(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113750
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援システム及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240816BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018895
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 賢
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
(57)【要約】
【課題】複数の車両からの処理を実行する複数のサーバにおけるワークロードを平準化すること。
【解決手段】本開示に係る支援装置は、付与部と、通信部と、制御部と、を備える。付与部は、通信回線を介して複数のサーバのうちのいずれかのサーバに送信されて当該サーバによる支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与する。通信部は、レイテンシ情報が付与された外部処理用データを送信し、当該外部処理用データに基づくサーバの処理結果を含む支援情報を受信する。制御部は、支援情報に基づいて車両を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して複数のサーバのうちのいずれかのサーバに送信されて当該サーバによる支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与する付与部と、
前記レイテンシ情報が付与された外部処理用データを送信し、当該外部処理用データに基づく前記サーバの処理結果を含む支援情報を受信する通信部と、
前記支援情報に基づいて車両を制御する制御部と、を備える、
支援装置。
【請求項2】
前記付与部は、前記支援処理の処理内容に応じたレイテンシ情報を付与する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記付与部は、前記車両の状態に応じたレイテンシ情報を付与する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項4】
前記付与部は、前記支援処理の制御対象に応じたレイテンシ情報を付与する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項5】
前記付与部は、前記外部処理用データに含まれるセンサデータを出力した、前記車両の車載センサのセンサ種別に応じたレイテンシ情報を付与する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項6】
前記付与部は、前記車両の周囲環境に応じたレイテンシ情報を付与する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記レイテンシ情報に応じたレイテンシ要求が満たされない場合、前記車両の制御範囲を制限する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項8】
前記外部処理用データは、前記車両の車載センサから出力されたセンサデータを含む、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項9】
前記外部処理用データは、入力デバイスからユーザ操作に応じて出力されたデータを含む、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項10】
前記付与部は、前記外部処理用データに関し、伝送単位又は処理単位のデータごとに前記レイテンシ情報を付与する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項11】
前記レイテンシ情報は、要求されるレイテンシの区分を示すレイテンシ種別と、許容されるレイテンシを示す許容遅延時間とのいずれかである、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項12】
前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分ける振り分け部をさらに備える、
請求項1から請求項11のうちのいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項13】
前記レイテンシ情報は、許容されるレイテンシを示す許容遅延時間であり、
前記振り分け部は、前記許容遅延時間に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分ける、
請求項12に記載の支援装置。
【請求項14】
請求項1から請求項11のうちのいずれか一項に記載の支援装置と、
前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分けるルータと、
前記複数のサーバと、を含む、
支援システム。
【請求項15】
請求項1から請求項11のうちのいずれか一項に記載の支援装置と、
前記複数のサーバと、を含み、
前記複数のサーバのうちの第1サーバは、前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分ける、
支援システム。
【請求項16】
通信回線を介して複数のサーバのうちのいずれかのサーバに送信されて当該サーバによる支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与することと、
前記レイテンシ情報が付与された外部処理用データを送信することと、
前記外部処理用データに基づく前記サーバの処理結果を含む支援情報を受信することと、
前記支援情報に基づいて車両を制御することと、を含む、
支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置、運転支援システム及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に各種のセンサを搭載し、これらの車載センサからのセンサデータに基づく処理の結果を用いて、車両制御などの運転支援を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、無線基地局を介した無線通信により車両と通信する複数のサーバを用いて、当該センサデータに基づく処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両とサーバとの間における通信の遅延やサーバへの処理要求の集中に伴いレイテンシが大きくなると、サーバからの応答が車両制御のタイミングに間に合わないおそれがあった。また、例えば、車両や無線基地局に近い位置に設置されるエッジサーバで処理を行うことにより通信の遅延に伴うレイテンシを小さくすることができるが、同一のエッジサーバ内に収容できる車両の台数には制限がある。このため、特定のエリアに車両が集中した場合や、車両からの距離が異なるサーバが混在する場合、処理能力が異なるサーバが混在する場合など、複数の車両からの処理を実行する複数のサーバにおけるワークロードに偏りが生じるという問題があった。
