(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113794
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】脱硫剤投入装置、脱硫剤の投入方法、及び、フェロニッケルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C21C 7/064 20060101AFI20240816BHJP
C21C 1/02 20060101ALI20240816BHJP
C22C 33/04 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C21C7/064 Z
C21C1/02 101
C22C33/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018983
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森 晶宣
(72)【発明者】
【氏名】吉永 貫志
(72)【発明者】
【氏名】鶴川 和也
【テーマコード(参考)】
4K013
4K014
【Fターム(参考)】
4K013BA05
4K013EA03
4K014AA02
4K014AB03
(57)【要約】
【課題】乾式製錬方法によってフェロニッケルを製造する際等に行われる脱硫剤の投入作業において、作業者の負荷を軽減して、脱硫剤の投入作業を効率良く進行させること。
【解決手段】搬送クレーン4は、搬送容器1を懸吊した状態で水平方向及び鉛直上下方向に搬送することができるクレーンであって、搬送容器1は、底面側に排出管14を有し、排出管14の周囲に、鉛直下方に向かって延びる複数本の棒状の脚部12が垂設されていて、貯留ホッパー2は、天面23に装入口26を有し、装入口26の周囲に、鉛直上方に向いている開口部222を有する複数の脚受け部22が設けられていて、脚受け部22は、脚部12の夫々の先端部分121を夫々の開口部222内に収容したときに、排出管14と装入口26が接合可能となる位置に配置されている、脱硫剤投入装置100とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送クレーンと、
搬送容器と、
貯留ホッパーと、を備える、脱硫剤投入装置であって、
前記搬送クレーンは、前記搬送容器を懸吊した状態で水平方向及び鉛直上下方向に搬送することができるクレーンであって、
前記搬送容器は、底面側に排出管を有し、前記排出管の周囲に、鉛直下方に向かって延びる複数本の棒状の脚部が垂設されていて、
前記貯留ホッパーは、装入口を有し、前記装入口の周囲に、鉛直上方に向いている開口部を有する複数の脚受け部が設けられていて、
前記脚受け部は、前記脚部の夫々の先端部分を夫々の前記開口部内に収容したときに、前記排出管と前記装入口が接合可能となる位置に配置されている、
脱硫剤投入装置。
【請求項2】
前記脚受け部は、鉛直方向に直交する断面の形状が略円形であって前記開口部から底面に向けて前記断面の面積が漸減する略切頭円錐形状である、
請求項1に記載の脱硫剤投入装置。
【請求項3】
前記搬送容器の内部には、刃又は針を天面側に向けた切削穿孔部材が、設置されている、
請求項1又は2に記載の脱硫剤投入装置。
【請求項4】
前記貯留ホッパーの底部に、排出物の単位時間当たりの排出量を調節する排出量調節装置と、脱硫剤投入管と、からなる排出機構が備えられていて、
前記排出量調節装置に複数本の前記脱硫剤投入管が接合されている、
請求項1又は2に記載の脱硫剤投入装置。
【請求項5】
請求項4に記載の脱硫剤投入装置を用いた脱硫剤の投入方法であって、
前記脱硫剤は酸化カルシウムであって、
前記酸化カルシウムを、前記搬送容器から前記貯留ホッパー及び前記排出量調節装置を経由させて、複数本の前記脱硫剤投入管から、脱硫反応槽に投入する、
脱硫剤の投入方法。
【請求項6】
脱硫工程を行う乾式製錬方法によるフェロニッケルの製造方法において、
前記脱硫工程に用いる脱硫剤投入装置として、請求項1又は2に記載の脱硫剤投入装置を用いる、
フェロニッケルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫剤投入装置、脱硫剤の投入方法、及び、フェロニッケルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェロニッケルは、鉄とニッケルを主成分とする合金であり、ステンレス鋼及び特殊鋼の原料として用いられている。フェロニッケルは、一般的に、ニッケル酸化鉱石を原料とし、乾燥工程、焼成及び部分還元工程、還元熔解工程、脱硫工程、及び鋳造工程が行われる乾式製錬方法によって製造されている。
【0003】
上記各工程のうち、脱硫工程においては、粗メタル中に不純物として含まれる硫黄を、機械式若しくは電磁誘導式等の撹拌装置を用いて脱硫剤と共に撹拌除去し、精製されたフェロニッケルを得る。この工程で、粗メタル中の硫黄を硫化カルシウムの形態でスラグに固定するために用いる脱硫剤としては、従来、主にカルシウムカーバイドが用いられている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、近年、カルシウムカーバイドの価格が高騰しており、入手も困難になりつつある。そこで、フェロニッケルの製造現場においては、脱硫工程に用いる脱硫剤として、カルシウムカーバイドに替えて、酸化カルシウムを用いることが模索されている。
【0005】
ところが、酸化カルシウムは、大気中に暴露した状態で放置すると水酸化カルシウムや炭酸カルシウムに変化しやすいため、フェロニッケルの製造現場等においてカルシウムカーバイドに替えて酸化カルシウムを脱硫剤として用いる場合には、脱硫剤の投入のタイミングに合わせて、酸化カルシウムの小袋を都度開封して投入用のホッパー内へ脱硫剤を装入する必要があった。
【0006】
上述の、脱硫剤のホッパーへの装入作業は作業者の手作業であるうえ、繰り返して行う必要があり、作業者にかかる負荷が非常に高い作業であった。又、酸化カルシウムはカルシウムカーバイドと比較して流動性が悪く、ホッパー内で棚吊りが発生することもあり、投入量を所定量に調整することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、フェロニッケルの製造等において行われる脱硫剤の投入作業において、取扱いの難しい酸化カルシウムを脱硫剤として用いる場合においても、作業者による手作業の負担を軽減して作業効率を向上させることができる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、クレーンで搬送する脱硫剤の搬送容器と、搬送容器から脱硫剤を投下する貯留ホッパーとの両方に、これらの接合時の位置合せを容易とするための独自の機構を設けることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的には、以下のものを提供する。
【0010】
(1) 搬送クレーンと、搬送容器と、貯留ホッパーと、を備える、脱硫剤投入装置であって、前記搬送クレーンは、前記搬送容器を懸吊した状態で水平方向及び鉛直上下方向に搬送することができるクレーンであって、前記搬送容器は、底面側に排出管を有し、前記排出管の周囲に、鉛直下方に向かって延びる複数本の棒状の脚部が垂設されていて、前記貯留ホッパーは、装入口を有し、前記装入口の周囲に、鉛直上方に向いている開口部を有する複数の脚受け部が設けられていて、前記脚受け部は、前記脚部の夫々の先端部分を夫々の前記開口部内に収容したときに、前記排出管と前記装入口が接合可能となる位置に配置されている、脱硫剤投入装置。
【0011】
(1)の脱硫剤投入装置によれば、フェロニッケルの製造等において行われる脱硫剤の投入作業において、取扱いの難しい酸化カルシウムを脱硫剤として用いる場合においても、作業者による手作業の負担を軽減して作業効率を向上させることができる。
【0012】
(2) 前記脚受け部は、鉛直方向に直交する断面の形状が略円形であって前記開口部から底面に向けて前記断面の面積が漸減する略切頭円錐形状である、(1)に記載の脱硫剤投入装置。
【0013】
(2)の脱硫剤投入装置によれば、(1)に記載の脱硫剤投入装置において、クレーンで搬送する搬送容器と貯留ホッパーとの位置合せの作業の作業容易性と、位置合せ後の接合の安定性が向上する。これにより上記の脱硫剤の投入作業の作業効率を更に向上させることができる。
【0014】
(3) 前記搬送容器の内部には、刃又は針を天面側に向けた切削穿孔部材が設置されている、(1)又は(2)に記載の脱硫剤投入装置。
