(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113774
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
F28D 21/00 20060101AFI20240816BHJP
F01K 3/02 20060101ALI20240816BHJP
F01K 3/12 20060101ALI20240816BHJP
F01K 13/00 20060101ALI20240816BHJP
F28D 20/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
F28D21/00 B
F01K3/02 C
F01K3/12
F01K13/00 B
F28D20/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018948
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】横山 康弘
(72)【発明者】
【氏名】安嶋 賢哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 時空
(72)【発明者】
【氏名】武塙 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】峯松 繁行
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率を向上すること。
【解決手段】蓄熱システム(10)は、蒸気を生成するボイラ(11)と、ボイラにて生成した蒸気が供給される蒸気タービン(12)と、蒸気タービンから排出される蒸気を復水する復水器(13)と、貯留する蓄熱材によって復水器で生成された復水を加熱して蒸気を生成し、該蒸気を蒸気タービンに供給する蓄放熱系(21)とを備えている。蓄放熱系は、貯留する蓄熱材を加熱可能なヒータ(35)を備えている。ヒータは、ボイラ以外の熱源によって蓄熱材を加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を生成する蒸気生成器と、
前記蒸気生成器にて生成した蒸気が供給される蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出される蒸気を復水する復水器と、
貯留する蓄熱材によって前記復水器で生成された復水を加熱して蒸気を生成し、該蒸気を前記蒸気タービンに供給する蓄放熱系とを備えた蓄熱システムであって、
前記蓄放熱系は、貯留する蓄熱材を加熱可能な加熱装置を備え、
前記加熱装置は、前記蒸気生成器以外の熱源によって蓄熱材を加熱することを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記蓄放熱系は、蓄熱材を収容する高温蓄熱槽及び低温蓄熱槽と、
前記高温蓄熱槽から前記低温蓄熱槽に供給される蓄熱材によって復水を加熱して蒸気を生成する補助蒸気生成器とを更に備え、
前記加熱装置は、前記低温蓄熱槽から前記高温蓄熱槽に供給される蓄熱材を加熱することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記低温蓄熱槽から前記高温蓄熱槽に供給される蓄熱材を加熱する加熱炉を備えていることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記蒸気タービンにて発生した動力から発電する発電機を更に備え、
前記加熱装置は、前記発電機にて発生した電力によって前記高温蓄熱槽に貯留される蓄熱材を加熱するヒータを備えていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記蒸気タービンにて発生した動力から発電する発電機を更に備え、
前記加熱装置は、前記発電機にて発生した電力によって前記高温蓄熱槽に貯留される蓄熱材を加熱するヒータを備え、
前記蓄放熱系は、前記蒸気生成器で生成される蒸気によって、前記低温蓄熱槽から前記高温蓄熱槽に供給される蓄熱材を加熱する熱交換器を更に備え、
前記熱交換器と前記ヒータとを選択的に用いて前記蓄放熱系の蓄熱材を加熱することを特徴とする請求項2に記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記蓄放熱系は、前記高温蓄熱槽から前記低温蓄熱槽に供給する蓄熱材の流量を調整可能な蓄熱材供給ポンプを備え、
