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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113783
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】サンプリングキット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018967
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紗世理
(72)【発明者】
【氏名】岡部 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 岳聖
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029DC00
4B029GB02
4B029HA05
4B029HA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】必要量の生体試料を簡便に導出することができるサンプリングキットを提供する。
【解決手段】生体試料を収容可能な収容室38を含み、且つ可撓性を有する収容部32と、前記収容室に前記生体試料を導入するための導入流路34と、前記収容室に収容された前記生体試料を導出するための導出流路36と、を備えたサンプリングキットであって、前記収容部は、複数の部分室42と前記複数の部分室に連通する連通室44とに前記収容室を区画する線状の隔壁40を有し、前記複数の部分室は、前記隔壁の延在方向に沿った第1方向Xに交差する第2方向Yに配列されており、前記連通室は、前記複数の部分室から成る部分室列50に対して前記第1方向に位置すると共に前記導出流路に連通し、前記収容部の一部をクランプすることにより前記部分室と前記連通室との連通を遮断するクランプ部材20が装着可能である、サンプリングキットを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を収容可能な収容室を含み、且つ可撓性を有する収容部と、
前記収容室に前記生体試料を導入するための導入流路と、
前記収容室に収容された前記生体試料を導出するための導出流路と、
を備えたサンプリングキットであって、
前記収容部は、複数の部分室と前記複数の部分室に連通する連通室とに前記収容室を区画する線状の隔壁を有し、
前記複数の部分室は、前記隔壁の延在方向に沿った第1方向に交差する第2方向に配列されており、
前記連通室は、前記複数の部分室から成る部分室列に対して前記第1方向に位置すると共に前記導出流路に連通し、
前記収容部の一部をクランプすることにより前記部分室と前記連通室との連通を遮断するクランプ部材が装着可能である、サンプリングキット。
【請求項2】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記クランプ部材は、前記収容部に対して前記第2方向にスライド可能である、サンプリングキット。
【請求項3】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記隔壁は、前記第2方向に間隔を空けて複数設けられている、サンプリングキット。
【請求項4】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記収容部には、前記部分室と前記連通室との境界部に前記クランプ部材を案内するガイド部が設けられている、サンプリングキット。
【請求項5】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記部分室列の一端に位置する前記部分室である第1部分室の容量と前記連通室の容量とを合計した合計容量は、前記第1部分室に対して前記第2方向に位置する第2部分室の容量と同等又は近似している、サンプリングキット。
【請求項6】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記収容部には、前記収容室内の空気を排出するエアベントが設けられている、サンプリングキット。
【請求項7】
請求項6に記載のサンプリングキットであって、
前記導入流路は、前記連通室を介して前記部分室列に前記生体試料を導入し、
前記収容部は、前記部分室列に対して前記第1方向の反対の第3方向に位置すると共に前記複数の部分室に連通する連通路を有し、
前記エアベントは、前記連通路を介して前記複数の部分室に繋がっている、サンプリングキット。
【請求項8】
請求項7に記載のサンプリングキットであって、
前記収容部の他の一部をクランプすることにより前記部分室と前記連通路との連通を遮断する他のクランプ部材が装着可能である、サンプリングキット。
【請求項9】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記導入流路は、前記導出流路に繋がっている、サンプリングキット。
【請求項10】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記収容部は、軟質素材で構成された第1シート及び第2シートが厚さ方向に重ねられた状態で互いに接合されることにより形成され、