【0015】
(3)の脱硫剤投入装置によれば、(1)又は(2)に記載の脱硫剤投入装置において、搬送容器への脱硫剤の装入作業の作業負担を更に減少させて、尚且つ、同作業の安全性も向上させることができる。
【0016】
(4) 前記貯留ホッパーの底部に、排出物の単位時間当たりの排出量を調節する排出量調節装置と、脱硫剤投入管と、からなる排出機構が備えられていて、前記排出量調節装置に複数本の前記脱硫剤投入管が接合されている、(1)又は(2)に記載の脱硫剤投入装置。
【0017】
(4)の脱硫剤投入装置によれば、(1)又は(2)に記載の脱硫剤投入装置において、脱硫剤の凝集を防ぎ、又、脱硫処理に要する所定量の脱硫剤を複数本の脱硫剤投入管から一定の適切な投入速度で投入するようにすることで、脱硫時間の長時間化を防ぎ、より効率的且つ効果的な脱硫処理を行うことができる。
【0018】
(5) (4)に記載の脱硫剤投入装置を用いた脱硫剤の投入方法であって、前記脱硫剤は酸化カルシウムであって、前記酸化カルシウムを、前記搬送容器から前記貯留ホッパー及び前記排出量調節装置を経由させて、複数本の前記脱硫剤投入管から、脱硫反応槽に投入する、脱硫剤の投入方法。
【0019】
(5)の脱硫剤の投入方法によれば、乾式製錬方法によってフェロニッケルを製造する際に行われる脱硫工程において用いる脱硫剤として取り扱いの難しい酸化カルシウムを用いる場合においても、粗フェロニッケル熔湯中への脱硫剤の投入作業において、作業者の負荷を軽減して、投入作業を効率良く進行させることができる。
【0020】
(6) 脱硫工程を行う乾式製錬方法によるフェロニッケルの製造方法において、前記脱硫工程に用いる脱硫剤投入装置として、(1)又は(2)に記載の脱硫剤投入装置を用いる、フェロニッケルの製造方法。
【0021】
(6)の「フェロニッケルの製造方法」によれば、乾式製錬方法によってフェロニッケルを製造する際に、粗フェロニッケル熔湯中への脱硫剤の投入作業における作業者の負荷を軽減して、投入作業を効率良く進行させることができるので、フェロニッケルの製造における経済性及び生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乾式製錬方法によってフェロニッケルを製造する際等に行われる脱硫剤の投入作業において、作業者の負荷を軽減して、脱硫剤の投入作業を効率良く進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の脱硫剤投入装置の全体構成を模式的に示す全体図である。
【
図2】本発明の脱硫剤投入装置を構成する搬送容器の斜視図である。
【
図3】本発明の脱硫剤投入装置を構成する貯留ホッパーの斜視図である。
【
図4】本発明の脱硫剤投入装置における搬送容器と貯留ホッパーとの位置合せの動作の説明に供する図面である。
【
図5】本発明の脱硫剤投入装置を構成する搬送容器に設置される切削穿孔部材の一例を模式的に示す図である。
【
図6】本発明のフェロニッケルの製造方法の流れの一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0025】
<脱硫剤投入装置>
本発明の「脱硫剤投入装置」は、例えば、フェロニッケルを製造する乾式の製錬工程において行われる脱硫工程において、粗フェロニッケル熔湯中に脱硫剤を投入するために用いる装置である。
図1及び
図2は、本発明の好ましい実施形態の一例である、脱硫剤投入装置100の全体構成を模式的に示す図面である。脱硫剤投入装置100は、少なくとも、搬送クレーン4と、搬送容器1と、及び、貯留ホッパー2を含んで構成されている。又、脱硫剤投入装置100は、貯留ホッパー2の底部に排出物の単位時間当たりの排出量を調節する排出量調節装置31と脱硫剤投入管32からなる排出機構3が備えられていることが好ましい。又、脱硫剤投入管32は複数本設けられていることが好ましい。
【0026】
[搬送クレーン]
搬送クレーン4としては、