前記蓄熱材供給ポンプによる蓄熱材の流量調整によって、前記補助蒸気生成器で生成した蒸気による前記蒸気タービンへのエネルギー供給量を調整する請求項2または請求項3に記載の蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材を用いた蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるシステムは、作業流体を熱交換器の中を通って循環させるための作業流体回路、及び蓄熱媒体を循環させるための蓄熱媒体回路を有している。蓄熱媒体回路は、熱交換器を介して接続される高温貯蔵タンク及び低温貯蔵タンクを有している。熱交換器にて、高温貯蔵タンクから低温貯蔵タンクに送り出される蓄熱媒体から作業流体に熱が伝熱し、熱交換器から出た作業流体がタービンの中に入る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、蓄熱媒体が液相のみの顕熱変化で熱交換し、作業流体が例えば蒸気のように顕熱変化及び潜熱変化で熱交換するシステムでは、蓄熱媒体と作業流体とで熱変換形態が異なることとなる。このため、蓄熱媒体の加熱を作業流体だけで行う場合、蓄熱媒体の流量を大きくすると作業流体と熱交換できない温度帯が生じ、また、蓄熱媒体の流量を小さくすると作業流体が高温の状態で熱交換器から流出し、エネルギー回収率が低くなる、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率を向上することができる蓄熱システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様の蓄熱システムは、蒸気を生成する蒸気生成器と、前記蒸気生成器にて生成した蒸気が供給される蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出される蒸気を復水する復水器と、貯留する蓄熱材によって前記復水器で生成された復水を加熱して蒸気を生成し、該蒸気を前記蒸気タービンに供給する蓄放熱系とを備えた蓄熱システムであって、前記蓄放熱系は、貯留する蓄熱材を加熱可能な加熱装置を備え、前記加熱装置は、前記蒸気生成器以外の熱源によって蓄熱材を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱装置によって蓄放熱系の蓄熱材を加熱できるので、蓄熱材の加熱にて、蒸気発生器で生成された蒸気による蓄熱材への伝熱量を少なくしたり無くしたりすることができる。蒸気発生器で生成された蒸気による蓄熱材への伝熱量を少なくした場合、蓄熱材の流量を大きくすることで蒸気による加熱(蓄熱)後の蓄熱材が、まだ所望の温度まで上昇していなくても、加熱装置で蓄熱材を加熱し、蓄放熱系にて蓄熱材を高温として蓄熱材にて蒸気タービンに供給する蒸気を生成することができる。よって、蓄熱材にて蒸気と熱交換できない温度帯が生じることを回避でき、エネルギー回収率及びエネルギー効率を向上することができる。また、蒸気発生器で生成された蒸気によって蓄放熱系の蓄熱材を加熱(蓄熱)しない場合、該蓄熱材を加熱した後の蒸気が高温で流出することを回避でき、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
【
図2】第2蓄熱運転モードの蓄熱システムを示す
図1と同様の構成図である。
【
図3】放熱運転モードの蓄熱システムを示す
図1と同様の構成図である。
【
図4】比較構造及び第1の実施の形態の交換熱量と温度の関係を示すグラフである。
【
図5】第2の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
【
図6】蓄熱運転モードの蓄熱システムを示す
図5と同様の構成図である。
【
図7】発電に必要なエネルギーの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る蓄熱システムについて、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
図1に示すように、蓄熱システム10は、例えば、火力発電システムに用いられる。蓄熱システム10は、蒸気(過熱蒸気)を生成するボイラ(蒸気生成器)11と、蒸気から動力を発生する蒸気タービン(動力発生装置)12と、蒸気を凝縮して復水とする復水器(凝縮装置)13とを備えている。
【0010】
ボイラ11は、熱源を介して水を加熱して蒸気を生成する。特に限定されるものでないが、ボイラ11の熱源は火力発電用の燃料の燃焼熱を発生するものであり、前記燃料としては、石炭・石油・天然ガス等の化石燃料、各種バイオマス燃料、水素燃料、アンモニア燃料等を使用することができる。
【0011】
蒸気タービン12は、配管15を介してボイラ11にて生成した蒸気が供給される。蒸気タービン12は、蒸気の熱エネルギーを吸収して出力軸12aを回転する動力を発生し、低温になった蒸気を排出する。蒸気タービン12には、出力軸12aを介して発電機Gが接続され、発電機Gは、出力軸12aの回転により発電する。
【0012】
蒸気タービン12の出口側には配管16が接続され、かかる配管16に上流側から下流側に向かって順に復水器13、復水ポンプ17、ボイラ給水ポンプ18及びエジェクタ19が設けられる。復水器13は、蒸気タービン12から排出される蒸気を回収し、該蒸気を凝縮して復水する。復水器13で生成された復水は、復水ポンプ17及びボイラ給水ポンプ18によってエジェクタ19及びボイラ11に向かって送出される。なお、エジェクタ19及びその周辺構造については後述する。
【0013】
蓄熱システム10は、ボイラ11からの蒸気及び復水器13からの復水が供給される蓄放熱系21を更に備えている。蓄放熱系21は、蓄熱材HSを貯留して用いており、該蓄熱材HSと蒸気及び復水との間で熱交換を行う。ここで、蓄熱材HSは、蒸気や水に対して液相で熱交換する顕熱式の蓄熱材であり、化学的に不活性な溶融塩等が用いられる。
【0014】
