(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113767
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61H3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018929
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪妻 利広
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】エリック アリワルガ
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA11
4C046AA25
4C046AA52
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD39
4C046EE02
4C046EE07
4C046FF04
(57)【要約】
【課題】転倒防止装置の利便性を向上させる。
【解決手段】転倒防止装置が、人体の足に装着し、前記人体に対して刺激を付与する刺激付与部を備えた装着体と、前記人体が歩行状態であるとき、前記装着体を装着した前記足が前に踏み出されることを感知するセンサであり、前記装着体が装着された前記足の動きを検知するセンサと、前記装着体を装着した前記足が前に踏み出されることを前記センサによって検知した場合に、前記刺激付与部へ作動信号を送る送信部と、を備え、前記送信部から送られた前記作動信号に応じて前記刺激付与部が、前記装着体を装着した前記足に刺激を与え、当該足のつま先を踝に対して持ち上げさせる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の足に装着し、前記人体に対して刺激を付与する刺激付与部を備えた装着体と、
前記人体が歩行状態であるとき、前記装着体を装着した前記足が前に踏み出されることを感知するセンサであり、前記装着体が装着された前記足の動きを検知するセンサと、
前記装着体を装着した前記足が前に踏み出されることを前記センサによって検知した場合に、前記刺激付与部へ作動信号を送る送信部と、を備え、
前記送信部から送られた前記作動信号に応じて前記刺激付与部が、前記装着体を装着した前記足に刺激を与え、当該足のつま先を踝に対して持ち上げさせる転倒防止装置。
【請求項2】
前記刺激付与部は電極を備え、前記送信部からの電気エネルギーを前記電極から前記足に供給する、請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記装着体は、前記足の脹脛、脛、足の裏、又は足の甲の何れかに装着される、請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項4】
前記センサは前記装着体と一体に構成され、前記装着体は固定具によって前記足に対して固定される、請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項5】
前記センサは、前記足に装着された加速度センサ、角速度センサ、又はジャイロセンサである、請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項6】
前記刺激付与部は、前記足の前脛骨筋又は腓骨筋に刺激を与えることで、前記足のつま先を上げさせる、請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項7】
前記送信部は、前記刺激付与部によって刺激を与えられた前記足のつま先が踝に対して持ち上がる程度に応じ、持ち上がる量が所定量以下の場合に、更に前記刺激付与部へ作動信号を送る、請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記センサの検知結果に基づいて求められた前記人体における大腿部の持ち上がる程度に応じた前記作動信号を前記刺激付与部へ送信する、請求項1又は請求項2に記載の転倒防止装置。
【請求項9】
前記装着体、前記センサ、及び前記送信部が一体に構成され、前記人体の下腿部に取り付けられる、請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項10】
