(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113791
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】部品整列装置およびピックアップシステム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20240816BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20240816BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B65G47/14 A
B65G47/90 B
B23P19/00 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018980
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】矢▲埼▼ 鴻介
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆智
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和史
【テーマコード(参考)】
3C030
3F072
3F080
【Fターム(参考)】
3C030AA12
3F072AA21
3F072GD03
3F072GG01
3F072KD01
3F072KD23
3F080AA24
3F080BA01
3F080BC01
3F080BC03
3F080BF07
3F080CB02
3F080CG02
3F080DB04
(57)【要約】
【課題】挿入穴への部品の引っ掛かりを抑制することのできる部品整列装置およびピックアップシステムを提供すること。
【解決手段】部品整列装置は、部品が載置されるプレートおよび前記プレートに開口し前記部品が挿入される挿入穴を有するトレイと、前記トレイを傾斜させる傾斜ユニットと、を有し、前記挿入穴は、開口に接続され内径が底側に向けて漸減するテーパー部を有し、前記傾斜ユニットによって前記トレイが傾いたときの水平面に対する前記プレートの傾斜角をθ1とし、前記テーパー部のテーパー角をθ2としたときとき、θ1>θ2である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が載置されるプレートおよび前記プレートに開口し前記部品が挿入される挿入穴を有するトレイと、
前記トレイを傾斜させる傾斜ユニットと、を有し、
前記挿入穴は、開口に接続され内径が底側に向けて漸減するテーパー部を有し、
前記傾斜ユニットによって前記トレイが傾いたときの水平面に対する前記プレートの傾斜角をθ1とし、前記テーパー部のテーパー角をθ2としたときとき、θ1>θ2であることを特徴とする部品整列装置。
【請求項2】
前記トレイは、前記部品を待機させる待機領域と、前記挿入穴が配置されている整列領域と、を有する請求項1に記載の部品整列装置。
【請求項3】
前記トレイは、前記待機領域と前記整列領域との間に前記プレートから突出し、前記待機領域と前記整列領域とを仕切るように延在する凸部を有する請求項2に記載の部品整列装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記待機領域側に位置する第1壁面と、前記整列領域側に位置する第2壁面と、を有し、
前記プレートに対する前記第1壁面の傾斜角をθ3とし、前記プレートに対する前記第2壁面の傾斜角をθ4としたとき、θ3>θ4である請求項3に記載の部品整列装置。
【請求項5】
前記トレイは、前記待機領域に配置され前記整列領域に対して凹んでいる凹部を有する請求項2に記載の部品整列装置。
【請求項6】
前記傾斜ユニットは、前記トレイを前記待機領域側に傾ける第1傾斜ユニットを有する請求項2に記載の部品整列装置。
【請求項7】
前記傾斜ユニットは、前記トレイを前記整列領域側に傾ける第2傾斜ユニットを有する請求項2に記載の部品整列装置。
【請求項8】
前記トレイを振動させる振動ユニットを有する請求項1に記載の部品整列装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の部品整列装置と、
前記部品整列装置に載置されている前記部品を撮像するビジョンと、
前記ビジョンの撮像結果に基づいて、前記部品整列装置に載置されている前記部品をピックアップするロボットと、を有することを特徴とするピックアップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品整列装置およびピックアップシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているパーツ振込装置は、トレイホルダーと、トレイホルダーに配置され、ネジを挿入して整列させる整列穴が形成されたトレイと、トレイホルダーを振動させるモーターと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような特許文献1のパーツ振込装置では、整列穴の詳細な形状が不明であり、整列穴にネジが入り難いおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の部品整列装置は、部品が載置されるプレートおよび前記プレートに開口し前記部品が挿入される挿入穴を有するトレイと、