図1に示すように、フック41及びワイヤー42等の懸吊手段によって、搬送容器1を懸吊した状態で水平方向(XY方向)及び鉛直上下方向(Z方向)に搬送することができるクレーンであれば、特に限定なく公知の搬送用クレーンを用いることができる。尚、通常、貯留ホッパー2は、脱硫剤の投入先となる取鍋(レードル)等の脱硫反応槽5よりも高所に配置する必要があるため、通常、高さ8m~10m程度の架台6上に設置されている。従って、搬送クレーン4には、脱硫剤が装入されている搬送容器1を、少なくともグランドレベルから12m~14m以上程度の高さまで釣り上げてから水平方向に搬送し、その後、所定の位置に降下させることができる搬送機能が求められる。
【0027】
[搬送容器]
脱硫剤投入装置100を構成する搬送容器1は、容器本体11の内部に脱硫剤を保持する容器である。容器本体11は、その内部に脱硫剤を保持した状態で、搬送クレーン4によって搬送可能な構造の容器であればよいが、容器本体11の全体形状は、
図2に示すように、天面側が開放面であって、天面側から底面側に向けて収束する略切頭円錐形状であることが好ましい。
【0028】
搬送容器1の底面側には脱硫剤を貯留ホッパー2に向けて投下するための排出管14が設けられている。排出管14は、容器本体11の底面側の中央部、より具体的には、
図2に示すように、容器本体11の側壁が下向きに収束しきったその先の部分に接続されていることが好ましい。
【0029】
排出管14には、その側面に断面方向に抜き差しすることで脱硫剤の排出を制御する矩形板状のシャッタープレート(図示せず)を設けることが好ましい。このシャッタープレートを設けることにより、必要なタイミングで、これを開放位置に移動させることで、搬送容器1の容器本体11内の脱硫剤を排出することができ、又、必要なタイミングで閉鎖位置に移動させることで、脱硫剤の排出を遮断することができる。
【0030】
又、排出管14は、貯留ホッパー2(
図3参照)の装入口26に対して接続可能に構成されている。排出管14を貯留ホッパー2の装入口26に挿入したときに、両者の間に、ほぼ隙間がない状態とすることができるように、排出管14の管の断面径は、装入口26の内径に対して僅かに小さくなる大きさに形成することが好ましい。排出管14の管の断面径と装入口26の内径とを、このように合わせて最適化することにより、粉塵を飛散させることなく脱硫剤を搬送容器1から貯留ホッパー2に装入することができる。又、このように排出管14の管の断面径と装入口26の内径との関係を最適化することによれば、特に、脱硫剤として酸化カルシウムを採用する場合において、大気中への暴露によって促進される酸化カルシウムの水酸化カルシウムや炭酸カルシウムへの変質を抑制することもできる。
【0031】
一方、排出管14の長さは、特に限定されないが、
図3に示すように、貯留ホッパー2の装入口26が装入管25の天面の開放面として形成されている場合には、装入管25に挿入した状態での安定性を良好に保持するために、排出管14の長さに対する長さ比が0.7~1.0程度であることが好ましい。尚、排出管14と装入口26との接続構造は、上記した構造に限られず、例えば、排出管14、及び装入口26の夫々にフランジを形成し、夫々のフランジ同士を当接させる接続構造とすることもできる。
【0032】
そして、搬送容器1には、排出管14の周囲に、容器本体11から鉛直下方に向かって延びる複数本(一例として
図2に示すように4本)の棒状の脚部12が垂設されている。尚、
図2においては、脚部12が、搬送容器1の容器本体11に直接接合されている接合態様が示されているが、脚部12の容器本体11への接合態様はこのように容器本体11に直接接合する接合態様には限定されない。本発明の「脱硫剤投入装置」においては、例えば、枠状のフレームを、容器本体11の上部領域を囲むように設けて、当該枠状のフレームを介して脚部12を間接的に容器本体11に接合することもできる。
【0033】
又、搬送容器1においては、容器本体11の天面の周縁部に、搬送クレーン4の懸吊手段(フック41或いはワイヤー42等)と係合可能な係合部13が設けられている。尚、係合部13の搬送容器1に対する設置態様は、上記態様には限定されない。例えば、枠状のフレームを、容器本体11の上部領域を囲むように設ける態様とした場合は、当該枠状のフレームを介して係合部13を間接的に容器本体11に接合することができる。或いは、脚部12を介して係合部13を間接的に容器本体11に接合することもできる。
【0034】
