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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113795
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20240816BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20240816BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E04G21/12 105Z
E04B1/41 503Z
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018984
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上山 俊一
(72)【発明者】
【氏名】草壁 史
【テーマコード(参考)】
2E125
2E174
【Fターム(参考)】
2E125AA42
2E125BA17
2E125EB12
2E174AA01
2E174DA31
2E174DA63
2E174DA65
(57)【要約】
【課題】母材が破損することを防止しつつ、アンカーボルトを埋設することが可能な、治具を提供する。
【解決手段】本開示に係る治具は、アンカーボルトを埋設する際に用いる治具であって、アンカーボルトの基端部に固定され、当該基端部からアンカーボルトの軸線に沿ってアンカーボルトの先端から離れる側へと延び、第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか一方が形成される固定部と、第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか他方が形成され、軸線周りに回転することにより、第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか他方が第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか一方に螺合しつつ、軸線に沿って移動する移動部と、を備え、移動部が、軸線周りに回転しつつ、軸線に沿って先端側へと移動することにより、アンカーボルトのスリーブまたはスリーブ内のコーンを先端側へと移動させ、スリーブの先端部を拡径させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトを埋設する際に用いる治具であって、
前記アンカーボルトの基端部に固定され、当該基端部から前記アンカーボルトの軸線に沿って前記アンカーボルトの先端から離れる側へと延び、第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか一方が形成される固定部と、
前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか他方が形成され、前記軸線周りに回転することにより、前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか他方が前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか一方に螺合しつつ、前記軸線に沿って移動する移動部と、を備え、
前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記アンカーボルトのスリーブまたは前記スリーブ内のコーンを先端側へと移動させ、前記スリーブの先端部を拡径させることを特徴とする、治具。
【請求項2】
前記移動部と前記スリーブの間に介在する第1介在部をさらに備え、
前記第1介在部は、第1軸孔を有し、前記第1軸孔に前記固定部が挿入された状態で、前記軸線に沿って移動可能であり、
前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記第1介在部の径方向における縁部の先端が、前記スリーブの径方向における縁部の基端を押して、前記スリーブを先端側へと移動させ、前記スリーブの先端部を拡径させる、請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記アンカーボルトの基端部には、第2雄螺子が形成され、
前記固定部には、第2雌螺子が形成され、
前記第2雄螺子が前記第2雌螺子に螺合することにより、前記固定部が前記アンカーボルトの基端部に固定される、請求項2に記載の治具。
【請求項4】
前記移動部と前記コーンの間に介在する第2介在部をさらに備え、
前記固定部は、第2軸孔を有し、
前記第2介在部は、前記第2軸孔を貫通して前記軸線に沿って延び、