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、複数の車両からの処理を実行する複数のサーバにおけるワークロードを平準化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る支援装置は、付与部と、通信部と、制御部と、を備える。前記付与部は、通信回線を介して複数のサーバのうちのいずれかのサーバに送信されて当該サーバによる支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与する。前記通信部は、前記レイテンシ情報が付与された外部処理用データを送信し、当該外部処理用データに基づく前記サーバの処理結果を含む支援情報を受信する。前記制御部は、前記支援情報に基づいて車両を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の車両からの処理を実行する複数のサーバにおけるワークロードを平準化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る運転支援装置を搭載する車両の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る運転支援装置を含む運転支援システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る運転支援システムの各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る運転支援装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るルータの機能構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る運転支援システムにより実行される支援処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る運転支援装置、車両、運転支援システム、運転支援方法、プログラム及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0010】
なお、本開示の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、説明を適宜省略する場合もある。また、同一又は略同一の部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。また、例えば図面の視認性を確保する観点から、各図面の説明において主要な構成要素だけに参照符号を付し、既出の図において前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素であっても参照符号を付していない場合もある。
【0011】
図1は、実施形態に係る運転支援装置3を搭載する車両1の一例を模式的に示す図である。車両1は、
図1に示すように、車体12と、車体12に所定方向に沿って配置された二対の車輪13とを有する。二対の車輪13は、一対のフロントタイヤ13f及び一対のリアタイヤ13rを含む。
【0012】
ここで、実施形態に係るフロントタイヤ13fは、第1の車輪の一例である。また、実施形態に係るリアタイヤ13rは、第2の車輪の一例である。なお、
図1は、四つの車輪13を有する車両1を例示するが、これに限らない。車両1は、少なくとも一つのフロントタイヤ13fと、少なくとも一つのリアタイヤ13rを有していればよい。車両1の車輪13の数は二つ、三つ又は五つ以上の複数であってもよい。
【0013】
車両1の車輪13のうちの少なくとも1つの車輪(操舵輪)の向きは、例えば運転席130の正面に配置されるステアリングホイールの回転角度、つまり操舵角と電気的又は機械的に連動する。つまり、車両1は、操舵により右左折することができる。なお、操舵輪は、リアタイヤ13rでもよいし、フロントタイヤ13f及びリアタイヤ13rの両方であってもよい。
【0014】
車体12は、車輪13により支持される。車両1は、図示しない駆動機を有し、当該駆動機の動力によって車両1の車輪13のうちの少なくとも1つの車輪(駆動輪)を駆動することにより移動可能である。なお、駆動機としては、ガソリンや水素などを燃料とするエンジンやバッテリからの電力を用いるモータ、あるいはエンジンとモータとの組合せなど、任意の駆動機が適用可能である。この場合、二対の車輪13が配置される所定方向が車両1の走行方向となる。車両1は、不図示のギアの切り替え等により前進又は後退することができる。
【0015】
また、車体12は、フロントタイヤ13f側の端部である前端部Fと、リアタイヤ13r側の端部である後端部Rを有する。車体12は上面視で略矩形をしており、略矩形状の4つの角部を端部と呼ぶ場合もある。
【0016】
車体12の前後端部F,Rであって、車体12の下端付近には一対のバンパー14が設けられている。一対のバンパー14のうちのフロントバンパー14fは、車体12の下端部付近の前面全体と側面の一部とを覆う。一対のバンパー14のうちのリアバンパー14rは、車体12の下端部付近の後面全体と側面の一部とを覆う。
【0017】
図2は、実施形態に係る運転支援装置3を含む運転支援システム9の構成の一例を示す図である。運転支援システム9は、
図2に示すように、運転支援装置3を搭載する車両1に加えて、無線基地局5と、ルータ6と、複数のサーバ7とを含む。
【0018】
運転支援システム9は、複数のサーバ7と、当該複数のサーバ7のうちのいずれかのサーバ7との間で無線基地局5及びルータ6を介して通信するクライアントとしての運転支援装置3と、を含むサーバクライアント型のシステムとして構築することができる。
【0019】
運転支援システム9は、実施形態に係る支援処理を実行可能に構成されている。ここで、実施形態に係る支援処理は、運転支援装置3により実行されるクライアント側の支援処理と、ルータ6により実行される支援処理と、複数のサーバ7のうちのいずれかのサーバ7により実行されるサーバ側の支援処理と、を含む。
【0020】
車両1は、
図2に示すように、車載センサ21、HMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24を有する。車載センサ21、HMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24のそれぞれは、CAN(Controller Area Network)やEthernet(登録商標)などを含む車載ネットワークを介して運転支援装置3に接続される。
【0021】
なお、
図2は、車載センサ21、HMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24のそれぞれが、運転支援装置3に含まれない場合を例示するが、これに限らない。これらの一部又はすべてが運転支援装置3に含まれていてもよい。
【0022】
車載センサ21は、例えば
図1に例示するように、ソナー211及び全周囲カメラ212を含む。
【0023】
ソナー211は、例えば車体12の所定の端部に設けられ、超音波等の音波の送受波を行う。ソナー211は、送受波部211f,211rを含む。例えば、フロントバンパー14fには、一つ以上の送受波部211fが配置され、リアバンパー14rには、一つ以上の送受波部211rが配置される。また、送受波部211f,211rの数及び/又は位置は、
図1に示す例に限らず、適宜変更可能である。例えば、車両1は、左右の側方に送受波部211f,211rを備えていてもよい。