ここで、搬送容器1の容器本体11の容量は、例えば、500kg~1t程度の脱硫剤を一度に搬送できるような容量に設定され、且つ、搬送容器(本体部分)内への脱硫剤の装入が、フレキシブルコンテナーを介して行うことができるように構成されていることが好ましい。ここで、フレキシブルコンテナーとは、粉粒体を大量輸送することを目的に、十分な強度を有し、軽量であり、尚且つ、折り畳みができる柔軟性のある材料(例えば、ポリプロピレン製の糸等)を用いて袋状に編み込むことによって造られ、吊り上げるための吊り部と、注入・排出ができる開口部(通常は、紐で縛られることによって閉鎖されている。)を備えた内容量が500kg以上1t以下程度のコンテナである。
【0035】
又、容器本体11の天面には開閉可能な蓋(図視せず)が設けられていることがより好ましい。容器本体11の天面に上記の蓋が設けられていることによって、特に、脱硫剤として酸化カルシウムを採用する場合において、大気中への暴露によって促進される酸化カルシウムの水酸化カルシウムや炭酸カルシウムへの変質を抑制することができる。
【0036】
このようなフレキシブルコンテナーを用いれば、例えば、クレーンのフックやフォークリフトの爪で吊り上げた後に、搬送容器1の容器本体11の上方領域内に移動させた後に、閉鎖状態の開口部を開放することで、一度に、大量の脱硫剤を容器本体11内に装入することが可能である。しかも、外部から脱硫剤を購入した場合は、脱硫剤は上記したような小袋か、或いは、フレキシブルコンテナー内に充填された状態で供給されることが殆どである。従って、フレキシブルコンテナーから直接的に脱硫剤を容器本体11内に装入するようにすれば、装入作業の作業効率を著しく向上させることができる。
【0037】
又、搬送容器1の容器本体11の内部には、上記のフレキシブルコンテナーの外装を突き刺して破る切削穿孔部材15を設けることが好ましい。切削穿孔部材15の具体的構成としては、例えば、
図5に示すように、脱硫剤(CaO)が充填されているフレキシブルコンテナーFCの外装を、当該部分に向けて降下させることによって、当該外装を切削することができる刃、或いは、穿孔することができる針を上向きに並置した部材を挙げることができる。その好ましい一例として、
図5に示すような、先端に切削可能な刃151を有し、上下方向に延在する2枚からなる山形の板状体を、その幅方向の中央において互いに交差する態様で、且つ刃151が上向きとなる姿勢で並置した部材を挙げることができる。例えば、吊り上げられた状態のフレキシブルコンテナーFCにおいて、その開口部を閉鎖状態から開放状態にするためには、吊り荷の下に差し入れることで紐を解く必要があるが、容器本体11の内部に切削穿孔部材15が設けられていれば、フレキシブルコンテナーFCを容器本体11内の切削穿孔部材15上に降ろすことのみによって、フレキシブルコンテナーFCの外装を破ってその内容物としての脱硫剤を搬送容器1の容器本体11の内部に装入することができるので、脱硫剤の投入作業をより効率良く行えるようになる。又、容器本体11の内部に切削穿孔部材15が設けられていれば、作業者が、吊り上げられた状態にあるフレキシブルコンテナーFCの下側に手を入れて行う作業を排除することができるので、フレキシブルコンテナーFCの落下に起因する「挟まれ」の危険性を回避して、脱硫剤の投入作業の安全性を著しく向上させることもできる。尚、脱硫剤を装入した後の空き袋は、そのまま吊り上げるようにして除去すればよい。
【0038】
[貯留ホッパー]
脱硫剤投入装置100を構成する貯留ホッパー2は、搬送容器1から装入される脱硫剤を、ホッパー本体21の天面23に形成されている装入口26から装入してその内部に一時的に貯留し、底面側の排出口24から排出する装置である。ホッパー本体21の基本形状等は従来公知のホッパーと同様な形状であればよいが、天面23から底面側に向けて下向きに収束する略切頭円錐形状であることが好ましい。
【0039】
貯留ホッパー2において、装入口26は、天面23の中央部に設けられていることが好ましい。又、貯留ホッパー2の天面23には、
図3に示す通り、天面23から突出する装入管25が設けられていて、装入管25の突端の開口部が装入口26となっている構成とすることが好ましい。
【0040】
そして、貯留ホッパー2の天面23には、装入口26の周囲に、鉛直上方に向いている開口部を有する複数の脚受け部22が設けられている。脚受け部22の全体形状は、鉛直方向に直交する断面の形状が略円形であって開口部から底面に向けて上記断面の面積が漸減する略切頭円錐形状(ラッパ形状)であることが好ましい(
