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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113803
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】揺動装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240816BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20240816BHJP
   H02K 33/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B26/10 C
H02K33/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019007
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
5H633
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045AB44
2H045BA12
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC05
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141MF01
2H141MF03
2H141MF22
2H141MF24
2H141MF26
2H141MG06
2H141MZ06
2H141MZ12
5H633BB08
5H633BB15
5H633BB16
5H633BB20
5H633GG02
5H633GG06
5H633GG07
5H633GG13
5H633GG23
5H633HH03
5H633HH04
5H633HH13
5H633JA03
(57)【要約】
【課題】可動体を2方向に揺動可能に支持する揺動支持機構の構造を単純化し、耐久性を高めるとともに、回転負荷を低減させる。
【解決手段】可動体3と支持体5とを接続する揺動支持機構4は、平板状のフレーム8と、フレーム8と支持体5とを接続する接続機構9を備える。接続機構9は、フレーム8のY軸方向の両端に固定された球体91と、支持体5に配置されるばね部材92の凹曲面96と点接触させて、フレーム8全体をY軸周りに回転可能に支持する。フレーム8は、可動体保持部81からX軸方向の両側に延びる一対の軸部83A、83Bを回転軸として、可動体保持部81に固定される可動体3をX軸周りに回転可能に支持する。フレーム8は、可動体保持部81のY軸方向の両側からX軸方向の両側へそれぞれ先細り形状に延びる一方側枠部分86Aおよび他方側枠部分86Bを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体および支持体と、
前記可動体と前記支持体とを接続する揺動支持機構と、を有し、
前記可動体は、前記揺動支持機構を介して、前記支持体に対して第1軸を中心とする第1軸周りの方向に揺動可能に支持されるとともに、前記支持体に対して第1軸と交差する第2軸を中心とする第2軸周りの方向に揺動可能に支持され、
前記第1軸に沿う方向を第1軸方向とし、前記第2軸に沿う方向を第2軸方向とし、前記第1軸と交差し且つ前記第2軸と交差する第3軸に沿う方向を第3軸方向とする場合に、
前記揺動支持機構は、前記第3軸方向を板厚方向とする平板状のフレームと、前記フレームの前記第2軸方向の両端に設けられた一対のフレーム側摺動部と、前記支持体に配置されて前記一対のフレーム側摺動部を前記第2軸周りに回転可能に支持する一対の支持体側摺動部と、を備え、
前記フレームは、前記可動体に対して前記第3軸方向に重なる可動体保持部と、前記可動体保持部の外周を囲む枠部と、前記可動体保持部から前記第1軸方向の両側に延びて前記枠部に接続される一対の軸部と、を備え、
前記枠部は、
前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側から前記第1軸方向の一方側へ先細り形状に延びて前記一対の軸部の一方の先端に接続される一方側枠部分と、
前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側から前記第1軸方向の他方側へ先細り形状に延びて前記一対の軸部の他方の先端に接続される他方側枠部分と、を備えることを特徴とする揺動装置。
【請求項2】
前記第1軸周りの駆動力を発生させる第1磁気駆動機構と、
前記第2軸周りの駆動力を発生させる第2磁気駆動機構と、を有し、
前記第1磁気駆動機構は、前記第1軸上の位置で前記可動体保持部に固定される第1磁石と、前記第1磁石に前記第3軸方向で対向する第1コイルと、を備え、
前記第2磁気駆動機構は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の少なくとも一方側において前記第2軸上の位置で前記枠部に固定される第2磁石と、前記第2磁石に前記第3軸方向で対向する第2コイルと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【請求項3】