前記送信部は、前記センサの検知結果に基づいて転倒の可能性を判定し、転倒の可能性有りと判定した場合に、所定の担当者の端末へ警報を送信する、請求項1又は請求項2に記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加速度センサの検出信号に基づいて足の持ち上げ速度及び/又は持ち上げ量を検出し、これらの量が基準値より低いと判定したときに、前記刺激機を作動させ、転倒防止のための動きを使用者に促す歩行用靴が開示されている。
【0003】
非特許文献1には、靴の中にセンサを挿入し、歩行するユーザの踵が地面に着いているときに筋肉への電気刺激をオフにし、ユーザの踵が地面に着いていないときに筋肉への電気刺激をオンにして、つま先を上げさせる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"歩行のリハビリに|NESS L300-一般の方向け|[公式]フランスベッド"、[online]、FRANCEBED、[令和4年12月15日検索]、インターネット〈URL:https://medical.francebed.co.jp/brand_site/bioness/l300/individual.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、刺激機が靴本体に取り付けられていると、靴を履かない状況では利用できず、利便性が低いという問題があった。
【0007】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、転倒防止装置の利便性向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の転倒防止装置は、
人体の足に装着し、前記人体に対して刺激を付与する刺激付与部を備えた装着体と、
前記人体が歩行状態であるとき、前記装着体を装着した前記足が前に踏み出されることを感知するセンサであり、前記装着体が装着された前記足の動きを検知するセンサと、
前記装着体を装着した前記足が前に踏み出されることを前記センサによって検知した場合に、前記刺激付与部へ作動信号を送る送信部と、を備え
前記送信部から送られた前記作動信号に応じて前記刺激付与部が、前記装着体を装着した前記足に刺激を与え、当該足のつま先を踝に対して持ち上げさせる。
【0009】
前記転倒防止装置において、前記刺激付与部は、電極を備え、前記送信部からの電気エネルギーを前記電極から前記足に供給してもよい。
【0010】
前記転倒防止装置において、前記装着体は、前記足の脹脛、脛、足の裏、又は足の甲の何れかに装着されてもよい。
【0011】
前記転倒防止装置において、前記センサは前記装着体と一体に構成され、前記装着体は固定具によって前記足に対して固定されてもよい。
【0012】
前記転倒防止装置において、前記センサは、前記足に装着された加速度センサ、角速度センサ、又はジャイロセンサであってもよい。
【0013】
前記転倒防止装置において、前記刺激付与部は、前記足の前脛骨筋又は腓骨筋に刺激を与えることで、前記足のつま先を上げさせてもよい。
【0014】
前記転倒防止装置において、前記送信部は、前記刺激付与部によって刺激を与えられた前記足のつま先が踝に対して持ち上がる程度をモニターし、持ち上がる量が所定量以下の場合に、更に前記刺激付与部へ作動信号を送ってもよい。
【0015】
前記転倒防止装置において、前記送信部は、前記センサの検知結果に基づいて前記人体における大腿部の動きをモニターし、前記装着体を装着した足の大腿部が持ち上がる程度に応じた前記作動信号を前記刺激付与部へ送信してもよい。
【0016】
前記転倒防止装置において、前記装着体、前記センサ、及び前記送信部が一体に構成され、前記人体の下腿部に取り付けられてもよい。
【0017】
前記転倒防止装置において、前記送信部は、前記センサの検知結果に基づいて転倒の可能性を判定し、転倒の可能性有りと判定した場合に、所定の担当者の端末へ警報を送信してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、転倒防止装置の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、転倒防止装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ユーザに装着された状態の転倒防止装置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、装着体を裏面側から見た場合の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、装着体を表面側から見た場合の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、転倒防止装置の制御部が実行する起動時処理を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る転倒防止装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る転倒防止装置について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0021】
