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特開2024-113793車両挙動分析装置、車道挙動分析方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113793
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両挙動分析装置、車道挙動分析方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240816BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240816BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240816BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240816BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240816BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240816BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240816BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G01C21/34
G08G1/16 A
B60W30/095
B60W30/10
B60W50/14
G16Y10/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018982
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB02
2F129BB22
2F129BB26
2F129CC03
2F129CC07
2F129DD27
2F129DD29
2F129DD34
2F129DD53
2F129DD65
2F129EE02
2F129EE43
2F129EE52
2F129EE95
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF39
2F129FF71
2F129FF72
2F129GG18
2F129HH02
2F129HH03
2F129HH12
3D241BA15
3D241BA32
3D241BA60
3D241BB03
3D241BB31
3D241BB40
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE02
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL17
5H181MC04
5H181MC12
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】周辺車両や路上の構造物との接触を回避するための車両の挙動における自由度を評価する。
【解決手段】車両挙動分析装置において、データ取得部は、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得する。分類部は、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の時系列データを分類する。自由度算出部は、分類部による1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得部と、
1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類部と、
前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出部と、
を備える車両挙動分析装置。
【請求項2】
前記分類部は、相互相関またはクラスタリングを利用して前記時系列データを分類する請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項3】
前記時系列データに基づいて、当該時系列データに対応する運転挙動の種別を推定する推定部を備える請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項4】
前記自由度を、所定条件毎に分類し、前記1の対象地点に関連付けて記憶する記憶部を備える請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項5】
前記時系列データは、前記自車両に搭載されたジャイロセンサにより計測されたジャイロデータである請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項6】
前記対象地点は、右左折地点、対向車とのゆずり合い地点、駐車場のいずれかである請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項7】
前記自由度に基づいて、自車両の走行経路を提案する経路提案部を備える請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項8】
前記自由度に基づいて、走行に関する支援ガイダンスを出力する出力部への出力制御を行う出力制御部を備える請求項1に記載の車両挙動分析装置。
【請求項9】
対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得工程と、
1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを、相互相関またはクラスタリングを利用して分類する分類工程と、
前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出工程と、
を備える車両挙動分析方法。
【請求項10】
対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得部、
1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを、相互相関またはクラスタリングを利用して分類する分類部、