【0024】
ソナー211は、音波の送受結果に基づいて、車両1の周囲の障害物を検出する。また、ソナー211は、音波の送受結果に基づいて、車両1の周囲の障害物と車両1との距離を計測する。
【0025】
なお、本実施形態においては、超音波等の音波を使用するソナー211を例示するが、これに限らない。例えば、車両1は、ソナー211に代えて、あるいはソナー211に加えて、電磁波を送受波するレーダーを有していてもよい。
【0026】
全周囲カメラ212は、車両1の周囲を撮影可能に車両1に設けられている。一例として、車両1は、全周囲カメラ212として、前方を撮影する前方カメラ212a、後方を撮影する後方カメラ212b、左側方を撮影する左側方カメラ212c及び右側方を撮影する右側方カメラ(図示を省略)を有する。
【0027】
全周囲カメラ212は、車両1の周囲の映像を撮影する。全周囲カメラ212は、例えば、可視光及び/又は赤外光に基づく画像を撮影するカメラである。なお、全周囲カメラ212が撮影する画像は、動画でもよいし、静止画でもよい。
【0028】
なお、全周囲カメラ212の位置及び/又は数は、
図1に示す例に限らず適宜変更可能である。例えば、車両1は、前方カメラ212a及び後方カメラ212bの二台のみを有していてもよい。あるいは、車両1は、上述の例の他に、さらに他のカメラを有していてもよい。例えば、全周囲カメラ212の一部又は全部は、車両1の車室空間(車内)に設けられていてもよい。また、全周囲カメラ212は、車両1に内蔵されたカメラであってもよいし、車両1に後付けされたドライブレコーダのカメラ等であってもよい。
【0029】
また、車載センサ21は、図示しない各種のセンサを含む。一例として、車載センサ21は、運転者によるステアリングホイールの操作量、すなわち操舵角に応じた信号を出力する操舵角センサを含む。一例として、車載センサ21は、車輪13の回転速度及び回転方向に応じた信号を出力する車輪速センサを含む。一例として、車載センサ21は、運転者によるブレーキペダルの操作量を検知するブレーキセンサを含む。一例として、車載センサ21は、運転者によるアクセルペダルの操作量を検知するアクセルセンサを含む。一例として、車載センサ21は、車両1に加わる加速度に応じた信号を出力する加速度センサを含む。一例として、車載センサ21は、車両1に加わる角速度に応じた信号を出力するジャイロセンサを含む。一例として、車載センサ21は、GPS(Global Positioning System)センサなどの車両1の位置情報を出力する全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)センサを含む。なお、GNSSセンサとは、衛星からの電波を受信するGNSSアンテナと、当該GNSSアンテナにより受信した少なくとも二の衛星からの電波に基づき位置情報を得るGNSS回路とを含む。
【0030】
HMI22は、車両1の運転者に通知や警告などの各種情報を出力するためのインタフェースである。また、HMI22は、車両1の運転者による各種情報の入力を受け付けるためのインタフェースである。HMI22は、車両1の運転者が認識可能に通知や警告を出力したり、車両1の運転手の各種操作を受け付けたりできればよく、例えば車両1の運転席の周囲に設けられるが、後部座席などの運転席の周囲の他の部分に設けられていてもよい。
【0031】
一例として、HMI22は、車両1のダッシュボードやコンソールに設けられ、映像を出力可能に構成されたディスプレイを含む。ディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ(LCD)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。なお、当該ディスプレイは、タッチパネルディスプレイとして構成されていてもよい。また、当該ディスプレイは、車両1に搭載されたカーナビゲーション装置の一部であってもよい。また、当該ディスプレイは、運転手の前方、例えばフロントガラスやダッシュボード(コンソール)上に設けられた表示領域などに映像(虚像)を投影するHead Up Display(HUD)などの投影型の表示デバイスであってもよい。なお、HMI22は、通知音や警告音、音声を出力可能に構成されたスピーカなどの他の出力デバイスを含んでいてもよい。
【0032】
一例として、HMI22は、入力デバイスとして、タッチパネルディスプレイのタッチパネルを含む。なお、HMI22は、ボタンやダイヤル、スイッチ、マイクなどの他の入力デバイスを含んでいてもよい。これらの入力デバイスは、例えば車両1のダッシュボードやインストルメントパネル、ステアリングホイール、コンソールなどに配置される。
【0033】
なお、HMI22としては、タブレット端末やスマートフォン、リモートコントローラ、電子キーなどの車両1の外部から車両1に対して信号を送信又は送受信可能な操作端末が利用されてもよい。
【0034】
無線通信装置23は、車両1と無線基地局5との間で情報を伝送する無線信号を送受信する。無線通信装置23は、アンテナ(図示しない)を有し、アンテナを介して、車両1と、無線基地局5との間で無線信号の送受信を実行可能に構成される。無線信号の送受信は、例えば、5G(第5世代移動通信システム)などのIMT2020の規定や3GPP(登録商標)の仕様に応じた任意のセルラーV2X方式で行われる。
【0035】
なお、通信方式は、例えばIEEE準拠のDSRC方式や車車間・路車間通信(Vehicle-to-cellular-Network:V2N)方式などの他の通信方式であってもよい。
【0036】
車両制御装置24は、操舵制御装置及び駆動・ブレーキ制御装置を含む。
【0037】
操舵制御装置は、車両1の操舵を制御する。操舵制御装置は、例えば、運転者によるステアリングホイールの操作量に応じた制御信号、あるいは運転支援装置3からの制御信号に応じた方向に車輪13を偏向する。なお、操舵制御装置は、運転支援装置3からの制御信号に従いステアリングホイールの回転角を変更する操舵アクチュエータ(図示しない)を有していてもよい。
【0038】
駆動・ブレーキ制御装置は、車両1の加減速を制御する。駆動・ブレーキ制御装置は、例えば、ブレーキアクチュエータ(図示しない)及びエンジンコントローラ(図示しない)を有する。ブレーキアクチュエータは、運転者によるブレーキペダルの操作量を検知するブレーキセンサ(図示しない)の検知結果、あるいは運転支援装置3からの制御信号に基づいて、ブレーキを動作させたり、シフト(ギア比)を変更したり、エンジンやモータなどの駆動機の出力を制御したりすることにより、車両1に制動をかけたり車両1を減速したりする。アクセルコントローラは、運転者によるアクセルペダルの操作量を検知するアクセルセンサ(図示しない)の検知結果、あるいは運転支援装置3からの制御信号に基づいて、エンジンやモータなどの駆動機の出力を制御することにより車両1を加速させる。
【0039】
運転支援装置3は、車両1に搭載可能な情報処理装置であり、例えば、車両1の内部に設けられたECU(Electronic Control Unit)、あるいはOBU(On Board Unit)により実現される。あるいは、運転支援装置3は、車両1のダッシュボード付近に設置された外付けのコンピュータであってもよい。なお、運転支援装置3は、カーナビゲーション装置等を兼ねてもよい。
【0040】