≪装置構成≫
図1は、転倒防止装置1の概略構成を示す図であり、
図2は、ユーザの足に装着された状態の転倒防止装置1を示す概略図である。
図1に示す転倒防止装置1は、ユーザ(対象者)が歩行する際にユーザの足に刺激を与えて、つま先を上げさせ、ユーザが躓いて転倒することを防止する装置である。転倒防止装置1は、装着体11と、センサ12と、制御装置13、バッテリ(電源)14とを有する。
【0022】
図3は、装着体11を裏面側から見た場合の概略構成を示す図、
図4は、装着体11を
表面側から見た場合の概略構成を示す図である。装着体11は、人体に対して刺激を付与する刺激付与部110と、刺激付与部110をユーザの身体(人体)の足に装着する帯状部材119とを有する。刺激付与部110は、ユーザの足に刺激を与え、足の筋肉を伸縮させることで、ユーザのつま先を上げさせる。刺激付与部110による刺激は、例えば、突起部による刺突や、バイブレータによる振動、温度の変化(熱刺激)、筋肉へ供給される電気エネルギー(電気刺激)、また、これらの組み合わせ等が挙げられる。本実施形態の刺激付与部110は、電気刺激を与える構成であるが、これに限定されるものではない。
【0023】
刺激付与部110は、ユーザの足と接するように配置される電極111・112と、配線113とを有する。配線113は、電極111・112と制御装置(送信部)13とを電気的に接続し、後述のように制御装置13から送信された電気信号を電極111・112へ伝達する。
【0024】
帯状部材119は、ユーザの足に対して周方向に巻き付けられる帯状の部材である。帯状部材119の材料は、特段限定されるものではないが、例えば布や合成樹脂のシートなど、ユーザの足に巻き付け可能な柔軟性を有する材料で形成されてもよい。また、帯状部材119の材料は、絶縁性の材料で形成されてもよい。
【0025】
帯状部材119は、裏面(ユーザの足と接する側の面)1191に電極111・112及び固定具1193が設けられ、表面1192に、センサ12及び制御装置13を内蔵する筐体1194が設けられている。即ち、本実施形態では、装着体11と、センサ12と、制御装置13とが一体に形成されている。これに限らず、センサ12及び制御装置13と、装着体11とは、別体に形成されてもよい。また、帯状部材119が複数のシートで構成され、裏面1191と表面1192との間に内部空間が形成され、センサ12及び制御装置13が帯状部材119の内部空間内に配置されてもよい。更に、帯状部材119には、センサ12及び制御装置13に加えて、バッテリ14が備えられてもよい。また、帯状部材119には、トレーニングやリハビリテーションを行う際の負荷を増加させるための錘が設けられてもよい。この場合、錘を着脱可能とし、帯状部材119に取り付ける錘の重さを変えて負荷を調整できるように構成することが好ましい。
【0026】
帯状部材119は、電極111・112をユーザの足のうち、刺激を与える箇所(以下、被刺激箇所とも称す)に接触させた状態で当該足に巻回され、固定具1193が表面1192に止められることで、当該足に装着される。本実施形態では、帯状部材119における表面1192の少なくとも一部の領域1195と、固定具1193とが、面ファスナーを構成し、固定具1193が帯状部材119の表面1192に押し付けられることで帯状部材119の端部が固定される。固定具1193は、表面1192のうち、面ファスナーを構成する領域1195内であれば固定され得るので、ユーザの足にフィットするように調整して装着体11をユーザの足に装着させることが可能である。なお、固定具1193は、面ファスナーに限らず、スナップボタンや、帯状部材119の表面1192に設けられた穴に係止される係止爪等であってもよい。帯状部材119は、弾性を有するように構成され、固定具1193が表面1192に対して固定され、ユーザの足に装着された際、弾性によって当該足を締め付けて装着状態を維持し、ズレ等を防止する構成とされてもよい。
【0027】
本実施形態の転倒防止装置1は、二つ(一対)の装着体11を備え、左右の足に夫々装着体11が装着される。なお、装着体11の数は、二つに限定されるものではない。例えば、左右の足の何れか一方にのみ刺激を与える場合は、刺激を与える足に一つの装着体11が装着される構成であってもよい。また、転倒防止装置1は、3つ以上の装着体11を備え、一本の足に対して複数の装着体11が装着されてもよい。