前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出部、
としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行時に得たデータに基づいて、車両の挙動を分析する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両で通過する際に困難性の高い地点がある。困難性の高い地点として、例えば、以下のような地点が挙げられる。
・大型車がスムーズに右左折できない交差点・地点
・狭い道で、車両のゆずり合いが発生する地点
・何度も切り返しが必要となる駐車場
このような困難性の高い地点の有無については、前もって知っておきたいという要望がある。
【0003】
なお、特許文献1は、車両の旋回時の大回りを検出する技術を記載している。また、特許文献2は、車両の挙動に基づいて、道路の走りやすさや注意の必要性を評価する手法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-54343号公報
【特許文献2】特許4367431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すれ違いや駐車時における運転挙動において、とり得る運転行動の選択肢が少ない(自由度が低い)場合、ドライバー次第ではそういった地点は避けたい場合がある。また、自由度の少ない地点においてはとるべき運転行動についての案内など、運転支援が必要となる。この点、先行技術では、周囲の車両との接触を避けるための挙動における自由度については評価されていなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、周辺車両や路上の構造物との接触を回避するための車両の挙動における自由度を評価することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、車両挙動分析装置であって、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得部と、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類部と、前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出部と、を備える。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、車両挙動分析方法であって、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得工程と、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類工程と、前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出工程と、を備える。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、プログラムであって、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得部、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類部、前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出部、としてコンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係るシステムの全体構成を示す図である。
図2】車載装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】サーバ装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】左折の場合の車両の挙動の例を示す。
図5】左折の場合のジャイロデータの例を示す。
図6】左折の場合の余裕度の算出方法を説明する図である。
図7】左折の場合の侵入度の算出方法を説明する図である。
図8】矢高の計算方法を説明する図である。
図9】左折の場合の侵入度の算出方法を説明する他の図である。
図10】右折の場合の車両の挙動及びジャイロデータの例を示す。
図11】譲り合いの場合の車両の挙動の例を示す。
図12】譲り合いの場合のジャイロデータの例を示す。
図13】駐車場でのジャイロデータの例を示す。
図14】パラメータ算出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの好適な実施形態では、車両挙動分析装置は、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得部と、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類部と、前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出部と、を備える。
【0012】
上記の車両挙動分析装置において、データ取得部は、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得する。分類部は、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の時系列データを分類する。自由度算出部は、分類部による1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する。上記の車両挙動分析装置によれば、時系列データに基づいて、対向車または障害物を避けるための運転挙動の自由度を求めることができる。好適な例では、分類部は、相互相関又はクラスタリングを利用して時系列データを分類する。
【0013】
上記の車両挙動分析装置の一態様は、前記時系列データに基づいて、当該時系列データに対応する運転挙動の種別を推定する推定部を備える。この態様では自由度に基づいて、運転挙動の種別を推定することができる。
【0014】
上記の車両挙動分析装置の他の一態様は、前記自由度を、所定条件毎に分類し、前記1の対象地点に関連付けて記憶する記憶部を備える。この態様では、算出した自由度を条件毎に分類して記憶することができる。
