(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113788
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】バルブユニット、液体吐出装置、及びバルブユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240816BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 501
F16K31/126 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018977
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】熊王 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆吉
【テーマコード(参考)】
2C056
3H056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA10
2C056JA13
2C056JB04
2C056KB01
2C056KB13
2C056KB37
2C056KC02
3H056AA01
3H056BB02
3H056BB47
3H056CA07
3H056CB03
3H056CD01
3H056DD05
3H056DD08
3H056GG04
(57)【要約】
【課題】液体貯留室内の液体の圧力を適正に調整することが可能なバルブユニット、液体吐出装置、及びバルブユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】バルブユニット60は、インクの圧力変化に応じて容積が変化する圧力室82を備え、圧力室82は、インクが貯留される凹部が形成された液体貯留部材61と、凹部の開口を覆うように配置される第2膜部材63と、によって形成され、第2膜部材63は、開口を覆うように、液体貯留部材61に接続される第1フィルム91と、第1フィルム91の開口に対向する面の反対面に接着され、インクに含まれる溶剤成分の透過を抑制する第2フィルム92と、第2フィルム92の第1フィルム91に対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルム93と、を備え、第3フィルム93は、第2フィルム92に対して空間Sを隔てて配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を備えるバルブユニットであって、
前記液体貯留室は、
前記液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、
前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、
前記膜部材は、
前記開口を覆うように、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、
前記第1フィルムの前記開口に対向する面の反対面に接着され、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムと、
前記第2フィルムの前記第1フィルムに対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムと、を備え、
前記第3フィルムは、前記第2フィルムに対して空間を隔てて配置される、バルブユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブユニットであって、
前記第3フィルムは、凸状に形成され、前記第2フィルムに対向する方向と反対の方向に凸となるように配置される、バルブユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバルブユニットであって、
前記第2フィルムと前記第3フィルムとを隔てる前記空間内に吸湿材が配置される、バルブユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のバルブユニットであって、
前記吸湿材は、粒状であり、前記第3フィルムに接着されている、バルブユニット。
【請求項5】
請求項2に記載のバルブユニットであって、
前記第2フィルムと前記第3フィルムとを隔てる前記空間内に吸湿材が配置され、
前記第3フィルムは、前記空間を隔てて前記第2フィルムと略平行に配置される平坦部と、前記第2フィルムと前記平坦部とで挟まれた前記空間の周縁を覆う側壁部と、を含み、
前記吸湿材は、前記第3フィルムの前記側壁部に接着され、前記第3フィルムの前記平坦部には接着されていない、バルブユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のバルブユニットであって、
前記第3フィルムは、枠状部材を介して前記第2フィルムに接続される、バルブユニット。
【請求項7】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体が液体供給源から前記液体吐出ヘッドに向かって流れるように前記液体供給源と前記液体吐出ヘッドとを接続する供給流路と、を備える液体吐出装置であって、
前記供給流路は、前記液体供給源から前記液体が流入される流入部と、前記液体が前記液体吐出ヘッドに向かって流出される流出部と、前記液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室と、を有するバルブユニットを備え、
前記液体貯留室は、
前記液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、
前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、
前記膜部材は、
前記開口を覆うように、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、
前記第1フィルムの前記開口に対向する面の反対面に接着され、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムと、
前記第2フィルムの前記第1フィルムに対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムと、を備え、
前記第3フィルムは、前記第2フィルムに対して空間を隔てて配置される、液体吐出装置。
【請求項8】