【0028】
装着体11の装着箇所は、特段限定されるものではないが、例えば、足の脹脛、脛、足の裏、又は足の甲の何れかに装着されてもよい。本実施形態の装着体11は、電極111・112が例えばユーザの前脛骨筋若しくは腓骨筋、又は前脛骨筋及び腓骨筋に電気エネルギーを供給可能な位置に装着される。即ち、本実施形態の刺激付与部110は、ユーザの前脛骨筋若しくは腓骨筋、又は前脛骨筋及び腓骨筋等の筋肉を被刺激箇所とする。これに限らず、被刺激箇所は、ユーザの足における他の箇所であってもよい。なお、筋肉を被刺激箇所とする場合、皮膚や皮下組織など、筋肉以外の部位が被刺激箇所に含まれてもよい。例えば、装着体11は、電極111・112が、筋肉の周囲に存在する皮膚と接し、皮膚等の部位を介して当該筋肉へ電気エネルギーを供給する構成であってもよい。なお、電極111・112が、被刺激箇所と接して配置される際、被刺激箇所との間に、導電性のジェルやシート、粘着剤等が介在してもよい。また、被刺激箇所は、刺激によって、つま先を上げさせる筋肉を動作させ、他の筋肉を不必要に動作させない箇所が好ましい。本実施形態のように、電極111・112が前脛骨筋若しくは腓骨筋、又は前脛骨筋及び腓骨筋に電気エネルギーを供給する位置に配置されると、電気刺激によって前脛骨筋若しくは腓骨筋、又は前脛骨筋及び腓骨筋が収縮し、ユーザのつま先を踵に対して上げさせることができる。特に、刺激付与部110が、前脛骨筋若しくは腓骨筋、又は前脛骨筋及び腓骨筋へ選択的に刺激を与えることで、歩行のために足を前に出す動作や歩行中のバランスをとる動作等を行う他の筋肉への影響を抑えることができる。
【0029】
センサ12は、ユーザが歩行状態であるとき、装着体11が装着された足の動きを検知し、当該足が前に踏み出されることを感知するものである。センサ12は、足の動きを検知できるものであれば、特段限定されるものではないが、例えば、加速度センサ、角速度センサ、ジャイロセンサ、測位装置、カメラ、又は、これらの組み合わせが挙げられる。本実施形態のセンサ12は、装着体11と一体に構成され、装着体11が固定具1193によってユーザの足に対して固定されるので、センサ12は、当該足と共に移動して足の動きを検知する。ここで、足の動きは、例えば、足の動く方向や速度、加速度、角速度等である。センサ12は、片方の足に対して複数設けられてもよい。例えば、装着体11と一体に設けられた加速度センサや、角速度センサ、又はジャイロセンサに加えて、足先の動きを検知するセンサが設けられてもよい。本実施形態のセンサ12は、足を前に出す動作を検知するための第一センサ(例えば加速度センサ)121と、足先の動きをモニターするための第二センサ(例えばカメラ)122とを備えている。なお、第二センサ122は、足先に取り付けられた加速度センサや、角速度センサ、又はジャイロセンサであってもよい。非特許文献1のように、圧力センサを用いて足が地面に着いているか否かを検出する装置の場合、圧力センサを靴に設けることになり、靴を履かない状況では使用できないという問題があった。これに対し本実施形態の転倒防止装置1は、加速度センサやジャイロセンサ等により、足の動きを検知するため、センサ12の取り付け箇所は、歩行に伴って動く箇所であればよく、靴に限定されない。このため、本実施形態の転倒防止装置1は、屋内等、靴を履かない状況であっても使用でき、利便性を向上させることができる。
【0030】
第一センサ121は、装着体11と一体に構成されるものに限らず、ユーザの足のうち装着体11と別の箇所、例えば大腿部や足首、腰回り等、装着体11と別の箇所に装着され、装着箇所の動きを検知するものであってもよい。この場合、第一センサ121は、装着体11と別の箇所にのみ設けられても、装着体11と一体に設けられたものに加えて、装着体11と別の箇所に設けられてもよい。第一センサ121は、足に装着されるものに限らず、腰回りや頭部等に装着されたカメラであって、足の動画像を撮影し、画像処理によって足の動きを検出するものであってもよい。同様に第二センサ122は、大腿部や足首、腰回り、膝、頭部等、装着体11と別の箇所に装着されてもよい。
【0031】
制御装置13は、本実施形態における送信部の一例であり、装着体11を装着した足が
前に踏み出されることをセンサ12によって検知した場合に、刺激付与部110へ作動信号を送る。