無線基地局5は、複数の車両1のそれぞれと、ルータ6との間の通信を中継する。具体的には、無線基地局5は、カバーするエリア内の複数の車両1のそれぞれとの間で情報を伝送する無線信号を送受信する。また、無線基地局5は、有線又は無線の電気通信回線を介してルータ6に接続され、ルータ6との間で情報を送受信する。
【0041】
なお、
図2では、車両1が情報の送受信を行う任意の一つの無線基地局5を例示するが、運転支援システム9は、複数の無線基地局5を含む。無線基地局5は、それぞれ隣接する他の無線基地局5とカバーするエリアが重複するように設置されている。ここで、無線基地局5がカバーするエリアとは、情報の送受信が可能な車両1の位置の範囲である。なお、無線基地局5としては、路側機などの道路側設備が利用されても構わない。
【0042】
ルータ6は、無線基地局5を介して車両1から受信した外部処理用データを複数のサーバ7のいずれかに振り分ける。また、ルータ6は、複数のサーバ7から受信した支援情報を、無線基地局5を介して対象の車両1に送信する。
【0043】
ここで、「外部処理用データ」とは、クライアント側の支援処理においてレイテンシ種別が付与された、支援処理に係る伝送単位のデータであってもよい。つまり、外部処理用データとは、電気通信回線を介して運転支援装置3から複数のサーバ7のうちのいずれかのサーバ7に送信されるデータであってよく、当該サーバ7による支援処理に供されるデータであってよい。
【0044】
なお、レイテンシ種別の付与単位は、支援処理に係る伝送単位のデータに限らず、支援処理に係る処理単位のデータであってもよい。
【0045】
なお、「伝送単位のデータ」、あるいは「処理単位のデータ」とは、支援処理として実行される各種の処理で使用するデータセットであってよく、車載センサ21から取得されたセンサデータや内部メモリから読み出したパラメータなどの車両情報を含んでもよい。また、「伝送単位のデータ」、あるいは「処理単位のデータ」は、既取得の支援情報を含んでもよい。
【0046】
複数のサーバ7は、複数の車両1からの処理を実行する複数のサーバ装置である。複数のサーバ7のそれぞれは、車両1からの外部処理用データをルータ6から受信し、受信した外部処理用データに基づく処理を行う。また、複数のサーバ7のそれぞれは、サーバ側の支援処理の結果を含む情報をルータ6へ送信する。
【0047】
なお、外部処理用データに基づくサーバ側の支援処理の結果を含む情報を「支援情報」と記載する場合もある。
【0048】
図2は、複数のサーバ7に含まれる、クラウドサーバ7Hと、MEC(Multi-access Edge Computing)サーバ7Lとを例示する。
【0049】
クラウドサーバ7Hは、例えばクラウドコンピューティングを提供する少なくとも一つのサーバ装置である。クラウドサーバ7Hは、低コストである一方、高レイテンシであるといった特性を有する。つまり、クラウドサーバ7Hは、処理能力が高い、同一のサーバで収容可能な車両1の台数が多い、あるいは低価格である一方、遠いところに集約されたサーバ装置である。
【0050】
一例として、クラウドサーバ7Hは、例えば郊外などに設けられた大規模なデータセンタに設けられてもよい。
【0051】
クラウドサーバ7Hは、例えばインターネットなどの電気通信回線を介してルータ6との間で情報を送受信する。クラウドサーバ7Hは、ルータ6から受信した外部処理用データに基づく処理、すなわちサーバ側の支援処理を行う。クラウドサーバ7Hにより実行されるサーバ側の支援処理は、レイテンシ要求が緩い処理である。
【0052】
ここで、「レイテンシ要求が緩い」とは、許容されるレイテンシが大きいことであってもよく、あるいは許容される遅延時間が長いことであってもよい。
【0053】
一例として、クラウドサーバ7Hによるサーバ側の支援処理は、高負荷のAI処理であってもよい。
【0054】
一例として、クラウドサーバ7Hによるサーバ側の支援処理は、車両1の位置を推定する自車位置推定処理であってもよい。
【0055】
一例として、クラウドサーバ7Hによるサーバ側の支援処理は、車両1による自動運転や自動駐車、ナビゲーションに供される走行経路を生成する経路生成処理であってもよい。
【0056】
MECサーバ7Lは、例えばエッジコンピューティングを提供する少なくとも一つのエッジサーバ装置である。MECサーバ7Lは、高コストである一方、低レイテンシであるといった特性を有する。つまり、MECサーバ7Lは、処理能力が限定される、同一のサーバで収容可能な車両1の台数が少ない、あるいは高価格である一方、近くてレイテンシが低いサーバ装置である。
【0057】
一例として、ルータ6及びMECサーバ7Lは、例えば車両1からの無線信号を中継した無線基地局5、あるいはその近傍に配置されてもよい。なお、車両1からの無線信号を中継した無線基地局5を特定基地局と記載する場合もある。
【0058】
ここで、「Aの近傍」とは、例えば、Aを経由する通信を伴う処理についての車両から見たレイテンシが予め定められたしきい値を超えない範囲であってもよく、Aからの物理的な距離が予め定められたしきい値を超えない範囲であってもよい。
【0059】
一例として、ルータ6及びMECサーバ7Lは、例えば受信基地局を含む複数の無線基地局5を束ねている交換局、あるいはその近傍に配置されてもよい。なお、受信基地局を含む複数の無線基地局5を束ねている交換局を特定交換局と記載する場合もある。
【0060】
一例として、ルータ6及びMECサーバ7Lは、例えば特定交換局をハブとする複数の無線基地局5のうちの特定基地局の他の無線基地局5、あるいはその近傍に配置されてもよい。
【0061】
一例として、ルータ6及びMECサーバ7Lは、例えば基幹ネットワークなどを介して特定交換局に接続されている複数の交換局のうち、特定交換局と同一エリア内に位置する交換局、あるいはその近傍に配置されてもよい。ここで、同一エリア内とは、例えば同一市内、あるいは同一県内であってもよい。
【0062】
一例として、MECサーバ7Lは、例えばルータ6と同一LANに接続された少なくとも一つのエッジサーバ装置であってもよい。なお、ルータ6及びMECサーバ7Lは、同一LANに接続されていなくてもよい。また、ルータ6及びMECサーバ7Lは、それぞれ、特定基地局及び特定交換局に配置されるなど、互いに異なる場所に配置されていてもよい。
【0063】
なお、MECサーバ7Lは、例えばLANなどの電気通信回線を介してルータ6との間で情報を送受信する。MECサーバ7Lは、ルータ6から受信した外部処理用データに基づく処理、すなわちサーバ側の支援処理を行う。MECサーバ7Lにより実行されるサーバ側の支援処理は、レイテンシ要求が厳しい処理である。
【0064】
ここで、「レイテンシ要求が厳しい」とは、許容されるレイテンシが小さいことであってもよく、あるいは許容される遅延時間が短いことであってもよい。
【0065】
一例として、MECサーバ7Lによるサーバ側の支援処理は、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)処理や急発進防止処理などの先進運転支援システム(Advanced Driving Assistant System:ADAS)の各機能に係る処理であってもよい。
【0066】
図3は、実施形態に係る運転支援システム9の各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0067】