【0015】
好適な例では、前記時系列データは、前記自車両に搭載されたジャイロセンサにより計測されたジャイロデータである。
【0016】
好適な例では、前記対象地点は、右左折地点、対向車とのゆずり合い地点、駐車場のいずれかである。
【0017】
上記の車両挙動分析装置の他の一態様は、前記自由度に基づいて、自車両の走行経路を提案する経路提案部を備える。この態様では、自由度を経路の提案に利用することができる。
【0018】
上記の車両挙動分析装置の他の一態様は、前記自由度に基づいて、走行に関する支援ガイダンスを出力する出力部への出力制御を行う出力制御部を備える。この態様では、自由度を走行に関する支援ガイダンスに利用することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、車両挙動分析方法は、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得工程と、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類工程と、前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出工程と、を備える。この方法によっても、時系列データに基づいて、対向車または障害物を避けるための運転挙動の自由度を求めることができる。
【0020】
本発明のさらに他の好適な実施形態では、プログラムは、対象地点における、対向車または障害物を避けるための運転挙動を含む車両の進行方向の時系列データを取得するデータ取得部、1の対象地点において1の運転挙動がされたことを示す複数の前記時系列データを分類する分類部、前記分類部による前記1の対象地点における分類結果のパターン数に基づいて、自由度を算出する自由度算出部、としてコンピュータを機能させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記のコンテンツ出力装置を実現することができる。このプログラムは記憶媒体に記憶して使用することができる。
【実施例0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
<システム構成>
[全体構成]
図1は、実施例に係るシステムの構成例を示す図である。本実施例に係るシステム1は、車載装置100と、サーバ装置200とを有する。車載装置100は、車両Veに搭載される。サーバ装置200は、複数の車両Veに搭載された複数の車載装置100と通信する。
【0022】
車載装置100は、基本的に車両Veの搭乗者であるユーザに対して、経路案内処理や情報提供処理などを行う。例えば、車載装置100は、ユーザにより目的地等が入力されると、車両Veの位置情報や指定された目的地に関する情報などを含むアップロード信号S1をサーバ装置200に送信する。サーバ装置200は、地図データを参照して目的地までの経路を算出し、目的地までの経路を示す制御信号S2を車載装置100へ送信する。車載装置100は、受信した制御信号S2に基づいて、音声出力や画像表示によりユーザに対する経路案内を行う。
【0023】
[車載装置]
車載装置100は、車両Veと共に移動し、案内経路に沿って車両Veが走行するように、音声出力及び画像表示による経路案内を行う。本実施例では、車載装置100は、少なくとも、案内が必要な経路上の地点(「案内地点」とも呼ぶ。)など、運転に係る様々な情報を出力する。ここで、案内地点は、例えば車両Veの右左折を伴う交差点、その他、案内経路に沿って車両Veが走行するために重要な通過地点が該当する。車載装置100は、例えば、車両Veから次の案内地点までの距離、当該案内地点での進行方向などの案内地点に関する案内を行う。
【0024】
車載装置100は、例えば車両Veのフロントガラスの上部、又は、ダッシュボード上などに取り付けられる。なお、車載装置100は、車両Veに組み込まれてもよい。
【0025】
図2は、車載装置100の概略構成を示すブロック図である。車載装置100は、主に、通信部111と、記憶部112と、入力部113と、制御部114と、センサ群115と、表示部116と、マイク117と、スピーカ118と、車外カメラ119と、車内カメラ120と、を有する。車載装置100内の各要素は、バスライン110を介して相互に接続されている。
【0026】
通信部111は、制御部114の制御に基づき、サーバ装置200とのデータ通信を行う。通信部111は、例えば、後述する地図データベース(以下、データベースを「DB」と記す。)4を更新するための地図データをサーバ装置200から受信してもよい。
【0027】
記憶部112は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。記憶部112には、車載装置100が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。上述のプログラムは、経路案内を行うためのアプリケーションプログラム、音楽を再生するためのアプリケーションプログラム、音楽以外のコンテンツ(テレビ等)を出力するためのアプリケーションプログラムなどを含んでもよい。また、記憶部112は、制御部114の作業メモリとしても使用される。なお、車載装置100が実行するプログラムは、記憶部112以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0028】
また、記憶部112は、地図DB4を記憶する。地図DB4には、経路案内に必要な種々のデータが記録されている。地図DB4は、例えば、道路網をノードとリンクの組合せにより表した道路データ、及び、目的地、立寄地、又はランドマークの候補となる地物を示す地物情報などを記憶している。地図DB4は、制御部114の制御に基づき、通信部111がサーバ装置200から受信する地図情報に基づき更新されてもよい。
【0029】
入力部113は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ等である。表示部116は、制御部114の制御に基づき表示を行うディスプレイ等である。マイク117は、車両Veの車内の音声、特に運転手の発話などを集音する。スピーカ118は、運転手などに対して、経路案内や情報提供のための音声を出力する。