液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を備えるバルブユニットの製造方法であって、
前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムとを接着することにより形成された積層フィルムを、前記第1フィルム側が前記凹部と対向するように配置して、前記液体貯留部材に接続する工程と、
周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムを、前記積層フィルムに対して空間を隔てて配置する工程と、を備える、バルブユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブユニット、液体吐出装置、及びバルブユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置において、液体を吐出するヘッドと液体の供給源との間に、液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を配置して、液体の圧力を調整する構成が知られている。液体貯留室は、液体が貯留される容器状の構造体の開口部を、可撓性を有する膜部材で覆うことによって構成される。このような膜部材としては、例えば、PP(ポリプロピレン)からなる内膜とPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる外膜とを積層した構成の部材が用いられる。ただし、このような構成の場合、周辺の空気中の水分が外膜を透過することにより、内膜と外膜との間に液胞が生じる場合があった。そして、液胞が次第に大きくなって、膜部材が破損してしまう恐れがあった。
【0003】
特許文献1では、PPフィルムとPETフィルムとを積層するとともに、その外側に防湿フィルムを積層した液体封止用膜部材が提案されている。この構成によれば、周辺の空気中に含まれる水分の浸入が防湿フィルムによって抑制されるため、液胞の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、膜部材の層構成を単純に増やしてしまうと、膜部材の可撓性が損なわれる。特に、水分の透過を抑制可能なフィルムは、剛性が高い傾向にあるため、液体の圧力を適切に調整することが困難になる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
バルブユニットは、液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を備えるバルブユニットであって、前記液体貯留室は、前記液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記膜部材は、前記開口を覆うように、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記第1フィルムの前記開口に対向する面の反対面に接着され、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムと、前記第2フィルムの前記第1フィルムに対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムと、を備え、前記第3フィルムは、前記第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。
【0007】
液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体が液体供給源から前記液体吐出ヘッドに向かって流れるように前記液体供給源と前記液体吐出ヘッドとを接続する供給流路と、を備える液体吐出装置であって、前記供給流路は、前記液体供給源から前記液体が流入される流入部と、前記液体が前記液体吐出ヘッドに向かって流出される流出部と、前記液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室と、を有するバルブユニットを備え、前記液体貯留室は、前記液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記膜部材は、前記開口を覆うように、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記第1フィルムの前記開口に対向する面の反対面に接着され、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムと、前記第2フィルムの前記第1フィルムに対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムと、を備え、前記第3フィルムは、前記第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。
【0008】
バルブユニットの製造方法は、液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を備えるバルブユニットの製造方法であって、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムとを接着することにより形成された積層フィルムを、前記第1フィルム側が前記凹部と対向するように配置して、前記液体貯留部材に接続する工程と、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムを、前記積層フィルムに対して空間を隔てて配置する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】圧力調整機構の構成及び動作を説明するための断面図。
【
図5】圧力調整機構の構成及び動作を説明するための断面図。
【
図6】バルブユニットの圧力室の一部を模式的に示す断面図。
【
図8】第2膜部材を形成する工程を説明するためのフローチャート。
【
図9】変形例に係る第2膜部材の構成を示す斜視図。
【
図10】変形例に係るバルブユニットを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の液体吐出装置1について、図面を参照して説明する。本実施形態の液体吐出装置1は、例えば、記録対象である媒体に対して、液体の一例であるインクを吐出することにより、媒体に文字や写真等の画像を記録するインクジェット式のプリンターである。媒体は、紙に限定されず、布や織物等のテキスタイル、塩化ビニル樹脂等、種々の素材が対象になり得る。なお、本実施形態では、紙以外の媒体への印刷が想定されており、インクとしては、溶剤が含まれているインクが使用される。