図5は、制御装置13の構成を示す図である。制御装置13は、制御部310、記憶部320、入出力部330、及び電力供給部340を備える。制御部310は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPG
A(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、及びRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などの主記憶部を備える。
【0032】
記憶部(補助記憶部)320は、RAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、又はリムーバブルメディアなどの記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、又はBD(Blu-ray(登録商標)Disc
)のようなディスク記録媒体である。また、記憶部320は、外部から装着可能なメモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて構成されてもよい。
【0033】
記憶部320には、制御装置13の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種データテーブル、各種データベース、設定データ、ユーザデータなどが記憶可能である。
【0034】
入出力部330は、制御部310への情報の入力や、制御部310からの情報の出力を行う。入出力部330は、タッチパネルや、操作ボタン(操作部)など、制御部310へ情報を入力する入力手段(入力部)331を有してもよい。また、入出力部330は、ディスプレイや、インジケータ、スピーカ、バイブレータなど、ユーザに対して情報を出力する出力手段332を有してもよい。なお、制御装置13が、装着体11の内部に配置される場合、操作ボタンやディスプレイ等のユーザインタフェースを帯状部材119の表面1192に設けてもよい。入出力部330は、通信回線を介して、他の装置からの情報の入力(受信)、及び他の装置への情報の出力(送信)を行う通信ユニット(CCU)333を有してもよい。
【0035】
電力供給部340は、刺激付与部110の配線113を介して電極111・112と接続され、制御部310の制御に応じて刺激付与部110へ作動信号(電力)を供給する。作動信号は、例えば、低周波数の電気信号である。また、作動信号は、パルス状の信号であってもよい。
【0036】
制御部310は、記憶部320に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域に読み出して実行し、記憶部320、入出力部330、及び電力供給部340といった各構成部を制御する。制御部310は、センサ12の検知結果に基づいて、足が前に踏み出されると判定した場合に、電力供給部340から刺激付与部110へ作動信号を送らせ、刺激付与部110を作動させる。
【0037】
≪転倒防止方法≫
図6は、転倒防止装置1の制御部310が実行する起動時処理を示す図である。転倒防止装置1の電源が投入された場合や、ユーザによって動作の開始が指示された場合に制御部310は、
図6の処理を実行する。
【0038】
ステップS10にて、制御部310は、センサ12によりユーザの足の動きを示す情報(検知結果)を取得する。例えば、制御部310は、第一センサ121の検知結果を取得する。制御部310は、センサ12の検知結果を主記憶部又は記憶部320に記憶させ、足の動きに係る時間変化をモニター可能としてもよい。
【0039】
ステップS20にて、制御部310は、ステップS10で取得した検知結果、即ち、装着体11が装着された脹脛等の動きや、大腿部の動きに基づいて、ユーザの足が前に踏みだされたか否かを判定する。ステップS20において、否定判定であれば、制御部310は、ステップS10へ戻り、肯定判定であれば、制御部310は、ステップS30へ移行する。
【0040】
ステップS30にて、制御部310は、電力供給部340を制御し、電力供給部340から刺激付与部110へ作動信号を送らせ、ユーザの足に電気刺激を与えて、つま先を上げさせる。ここで、制御部310は、足の動きの程度、例えば大腿部が持ち上がる程度に応じて作動信号の大きさを求め、足の動きの程度に応じた作動信号を電力供給部340から刺激付与部110へ送らせてもよい。例えば、装着体11の装着箇所や大腿部が持ち上がる程度が、所定値以下であった場合、足を上げる量が少なく躓き易いため、つま先を上げさせる筋肉の動きを大きくするように作動信号の大きさを定める。ここで作動信号の大きさは、例えば作動信号の電圧値やデューティー比等である。
【0041】