【0030】
センサ群115は、外界センサ121と、内界センサ122とを含む。外界センサ121は、例えば、ライダ、レーダ、超音波センサ、赤外線センサ、ソナーなどの車両Veの周辺環境を認識するための1又は複数のセンサである。内界センサ122は、車両Veの測位を行うセンサであり、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、ジャイロセンサ、IMU(Inertial Measurement Unit)、車速センサ、又はこれらの組合せである。なお、センサ群115は、制御部114がセンサ群115の出力から車両Veの位置を直接的に又は間接的に(即ち推定処理を行うことによって)導出可能なセンサを有していればよい。
【0031】
車外カメラ119は、車両Veの外部を撮影するカメラである。車外カメラ119は、車両の前方を撮影するフロントカメラのみでもよく、フロントカメラに加えて車両の後方を撮影するリアカメラを含んでもよく、車両Veの全周囲を撮影可能な全方位カメラであってもよい。一方、車内カメラ120は、車両Veの車内の様子を撮影するカメラであり、少なくとも運転席周辺を撮影可能な位置に設けられる。
【0032】
制御部114は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などを含み、車載装置100の全体を制御する。例えば、制御部114は、センサ群115の1又は複数のセンサの出力に基づき、車両Veの位置(進行方向の向きも含む)を推定する。また、制御部114は、入力部113又はマイク117により目的地が指定された場合に、車両Veの位置情報と目的地とをサーバ装置200へ送信する。また、制御部114は、サーバ装置200から目的地までの経路情報を受信し、当該経路情報と推定した車両Veの位置情報と地図DB4とに基づき、経路案内を行う。この場合、制御部114は、案内経路を表示部116に表示させ、案内音声をスピーカ118から出力させる。
【0033】
なお、制御部114が実行する処理は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、制御部114が実行する処理は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、制御部114が本実施例において実行するプログラムを実現してもよい。このように、制御部114は、プロセッサ以外のハードウェアにより実現されてもよい。
【0034】
図2に示す車載装置100の構成は一例であり、図2に示す構成に対して種々の変更がなされてもよい。例えば、地図DB4を記憶部112が記憶する代わりに、制御部114が通信部111を介して経路案内に必要な情報をサーバ装置200から受信してもよい。他の例では、車載装置100は、スピーカ118を備える代わりに、車載装置100とは別体に構成された音声出力部と電気的に又は公知の通信手段によって接続することで、当該音声出力部から音声を出力させてもよい。この場合、音声出力部は、車両Veに備えられたスピーカであってもよい。さらに別の例では、車載装置100は、表示部116を備えなくともよい。この場合、車載装置100は、有線又は無線により、車両Ve等に備えられた表示部、又は、ユーザのスマートフォンなどと電気的に接続することで所定の表示を実行させてもよい。同様に、車載装置100は、センサ群115を備える代わりに、車両Veに備え付けられたセンサが出力する情報を、車両VeからCAN(Controller Area Network)などの通信プロトコルに基づき取得してもよい。
【0035】
[サーバ装置]
サーバ装置200は、車載装置100から受信する目的地等を含むアップロード信号S1に基づき、車両Veが走行すべき案内経路を示す経路情報を生成する。そして、サーバ装置200は、その後に車載装置100が送信するアップロード信号S1が示すユーザの情報要求及び車両Veの走行状態に基づき、ユーザの情報要求に対する情報出力に関する制御信号S2を生成する。そして、サーバ装置200は、生成した制御信号S2を、車載装置100に送信する。
【0036】
図3は、サーバ装置200の概略構成の一例を示す図である。サーバ装置200は、主に、通信部211と、記憶部212と、制御部214とを有する。サーバ装置200内の各要素は、バスライン210を介して相互に接続されている。
【0037】
通信部211は、制御部214の制御に基づき、車載装置100などの外部装置とのデータ通信を行う。記憶部212は、RAM、ROM、不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。記憶部212は、サーバ装置200が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。
【0038】
記憶部212は、地図DB4を含んでいる。地図DB4には、経路案内に必要な種々のデータが記録されている。
【0039】
制御部214は、CPU、GPUなどを含み、サーバ装置200の全体を制御する。また、制御部214は、記憶部212に記憶されたプログラムを実行することで、車載装置100とともに動作し、ユーザに対する経路案内処理や情報提供処理などを実行する。例えば、制御部214は、車載装置100から通信部211を介して受信するアップロード信号S1に基づき、案内経路を示す経路情報、又は、ユーザの情報要求に対する情報出力に関する制御信号S2を生成する。そして、制御部214は、生成した制御信号S2を、通信部211により車載装置100に送信する。
【0040】
以上の構成において、通信部211はデータ取得部の一例である。また、制御部214は、分類部、自由度算出部、推定部、経路提案部及び出力部の一例である。
【0041】
[評価パラメータ]
次に、車両の運転における困難性を評価するためのパラメータ(「評価パラメータ」と呼ぶ。)について説明する。車両で走行する際に困難性の高い地点として、例えば以下のような地点が挙げられる。
・大型車がスムーズに右左折できない交差点・地点
・狭い道で、車両のゆずり合いが発生する地点
・何度も切り返しが必要となる駐車場
【0042】