前記第1シートと前記第2シートとの間には、前記収容室が形成されている、サンプリングキット。
【請求項11】
請求項1に記載のサンプリングキットであって、
前記第2方向における前記隔壁の寸法は、前記第2方向における前記部分室の寸法よりも大きい、サンプリングキット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、
前記クランプ部材を備える、サンプリングキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングキットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、細胞(生体試料)を収容可能な収容室を備えた細胞保存容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/004304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
必要量の生体試料を簡便に導出することができるサンプリングキットが待望されている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、生体試料を収容可能な収容室を含み、且つ可撓性を有する収容部と、前記収容室に前記生体試料を導入するための導入流路と、前記収容室に収容された前記生体試料を導出するための導出流路と、を備えたサンプリングキットであって、前記収容部は、複数の部分室と前記複数の部分室に連通する連通室とに前記収容室を区画する線状の隔壁を有し、前記複数の部分室は、前記隔壁の延在方向に沿った第1方向に交差する第2方向に配列されており、前記連通室は、前記複数の部分室から成る部分室列に対して前記第1方向に位置すると共に前記導出流路に連通し、前記収容部の一部をクランプすることにより前記部分室と前記連通室との連通を遮断するクランプ部材が装着可能である、サンプリングキットである。
【0007】
このような構成によれば、部分室列の一部の部分室と連通室との連通をクランプ部材によって遮断した状態で、部分室列の他の部分室を連通室に開放することができる。これにより、一部の部分室に生体試料を残しつつ他の部分室に収容された生体試料を導出流路に導出することができる。その後、クランプ部材を操作して一部の部分室を連通室に開放することにより、一部の部分室に収容された生体試料を導出流路に導出することができる。よって、必要量の生体試料を簡便に導出することができる。
【0008】
(2)上記項目(1)に記載のサンプリングキットであって、前記クランプ部材は、前記収容部に対して前記第2方向にスライド可能であってもよい。
【0009】
このような構成によれば、クランプ部材の操作が簡単になる。
【0010】
(3)上記項目(1)又は(2)に記載のサンプリングキットであって、前記隔壁は、前記第2方向に間隔を空けて複数設けられてもよい。
【0011】
このような構成によれば、部分室を3つ以上設けることができる。
【0012】
(4)上記項目(1)~(3)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記収容部には、前記部分室と前記連通室との境界部に前記クランプ部材を案内するガイド部が設けられてもよい。
【0013】
このような構成によれば、部分室と連通室との境界部にクランプ部材を精度よく装着することができる。
【0014】
(5)上記項目(1)~(4)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記部分室列の一端に位置する前記部分室である第1部分室の容量と前記連通室の容量とを合計した合計容量は、前記第1部分室に対して前記第2方向に位置する第2部分室の容量と同等又は近似してもよい。
【0015】
このような構成によれば、クランプ部材によって第1部分室のみを連通室に開放することにより、第2部分室と同等又は近似した量の生体試料を導出することができる。
【0016】
(6)上記項目(1)~(5)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記収容部には、前記収容室内の空気を排出するエアベントが設けられてもよい。
【0017】
このような構成によれば、導入流路から収容室に生体試料を効率よく導入することができる。
【0018】
(7)上記項目(6)に記載のサンプリングキットであって、前記導入流路は、前記連通室を介して前記部分室列に前記生体試料を導入し、前記収容部は、前記部分室列に対して前記第1方向の反対の第3方向に位置すると共に前記複数の部分室に連通する連通路を有し、前記エアベントは、前記連通路を介して前記複数の部分室に繋がってもよい。
【0019】
このような構成によれば、導入流路から収容室に生体試料を一層効率よく導入することができる。
【0020】
(8)上記項目(7)に記載のサンプリングキットであって、前記収容部の他の一部をクランプすることにより前記部分室と前記連通路との連通を遮断する他のクランプ部材が装着可能であってもよい。
【0021】
(9)上記項目(1)~(8)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記導入流路は、前記導出流路に繋がってもよい。
