(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113772
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】平型導体用電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/88 20110101AFI20240816BHJP
H01R 12/89 20110101ALI20240816BHJP
【FI】
H01R12/88
H01R12/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018946
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】玉木 祥一郎
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB01
5E223AB35
5E223AB39
5E223AB45
5E223AC05
5E223AC23
5E223BA04
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223BB21
5E223CA15
5E223CB22
5E223CB39
5E223CB50
5E223CC15
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB09
5E223DB11
5E223EC12
5E223EC18
5E223EC22
5E223EC32
5E223EC34
5E223EC36
5E223EC43
5E223EC47
5E223EC63
5E223EC75
(57)【要約】
【課題】小さい操作力で可動部材を操作することが可能な平型導体用電気コネクタを提供する。
【解決手段】可動部材50は、開位置と閉位置との間における移動の操作を受ける操作部51と、端子配列方向での端子配列範囲外に設けられたカム部53とを有し、カム部53は、可動部材50が閉位置へ向けた閉方向へ移動するときにスライダ40を前方へ向けて押圧する前方押圧部53Aと、可動部材50が開位置へ向けた開方向へ移動するときにスライダ40を後方へ向けて押圧する後方押圧部53Bとを有し、スライダ40は、可動部材50の移動に連動して後退位置と前進位置との間を移動可能となっており、可動部材50の回動中心Oは、可動部材50が開閉方向でいずれの位置にあっても、端子配列方向に見て前後方向でカム部53の範囲内に位置している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装されるとともに、前後方向に延びる平型導体が前方へ向けて接続される平型導体用電気コネクタにおいて、
前記平型導体の幅方向を端子配列方向として配列される複数の端子と、
前記複数の端子を保持するハウジングと、
前記平型導体の抜出を許容する後退位置と前記平型導体の抜出を阻止する前進位置との間で前後方向に移動可能な状態で前記ハウジングに取り付けられるスライダと、
前後方向に対して角度をもった姿勢をなす開位置と前後方向に沿った姿勢をなす閉位置との間で、端子配列方向に延びる軸線まわりの回動を伴って移動可能な可動部材とを備え、
前記可動部材は、開位置と閉位置との間における移動の操作を受ける操作部と、端子配列方向での端子配列範囲外に設けられたカム部とを有し、
前記カム部は、前記可動部材が閉位置へ向けた閉方向へ移動するときに前記スライダを前方へ向けて押圧する前方押圧部と、前記可動部材が開位置へ向けた開方向へ移動するときに前記スライダを後方へ向けて押圧する後方押圧部とを有し、
前記スライダは、前記可動部材の移動に連動して後退位置と前進位置との間を移動可能となっており、
前記可動部材の回動中心は、前記可動部材が開閉方向でいずれの位置にあっても、端子配列方向に見て前後方向で前記カム部の範囲内に位置していることを特徴とする平型導体用電気コネクタ。
【請求項2】
前記平型導体用電気コネクタは、端子配列方向における端子配列範囲外で前記ハウジングに保持された金具を有しており、
前記可動部材は、端子配列方向で前記金具に対応する位置で、端子配列方向に見て前記回動中心を含むように設けられた軸部を有しており、
前記ハウジングは、前記軸部を収容し、前記軸部を前方、後方および下方から支持可能な軸支持部を有しており、
前記金具は、前記軸部の上方に位置し前記軸部の上方への移動を規制する軸規制部を有していることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項3】
前記金具は、前記ハウジングに上方から取り付けられた被保持部と、前記回路基板に半田で固定される固定部とを有しており、
前記固定部は、前後方向で前記軸部を含む範囲にわたって形成されていることとする請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、開位置にある前記可動部材に当接して、前記可動部材の開方向への移動を阻止する移動阻止部と、前記可動部材が開位置にあるときに、後退位置にある前記スライダを後方へ向けて付勢して前記カム部に前方から押し付ける付勢部とを有していることとする請求項1または請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、端子配列方向に突出し、前進位置にある前記スライダに設けられた被係止部に対して後方から係止可能な係止部を有し、
前記スライダは、前方へ向けて延び弾性変形可能な被係止腕部を有し、
前記被係止部は、前記被係止腕部に形成されており、
前記係止部の後部および前記被係止部の前部の少なくとも一方は、前後方向に対して傾斜した方向の成分をもつ面で他方と当接可能となっており、
前記付勢部は、前記係止部の後部に形成されていて、後退位置にある前記スライダの前記被係止部の前部に形成された被付勢部に当接し、該被付勢部を後方へ向けて付勢するようになっていることとする請求項4に記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体が接続される平型導体用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
平型導体用電気コネクタとして、例えば、特許文献1のような、前後方向に延びる平型導体(フレキシブル)が前方へ向けて挿入接続される電気コネクタが知られている。この電気コネクタは、複数の端子を配列保持するハウジングに取り付けられたスライダによって、平型導体がコネクタに接続された状態を維持するようになっている。具体的には、スライダは、平型導体の抜出を許容する後退位置と、平型導体の抜出を阻止する前進位置との間で前後方向に移動可能な状態で、ハウジングに後方から取り付けられている。スライダは端子配列方向(平型導体の幅方向と同じ方向)に延びる押圧板を前端側に有しており、スライダが前進位置にあるとき、押圧板で平型導体を端子の接触部へ向けて上方から押し付けるようになっている。
【0003】
特許文献1の電気コネクタには、端子配列方向に延びる軸線まわりに回動可能な操作レバー(可動部材)が設けられており、スライダが操作レバーの回動に伴って前後方向に連動する。操作レバーは、端子配列方向に延び操作者による操作を受ける操作部と、操作部の両端から延びる回動腕部とを有している。操作レバーは、回動腕部の先端部(自由端部)に設けられた枢軸を回動中心として、スライダを後退位置にもたらす開位置とスライダを前進位置にもたらす閉位置との間で回動可能となっている。
【0004】