車両を運転するユーザは、このような困難性の高い交差点や地点の有無については、前もって知っておきたいという要望がある。そこで、本実施例では、サーバ装置200は、車両から取得したデータに基づいて評価パラメータを計算し、得られた評価パラメータの値を地図データに含めて地図DB4に記憶する。
【0043】
具体的に、評価パラメータとして、以下の4つのパラメータが用意される。
(A)余裕度
「余裕度」は、車両が交差点を右左折する際の周辺車両や構造物との間の余裕の度合いを言う。具体的に、余裕度は、車両が交差点を右左折する際に車両が占有するスペースの広さで示される。車両が交差点を曲がる際に使えるスペースが狭いほど余裕度は小さく、使えるスペースが広いほど余裕度は大きい。
(B)侵入度
「侵入度」は、交差点で車両が右左折する際に反対車線に侵入する程度を言う。反対車線に侵入する領域が大きいほど、侵入度が高くなる。
(C)複雑度
「複雑度」は、車両の挙動の複雑度合いを言う。複雑度は、車両の速度変化やハンドル操作の複雑さなどにより示される。
(D)自由度
「自由度」は、車両の走行軌道の選択肢(別言すると類型)の多さを示す。車両が交差点内で取りうる走行軌道の数が多いほど、自由度は高くなる。
【0044】
以下、評価パラメータについて、車両の挙動毎に説明する。なお、以下の例では、サーバ装置200は、車両Veから取得したジャイロデータ及び車速データを用いて、4つのパラメータを計算する。
【0045】
(1)左折
図4(A)は、車両Veが交差点を左折する例を示す。この例では、車両Veが大型トラックであるため、車両Veは交差点内を大きく回って左折することになる。車両Veが左折する際に、車両Veの中心(この大型トラックの例では運転席の中心)が通る軌跡を符号70で示す。図4(B)は、車両Veの中心の軌跡70を取り出して示したものである。大型トラックのように長い車両Veが交差点を左折する場合、車両Veは、いったん右方向に頭を振った後、左折を行う。即ち、図4(B)に示すように、車両Veの軌跡70には、まず、逆ハンドル軌跡70aがあり、その後、左折のための左ハンドル軌跡70bがあり、最後に左方向に切ったハンドルを戻すための戻りハンドル軌跡70cがある。このように、車両Veの左折時の軌跡70は、3つの軌跡70a~70cの合成となる。
【0046】
図5は、上記の左折動作における車両Veのジャイロデータの波形(以下、「ジャイロ波形」とも呼ぶ。)を示す。図5において、縦軸はジャイロ値を示し、横軸は時間を示す。ジャイロデータは、時系列データの一例である。縦軸の上方向を右旋回とし、下方向を左旋回とする。図示のように、ジャイロ波形において、最初の逆ハンドル期間は図4(B)に示す逆ハンドル軌跡70aに対応する。次の左ハンドル期間は、図4(B)に示す左ハンドル軌跡70bに対応する。次の戻りハンドル期間は、図4(B)に示す戻りハンドル軌跡70cに対応する。3つの期間のうち、最初の逆ハンドル期間は、左折のための準備期間である。これに対し、左ハンドル期間は実際の左折挙動の期間であり、戻りハンドル期間は左折挙動からのリカバリー期間である。以下、左ハンドル期間と戻りハンドル期間を「実左折期間」と呼ぶ。実左折期間は、車両Veが左折する際に、左折先の道路における構造物や車両を避けるための行動を行う期間である。
【0047】
左折の場合、サーバ装置200は、評価パラメータとして余裕度、侵入度、複雑度を算出する。
(1-1)余裕度
図6は、車両が左折する際の余裕度の計算方法を示す。車両が左折する際の余裕度は、車両の走行軌跡70における左ハンドル軌跡70bの大きさにより示される。いま、図4(A)に示すように、走行軌跡70のうち、左ハンドル軌跡70bを、左折する交差点の角Oを中心とする円の円弧で近似すると、左折の場合の余裕度A1はその円弧の半径R1で表すことができる。ここで、車両Veの車速を「V」とし、車両のヨー方向の角速度を「ω」とすると、サーバ装置200は、左折の場合の余裕度A1を以下の式で算出する。
A1=R1=V/ω (1)
式(1)からわかるように、左ハンドル軌跡70bが示す円弧の半径R1が大きいほど、余裕度は大きくなる。
【0048】
その代わりに、余裕度を、左ハンドル軌跡70bを円弧とする円の面積を用いて表してもよい。この場合、サーバ装置200は、左折の場合の余裕度A1を以下の式で算出する。
A1=π×R1 (2)
【0049】
(1-2)侵入度
次に、左折の場合の侵入度について説明する。交差点を左折する場合の侵入度は、左折前の侵入度B1と、左折後の侵入度B2に分けられる。左折前の侵入度B1は、左折前の道路における侵入度である。
【0050】
図7は、左折前の侵入度B1の計算方法を示す。左折前の侵入度B1は、左折の走行軌跡70における逆ハンドル軌跡70aに基づいて計算される。図7(A)に示すように、左折前の逆ハンドル軌跡70aにおいて、車両Veの中心が逆ハンドル動作により右方向へ膨らんだ部分70axの幅(以下、「膨らみ幅」とも呼ぶ。)を「h1」とする。また、図7(B)に示すように、左折前の道路における1車線の幅を「L1」とする。この場合、サーバ装置200は、左折前の侵入度B1を以下の式で算出する。
B1=h1-(L1/2) (3)
なお、図7(B)の例では、逆ハンドル軌跡70aは車線の幅L1からはみ出していないので、侵入度B1は負の値となる。
【0051】
ここで、膨らみ幅h1は、図7(A)に示すように、逆ハンドル軌跡70aの膨らみ部分70axを円弧に近似することで計算できる。具体的に、図8に示すように、ある円弧について、円弧の長さ(弧長)を「L」、弦の長さ(弦長)を「d」、円弧の高さ(矢高)を「h」、円の半径を「r」、円弧に対応する中心角を「θ」とする。この場合、ニュートン・ラフソン法を用いると、弧長L、弦長d、矢高h、半径rのうち既知の2つの値を以下の3つの式に入力することにより、残りの2つの値及び中心角θを求めることができる。
L=r×θ
d=2×r×sin(θ/2)
h=r×(1-cos(θ/2))
【0052】
本例では、車速Vと角速度ωを用いて、半径r=V/ωと求められる。また、弧長Lは、逆ハンドル軌跡70aの膨らみ部分70axにおける車両の移動距離として求めることができる。よって、上記の式に半径rと弧長Lを入力し、矢高hと弦長dを求めることができる。こうして、サーバ装置200は、図7(A)に示す膨らみ幅h1を求めることができる。
【0053】