【0022】
このような構成によれば、導入流路から収容室に生体試料を導入する際に導出流路の一部を生体試料で置換することができる。これにより、導出流路内に残存する空気の量を少なくすることができる。
【0023】
(10)上記項目(1)~(9)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記収容部は、軟質素材で構成された第1シート及び第2シートが厚さ方向に重ねられた状態で互いに接合されることにより形成され、前記第1シートと前記第2シートとの間には、前記収容室が形成されてもよい。
【0024】
このような構成によれば、収容部を簡単な構成にすることができる。
【0025】
(11)上記項目(1)~(10)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記第2方向における前記隔壁の寸法は、前記第2方向における前記部分室の寸法よりも大きくてもよい。
【0026】
このような構成によれば、開放すべき部分室を形成する壁部に第1クランプ部材がはみ出ることを抑制できるため、部分室に収容された生体試料を効率よく導出流路に導出することができる。
【0027】
(12)上記項目(1)~(11)のいずれか1項に記載のサンプリングキットであって、前記クランプ部材を備えてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、必要量の生体試料を簡便に導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るサンプリングキットの概略平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、サンプリングキットの使用説明図である。
図4図4は、サンプリングキットの使用説明図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、サンプリングキットの使用説明図である。
図7図7は、サンプリングキットの使用説明図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図9は、サンプリングキットの使用説明図である。
図10図10は、変形例に係るキット本体の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態に係るサンプリングキット10について図面を用いて以下に説明する。図1に示すように、サンプリングキット10は、液体状の生体試料200(図3参照)を採取し、必要量ずつ複数の分注容器100(図6参照)に分注するために使用される採取キットである。分注容器100に収容された生体試料200は、培養、検査又は研究等に使用される。生体試料200は、例えば、細胞懸濁液である。なお、生体試料200は、血液製剤であってもよい。血液製剤としては、例えば、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤及び全血製剤が挙げられる。
【0031】
図1に示すように、サンプリングキット10は、可撓性を有するキット本体12と、注入ポート部材14と、エアベント16と、アダプタ18と、第1クランプ部材20(クランプ部材)と、第2クランプ部材22(他のクランプ部材)とを備える。キット本体12は、平面視で四角形状に形成されている。
【0032】
図2に示すように、キット本体12は、軟質素材で構成された第1シート24及び第2シート26が厚さ方向に重ねられた状態で互いに接合されることにより形成されている。第1シート24及び第2シート26を構成する軟質素材としては、例えば、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。塩化ビニルの可塑剤としては、例えば、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、フタル酸ビス-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0033】
図1及び図2に示すように、キット本体12は、シール部28と非シール部30とを有する。シール部28は、第1シート24と第2シート26とが互いに接合された部分である。第1シート24と第2シート26とは、例えば、高周波融着又は熱融着等の融着によって互いに接合されている。なお、第1シート24と第2シート26との接合方法は、融着に限定されず、接着剤等であってもよい。非シール部30は、第1シート24と第2シート26とが互いに接合されていない部分である。非シール部30は、生体試料200が流通可能な外形寸法を有する。
【0034】
図1に示すように、キット本体12の非シール部30は、収容部32、導入流路34及び導出流路36を有する。収容部32は、生体試料200を収容可能な収容室38を含む。導入流路34は、生体試料200を収容室38に導入するための流路である。導出流路36は、収容室38に収容された生体試料200を導出するための流路である。
【0035】
収容部32は、複数の線状の隔壁40を有する。本実施形態では、収容部32は、3つの隔壁40を有する。隔壁40は、複数の部分室42と連通室44と連通路46とに収容室38を区画する。隔壁40は、直線状に延在している。隔壁40は、収容室38を囲む収容部32の内縁部48から離間している。隔壁40は、第1シート24と第2シート26とが互いに接合されることにより形成される(図2参照)。