前記フレームは、板金部材であり、
前記可動体保持部および前記枠部には、それぞれ、樹脂製の磁石ホルダがインサート成形により固定され、
前記第1磁石および前記第2磁石は、前記磁石ホルダを介して前記フレームに固定されることを特徴とする請求項2に記載の揺動装置。
【請求項4】
前記第1磁石の着磁方向は、前記第2軸方向であり、
前記第2磁石の着磁方向は、前記第1軸方向であることを特徴とする請求項2に記載の揺動装置。
【請求項5】
前記フレームは、板金部材であり、
前記可動体保持部には、樹脂製の可動体ホルダがインサート成形により固定され、
前記可動体保持部の前記第2軸方向の中央には、前記第1軸方向の両端から前記第1軸方向の中央に向かって切り欠かれた一対の切欠き部が設けられ、前記一対の軸部は、前記一対の切欠き部の内側に配置される第1部分を備え、
前記可動体ホルダは、前記切欠き部と第3軸方向で重なる部分が切り欠かれており、
前記可動体と前記第1部分との間に前記第3軸方向の隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【請求項6】
前記一方側枠部分は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側からそれぞれ前記第1軸方向の一方側へ向かうに従って前記第1軸に近づく方向に直線状に延びる一対の一方側直線部を備え、
前記他方側枠部分は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側からそれぞれ前記第1軸方向の他方側へ向かうに従って前記第1軸に近づく方向に直線状に延びる一対の他方側直線部を備えることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【請求項7】
前記一方側枠部分は、前記第1軸方向の一方側に突出する円弧状であり、
前記他方側枠部分は、前記第1軸方向の他方側に突出する円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【請求項8】
前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の一方は、球体であり、
前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の他方は、前記球体に前記第2軸上で点接触する凹曲面であることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【請求項9】
前記球体と前記凹曲面との間に前記第2軸方向の与圧を付与するばね部材を備えることを特徴とする請求項8に記載の揺動装置。
【請求項10】
前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の一方は、内輪と外輪との間に転動体が保持されたベアリングの前記内輪を備え、
前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の他方は、前記外輪を備えることを特徴とする請求項1に記載の揺動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を揺動させる揺動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光などの走査光を射出して反射光を検知し、反射光が戻ってくるまでの時間を計測することで対象物までの距離や方向、形状などを測定する計測装置が用いられている。この種の計測装置は、走査光を反射するミラーを所定の周波数で揺動させるチルト動作を行う揺動装置を備え、ミラーのチルト動作によりパルス光を射出する。
【0003】
また、走査光を反射するミラーを所定の周波数で揺動させる揺動装置は、走査光により描画を行う光スキャナ装置に用いられている。特許文献1には、この種の光スキャナ装置が記載される。特許文献1の光スキャナ装置は、ミラーが固定される可動板と、可動板を囲む枠状の支持部と、可動板と支持部とを接続する板バネとが一体に形成されている。板バネは、可動板から両側へ延びる軸部材と、軸部材の先端から幅方向の両側へ延びて、軸部材の両側を平行に延びる一対の弾性部材を備えており、弾性部材は可動板の両側で支持部に接続される。軸部材は回転軸線上に配置され、可動板は、軸部材のねじり変形によって回転軸線周りに揺動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5092406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査光を射出して反射光を検知する計測装置では、ミラーを第1軸周りに高い周波数(例えば、数百Hz)で揺動させながら、第1軸と交差する第2軸周りに低い周波数(例えば、数十Hz)で揺動させる動作を行う。このような動作を行うための揺動機構は、通常、第1軸周りの揺動機構と、第2軸周りの揺動機構を組み立てて構成されるため、構造が軸雑になってしまう。また、高い周波数で揺動する機構は、部品の接合箇所に高い負荷が加わるため、壊れやすく、耐久性が低いという問題がある。