図9は、左折後の侵入度B2の計算方法を示す。前述のように、左ハンドル軌跡70bにおける半径R2は、R2=V/ωで求めることができる。よって、図9に示すように、左折後に走行する道路の一車線の幅を「L2」とすると、サーバ装置200は、左折後の侵入度B2を以下の式で算出する。
B2=R2-L2 (4)
【0054】
(1-3)複雑度
次に、左折の場合の複雑度について説明する。複雑度は、図5に示す実左折期間における車両の挙動に基づいて計算される。一例として、サーバ装置200は、車速Vの変化に基づいて複雑度を計算することができる。この場合、車速Vの変化が小さいほど複雑度は低くなり、車速Vの変化が大きいほど複雑度は高くなる。他の例として、サーバ装置200は、ジャイロ波形の滑らかさに基づいて複雑度を計算することができる。この場合、ジャイロ値の変化が滑らかな場合は複雑度が低くなり、ジャイロ値の急激な変化点が多い場合は複雑度が高くなる。
【0055】
(2)右折
図10(A)は、車両Veが交差点を右折する例を示す。この例では、車両Veは大型トラックとする。車両Veが右折する際に、車両Veの中心が通る走行軌跡を符号80で示す。
【0056】
図10(B)は、上記の右折動作における車両Veのジャイロ波形82を示す。図10(B)において、縦軸はジャイロ値を示し、横軸は時間を示す。縦軸の上方向を右旋回とし、下方向を左旋回とする。図示のように、ジャイロ波形82は、右折前期と右折後期に分けられる。右折前期は、右折のための右ハンドル期間に相当する。右折後期は、車両Veが右折先の道路に侵入する際に、右折先の道路における構造物や、反対車線の車両85を避けるための行動を行う期間である。図10(B)の例では、右折後期において、車両85を避けるためにハンドルを左に切っている。
【0057】
右折の場合、サーバ装置200は、右折先の道路における構造物や反対車線の車両85を避けるための行動を行う期間である右折後期の複雑度を計算する。左折の場合と同様に、サーバ装置200は、車速Vの変化やジャイロ波形の滑らかさなどに基づいて、複雑度を算出することができる。
【0058】
(3)譲り合い
図11(A)は、狭い道路で2つの車両が譲り合う例を示す。この例では、車両Veと車両62が狭い道路60ですれ違うために、車両Veが一時的に退避スペース65に退避し、その間に車両62が車両Veの横を通過する。その後、車両Veは、退避スペース65から道路60に戻り、走行する。
【0059】
図12は、上記の譲り合いにおける車両Veのジャイロ波形63を示す。図12において、縦軸はジャイロ値を示し、横軸は時間を示す。縦軸の上方向を右旋回とし、下方向を左旋回とする。図示のように、ジャイロ波形63は、退避期間と、通過待ち期間と、復帰期間とに分けられる。退避期間は、車両Veが退避スペース65に侵入する期間である。退避期間では、車両Veの運転手は退避スペース65に入るためにハンドルを左に切り(波形63a)、その後ハンドルを戻している(波形63b)。通過待ち期間は、車両Veが退避スペース65に退避した状態で、対向車両62が車両Veの横を通過するのを待っている期間である。通過待ち期間では、運転手はハンドルの状態を維持している(波形63c)。復帰期間は、車両Veが退避スペース65から道路60に復帰する期間である。復帰期間では、運転手はハンドルを右に切り(波形63d)、その後ハンドルを戻している(波形63e)。
【0060】
譲り合いの状況では、サーバ装置200は、評価パラメータとして余裕度、複雑度、自由度を算出する。
(3-1)余裕度
図11(B)に示すように、サーバ装置200は、譲り合いの場合の余裕度A2を、退避スペース65の円弧65aを規定する半径R2を用いて表す。車両の速度を「V」とし、車両のヨー方向の角速度を「ω」とすると、サーバ装置200は、譲り合いの場合の余裕度A2を以下の式で算出する。
A2=R2=V/ω (5)
退避スペース65の円弧65aに対する半径R2が長いほど、余裕度は大きくなる。
【0061】
その代わりに、余裕度A2を、退避スペース65の面積で表してもよい。この場合、サーバ装置200は、左折の場合と同様にニュートン・ラフソン法を用いて退避スペース65の弦長dと矢高hを求め、円弧65aに対応する扇形の面積から、三角形66の面積を減算することにより、退避スペース65の面積を求めることができる。
【0062】
(3-2)複雑度
サーバ装置200は、図12に示す退避期間について複雑度を算出する。前述の左折などの場合と同様に、サーバ装置200は、車速Vの変化やジャイロ波形の滑らかさなどに基づいて、複雑度を算出する。
【0063】
(3-3)自由度
サーバ装置200は、図12に示す退避期間について自由度を算出する。自由度は、車両の走行軌道の選択肢の多さを示す。よって、サーバ装置200は、同一の譲り合い地点について、図12に示すようなジャイロ波形を複数の車両から取得する。そして、サーバ装置200は、複数の車両のジャイロ波形をいくつかのグループに分類する。ジャイロ波形の分類は、例えばジャイロ波形同士の相互相関を計算する方法や、複数のジャイロ波形のクラスタリングにより行うことができる。各ジャイロ波形は、そのジャイロ波形を出力した車両の走行軌道に対応するので、分類により得られたジャイロ波形のグループ数は、その譲り合い地点における走行軌道の選択肢の数に対応する。よって、サーバ装置200は、分類されたジャイロ波形のグループ数を自由度とする。
【0064】
なお、自由度の算出においては、走行軌道に加え、車両の停止や後進、それらの回数及び経過時間などを考慮してグループに分類してもよい。例えば、比較的単純な走行軌道になる場合に、前進のみで良い場合と、後進を行う必要がある場合とを別グループとして分類してもよい。また、比較的複雑な走行軌道になる場合に、所要時間が短い場合と長い場合とを別グループとして分類してもよい。
【0065】
(4)駐車場
図13は、駐車場に車両Veを駐車した場合のジャイロ波形の例を示す。図13において、縦軸はジャイロ値を示し、横軸は時間を示す。縦軸の上方向を右旋回とし、下方向を左旋回とする。この例では、車両Veの駐車に要した駐車期間は、4つの期間P1~P4に分けられる。運転手は、まずハンドルを右に切り(期間P1)、次にハンドルを左に切り(期間P2)、さらにハンドルを右に切り(期間P3)、最後にハンドルを左に切り(期間P4)、駐車を完了している。ジャイロ波形90のうち、期間P1に対応する部分を波形90aとし、期間P2に対応する部分を波形90bとし、期間P3に対応する部分を波形90cとし、期間P4に対応する部分を波形90dとする。