前記トレイを傾斜させる傾斜ユニットと、を有し、
前記挿入穴は、開口に接続され内径が底側に向けて漸減するテーパー部を有し、
前記傾斜ユニットによって前記トレイが傾いたときの水平面に対する前記プレートの傾斜角をθ1とし、前記テーパー部のテーパー角をθ2としたときとき、θ1>θ2である。
【0006】
本発明のピックアップシステムは、上記の部品整列装置と、
前記部品整列装置に載置されている前記部品を撮像するビジョンと、
前記ビジョンの撮像結果に基づいて、前記部品整列装置に載置されている前記部品をピックアップするロボットと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るピックアップシステムの全体構成を示す正面図である。
【
図6】第1傾斜状態の部品整列装置を示す正面図である。
【
図7】ピックアップ方法を示すフローチャートである。
【
図8】ピックアップ方法を説明するための図である。
【
図9】ピックアップ方法を説明するための図である。
【
図10】ピックアップ方法を説明するための図である。
【
図11】ピックアップ方法を説明するための図である。
【
図12】ピックアップ方法を説明するための図である。
【
図13】第2実施形態に係る部品整列装置を示す上面図である。
【
図17】第1傾斜状態のトレイを示す断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る部品整列装置のトレイを示す断面図である。
【
図19】第4実施形態に係る部品整列装置を示す正面図である。
【
図20】第2傾斜状態の部品整列装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の部品整列装置およびピックアップシステムの好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るピックアップシステムの全体構成を示す正面図である。
図2は、ロボットを示す正面図である。
図3は、部品整列装置を示す正面図である。
図4は、トレイを示す上面図である。
図5は、トレイを示す断面図である。
図6は、第1傾斜状態の部品整列装置を示す正面図である。
図7は、ピックアップ方法を示すフローチャートである。
図8ないし
図12は、それぞれ、ピックアップ方法を説明するための図である。
【0010】
なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」とも言い、反対側を「マイナス側」とも言う。また、Z軸方向が鉛直方向に沿っており、Z軸方向プラス側が鉛直方向上側、Z軸方向マイナス側が鉛直方向下側である。なお、本願明細書中の鉛直は、鉛直の場合のみならず、技術常識上鉛直と同視できる程度に鉛直に対して傾いている場合も含む意味である。同様に、本願明細書中の水平は、水平の場合のみならず、技術常識上水平と同視できる程度に水平に対して傾いている場合も含む意味である。また、本願明細書中の直交は、直交の場合のみならず、技術常識上直交と同視できる程度に直交に対して傾いている場合も含む意味である。
【0011】
図1に示すピックアップシステム100は、ピックアップ対象である部品としてのネジBを整列させる部品整列装置200と、部品整列装置200内のネジBを撮像するビジョン400と、部品整列装置200内のネジBをピックアップするロボット500と、これら各部の駆動を制御する制御装置600と、を有する。なお、部品としては、ネジBに限定されないが、後述する挿入穴に挿入される長尺状、棒状のものが好ましい。このような部品としては、例えば、コイルバネ等が挙げられる。
【0012】
[ロボット500]
ロボット500は、スカラロボットである。
図2に示すように、ロボット500は、床面に固定されたベース510と、ベース510に接続されたロボットアーム520と、を有する。ロボットアーム520は、基端部がベース510に接続され、ベース510に対して鉛直方向に沿った第1回動軸J1まわりに回動する第1アーム521と、基端部が第1アーム521の先端部に接続され、第1アーム521に対して鉛直方向に沿った第2回動軸J2まわりに回動する第2アーム522と、を有する。
【0013】
また、第2アーム522の先端部には作業ヘッド530が設けられている。作業ヘッド530は、第2アーム522の先端部に同軸的に配置されたスプラインナット531およびボールネジナット532と、スプラインナット531およびボールネジナット532に挿通されたスプラインシャフト533と、を有する。スプラインシャフト533は、第2アーム522に対して鉛直方向に沿った第3回動軸J3まわりに回転可能で、かつ、第3回動軸J3に沿って昇降可能である。
【0014】