操作レバーは、回動腕部の中間部に、スライダの凹部に収容されるカム部を有している。操作レバーは、このカム部によって、上記凹部の前端面(前方ホロアー面)あるいは後端面(後方ホロアー面)を押圧することでスライダを前後方向に移動させる。具体的には、操作レバーを閉位置へ向けて回動させると、カム部の前方カム面が凹部の前端面を押圧し、スライダが前進位置へ移動する。一方、操作レバーを開位置へ向けて回動させると、カム部の後方カム面が凹部の後端面を押圧し、スライダが後退位置へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような、スライダが操作レバーに連動するタイプの電気コネクタにおいては、スライダを移動させるための操作レバーの操作力は小さいほうが好ましい。このとき、操作レバーを端子配列方向に見て、操作部と枢軸との距離に対する該枢軸とカム面との距離の比が小さいほど操作レバーの操作力が小さくなる。ここで、「カム面」とは、操作レバーを閉位置へ向けて回動させる場合には前方カム面のことであり、操作レバーを開位置へ向けて回動させる場合には後方カム面のことである。
【0007】
しかし、特許文献1では、操作レバーの回動腕部において、枢軸が先端部に設けられ、カム部が中間部に設けられている。したがって、カム部のカム面がスライダを押圧する時点にて、この操作レバーを端子配列方向に見たとき、枢軸とカム面とは前後方向で重複することなく異なった位置にある。その結果、枢軸とカム面との距離が長くなっており、操作部と枢軸との距離に対する該枢軸とカム面との距離の比が大きい分、操作レバーの操作力が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、小さい操作力で可動部材を操作することが可能な平型導体用電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る平型導体用電気コネクタは、回路基板に実装されるとともに、前後方向に延びる平型導体が前方へ向けて接続される。
【0010】
かかる平型導体用電気コネクタにおいて、本発明では、前記平型導体の幅方向を端子配列方向として配列される複数の端子と、前記複数の端子を保持するハウジングと、前記平型導体の抜出を許容する後退位置と前記平型導体の抜出を阻止する前進位置との間で前後方向に移動可能な状態で前記ハウジングに取り付けられるスライダと、前後方向に対して角度をもった姿勢をなす開位置と前後方向に沿った姿勢をなす閉位置との間で、端子配列方向に延びる軸線まわりの回動を伴って移動可能な可動部材とを備え、前記可動部材は、開位置と閉位置との間における移動の操作を受ける操作部と、端子配列方向での端子配列範囲外に設けられたカム部とを有し、前記カム部は、前記可動部材が閉位置へ向けた閉方向へ移動するときに前記スライダを前方へ向けて押圧する前方押圧部と、前記可動部材が開位置へ向けた開方向へ移動するときに前記スライダを後方へ向けて押圧する後方押圧部とを有し、前記スライダは、前記可動部材の移動に連動して後退位置と前進位置との間を移動可能となっており、前記可動部材の回動中心は、前記可動部材が開閉方向でいずれの位置にあっても、端子配列方向に見て前後方向で前記カム部の範囲内に位置していることを特徴としている。
【0011】
本発明では、可動部材の回動中心は、可動部材が開閉方向でいずれの位置にあっても、端子配列方向に見て前後方向でカム部の範囲内に位置しているので、回動中心と押圧部とが互いに近くに位置している。ここで、「押圧部」とは、可動部材を閉方向へ回動させる場合には前方押圧部のことであり、可動部材を開方向へ回動させる場合には後方押圧部のことである。したがって、回動中心と押圧部とが互いに近くに位置し両者間の距離が短くなる分、操作部と回動中心との距離に対する該回動中心と押圧部との距離の比が小さくなるので、可動部材を開閉方向で移動させるのに必要な操作力を小さくできる。
【0012】
(2) (1)の発明において、前記平型導体用電気コネクタは、端子配列方向における端子配列範囲外で前記ハウジングに保持された金具を有しており、前記可動部材は、端子配列方向で前記金具に対応する位置で、端子配列方向に見て前記回動中心を含むように設けられた軸部を有しており、前記ハウジングは、前記軸部を収容し、前記軸部を前方、後方および下方から支持可能な軸支持部を有しており、前記金具は、前記軸部の上方に位置し前記軸部の上方への移動を規制する軸規制部を有してもよい。
【0013】
このような構成によれば、軸支持部および軸規制部によって、前後方向および上下方向で可動部材の軸部の移動を規制できるので、可動部材がハウジングから外れてしまうことを容易に防止できる。
【0014】
(3) (2)の発明において、前記金具は、前記ハウジングに上方から取り付けられた被保持部と、前記回路基板に半田で固定される固定部とを有しており、前記固定部は、前後方向で前記軸部を含む範囲にわたって形成されていてもよい。このように金具の固定部を前後方向で軸部を含む範囲に設けることにより、金具において、回路基板に半田固定される部分を前後方向で大きくできる。したがって、十分な固定強度をもってコネクタを回路基板に固定することができる。
【0015】
(4) (1)または(2)の発明において、前記ハウジングは、開位置にある前記可動部材に当接して、前記可動部材の開方向への移動を阻止する移動阻止部と、前記可動部材が開位置にあるときに、後退位置にある前記スライダを後方へ向けて付勢して前記カム部に前方から押し付ける付勢部とを有していてもよい。
【0016】
このような構成では、開位置にある可動部材は、ハウジングの移動阻止部に支持されることにより開方向への移動を阻止されている。また、ハウジングの付勢部からの付勢によりスライダが可動部材のカム部に押し付けられる結果、該カム部がスライダによって前方から支持される。つまり、可動部材は、端子配列方向に見たときに2位置で支持された状態となっている。その結果、可動部材がガタつくことを防止して、該可動部材が開位置にある状態を良好に維持することができる。
【0017】
(5) (4)の発明において、前記ハウジングは、端子配列方向に突出し、前進位置にある前記スライダに設けられた被係止部に対して後方から係止可能な係止部を有し、前記スライダは、前方へ向けて延び弾性変形可能な被係止腕部を有し、前記被係止部は、前記被係止腕部に形成されており、前記係止部の後部および前記被係止部の前部の少なくとも一方は、前後方向に対して傾斜した方向の成分をもつ面で他方と当接可能となっており、前記付勢部は、前記係止部の後部に形成されていて、後退位置にある前記スライダの前記被係止部の前部に形成された被付勢部に当接し、該被付勢部を後方へ向けて付勢するようになっていてもよい。
【0018】
このような構成では、ハウジングの係止部の後部およびスライダの被係止部の前部の少なくとも一方が、前後方向に対して傾斜した方向の成分をもつ面で他方と当接可能となっている。したがって、スライダが後退位置にあるとき、被係止腕部の弾性力を利用して、係止部の後部に形成された付勢部により、被係止部の前部に形成された被付勢部を後方へ付勢することができる。このとき、被付勢部は、被係止腕部の弾性力の分力によって付勢部を前方へ押圧しており、その結果、付勢部から受ける反力によって後方へ付勢されている。この構成では、ハウジングとスライダとの係止のために設けられている係止部および被係止部のそれぞれの一部として付勢部および被付勢部を設けている。したがって、係止部および被係止部と異なる位置に付勢部および被付勢部を別途設ける必要がないので、コネクタの大型化を回避できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、小さい操作力で可動部材を操作することが可能な平型導体用電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した斜視図であり、平型導体を挿入する前の状態を示している。