【0066】
駐車場では、サーバ装置200は、評価パラメータとして余裕度、複雑度、自由度を算出する。
(4-1)余裕度
サーバ装置200は、期間P1~P4のそれぞれについて余裕度A31、A32、A33、A34を算出する。前述と同様に、サーバ装置200は、例えば期間P1の余裕度A31を、期間P1における右旋回の円弧を規定する半径R31で表す。車両の速度を「V」とし、車両のヨー方向の角速度を「ω」とすると、期間P1の余裕度A31は、
A31=R31=V/ω (5)
と算出できる。
【0067】
サーバ装置200は、同様に期間P2~P4の余裕度A32~A34を算出する。そして、サーバ装置200は、余裕度A31~A34のうちの最大値を駐車期間全体に対する余裕度と決定する。さらに、サーバ装置200は、余裕度A31~A34のうちの最小値を追加の余裕度として使用してもよい。
【0068】
(4-2)複雑度
サーバ装置200は、図13に示す駐車期間について複雑度を算出する。前述の左折などの場合と同様に、サーバ装置200は、車速Vの変化やジャイロ波形の滑らかさなどに基づいて、複雑度を算出する。
【0069】
(4-3)自由度
サーバ装置200は、図13に示す駐車期間について自由度を算出する。自由度は、車両の走行軌道の選択肢の多さを示す。サーバ装置200は、同一の駐車場について、図12に示すようなジャイロ波形を複数の車両から取得し、複数の車両のジャイロ波形をいくつかのグループに分類する。そして、サーバ装置200は、分類により得られたジャイロ波形のグループ数を自由度とする。
【0070】
[パラメータ算出処理]
次に、サーバ装置200によるパラメータ算出処理について説明する。図14は、パラメータ算出処理のフローチャートである。パラメータ算出処理は、サーバ装置200が、車両Veから取得したデータに基づいて、上述した評価パラメータを算出する処理である。この処理は、図3に示す制御部214が予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0071】
まず、サーバ装置200は、車両Veからデータを取得する(ステップS11)。取得されるデータは、少なくともジャイロデータ及び車速データを含む。次に、サーバ装置200は、上述した交差点、譲り合い地点、駐車場などの各種の対象地点について、評価パラメータを算出する(ステップS12)。次に、サーバ装置200は、算出した評価パラメータを、各対象地点と関連付けてサーバ装置200の記憶部212内の地図DB4に保存する(ステップS13)。そして、処理は終了する。
【0072】
パラメータ算出処理によれば、サーバ装置200の地図DB4に、運転上の困難性の高い対象地点について、評価パラメータを記憶することができる。なお、サーバ装置200は、評価パラメータを算出した全ての交差点や地点について評価パラメータを記憶してもよい。その代わりに、各評価パラメータの値に対して予め閾値を決定しておき、閾値を超えた値を有する評価パラメータのみを記憶してもよい。
【0073】
サーバ装置200は、車両の車種やサイズに関連付けて評価パラメータを地図DB4に記憶してもよい。例えば、ある交差点はトラックなどに対する困難性が高いが、普通乗用車に対する困難性は高くない場合、サーバ装置200は、その交差点について車種ごとに評価パラメータの値を記憶してもよい。
【0074】
同様に、サーバ装置200は、例えば、季節、曜日、時間帯など、車種以外の条件に関連付けて評価パラメータを地図DB4に記憶してもよい。
【0075】
なお、上記のように、本実施例では、評価パラメータの算出において、GPSを用いた車両の軌跡データではなく、ジャイロデータを用いているが、その理由は以下の通りである。まず、GPS衛星が受信できないエリアであってもジャイロデータを取得することはできる。また、ジャイロデータは、車両に搭載されたセンサの出力データであるため、GPS測位位置の位置ずれに相当するような誤差は生じない。また、ジャイロデータを用いることにより、前述のように、車両の旋回半径rを容易に計算で求めることができる。
【0076】
[評価パラメータの利用]
次に、上記の評価パラメータの利用例について説明する。
(1)経路探索
サーバ装置200は、評価パラメータを考慮して経路探索を行うことができる。車両Veのユーザから目的地を指定して経路探索の要求を受信した場合、サーバ装置200は、車両Veの現在位置から目的地までの経路探索を行う。この際、サーバ装置200は、評価パラメータが記憶されている交差点や地点については、評価パラメータの値をコストとして利用し、経路候補毎のコストを計算する。これにより、サーバ装置200は、困難性の高い地点を可能な限り回避した経路をユーザに提案することができる。
【0077】
この際、サーバ装置200は、車両Veの車種やサイズを考慮してもよい。例えば、地図DB4に車種ごとに評価パラメータが記憶されている場合には、経路探索の対象となっている車両の車種を特定し、その車種に対する評価パラメータの値を考慮して経路探索を行えばよい。
【0078】
上記のように車両Veのサイズを考慮する場合、車両のサイズはユーザが手入力することができる。その代わりに、サーバ装置200は、車載装置100から受信したジャイロ波形に基づいて計算した旋回半径Rに基づいて、車両のサイズを推定してもよい。例えば、サーバ装置200は、算出した旋回半径Rを4段階に分類し、旋回半径Rの大きい方から、大型トレーラー、トラック、普通車、軽自動車、などと分類してもよい。また、サーバ装置200の代わりに車載装置100がジャイロ波形に基づいて上記のように車両の判定を行い、判定結果をサーバ装置200へ提供するようにしてもよい。
【0079】
立寄り地や目的地付近で車両Veを駐車する駐車場についても、サーバ装置200は、より困難性の低い(即ち、複雑度が低い、又は、自由度が高い)駐車場を経路に含めることができる。また、目的地周辺に、困難性は低いが目的地まで遠い駐車場と、困難性は高いが目的地に近い駐車場とがあるような場合、サーバ装置200は両者をユーザに提示して選択させることもできる。
【0080】
サーバ装置200は、余裕度を用いて、なるべく余裕のある経路を提案することが可能となる。例えば、譲り合い地点において対向車が大型車両である場合、サーバ装置200は、回避スペースとして軽自動車用の余裕度を有する比較的狭い回避スペースではなく、大型車両用の大きな回避スペースを案内することができる。