前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記第2介在部の先端が、前記コーンの基端を押して、前記コーンを先端側へと移動させ、前記スリーブを拡径させる、請求項1に記載の治具。
【請求項5】
前記スリーブの基端部には、第3雌螺子が形成され、
前記固定部には、第3雄螺子が形成され、
前記第3雄螺子が前記第3雌螺子に螺合することにより、前記固定部が前記アンカーボルトの基端部に固定される、請求項4に記載の治具。
【請求項6】
前記固定部に前記第1雄螺子が形成され、前記移動部に前記第1雌螺子が形成される、請求項1に記載の治具。
【請求項7】
前記移動部から径方向の外側へと延びるハンドルをさらに備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治具に関し、特に、アンカーボルトを埋設する際に用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1で提案されているようなアンカーボルトが知られている。特許文献1では、母材に穿設された取り付け孔に対して、アンカーボルトを挿入し、そのあとで、アンカーボルトにハンマーなどで打撃を与えることにより、当該アンカーボルトのスリーブを取り付け孔に押し込むとともに、当該スリーブの先端部を拡径させることで、母材にアンカーボルトを埋設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-132901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、アンカーボルトにハンマーなどで打撃を与えた際に、母材が破損してしまう場合があった。
【0005】
そこで、本開示は、母材が破損することを防止しつつ、アンカーボルトを埋設することが可能な、治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る治具は、アンカーボルトを埋設する際に用いる治具であって、前記アンカーボルトの基端部に固定され、当該基端部から前記アンカーボルトの軸線に沿って前記アンカーボルトの先端から離れる側へと延び、第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか一方が形成される固定部と、前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか他方が形成され、前記軸線周りに回転することにより、前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか他方が前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか一方に螺合しつつ、前記軸線に沿って移動する移動部と、を備え、前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記アンカーボルトのスリーブまたは前記スリーブ内のコーンを先端側へと移動させ、前記スリーブの先端部を拡径させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、母材が破損することを防止しつつ、アンカーボルトを埋設することが可能な、治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1態様に係る治具を示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が平面図である。
図2】本開示の第1態様に係る治具の図1(B)に示すII-II断面図である。
図3】本開示の第1態様に係る治具を用いてアンカーボルトを埋設する様子を示す概略図であり、(A)がスリーブの先端部を拡径させる前の図であり、(B)がスリーブの先端部を拡径させた後の図である。
図4】本開示の第2態様に係る治具を示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が平面図である。
図5】本開示の第2態様に係る治具の図4(B)に示すV-V断面図である。
図6】本開示の第2態様に係る治具を用いてアンカーボルトを埋設する様子を示す概略図であり、(A)がスリーブの先端部を拡径させる前の図であり、(B)がスリーブの先端部を拡径させた後の図である。
図7】本開示の第1態様に係る治具の変形例を説明するための概略図である。
図8】本開示の第2態様に係る治具の変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1態様に係る治具10A
1.1.構造について