【
図2】
図1の平型導体用電気コネクタについて、各部材を分離した状態で示した斜視図である。
【
図3】(A)は
図1の平型導体用電気コネクタの横断面を上方から見た図であり、(B)は(A)の平型導体用電気コネクタの端部を拡大して示した一部拡大図である。
【
図4】
図1の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)はコネクタ幅方向におけるカム部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面を示している。
【
図5】
図1の平型導体電気コネクタの端部を拡大して示した斜視図であり、(A)は補強金具が取り付けられた状態、(B)は補強金具が取り付けられる前の状態を示している。
【
図6】(A)は
図2のスライダを上下反転して示した斜視図であり、(B)は(A)のスライダの端部を拡大して示した平面図である。
【
図7】平型導体が挿入された直後の平型導体用電気コネクタを示した図であり、(A)は斜視図、(B)は横断面図である。
【
図8】
図7の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)はコネクタ幅方向におけるカム部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面を示している。
【
図9】平型導体が挿入された後に可動部材を閉位置へ移動させた状態の平型導体用電気コネクタを示した図であり、(A)は斜視図、(B)は横断面図である。
【
図10】
図9の平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)はコネクタ幅方向におけるカム部の位置での断面、(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタ(以下「コネクタ1」という)を平型導体Cとともに示した斜視図であり、平型導体Cを挿入する前の状態を示している。
図2は、コネクタ1について、各部材を分離した状態で示した斜視図である。
図3(A)はコネクタ1の横断面図であり、
図3(B)は、
図3(A)の端部を拡大して示す一部拡大図である。
図4(A),(B)はコネクタ1の縦断面図であり、
図4(A)はコネクタ幅方向におけるカム部の位置での断面、
図4(B)はコネクタ幅方向における端子の位置での断面を示している。
【0023】
コネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に実装され、該実装面に対して平行な前後方向(X軸方向)を挿抜方向として、平型導体C(例えば、FPC)が挿抜可能に接続されるようになっている。コネクタ1は、平型導体Cが接続されることにより、回路基板と平型導体Cとを電気的に導通させる。本実施形態では、X軸方向(前後方向)にて、X1方向を前方、X2方向を後方とする。また、回路基板の実装面に平行な面内(XY平面内)で前後方向(X軸方向)に対して直角をなすY軸方向をコネクタ幅方向とし、回路基板の実装面に対して直角なZ軸方向を上下方向(Z1方向が上方、Z2方向が下方)とする。
【0024】
平型導体Cは、前後方向(X軸方向)に延びコネクタ幅方向(Y軸方向)を幅方向とする可撓な帯状をなし、前後方向に延びる複数の回路部(図示せず)がコネクタ幅方向に配列され形成されている。該回路部は、前端側部分を除いて平型導体Cの絶縁層内に埋設されているが、前端側部分だけは平型導体Cの下面で露呈しており、パッドとして形成されている。
【0025】
平型導体Cの前端側部分には、上記幅方向の両端部に、コネクタ1に設けられた後述のハウジング10の抜止突部12Aを下方から受入可能な切欠部C1が形成されている。また、平型導体Cは、切欠部C1の前方に耳部C2を有しており、該耳部C2の後端は、抜止突部12Aに対して前方から係止可能な被抜止部C2Aをなしている。
【0026】
コネクタ1は、
図1ないし
図4(A),(B)に示されるように、平型導体Cを後方から受け入れるハウジング10と、コネクタ幅方向(Y軸方向)を端子配列方向として配列されてハウジング10に保持される複数の端子20と、複数の端子20の端子配列範囲の外側に配置されハウジング10に保持される補強金具30と、前後方向に移動可能な状態でハウジング10に取り付けられるスライダ40と、コネクタ幅方向に延びる軸線まわりで回動可能な可動部材50とを有している。
【0027】
本実施形態では、可動部材50は、コネクタ幅方向における両端部に設けられた軸部54を通る軸線まわりに開位置(例えば
図1参照)と閉位置(例えば
図9(A)参照)との間で回動可能となっている。以下、可動部材50の回動する方向を「開閉方向」という。また、この開閉方向において、可動部材50が閉位置から開位置へ向けて回動する方向を「開方向」、可動部材50が開位置から閉位置へ向けて回動する方向を「閉方向」という。
【0028】
ハウジング10は、樹脂等の電気絶縁材で作られており、
図2に示されるように、コネクタ幅方向を長手方向として延びる略直方体外形をなしている。ハウジング10は、本体部11と、コネクタ幅方向における本体部11の両外側に設けられた側壁部17とを有している。本体部11の後部には、スライダ40の一部が嵌合される嵌合部12が設けられている。嵌合部12には、スライダ40の一部および平型導体Cの前端側部分を後方から受入可能な受入部13が、コネクタ幅方向に延びるとともに後方に開口する空間として形成されている。また、本体部11の前部には、端子20を保持する前壁部14がコネクタ幅方向に延びて設けられている(
図4(B)も参照)。
【0029】
受入部13の両端部である受入端部13Aは、スライダ40の後述の側腕部42を収容するようになっている。本実施形態では、受入端部13Aの上側内壁面および下側内壁面、換言すると、嵌合部12の上壁の下面および下壁の上面には、前後方向へ延びた溝部が、受入端部13Aの一部として形成されている。受入端部13Aでは、この溝部によって、スライダ40の側腕部42を、コネクタ幅方向での移動を規制しながら前後方向に案内可能となっている。
【0030】
図2に示されるように、受入部13の下側内壁面、換言すると嵌合部12の下壁の上面には、コネクタ幅方向における端子配列範囲と受入端部13Aとの間に、上方へ突出する抜止突部12Aが設けられている(
図3(A)および
図4(B)も参照)。抜止突部12Aは、前後方向に対して直角な平坦面をなす前端面で平型導体Cの被抜止部C2Aに対して後方から係止可能となっている(
図7(B)参照)。また、
図4(B)に示されるように、抜止突部12Aは、その後部の上面が、前方へ向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面として形成されており、受入部13に挿入された平型導体Cの耳部C2を傾斜面で前方へ案内可能となっている。一方、抜止突部12Aの前部の上面(以下、「上端面」という)は、上下方向に対して直角な平坦面となっている。
【0031】
嵌合部12の上壁の後端部には、
図2に示されるように、コネクタ幅方向での両端位置、具体的には受入端部13Aの直上位置に、可動部材50の開方向への移動(回動)を阻止するための移動阻止部12Bが設けられている。移動阻止部12Bは、コネクタ幅方向に延びて側壁部17に連結されている。具体的には、移動阻止部12Bは、
図1および
図4(A)に示されるように、開位置にある可動部材50を下方から支持することにより該可動部材50の開方向への回動を阻止するようになっている。
【0032】
図3(A)および