【0081】
自由度について、サーバ装置200は、車両のサイズに基づいて自由度を評価することができる。例えば、ある対象地点は、軽自動車については自由度が高いが、大型トラックについては自由度が低くなるなどである。よって、サーバ装置200は、経路案内の際に、車両のサイズに基づいて閾値を設けるか、又は、係数を乗算するなどして自由度を候補経路のコスト計算に用いることができる。
【0082】
経路案内において自由度が低い交差点や地点を通る経路を提案せざるを得ない場合、サーバ装置200は、そのときの条件や制約をユーザに告知するようにしてもよい。例えば、サーバ装置200は、案内経路中のある交差点で切り返しや後退が必要である旨をユーザに告知してもよい。
【0083】
(2)運転行動支援
サーバ装置200は、評価パラメータを用いて、車両Veのユーザの運転行動を支援することができる。例えば、サーバ装置200は、評価パラメータに基づいて、車両Veが進入しようとしている交差点の困難性が高いと判断した場合、その旨をユーザに告知してもよい。その交差点において左折の困難性が高い場合(複雑度が高い、余裕度が小さいなど)、サーバ装置200は、左折の困難性が高い旨をユーザに告知してもよい。また、ある交差点において左折の困難性が高く、切り返しを行わないと曲がりきれないような場合、サーバ装置200は、「左折するには切り返しが必要です。」などのアドバイスを出力してもよい。さらには、切り返しを可能とするために、サーバ装置200は、実際の停止線より手前に一時停止することを提案してもよい。
【0084】
また、車両Veが幅の狭い道路を走行しており、仮に対向車が来た場合に退避スペースに退避して対向車に道を譲る必要がある場合、サーバ装置200は、その旨をユーザに告知してもよい。さらに、退避スペースが複数ある場合には、サーバ装置200は、余裕度に基づいて、どの退避スペースを使用するのが良いかをユーザにアドバイスしてもよい。
【0085】
サーバ装置200は、評価パラメータを用いることにより、ユーザ毎に提供すべき支援や情報をカスタマイズすることができる。即ち、車両やユーザの属性を考慮することにより、個々のユーザに対して最適な支援や情報提供が可能となる。
【0086】
例えば、車両の属性に関して、右左折時の余裕度は、大型車に対しては影響が大きいが、普通自動車には影響は少ない。よって、サーバ装置200は、余裕度が小さい地点については、大型車のみに対してガイダンスを行えばよい。一方で、余裕度の値が同じ地点であっても、山道など、元々の走行難易度が高い地点では、サーバ装置200は、普通自動車に対してもガイダンスやアドバイスを行ってもよい。
【0087】
ユーザの属性に関して、ユーザの運転者としてのスキル(能力、習熟度、経験などを含む)を考慮してもよい。例えば、サーバ装置200は、同じ地点であっても、運転者としてのスキルが高いユーザに対してはガイダンスやアドバイスを行わず、スキルが低いユーザに対してはガイダンスやアドバイスを行ってもよい。
【0088】
サーバ装置200は、車両の周辺環境を考慮してもよい。例えば、同じ地点であっても、晴天で見通しの良い状況ではガイダンスやアドバイスを行わず、悪天候で見通しが悪い環境ではガイダンスやアドバイスを行うようにしてもよい。
【0089】
サーバ装置200は、例えば渋滞時の渋滞回避ルートをユーザに提案する際、評価パラメータを考慮して、複数の選択肢をユーザに提示することができる。例えば、サーバ装置200は、渋滞回避ルートに含まれる地点の困難性を考慮し、ある程度時間を要するが走行しやすい渋滞回避ルートと、時間短縮効果は大きいが走行しにくい渋滞回避ルートとをユーザに提示することができる。
【0090】
駐車場に関しても、サーバ装置200は、評価パラメータを考慮してガイダンスやアドバイスを行うことができる。例えば、ユーザの車両Veが進入した駐車場より困難性が低い駐車場が近隣にある場合、サーバ装置200は、より困難性の低い駐車場を提案してもよい。
【0091】
(3)対象地点の種別の推定
サーバ装置200は、評価パラメータの算出に利用するジャイロ波形に基づいて、その対象地点の種別を推定することができる。例えば、図5図10(B)に示すように、交差点での右左折時には、右左折後に侵入する道路における構造物や車両による制約を受けるため、運転挙動の後半に複雑度が高くなる傾向がある。また、図12(A)に示すように、譲り合いの状況では、運転挙動の前半に複雑度が高くなる傾向がある。さらには、図13に示すように、駐車場では駐車期間の全体において複雑度が高くなる傾向がある。よって、サーバ装置200は、車両Veから取得したジャイロ波形に基づいて、そのジャイロ波形が得られた地点の種別を推定することができる。例えば、サーバ装置200は、ある地点のジャイロ波形において、前半に複雑度が高ければその地点を譲り合い地点と推定し、後半に複雑度が高ければその地点を右左折地点と推定し、全体的に複雑度が高ければその地点を駐車地点と推定することができる。
【0092】
[変形例]
(変形例1)
上記の実施例では、車両Veの経路案内や車両Veのユーザに対するガイダンス、アドバイスなどをサーバ装置200が行っているが、これには限られない。対象地点に関連付けて評価パラメータが記憶された地図DBが車載装置100内に記憶されている場合には、車載装置100の制御部114がその地図DBを参照して、評価パラメータを利用した経路案内、ガイダンス、アドバイスなどを行ってもよい。
【0093】
(変形例2)
上述した実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータである制御部等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0094】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0095】
4 地図DB
100 車載装置
111、211 通信部
112、212 記憶部
113 入力部
114、214 制御部
115 センサ群
116 表示部
200 サーバ装置
212 記憶部
214 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14