【0036】
複数の部分室42は、隔壁40の延在方向(矢印X方向)に沿った第1方向に交差する第2方向に配列されている。なお、図1において、第1方向は矢印X1方向であり、第2方向は矢印Y方向である。本実施形態において、第1方向と第2方向とは互いに直交する。
【0037】
部分室42と隔壁40とは、第2方向に交互に並んでいる。収容部32は、複数の部分室42からなる部分室列50を有する。以下の説明では、複数の部分室42のうち、部分室列50の一端(矢印Y1方向の端)に位置する部分室42を「第1部分室52」と称呼し、それ以外の部分室42を「第2部分室54」と称呼することがある。第2部分室54は、第1部分室52に対して部分室列50の他端側(矢印Y2方向)に位置する。本実施形態では、収容部32は、1つの第1部分室52と、3つの第2部分室54とを有する。複数の第2部分室54の外形寸法は、互いに同じである。なお、隔壁40及び第2部分室54の数は、適宜設定可能である。
【0038】
第2方向(矢印Y方向)における第1部分室52の寸法L1は、第2方向における第2部分室54の寸法L2よりも小さい。第1部分室52の容量は、第2部分室54の容量よりも小さい。複数の第2部分室54の容量は、互いに同じである。第2方向における隔壁40の寸法L3は、寸法L1及び寸法L2の各々よりも小さい。
【0039】
連通室44は、部分室列50に対して第1方向(矢印X1方向)に位置する。連通室44は、複数の部分室42に連通している。連通室44の容量は、第2部分室54の容量よりも小さい。第1部分室52の容量と連通室44の容量とを合計した合計容量は、第2部分室54の容量と同等又は近似している。
【0040】
連通路46は、部分室列50に対して第1方向とは反対の第3方向(矢印X2方向)に位置する。連通路46は、複数の部分室42に連通している。連通路46の容量は、連通室44の容量よりも小さい。また、連通路46の容量は、第1部分室52の容量よりも小さい。
【0041】
導入流路34は、生体試料200を連通室44に導くための流路である。導入流路34の一端部は、キット本体12の第3方向(矢印X2方向)の端部に位置する。導入流路34の他端部は、導出流路36に繋がる。導入流路34は、キット本体12の第3方向の端部から第1方向(矢印X1方向)に延出し、キット本体12の第1方向の端部において矢印Y2方向に屈曲している。導入流路34は、第1部分室52に対して第2部分室54とは反対側(矢印Y1方向)に位置する。
【0042】
導出流路36は、連通室44からキット本体12の第1方向(矢印X1方向)の端まで直線状に延びている。導出流路36の途中部位には、導入流路34が繋がっている。導出流路36の延出端部は、アダプタ18に繋がっている。
【0043】
注入ポート部材14は、導入流路34の一端部に繋がっている。注入ポート部材14は、キット本体12の第3方向(矢印X2方向)の端部に接合されている。注入ポート部材14は、硬質樹脂で構成されている。注入ポート部材14を構成する硬質樹脂としては、例えば、ポリプロピレン及びポリカーボネート等が挙げられる。
【0044】
注入ポート部材14は、導入流路34に連通するポートを封止するゴム弁(弁体)56を有する。注入ポート部材14には、例えば、図示しない注入用シリンジが着脱可能である。なお、注入用シリンジには、液体状の生体試料200が収容されている。注入用シリンジが注入ポート部材14に装着されると、ゴム弁56が変形することによりポートが開放される。注入用シリンジが注入ポート部材14から取り外されると、ゴム弁56が元の形状に復帰することによりポートが閉塞される。
【0045】
エアベント16は、収容室38に生体試料200を導入する際に収容室38内の空気を排出する。エアベント16は、連通路46を介して複数の部分室42に繋がっている。エアベント16は、収容室38から外部への空気の流通を許可する一方で生体試料200の流通を阻止する図示しないフィルターを備える。
【0046】
アダプタ18は、キット本体12の第1方向(矢印X1方向)の端部に取り付けられている。換言すれば、アダプタ18は、キット本体12のうち注入ポート部材14とは反対側の端部に取り付けられている。これにより、導入用シリンジを注入ポート部材14に接続する際に導入用シリンジがアダプタ18に干渉することを避けることができる。
【0047】
図6に示すように、アダプタ18には、分注容器100が着脱可能である。分注容器100は、生体試料200を収容可能なボトルである。分注容器100の内部は、生体試料200をサンプリングキット10から吸引できるように陰圧に設定されている。なお、分注容器100の内部は、常圧であってもよい。この場合、収容部32を押圧することにより、サンプリングキット10から分注容器100に生体試料200を移送することが可能である。また、分注容器100は、生体試料200を吸引可能なシリンジであってもよい。
【0048】