図4(B)に示されているように、本体部11には、端子20を収容するための端子収容部15がコネクタ幅方向に配列して形成されている。端子収容部15についての詳細な説明に先立って、まず、端子20の構成を説明する。端子20は、
図2に示されるように、金属板部材を板厚方向に打ち抜いて作られている。端子20は、
図4(B)に示されるように、一端側に設けられた取付部(後述の下脚部21および被保持部22)および接続部23と、他端側に設けられた基腕部24、下側接触腕部25、上側接触腕部26、押圧腕部27と、取付部と基腕部24との間に設けられた弾性部28とを有している。以下、下側接触腕部25および上側接触腕部26について、両者を区別する必要がない場合には、説明の便宜上、「接触腕部25,26」と総称する。
【0033】
図4(B)に示されるように、取付部は、ハウジング10の前壁部14の下面に沿って前後方向に延びる下脚部21と、下脚部21の前部から上方へ延びる被保持部22とを有している。被保持部22の側縁部(上下方向に延びる縁部)には前壁部14に圧入保持されるための突起が複数形成されている。接続部23は、下脚部21の前端から前方へ向けて延びハウジング10外に位置しており、その下縁で、回路基板の対応回路部に半田接続されるようになっている。
【0034】
基腕部24は、前壁部14の後面に沿って上下方向に延びている。接触腕部25,26は、基腕部24の下部から嵌合部12の下壁に沿って後方へ延びており、上下方向で弾性変位可能となっている。下側接触腕部25の後端には、上方へ突出して受入部13内に位置する後方接触部25Aが形成されている。上側接触腕部26は、下側接触腕部25の上方に設けられており、下側接触腕部25よりも短く形成されている。この上側接触腕部26の後端には、後方接触部25Aよりも前方で上方へ突出して受入部13内に位置する前方接触部26Aが形成されている。以下、後方接触部25Aおよび前方接触部26Aについて、両者を区別する必要がない場合には、説明の便宜上、「接触部25A,26A」と総称する。接触腕部25,26は、下方へ弾性変位しながら、接触部25A,26Aで平型導体Cの回路部に下方から接圧をもって接触可能となっている。
【0035】
押圧腕部27は、基腕部24の上部から嵌合部12の上壁に沿って後方へ向けて、下側接触腕部25の後端とほぼ同位置まで延びている。押圧腕部27は、スライダ40の後述の押圧板部45を介して、平型導体Cを上方から接触部25A,26Aへ向けて間接的に押圧可能となっている(
図10(B)参照)。本実施形態では、押圧腕部27は、接触腕部25,26よりも上下方向で太く形成されている。
【0036】
弾性部28は、下方へ向けて開口する略逆U字状をなしており、下脚部21と基腕部24とを連結している。弾性部28は、前方側で上下方向に延びる前脚部28Aと、後方側で上下方向に延びる後脚部28Bと、下方へ向けて屈曲されて前脚部28Aおよび後脚部28Bの上端部同士を連結する屈曲部28Cとを有している。前脚部28Aは、その下端で下脚部21の後部に連結されている。また、後脚部28Bは、その下端部が後方へ向けて屈曲されており、基腕部24の下部に連結されている。弾性部28は、前後方向、コネクタ幅方向および上下方向のいずれの方向にも弾性変位可能となっている。本実施形態では、弾性部28に屈曲部28Cが設けられているので、屈曲部28Cの屈曲方向、すなわち上下方向で弾性部28を大きくすることなく、該弾性部28の全長を長く確保して、該弾性部28ひいては端子20における弾性変位量を大きく確保できる。
【0037】
ハウジング10の端子収容部15の説明に戻る。端子収容部15は、コネクタ幅方向(Y軸方向)に対して直角に広がるスリット状の溝部として形成されている。端子収容部15は、
図4(B)に示されるように、前壁部14に形成された前方収容部15A、中間収容部15Bおよび下方収容部15Cと、嵌合部12および前壁部14に形成された後方収容部15Dとを有している。
【0038】
前方収容部15Aは、前壁部14の前部で上下方向に延びており、端子20の被保持部22を収容して圧入保持する端子保持部として形成されている。中間収容部15Bは、前壁部14の後部で上下方向に延びており、弾性部28を収容している。中間収容部15Bに弾性部28が収容された状態において、弾性部28と中間収容部15Bの内壁面との間には、前後方向、コネクタ幅方向および上下方向に隙間が形成されており、弾性部28がこれら3つの方向で弾性変位可能となっている。また、中間収容部15Bの下部は、後方に開放されていて、後方収容部15Dと連通しており、弾性部28の後脚部28Bの下端部を収容している。
【0039】
下方収容部15Cは、前壁部14の下部で、前後方向に貫通して形成され端子20の下脚部21を収容している。また、下方収容部15Cは、上下方向に開放されており、前方収容部15Aおよび中間収容部15Bと連通している。
【0040】
後方収容部15Dは、嵌合部12の下壁、上壁および前壁部14に沿って延びており、後方へ開口する略横U字状をなしている。後方収容部15Dは、上記下壁に沿って前後方向に延びる下溝部で接触腕部25,26を収容し、上記上壁に沿う上溝部で前後方向に延びる押圧腕部27を収容し、前壁部14に沿う前溝部で上下方向に延びる基腕部24を収容している。
図4(B)に見られるように、上記下溝部は上方および下方に開放されている。一方、上記上溝部は下方には開放されているが、上端は閉塞されている。
【0041】
端子20は、このような形状の端子収容部15に、下方から取り付けられて収容される。具体的には、端子20は、被保持部22が前方収容部15Aへ下方から圧入されることで、端子収容部15に収容され、ハウジング10に保持される。端子20がハウジング10に取り付けられると、
図4(B)に示されるように、端子20の接触部25A,26Aが後方収容部15Dの下溝部から上方に突出して受入部13内に位置し、押圧腕部27の下端部が後方収容部15Dの上溝部から下方に突出して受入部13内に位置する。
【0042】
図3(A)に示されるように、本体部11の前部の側面には、スライダ40に対して前後方向で係止可能な係止部16が設けられている。係止部16は、本体部11の側面からコネクタ幅方向で外側へ向けて突出しており、上方から見たときに、前後方向での中間部で最も突出量が大きくなる山状をなしている。係止部16の前部の側面(上下方向に対して平行な面)は、上方から見たとき、後方に向かうにつれてコネクタ幅方向で外側へ傾斜している。また、係止部16の後部の側面は、上方から見たとき、前方に向かうにつれてコネクタ幅方向で外側へ傾斜している。
【0043】
係止部16の前部は、前進位置にあるスライダ40の後述の被係止部44Aに対して後方から当接することで係止可能となっており、スライダ40の不用意な後方への移動を規制する(
図9(B)参照)。係止部16の後部は、後退位置にあるスライダ40の被係止部44Aに対して前方から当接することで係止可能となっており、スライダ40の不用意な前方への移動を規制する(
図3(A),(B)および
図7(B)参照)。また、本実施形態では、
図3(A)に示されるように、係止部16の後部は、後退位置にあるスライダ40の被係止部44Aを後方へ向けて付勢する付勢部16Aとして機能している。
【0044】
図5(A),(B)は、コネクタ1のコネクタ幅方向での端部を拡大して示した斜視図であり、
図5(A)は補強金具30が取り付けられた状態、
図5(B)は補強金具30が取り付けられる前の状態を示している。
図1、
図2、
図3(A),(B)および
図5(A),(B)に示されるように、コネクタ幅方向でのハウジング10の側壁部17には、補強金具30を収容して保持するための金具収容部17Aが形成されている。金具収容部17Aは、側壁部17の前後方向での中間部にて、該側壁部17の外面から没入するとともに該側壁部17を上下方向に貫通する凹部として形成されている。また、金具収容部17Aは、