運転支援装置3、ルータ6及びサーバ7のそれぞれは、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、HDD(Hard Disk Drive)44及びI/F(インタフェース)45を有する。CPU41、ROM42、RAM43、HDD44及びI/F(インタフェース)45は、バス49などによって相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0068】
CPU41は、運転支援システム9の各装置の全体を制御する演算装置である。CPU41は、ROM42やHDD44に記憶されたプログラムをRAM43にロードして実行することにより、後述する各処理を実現する。
【0069】
なお、実施形態に係るCPU41は、運転支援システム9の各装置におけるプロセッサの一例である。当該プロセッサとしては、CPU41に代えて、あるいはCPU41に加えて、他のプロセッサが設けられてもよい。他のプロセッサとしては、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などの各種プロセッサや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)で実現される専用演算回路などが適宜利用可能である。
【0070】
ROM42は、CPU41による各種処理を実現するプログラムやパラメータ等を記憶する。
【0071】
RAM43は、運転支援システム9の各装置の主記憶装置であり、CPU41による各種処理に必要なデータを一時的に記憶する。
【0072】
HDD44は、運転支援システム9の各装置で使用される各種のデータやプログラム等を記憶する。なお、HDD44に代えて、あるいはHDD44に加えて、SSD(Solid State Drive)、Flashメモリ等の各種の記憶媒体や記憶装置が適宜利用可能である。
【0073】
なお、ROM42、RAM43及びHDD44を区別しない場合には、単に「内部メモリ」と記載する場合もある。
【0074】
一例として、運転支援装置3の内部メモリは、車両1の車載センサから出力されたセンサデータを保持してもよい。
【0075】
一例として、運転支援装置3の内部メモリは、複数のサーバ7から受信した支援情報を保持してもよい。
【0076】
一例として、運転支援装置3の内部メモリは、車両1に係る複数の支援処理と、当該複数の処理それぞれについて予め定められたレイテンシ種別と、の対応を示すテーブルなどの種別情報を記憶してもよい。
【0077】
ここで、「レイテンシ種別」とは、要求されるレイテンシの区分を示す情報であってもよい。なお、レイテンシ種別は、「高い」、「低い」といった二つの区分であってもよいし、三つ以上の複数の区分であってもよい。また、これらの区分は、複数のサーバ7の種別に対応していてもよいし、していなくてもよい。
【0078】
一例として、ルータ6の内部メモリは、予め定められた、複数のレイテンシ種別と、複数のサーバ7と、の対応を示すテーブルなどの振り分け情報を記憶してもよい。
【0079】
I/F35は、データを送受信するためのインタフェースである。
【0080】
一例として、運転支援装置3のI/F45は、車両1に設けられた他のデバイス、例えば車載センサ21やHMI22及び無線通信装置23からのデータを受信してもよい。また、運転支援装置3のI/F45は、車両1に設けられた他のデバイス、例えばHMI22、無線通信装置23及び車両制御装置24へデータを送信してもよい。
【0081】
なお、運転支援装置3のI/F45は、車両1内のCANなどの車載ネットワークを介して車両1に搭載された他のECUとの間で情報の送受信をしてもよいし、インターネット等のネットワークを介して車両1の外部の情報処理装置と通信をしてもよい。
【0082】
一例として、運転支援装置3のI/F45は、例えばCANなどの車載ネットワークを介して他のECUから、車速パルス、ヨーレートを含む角速度、加速度、位置情報、シフト情報などの車両1の状態に関する情報を取得してもよい。
【0083】
図4は、実施形態に係る運転支援装置3の機能構成の一例を示す図である。運転支援装置3は、RAM43にロードされたプログラムをCPU41で実行することにより、車両情報取得部301、レイテンシ種別付与部302、通信制御部303及び車両制御部304としての機能を実現する。
【0084】
車両情報取得部301は、支援処理に供される各種のデータを取得する。ここで、実施形態に係る車両情報取得部301は、取得部の一例である。
【0085】
一例として、車両情報取得部301は、ソナー211、全周囲カメラ212などの車両1の車載センサからのセンサデータを、例えばI/F35を介して取得してもよい。
【0086】
レイテンシ種別付与部302は、サーバ側の支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与する。ここで、実施形態に係るレイテンシ種別付与部302は、付与部の一例である。
【0087】
一例として、レイテンシ種別付与部302は、サーバ側の支援処理の処理内容に応じたレイテンシ情報を付与してもよい。
【0088】
通信制御部303は、無線基地局5との間の無線通信装置23による無線通信を制御する。ここで、実施形態に係る通信制御部303は、通信部又は第1通信部の一例である。
【0089】
一例として、通信制御部303は、無線基地局5を介した無線通信により、レイテンシ種別が付与された外部処理用データをルータ6へ送信してもよい。
【0090】
一例として、通信制御部303は、無線基地局5を介した無線通信により、支援情報をルータ6から受信してもよい。
【0091】
車両制御部304は、車両1の操舵、制動及び加減速の少なくともいずれかを制御する。ここで、実施形態に係る車両制御部304は、制御部の一例である。
【0092】
一例として、車両制御部304は、サーバ側の支援処理による支援情報に基づいて、車両1を制御してもよい。
【0093】
一例として、車両制御部304は、レイテンシ種別に応じたレイテンシ要求が満たされない場合、車両1の制御範囲を制限してもよい。
【0094】
図5は、実施形態に係るルータ6の機能構成の一例を示す図である。ルータ6は、RAM43にロードされたプログラムをCPU41で実行することにより、通信制御部601及び振り分け部602としての機能を実現する。
【0095】
通信制御部601は、無線基地局5との間の無線通信を制御する。また、通信制御部601は、複数のサーバ7のそれぞれとの間の通信を制御する。ここで、実施形態に係る通信制御部303は、第2通信部の一例である。
【0096】
振り分け部602は、外部処理用データを複数のサーバ7のいずれかのサーバ7に振り分ける。ここで、実施形態に係る振り分け部602は、選択部の一例である。
【0097】
一例として、振り分け部602は、外部処理用データに付与されたレイテンシ種別に応じて外部処理用データを複数のサーバ7のいずれかのサーバ7に振り分けてもよい。
【0098】
次に、以上のように構成された運転支援システム9で実行される支援処理の流れを説明する。
図6は、実施形態に係る運転支援システム9により実行される支援処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0099】
まず、運転支援システム9は、車両情報を取得する(S101)。具体的には、クライアント側の支援処理において、運転支援装置3の車両情報取得部301は、例えばCANなどの車載ネットワークを介して車両情報を取得する。
【0100】