蓄放熱系21は、ボイラ11と蒸気タービン12とを接続する配管15から分岐する配管22を介してボイラ11から蒸気が供給される熱交換器23と、蓄熱材HSを収容する高温蓄熱槽24及び低温蓄熱槽25とを備えている。
【0015】
高温蓄熱槽24は、熱交換器23で加熱した蓄熱材HSを収容する。低温蓄熱槽25は、熱交換器23で放熱した蓄熱材HSを収容する。よって、高温蓄熱槽24には低温蓄熱槽25より高温の蓄熱材HSが収容される。
【0016】
高温蓄熱槽24は高温蓄熱槽用配管27を介して熱交換器23に接続される。高温蓄熱槽用配管27は、高温蓄熱槽24と熱交換器23とを接続する主配管27aと、主配管27aに対して分岐及び合流する副配管27b(
図1中破線で図示)とを備えている。副配管27bには、蓄熱材HSを高温蓄熱槽24から熱交換器23を経て低温蓄熱槽25に送出するポンプ28が設けられる。更に、副配管27bには、蓄熱材HSの流れを遮断及び許容する弁29が設けられる。
【0017】
低温蓄熱槽25は低温蓄熱槽用配管31を介して熱交換器23に接続される。低温蓄熱槽用配管31は、低温蓄熱槽25と熱交換器23とを接続する主配管31aと、主配管31aに対して分岐及び合流する副配管31b(
図1中破線で図示)とを備えている。主配管31aには、蓄熱材HSを低温蓄熱槽25から熱交換器23を経て高温蓄熱槽24に送出するポンプ32が設けられる。更に、副配管31bには、蓄熱材HSの流れを遮断及び許容する弁33が設けられる。
【0018】
熱交換器23は、低温蓄熱槽25から高温蓄熱槽24に供給される間に通過する蓄熱材HSと、ボイラ11から配管22を経て通過する蒸気との間で熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、蓄熱材HSが加熱(蓄熱)され、且つ、ボイラ11から供給された蒸気が冷却されて該蒸気の熱量が減少する。熱交換器23で熱量が減少した蒸気は、気相となる他、温度や圧力によっては水を含む気液二相の蒸気(飽和蒸気)となる。
【0019】
蓄放熱系21は、貯留する蓄熱材HSを加熱可能な加熱装置を構成するヒータ35を更に備え、ヒータ35はボイラ11で生成された蒸気以外の熱源となる。ヒータ35は、図示構成例では、高温蓄熱槽24に設けられて高温蓄熱槽24内に貯留(供給)された状態の蓄熱材HSを加熱可能としているが、これに限られるものでない。例えば、高温蓄熱槽用配管27の主配管27aにヒータ35を設け、かかるヒータ35によって低温蓄熱槽25から高温蓄熱槽24に貯留(供給)する直前の蓄熱材HSが加熱されるようにしてもよい。ヒータ35は、発電機Gにて発生した電力によって発熱して蓄熱材HSを加熱し、好ましくは、所定の電力供給先での要求電力に対する余剰電力が発電機Gから供給されて発熱するよう、不図示の制御部によって制御される。
【0020】
エジェクタ19は、スチームエジェクタ等により構成され、液流に蒸気を混合してその熱と運動量を渡し、吸引側入口部19bより導入された流体圧より高圧の噴出流体を得る装置とされる。エジェクタ19は、駆動側入口部19a、吸引側入口部19b及び吐出側出口部19cを備えている。
【0021】
駆動側入口部19aには配管16の下流側が接続され、復水ポンプ17及びボイラ給水ポンプ18によって送出された復水が供給される。吸引側入口部19bには、熱交換器23に接続される配管38が接続され、かかる配管38を通じてボイラ11で生成されてから熱交換器23で放熱して排出された蒸気が吸引側入口部19bに供給される。吐出側出口部19cに接続される配管39は、ボイラ11の入口に接続される。
【0022】
エジェクタ19では、駆動側入口部19aに高圧の復水が供給され、吸引側入口部19bに蒸気が供給されると、エジェクタ19内部の駆動ノズル出口で超音速となり、復水の状態は気液二相流となることで静圧が低下し、蒸気を吸引する作用が発生する。また、蒸気と復水との接触により蒸気が凝縮して復水と混合し、吸引側入口部19bから供給される蒸気圧よりも圧力が上昇して吐出側出口部19cから排出される。
【0023】
配管16において、ボイラ給水ポンプ18とエジェクタ19との間には、ボイラ給水ポンプ18から送出される復水の流れを遮断及び許容する弁41が設けられる。また、配管38において、熱交換器23とエジェクタ19との間には、熱交換器23で放熱された蒸気の流れを遮断及び許容する弁42が設けられる。
【0024】
蓄熱システム10は、エジェクタ19を迂回するように配管16、39に接続されたバイパス管43(
図1中破線で図示)を更に備えている。バイパス管43における一端(上流端)の接続位置は、配管16におけるボイラ給水ポンプ18とエジェクタ19の駆動側入口部19aとの間とされ、更に具体的には、配管16におけるボイラ給水ポンプ18と弁41との間とされる。バイパス管43における他端(下流端)の接続位置は、配管39におけるエジェクタ19の吐出側出口部19cとボイラ11の入口との間とされる。
【0025】
バイパス管43には、ボイラ給水ポンプ18から送出される復水の流れを遮断及び許容する弁44が設けられる。
【0026】
蓄熱システム10は、配管16と配管38とを接続して復水が流れる配管46(
図1中破線で図示)を更に備えている。配管46の具体的な接続位置は、一端が配管16における復水ポンプ17とボイラ給水ポンプ18との間とされ、他端が配管38における熱交換器23と弁42との間とされる。