また、スプラインシャフト533の下端部にはエンドエフェクター540が装着されている。エンドエフェクター540は、着脱自在であり目的の作業に適したものが適宜選択される。本実施形態のエンドエフェクター540は、ネジBをピックアップするためのハンドである。
【0015】
また、ロボット500は、ベース510に対して第1アーム521を第1回動軸J1まわりに回動させる第1駆動装置571と、第1アーム521に対して第2アーム522を第2回動軸J2まわりに回動させる第2駆動装置572と、スプラインナット531を回転させてスプラインシャフト533を第3回動軸J3まわりに回転させる第3駆動装置573と、ボールネジナット532を回転させてスプラインシャフト533を第3回動軸J3に沿った方向に昇降させる第4駆動装置574と、を有する。
【0016】
以上、ロボット500について説明したが、ロボット500としては、特に限定されず、例えば、回動軸を6つ有するロボットアームを備えた6軸ロボットであってもよい。
【0017】
[ビジョン400]
図1に示すように、ビジョン400は、部品整列装置200の上方から部品整列装置200内のネジBを撮像し、撮像した画像に基づいてネジBの整列状態を検出する。このようなビジョン400は、部品整列装置200の上方から部品整列装置200内のネジBを撮像するカメラ410と、カメラ410が撮像した画像データに基づいて部品整列装置200内のネジBの整列状態を検出する検出部420と、を有する。カメラ410は、例えば、2Dカメラである。なお、本実施形態では、検出部420は、制御装置600に組み込まれている。言い換えると、制御装置600が検出部420を兼ねている。
【0018】
ただし、ビジョン400の構成としては、部品整列装置200内のネジBの整列状態を検出することができれば、特に限定されない。
【0019】
[部品整列装置200]
部品整列装置200は、
図3に示すように、基台210と、振動部220と、基台210と振動部220とを連結する4本のバネ部230と、振動部220を振動させる振動ユニット270と、振動部220を傾ける傾斜ユニット280と、を有する。
【0020】
また、振動部220は、フレーム240と、ネジBが投入されるトレイ250と、振動ユニット270に接続された振動伝達部260と、を有する。フレーム240は、水平面に沿う板状をなし、その上面にトレイ250が固定され、下面に振動伝達部260が固定されている。また、振動伝達部260は、フレーム240に固定された基部261と、基部261の下側に突出し、基部261に対してY軸まわりに回転するローラー262と、を有する。また、フレーム240は、4本のバネ部230を介して基台210に連結されている。
【0021】
4本のバネ部230は、フレーム240の四隅に配置され、フレーム240をバランスよく支持している。また、各バネ部230は、筒体231と、筒体231に挿入され、筒体231に対してZ軸方向に移動可能な棒体232と、棒体232の周囲に巻回されたコイルバネ233と、を有し、筒体231の下端部が基台210に固定され、棒体232の上端部がフレーム240に固定されている。このような構成では、コイルバネ233が弾性変形することにより、振動部220の振動が許容される。ただし、バネ部230の構成は、特に限定されず、例えば、板バネで構成されていてもよい。
【0022】
また、
図4および
図5に示すように、トレイ250は、箱状であり、ネジBが載置されるプレート251と、プレート251の周囲を囲む枠状の側壁部252と、を有する。プレート251は、水平に配置されている。また、プレート251は、X軸方向マイナス側に位置する待機領域Q1と、X軸方向プラス側に位置する整列領域Q2と、を有する。つまり、待機領域Q1と整列領域Q2とは、X軸方向に並んで配置されている。このうち待機領域Q1は、ネジBを無造作に載置する領域であり、整列領域Q2は、待機領域Q1から供給されたネジBを行列状に整列させる領域である。そして、整列領域Q2に整列されたネジBがロボット500によってピックアップされる。このように、待機領域Q1と整列領域Q2とを備えることにより、整列領域Q2にある余分なネジB、つまり、整列領域Q2で整列されなかったネジBを待機領域Q1に排除することができ、ロボット500によるネジBのピックアップが容易となる。
【0023】
また、整列領域Q2には、プレート251に開口し、ネジBが挿入される複数の挿入穴253が形成されている。また、複数の挿入穴253は、X軸方向およびY軸方向に沿って行列状に規則的に並んで配置されている。ただし、挿入穴253の数や配置は、特に限定されない。
【0024】
また、各挿入穴253は、プレート251に対して垂直に形成されている。また、各挿入穴253は、1本のネジBが挿入可能なサイズであり、その開口部は、内径が底側に向けて漸減するテーパー部253aとなっている。また、テーパー部253aの上端での内径は、ネジBの頭の外形よりも大きく、ネジBが挿入穴253に挿入されると、ネジBの頭がテーパー部253aの内周面に引っ掛かるようになっている。これにより、ネジBの過度な挿入が規制され、ネジBをロボット500でピックアップし易くなる。
【0025】