図3(B)および
図5(A),(B)に示されるように、補強金具30を圧入保持するための金具保持部17A-1を前端部および後端部に有している。金具保持部17A-1は、コネクタ幅方向に対して直角に広がるとともに上方に開口する溝状をなしており、補強金具30の後述の圧入部31Aを上方から受け入れるようになっている。また、金具保持部17A-1の下端は閉塞されている。
【0045】
側壁部17には、
図5(A),(B)に示されるように、コネクタ幅方向で金具収容部17Aより内側に形成された内壁部17Bに側溝部17Cが形成されている。側溝部17Cは、前後方向での内壁部17Bの中央域にて、該内壁部17Bの上端位置から下端に寄った位置まで上下方向に延びるとともに、コネクタ幅方向で内壁部17Bを貫通している。この側溝部17Cは、上端が開放され、下端が閉塞されている。
【0046】
また、側壁部17の下部には、可動部材50の軸部54を収容し回動可能に支持するための軸支持部17Dが設けられている。軸支持部17Dは、内壁部17Bの前後方向での中央域で、該内壁部17Bの下部の外側面からコネクタ幅方向で外側へ向けて突出する四角箱状をなしている。軸支持部17Dは、金具収容部17A内に位置し、前後方向で側溝部17Cを含む範囲に設けられている。軸支持部17Dは、コネクタ幅内方に開放されていて、側溝部17Cに連通しており、また、上方にも開放されていて、可動部材50の軸部54を上方から受入可能となっている。
【0047】
補強金具30は、
図1、
図2および
図5(A)に示されるように、金属板部材を板厚方向で屈曲して形成されている。補強金具30は、コネクタ幅方向を板厚方向として配置される被保持部31と、被保持部31の下縁で直角に屈曲されてコネクタ幅方向で外方へ延びる固定部32とを有している。また、補強金具30には、前後方向での中央域において、被保持部31と固定部32の両方に跨る領域で補強金具30を板厚方向に貫通する四角孔状の孔部33が形成されている。
図5(A)に示されるように、孔部33は、補強金具30をハウジング10に上方から取り付けた状態にて、軸支持部17Dの下方からの進入を許容しており、これによって、補強金具30と軸支持部17Dとの干渉が回避されている。
【0048】
被保持部31は、ハウジング10の内壁部17Bの外側面(コネクタ幅方向で外側に位置する面)に沿って配置される。この被保持部31の前端部および後端部は、ハウジング10の金具保持部17A-1に上方から圧入される圧入部31Aとして形成されている。圧入部31Aは、その側縁部(上下方向に延びる縁部)に形成された複数の突起(
図2参照)で金具保持部17A-1の内壁面に喰い込むことにより、該金具保持部17A-1で圧入保持される。
【0049】
被保持部31の上部(孔部33のより上方に位置する部分)において、前後方向に延び2つの圧入部31A同士を連結する部分は軸規制部31Bをなしている。軸規制部31Bは、コネクタ幅方向では、軸支持部17Dおよび軸部54の範囲内に位置しており、前後方向では、軸支持部17Dおよび軸部54を含む範囲にわたって延びている。したがって、軸規制部31Bは、軸部54に上方から当接可能となっていて、該軸部54の上方への移動を規制するようになっている。また、上述したように、軸規制部31Bは2つの圧入部31A同士を連結しており、両持ち梁状となっているので、軸部54の上方への移動を強固に規制することができる。
【0050】
固定部32は、ハウジング10の底面とほぼ同じ高さで回路基板(図示せず)に沿って延びており、回路基板の対応部に半田接続により固定されるようになっている。本実施形態では、固定部32は、コネクタ幅方向で金具収容部17Aよりも外側にまで延びている。固定部32は、前後方向で軸支持部17Dおよび軸部54を含む範囲にわたって形成されている。このような範囲に固定部32を設けることにより、補強金具30において、回路基板に半田固定される部分が前後方向で大きく形成される。したがって、十分な固定強度をもってコネクタ1を回路基板に固定することができる。
【0051】
スライダ40は、平型導体Cの抜出を許容する後退位置(例えば、
図1、
図3(A),(B)および
図4(A),(B)参照)と平型導体Cの抜出が阻止する前進位置(例えば、
図9(A),(B)および
図10(A),(B)参照)との間で前後方向に移動可能な状態でハウジング10に取り付けられ、前進位置にてハウジング10に嵌合するようになっている。
【0052】
図6(A)は
図2のスライダ40を上下反転して示した図であり、
図6(B)は
図6(A)のスライダ40の端部を拡大して示した平面図である。スライダ40は、樹脂等の電気絶縁材で作られており、
図2および
図6(A),(B)に示されるように、コネクタ幅方向に延びた基部41と、コネクタ幅方向での基部41の両端部から前方(X1方向)へ向けて延びる側腕部42と、2つの側腕部42の間で基部41から前方へ向けて延びる押圧板部45とを有している。
【0053】
基部41は、
図1および
図2に示されるように、前後方向に見て、ハウジング10とほぼ同じ範囲に広がって設けられており、受入部13に対応する範囲には、前後方向で基部41を貫通する挿入孔部41A形成されている。挿入孔部41Aは、基部41の中央域でコネクタ幅方向に延びるスリット状をなし、平型導体Cの挿通を許容している。
【0054】
側腕部42は、可動部材50の後述のカム部53を収容するためのカム収容部43を有している。カム収容部43は、
図2および
図6(A),(B)に示されるように、側腕部42の前後方向での中間位置で、該側腕部42の外側面から没入するとともに該側腕部42を上下方向に貫通して形成されている。カム収容部43は、前方および後方の内壁面でカム部53からの前後方向での押圧力を受けるようになっている。具体的には、カム収容部43の前方の内壁面(前後方向に対して直角な面)は、カム部53からの前方へ向けた押圧力を受ける前方被圧部43Aをなし、カム収容部43の後方の内壁面(前後方向に対して直角な面)は、カム部53からの後方へ向けた押圧力を受ける後方被圧部43Bをなしている。
【0055】
また、
図2、
図3(A),(B)および
図6(A),(B)に示されるように、側腕部42の上部(
図6(A),(B)では下部)には、コネクタ幅方向に弾性変形可能な被係止腕部44が設けられている。被係止腕部44は、コネクタ幅方向での側腕部42の内側部分に設けられており、
図6(A),(B)に示されるように、前後方向において後方被圧部43Bとほぼ同位置から側腕部42の前端位置までにわたって前方へ向けて延びている。被係止腕部44は、その前端部にコネクタ幅方向内方へ突出する被係止部44Aを有しており、該被係止部44Aでハウジング10の係止部16に対して前後方向で係止可能となっている。
【0056】
被係止部44Aは、
図3(A),(B)および
図6(B)に示されるように、上下方向に見たときに、前後方向での中間部で最も突出量が大きくなる山状をなしている。つまり、被係止部44Aの前部の側面(上下方向に対して平行な面)は、上下方向に見たとき、後方に向かうにつれてコネクタ幅方向で内側へ傾斜している。また、被係止部44Aの後部の側面は、上方から見たとき、前方に向かうにつれてコネクタ幅方向で内側へ傾斜している。
【0057】
被係止部44Aの後部は、スライダ40が前進位置にあるときにハウジング10の係止部16よりも前方位置で該係止部16に対して前方から当接することで係止可能となっており、これによってスライダ40の不用意な後方への移動が規制される(
図9(B)参照)。被係止部44Aの前部は、スライダ40が後退位置にあるときにハウジング10の係止部16よりも後方位置で該係止部16に対して後方から当接することで係止可能となっており、これによってスライダ40の不用意な前方への移動が規制される(