【0006】
また、ミラーを揺動させる際、回転負荷を下げることが望ましいが、2方向に揺動させる揺動機構の場合、第2軸周りの揺動の際に、第1軸周りの揺動機構全体を揺動させなければならない。そのため、イナーシャが大きく、回転負荷が大きくなってしまう。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、可動体を2方向に揺動可能に支持する揺動支持機構の構造を単純化し、耐久性を高めるとともに、回転負荷を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の揺動装置は、可動体および支持体と、前記可動体と前記支持体とを接続する揺動支持機構と、を有し、前記可動体は、前記揺動支持機構を介して、前記支持体に対して第1軸を中心とする第1軸周りの方向に揺動可能に支持されるとともに、前記支持体に対して第1軸と交差する第2軸を中心とする第2軸周りの方向に揺動可能に支持され、前記第1軸に沿う方向を第1軸方向とし、前記第2軸に沿う方向を第2軸方向とし、前記第1軸と交差し且つ前記第2軸と交差する第3軸に沿う方向を第3軸方向とする場合に、前記揺動支持機構は、前記第3軸方向を板厚方向とする平板状のフレームと、前記フレームの前記第2軸方向の両端に設けられた一対のフレーム側摺動
部と、前記支持体に配置されて前記一対のフレーム側摺動部を前記第2軸周りに回転可能に支持する一対の支持体側摺動部と、を備え、前記フレームは、前記可動体に対して前記第3軸方向に重なる可動体保持部と、前記可動体保持部の外周を囲む枠部と、前記可動体保持部から前記第1軸方向の両側に延びて前記枠部に接続される一対の軸部と、を備え、前記枠部は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側から前記第1軸方向の一方側へ先細り形状に延びて前記一対の軸部の一方の先端に接続される一方側枠部分と、前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側から前記第1軸方向の他方側へ先細り形状に延びて前記一対の軸部の他方の先端に接続される他方側枠部分と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、可動体と支持体とを1枚の平板状のフレームにより接続しており、フレームは、外周部分である枠部と内側に配置される可動体保持部とを接続する軸部のねじり変形により、可動体保持部を第1軸周りに揺動可能に支持する。また、枠部の第2軸方向の両端と支持体とが第2軸周りに摺動可能に接続されるので、平板状のフレーム全体が第2軸周りに揺動可能に支持される。このような構成では、単一の部品である平板状のフレームに枠部および軸部を設け、枠部の第2軸方向の両端に摺動部を設けるだけで2方向に揺動させるための揺動支持機構を構成できるので、揺動支持機構の構造を単純化でき、部品同士の接合部を少なくして耐久性を高めることができる。また、フレームは、第2軸方向の両側に向かって先細り形状となる平面形状をしているので、軸部の長さを確保して第1軸周りの回転負荷を低減させながら、第2軸周りに回転させる際のイナーシャを少なくして回転負荷を低減させることができる。
【0010】
本発明において、前記第1軸周りの駆動力を発生させる第1磁気駆動機構と、前記第2軸周りの駆動力を発生させる第2磁気駆動機構と、を有し、前記第1磁気駆動機構は、前記第1軸上の位置で前記可動体保持部に固定される第1磁石と、前記第1磁石に前記第3軸方向で対向する第1コイルと、を備え、前記第2磁気駆動機構は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の少なくとも一方側において前記第2軸上の位置で前記枠部に固定される第2磁石と、前記第2磁石に前記第3軸方向で対向する第2コイルと、を備えることが好ましい。このようにすると、可動体の第1軸周りの回転中心である第1軸に近い位置に第1磁石を配置でき、且つ、可動体の第2軸周りの回転中心である第2軸に近い位置に第2磁石を配置できる。従って、可動体を第1軸周りおよび第2軸周りに揺動させるときのイナーシャを小さくすることができる。従って、可動体を高い周波数で揺動させることができる。
【0011】
本発明において、前記フレームは、板金部材であり、前記可動体保持部および前記枠部には、それぞれ、樹脂製の磁石ホルダがインサート成形により固定され、前記第1磁石および前記第2磁石は、前記磁石ホルダを介して前記フレームに固定されることが好ましい。このように、金属部品に樹脂製のホルダ部品をインサート成形により一体化させることで、高い周波数で揺動させても部品同士が分離しない。従って、耐久性を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記第1磁石の着磁方向は、前記第2軸方向であり、前記第2磁石の着磁方向は、前記第1軸方向であることが好ましい。このようにすると、第1磁石と第2磁石は、いずれも分極着磁した磁石を用いる必要がないので、磁石のサイズを小さくすることができ、イナーシャを小さくすることができる。また、このような着磁方向では、発生するローレンツ力は、可動体の回転方向の成分を多く含む方向となるので、発生するローレンツ力を効率よく利用できる。従って、少ない消費電流で可動体を揺動させることができる。