図1に示すように、アダプタ18は、収容筒58と、移送管60と、管状の針部62と、ゴムカバー64とを有する。収容筒58は、分注容器100の接続部102を収容可能である(図6参照)。収容筒58には、分注容器100を出し入れするための開口部を封止する封止フィルム66が開封可能に接着されている。なお、収容筒58には、封止フィルム66に代えて、開閉可能な蓋が設けられてもよい。
【0049】
移送管60の一端部は、導出流路36に繋がっている。移送管60の他端部には、針部62が接続されている。針部62は、収容筒58の内側に配置されている。針部62は、分注容器100の接続部102に装着されたゴム栓104を穿刺可能な鋭利な針先を有する(図6参照)。ゴムカバー64は、針部62を覆っている。ゴムカバー64は、針部62の先端開口を封止する。
【0050】
図1及び図5に示すように、第1クランプ部材20は、直線状に延在している。第1クランプ部材20は、例えば、硬質樹脂によって一体成形されている。図5に示すように、第1クランプ部材20は、一対の押圧部68と、ベース部70とを有する。一対の押圧部68は、互いに平行に配置されている。ベース部70は、一対の押圧部68の基端部同士を連結する。一対の押圧部68の間には、キット本体12が挿入可能なスリット72が形成されている。一対の押圧部68の間の寸法L4は、キット本体12のシール部28の厚さ寸法L5と同一又は近似している。以下の説明では、第1クランプ部材20において、第1クランプ部材20のうちベース部70とは反対方向の端部を「先端部74」と称呼することがある。
【0051】
図1に示すように、第1クランプ部材20は、収容部32の一部をクランプすることにより部分室42と連通室44との連通を遮断する。第1クランプ部材20は、キット本体12に対して着脱可能である。第1クランプ部材20は、第1クランプ部材20の長手方向が第2方向(矢印Y方向)に沿うように部分室42と連通室44との境界部に装着される。第1クランプ部材20は、収容部32に装着された状態のまま第2方向(矢印Y方向)にスライド可能である。
【0052】
第2クランプ部材22は、第1クランプ部材20と同様に構成されている。そのため、第2クランプ部材22の詳細な構成の説明については省略する。第2クランプ部材22は、収容部32の他の一部をクランプすることにより部分室42と連通路46との連通を遮断する。第2クランプ部材22は、キット本体12に対して着脱可能である。第2クランプ部材22は、第2クランプ部材22の長手方向が第2方向(矢印Y方向)に沿うように部分室42と連通路46との境界部に装着される。
【0053】
キット本体12には、第1ガイド部76と、第2ガイド部78とが設けられている。第1ガイド部76は、第1クランプ部材20を部分室42と連通室44との境界部に案内する。第1ガイド部76は、例えば、キット本体12の外周部に形成された溝である。第1ガイド部76は、部分室42と連通室44との境界部の矢印Y2方向に位置している。
【0054】
第2ガイド部78は、第2クランプ部材22を部分室42と連通路46との境界部に案内する。第2ガイド部78は、例えば、キット本体12の外周部に形成された溝である。第2ガイド部78は、部分室42と連通路46との境界部の矢印Y2方向に位置している。
【0055】
第1ガイド部76及び第2ガイド部78は、溝に限定されない。第1ガイド部76及び第2ガイド部78は、凸部であってもよいし、キット本体12の外面に印刷された目印であってもよい。第1ガイド部76及び第2ガイド部78の大きさ、位置及び形状は、適宜設定することができる。
【0056】
次に、本実施形態に係るサンプリングキット10の使用方法について説明する。本実施形態では、生体試料200を4つの分注容器100に同量ずつ分注する例について説明する。なお、複数の分注容器100には、互いに異なる量の生体試料200を分注してもよい。
【0057】
以下の説明では、第1部分室52に最も近い位置にある隔壁40を「隔壁40a」と称呼し、第1部分室52から2番目に近い位置にある隔壁40を「隔壁40b」と称呼し、第1部分室52から最も遠い位置にある隔壁40を「隔壁40c」と称呼することがある。また、第1部分室52に最も近い位置にある第2部分室54を「第2部分室54a」と称呼し、第1部分室52から2番目に近い位置にある第2部分室54を「第2部分室54b」と称呼し、第1部分室52から最も遠い位置にある第2部分室54を「第2部分室54c」と称呼することがある。さらに、4つの分注容器100を第1分注容器100a、第2分注容器100b、第3分注容器100c及び第4分注容器100dのように区別して説明する。
【0058】
サンプリングキット10を使用する場合、注入ポート部材14に図示しない注入用シリンジを接続する。そうすると、注入ポート部材14のポートが開放される。その後、注入用シリンジから導入流路34に液体状の生体試料200を注入する。
【0059】
そうすると、図3に示すように、導入流路34に導入された生体試料200は、導出流路36を介して収容室38に導かれる。導入流路34と導出流路36とに存在する空気は、生体試料200によって収容室38に押し出される。収容室38に存在する空気は、エアベント16を介して外部に排出される。このとき、エアベント16が連通路46を介して複数の部分室42に繋がっているため、部分室42に空気が残ることはない。これにより、生体試料200は、導入流路34から収容室38に円滑に流入する。収容室38への生体試料200の注入が完了すると、注入用シリンジを注入ポート部材14から取り外す。これにより、注入ポート部材14のポートがゴム弁56によって封止される。