【0011】
各図には、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸が示されている。典型的には、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸は、液体吐出装置1の設置面に平行であり、液体吐出装置1の幅方向に対応する。Y軸は、液体吐出装置1の設置面に平行であり、液体吐出装置1の奥行き方向に対応する。Z軸は、液体吐出装置1の設置面に垂直であり、液体吐出装置1の高さ方向に対応する。
【0012】
X軸に平行な+X方向は、液体吐出装置1の正面に向かって右に向かう方向であり、X軸に平行な-X方向は、+X方向の反対の方向である。Y軸に平行な+Y方向は、液体吐出装置1の背面から正面に向かう方向であり、Y軸に平行な-Y方向は、+Y方向の反対の方向である。Z軸に平行な+Z方向は、下方に向かう方向であり、Z軸に平行な-Z方向は、+Z方向の反対の方向である。
【0013】
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す構成図である。
図1に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出ヘッド10と、インク供給部20と、搬送機構30と、移動機構40と、メンテナンス部50と、制御部100とを備える。
【0014】
液体吐出ヘッド10は、インクを吐出する複数のノズル列12が設けられるノズル面11を有する。ノズル列12は、複数のノズルNが±Y方向に並ぶことで形成される。液体吐出ヘッド10は、ノズル列12を構成する複数のノズルNから+Z方向にインクを吐出して、媒体である印刷用紙P上に画像を形成する。本実施形態では、複数のノズル列12は、ノズル列12a、ノズル列12b、ノズル列12c、及びノズル列12dを含む。
【0015】
吐出するインクは、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの合計4色のインクであり、それぞれのインクは、ノズル列12a、ノズル列12b、ノズル列12c、及びノズル列12dから吐出される。なお、インクは、上記4色に限定されず、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等、他の色のインクを吐出する構成であってもよい。液体吐出ヘッド10は、移動機構40が有する後述のキャリッジ42に搭載され、キャリッジ42の移動と共に主走査方向に往復移動する。本実施形態において、主走査方向は、±X方向である。
【0016】
インク供給部20は、液体吐出ヘッド10にインクを供給する。インク供給部20は、液体供給源21と、供給流路24と、を備える。本実施形態の液体供給源21は、インクを注入可能な注入部22と、注入部22から注入されたインクを収容する収容室23と、を備える注ぎ足しタイプのタンクであるが、交換可能なカートリッジタイプのタンクであってもよい。インク供給部20は、複数の液体供給源21を備える。本実施形態では、複数の液体供給源21は、ブラックインクを収容する液体供給源21a、シアンインクを収容する液体供給源21b、マゼンタインクを収容する液体供給源21c、及びイエローインクを収容する液体供給源21dを含む。
【0017】
供給流路24は、液体供給源21が収容するインクが液体吐出ヘッド10に向けて流れるように、液体供給源21と液体吐出ヘッド10とを接続する。本実施形態の供給流路24は、キャリッジ42上に配置されて液体吐出ヘッド10と接続されるバルブユニット60と、液体供給源21とバルブユニット60とを接続するチューブ25と、により構成される。なお、これ以降、供給流路24内において、液体供給源21に近い側を上流側とも呼び、液体吐出ヘッド10に近い側を下流側とも呼ぶ。
【0018】
バルブユニット60は、液体吐出ヘッド10に供給されるインクの圧力を、所定の負圧に調整する。このため、本実施形態では、液体供給源21の±Z方向の位置に関する制約が少なくなる。例えば、液体供給源21を、液体供給源21内のインクの液面が液体吐出ヘッド10のノズル面11より-Z方向となる位置に配置することも可能になる。供給流路24には、複数のバルブユニット60が設けられる。本実施形態では、複数のバルブユニット60は、液体供給源21aからのインクをノズル列12aに供給するバルブユニット60aと、液体供給源21bからのインクをノズル列12bに供給するバルブユニット60bと、液体供給源21cからのインクをノズル列12cに供給するバルブユニット60cと、液体供給源21dからのインクをノズル列12dに供給するバルブユニット60dとを含む。バルブユニット60の詳細については後述する。
【0019】
搬送機構30は、印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。副走査方向は、主走査方向である±X方向と直交する方向であり、本実施形態では、±Y方向である。搬送機構30は、3つの搬送ローラー32が装着された搬送ロッド34と、搬送ロッド34を回転駆動する搬送用モーター36とを備える。搬送用モーター36が搬送ロッド34を回転駆動することにより、複数の搬送ローラー32が回転して印刷用紙Pが副走査方向における+Y方向に搬送される。なお、搬送ローラー32の数は、3つに限定されず、任意の数であってもよい。また、搬送機構30を複数備える構成としてもよい。
【0020】
移動機構40は、上述のキャリッジ42に加えて、搬送ベルト44と、移動用モーター46と、プーリー47と、を備える。キャリッジ42は、液体吐出ヘッド10、及びバルブユニット60を搭載する。キャリッジ42は、搬送ベルト44に取り付けられている。搬送ベルト44は、移動用モーター46とプーリー47との間に架け渡されている。移動用モーター46が回転駆動することにより、搬送ベルト44は、主走査方向に往復移動する。これにより、搬送ベルト44に取り付けられているキャリッジ42も、主走査方向に往復移動する。
【0021】
メンテナンス部50は、液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行う。メンテナンス部50は、ワイパー51、ワイパー駆動部52、キャップ53、キャップ保持部54、キャップ駆動部55、廃液チューブ56、吸引ポンプ57、及び廃液収集部58を有する。
【0022】