【0027】
配管46には、復水器13から配管16に流れる復水を配管38、熱交換器23に送出するポンプ47が設けられる。更に、配管46には、復水の流れを遮断及び許容する弁48が設けられる。
【0028】
ここで、熱交換器23は、復水器13から配管16、46、38を経て通過する復水と、高温蓄熱槽24から低温蓄熱槽25に供給される間に通過する蓄熱材HSとの間で熱交換可能に設けられる(
図3参照)。かかる熱交換によって、蓄熱材HSが放熱され、且つ、復水が加熱されて蒸気が生成され、言い換えると復水(蒸気)の熱量が増加する。熱交換器23で生成された蒸気は配管22から配管15を通じて蒸気タービン12に供給される。ここにおいて、熱交換器23は、蒸気タービン12に供給する蒸気を生成可能な補助ボイラ(補助蒸気生成器)として機能する。
【0029】
第1の実施の形態の蓄熱システム10は、第1蓄熱運転モードと、第2蓄熱運転モードと、放熱運転モードとで選択的に運転される。第1蓄熱運転モード及び第2蓄熱運転モードは、蓄熱材HSに熱エネルギーが蓄積され、発電機Gから所定の電力供給先への出力が相対的に低くなるモードとされる。放熱運転モードは、蓄熱材HSから熱エネルギーが放出され、発電機Gから所定の電力供給先への出力が相対的に高くなるモードとされる。以下、
図1を参照して第1蓄熱運転モードについて説明し、
図2を参照して第2蓄熱運転モードについて説明し、
図3を参照して放熱運転モードについて説明する。なお、
図1~
図3にて、各運転モードで使用されない配管が破線で図示される。
【0030】
[第1蓄熱運転モード:
図1]
第1蓄熱運転モードでは、弁29、33、44、48が閉塞され、弁41、42が開放される。また、復水ポンプ17、ボイラ給水ポンプ18及びポンプ32が作動され、ポンプ28、47が停止される。
【0031】
蓄放熱系21のポンプ32の作動によって、低温蓄熱槽25の蓄熱材HSが低温蓄熱槽用配管31の主配管31aを経て熱交換器23に流入する。熱交換器23では、蓄熱材HSがボイラ11にて生成された蒸気と熱交換して温度上昇することで加熱される。熱交換器23で加熱された蓄熱材HSは、ポンプ32の動力により高温蓄熱槽用配管27の主配管27aを経て高温蓄熱槽24に貯留される。
【0032】
よって、高温蓄熱槽24では高温となる蓄熱材HSの貯留量が増加し、かつ、低温蓄熱槽25では低温となる蓄熱材HSの貯留量が減少する。これにより、蓄熱システム10としての蓄熱エネルギーが増加することとなる。
【0033】
第1蓄熱運転モードにて、ボイラ11で生成された蒸気(過熱蒸気)は配管15、22にて熱交換器23及び蒸気タービン12に分配される。配管22から熱交換器23に流入した蒸気は、低温蓄熱槽25から高温蓄熱槽24に送出される蓄熱材HSに放熱して冷却され、配管38を経てエジェクタ19に吸引側入口部19bに吸引される。
【0034】
第1蓄熱運転モードにて、配管15から蒸気タービン12に流入した蒸気は、蒸気タービン12にて熱エネルギーが出力軸12aを回転する動力に変換され、温度低下して排出される。出力軸12aの回転動力によって発電機Gで発電され、所定の電力供給先に電力が供給される。蒸気タービン12から排出された蒸気は復水器13で復水される。かかる復水は、復水ポンプ17及びボイラ給水ポンプ18により配管16を経てエジェクタ19に供給され、駆動側入口部19aに流入される。
【0035】
エジェクタ19には、駆動側入口部19aから復水が供給され、吸引側入口部19bから熱交換器23で放熱して排出された蒸気が供給される。そして、エジェクタ19内部にて、復水と蒸気とが接触して蒸気が凝縮して混合され、エジェクタ19に流入する前と比べて温度上昇した復水として吐出側出口部19c及び配管39を経てボイラ11に供給される。
【0036】
このように、第1蓄熱運転モードにて、ボイラ11→熱交換器23→エジェクタ19→ボイラ11の流れで蒸気及び水(復水)が循環する循環系を構成することができる。また、第1蓄熱運転モードでは、ボイラ11で生成された蒸気により熱交換器23を介して蓄熱材HSを加熱して蓄熱材HSの熱量を増大させることができる。
【0037】
[第2蓄熱運転モード:
図2]
第2蓄熱運転モードでは、弁29、33、41、42、48が閉塞され、弁44が開放される。また、復水ポンプ17及びボイラ給水ポンプ18が作動され、ポンプ28、32、47が停止される。これにより、第2蓄熱運転モードでは、蓄放熱系21の運転が停止される。よって、高温蓄熱槽24と低温蓄熱槽25との間での蓄熱材HSの移動が停止され、熱交換器23にて蓄熱材HSによる熱交換も停止される。
【0038】
第2蓄熱運転モードにて、ボイラ11で生成された蒸気(過熱蒸気)の全てが配管15を介して蒸気タービン12に供給される。配管15から蒸気タービン12に流入した蒸気は、蒸気タービン12にて熱エネルギーが出力軸12aを回転する動力に変換され、温度低下して排出される。出力軸12aの回転動力によって発電機Gで発電され、所定の電力供給先に電力が供給され、該電力供給先での要求電力に対する余剰電力がヒータ35に供給される。これにより、ヒータ35が発熱し、高温蓄熱槽24に貯留される蓄熱材HSをヒータ35によって加熱して蓄熱材HSが温度上昇される。