ステップS40にて、制御部310は、センサ12により足先の動きを示す情報(検知結果)を取得する。例えば、制御部310は、第二センサ122の検知結果を取得する。
【0042】
ステップS50にて、制御部310は、ステップS40で取得した検知結果に基づいて、ユーザの足先が踵に対して上がる程度を求める。ここで、足先が踵に対して上がる程度は、例えば足先の移動量や、移動速度、踵を中心に足先を上へ回転させた角度(以下、足先角度とも称す)等である。
図7は、足先角度の説明図である。
図7に示すように、本実施形態では、水平な直線51に対し、つま先と踵とを結ぶ直線52が成す角度θを足先角度としている。なお、足先が踵に対して上がる程度は、既に足先が移動した移動量であってもよいし、移動速度等に基づいて足先が踵に対して上がると推定される推定量であってもよい。
【0043】
ステップS60にて、制御部310は、ユーザの足先が踵に対して上がる程度が、所定量以下か否か、即ち更に前記刺激付与部110へ作動信号を送るか否かを判定する。例えば、
図7の足先角度θが、10°~40°、望ましくは15°~30°の範囲で、所定量として定められた場合、制御部310は、ステップS50で求めた足先角度が、この所定量以下か否かを判定する。ステップS60において、否定判定であれば、制御部310は、
図6の処理を終了し、肯定判定であれば、制御部310は、ステップS70へ移行する。
【0044】
ステップS70にて、制御部310は、電力供給部340を制御し、電力供給部340から刺激付与部110へ作動信号を送らせ、ユーザの足に電気刺激を与えて、つま先を上げさせる。ここで、制御部310は、ステップS50で求めた足先が踵に対して上がる程度に応じてステップS30と同様に作動信号の大きさを求め、つま先の上がる程度に応じた作動信号を電力供給部340から刺激付与部110へ送らせてもよい。
【0045】
≪実施形態の効果≫
本実施形態の転倒防止装置1は、刺激付与部110を備えた装着体11と、当該装着体11を装着した足が前に踏み出されることを感知するセンサ12と、足が前に踏み出されることを検知した場合に、刺激付与部110へ作動信号を送る制御装置13とを備える。これにより、本実施形態の転倒防止装置1は、制御装置13から送られた作動信号に応じて刺激付与部110が、装着体11を装着した足に刺激を与え、当該足のつま先を踝に対して持ち上げさせるので、ユーザが躓いて転倒することを防止できる。また、本実施形態の転倒防止装置1は、装着体11によって刺激付与部110がユーザの足に装着されるため、靴等に依存せず、また、屋内・屋外に関わらず利用でき、利便性を向上させることが
できる。
【0046】
本実施形態の転倒防止装置1では、刺激付与部110が、電極111,112を備え、制御装置13からの電気信号(電気エネルギー)を電極111,112からユーザの足に供給する。これにより、転倒防止装置1は、ユーザの足の筋肉を電気信号によって周期的に刺激し、適度に筋肉を動作させるため、筋力の低下を防ぎリハビリテーションの効果を増大させることができる。
【0047】
本実施形態では、刺激付与部110が、足の前脛骨筋又は腓骨筋に刺激を与えることで、ユーザのつま先を的確に上げさせることができる。特に、刺激付与部110が、前脛骨筋又は腓骨筋へ選択的に刺激を与えることで、歩行のために足を前に出す動作や歩行中のバランスをとる動作等を行う他の筋肉への影響を抑えることができる。また、前脛骨筋又は腓骨筋に刺激を与えると、つま先が踵を中心に回転するように上げられ、ユーザの足のうち、足首から上の部分は上げられないので、高齢者等が無理に足を上げてバランスを崩すといったことが防止される。
【0048】
また、本実施形態の転倒防止装置1は、刺激付与部110によって刺激を与えられた足のつま先が踝に対して持ち上がる程度をモニターし、持ち上がる量が所定量以下の場合に、更に前記刺激付与部110へ作動信号を送る。これにより、つま先の上がり方が少ない場合には、再度電気刺激を与えて、つま先を上げさせ、転倒を適切に防止することができる。
【0049】
本実施形態の転倒防止装置1は、制御装置13の制御部310が、センサ12の検知結果に基づいてユーザにおける大腿部の動きをモニターし、装着体11を装着した足の大腿部が持ち上がる程度に応じた作動信号を刺激付与部110へ送信する。なお、制御装置13が、大腿部等の足の動きをモニターする構成に限らず、足の動きをモニターするモニター回路が制御装置13以外に存在してもよい。この場合、モニター回路が、センサ12の検知結果を取得し、大腿部等が持ち上がる程度を求めて、制御装置13へ送信する。なお、モニター回路は、センサ12に含まれていてもよい。このように、大腿部が持ち上がる程度に応じた作動信号が刺激付与部110へ送信されることで、転倒防止装置1は、足を上げる程度が少ない場合に、つま先を大きく上げさせて、適切に転倒を防止することができる。