ワイパー51は、液体吐出ヘッド10のノズル面11をワイピングする。ワイパー51は、ワイパー駆動部52の駆動により、ノズル面11に接触しない待機位置とノズル面11に接触可能なワイピング位置との間を±Z方向に移動する。ワイパー51がワイピング位置にある状態で、キャリッジ42の移動と共に、液体吐出ヘッド10がワイパー51の-Z方向側を主走査方向に移動することで、ノズル面11のワイピングが行われる。
【0023】
キャップ53は、液体吐出ヘッド10のノズルNからインクを排出させる。キャップ53は、液体吐出ヘッド10のノズル面11に接触することで、複数のノズルNが開口する吸引空間を形成する。キャップ53は、キャップ保持部54に保持される。キャップ保持部54は、キャップ駆動部55の駆動により、±Z方向に移動する。キャップ53は、キャップ保持部54が±Z方向に移動することで、ノズル面11に接触しない非キャッピング位置と、ノズル面11に接触する吸引可能位置との間を±Z方向に移動する。キャップ53は、廃液チューブ56を介して、廃液を収集する廃液収集部58と通じている。廃液チューブ56には、キャップ53が形成する吸引空間を吸引するための吸引ポンプ57が設けられる。
【0024】
キャップ53による液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行う場合、キャップ53が非キャッピング位置にある状態で、液体吐出ヘッド10は、キャリッジ42とともに移動して、ノズル列12a,12b,12c,12dがキャップ53と対向する位置に配置される。そして、キャップ53が吸引可能位置に移動することで、ノズル列12a,12b,12c,12dを構成する複数のノズルNが開口する吸引空間が形成される。吸引ポンプ57が、形成された吸引空間を吸引することで、ノズル列12a,12b,12c,12dを構成する複数のノズルNからインクが吸引空間に排出される。吸引空間に排出されるインクは、廃液チューブ56を介して、廃液収集部58に収集される。
【0025】
制御部100は、液体吐出装置1の全体の動作を制御する。例えば、制御部100は、キャリッジ42の主走査方向に沿った往復移動動作や、印刷用紙Pの副走査方向に沿った搬送動作、液体吐出ヘッド10のインクの吐出動作、メンテナンス部50による液体吐出ヘッド10のメンテナンス動作を制御する。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とにより構成されてもよい。
【0026】
次に、バルブユニット60について詳述する。
図2及び
図3は、バルブユニット60を示す斜視図である。
バルブユニット60は、外形が略直方体形状の液体貯留部材61と、液体貯留部材61の第1面61aを覆う第1膜部材62と、液体貯留部材61の第2面61bを覆う第2膜部材63とを含む。また、バルブユニット60は、液体吐出ヘッド10に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構80を、液体貯留部材61の内部に備える。
【0027】
液体貯留部材61の第1面61a及び第2面61bは、いずれもYZ平面に沿った面である。第1面61aは、-X方向に面し、第2面61bは、+X方向に面する。つまり、第2面61bは、第1面61aの反対側の面である。なお、
図2及び
図3に示す状態は、第1膜部材62及び第2膜部材63が配置される前の状態であり、第1膜部材62及び第2膜部材63を配置すべき位置が二点鎖線で示されている。第1膜部材62及び第2膜部材63は、可撓性を有する膜部材である。
【0028】
液体貯留部材61の+Y方向側の正面には、液体供給源21からインクが流入される流入部64が形成されている。また、液体貯留部材61の+Z方向側の下面には、液体吐出ヘッド10に向かってインクが流出される流出部65が形成されている。液体貯留部材61は、流入部64から流出部65に至る流路を構成するとともに、流路の途中に配置されるフィルター室66、供給室81(
図4参照)及び圧力室82を構成する。供給室81及び圧力室82は、圧力調整機構80を構成する。本実施形態において、液体貯留部材61は、溶剤を含むインクによる変質を受けにくいPP(ポリプロピレン)によって形成されている。
【0029】
液体貯留部材61の第1面61a及び第2面61bには、インクを貯留するための複数の凹部が形成されている。そして、流路の一部や、フィルター室66、供給室81及び圧力室82は、これらの凹部の開口を閉塞することによって形成される。具体的には、液体貯留部材61の第1面61aには、フィルター室66を構成する凹部と、供給室81を構成する凹部と、流入流路67を構成する凹部と、中継流路68を構成する凹部とが形成されている。供給室81は、凹部の開口が受け板83によって閉塞されることにより形成され、フィルター室66、流入流路67及び中継流路68は、凹部の開口が第1膜部材62で覆われることにより形成される。流入部64は、流入流路67等を介してフィルター室66と連通し、フィルター室66は、中継流路68等を介して供給室81と連通する。
【0030】
また、液体貯留部材61の第2面61bには、圧力室82を構成する凹部と、流出流路69を構成する凹部とが形成されている。圧力室82及び流出流路69は、凹部の開口が第2膜部材63で覆われることにより形成される。つまり、圧力室82及び流出流路69は、液体貯留部材61と第2膜部材63とによって形成される。圧力室82は、流出流路69を介して流出部65と連通する。圧力室82は、液体吐出ヘッド10に供給されるインクを貯留する液体貯留室に相当する。また、可撓性を有する第2膜部材63がインクの圧力変化に応じて変形することから、圧力室82の容積もインクの圧力変化に応じて変化する。
【0031】
フィルター室66には、液体供給源21から流入されるインクをろ過するフィルター70が配置される。フィルター70は、インクが通過可能な多数の孔を有している。フィルター70としては、例えば、金網や樹脂製の網等の網目状体、多孔質体や、微細な貫通孔を穿設した金属板を用いることができる。網目状体の具体的な例としては、金属メッシュフィルターや金属繊維が挙げられる。金属メッシュフィルターは、針金を織り込んで形成されるフィルターであり、平織、綾織、平畳織、綾畳織等のフィルターがある。流入部64から流入されたインクは、フィルター70によってろ過された後に、圧力調整機構80を構成する供給室81に流入する。
【0032】
図4及び
図5は、圧力調整機構80の構成及び動作を説明するための断面図である。
図4及び