【0039】
蒸気タービン12から排出された蒸気は復水器13で復水される。かかる復水は、復水ポンプ17及びボイラ給水ポンプ18により配管16を経てバイパス管43を流れ、配管39を経てボイラ11に供給される。
【0040】
このように、第2蓄熱運転モードでは、ボイラ11で生成された蒸気以外の熱源となるヒータ35により蓄熱材HSを加熱して蓄熱材HSの熱量を増大させることができる。また、第1の実施の形態では、第1蓄熱運転モードと第2蓄熱運転モードとを選択して実施することで、熱交換器23とヒータ35とを選択的に用いて蓄熱材HSを加熱することができる。
【0041】
[放熱運転モード:
図3]
放熱運転モードでは、弁41、42が閉塞され、弁29、33、44、48が開放される。また、復水ポンプ17、ボイラ給水ポンプ18及びポンプ28、47が作動され、ポンプ32が停止される。
【0042】
ポンプ28の作動によって、高温蓄熱槽24の蓄熱材HSが高温蓄熱槽用配管27の副配管27bを経て熱交換器23に流入する。熱交換器23では、蓄熱材HSが復水器13で生成された復水と熱交換して温度降下することで放熱される。熱交換器23で放熱された蓄熱材HSは、ポンプ28の動力により低温蓄熱槽用配管31の副配管31bを経て低温蓄熱槽25に貯留される。
【0043】
よって、低温蓄熱槽25では低温となる蓄熱材HSの貯留量が増加し、かつ、高温蓄熱槽24では高温となる蓄熱材HSの貯留量が減少する。よって、蓄熱システム10としての蓄熱エネルギーが減少することとなる。
【0044】
放熱運転モードにて、ボイラ11で生成された蒸気(過熱蒸気)の全てが配管15を介して蒸気タービン12に供給される。配管15から蒸気タービン12に流入した蒸気は、蒸気タービン12にて熱エネルギーが出力軸12aを回転する動力に変換され、温度低下して排出される。出力軸12aの回転動力によって発電機Gで発電され、所定の電力供給先に電力が供給される。蒸気タービン12から排出された蒸気は復水器13で復水される。かかる復水は、復水ポンプ17、ボイラ給水ポンプ18及びポンプ47によって配管16を送出され、配管16、46の分岐位置にて分配される。
【0045】
配管46で分配されずに配管16を流れる復水はバイパス管43及び配管39を経てボイラ11に供給される。
【0046】
配管46に流入する復水は、配管38を経て熱交換器23に供給される。熱交換器23に流入した復水は、熱交換器23にて高温蓄熱槽24から低温蓄熱槽25に送出される蓄熱材HSからの放熱で加熱され、熱交換器23にて蒸気が生成される。熱交換器23で生成された蒸気は、配管22を経て配管15に流入し、ボイラ11で生成された蒸気と合流して蒸気タービン12に供給される。
【0047】
このように、放熱運転モードでは、ボイラ11だけでなく蓄熱材HSからも熱エネルギーが供給され、各蓄熱運転モードに比べて蒸気タービン12の出力を増大させることができる。よって、放熱運転モードは、発電機Gの電力供給先での出力が相対的に高くなる場合に対応可能なモードとすることができる。一方、第1蓄熱運転モードはボイラ11からの蒸気が分配される熱交換器23にて、第2蓄熱運転モードは余剰電力が供給されるヒータ35にて、蓄熱材HSに熱エネルギーが蓄積される。よって、各蓄熱運転モードは、発電機Gの電力供給先での出力が相対的に低くなる場合に対応可能なモードとすることができる。これにより、各蓄熱運転モード及び放熱運転モードの切り替えによって、発電出力要求に応じた発電機Gの出力調整を行うことができる。
【0048】
続いて、第1の実施の形態の効果について、比較構造を用いて以下に説明する。比較構造は、第1の実施の形態におけるヒータ35を設置しない構成とされる。また、第1の実施の形態及び比較構造の両方にて、蓄熱材として液相の溶融塩を用いる。
【0049】
図4は、比較構造及び第1の実施の形態の交換熱量と温度の関係を示すグラフである。
図4にて、横軸は交換熱量(MW)、縦軸は温度(℃)とする。
図4のグラフにて、蓄熱材に溶融塩を用いているので、通常運転時にて蓄熱材が高温温度THと低温温度TLとの間の範囲で温度変化して液相を維持する。よって、蓄熱材は顕熱変化となり、比較構造における蓄熱時の矢印線GHa、GH1及び放熱時の矢印線GLのそれぞれにて、熱量の変化に対する温度変化が直線的(傾きが均一)に変化する。
【0050】
一方、
図4にて破線GWで示すように、水(蒸気)は、水と蒸気とが混在した気液二相の状態となる飽和蒸気にて潜熱変化となって温度が一定となる。また、破線GWでは、飽和蒸気より熱量が大きくなると過熱蒸気にて顕熱変化となって熱量に応じて直線的に温度が変化し、飽和蒸気より熱量が大きくなると圧縮水にて顕熱変化となって熱量に応じて直線的に温度が変化する。
【0051】
蓄熱材を加熱する場合、蒸気と蓄熱材との間で熱交換を行えるよう、熱交換中に蒸気に比べて蓄熱材の方が温度を低く維持する必要がある。すると、低温温度TLの蓄熱材を加熱する場合の温度変化を示す矢印線GHa、GH1は、破線GWの飽和蒸気及び過熱蒸気の境界点で最接近する図示のようになる。矢印線GHaは、加熱後の蓄熱材の温度がより高温になることを優先した場合の温度変化を示しており、該温度変化での矢印線GHaにおける横軸方向の変化量が蓄熱材における蓄熱時の交換熱量Q1となる。