図1ないし3に基づき、本開示の第1態様に係る治具10Aについて説明する。図1は、当該治具10Aを示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が平面図である。図2は、当該治具10Aの図1(B)に示すII-II断面図である。図3は、当該治具10Aを用いてアンカーボルト200Aを埋設する様子を示す概略図であり、(A)がスリーブ210の先端部218を拡径させる前の図であり、(B)がスリーブ210の先端部218を拡径させた後の図である。
【0010】
図1、2に示すように、本態様に係る治具10Aは、アンカーボルト200A(図3参照)の基端部204に固定される固定部20を備える。図3に示すように、固定部20は、アンカーボルト200Aの基端部204から、当該アンカーボルト200Aおよび治具10Aの軸線AXに沿って当該アンカーボルト200Aの先端から離れる側へと延びる。固定部20には、その先端面から基端側へと軸線AXに沿って延びる凹部22を有する。当該凹部22の側壁には、雌螺子24(第2雌螺子)が形成される。当該雌螺子24が、アンカーボルト200Aの基端部204に形成された雄螺子208(第2雄螺子)に螺合することにより、固定部20が、アンカーボルト200Aの基端部204に固定される。固定部20の外面には、雄螺子26(第1雄螺子)が形成される。
【0011】
治具10Aは、軸線AXに沿って移動する移動部30をさらに備える。移動部30は、円筒状であり、軸孔32を有する。当該軸孔32の側壁には、雌螺子34(第1雌螺子)が形成される。移動部30は、軸線AX周りに回転することにより、当該雌螺子34が固定部20の雄螺子26に螺合しつつ、軸線AXに沿って移動する。
【0012】
移動部30には、その側面から軸線AX側へと径方向に延びる2つの凹部36、36が形成される。凹部36、36は、それぞれ、軸線AXに沿って見たとき、同一直線上に形成される。凹部36、36の内壁には、それぞれ、雌螺子が形成される。
【0013】
治具10Aは、移動部30から径方向の外側へと延びる2つのハンドル38、38をさらに備える。ハンドル38、38は、それぞれ、棒状である。ハンドル38、38それぞれの一方側の端部の外面には、雄螺子が形成される。当該雄螺子が、移動部30の凹部36の内壁に形成された雌螺子に螺合することにより、ハンドル38、38が、それぞれ、移動部30に固定される。
【0014】
治具10Aは、移動部30とアンカーボルト200Aのスリーブ210との間に介在する介在部40(第1介在部)をさらに備える。当該介在部40は、軸孔42(第1軸孔)を有する。当該軸孔42に対して、固定部20の先端部から基端部の一部までが挿入される。当該介在部40は、その基端部分の直径が、その先端部分の直径よりも長い。当該介在部40の基端部分の基端面に、移動部30の先端面が当接または対向する。
【0015】
1.2.埋設方法について
図3に基づき、上記した治具10Aを用いてアンカーボルト200Aを埋設する方法について説明する。アンカーボルト200Aは、そのスリーブ210の基端面がハンマーなどで殴打されることにより、当該スリーブ210が取り付け穴Hに押し込まれ、アンカーボルト200Aの軸体202のテーパー状の先端部がスリーブ210の先端部218を拡径させる公知の構造である。
【0016】
まず、母材BM(例えば、コンクリートなど)に穿設された取り付け穴Hに、アンカーボルト200Aを挿入する。なお、アンカーボルト200Aは、工場出荷時に完成された状態であっても良いし、ユーザーが現場で軸体202にスリーブ210を連結して完成させても良い。本態様では、取り付け穴Hの長さは、軸体202の先端から、当該軸体202の基端部204に形成された雄螺子208の先端までの長さと概ね同じである。したがって、上記のようにアンカーボルト200Aを取り付け穴Hに挿入すると、軸体202の基端部204に形成された雄螺子208の全部が、母材BMの外部に露出した状態となる。なお、このような場合に限定されず、取り付け穴Hの長さは、軸体202の先端から、当該軸体202の基端部204に形成された雄螺子208の先端までの長さと異なっていても良い。すなわち、取り付け穴Hの長さが、軸体202の先端から、当該軸体202の基端部204に形成された雄螺子208の先端までの長さより長い場合であっても或いは短い場合であっても、治具10Aを用いて問題なくアンカーボルト200Aの埋設を行うことができる。
【0017】
次に、アンカーボルト200Aの基端部204(具体的には、当該アンカーボルト200Aの軸体202の基端部204)に、治具10Aの固定部20を固定する。具体的には、当該固定部20の先端面の凹部22に形成された雌螺子24を、アンカーボルト200Aの基端部204に形成された雄螺子208に螺合することにより、アンカーボルト200Aの基端部204に、治具10Aの固定部20を固定する。
【0018】
上記のように、治具10Aの固定部20を、アンカーボルト200Aの基端部204に固定すると、当該固定部20の径方向における縁部の先端、および介在部40の径方向における縁部の先端が、それぞれ、スリーブ210の径方向における縁部の基端に当接した状態になる。このとき、軸線AX方向において、介在部40の基端面は、固定部20の雄螺子26の中央部分と同じ位置になる。