【0060】
続いて、図4及び図5に示すように、スリット72に収容部32が挿入されるように、第1クランプ部材20及び第2クランプ部材22をキット本体12に装着する。図5に示すように、第1クランプ部材20をキット本体12に装着すると、第1シート24における収容室38を形成する壁部(第1壁部80)と第2シート26における収容室38を形成する壁部(第2壁部82)とが一対の押圧部68に押されて内方に弾性変形する。このとき、第1壁部80の内面と第2壁部82の内面とが互いに密着するため、収容室38の一部が第1クランプ部材20によって閉塞される。第2クランプ部材22も第1クランプ部材20と同様に収容室38の他の一部を閉塞する。
【0061】
具体的には、図4に示すように、第1クランプ部材20が全ての第2部分室54と連通室44との境界部に位置するように第1クランプ部材20をキット本体12に装着する。第1クランプ部材20がキット本体12に装着された状態で、第1クランプ部材20の先端部74は隔壁40aに位置する。換言すれば、この状態で、第1クランプ部材20の先端部74は、第1部分室52と導入流路34との間の壁部から離間している。
【0062】
これにより、全ての第2部分室54と連通室44との連通が第1クランプ部材20によって遮断される。このとき、第1クランプ部材20を第1ガイド部76の位置に合わせることにより、第1クランプ部材20を第2部分室54と連通室44との境界部に簡単に位置決めすることができる。
【0063】
また、第2クランプ部材22が全ての部分室42と連通路46との境界部に位置するように第2クランプ部材22をキット本体12に装着する。これにより、全ての部分室42と連通路46との連通が第2クランプ部材22によって遮断される。すなわち、複数の部分室42は、連通路46を介して互いに連通しない。このとき、第2クランプ部材22を第2ガイド部78の位置に合わせることにより、第2クランプ部材22を部分室42と連通路46との境界部に簡単に位置決めすることができる。
【0064】
その後、アダプタ18の封止フィルム66を開封する。続いて、図6に示すように、第1分注容器100aのゴム栓104に針部62を貫通させる。そうすると、第1分注容器100aの内部と導出流路36とが互いに連通する。そのため、連通室44及び第1部分室52に収容されていた生体試料200が第1分注容器100aの内部に移送される。
【0065】
このとき、導入流路34及び導出流路36に存在していた生体試料200も第1分注容器100aに移送されるが、導入流路34及び導出流路36の容量は、連通室44の容量と第1部分室52の容量との合計容量に比べて極めて小さい。そのため、導入流路34及び導出流路36に存在していた生体試料200による増加量は、誤差程度である。なお、図面においては、便宜上、導入流路34及び導出流路36は比較的大きく図示している。
【0066】
第1分注容器100aへの生体試料200の分注が完了した後、第1分注容器100aを針部62から取り外す。これにより、弾性変形していたゴムカバー64が元の形状に復帰するため、針部62の先端開口がゴムカバー64によって封止される。
【0067】
その後、図7及び図8に示すように、第1クランプ部材20の先端部74が隔壁40aから離れて隔壁40bに位置するように、キット本体12に対して第1クランプ部材20を矢印Y2方向にスライドさせる。これにより、第2部分室54aが連通室44に開放する。このとき、第2部分室54b、54cと連通室44との連通は第1クランプ部材20によって遮断されたままである。また、第2分注容器100bのゴム栓104に針部62を貫通させる。これにより、第2部分室54aに収容されていた生体試料200が第2分注容器100bの内部に移送される。第2分注容器100bへの生体試料200の分注が完了した後、第2分注容器100bを針部62から取り外す。
【0068】
その後、図9に示すように、第1クランプ部材20の先端部74が隔壁40bから離れて隔壁40cに位置するように、キット本体12に対して第1クランプ部材20を矢印Y2方向にスライドさせる。これにより、第2部分室54bが連通室44に開放する。このとき、第2部分室54cと連通室44との連通は第1クランプ部材20によって遮断されたままである。また、第3分注容器100cのゴム栓104に針部62を貫通させる。これにより、第2部分室54bに収容されていた生体試料200が第3分注容器100cの内部に移送される。第3分注容器100cへの生体試料200の分注が完了した後、第3分注容器100cを針部62から取り外す。
【0069】
その後、第1クランプ部材20をキット本体12から取り外す。これにより、第2部分室54cが連通室44に開放する。これにより、第2部分室54cが連通室44に開放する。また、第4分注容器100dのゴム栓104に針部62を貫通させる。これにより、第2部分室54cに収容されていた生体試料200が第4分注容器100dの内部に移送される。第4分注容器100dへの生体試料200の分注が完了した後、第4分注容器100dを針部62から取り外す。
【0070】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0071】