図4参照)。脚受け部22の全体形状をそのような形状とすることによって、搬送容器1を吊り上げて貯留ホッパー2上に設置するときに、搬送容器1の脚部12を貯留ホッパー2の天面23に設けられている脚受け部22の内側面に沿って脚受け部22の底面221にまで降下させていくことで、搬送容器1を、「所定位置」、即ち、「搬送容器1の各々の脚部12の先端部分121を夫々の脚受け部22の開口部222から脚受け部22の内部に収容したときに、搬送容器1の排出管14と貯留ホッパー2の装入口26が接合可能となる位置」に、容易に、且つ、確実に誘導することができる(
図4(A)、(B)、(C)参照)。上記態様で、脚受け部22が設置されていることで、排出管14を装入口26に接合するときに、各々の位置合わせが行いやすくなり、位置合わせの精度を向上させることができる。又、これにより、上述した通り、排出管14を貯留ホッパー2の装入口26に挿入したときに両者の間にほぼ隙間がない状態とすることができるように、排出管14の管の断面径と装入口26の内径とが、合わせて最適化されている場合においても、両者の接合を容易に行うことができる。
【0041】
各々の脚受け部22の設置位置は、搬送容器1の各々の脚部12の先端部分121を夫々の開口部222から脚受け部22の内部に収容したときに、搬送容器1の排出管14と貯留ホッパー2の装入口26が接合可能となる位置とする。その上で、夫々の脚受け部22が、装入口26を中心とした対称位置に配置されていることが好ましい。又、脚受け部22の設置数は少なくとも2本以上であればよく、上限本数は特に限定されないが、製造コストを抑えながら、位置合せ作業の容易さと位置合せ後の接合部分の安定性を両立させるために4本であることが好ましい。
【0042】
[排出機構]
排出機構3を構成する機器として、貯留ホッパー2の底部に設置することによって排出物の単位時間当たりの排出量を調節する、排出量調節装置31は、具体的には、サークルフィーダーとすることが好ましい。ここで、サークルフィーダーとは、底盤上をフラットな羽根が回転し、粉粒体を円筒外周部に切り出す粉粒体の公知の排出装置である。サークルフィーダーを用いて脱硫剤を定量切り出しすることにより、例えば、シャッタープレートの開閉により、切り出す方法と比較して、排出量の調整が行いやすいうえ、棚吊りも生じ難くなる。これにより、脱硫剤としてカルシウムカーバイドに比べて流動性の劣る酸化カルシウムを採用した場合であっても、棚吊りの発生を抑制しながら、酸化カルシウムの投入量を所定量に調整して、良好な脱硫処理を維持することができる。
【0043】
排出量調節装置(サークルフィーダー)31に接合される脱硫剤投入管32は、複数本以上設けられていることが好ましい。脱硫工程を進行させる、脱硫反応槽(レードル)5等の内部に、1箇所から多くの脱硫剤を投入すると、脱硫剤が槽内で凝集してダマになりやすくなる。例えば、脱硫剤投入管32を2本以上併設することによって、脱硫剤の凝集を防ぐことができる。又、脱硫処理に要する所定量の脱硫剤を投入する脱硫剤投入管32を2本以上併設し、各脱硫剤投入管32から18kg/min以下の投入速度で均等量の脱硫剤を投入するようにすることで、脱硫時間の長時間化を防ぎ、より効率的且つ効果的な脱硫処理を行うことができる。
【0044】
<脱硫剤の投入方法>
上記において詳細を説明した脱硫剤投入装置100を用いることによって、本発明の脱硫剤の投入方法(以下、単に「脱硫剤の投入方法」とも言う)を行うことができる。この「脱硫剤の投入方法」によれば、例えば、乾式製錬方法によってフェロニッケルを製造する際に行われる脱硫工程において用いる脱硫剤として、取り扱いの難しい酸化カルシウムを用いる場合においても、脱硫剤の投入作業を効率良く進行させることができる。但し、「脱硫剤の投入方法」の実施態様は、フェロニッケルの製造現場での実施に限定されるものではない。
【0045】
「脱硫剤の投入方法」の実施においては、先ず、搬送容器1の容器本体11の内部に脱硫剤を装入した状態で、搬送クレーン4で、高所に設置されている貯留ホッパー2の上方にまで搬送容器1を搬送し、その後に、搬送容器1の脚部12を貯留ホッパー2の天面23に設けられている脚受け部22の内側面に沿って降下させていくことで、搬送容器1を、「所定位置」に誘導する(