図5に示すように、圧力調整機構80は、上述した圧力室82及び供給室81に加えて、弁体84と、第1付勢部材85と、第2付勢部材86と、連通孔87と、受圧板88とを備える。圧力室82及び供給室81は、連通孔87を介して連通可能であり、弁体84は、連通孔87に挿通されている。
【0033】
弁体84は、基端部が供給室81に配置されるとともに先端部が連通孔87を通じて圧力室82内に突出する。弁体84の基端部には、シール部89が設けられており、弁体84は、シール部89が連通孔87を閉塞する閉塞位置(
図4参照)と、シール部89が連通孔87を開放する開放位置(
図5参照)とに変位可能である。第1付勢部材85は、供給室81に収容されており、弁体84を閉塞位置に向けて付勢する。
【0034】
第2付勢部材86は、圧力室82に収容されており、圧力室82に突出した弁体84の先端部を囲むように配置されている。第2付勢部材86の一端は、第2膜部材63に付着された受圧板88に接触し、第2付勢部材86の他端は、圧力室82を構成する凹部の底面に接触する。第2付勢部材86は、受圧板88が弁体84の先端に近づいたときに、受圧板88を、弁体84の先端から離れる方向に付勢する。
【0035】
弁体84は、第1付勢部材85に付勢されることにより、供給室81の圧力が上昇しても開放位置に移動することはない。一方、流出部65からのインクの流出により圧力室82内の圧力が所定の圧力よりも低くなると、第2膜部材63が圧力室82の内側に向けて変位する。そして、受圧板88が弁体84の先端を押すことにより、弁体84が開放位置に移動する。これにより、連通孔87を通じて供給室81内のインクが圧力室82内に流入するので、圧力室82内の圧力が上昇する。そして、圧力室82内の圧力上昇により第2膜部材63が圧力室82の外側に向けて変位し、受圧板88が弁体84の先端から離れると、弁体84が開放位置から閉塞位置に移動する。
【0036】
つまり、圧力室82の圧力が低下して、受圧板88が第1付勢部材85及び第2付勢部材86の付勢力に抗して弁体84の先端を押圧した場合に、弁体84は、開放位置に移動する。また、インクの流入により圧力室82内の圧力が正圧まで上昇する前に、第2付勢部材86の付勢力によって受圧板88が弁体84から離されるので、圧力室82内の圧力は、第2付勢部材86の付勢力に応じた負圧の範囲に保持される。
【0037】
このように、弁体84の開放位置への移動は、第2膜部材63の変位に起因して生じる。そして、第2膜部材63の外面側は大気に開放されている。つまり、弁体84の開放位置への移動は、大気圧と圧力室82の圧力との差圧によって行われるので、バルブユニット60の圧力調整機構80を、差圧弁機構、または自己封止弁ともいい、差圧弁機構による自律的な圧力調整機能を自己封止機能ともいう。
【0038】
以上のように、バルブユニット60は、液体供給源21から加圧供給されたインクの液体吐出ヘッド10への流動を規制可能であるとともに、下流側におけるインクの圧力を所定の負圧の範囲内に保持可能である。
【0039】
即ち、液体吐出ヘッド10からインクが吐出される際に、バルブユニット60において、流出部65からインクが流出して圧力室82の圧力が大気圧未満の所定の圧力よりも低下する。そして、圧力室82の容積を減少させる方向に変位する第2膜部材63が弁体84を開放位置に移動させる。これにより、連通孔87からインクが圧力室82に流入して圧力室82の圧力が上昇する。また、インクの供給により圧力室82の圧力が大気圧未満の所定の圧力以上になると、弁体84が再び上流側からのインクの流動を規制する。
【0040】
なお、液体吐出ヘッド10に外力が加わった場合等には、その衝撃でノズルNに形成されたメニスカスが壊れ、ノズルNからインクが漏出することがある。こうしたインクの漏出を抑制するために、バルブユニット60は、第2付勢部材86の付勢力によってノズルNの上流側に位置する圧力室82内を所定の負圧に保持している。
【0041】
次に、バルブユニット60を構成する第2膜部材63について説明する。
図6は、バルブユニット60の圧力室82の一部を模式的に示す断面図であり、
図7は、第2膜部材63の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、圧力室82は、液体貯留部材61に設けられた凹部の開口が第2膜部材63で覆われることにより形成される。つまり、第2膜部材63は、凹部の開口を覆うように配置される。本実施形態において、第2膜部材63は、第1フィルム91と、第2フィルム92と、第3フィルム93とが積層されることによって形成されている。第1フィルム91、第2フィルム92、及び第3フィルム93は、いずれも可撓性を有するフィルムである。
【0042】
第1フィルム91は、熱溶着により液体貯留部材61に接続されるフィルムであり、凹部の開口を覆うように配置されている。第1フィルム91は、液体貯留部材61に対して熱溶着がなされることから、第1フィルム91の材料には、液体貯留部材61の材料であるPPとの相溶性が高い材料が用いられる。本実施形態では、第1フィルム91の材料として、CPP(無延伸ポリプロピレン)が用いられる。本実施形態において、第1フィルム91の厚さは、約25μmである。
【0043】
第2フィルム92は、インクに含まれる所定の成分の透過を抑制するためのフィルムである。具体的には、第2フィルム92は、インクに含まれる溶剤成分が透過して蒸散することを抑制するために設けられている。このため、第2フィルム92の材料には、溶剤の透過性が低い材料が用いられる。本実施形態では、第2フィルム92の材料として、PET(ポリエチレンテレフタレート)が用いられる。本実施形態において、第2フィルム92の厚さは、約12μmである。第2フィルム92は、例えば、ポリウレタン系の接着剤94によって、第1フィルム91の外面、即ち凹部の開口に対向する面の反対面に接着される。これにより、第1フィルム91と第2フィルム92とが積層された積層フィルム90が形成される。
【0044】
第3フィルム93は、周辺の空気に含まれる水分が透過して積層フィルム90の内部、即ち第1フィルム91と第2フィルム92との間に浸入することを抑制するために設けられている。このため、第3フィルム93の材料には、水分の透過性が低い材料が用いられる。本実施形態では、第3フィルム93の材料として、PETにアルミナやシリカを蒸着させた蒸着PETが用いられる。本実施形態において、第3フィルム93の厚さは、約12μmである。
【0045】