図3(A),(B)および
図7(B)参照)。
【0058】
また、本実施形態では、
図3(B)に示されるように、被係止部44Aの前部は、付勢部16A、すなわち係止部16の後部から後方へ向けた付勢力を受ける被付勢部44A-1として機能している。具体的には、スライダ40が後退位置にあるとき、被係止腕部44は、付勢部16Aによってコネクタ幅方向外方に押圧されることにより弾性変形している。そして、この被係止腕部44において生じるコネクタ幅方向内方へ向けた弾性力(コネクタ幅方向内方へ向けた復元力)により、被付勢部44A-1が付勢部16Aにコネクタ幅方向内方へ押し付けられる。このとき、被付勢部44A-1は、上記弾性力の分力によって付勢部16Aを前方へ押圧し、その結果、後方へ向けた付勢部16Aからの反力を受けることによって後方へ付勢される。
【0059】
本実施形態では、付勢部16Aおよび被付勢部44A-1は、ハウジング10とスライダ40との係止のために設けられている係止部16および被係止部44Aのそれぞれの一部として形成されている。したがって、係止部16および被係止部44Aと異なる位置に付勢部および被付勢部を別途設ける必要がないので、コネクタ1の大型化を回避できる。
【0060】
押圧板部45は、基部41の挿入孔部41Aよりも上方に位置し、コネクタ幅方向に延びて2つの側腕部42の後部の内側面同士を連結している。押圧板部45は、コネクタ幅方向での端子配列範囲においては、スライダ40が前進位置にあるときに、端子20の接触部25A,26Aと押圧腕部27との間に後方から進入する(
図10(B)参照)。このとき、押圧板部45は、押圧腕部27からの押圧力を上方から受けるとともに、平型導体Cの上面を下方へ押圧し、平型導体Cと接触部25A,26Aと押圧腕部27との接圧を高めるようになっている。また、押圧板部45は、コネクタ幅方向の両端部においては、スライダ40が前進位置にあるときに、ハウジング10の抜止突部12Aの直上で、平型導体Cの上面に対面して該上面に当接し、平型導体Cの上方への移動を規制するようになっている。
【0061】
可動部材50は、前後方向に対して角度をもった姿勢をなす開位置(例えば
図1参照)と前後方向に沿った姿勢をなす閉位置(例えば
図2や
図9(A)参照)との間で回動可能となっている。本実施形態では、可動部材50は開位置にて垂立しており、したがって、開位置と閉位置との間における可動部材50の回動角度は約90°となっている。可動部材50は、コネクタ幅方向に延びる操作部51と、コネクタ幅方向での可動部材50の両端部に設けられた延出板部52、カム部53および軸部54とを有している。
【0062】
操作部51は、
図2に示されるように、可動部材50が閉位置にある姿勢で、上下方向を板厚方向とする板状の上板部51Aと、上板部51Aの前端から下方へ向けて延び前後方向を板厚方向とする前板部51Bと、コネクタ幅方向での上板部51Aおよび前板部51Bの端部に連結されコネクタ幅方向を板厚方向とする側板部51Cとを有している。この操作部51は、開閉方向での回動操作(開閉操作)を受けるようになっている。
【0063】
延出板部52は、
図2に示されるように、可動部材50が閉位置にある姿勢で、側板部51Cから後方へ向けて延出しており、コネクタ幅方向を板厚方向とする板状をなしている。延出板部52は、
図2に示されるように、閉位置にて、コネクタ幅方向に見て略四角形状に形成されているが、後部の上端側の角部は円弧状をなしている。
【0064】
延出板部52は、
図2に示されるように、閉位置にある可動部材50の上板部51Aよりも若干下方にずれて位置している。上板部51Aの後端部における延出板部52との境界位置に形成された段部は、可動部材50が開位置にあるときにハウジング10の移動阻止部12Bによって支持される被阻止部51A-1をなしている(
図4(A)も参照)。
【0065】
カム部53は、
図2に示されるように、延出板部52の内側面(コネクタ幅方向で内側に位置する面)からコネクタ幅方向内方に突出して設けられている。カム部53は、スライダ40のカム収容部43内に収容されている(
図4(A)、
図8(A)および
図10(A)参照)。
【0066】
以下、開位置でのカム部53を示す
図4(A)と閉位置でのカム部53を示す
図10(A)とに基づいて、カム部53の形状を詳述する。
図4(A)および
図10(A)に示されるように、カム部53は、コネクタ幅方向に見て延出板部52よりもひと回り小さい略四角形状に形成されているが、
図4(A)で前部の上端側に位置する第一の角部(
図10(A)で前部の下端側に位置する角部)および
図4(A)で後部の下端側に位置する第二の角部(
図10(A)で後部の上端側に位置する角部)が円弧状をなしている。
【0067】
カム部53の周面(コネクタ幅方向に対して平行な面)において、上記第一の角部に形成された突湾曲面は前方押圧部53Aをなしている。前方押圧部53Aは、可動部材50が開位置から閉位置へ向けた閉方向へ回動するときに、スライダ40の前方被圧部43Aを前方へ向けて押圧することにより、スライダ40を前方へ移動させる。一方、カム部53の周面において、上記第二の角部に形成された突湾曲面は後方押圧部53Bをなしている。後方押圧部53Bは、可動部材50が閉位置から開位置へ向けた開方向へ回動するときに、スライダ40の後方被圧部43Bを後方へ向けて押圧することにより、スライダ40を後方へ移動させる。
【0068】
また、
図4(A)に示されるように、開位置にあるカム部53の周面のうち、前方押圧部53Aに連続し、カム部53の前端面(
図10(A)で示される閉位置では下端面)を形成する平坦面は、第一当接部53Cをなしている。可動部材50が開位置にあるとき、ハウジング10の付勢部16Aからの付勢により、
図4(A)に示されるように、第一当接部53Cには、スライダ40の前方被圧部43Aが前方から接面して押し付けられる。
図10(A)に示されるように、閉位置にあるカム部53の周面のうち、前方押圧部53Aに連続し、カム部53の前端面(
図4(A)で示される開位置では上端面)を形成する平坦面は、第二当接部53Dをなしている。可動部材50が閉位置にあるとき、
図10(A)に示されるように、第二当接部53Dは、スライダ40の前方被圧部43Aに後方から接面する。
【0069】
軸部54は、
図2に示されるように、延出板部52の外側面(コネクタ幅方向で外側に位置する面)からコネクタ幅方向外方へ向けて突出して設けられている。軸部54は、コネクタ幅方向の延びる軸線を有する円柱状をなしており、その軸線まわりに回動可能な状態でハウジング10の軸支持部17Dに収容されている。
図4(A),
図8(A)および
図10(A)において、軸部54は破線で示されている。本実施形態では、軸部54の軸線は可動部材50の回動軸線と一致している。換言すると、可動部材50の回動中心Oは軸部54の中心と一致している。また、軸部54は、軸支持部17Dの内壁面によって前方、後方および下方への移動を規制されているとともに、補強金具30の軸規制部31Bによって上方への移動を規制されている。
【0070】
軸部54ひいては回動中心Oは、
図4(A),
図8(A)および
図10(A)に示されるように、可動部材50が開閉方向でいずれの位置にあっても、コネクタ方向に見て前後方向(X軸方向)および上下方向(Z軸方向)でカム部53の範囲内に位置している。本実施形態では、カム部53と軸部54はコネクタ幅方向(Y軸方向)で異なる位置に設けられているので、コネクタ幅方向で見て軸部54をカム部53と重複した位置に設けることが可能となっている。なお、本実施形態では、コネクタ幅方向に見て軸部54全体がカム部53の範囲内に位置しているが、これに替えて、回動中心がカム部の範囲内に位置しているのであれば、軸部における回動中心を含まない一部がカム部の範囲外に突出していてもよい。