図4(A)、(B)、(C)参照)。その状態においては、搬送容器1の排出管14と貯留ホッパー2の装入口26を容易に且つ確実に接合させることができる。更に、貯留ホッパー2から、排出量調節装置(サークルフィーダー)31を経由させて脱硫剤投入管32から、脱硫剤を一定の速度で排出することにより、酸化カルシウム等の脱硫剤の投入量を所定量に調整して、良好な脱硫処理を維持することができる。
【0046】
<フェロニッケルの製造方法>
フェロニッケルの製造は、ニッケル酸化鉱石を、熔融炉で還元して粗フェロニッケル熔湯を得る還元熔解工程S1、還元熔解工程S1で得た粗フェロニッケル熔湯について脱硫処理を行う脱硫工程S2と、含んで構成される乾式製錬方法として広く行われている(
図6参照)。本発明の「フェロニッケルの製造方法」は、この乾式製錬方法における脱硫工程S2において、上記において詳細を説明した本発明の「脱硫剤投入装置」を用いることを特徴とする製造方法である。尚、本発明の「フェロニッケルの製造方法」においても、従来の乾式製錬方法による場合と同様、原料のニッケル酸化鉱石について、還元熔解工程S1への投入前に、予め、乾燥工程や焼成及び部分還元工程等の予備的処理(図示せず)が行われることが好ましい。
【0047】
[還元熔解工程]
還元熔解工程S1は、ニッケル酸化鉱石を、電気炉等の熔融炉で還元して、粗フェロニッケル熔湯(メタル)とスラグとを生成させる工程である。還元熔解工程S1での処理を経て生成された粗フェロニッケル熔湯(メタル)は、電気炉等の熔融炉の出銑口から出銑され、次工程である脱硫工程S2を行うために、脱硫反応槽(レードル)5等の容器に装入される。一方、粗フェロニッケル熔湯とは別に産出されるスラグは、鉄鋼の焼結工程における成分調整用マグネシア熔剤や、コンクリート用細骨材、土木工事用資材等として利用される。
【0048】
[脱硫工程]
脱硫工程S2においては、還元熔解工程S1での処理を経て生成された粗フェロニッケル熔湯中に不純物として含まれる硫黄を、機械式若しくは電磁誘導式等の撹拌装置を用いて脱硫剤と共に撹拌除去する脱硫処理が行われる。脱硫工程S2では、先ず、必要に応じて、脱硫反応槽(レードル)5に貯留されている粗フェロニッケル熔湯の昇温を目的とした酸素等の吹き込み(酸素吹錬)が行われる。そして、その後、脱硫反応槽(レードル)5の中に脱硫剤を投入し、撹拌することにより、粗フェロニッケル熔湯中の硫黄を、硫化カルシウム(CaS)としてスラグ中に固定して分離除去する。本発明の「フェロニッケルの製造方法」においては、脱硫反応槽(レードル)5の中への脱硫剤の投入を、本発明の「脱硫剤投入装置」によって行う。
【0049】
上述した通り、従来のフェロニッケル製錬においては、脱硫工程において、粗フェロニッケル熔湯中の硫黄を、硫化カルシウムとしてスラグ中に固定するための脱硫剤として、カルシウムカーバイドが広く用いられてきた。これに対して、本発明の「フェロニッケルの製造方法」においては、脱硫剤として、これに替えて、酸化カルシウム(CaO)を好適に用いることができる。但し、本発明の「フェロニッケルの製造方法」において用いる脱硫剤は、酸化カルシウムに限定はされず、酸化カルシウム以外の脱硫剤を適宜選択して用いることもできる。
【0050】
尚、本発明の「フェロニッケルの製造方法」においては、独自の処理として「ケイ素品位調整処理st1」を、脱硫工程S2に先行して行うこともできる。これにより、脱硫工程S2で用いる脱硫剤として、酸化カルシウムを用いた場合において、フェロニッケルの品質低下の原因となる粗フェロニッケル熔湯の温度低下を更に効果的に回避することができるようなる。
【0051】
本発明の「フェロニッケルの製造方法」においては、脱硫剤は、粗フェロニッケル熔湯が貯留されている脱硫反応槽(レードル)5の上方に配置されている脱硫剤投入装置100の複数の脱硫剤投入管32から投入することができる。この場合、脱硫剤の投入速度は、脱硫剤投入管32、1本当たりについて、18kg/min以下の投入速度で、均等量の脱硫剤を投入することが好ましい。このような態様で脱硫剤を投入することにより、脱硫時間の長時間化を防ぎ、より効率的且つ効果的な脱硫処理を行うことができる。
【0052】
[ケイ素品位調整処理]