【0019】
次に、図3(A)に示すように、移動部30を、例えば、ハンドル38、38を把持して人力により軸線AX周りに比較的ゆっくり右回転させる。これにより、移動部30の雌螺子34が固定部20の雄螺子26に螺合しつつ、移動部30が軸線AXに沿って先端側へと移動する。この移動部30の移動により、当該移動部30の先端が、介在部40の基端を押して、介在部40を先端側へと移動させる。また、この介在部40の移動により、介在部40の径方向における縁部の先端が、スリーブ210の径方向における縁部の基端を押して、当該スリーブ210を先端側へと移動させ、図3(B)に示すように、当該スリーブ210の先端部218を拡径させる。
【0020】
1.3.効果について
上記のように、治具10Aでは、移動部30が、軸線AX周りに回転しつつ、当該軸線AXに沿って先端側へと移動することにより、アンカーボルト200Aのスリーブ210を先端側へと移動させ、スリーブ210の先端部218を拡径させる。したがって、治具10Aを用いることにより、スリーブ210の先端部218を拡径させる際に、従来のように、アンカーボルト200Aに対してハンマーなどで打撃を与える必要がない。上記の通りであるため、治具10Aを用いることにより、母材BMが破損することを防止しつつ、アンカーボルト200Aを埋設することが可能となる。
【0021】
また、本態様では、上記のように、介在部40の径方向における縁部の先端が、スリーブ210の径方向における縁部の基端を押して、当該スリーブ210を先端側へと移動させることができる。したがって、本態様に係る治具10Aは、スリーブ210を先端側へと移動させることにより当該スリーブ210の先端部218を拡径させる、公知の構造であるアンカーボルト200Aを埋設する際に用いることができる。
【0022】
また、本態様では、上記のように、公知の構造であるアンカーボルト200Aがもともと有する雄螺子208を活用して、当該アンカーボルト200Aに対して固定部20を固定することができる。したがって、アンカーボルト200Aに対して固定部20を容易に固定することができ、また、固定部20を簡単な構造にすることができる。
【0023】
また、本態様では、上記のように、固定部20に雄螺子26(第1雄螺子)が形成され、移動部30に雌螺子34(第1雌螺子)が形成される。これにより、固定部20に第1雌螺子が形成され、移動部30に第1雄螺子が形成される場合と比較して、治具10Aを簡単な構造にすることができる。
【0024】
また、本態様では、上記のように、ハンドル38を把持して人力により移動部30を軸線AX周りに回転させることができるので、アンカーボルト200Aの埋設作業を容易に行うことができる。
【0025】
2.第2態様に係る治具10B
2.1.構造について
図4ないし6に基づき、本開示の第2態様に係る治具10Bについて説明する。図4は、当該治具10Bを示す図であり、(A)が正面図であり、(B)が平面図である。図5は、当該治具10Bの図4(B)に示すV-V断面図である。図6は、当該治具10Bを用いてアンカーボルト200Bを埋設する様子を示す概略図であり、(A)がスリーブ260の先端部268を拡径させる前の図であり、(B)がスリーブ260の先端部268を拡径させた後の図である。
【0026】
図4、5に示すように、本態様に係る治具10Bは、アンカーボルト200B(図6参照)の基端部254に固定される固定部70を備える。図3に示すように、固定部70は、アンカーボルト200Bの基端部254から、当該アンカーボルト200Bおよび治具10Bの軸線AXに沿って当該アンカーボルト200Bの先端から離れる側へと延びる。固定部70の先端部の外面には、雄螺子74(第3雄螺子)が形成される。当該雄螺子74が、アンカーボルト200Bの基端部254(具体的には、スリーブ260の軸孔の基端部)に形成された雌螺子258(第3雌螺子)に螺合することにより、固定部70が、アンカーボルト200Bの基端部254に固定される。固定部70は、軸孔78(第2軸孔)を有する。固定部70の基端部の外面には、雄螺子76(第1雄螺子)が形成される。
【0027】
治具10Bは、軸線AXに沿って移動する移動部80をさらに備える。移動部80は、円柱状に形成された基端部と、軸線AXに沿って見たとき、当該基端部の中央部から先端に向けて延びる円筒状の先端部と、を有する。移動部80には、当該先端部の先端面から当該先端部を貫通し、当該基端部の軸線AX方向における中央部まで延びる凹部82を有する。当該凹部82の側壁には、雌螺子84(第1雌螺子)が形成される。移動部80は、軸線AX周りに回転することにより、当該雌螺子84が固定部70の雄螺子76に螺合しつつ、軸線AXに沿って移動する。
【0028】