車両情報とは、運転支援に係る各処理に供される情報であり、例えば車載センサ21から出力されたセンサデータを含む。車両情報は、センサデータの他の車両1についての各種の情報を含んでもよい。
【0101】
運転支援システム9は、送信パケットなどの伝送単位のデータごとにレイテンシ種別を付与する(S102)。具体的には、クライアント側の支援処理において、運転支援装置3のレイテンシ種別付与部302は、車両情報取得部301が取得した車両情報を用いて、各処理に必要なデータセット、すなわち処理単位のデータを生成する。また、レイテンシ種別付与部302は、内部メモリに格納されている種別情報を参照し、処理目的に応じたレイテンシ種別をパケットなどの伝送単位のデータ、あるいは処理単位のデータに付与することにより、外部処理用データを生成する。
【0102】
運転支援システム9は、外部処理用データ、すなわちレイテンシ種別が付与されたデータを運転支援装置3からルータ6へ伝送する(S103)。具体的には、クライアント側の支援処理において、運転支援装置3の通信制御部303は、レイテンシ種別付与部302が生成した外部処理用データを無線通信装置23により無線基地局5へ出力する。無線基地局5は、車両1の運転支援装置3から伝送された外部処理用データを中継し、ルータ6に供給する。ルータ6の通信制御部601は、運転支援装置3からの外部処理用データを取得する。
【0103】
運転支援システム9は、外部処理用データに付与されたレイテンシ種別に応じて、外部処理用データについての処理を複数のサーバ7に振り分ける(S104)。具体的には、ルータ6の振り分け部602は、内部メモリに格納されている振り分け情報を参照し、外部処理用データについての処理を要求するサーバ7を特定する。ルータ6の通信制御部601は、振り分け部602が特定した振り分け先のサーバ7に処理要求を出力する。サーバ側の支援処理において、ルータ6からの処理要求を受信したサーバ7は、要求された処理の実行可否を示す応答を出力する。
【0104】
なお、ルータ6は、処理を実行できない旨のサーバ7からの応答を受信した場合、レイテンシ種別に応じた他のサーバ7を特定し、特定したサーバ7に対して同様に処理要求を行う。
【0105】
なお、ルータ6は、処理を実行できない旨のサーバ7からの応答を受信した場合、かつ、他にレイテンシ種別に応じたサーバ7が存在しない場合、レイテンシ種別に応じたレイテンシ要求を満たす他のサーバ7を特定し、特定したサーバ7に対して同様に処理要求を行う。
【0106】
なお、ルータ6は、処理を実行できない旨のサーバ7からの応答を受信した場合、かつ、他にレイテンシ種別に応じたレイテンシ要求を満たすサーバ7が存在しない場合、レイテンシ要求を満たさない他のサーバ7に外部処理用データについての処理を振り分ける。この場合、ルータ6は、レイテンシ要求を満たす振り分けが実施できなかった旨の通知を、無線基地局5を介して運転支援装置3に出力する。
【0107】
運転支援システム9は、外部処理用データに付与されたレイテンシ種別に応じた振り分けが実施できたかを判定する(S105)。具体的には、クライアント側の支援処理において、運転支援装置3の通信制御部303は、レイテンシ要求を満たす振り分けが実施できなかった旨のルータ6からの通知を受信したかを判定する。
【0108】
レイテンシ種別に応じた振り分けが実施できた場合(S105:Yes)、
図6の流れは、S107の処理へ進む。
【0109】
一方、レイテンシ種別に応じた振り分けが実施できなかった場合(S105:No)、運転支援システム9は、車両制御の範囲を制限する(S106)。具体的には、クライアント側の支援処理において、運転支援装置3の車両制御部304は、レイテンシ要求を満たす振り分けが実施できなかった旨のルータ6からの通知を通信制御部303が受信した場合、車両制御の範囲を制限する。
【0110】
一例として、車両制御部304は、車両1が安全の範囲内で走行可能に車両1の速度制御の範囲を制限してもよい。例えば、車両制御部304は、予め定められた速度まで車速を落としてもよい。例えば、ルータ6からの通知に処理が振り分けられたサーバ7の情報が含まれる場合、車両制御部304は、処理が振り分けられたサーバ7のレイテンシに応じた速度まで車速を落としてもよい。
【0111】
運転支援システム9は、レイテンシ種別に応じて振り分けられた外部処理用データについての処理を実行する(S107)。具体的には、サーバ側の支援処理において、ルータ6からの処理要求を受け付けたサーバ7は、外部処理用データに基づく処理を実行する。
【0112】
運転支援システム9は、処理後のデータをサーバ7から対象の車両1へ伝送する(S108)。具体的には、サーバ側の支援処理において、レイテンシ種別に応じて振り分けられた外部処理用データを処理したサーバ7は、処理結果を含む支援情報をルータ6に出力する。ルータ6の通信制御部601は、受信した支援情報を、無線基地局5を介して対象の車両1に送信する。クライアント側の支援処理において、運転支援装置3の通信制御部303は、サーバ7からの支援情報を取得する。
【0113】
運転支援システム9は、処理後のデータに応じて車両1を制御する(S109)。具体的には、クライアント側の支援処理において、運転支援装置3の車両制御部304は、車両制御の範囲を制限していた場合には、その制限を解除する。また、車両制御部304は、サーバ7から通信制御部303が受信した支援情報に基づいて、車両1を制御する。その後、
図6の流れは終了する。
【0114】
なお、実施形態に係る運転支援装置3及びルータ6は、一体に構成されていてもよい。つまり、実施形態に係る通信制御部601及び振り分け部602は、運転支援装置3により実現されてもよい。
【0115】
なお、実施形態に係るルータ6及びMECサーバ7Lは、一体に構成されていてもよい。つまり、実施形態に係る通信制御部601及び振り分け部602は、MECサーバ7Lにより実現されてもよい。ここで、一体に構成されたルータ6及びMECサーバ7Lは、第1サーバの一例である。
【0116】
なお、実施形態に係る支援処理は、車両1の運転支援に係る処理に限らず、車載インフォテインメント(In-Vehicle Infotainment:IVI)機能に係る処理であってもよい。また、車両情報は、HMI22の入力デバイスからユーザ操作に応じて出力されたデータを含んでもよい。一例として、クラウドサーバ7Hによるサーバ側の支援処理は、バックグラウンド処理などのIVI機能において画面遷移に影響しない、すなわち低レスポンスが許容される処理であってもよい。一例として、MECサーバ7Lによるサーバ側の支援処理は、ユーザによる画面タップに対する応答やゲームサービスなどのIVI機能において画面遷移に影響する、すなわち高レスポンスが要求される処理であってもよい。
【0117】
なお、実施形態に係る支援処理において、レイテンシ種別は、車速やシフト、操舵、ブレーキなどの支援処理の制御対象に応じて付与されてもよい。一例として、車速、操舵及びブレーキのうちの少なくとも一つが支援処理の制御対象に含まれる場合、低レイテンシを要求するレイテンシ種別が付与されてもよい。一例として、シフトが支援処理の制御対象に含まれる場合、高レイテンシを許容するレイテンシ種別が付与されてもよい。
【0118】
なお、実施形態に係る支援処理において、レイテンシ種別は、センサデータを出力した車載センサ21の種別に応じて付与されてもよい。一例として、ソナー211からのセンサデータを含む外部処理用データには、低レイテンシを要求するレイテンシ種別が付与されてもよい。一例として、全周囲カメラ212からの画像データを含む外部処理用データには、高レイテンシを許容するレイテンシ種別が付与されてもよい。