【0052】
また、蓄熱材から放熱する場合、蒸気(水)と蓄熱材との間で熱交換を行えるよう、熱交換中に蒸気(水)より蓄熱材の温度を高く維持する条件(以下、「放熱用温度条件」とする)を満たす必要がある。すると、高温温度THの蓄熱材を放熱する場合の熱交換の温度変化を示す矢印線GLは、破線GWの飽和蒸気及び圧縮水の境界点で最接近する図示のようになる。かかる矢印線GLの横軸方向の変化量が蓄熱材における放熱時の交換熱量Q2となる。
【0053】
かかる放熱時の交換熱量Q2と、矢印線GHaで示す蓄熱時の交換熱量Q1とを比べると、蓄熱時の交換熱量Q1の方が大幅に小さくなる。しかも、矢印線GHaで示す蓄熱を行うと、交換熱量Q1で表した範囲より
図4中左側の範囲での蒸気(水)の交換熱量Q3に対しては、蒸気(水)のエネルギーを蓄熱材に十分に伝えることができなくなる。これにより、比較構造は、運転条件によっては高圧の蒸気の状態で熱交換器から流出して廃棄する場合もあり、エネルギー効率が低くなる、という問題がある。更には、交換熱量Q1が小さいために放熱時の交換熱量Q2に対する不足分の蓄熱に要する時間が長くなり、発電出力要求が高い時間帯(例えば昼間等)での発電電力の調整力が低下してしまう問題が生じる。
【0054】
一方、矢印線GH1は、加熱後の蓄熱材の交換熱量がより大きくなることを優先した場合の温度変化を示しており、該温度変化での矢印線GH1における横軸方向の変化量が蓄熱材における蓄熱時の交換熱量Q4となる。矢印線GH1で示す蓄熱では、交換熱量Q4が上述した放熱時の交換熱量Q2に近付くようになり、矢印線GHaで示す蓄熱に比べてエネルギー回収率を高めてエネルギー効率を向上することができる。
【0055】
但し、蓄熱時の矢印線GH1では、放熱時の矢印線GLに比べると、傾き(熱量変化に対する温度変化)が小さくなり、該傾きは蓄熱材の流量と比例関係になるので、放熱時に比べて蓄熱時の方が蓄熱材の流量が大幅に大きくなる。ところが、高温蓄熱槽及び低温蓄熱槽を用いた蓄放熱系では、各蓄熱槽の体積容量を同じとする必要があり、蓄熱時の方が蓄熱材の流量が大幅に大きくなると、高温蓄熱槽内の蓄熱材の体積容量が増え続けて蓄熱システム全体の運転が継続不能となる。
【0056】
そこで、第1の実施の形態では、蓄熱時にて、第1蓄熱運転モード及び第2蓄熱運転モードを実施している。第1の実施の形態は、第1蓄熱運転モードにて上述の矢印線GH1で示す蓄熱を行った後、第2蓄熱運転モードにて矢印線GH2で示す蓄熱を行っている。なお、第1の実施の形態における放熱運転モードは、上述の矢印線GLで示す放熱を行っている。
【0057】
かかる矢印線GH2で示す蓄熱は、蒸気(水)による蓄熱を停止し、発電機Gから供給される余剰電力によってヒータ35を発熱することで蓄熱材を加熱している。よって、矢印線GH2で示す蓄熱は、交換熱量を増減せずに蓄熱材の温度を上昇でき、上述した放熱用温度条件を満たすべく放熱時の矢印線GLに達するまで蓄熱材を加熱することができる。これにより、第1の実施の形態は、放熱時と蓄熱時とで蓄熱材の流量を同一に近付けることができ、高温蓄熱槽24及び低温蓄熱槽25を用いた蓄放熱系21を含む蓄熱システム10全体の運転を継続可能となる。
【0058】
上記第1の実施の形態によれば、蓄熱の第1ステップとなる第1蓄熱運転モードにて、ボイラ11で生成した蒸気を蓄放熱系21と蒸気タービン12とに分配し、放熱運転モードで必要な体積容量の蓄熱材HSを高温蓄熱槽24に貯留することができる。その後、蓄熱の第2ステップとなる第2蓄熱運転モードにて、該分配を停止してボイラ11からの全ての蒸気を蒸気タービン12に供給し、発電機Gで発電した余剰電力で高温蓄熱槽24の蓄熱材HSをヒータ35により目的温度まで加熱(蓄熱)可能となる。
【0059】
以上により、第1の実施の形態においては、蓄熱時と放熱時の蓄熱材HSの体積容量を同一に近付けつつ蓄熱時と放熱時の交換熱量Q2、Q4も同一に近付けてエネルギー損失を低減でき、蓄熱システム10のエネルギー効率を高めることができる。また、蓄熱時と放熱時の交換熱量Q2、Q4が同一に近付くことで、ヒータ35による加熱時間を短くでき、発電電力の調整力を良好に発揮することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0061】
本発明の第2の実施の形態について
図5~
図7を参照して説明する。
図5は、第2の実施の形態に係る蓄熱システムの概略構成図であり、放熱運転モードを示している。
図6は、蓄熱運転モードの蓄熱システムを示す
図5と同様の構成図である。
図5及び
図6に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の蓄放熱系21の構成を変更した蓄放熱系51を備えている。
【0062】
第2の実施の形態における蓄放熱系51は、配管52を介してボイラ11からの過熱蒸気及び復水器13からの復水が供給される。配管52は、配管15、16を接続しており、配管52の下流端は、配管15におけるボイラ11と蒸気タービン12との間に接続され、配管52の上流端は、配管16における復水ポンプ17とボイラ給水ポンプ18との間に接続される。配管52には、後述する蓄熱材ボイラ63の下流側に給水ポンプ53が設けられる。
【0063】