第3フィルム93は、第2フィルム92に対向する方向と反対の方向である+X方向に凸となるように、予め熱プレスにより凸状に形成されている。この熱プレスにより、第3フィルム93には、周縁部93aと、側壁部93bと、平坦部93cとが形成される。周縁部93aは、第3フィルム93の周縁において第2フィルム92に接着される部位であり、側壁部93bは、周縁部93aの内側から略+X方向に起立する枠状の部位である。また、平坦部93cは、第3フィルム93の中央部において、第2フィルム92と略平行になる部位である。周縁部93aと側壁部93bは、第3フィルム93の周縁に沿って設けられ、第3フィルム93の大部分は、平坦部93cによって構成されている。
【0046】
第3フィルム93は、第2フィルム92の外面、即ち第1フィルム91に対向する面の反対面に配置される。具体的には、第3フィルム93の周縁部93aが、接着剤95によって第2フィルム92の外面に接着される。これにより、第1フィルム91、第2フィルム92及び第3フィルム93を含む第2膜部材63が形成される。接着剤95としては、例えば、オレフィン系のホットメルト接着剤が用いられる。
【0047】
第2膜部材63が上記のように形成されているため、第2膜部材63には、圧力室82を構成する凹部の開口に対応する範囲内において、第2フィルム92と第3フィルム93との間に空間Sが設けられる。つまり、第3フィルム93は、第2フィルム92に対して空間Sを隔てて配置される。具体的には、第3フィルム93の平坦部93cが、空間Sを隔てて第2フィルム92と略平行に配置される。そして、第2フィルム92と平坦部93cとに挟まれた空間Sの周縁は、第3フィルム93の側壁部93bによって覆われている。
【0048】
このように、積層フィルム90と第3フィルム93との間に空間Sが設けられているため、圧力室82内の圧力変化によって第2膜部材63が変形する際、第2膜部材63のうち積層フィルム90が主に変形し、第3フィルム93は大きく変形しない。つまり、積層フィルム90の変形は、第3フィルム93よって阻害されにくい。
【0049】
第2フィルム92と第3フィルム93とを隔てる空間Sの内部には、粒状の吸湿材96が配置されている。吸湿材96は、第3フィルム93が第2フィルム92に接着される前に、第3フィルム93の平坦部93c及び側壁部93bの内面、即ち第2フィルム92に対向する面に接着される。吸湿材96は、例えば、シリカゲルによって構成される。また、第3フィルム93への吸湿材96の接着には、例えば、アクリル系の接着剤が用いられる。なお、吸湿材96は、必須の構成ではなく、吸湿材96を配置しない構成としてもよい。
【0050】
空間Sの高さH、即ち空間Sの±X方向の寸法は、積層フィルム90が変形する際に第2フィルム92が第3フィルム93に接触することがないように、積層フィルム90の変形量、及び吸湿材96の粒径等に応じて適宜定めればよい。例えば、積層フィルム90の±X方向の最大変位量が0.8mmであり、吸湿材96の粒径が数十μmである場合には、空間Sの高さHは、1.0mm程度に設定される。
【0051】
次に、バルブユニット60の製造方法のうち、液体貯留部材61上に第2膜部材63を形成する工程について説明する。
図8は、第2膜部材63を形成する工程を説明するためのフローチャートである。
【0052】
まず、第1フィルム91と第2フィルム92とが接着されて、積層フィルム90が形成される(ステップS101)。そして、形成された積層フィルム90は、第1フィルム91側が液体貯留部材61の第2面61bに形成された凹部に対向するように配置された後に、液体貯留部材61に対して熱溶着により接続される(ステップS102)。
【0053】
次に、第3フィルム93が、積層フィルム90に対して空間Sを隔てて配置される。具体的には、第3フィルム93は、熱プレスにより凸状に形成され(ステップS103)、その後、第3フィルム93には、第2フィルム92に対向する内面に吸湿材96が接着される(ステップS104)。そして、
図7に示すように、第3フィルム93は、液体貯留部材61に熱溶着された積層フィルム90上に配置され、周縁部93aが積層フィルム90に接着される(ステップS105)。これにより、第3フィルム93が積層フィルム90に対して空間Sを隔てて配置される。そして、液体貯留部材61上に第2膜部材63が形成される。なお、ステップS103及びステップS104を実行するタイミングは、ステップS102の後に限定されず、ステップS105よりも前であればよい。ステップS102は、積層フィルム90を液体貯留部材61に接続する工程に相当し、ステップS103~S105は、第3フィルム93を積層フィルム90に対して空間Sを隔てて配置する工程に相当する。
【0054】
第1膜部材62は、第2膜部材63と同様、液体貯留部材61との相溶性が高い第1フィルム91と、溶剤成分の蒸散を抑制する第2フィルム92と、水分の浸入を抑制する第3フィルム93とによって構成されることが望ましい。つまり、第1膜部材62は、第2膜部材63と同様の構成としてもよい。ただし、第1膜部材62については、±X方向への変位を考慮する必要がないため、第2フィルム92と第3フィルム93との間に空間Sを設ける必要はない。つまり、第1膜部材62は、第1フィルム91と第2フィルム92によって構成される積層フィルム90上に、空間Sを設けることなく、全域が平坦な第3フィルム93を配置する構成としてもよい。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態のバルブユニット60、液体吐出装置1、及びバルブユニット60の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
本実施形態によれば、周辺の空気に含まれる水分が第1フィルム91と第2フィルム92との間に浸入することを抑制するための第3フィルム93が、第2フィルム92に対して空間Sを隔てて配置される。このため、第2膜部材63が圧力室82内のインクの圧力変化に応じて変形する際に、凹部に近接する第1フィルム91及び第2フィルム92が主に変形し、空間Sを隔てて配置される第3フィルム93の変形は制限される。つまり、第3フィルム93が第1フィルム91及び第2フィルム92の可撓性を損ねてしまうことが抑制されることから、圧力室82内のインクの圧力を適正に調整することが可能となる。
【0057】
本実施形態によれば、凸状に形成された第3フィルム93が、第2フィルム92に対向する方向と反対の方向に凸となるように配置されるため、第2フィルム92と第3フィルム93との間に容易に空間Sを形成することができる。
【0058】
本実施形態によれば、第2フィルム92と第3フィルムと93を隔てる空間S内に吸湿材96が配置されるため、第1フィルム91と第2フィルム92との間に水分が浸入してしまうことを一層抑制できる。