図3に示すように、振動ユニット270は、基台210に固定されたモーター271を有する。また、モーター271は、Y軸まわりに回転する回転軸272と、回転軸272に固定された偏心カム273と、を有する。また、偏心カム273は、ローラー262に当接している。そのため、モーター271を駆動して回転軸272を回転させると、偏心カム273によってローラー262が上下に変位し、これにより、各バネ部230を弾性変形させながらトレイ250が振動する。ただし、振動ユニット270の構成は、トレイ250を振動させることができれば、特に限定されない。
【0026】
傾斜ユニット280は、トレイ250をY軸まわりに傾倒させる第1傾斜ユニット281を有する。第1傾斜ユニット281は、基台210のX軸方向プラス側に配置されている。また、第1傾斜ユニット281は、基台210に固定されたベース281aと、ベース281aに対してZ軸方向に変位可能なシャフト281bと、シャフト281bをベース281aに対してZ軸方向に移動させる駆動源としてのモーター281cと、を有する。
【0027】
図3に示すように、シャフト281bをZ軸方向プラス側に退避させることで、プレート251が水平となる水平状態となる。これに対して、
図6に示すように、シャフト281bをZ軸方向マイナス側へ突出させることで、シャフト281bが基台210のX軸方向プラス側の端部を持ち上げ、これにより、プレート251がY軸まわりに傾斜し、待機領域Q1側に傾いた第1傾斜状態となる。
【0028】
[制御装置600]
図1に示すように、制御装置600は、部品整列装置200、ビジョン400およびロボット500の駆動をそれぞれ制御する。このような制御装置600は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。制御装置600の構成要素の一部または全部は、ロボット500の筐体の内側に配置されていてもよい。また、制御装置600は、複数のプロセッサーにより構成されていてもよい。
【0029】
以上、ピックアップシステム100の構成について説明した。次に、ピックアップシステム100によるネジBのピックアップ方法について説明する。
図7に示すように、ネジBのピックアップ方法は、トレイ250にネジBを投入するステップS1と、トレイ250を振動させてネジBを挿入穴253に挿入するステップS2と、トレイ250を第1傾斜状態とするステップS3と、トレイ250を水平状態とするステップS4と、カメラ410で整列領域Q2を撮像し画像データDを取得するステップS5と、画像データDに基づいて各挿入穴253へのネジBの挿入状態を検出するステップS6と、挿入穴253に挿入されたネジBをロボット500でピックアップするステップS7と、を含む。以下、詳細に説明する。
【0030】
まず、ステップS1として、
図8に示すように、トレイ250を水平状態とし、トレイ250内の待機領域Q1に多数のネジBを投入する。ネジBの投入は、作業者が行ってもよいし、別の搬送装置やロボットを用いて行ってもよい。この状態では、多数のネジBが待機領域Q1に無造作に積載されている。
【0031】
次に、ステップS2として、
図9に示すように、振動ユニット270によってトレイ250を振動させる。これにより、待機領域Q1内のネジBが上下に飛び跳ねるように振動しながら整列領域Q2側に移動し、一部のネジBが挿入穴253に挿入される。前述したように、挿入穴253の開口部がテーパー部253aとなっているため、ネジBが挿入穴253内に導かれ易くなる。また、ネジBが上下に飛び跳ねるように振動することで、ますますネジBが挿入穴253に導かれ易くなる。そのため、より短時間で、より多くの挿入穴253にネジBを正しい姿勢で挿入することができる。
【0032】
次に、ステップS3として、
図10に示すように、第1傾斜ユニット281によってトレイ250を第1傾斜状態とし、挿入穴253に挿入されなかったネジBを整列領域Q2から待機領域Q1内に戻す。これにより、整列領域Q2にある余分なネジBを排除することができる。ここで、本ステップS3の際、挿入穴253に挿入されなかったネジBがテーパー部253aに引っ掛かって整列領域Q2に留まるおそれがある。余分なネジBが整列領域Q2に留まってしまうと、後のステップS7でのネジBのピックアップ作業に支障が生じるおそれがある。
【0033】
そこで、部品整列装置200では、
図11に示すように、傾斜状態での水平面に対するプレート251の傾斜角をθ1とし、テーパー部253aのテーパー角をθ2としたときとき、θ1>θ2の関係を満足している。これにより、第1傾斜状態においてテーパー部253aの内周面、特に、X軸方向マイナス側の部分253a’が待機領域Q1側に傾くため、挿入穴253へのネジBの引っ掛かりが抑制され、挿入穴253に挿入されなかった全てのネジBをより確実に待機領域Q1へ戻すことができる。
【0034】
次に、ステップS4として、