蓄放熱系51は、第1の実施の形態と同様に、蓄熱材HSを収容する高温蓄熱槽54及び低温蓄熱槽55を備えている。また、蓄放熱系51は、高温蓄熱槽54から低温蓄熱槽55に蓄熱材HSを供給する配管57及び蓄熱材供給ポンプ58と、低温蓄熱槽55から高温蓄熱槽54に蓄熱材HSを供給する配管61及び蓄熱材移送ポンプ62とを備えている。
【0064】
更に、蓄放熱系51は、配管57に設けられる蓄熱材ボイラ(補助蒸気生成器)63と、配管61に設けられて加熱装置を構成する加熱炉64とを備えている。
【0065】
蓄熱材ボイラ63は、高温蓄熱槽54から低温蓄熱槽55に供給される間に通過する蓄熱材HSと、復水器13から配管16、52を経て通過する復水とを熱交換可能に設けられる。かかる熱交換によって、復水が加熱されて蒸気(過熱蒸気)に相変化され、蓄熱材HSが放熱される。蓄熱材ボイラ63の加熱により生成された蒸気は、配管52、15を経て蒸気タービン12に供給される。
【0066】
加熱炉64は、低温蓄熱槽55から高温蓄熱槽54に送出(供給)される蓄熱材HSを加熱可能に設けられる。加熱炉64としては、加熱の前後にて液相を維持する蓄熱材HSを目的温度まで加熱できれば、熱源として公知の燃料を用いたボイラとすることを採用できる。但し、環境負荷等を考慮すると、バイオマス燃料や太陽光等の自然エネルギーを用いることが好ましい。加熱炉64は、ボイラ11で生成された蒸気以外の熱源となる。
【0067】
配管57に設けられる蓄熱材供給ポンプ58は、高温蓄熱槽54の下流側であって蓄熱材ボイラ63より上流側に設けられる。蓄熱材供給ポンプ58は、蓄熱材ボイラ63に供給する蓄熱材HSの流量が不図示の制御部によって制御される。配管61に設けられる蓄熱材移送ポンプ62は、低温蓄熱槽55の下流側であって加熱炉64より上流側に設けられる。
【0068】
蓄放熱系51は、第1の実施の形態のヒータ35と同様に、貯留する蓄熱材HSを加熱可能な加熱装置を構成するヒータ65を更に備え、ヒータ65はボイラ11で生成された蒸気以外の熱源となる。ヒータ65は、図示構成例では、高温蓄熱槽54に設けられて高温蓄熱槽54内に貯留(供給)された状態の蓄熱材HSを加熱可能としているが、これに限られるものでない。例えば、配管61にヒータ65を設け、かかるヒータ65によって低温蓄熱槽55から高温蓄熱槽54に貯留(供給)する直前の蓄熱材HSが加熱されるようにしてもよい。ヒータ65は、発電機Gにて発生した電力によって発熱して蓄熱材HSを加熱し、好ましくは、所定の電力供給先での要求電力に対する余剰電力が供給されて発熱する。
【0069】
第2の実施の形態においては、蓄熱運転モードと、放熱運転モードとで選択的に運転される。なお、以下では、蓄熱運転モード及び放熱運転モードの何れにおいても、ボイラ11及び加熱炉64が定格運転として一定出力で運転されている場合を説明するが、各種の条件下で出力調整することを妨げるものでない。
【0070】
[蓄熱運転モード及び放熱運転モード共通]
蓄熱運転モード及び放熱運転モードの両方にて、ボイラ11で生成された蒸気(過熱蒸気)の全てが配管15を介して蒸気タービン12に供給される。配管15から蒸気タービン12に流入した蒸気は、蒸気タービン12にて熱エネルギーが出力軸12aを回転する動力に変換され、温度低下して排出される。出力軸12aの回転動力によって発電機Gで発電され、所定の電力供給先に電力が供給される。
【0071】
蒸気タービン12から排出された蒸気は復水器13で復水される。かかる復水は、復水ポンプ17及びボイラ給水ポンプ18により配管16を経てボイラ11に供給、言い換えるとボイラ11に戻されて循環される。
【0072】
また、蓄熱運転モード及び放熱運転モードの両方にて、蓄放熱系51の蓄熱材移送ポンプ62の作動によって、低温蓄熱槽55の蓄熱材HSが配管61を経て加熱炉64に流入する。加熱炉64にて蓄熱材HSが所定温度まで加熱された後、高温蓄熱槽54に加熱された蓄熱材HSが供給される。続いて、放熱運転モード、蓄熱運転モードの順に説明する。
【0073】
[放熱運転モード:
図5]
放熱運転モードにて、蓄熱材供給ポンプ58の作動によって、高温蓄熱槽54の蓄熱材HSが配管57を経て蓄熱材ボイラ63に流入する。また、蓄熱材ボイラ63には、給水ポンプ53の作動によって、復水器13で生成された復水が配管52を経て流入し、該復水が蓄熱材HSと熱交換される。また、かかる熱交換により、復水が加熱されて蒸気が生成される。生成された蒸気は、配管52を経て配管15に流入し、ボイラ11で生成された蒸気と合流して蒸気タービン12に供給される。
【0074】
ここで、不図示の制御部によって蓄熱材供給ポンプ58の作動が制御され、蓄熱材ボイラ63に供給する蓄熱材HSの流量が調整される。これにより、蓄熱材ボイラ63から蒸気タービン12に供給される蒸気の交換熱量(エネルギー量)を調整することができる。
【0075】
蓄熱材ボイラ63では、復水器13で生成された復水と熱交換された蓄熱材HSが温度降下することで放熱される。蓄熱材ボイラ63で放熱された蓄熱材HSは、配管57を経て低温蓄熱槽55に貯留される。よって、放熱運転モードでは、低温蓄熱槽55にて低温となる蓄熱材HSの貯留量が増加し、かつ、高温蓄熱槽54では高温となる蓄熱材HSの貯留量が減少する。これにより、蓄熱システム10としての蓄熱エネルギーが減少することとなる。