【0071】
コネクタ1の組立要領について説明する。まず、端子20をハウジング10に下方から取り付ける。具体的には、端子20の被保持部22をハウジング10の前方収容部15Aへ下方から圧入して、端子20を端子収容部15に収容する。また、スライダ40をハウジング10へ後方から取り付ける。具体的には、スライダ40の側腕部42をハウジング10の受入端部13Aへ後方から挿入する。このスライダ40の取付作業は、スライダ40が後退位置に配置されるまで、すなわち、スライダ40の被付勢部44A-1がハウジング10の付勢部16Aに後方から当接するまで行われる(
図3(A)参照)。なお、端子20およびスライダ40の取付けの順序は、いずれが先でもあってもよいし、同時であってもよい。
【0072】
次に、開位置の姿勢に維持した可動部材50をハウジング10に上方から取り付ける。具体的には、カム部53をスライダ40のカム収容部43に収容するとともに、軸部54をハウジング10の軸支持部17Dに収容する。このとき、可動部材50のカム部53がスライダ40のカム収容部43内で前方被圧部43Aに後方から当接可能に位置するので、スライダ40がハウジング10から後方へ抜けてしまうことが防止される。
【0073】
次に、補強金具30をハウジング10に上方から取り付ける。具体的には、ハウジング10の金具保持部17A-1に圧入部31Aを圧入することにより、ハウジング10の金具収容部17Aに被保持部31を収容する。このようにハウジング10に補強金具30を取り付けることにより、補強金具30の軸規制部31Bが軸部54の直上に位置し、軸部54の上方への移動を規制する。この結果、可動部材50がハウジング10から外れることを良好に防止できる。このようにして補強金具30がハウジング10に取り付けられることによりコネクタ1が完成する。
【0074】
次に、コネクタ1に対する平型導体Cの挿抜の動作を説明する。まず、平型導体Cの挿入動作の開始に先立って、端子20の接続部23および補強金具30の固定部32を回路基板の対応部(図示せず)に半田接続して、コネクタ1を回路基板に実装する。また、可動部材50を開位置に位置させておく。開位置にある可動部材50は、被阻止部51A-1がハウジング10の移動阻止部12Bに下方から支持されることにより、それ以上の開方向への移動を阻止されている。また、既述したように、ハウジング10の付勢部16Aからの付勢により、
図4(A)に示されるように、スライダ40の前方被圧部43Aが可動部材50のカム部53の第一当接部53Cに接面して押し付けられる。したがって、カム部53がスライダ40によって前方から支持される。つまり、可動部材50は、コネクタ幅方向に見たときに、2位置、すなわち被阻止部51A-1および第一当接部53Cの位置で支持された状態となっている。その結果、可動部材50がガタつくことを防止して、該可動部材50が開位置にある状態を良好に維持することができる。
【0075】
次に、
図1に示されるように、平型導体Cの前端側部分を前後方向に延びた状態でコネクタ1の後方に位置させる。次に、
図7(A),(B)および
図8(B)に示されるように、平型導体Cの前端側部分をスライダ40の挿入孔部41Aに前方へ向けて挿通させ、さらにハウジング10の受入部13に前方へ向けて挿入する。受入部13への挿入過程において、平型導体Cは、
図8(B)に示されるように、端子20の接触腕部25,26と押圧腕部27との間に進入する。この平型導体Cの挿入は、平型導体Cの前端が前壁部14の後面に当接した時点で完了する。
【0076】
また、コネクタ幅方向での平型導体Cの両端部では、耳部C2がハウジング10の抜止突部12Aの傾斜面に案内されて上端面に乗り上げた後、さらに前進して抜止突部12Aの位置を通過し、抜止突部12Aよりも前方に達する。平型導体Cの挿入は、
図3(A)および
図8(B)に示されるように、平型導体Cの前端面が前壁部14の後端面に当接するまで行われる。挿入が完了した時点において、平型導体Cは、
図3(A)に示されるように、上方から見て、切欠部C1が抜止突部12Aを囲むように位置する。
【0077】
また、平型導体Cの挿入が完了した時点において、
図8(B)に示されるように、スライダ40の押圧板部45が、抜止突部12Aよりも後方位置で、平型導体Cの上面を下方へ向けて押圧している。したがって、平型導体Cは、
図8(B)に示されるように、その厚さ方向で略クランク状に屈曲された状態となっている。
【0078】
次に、開位置にある可動部材50の操作部51に指を引っ掛けて、該可動部材50を閉方向へ回動することにより閉位置に移動させる。閉方向への回動過程において、可動部材50の前方押圧部53Aがスライダ40の前方被圧部43Aを前方へ向けて押圧する。具体的には、前方押圧部53Aは、前方被圧部43Aの上部に摺接しながら該上部を前方へ押圧する。その結果、スライダ40は、可動部材50の回動に連動して前方へ移動する。
【0079】
可動部材50の回動過程、換言すると、スライダ40の前方への移動過程において、被係止腕部44の被付勢部44A-1(被係止部44Aの前部)がハウジング10の付勢部16A(係止部16の後部)に後方から当接すると、被付勢部44A-1がコネクタ幅方向外方に向けた押圧力を受ける。その結果、被係止腕部44がコネクタ幅方向外方に弾性変形し、スライダ40のさらなる前方への移動が許容される。そして、可動部材50が閉位置に達したときに、スライダ40が前進位置に達する。このとき、被係止部44Aが係止部16を乗り越えて、被係止腕部44が弾性変形量を減じるようにコネクタ幅方向内方に変形する。その結果、被係止部44Aが係止部16に対して前方から係止可能な状態となるので(
図9(B)参照)、スライダ40の不用意な後方への移動が阻止される。
【0080】
可動部材50が閉位置に達したとき、
図10(A)に示されるように、カム部53は、第二当接部53Dでスライダ40の前方被圧部43Aに接面し、該前方被圧部43Aによって支持される。また、可動部材50が閉位置に達したとき、
図10(A),(B)に示されるように、可動部材50の上板部51Aがハウジング10の前壁部14の上面に上方から接面して当接し、可動部材50のそれ以上の閉方向への移動が阻止される。また、可動部材50の前板部51Bがハウジング10の前壁部14の前面に対して前方から対面して位置する。
図10(B)に示されるように、前板部51Bは、その下端がハウジング10の下端とほぼ同じ高さに位置し、端子20の接続部23を覆う。したがって、接続部23が外部から保護され、例えば、接続部23に対する粉塵の付着や、操作者の指の接触等が良好に防止される。また、本実施形態では、
図10(B)に示されるように、前板部51Bの下端には、接続部23と対応する位置に切欠部51B-1が形成されており、接続部23と前板部51Bとの干渉が回避されている。
【0081】
また、スライダ40が前進位置に達すると、押圧板部45におけるコネクタ幅方向での両端部が、抜止突部12Aの直上に位置する。押圧板部45は、この位置において、平型導体Cの上面に当接して該平型導体Cの上方への移動を規制するので、平型導体Cの被抜止部C2Aは抜止突部12Aに対して係止可能な位置に維持される。したがって、平型導体Cの不要な抜出が阻止される。
【0082】
また、