【0050】
本実施形態の転倒防止装置1は、装着体11、センサ12、及び制御装置(送信部)13が一体に構成され、人体の下腿部に取り付けられる。これにより、本実施形態の転倒防止装置1は、ユーザの足に対する着脱を容易にすることができる。また、下腿部に取り付けられる装着体11に、制御装置13やバッテリ、錘等を一体的に設けることにより、下腿部に負荷をかけ、トレーニングやリハビリテーションの効果を増大させることができる。
【0051】
<変形例>
図8は、変形例に係る転倒防止装置1Aの構成を示す図である。本変形例は、前述の実施形態と比べて、ユーザ以外の箇所に取り付けられたセンサ123をセンサ12として用いた構成が異なり、その他の構成は同じである。このため、前述の実施形態と同一の要素には同符号を付す等して再度の説明を省略する。
【0052】
センサ123は、例えば、老人ホーム等の施設において、ユーザを見守るために施設内に設けられたカメラである。なお、センサ123は、監視カメラや防犯カメラ等、他の用途のために設けられたものを共用してもよい。また、センサ123は、カメラに限らず、三次元スキャナや、ToF(Time of Flight)センサ等、外部からユーザの足の動きを検
出できるものであればよい。
【0053】
転倒防止装置1Aの制御装置13は、無線通信回線を介してセンサ123の検出結果を取得し、当該検出結果に基づいて足が前に踏み出されることを検知した場合に、刺激付与部110へ作動信号を送る。これにより本変形例の転倒防止装置1Aは、外部のセンサ123を用いてユーザの足の動きを求め、適切なタイミングで、つま先を上げさせて、転倒を防止することができる。
【0054】
また、転倒防止装置1Aの制御装置13は、センサ123の検出結果に基づいて、大腿部等、足の持ち上がる量(程度)を求め、足の持ち上がる量が所定量以下の場合に、更に刺激付与部110へ作動信号を送る。これにより、つま先の上がり方が少ない場合には、再度電気刺激を与えて、つま先を上げさせ、転倒を適切に防止することができる。
【0055】
更に、転倒防止装置1Aの制御装置13は、センサ123の検出結果に基づいて、ユーザの周囲の状況を検出し、ユーザが足を前に出して障害物や階段等の段差に達するタイミングで刺激付与部110へ作動信号を送り、つま先を上げさせてもよい。ここで、制御装置13は、障害物や段差に達するタイミングで刺激付与部110へ送る作動信号を障害物等が無い平坦な場合と比べて大きくし、つま先を大きく上げさせるようにしてもよい。即ち、制御装置13は、障害物や段差の有無に応じて作動信号の大きさを決定してもよい。また、制御装置13は、刺激付与部110へ作動信号を送った結果、つま先や大腿部等、足の持ち上がる量が所定量以下であった場合に、刺激付与部110へ作動信号を再送し、つま先を更に上げさせるようにしてもよい。ここで、制御装置13は、ユーザの足が障害物や段差に達する場合、作動信号を再送するか否かを判定するための所定量(閾値)を障害物や段差が無い場合よりも大きく設定してもよい。即ち、制御装置13は、作動信号を再送するか否かの閾値を障害物や段差の有無に応じて決定してもよい。
【0056】
また、転倒防止装置1Aの制御装置13は、老人ホーム等の施設における通報システムと連携し、転倒の可能性がある場合に、老人ホームの勤務者等、所定の担当者へ通報してもよい。この場合、制御装置13は、無線通信回線を介して通報システムや担当者の端末81に接続して転倒の可能性を警告する情報(警報とも称す)を送信する。例えば、制御装置13は、センサ123の検出結果に基づき、ユーザの進行方向に障害物や段差が存在する場合に、転倒の可能性有りと判定し、担当者の端末81へ通報する。また、制御装置13は、つま先や大腿部等、足の持ち上がる量が所定量以下であった場合に、転倒の可能性有りと判定し、担当者の端末81へ通報してもよい。
【0057】
以上、本開示に係る転倒防止装置1の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 :転倒防止装置
11 :装着体
12 :センサ
13 :制御装置
14 :バッテリ
110 :刺激付与部
111 :電極
112 :電極
113 :配線
119 :帯状部材
121 :第一センサ
122 :第二センサ
310 :制御部
320 :記憶部
330 :入出力部
332 :出力手段
340 :電力供給部
1193:固定具
1194:筐体