【0076】
[蓄熱運転モード:
図6]
蓄熱運転モードでは、放熱運転モードに対し、給水ポンプ53及び蓄熱材供給ポンプ58が停止され、蓄熱材ボイラ63への蓄熱材HSと復水との流入が停止される。一方、発電機Gでは発電されるので、所定の電力供給先に電力が供給されつつ、該電力供給先での要求電力に対する余剰電力がヒータ65に供給される。これにより、ヒータ65が発熱し、高温蓄熱槽54に貯留される蓄熱材HSをヒータ65によって加熱して蓄熱材HSが温度上昇される。
【0077】
また、高温蓄熱槽54からの蓄熱材HSの送出が停止されつつ、上述した加熱炉64での蓄熱材HSの加熱及び高温蓄熱槽54への供給は継続される。よって、蓄熱運転モードでは、低温蓄熱槽55にて蓄熱材HSの貯留量が減少し、かつ、高温蓄熱槽54では蓄熱材HSの貯留量が増加する。これにより、蓄熱システム10としての蓄熱エネルギーが増加することとなる。
【0078】
このように、第2の実施の形態では、放熱運転モードにて加熱装置を構成する加熱炉64によって蓄熱材HSを加熱でき、蓄熱運転モードにて加熱装置を構成する加熱炉64及びヒータ65の両方で蓄熱材HSを加熱することができる。
【0079】
図7は、発電に必要なエネルギーの時間変化を示すグラフである。
図7にて、横軸は時刻(hr)、縦軸は発電機Gの発電に必要なエネルギー(%)とする。
図7のグラフでは、夜間に比べて昼間の方が発電に必要なエネルギーが大きくなり、正午前がピークになる場合を想定条件とする。
【0080】
また、
図7のグラフに示すように、24時間のエネルギーの平均値を破線で示すように100%とし、夜間に一定となるエネルギーの値が平均値(100%)に対して60%である場合を想定条件とする。
【0081】
かかる想定条件にて、夜間のエネルギーの値(60%)とボイラ11の負荷とが同一になるように設定される(
図7の網点領域参照)。また、24時間のエネルギーの平均値(100%)から夜間のエネルギーの値(60%)を差し引いた値(40%)と、加熱炉64の負荷とが同一になるように設定される(
図7の網点領域と破線との間の領域参照)。
【0082】
上記の条件において、夜間のエネルギーが一定となる時間では、ボイラ11の負荷だけで発電に必要なエネルギーを満たすことができる。よって、蓄熱運転モードが実施され、加熱炉64の負荷により発生したエネルギーは蓄熱材HSに蓄熱される(
図7のハッチング領域参照)。
【0083】
また、上記の条件において、夜間のエネルギーが一定となる時間以外にあっては、必要なエネルギーの値が60%~約150%の範囲内で増減する。かかる範囲では、放熱運転モードが実施され、加熱炉64の負荷により発生したエネルギーが蓄熱材ボイラ63における復水との熱交換によって蓄熱材HSから放熱されて供給される。そして、必要なエネルギーの増減量に応じて、蓄熱材ボイラ63に供給する蓄熱材HSの流量が蓄熱材供給ポンプ58により調整され、蓄熱材HSから復水への放熱量が調整される。
【0084】
なお、必要なエネルギーの値が60%~100%の範囲では、蓄放熱系51にて、蓄熱材HSに対し放熱するエネルギーより蓄熱するエネルギーの方が大きくなる。必要なエネルギーの値が100%を超えると、蓄放熱系51にて、蓄熱材HSに対し蓄熱するエネルギーより放熱するエネルギーの方が大きくなる。
【0085】
上記第2の実施の形態では、蓄放熱系51の蓄熱材HSを加熱する熱源を加熱炉64及びヒータ65としている。これにより、ボイラ11にて生成された蒸気を用いることなく、蓄熱材HSを蓄熱するエネルギーを付与可能となり、該蒸気が高温で流出することを回避することができる。よって、第2の実施の形態においても、エネルギー回収率を高めてエネルギー効率を向上することができる。
【0086】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0087】
例えば、上記第2の実施の形態の蓄放熱系51にて、ヒータ65により蓄熱材HSを加熱可能としたが、ヒータ65を設けずに加熱炉64だけで蓄熱材HSを加熱する構成としてもよい。
【0088】
また、
図7のグラフにおけるエネルギー変化は一例を示すに過ぎないものであり、昼夜の出力を逆にしたり、増減するタイミングを変えたりしても上述と同様にして対応可能である。
【0089】
また、ボイラ11は、上記各実施の形態と同様に蒸気を生成して供給可能であれば、他の蒸気生成器としてもよい。
【0090】
また、蓄熱材HSを加熱するヒータは、高温蓄熱槽24、54に設けることに加え、保温用等として低温蓄熱槽25、55や上述の各配管に設けることを妨げるものでなく、これらが発電機Gからの電力によって発熱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 :蓄熱システム
11 :ボイラ(蒸気生成器)
12 :蒸気タービン
13 :復水器
21 :蓄放熱系
23 :熱交換器(補助蒸気生成器)
24 :高温蓄熱槽
25 :低温蓄熱槽
35 :ヒータ(加熱装置)
51 :蓄放熱系
54 :高温蓄熱槽
55 :低温蓄熱槽
58 :蓄熱材供給ポンプ
63 :蓄熱材ボイラ(補助蒸気生成器)
64 :加熱炉(加熱装置)
65 :ヒータ(加熱装置)
G :発電機
HS :蓄熱材