【0059】
本実施形態によれば、吸湿材96が粒状で、第3フィルム93に接着されているため、第1フィルム91及び第2フィルム92の変形を吸湿材96が阻害してしまうことを抑制できる。
【0060】
上記の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0061】
上記実施形態において、液体貯留部材61、第1フィルム91、第2フィルム92、第3フィルム93、接着剤94,95、吸湿材96の材料は、上記に例示した材料に限定されない。例えば、第3フィルム93は、PETにアルミナまたはシリカを蒸着させた蒸着PETに限定されず、PETにアルミナとシリカの両方を蒸着させた蒸着PETでもよい。また、蒸着PETの代わりに、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)を用いてもよい。また、吸湿材96は、シリカゲルに限定されず、酸化カルシウムや塩化カルシウム等であってもよい。吸湿材96の形態は、粒状に限定されず、シート状等であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、第3フィルム93を凸状に形成することにより、第2フィルム92と第3フィルム93との間に空間Sが形成されるようにしているが、この構成に限定されない。例えば、
図9に示すように、積層フィルム90上に枠状部材97を配置して、この枠状部材97上に、全域が平坦な第3フィルム93を配置する構成としてもよい。この場合、第2膜部材63は、第1フィルム91と、第2フィルム92と、枠状部材97と、第3フィルム93とを備え、第3フィルム93は、枠状部材97を介して第2フィルム92に接続される。この構成によれば、第2フィルム92と第3フィルム93との間に空間Sを設けるために、第3フィルム93を凸状に加工する必要がなくなる。
【0063】
上記実施形態では、第3フィルム93の平坦部93c及び側壁部93bの内面に吸湿材96を接着させているが、側壁部93bの内面に吸湿材96を接着させ、平坦部93cの内面には吸湿材96を接着させないようにしてもよい。この構成によれば、積層フィルム90が大きく変形する領域を避けて吸湿材96が配置されるため、積層フィルム90の変形を吸湿材96が阻害してしまうことが抑制される。なお、平坦部93cのうち、積層フィルム90の変位が最大となる凹部の開口の中央部に対応する領域に吸湿材96を配置せずに、平坦部93cのうち、該領域の周辺には吸湿材96を配置する構成としてもよい。
【0064】
上記実施形態では、バルブユニット60がキャリッジ42上に配置されて液体吐出ヘッド10に接続される構成を示したが、バルブユニット60の構成は、これに限定されない。例えば、バルブユニット60は、液体吐出ヘッド10と一体的に構成されてもよいし、液体供給源21と一体的に構成されてもよい。また、
図10に示すように、1つのバルブユニット60が複数種のインクを貯留可能な構成であってもよい。
【0065】
図10に示す構成において、バルブユニット60は、2種のインクを貯留可能であり、2つの圧力調整機構80a,80bを備えている。2種のインクは、それぞれ異なる流入部からバルブユニット60内に流入し、それぞれ異なる流出部から流出される。一方の圧力調整機構80aは、液体貯留部材61の第1面61a側に形成された圧力室82aを有する。圧力室82aは、第2面61b側に形成された供給室81aからインクの供給を受ける。他方の圧力調整機構80bは、液体貯留部材61の第2面61b側に形成された圧力室82bを有する。圧力室82bは、第1面61a側に形成された供給室81bからインクの供給を受ける。
【0066】
このように、
図10に示す構成では、第1面61a及び第2面61bの双方に圧力室82a,82bが形成されている。このため、第1面61aに配置される第1膜部材98aと、第2面61bに配置される第2膜部材98bの双方は、上記実施形態における第2膜部材63と同様の構成、即ち第3フィルム93が第2フィルム92に対して空間Sを隔てて配置される構成であることが望ましい。
【0067】
上記実施形態において、液体吐出装置1は、インク以外の他の液体を吐出する装置であってもよい。例えば、液体吐出装置1は、各種ディスプレイの製造に用いられる電極材または色材等の材料が、分散または溶解した状態で含有されている液状体を吐出してもよい。
【0068】
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
【0069】
バルブユニットは、液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を備えるバルブユニットであって、前記液体貯留室は、前記液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記膜部材は、前記開口を覆うように、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記第1フィルムの前記開口に対向する面の反対面に接着され、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムと、前記第2フィルムの前記第1フィルムに対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムと、を備え、前記第3フィルムは、前記第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。
【0070】
この構成によれば、周辺の空気に含まれる水分が第1フィルムと第2フィルムとの間に浸入することを抑制するための第3フィルムが、第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。このため、膜部材が液体貯留室内の液体の圧力変化に応じて変形する際に、凹部に近接する第1フィルム及び第2フィルムが主に変形し、空間を隔てて配置される第3フィルムの変形は制限される。つまり、第3フィルムが第1フィルム及び第2フィルムの可撓性を損ねてしまうことが抑制されることから、液体貯留室内の液体の圧力を適正に調整することが可能となる。
【0071】
上記のバルブユニットにおいて、前記第3フィルムは、凸状に形成され、前記第2フィルムに対向する方向と反対の方向に凸となるように配置されることが望ましい。
【0072】
この構成によれば、凸状に形成された第3フィルムが、第2フィルムに対向する方向と反対の方向に凸となるように配置されるため、第2フィルムと第3フィルムとの間に容易に空間を形成することができる。