【0119】
なお、実施形態に係る支援処理において、レイテンシ種別は、処理内容や制御対象、センサ種別などに応じた固定のレイテンシ種別に限らず、動的に付与されるものであってもよい。
【0120】
例えば、レイテンシ種別は、車速やシフト、アクセル開度などの車両1の状態に応じて付与されてもよい。一例として、車速が大きい状態、シフトが高速側の状態、アクセル開度が大きい状態である場合、低レイテンシを要求するレイテンシ種別が付与されてもよい。
【0121】
例えば、レイテンシ種別は、車載センサ21やクラウドサーバ7Hにより認識された車両1の周りの状況、すなわち周囲環境に応じて付与されてもよい。一例として、車両1の周囲に人や物体が検出されている場合、あるいは見通しの悪い狭路などを走行中の場合、低レイテンシを要求するレイテンシ種別が付与されてもよい。
【0122】
なお、実施形態に係る支援処理において、レイテンシ種別は、処理内容、車両1の状態、センサ種別及び周囲環境のうちの二つ以上に応じて付与されてもよい。
【0123】
一例として、レイテンシ種別は、処理内容、制御対象及びセンサ種別のうちの少なくとも一つに関して予め定められた固定のレイテンシ種別であってもよく、当該固定のレイテンシ種別が車両1の状態及び周囲環境の少なくともいずれかに応じて動的に変更されてもよい。
【0124】
なお、実施形態に係る支援処理は、要求されるレイテンシの区分を示すレイテンシ種別に限らず、許容されるレイテンシを示す許容遅延時間を付与してもよい。ここで、実施形態に係るレイテンシ種別及び許容遅延時間のそれぞれは、レイテンシ情報の一例である。
【0125】
なお、実施形態に係る支援処理において振り分け部602は、レイテンシ種別に依らず、許容遅延時間に応じて振り分けを実施してもよい。一例として、振り分け部602は、予め定められて内部メモリに保持されている所定の閾値と、外部処理用データに付与された許容遅延時間とに基づいて、振り分け先のサーバ7を特定してもよい。
【0126】
例えば、振り分け部602は、付与された許容遅延時間が所定の閾値を超える場合、すなわち許容遅延時間が長い状況においては、AEB処理などの上述の実施形態においてMECサーバ7Lに振り分けるとした処理を、クラウドサーバ7Hに振り分けてもよい。また、例えば、振り分け部602は、付与された許容遅延時間が所定の閾値より短い場合、すなわち許容遅延時間が短い状況においては、経路生成処理などの上述の実施形態においてクラウドサーバ7Hに振り分けるとした処理を、MECサーバ7Lに振り分けてもよい。
【0127】
このように、実施形態に係る運転支援システム9は、サーバ側の支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与するように構成されている。換言すれば、運転支援装置3は、アップロードするデータにレイテンシ情報を付与するように構成されている。また、運転支援システム9は、複数のサーバ7のうち、付与されたレイテンシ情報に応じたレイテンシ要求を満たすサーバ7に外部処理用データを振り分けるように構成されている。
【0128】
この構成によれば、複数のサーバ7においてコスト最小化できるように、レイテンシ要求を満たす複数のサーバ7から支援処理を実行するサーバ7を選択することができる。つまり、付与されたレイテンシ情報に基づいて複数のサーバ7の間で処理を実行するサーバ7を切り替えることができる。したがって、上記構成によれば、例えば距離的な制約のあるMECサーバ7Lで処理すべき処理数又は処理量を減らすことにより同一のMECサーバ7L内で収容できる車両1の台数を増やし、また、大規模なクラウドサーバ7Hの活用により、複数のサーバ7におけるワークロードの平準化を実現することができる。
【0129】
なお、上述の各実施形態において「Aであるかを判定する」とは、Aであることを判定することであってもよいし、Aではないことを判定することであってもよいし、Aであるか否かを判定することであっても構わない。
【0130】
上述の各実施形態に係る運転支援システム9の各装置(運転支援装置3、ルータ6、クラウドサーバ7H及びMECサーバ7L)で実行される各プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、FD、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供される。
【0131】
また、上述の各実施形態に係る運転支援システム9の各装置で実行される各プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の各実施形態に係る運転支援システム9の各装置で実行される各プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0132】
また、上述の各実施形態に係る運転支援システム9の各装置で実行される各プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0133】
また、上述の各実施形態に係る運転支援システム9の各装置で実行されるプログラムは、上述した各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU31がROM32又はHDD34からプログラムを読み出して実行することにより上記各機能部がRAM33上にロードされ、上記各機能部がRAM33上に生成されるようになっている。
【0134】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、複数の車両からの処理を実行する複数のサーバにおけるワークロードを平準化することができる。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0136】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
(1)
通信回線を介して複数のサーバのうちのいずれかのサーバに送信されて当該サーバによる支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与する付与部と、
前記レイテンシ情報が付与された外部処理用データを送信し、当該外部処理用データに基づく前記サーバの処理結果を含む支援情報を受信する通信部と、
前記支援情報に基づいて車両を制御する制御部と、を備える、
支援装置。
(2)
前記付与部は、前記支援処理の処理内容に応じたレイテンシ情報を付与する、
上記(1)に記載の支援装置。
(3)
前記付与部は、前記車両の状態に応じたレイテンシ情報を付与する、
上記(1)又は上記(2)に記載の支援装置。
(4)
前記付与部は、前記支援処理の制御対象に応じたレイテンシ情報を付与する、
上記(1)から上記(3)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(5)
前記付与部は、前記外部処理用データに含まれるセンサデータを出力した、前記車両の車載センサのセンサ種別に応じたレイテンシ情報を付与する、
上記(1)から上記(4)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(6)
前記付与部は、前記車両の周囲環境に応じたレイテンシ情報を付与する、