本実施形態によれば、第2部分室54と連通室44との連通を第1クランプ部材20によって遮断した状態で、第1部分室52を連通室44に開放することができる。これにより、第2部分室54に生体試料200を残しつつ第1部分室52に収容された生体試料200を導出流路36に導出することができる。その後、第1クランプ部材20を操作して第2部分室54を連通室44に開放することにより、第2部分室54に収容された生体試料200を導出流路36に導出することができる。よって、必要量の生体試料200を簡便に導出することができる。
【0072】
第1クランプ部材20は、収容部32に対して第2方向にスライド可能である。
【0073】
このような構成によれば、第1クランプ部材20の操作が簡単になる。
【0074】
隔壁40は、第2方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0075】
このような構成によれば、部分室42を3つ以上設けることができる。
【0076】
収容部32には、複数の部分室42と連通室44との境界部に第1クランプ部材20を案内する第1ガイド部76が設けられている。
【0077】
このような構成によれば、複数の部分室42と連通室44との境界部に第1クランプ部材20を精度よく装着することができる。
【0078】
第1部分室52の容量と連通室44の容量とを合計した合計容量は、第2部分室54の容量と同等又は近似している。
【0079】
このような構成によれば、第1クランプ部材20によって第1部分室52のみを連通室44に開放することにより、第2部分室54と同等又は近似した量の生体試料200を導出することができる。
【0080】
収容部32には、収容室38内の空気を排出するエアベント16が設けられている。
【0081】
このような構成によれば、導入流路34から収容室38に生体試料200を効率よく導入することができる。
【0082】
導入流路34は、連通室44を介して部分室列50に生体試料200を導入する。収容部32は、部分室列50に対して第1方向の反対の第3方向に位置すると共に複数の部分室42に連通する連通路46を有する。エアベント16は、連通路46を介して複数の部分室42に繋がっている。
【0083】
このような構成によれば、導入流路34から収容室38に生体試料200を一層効率よく導入することができる。
【0084】
サンプリングキット10には、収容部32の他の一部をクランプすることにより部分室42と連通路46との連通を遮断する第2クランプ部材22が装着可能である。
【0085】
このような構成によれば、第1部分室52に収容された生体試料200を分注容器100に移送する際に、第2部分室54に収容された生体試料200が連通路46を介して第1部分室52に流入することを抑制できる。
【0086】
導入流路34は、導出流路36に繋がっている。
【0087】
このような構成によれば、導入流路34から収容室38に生体試料200を導入する際に導出流路36の一部を生体試料200で置換することができる。これにより、導出流路36内に残存する空気の量を少なくすることができる。
【0088】
収容部32は、軟質素材で構成された第1シート24及び第2シート26が厚さ方向に重ねられた状態で互いに接合されることにより形成されている。第1シート24と第2シート26との間には、複数の部分室42と連通室44とが形成されている。
【0089】
このような構成によれば、収容部32を簡単な構成にすることができる。
【0090】
(変形例)
次に、変形例に係るキット本体12aについて説明する。なお、本変形例において、上述したキット本体12と同様の構成については同様の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0091】
図10に示すように、キット本体12aでは、第2方向(矢印Y方向)における隔壁41の寸法L6が第2方向における第1部分室52の寸法L7と第2方向にける第2部分室54の寸法L8との各々よりも大きい。
【0092】
このような構成によれば、開放すべき部分室42を形成する壁部に第1クランプ部材20がはみ出ることを抑制できるため、第1クランプ部材20による部分室42と連通室44との連通の遮断及びその開放の操作を効率よく行うことができる。
【0093】
本発明において、収容部は、1つの隔壁と、2つの部分室を有してもよい。この場合、クランプ部材(第1クランプ部材20)は、キット本体に対して着脱可能であればスライド可能でなくてもよい。サンプリングキットにおいて、導入流路及び導出流路の少なくともいずれかは、チューブ状に構成されてもよい。
【0094】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0095】
10…サンプリングキット 16…エアベント
20…第1クランプ部材(クランプ部材)
22…第2クランプ部材(他のクランプ部材)
24…第1シート 26…第2シート
32…収容部 34…導入流路
36…導出流路 38…収容室
40、41…隔壁 42…部分室
44…連通室 46…連通路
50…部分室列 52…第1部分室
54…第2部分室 200…生体試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10