移動部80には、その側面から軸線AX側へと径方向に延びる2つの凹部86、86が形成される。凹部86、86は、それぞれ、軸線AXに沿って見たとき、同一直線上に形成される。凹部86、86の内壁には、それぞれ、雌螺子が形成される。
【0029】
治具10Bは、移動部80から径方向の外側へと延びる2つのハンドル88、88をさらに備える。ハンドル88、88は、それぞれ、棒状である。ハンドル88、88それぞれの一方側の端部の外面には、雄螺子が形成される。当該雄螺子が、移動部80の凹部86の内壁に形成された雌螺子に螺合することにより、ハンドル88、88が、それぞれ、移動部80に固定される。
【0030】
治具10Bは、移動部80とアンカーボルト200Bの後述するコーン270との間に介在する介在部90(第2介在部)をさらに備える。当該介在部90は、頭部92と、当該頭部92から延びる軸部94と、を有する。頭部92は、移動部80の凹部82内であって、固定部70の基端側に配置される。軸部94は、固定部70の軸孔78を貫通して軸線AXに沿って延びる。すなわち、軸部94は、固定部70の軸孔78よりも長く、頭部92の先端面が固定部70の基端面に当接すると、軸部94の先端部が、固定部70の先端面から突き出した状態になる。
【0031】
2.2.埋設方法について
図6に基づき、上記した治具10Bを用いてアンカーボルト200Bを埋設する方法について説明する。アンカーボルト200Bは、そのスリーブ260内のコーン270が先端側へと押されることにより、当該コーン270がスリーブ210の先端部218を拡径させる公知の構造である。
【0032】
まず、母材BMに穿設された取り付け穴Hに、アンカーボルト200Bを挿入する。なお、アンカーボルト200Bは、工場出荷時に完成された状態であっても良いし、ユーザーが現場でスリーブ260にコーン270を挿入して完成させても良い。本態様では、取り付け穴Hの長さは、アンカーボルト200Bの長さと概ね同じである。(正確には、取り付け穴Hの長さが、アンカーボルト200Bの長さよりも少しだけ長い。)したがって、上記のようにアンカーボルト200Bを取り付け穴Hに挿入すると、スリーブ260の基端が、取り付け穴Hの表面付近に位置した状態となる。なお、このような場合に限定されず、取り付け穴Hの長さは、アンカーボルト200Bの長さと異なっていても良い。すなわち、取り付け穴Hの長さが、アンカーボルト200Bの長さより長い場合であっても或いは短い場合であっても、治具10Bを用いて問題なくアンカーボルト200Bの埋設を行うことができる。
【0033】
次に、アンカーボルト200Bの基端部254に、治具10Bの固定部70を固定する。具体的には、当該固定部70の先端部に形成された雄螺子74を、スリーブ260の軸孔の基端部に形成された雌螺子258に螺合することにより、アンカーボルト200Bの基端部254に、治具10Bの固定部70を固定する。
【0034】
上記のように、治具10Bの固定部70を、アンカーボルト200Bの基端部254に固定すると、介在部90の軸部94の先端がコーン270の基端に当接する。このとき、当該軸部94の基端部が、固定部70の基端面から突き出した状態になり、したがって、介在部90の頭部92が、当該固定部70の基端面から離間した状態になる。
【0035】
次に、図6(A)に示すように、移動部80を、例えば、ハンドル88、88を把持して人力により軸線AX周りに比較的ゆっくり右回転させる。これにより、移動部80の雌螺子84が固定部70の雄螺子76に螺合しつつ、移動部80が軸線AXに沿って先端側へと移動する。この移動部80の移動により、当該移動部80の凹部82のうち軸線AXの基端側の壁面が、介在部90の頭部92の基端を押して、当該介在部90を当該頭部92が固定部70に当接するまで先端側へと移動させ、図6(B)に示すように、スリーブ260の先端部268を拡径させる。
【0036】
2.3.効果について
上記のように、治具10Bでは、移動部80が、軸線AX周りに回転しつつ、当該軸線AXに沿って先端側へと移動することにより、アンカーボルト200Bのコーン270を先端側へと移動させ、スリーブ260の先端部268を拡径させる。したがって、治具10Bを用いることにより、スリーブ260の先端部268を拡径させる際に、従来のように、アンカーボルト200Bに対してハンマーなどで打撃を与える必要がない。上記の通りであるため、治具10Bを用いることにより、母材BMが破損することを防止しつつ、アンカーボルト200Bを埋設することが可能となる。
【0037】
また、本態様では、上記のように、介在部90の軸部94の先端がアンカーボルト200Bのコーン270の基端を押して、当該コーン270を先端側へと移動させることができる。したがって、本態様に係る治具10Bは、コーン270を先端側へと移動させることによりスリーブ260の先端部268を拡径させる、公知の構造であるアンカーボルト200Bを埋設する際に用いることができる。