ケイ素品位調整処理st1は、脱硫工程S2に投入される粗フェロニッケル熔湯について、「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」が、所定管理値以上に維持されるように、粗フェロニッケル熔湯中におけるケイ素(Si)の含有量を調整する処理である。本明細書における「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」とは、脱硫工程S2に投入される粗フェロニッケル熔湯中におけるケイ素(Si)含有量の、酸化カルシウム(CaO)の含有量に対する比率である。又、「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」は、実質的には、粗フェロニッケル熔湯中におけるケイ素含有量と脱硫剤として投入される酸化カルシウム(CaO)投入量の比であるため、酸化カルシウム(CaO)の投入量を所与の値として、これに対して、上記のケイ素含有量を適切に調整することで、この「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」を最適値に維持することができる。
【0053】
酸化カルシウムを使用した脱硫では、酸化カルシウムの投入量に応じて熔湯から熱量が奪われることにより熔湯の温度低下が発生し得るが、本発明の「フェロニッケルの製造方法」においては、「ケイ素品位調整処理st1」を必須の処理とすることにより、粗フェロニッケル熔湯中のケイ素含有量を所定量以上に調整することにより、「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」を所定値以上に維持し、粗フェロニッケル熔湯の温度低下を回避することができる。
【0054】
「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」について、一例として、酸化カルシウムを1g投入した場合には、脱硫反応による吸熱量と脱硅反応による発熱量との関係から、以下の(式1)に示すように、脱硫反応槽(レードル)に出銑された粗フェロニッケル熔湯中のケイ素含有量を0.16g以上(粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比について、質量比で0.16以上)となるように調整すれば、脱硫反応に起因する温度低下を回避することができる。
(式1):1[g]×4.71[kJ/g]/28.9[kJ/g]=0.16[g]
【0055】
従って、例えば、800kgの酸化カルシウムを脱硫剤として使用して本発明の「フェロニッケルの製造方法」の脱硫工程S2を行う場合であれば、「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」が、質量比で0.16以上となるように、即ち、粗フェロニッケル熔湯中のケイ素含有量が130kg以上となるようにケイ素含有量を調整すればよい。これにより、粗フェロニッケル熔湯の温度低下を回避することができる。
【0056】
尚、ケイ素品位調整処理st1を行うための具体的手段、即ち、「粗フェロニッケル熔湯中Si/CaO比」が、所定管理値以上に維持されるように、粗フェロニッケル熔湯中におけるケイ素(Si)の含有量を調整する手段は、特定の技術的手段に限定されない。例えば、還元熔融炉中の還元反応が完了した粗フェロニッケル熔湯、或いは、還元熔融炉から出銑された粗フェロニッケル熔湯から得た試験片に蛍光X線分析を施し、得たケイ素品位に基づいて、ケイ素品位が所定値以下である場合には、例えば、脱硫反応槽(レードル)中にフェロケイ素等のケイ素を含む副原料を追加投入する方法等によって、ケイ素含有量を調整すればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 搬送容器
11 容器本体
12 脚部
121 (脚部の)先端部分
13 係合部
14 排出管
15 切削穿孔部材
151 刃
2 貯留ホッパー
21 ホッパー本体
22 脚受け部
221 (脚受け部の)底面
222 (脚受け部の)開口部
23 天面
24 排出口
25 装入管
26 装入口
3 排出機構
31 排出量調節装置(サークルフィーダー)
32 脱硫剤投入管
4 搬送クレーン
41 フック
42 ワイヤー
5 脱硫反応槽(レードル)
6 架台
100 脱硫剤投入装置
S1 還元熔解工程
S2 脱硫工程
st1 ケイ素品位調整処理