図12に示すように、トレイ250を水平状態に戻す。この際、待機領域Q1内のネジBが勢いよく転がって整列領域Q2に侵入しないように、ゆっくりと傾斜状態から水平状態に戻す。具体的には、本ステップS4でのトレイ250の傾斜速度(単位時間当たりの傾斜変化量)をステップS3でのトレイ250の傾斜速度よりも遅くする。これにより、ネジBが転がり難くなるため、整列領域Q2への侵入を効果的に抑制することができる。ただし、これに限定されず、本ステップS4でのトレイ250の傾斜速度は、ステップS3でのトレイ250の傾斜速度と同じ、または、それ以上であってもよい。
【0035】
以上の工程によって、整列領域Q2にネジBが整列した状態となる。次に、ステップS5として、制御装置600は、ロボット500を撮像の妨げとならない姿勢とした状態で、カメラ410で整列領域Q2を撮像し画像データDを取得する。次に、ステップS6として、制御装置600は、画像データDに基づいて、各挿入穴253へのネジBの挿入状態を検出する。つまり、どの挿入穴253にネジBが挿入されているかを判定する。
【0036】
次に、ステップS7として、ロボット500は、挿入穴253に挿入されたネジBをロボット500でピックアップする。挿入穴253に挿入されたネジBが無くなるまで本ステップS7を繰り返し、挿入穴253に挿入されたネジBが無くなったらステップS2に戻って、ネジBの整列作業をやり直す。
【0037】
以上のようなネジBのピックアップ方法によれば、挿入穴253にテーパー部253aが形成されているため、ネジBが挿入穴253に誘導され、より短時間で、より多くの挿入穴253にネジBを挿入することができる。つまり、ステップS2の所要時間を短縮することができる。さらに、θ1>θ2であるため、トレイ250を傾けた時に挿入穴253にネジBが引っ掛かり難くなり、挿入穴253に挿入されなかった全てのネジBをより確実に排除することができる。そのため、ステップS4終了時においてより多くのネジBが挿入穴253に挿入されて整列し、かつ、挿入穴253に挿入されていない余分なネジBが整列領域Q2に留まり難くなる。そのため、ステップS7の繰り返し回数が増大し、ステップS2へ戻る回数を減らすことができる。以上より、ネジBのピックアップ作業を効率的に行うことができる。
【0038】
以上、ピックアップシステム100について説明した。このようなピックアップシステム100が備える部品整列装置200は、前述したように、部品であるネジBが載置されるプレート251およびプレート251に開口しネジBが挿入される挿入穴253を有するトレイ250と、トレイ250を傾斜させる傾斜ユニット280と、を有する。そして、挿入穴253は、開口に接続され内径が底側に向けて漸減するテーパー部253aを有し、傾斜ユニット280によってトレイ250が傾いたときの水平面に対するプレート251の傾斜角をθ1とし、テーパー部253aのテーパー角をθ2としたときとき、θ1>θ2である。このように、挿入穴253にテーパー部253aを設けることにより、ネジBが挿入穴253に誘導され、より短時間で、より多くの挿入穴253にネジBを挿入することができる。さらに、θ1>θ2とすることにより、トレイ250を傾けた時に挿入穴253にネジBが引っ掛かり難くなり、挿入穴253に挿入されなかった全てのネジBをより確実に排除することができる。
【0039】
また、前述したように、トレイ250は、ネジBを待機させる待機領域Q1と、挿入穴253が配置されている整列領域Q2と、を有する。これにより、整列領域Q2にある余分なネジB、つまり、整列領域Q2で整列されなかったネジBを待機領域Q1に排除することができ、ロボット500によるネジBのピックアップが容易となる。
【0040】
また、前述したように、傾斜ユニット280は、トレイ250を待機領域Q1側に傾ける第1傾斜ユニット281を有する。これにより、整列領域Q2にある余分なネジB、つまり、整列領域Q2で整列されなかったネジBを待機領域Q1に排除することができ、ロボット500によるネジBのピックアップが容易となる。
【0041】
また、前述したように、部品整列装置200は、トレイ250を振動させる振動ユニット270を有する。これにより、簡単に、待機領域Q1にあるネジBを整列領域Q2に移動させることができる。また、ネジBが上下に飛び跳ねるように振動することで、ネジBが挿入穴253に挿入され易くなる。
【0042】
また、前述したように、ピックアップシステム100は、部品整列装置200と、部品整列装置200に載置されている部品であるネジBを撮像するビジョン400と、ビジョン400の撮像結果に基づいて、部品整列装置200に載置されているネジBをピックアップするロボット500と、を有する。これにより、部品整列装置200の効果を享受することができ、ネジBをスムーズにピックアップすることのできるピックアップシステム100となる。
【0043】
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態に係る部品整列装置を示す上面図である。
図14は、トレイの断面図である。
図15は、トレイが有する凸部の拡大断面図である。
図16は、水平状態のトレイを示す断面図である。
図17は、第1傾斜状態のトレイを示す断面図である。
【0044】