【0038】
また、本態様では、上記のように、公知の構造であるアンカーボルト200Bがもともと有する雌螺子258を活用して、当該アンカーボルト200Bに対して固定部70を固定することができる。したがって、アンカーボルト200Bに対して固定部70を容易に固定することができ、また、固定部70を簡単な構造にすることができる。
【0039】
また、本態様では、上記のように、固定部70に雄螺子76(第1雄螺子)が形成され、移動部80に雌螺子84(第1雌螺子)が形成される。これにより、固定部70に第1雌螺子が形成され、移動部80に第1雄螺子が形成される場合と比較して、治具10Bを簡単な構造にすることができる。
【0040】
また、本態様では、上記のように、ハンドル88を把持して人力により移動部80を軸線AX周りに回転させることができるので、アンカーボルト200Bの埋設作業を容易に行うことができる。
【0041】
3.変形例
上記した説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の態様が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0042】
図7に基づき、上記した第1態様に係る治具10Aの変形例に係る治具10Cについて説明する。図7は、当該治具10Cを説明するための概略図である。当該治具10Cは、固定部20および移動部30を除き、上記した治具10Aと同様の構造である。また、アンカーボルト200Aは、上記した治具10Aを用いて埋設したアンカーボルト200Aと同じ構造である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0043】
図7に示すように、本変形例では、固定部20aが、上記した治具10Aの固定部20の外面に形成された雄螺子26(第1雄螺子)の代わりに、その基端面から先端側へと延びる凹部および当該凹部の側壁に形成された雌螺子26a(第1雌螺子)を有する。また、本変形例では、移動部30aが、上記した治具10Aの移動部30の軸孔32および当該軸孔32の側壁に形成された雌螺子34(第1雌螺子)の代わりに、軸線AXに沿って見たとき、その基端部の中央部から先端側へと延びる突部および当該突部の側面に形成された雄螺子34a(第1雄螺子)を有する。
【0044】
移動部30aは、軸線AX周りに回転することにより、その雄螺子34aが固定部20aの雌螺子26aに螺合しつつ、軸線AXに沿って先端側へと移動する。これに伴い、介在部40(第1介在部)およびスリーブ260が先端側へと移動し、スリーブ210の先端部218が拡径される。上記のような治具10Cを用いることによっても、上記した治具10Aを用いる場合と同様に、母材BMが破損することを防止しつつ、アンカーボルト200Aを埋設することが可能となる。
【0045】
図8に基づき、上記した第2態様に係る治具10Bの変形例に係る治具10Dについて説明する。図8は、当該治具10Dを説明するための概略図である。当該治具10Cは、固定部70および移動部80を除き、上記した治具10Bと同様の構造である。また、アンカーボルト200Bは、上記した治具10Bを用いて埋設したアンカーボルト200Bと同じ構造である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0046】
図8に示すように、本変形例では、固定部70aが、上記した治具10Bの固定部70の基端部の外面に形成された雄螺子76(第1雄螺子)の代わりに、その軸孔78(第2軸孔)の基端部の側壁に形成された雌螺子76a(第1雌螺子)を有する。また、本変形例では、移動部80aが、上記した治具10Bの移動部80の凹部82および当該凹部82の側壁に形成された雌螺子84(第1雌螺子)の代わりに、軸線AXに沿って見たとき、その基端部の中央部から先端側へと延びる突部および当該突部の側面に形成された雄螺子84a(第1雄螺子)を有する。
【0047】
移動部80aは、軸線AX周りに回転することにより、その雄螺子84aが固定部70aの雌螺子76aに螺合しつつ、軸線AXに沿って移動する。これに伴い、介在部90(第2介在部)およびコーン270が先端側へと移動し、スリーブ260の先端部268が拡径される。上記のような治具10Cを用いることによっても、上記した治具10Bを用いる場合と同様に、母材BMが破損することを防止しつつ、アンカーボルト200Bを埋設することが可能となる。
【0048】
4.まとめ