上記(1)から上記(5)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(7)
前記制御部は、前記レイテンシ情報に応じたレイテンシ要求が満たされない場合、前記車両の制御範囲を制限する、
上記(1)から上記(6)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(8)
前記外部処理用データは、前記車両の車載センサから出力されたセンサデータを含む、
上記(1)から上記(7)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(9)
前記外部処理用データは、入力デバイスからユーザ操作に応じて出力されたデータを含む、
上記(1)から上記(7)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(10)
前記付与部は、前記外部処理用データに関し、伝送単位又は処理単位のデータごとに前記レイテンシ情報を付与する、
上記(1)から上記(9)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(11)
前記レイテンシ情報は、要求されるレイテンシの区分を示すレイテンシ種別と、許容されるレイテンシを示す許容遅延時間とのいずれかである、
上記(1)から上記(10)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(12)
上記(1)から上記(11)のうちのいずれかに記載の支援装置と、
前記支援装置から前記支援情報に基づいて出力された制御情報に基づいて、操舵角、駆動及びブレーキのうちの少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を備える車両。
(13)
上記(1)から上記(11)のうちのいずれかに記載の支援装置と、
ソナー、全周囲カメラ、操舵角センサ、車輪速センサ、方位センサ及びGNSSセンサのうちの少なくとも一つと、
を備える車両。
(14)
上記(1)から上記(11)のうちのいずれかに記載の支援装置と、
ユーザ操作を受け付ける入力デバイスと、
を備える車両。
(15)
前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分ける振り分け部をさらに備える、
上記(1)から上記(14)のうちのいずれかに記載の支援装置。
(16)
前記レイテンシ情報は、許容されるレイテンシを示す許容遅延時間であり、
前記振り分け部は、前記許容遅延時間に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分ける、
上記(15)に記載の支援装置。
(17)
上記(1)から上記(14)のうちのいずれかに記載の支援装置又は車両と、
前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分けるルータと、
前記複数のサーバと、を含む、
支援システム。
(18)
上記(1)から上記(14)のうちのいずれかに記載の支援装置又は車両と、
前記複数のサーバと、を含み、
前記複数のサーバのうちの第1サーバは、前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分ける、
支援システム。
(19)
通信回線を介して複数のサーバのうちのいずれかのサーバに送信されて当該サーバによる支援処理に供されるデータに対して、要求されるレイテンシを示すレイテンシ情報を付与することと、
前記レイテンシ情報が付与された外部処理用データを送信することと、
前記外部処理用データに基づく前記サーバの処理結果を含む支援情報を受信することと、
前記支援情報に基づいて車両を制御することと、を含む、
支援方法。
(20)
前記支援処理の処理内容に応じたレイテンシ情報を付与することを含む、
上記(19)に記載の支援方法。
(21)
前記車両の状態に応じたレイテンシ情報を付与することを含む、
上記(19)又は上記(20)に記載の支援方法。
(22)
前記外部処理用データに含まれるセンサデータを出力した、前記車両の車載センサのセンサ種別に応じたレイテンシ情報を付与することを含む、
上記(19)から上記(21)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(23)
前記車両の周囲環境に応じたレイテンシ情報を付与することを含む、
上記(19)から上記(22)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(24)
前記レイテンシ情報に応じたレイテンシ要求が満たされない場合、前記車両の制御範囲を制限することを含む、
上記(19)から上記(23)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(25)
前記外部処理用データは、前記車両の車載センサから出力されたセンサデータを含む、
上記(19)から上記(24)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(26)
前記外部処理用データは、入力デバイスからユーザ操作に応じて出力されたデータを含む、
上記(19)から上記(25)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(27)
前記外部処理用データに関し、伝送単位のデータごとに前記レイテンシ情報を付与することを含む、
上記(19)から上記(26)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(28)
前記外部処理用データに関し、処理単位のデータごとに前記レイテンシ情報を付与することを含む、
上記(19)から上記(27)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(29)
前記レイテンシ情報は、要求されるレイテンシの区分を示すレイテンシ種別と、許容されるレイテンシを示す許容遅延時間とのいずれかである、
上記(19)から上記(28)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(30)
前記外部処理用データに付与された前記レイテンシ情報に応じて前記外部処理用データを前記複数のサーバのいずれかのサーバに振り分けることを含む、
上記(19)から上記(29)のうちのいずれかに記載の支援方法。
(31)
上記(19)から上記(30)のうちのいずれかに記載の支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
(32)
コンピュータにより実行されるプログラムであって、上記(31)に記載のプログラムが記録された記憶媒体(Computer Program Product)。
【符号の説明】
【0137】
1 車両
12 車体
13 車輪
14 バンパー
21 車載センサ
211 ソナー
212 全周囲カメラ
22 HMI
23 無線通信装置
24 車両制御装置
3 運転支援装置
301 車両情報取得部
302 レイテンシ種別付与部
303 通信制御部
304 車両制御部
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 HDD
45 I/F
49 バス
5 無線基地局
6 ルータ
601 通信制御部
602 振り分け部
7 サーバ
7H クラウドサーバ
7L MECサーバ