【0073】
上記のバルブユニットにおいて、前記第2フィルムと前記第3フィルムとを隔てる前記空間内に吸湿材が配置されることが望ましい。
【0074】
この構成によれば、第2フィルムと第3フィルムとを隔てる空間内に吸湿材が配置されるため、第1フィルムと第2フィルムとの間に水分が浸入してしまうことを一層抑制できる。
【0075】
上記のバルブユニットにおいて、前記吸湿材は、粒状であり、前記第3フィルムに接着されていることが望ましい。
【0076】
この構成によれば、吸湿材が粒状で、第3フィルムに接着されているため、第1フィルム及び第2フィルムの変形を吸湿材が阻害してしまうことを抑制できる。
【0077】
上記のバルブユニットにおいて、前記第2フィルムと前記第3フィルムとを隔てる前記空間内に吸湿材が配置され、前記第3フィルムは、前記空間を隔てて前記第2フィルムと略平行に配置される平坦部と、前記第2フィルムと前記平坦部とで挟まれた前記空間の周縁を覆う側壁部と、を含み、前記吸湿材は、前記第3フィルムの前記側壁部に接着され、前記第3フィルムの前記平坦部には接着されていないことが望ましい。
【0078】
この構成によれば、膜部材が大きく変形する領域を避けて吸湿材が配置されるため、第1フィルム及び第2フィルムの変形を吸湿材が阻害してしまうことを一層抑制できる。
【0079】
上記のバルブユニットにおいて、前記第3フィルムは、枠状部材を介して前記第2フィルムに接続されてもよい。
【0080】
この構成によれば、第2フィルムと第3フィルムとの間に空間を設けるために、第3フィルムを凸状に加工する必要がなくなる。
【0081】
液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体が液体供給源から前記液体吐出ヘッドに向かって流れるように前記液体供給源と前記液体吐出ヘッドとを接続する供給流路と、を備える液体吐出装置であって、前記供給流路は、前記液体供給源から前記液体が流入される流入部と、前記液体が前記液体吐出ヘッドに向かって流出される流出部と、前記液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室と、を有するバルブユニットを備え、前記液体貯留室は、前記液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記膜部材は、前記開口を覆うように、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記第1フィルムの前記開口に対向する面の反対面に接着され、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムと、前記第2フィルムの前記第1フィルムに対向する面の反対面に配置され、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムと、を備え、前記第3フィルムは、前記第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。
【0082】
この構成によれば、周辺の空気に含まれる水分が第1フィルムと第2フィルムとの間に浸入することを抑制するための第3フィルムが、第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。このため、膜部材が液体貯留室内の液体の圧力変化に応じて変形する際に、凹部に近接する第1フィルム及び第2フィルムが主に変形し、空間を隔てて配置される第3フィルムの変形は制限される。つまり、第3フィルムが第1フィルム及び第2フィルムの可撓性を損ねてしまうことが抑制されることから、液体貯留室内の液体の圧力を適正に調整することが可能となる。
【0083】
バルブユニットの製造方法は、液体が貯留される凹部が形成された液体貯留部材と、前記凹部の開口を覆うように配置される膜部材と、によって形成され、前記液体の圧力変化に応じて容積が変化する液体貯留室を備えるバルブユニットの製造方法であって、前記液体貯留部材に接続される第1フィルムと、前記液体に含まれる所定の成分の透過を抑制する第2フィルムとを接着することにより形成された積層フィルムを、前記第1フィルム側が前記凹部と対向するように配置して、前記液体貯留部材に接続する工程と、周辺の空気に含まれる水分の透過を抑制する第3フィルムを、前記積層フィルムに対して空間を隔てて配置する工程と、を備える。
【0084】
この構成によれば、周辺の空気に含まれる水分が第1フィルムと第2フィルムとの間に浸入することを抑制するための第3フィルムが、第2フィルムに対して空間を隔てて配置される。このため、膜部材が液体貯留室内の液体の圧力変化に応じて変形する際に、凹部に近接する第1フィルム及び第2フィルムが主に変形し、空間を隔てて配置される第3フィルムの変形は制限される。つまり、第3フィルムが第1フィルム及び第2フィルムの可撓性を損ねてしまうことが抑制されることから、液体貯留室内の液体の圧力を適正に調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1…液体吐出装置、10…液体吐出ヘッド、11…ノズル面、12,12a,12b,12c,12d…ノズル列、20…インク供給部、21,21a,21b,21c,21d…液体供給源、22…注入部、23…収容室、24…供給流路、25…チューブ、30…搬送機構、32…搬送ローラー、34…搬送ロッド、36…搬送用モーター、40…移動機構、42…キャリッジ、44…搬送ベルト、46…移動用モーター、47…プーリー、50…メンテナンス部、51…ワイパー、52…ワイパー駆動部、53…キャップ、54…キャップ保持部、55…キャップ駆動部、56…廃液チューブ、57…吸引ポンプ、58…廃液収集部、60,60a,60b,60c,60d…バルブユニット、61…液体貯留部材、61a…第1面、61b…第2面、62…第1膜部材、63…第2膜部材、64…流入部、65…流出部、66…フィルター室、67…流入流路、68…中継流路、69…流出流路、70…フィルター、80,80a,80b…圧力調整機構、81,81a,81b…供給室、82,82a,82b…圧力室、83…受け板、84…弁体、85…第1付勢部材、86…第2付勢部材、87…連通孔、88…受圧板、89…シール部、90…積層フィルム、91…第1フィルム、92…第2フィルム、93…第3フィルム、93a…周縁部、93b…側壁部、93c…平坦部、94,95…接着剤、96…吸湿材、97…枠状部材、98a…第1膜部材、98b…第2膜部材、100…制御部、N…ノズル、P…印刷用紙、S…空間。