上記した課題を解決するために、本開示の一態様に係る治具は、アンカーボルトを埋設する際に用いる治具であって、前記アンカーボルトの基端部に固定され、当該基端部から前記アンカーボルトの軸線に沿って前記アンカーボルトの先端から離れる側へと延び、第1雄螺子および第1雌螺子のいずれか一方が形成される固定部と、前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか他方が形成され、前記軸線周りに回転することにより、前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか他方が前記第1雄螺子および前記第1雌螺子のいずれか一方に螺合しつつ、前記軸線に沿って移動する移動部と、を備え、前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記アンカーボルトのスリーブまたは前記スリーブ内のコーンを先端側へと移動させ、前記スリーブの先端部を拡径させることを特徴とする。
【0049】
上記の構造によれば、母材が破損することを防止しつつ、アンカーボルトを埋設することが可能となる。
【0050】
前記移動部と前記スリーブの間に介在する第1介在部をさらに備え、前記第1介在部は、第1軸孔を有し、前記第1軸孔に前記固定部が挿入された状態で、前記軸線に沿って移動可能であり、前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記第1介在部の径方向における縁部の先端が、前記スリーブの径方向における縁部の基端を押して、前記スリーブを先端側へと移動させ、前記スリーブの先端部を拡径させても良い。
【0051】
上記の構造によれば、第1介在部の径方向における縁部の先端が、スリーブの径方向における縁部の基端を押して、当該スリーブを先端側へと移動させることができる。したがって、スリーブを先端側へと移動させることにより当該スリーブの先端部を拡径させる、公知の構造であるアンカーボルトを埋設する際に用いることができる。
【0052】
前記アンカーボルトの基端部には、第2雄螺子が形成され、前記固定部には、第2雌螺子が形成され、前記第2雄螺子が前記第2雌螺子に螺合することにより、前記固定部が前記アンカーボルトの基端部に固定されても良い。
【0053】
上記の構造によれば、公知の構造であるアンカーボルトがもともと有する雄螺子を活用して、当該アンカーボルトに対して固定部を固定することができる。したがって、アンカーボルトに対して固定部を容易に固定することができ、また、固定部を簡単な構造にすることができる。
【0054】
前記移動部と前記コーンの間に介在する第2介在部をさらに備え、前記固定部は、第2軸孔を有し、前記第2介在部は、前記第2軸孔を貫通して前記軸線に沿って延び、前記移動部が、前記軸線周りに回転しつつ、前記軸線に沿って先端側へと移動することにより、前記第2介在部の先端が、前記コーンの基端を押して、前記コーンを先端側へと移動させ、前記スリーブを拡径させても良い。
【0055】
上記の構造によれば、第2介在部の軸部の先端がアンカーボルトのコーンの基端を押して、当該コーンを先端側へと移動させることができる。したがって、コーンを先端側へと移動させることによりスリーブの先端部を拡径させる、公知の構造であるアンカーボルトを埋設する際に用いることができる。
【0056】
前記スリーブの基端部には、第3雌螺子が形成され、前記固定部には、第3雄螺子が形成され、前記第3雄螺子が前記第3雌螺子に螺合することにより、前記固定部が前記アンカーボルトの基端部に固定されても良い。
【0057】
上記の構造によれば、公知の構造であるアンカーボルトがもともと有する雌螺子を活用して、当該アンカーボルトに対して固定部を固定することができる。したがって、アンカーボルトに対して固定部を容易に固定することができ、また、固定部を簡単な構造にすることができる。
【0058】
前記固定部に前記第1雄螺子が形成され、前記移動部に前記第1雌螺子が形成されても良い。
【0059】
上記の構成によれば、固定部に第1雌螺子が形成され、移動部に第1雄螺子が形成される場合と比較して、簡単な構造にすることができる。
【0060】
前記移動部から径方向の外側へと延びるハンドルをさらに備えても良い。
【0061】
上記の構造によれば、ハンドルを把持して人力により移動部を軸線周りに回転させることができるので、アンカーボルトの埋設作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
10Aないし10D 治具
20、20a、70、70a 固定部
24 雌螺子(第2雌螺子)
26、34a、76、84a 雄螺子(第1雄螺子)
26a、34、76a、84 雌螺子(第1雌螺子)
30、30a、80、80a 移動部
38、88 ハンドル
40 介在部(第1介在部)
42 軸孔(第1軸孔)
74 雄螺子(第3雄螺子)
78 軸孔(第2軸孔)
90 介在部(第2介在部)
200A、200B アンカーボルト
204、254 基端部
208 雄螺子(第2雄螺子)
258 雌螺子(第3雌螺子)
210、260 スリーブ
218、268 先端部
270 コーン
AX 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8