本実施形態に係る部品整列装置200は、トレイ250の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の部品整列装置200と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の部品整列装置200に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0045】
図13および
図14に示すように、本実施形態のトレイ250は、プレート251から上方に突出した凸部254を有する。また、凸部254は、待機領域Q1と整列領域Q2との間に、待機領域Q1と整列領域Q2とを仕切るように配置され、Y軸方向に延在している。なお、凸部254の高さは、ネジBのサイズによっても異なるが、例えば、1mm以上3mm以下程度である。
【0046】
また、凸部254は、プレート251から立設し、待機領域Q1側に位置する第1壁面254aと、整列領域Q2側に位置する第2壁面254bと、を有する。そして、
図15に示すように、プレート251に対する第1壁面254aの傾斜角をθ3とし、プレート251に対する第2壁面254bの傾斜角をθ4としたとき、θ3>θ4である。なお、θ3、θ4としては、特に限定されないが、図示の構成では、θ3が90°となっている。このような凸部254は、次のような機能を発揮する。
【0047】
図16に示すように、ステップS1にて待機領域Q1に多数のネジBを投入した際、ネジBが凸部254に塞き止められて待機領域Q1に留まり、整列領域Q2への意図しない転がりを効果的に抑制することができる。同様に、ステップS4にて第1傾斜状態から水平状態に姿勢を変化させた際にも、ネジBが凸部254に塞き止められて待機領域Q1に留まり、整列領域Q2への意図しない転がりを効果的に抑制することができる。特に、θ3>θ4であるため第1壁面254aがより急な壁面となり、その効果がより顕著となる。なお、凸部254の高さが適度に抑えられているため、ステップS2においては、ネジBが上下に飛び跳ねるように振動することにより、凸部254を容易に乗り越えることができる。
【0048】
また、
図17に示すように、ステップS3においては、θ3>θ4であるため、第2壁面254bがなだらかな壁面となり、ネジBが容易に凸部254を乗り越えて、待機領域Q1に移動する。そのため、凸部254に起因して、余分なネジBが整列領域Q2に留まってしまうのを効果的に抑制することができる。特に、θ1>θ3とすることにより、第1傾斜状態において、第2壁面254bが待機領域Q1側に傾くため、ネジBが凸部254をより乗り越えやすくなる。ただし、θ3としては、特に限定されない。
【0049】
以上のように、本実施形態の部品整列装置200では、トレイ250は、待機領域Q1と整列領域Q2との間にプレート251から突出し、待機領域Q1と整列領域Q2とを仕切るように延在する凸部254を有する。これにより、ネジBが凸部254に塞き止められて待機領域Q1に留まり、整列領域Q2への意図しない転がりを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、前述したように、凸部254は、待機領域Q1側に位置する第1壁面254aと、整列領域Q2側に位置する第2壁面254bと、を有し、プレート251に対する第1壁面254aの傾斜角をθ3とし、プレート251に対する第2壁面254bの傾斜角をθ4としたとき、θ3>θ4である。これにより、第1壁面254aが角度の急な壁面となり、より効果的にネジBを塞き止めることができる。そのため、より確実に、ネジBを待機領域Q1に留めることができる。
【0051】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0052】
<第3実施形態>
図18は、第3実施形態に係る部品整列装置のトレイを示す断面図である。
【0053】
本実施形態に係る部品整列装置200は、トレイ250の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の部品整列装置200と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の部品整列装置200に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0054】
図18に示すように、本実施形態のトレイ250は、待機領域Q1に形成され、整列領域Q2に対して凹んでいる凹部255を有する。凹部255は、整列領域Q2よりも下側に位置する底面と、底面の縁から立設するテーパー状の壁面と、を有する。そして、ステップS1およびステップS4では、凹部255にネジBが溜められる。このような構成によれば、ネジBを待機領域Q1に留め易くなり、整列領域Q2への意図しない転がりを効果的に抑制することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態の部品整列装置200では、トレイ250は、待機領域Q1に配置され整列領域Q2に対して凹んでいる凹部255を有する。このような構成によれば、ネジBを待機領域Q1に留め易くなり、整列領域Q2への意図しない転がりを効果的に抑制することができる。
