くなり、インダクタンスの直流重畳特性の低下を更に抑制できる。
【0072】
このモールドコア2では、脚部側ブロック61が独立して移動可能となることにより、脚部連結面63が同一平面に揃うように位置決め可能となればよく、この製造方法によらず、例えばヨークコア41全体を加圧成型及び焼鈍してから、複数のコアブロック5に切り分けてもよい。もっとも、コアブロック5ごとに加圧成型及び焼鈍することで、局所的な変形量を小さくできる効果も付与される。
【0073】
また、ヨーク樹脂42は、脚部連結面63が露出する脚部側開口部71と、脚部側開口部71とは反対面に位置する背面開口部72とを有するようにした。この背面開口部72により、ヨーク部31の熱を放熱できる。また、脚部32とヨーク部31の接着時に背面開口部72を用いてヨークコア41を脚部32に押し込むことができ、接着圧を高め、更に隙間が生じる余地を少なくできる。
【0074】
また、コアブロック5には、脚部側ブロック61間に介在する連絡ブロック62が含まれるようにしてもよく、射出成型工程では、連絡ブロック62に向けてヨーク樹脂42を射出するようにした。これにより、ヨーク樹脂42は、樹脂の射出口痕であるゲート痕膨出部74が連絡ブロック62を被覆する連絡ブロック被覆領域75に形成されているようにした。
【0075】
このため、脚部側ブロック61が受ける射出圧が小さくなり、脚部連結面63が位置ズレし難く、基準平面Ssに揃った脚部連結面63の位置を維持することが容易になる。尚、金型でコアブロック5の列を強く把持するようにし、基準平面Ssに揃った脚部連結面63の位置を維持するようにしてもよい。
【0076】
また、ヨーク樹脂42は、ボルトやネジ等の固着具の締め付けによって脚部32と締結される締結部81を有し、締結部81は、脚部側ブロック61を被覆する被覆領域に形成されるようにした。これにより、接着剤の劣化によってヨーク部31と脚部32とが外れることを防止できる。
【0077】
ここで、この締結部81は、固着具の締め付けの際にトルクを発生させ、脚部連結面63と脚部端面32aとの接着層を破壊し易い。しかし、脚部連結面63が基準平面Ssに揃い、脚部連結面63と脚部端面32aとが全域で精度良く接合されていることにより、接着層が当該トルクに十分に耐え得ることができる。従って、この締結部81を脚部側ブロック61を被覆する被覆領域に形成することが容易となっている。
【0078】
以上の本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1 リアクトル
2 モールドコア
31 ヨーク部
32 脚部
32a 脚部端面
41 ヨークコア
42 ヨーク樹脂
43 脚部コア
5 コアブロック
61 脚部側ブロック
62 連絡ブロック
63 脚部連結面
64 ブロック間連結面
71 脚部側開口部
72 背面開口部
73 狭持開口部
74 ゲート痕膨出部
75 連絡ブロック被覆領域
81 締結部
82 締結部
83 ステー
9 コアブロック
Ma スライド金型
Mg ゲート
Mfd 固定金型(下型)
Mfu 固定金型(上型)
Ms 支持部
Msc 突起部
Ss 基準平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11