図10(B)に示されるように、コネクタ幅方向での端子配列範囲では、スライダ40の押圧板部45が、端子20の押圧腕部27と平型導体Cとの間に進入し、押圧腕部27から下方へ向けた押圧力を受ける。この押圧力は、押圧板部45を介して平型導体Cへ伝達され、さらに、該平型導体Cによって接触部25A,26Aが押圧され、接触腕部25,26が下方へ弾性変位する。その結果、接触部25A,26Aが平型導体Cの回路部に下方から接圧をもって接触する。そして、押圧腕部27と接触腕部25,26とによって押圧板部45および平型導体Cが挟持された状態となる。また、この端子配列範囲においても、押圧板部45が平型導体Cの上面に当接することにより、平型導体Cの上方への移動が規制されている。なお、
図10(B)では、接触腕部25,26が弾性変位していない状態で図示されているが、実際には、下方へ弾性変位している。
【0083】
このように、本実施形態では、端子20に押圧腕部27を設けることにより、平型導体Cが押圧腕部27と接触腕部25,26とによって間接的に挟持された状態となり、接触部25A,26Aと平型導体Cの回路部との接圧が高められる。したがって、コネクタ1の使用時、コネクタ1が外部からの振動を受けて、弾性部28および接触腕部25,26が振動に追従するように弾性変位しても、平型導体Cが挟持された状態は維持される。その結果、接触部25A,26Aと平型導体Cの回路部とが高い接圧をもって接触した状態を良好に維持することができる。このように可動部材50を閉位置へ回動させることにより、コネクタ1に対する平型導体Cの挿入接続動作が完了する。
【0084】
本実施形態では、可動部材50の回動中心Oは、可動部材50が開閉方向でいずれの位置にあっても、コネクタ幅方向に見て前後方向でカム部53の範囲内に位置しているので、回動中心Oと前方押圧部53Aとが互いに近くに位置することとなり、その分、回動中心Oと前方押圧部53Aとの距離が短くなる。したがって、
図8(A)に示されるように、操作部51の外面(操作者が指で触れて操作する面)と回動中心Oとの距離D1に対する該回動中心Oと前方押圧部53Aとの距離D2の比が小さくなるので、その分、可動部材50を閉方向に回動させるのに必要な操作力を小さくできる。なお、距離D1は、操作部51の外面における任意の位置と回動中心Oとの間の距離であり、
図8(A)に示されているのはその一例である。また、距離D2は、前方押圧部53Aにおける任意の位置と回動中心Oとの間の距離であり、
図8(A)に示されているのはその一例である。
【0085】
次に、コネクタ1からの平型導体Cの抜出動作を説明する。コネクタ1に挿入接続された平型導体Cを抜出する場合には、閉位置にある可動部材50の操作部51に指を引っ掛けて、該可動部材50を開方向へ回動することにより開位置に移動させる。開方向への回動過程において、可動部材50の後方押圧部53Bがスライダ40の後方被圧部43Bを後方へ向けて押圧する。具体的には、後方押圧部53Bは、後方被圧部43Bの上部に摺接しながら該上部を後方へ押圧する。その結果、スライダ40は、可動部材50の回動に連動して後方へ移動する。
【0086】
可動部材50の回動過程、換言すると、スライダ40の後方への移動過程においては、被係止腕部44のコネクタ幅方向外方への弾性変形を伴いながら、被係止部44Aが係止部16を乗り越える。そして、可動部材50が開位置に達したときに、スライダ40が後退位置に達する。後退位置において、被付勢部44A-1が付勢部16Aによって後方へ付勢され(
図3(B)参照)、
図8(A)に示されるように、前方被圧部43Aがカム部53の第一当接部53Cに前方から当接して押し付けられる。また、可動部材50の被阻止部51A-1がハウジング10の移動阻止部12Bに上方から当接する。その結果、可動部材50は、第一当接部53Cおよび被阻止部51A-1で支持されて開位置に維持される。
【0087】
このようにして可動部材50を開位置に移動させた後、平型導体Cを後方へ引くだけで該平型導体Cをコネクタ1から簡単に抜出することができる。このとき、押圧板部45は抜止突部12Aよりも後方に位置しているので、平型導体Cの抜出時に、押圧板部45が平型導体Cの上面に干渉しにくくなり、平型導体Cを簡単に抜出しやすくなる。
【0088】
本実施形態では、可動部材50の回動中心Oは、可動部材50が開閉方向でいずれの位置にあっても、コネクタ幅方向に見て前後方向でカム部53の範囲内に位置しているので、回動中心Oと後方押圧部53Bとが互いに近くに位置することとなり、その分、回動中心Oと後方押圧部53Bとの距離が短くなる。したがって、
図10(A)に示されるように、操作部51の外面と回動中心Oとの距離D1に対する該回動中心Oと後方押圧部53Bとの距離D3の比が小さくなるので、その分、可動部材50を開方向に回動させるのに必要な操作力を小さくできる。なお、距離D1は、操作部51の外面における任意の位置と回動中心Oとの間の距離であり、
図10(A)に示されているのはその一例である。また、距離D3は、後方押圧部53Bにおける任意の位置と回動中心Oとの間の距離であり、
図10(A)に示されているのはその一例である。
【0089】
本実施形態では、ハウジング10の付勢部16Aおよびスライダ40の被付勢部44A-1の両方において、相手側に当接可能な部分に傾斜面が形成されていたが、付勢部と被付勢部の両方に傾斜面が形成されることは必須ではない。つまり、コネクタ幅方向での弾性力において前後方向の分力が生じるようになっていればよく、変形例として、例えば、付勢部と被付勢部のいずれか一方に傾斜面が形成されているようにしてもよい。また、本実施形態では、付勢部16Aおよび被付勢部44A-1において、相手側に当接可能な部分の面は平坦な傾斜面であったが、平坦であることは必須ではなく、前後方向に対して傾斜した成分をもつ面であればよく、例えば、突湾曲した曲面として形成することも可能である。
【0090】
本実施形態では、コネクタ幅方向で弾性変形可能な被係止腕部44がスライダ40に設けられており、その弾性力を利用して、ハウジング10の付勢部16Aにより、被係止腕部44の被付勢部44A-1を後方へ付勢することとしたが、弾性変形可能な部分をスライダ40に設けることは必須ではない。変形例として、例えば、弾性変形可能な部分をハウジングに設け、その部分に形成された付勢部でスライダの被付勢部を後方に付勢するようにしてもよい。また、他の変形例として、弾性変形可能な部分をハウジングおよびスライダの両方に設け、これらの部分に付勢部および被付勢部を設けてもよい。
【0091】
また、弾性変形可能な部分の弾性変形方向がコネクタ幅方向であることは必須ではなく、例えば、上下方向や前後方向であってもよい。弾性変形方向を上下方向とする場合には、付勢部および被付勢部の少なくとも一方において、相手側に当接可能な部分の面は、コネクタ幅方向に見たときに前後方向に対して傾斜した成分をもつ面(例えば、平坦な傾斜面や突湾曲した曲面等)として形成される。また、弾性変形方向を前後方向とする場合には、弾性力の分力ではなく、弾性力全体、あるいはそれに対する反力が付勢に利用される。また、その場合には、付勢部と被付勢部において互いに当接する部分に傾斜面を設けることは必須ではない。
【0092】
本実施形態では、可動部材50は、回動中心Oまわりの回動のみにより開位置と閉位置との間を移動することとしたが、これに替えて、例えば、回動とともにそれ以外の移動が行われるようになっていてもよい。例えば、可動部材が回動とともに前後方向でスライド移動するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 コネクタ
10 ハウジング
11 本体部
12B 移動阻止部
16 係止部
16A 付勢部
17D 軸支持部
20 端子
30 補強金具
31 被保持部
31B 軸規制部
32 固定部
40 スライダ
44 被係止腕部
44A 被係止部
44A-1 被付勢部
50 可動部材
51 操作部
53 カム部
53A 前方押圧部
53B 後方押圧部
54 軸部
C 平型導体
O 回動中心