【0056】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0057】
<第4実施形態>
図19は、第4実施形態に係る部品整列装置を示す正面図である。
図20は、第2傾斜状態の部品整列装置を示す正面図である。
【0058】
本実施形態に係る部品整列装置200は、傾斜ユニット280の構成が異なること以外は、前述した第3実施形態の部品整列装置200と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の部品整列装置200に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0059】
図19に示すように、本実施形態の傾斜ユニット280は、第1傾斜ユニット281に加えて、第2傾斜ユニット282を有する。第2傾斜ユニット282は、第1傾斜ユニット281とは反対側、つまり、整列領域Q2側にトレイ250を傾ける。このような第2傾斜ユニット282は、第1傾斜ユニット281と同様の構成であり、基台210を介して第1傾斜ユニット281と対称的に配置されている。
【0060】
第2傾斜ユニット282は、基台210のX軸方向マイナス側に配置されている。また、第2傾斜ユニット282は、基台210に固定されたベース282aと、ベース282aに対してZ軸方向に変位可能なシャフト282bと、シャフト282bをベース282aに対してZ軸方向に移動させる駆動源としてのモーター282cと、を有する。
【0061】
図19に示すように、シャフト282bをZ軸方向プラス側に退避させることで、プレート251が水平となる水平状態となる。これに対して、
図20に示すように、シャフト282bをZ軸方向マイナス側へ突出させることで、シャフト282bが基台210のX軸方向マイナス側の端部を持ち上げ、これにより、トレイ250がY軸まわりに傾斜し、整列領域Q2側に傾いた第2傾斜状態となる。
【0062】
本実施形態では、ステップS1において待機領域Q1に形成された凹部255にネジBが載置されるため、ステップS2において振動ユニット270による振動だけではネジBが凹部255から脱出し難く、ネジBをスムーズに整列領域Q2に移動させることができない場合が考えられる。そこで、本実施形態では、ステップS2において、
図20に示す第2傾斜状態としたうえで、振動ユニット270によってトレイ250を振動させる。これにより、ネジBが凹部255から脱出し易くなり、ネジBをスムーズに整列領域Q2に移動させることができる。そのため、ステップS2をスムーズに行うことができる。ただし、ステップS2中、第2傾斜状態を維持し続けると、ネジBがトレイ250の下端部(X軸方向プラス側の端部)に溜まってしまい、挿入穴253への挿入が阻害されるおそれがある。そこで、頃合いを見て、第2傾斜状態から水平状態に戻すことが好ましい。
【0063】
以上のように、本実施形態の部品整列装置200では、傾斜ユニット280は、トレイ250を整列領域Q2側に傾ける第2傾斜ユニット282を有する。これにより、ネジBが凹部255から脱出し易くなり、ネジBをスムーズに整列領域Q2に移動させることができる。そのため、ステップS2をスムーズに行うことができる。
【0064】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0065】
以上、本発明の部品整列装置およびピックアップシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物および任意の工程が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100…ピックアップシステム、200…部品整列装置、210…基台、220…振動部、230…バネ部、231…筒体、232…棒体、233…コイルバネ、240…フレーム、250…トレイ、251…プレート、252…側壁部、253…挿入穴、253a…テーパー部、253a’…部分、254…凸部、254a…第1壁面、254b…第2壁面、255…凹部、260…振動伝達部、261…基部、262…ローラー、270…振動ユニット、271…モーター、272…回転軸、273…偏心カム、280…傾斜ユニット、281…第1傾斜ユニット、281a…ベース、281b…シャフト、281c…モーター、282…第2傾斜ユニット、282a…ベース、282b…シャフト、282c…モーター、400…ビジョン、410…カメラ、420…検出部、500…ロボット、510…ベース、520…ロボットアーム、521…第1アーム、522…第2アーム、530…作業ヘッド、531…スプラインナット、532…ボールネジナット、533…スプラインシャフト、540…エンドエフェクター、571…第1駆動装置、572…第2駆動装置、573…第3駆動装置、574…第4駆動装置、600…制御装置、B…ネジ、D…画像データ、J1…第1回動軸、J2…第2回動軸、J3…第3回動軸、Q1…待機領域、Q2…整列領域、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、S6…ステップ、S7…ステップ