【0013】
本発明において、前記フレームは、板金部材であり、前記可動体保持部には、樹脂製の可動体ホルダがインサート成形により固定され、前記可動体保持部の前記第2軸方向の中
央には、前記第1軸方向の両端から前記第1軸方向の中央に向かって切り欠かれた一対の切欠き部が設けられ、前記一対の軸部は、前記一対の切欠き部の内側に配置される第1部分を備え、前記可動体ホルダは、前記切欠き部と第3軸方向で重なる部分が切り欠かれており、前記可動体と前記第1部分との間に前記第3軸方向の隙間が設けられていることが好ましい。このように、軸部と可動体との間に第3軸方向の隙間を形成したことにより、軸部がねじり変形する際に可動体が干渉しない。従って、軸部の長さを確保して第1軸周りの回転負荷を低減させることができる構成でありながら、フレームの外形が大型化することを抑制できる。従って、製品サイズを小型化できる。
【0014】
本発明において、前記一方側枠部分は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側からそれぞれ前記第1軸方向の一方側へ向かうに従って前記第1軸に近づく方向に直線状に延びる一対の一方側直線部を備え、前記他方側枠部分は、前記可動体保持部の前記第2軸方向の両側からそれぞれ前記第1軸方向の他方側へ向かうに従って前記第1軸に近づく方向に直線状に延びる一対の他方側直線部を備えることが好ましい。このようにすると、フレームの外形を略矩形状、あるいは、略8角形にすることができる。従って、フレームの外形を単純化することができ、製造が容易である。
【0015】
本発明において、前記一方側枠部分は、前記第1軸方向の一方側に突出する円弧状であり、前記他方側枠部分は、前記第1軸方向の他方側に突出する円弧状であることが好ましい。このようにすると、フレームの外形が略円形状となる。従って、フレームの外形を単純化することができ、製造が容易である。
【0016】
本発明において、前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の一方は、球体であり、前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の他方は、前記球体に前記第2軸上で点接触する凹曲面であることが好ましい。このようにすると、第2軸周りの揺動支持機構の構成を単純化できる。
【0017】
本発明において、前記球体と前記凹曲面との間に前記第2軸方向の与圧を付与するばね部材を備えることが好ましい。このようにすると、球体と凹曲面とを確実に接触させることができる。
【0018】
本発明において、前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の一方は、内輪と外輪との間に転動体が保持されたベアリングの前記内輪を備え、前記フレーム側摺動部と前記支持体側摺動部の他方は、前記外輪を備えることが好ましい。このようにすると、支持体からフレームが外れにくいため、耐衝撃性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、単一の部品である平板状のフレームに枠部および軸部を設け、枠部の第2軸方向の両端に摺動部を設けるだけで2方向に揺動させるための揺動支持機構を構成できるので、揺動支持機構の構造を単純化でき、部品同士の接合部を少なくして耐久性を高めることができる。また、フレームは、第2軸方向の両側に向かって先細り形状となる平面形状をしているので、軸部の長さを確保して第1軸周りの回転負荷を低減させながら、第2軸周りに回転させる際のイナーシャを少なくして回転負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した揺動装置の外観斜視図である。
図2図1の揺動装置の分解斜視図である。
図3図1のA-A位置で切断した揺動装置の断面図である。
図4図1のB-B位置で切断した揺動装置の断面図である。
図5】ベースおよびカバーを取り外した揺動装置をZ1方向から見た分解斜視図である。
図6】ベースおよびカバーを取り外した揺動装置をZ2方向から見た分解斜視図である。
図7】フレームと一体になってY軸周りに揺動する部材の分解斜視図である。
図8】変形例のフレームを備えた揺動支持機構および可動体の斜視図である。
図9】変形例の接続機構を備えた揺動支持機構および可動体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した揺動装置の実施形態を説明する。
【0022】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した揺動装置1の外観斜視図である。図2は、図1の揺動装置1の分解斜視図である。図3は、図1のA-A位置で切断した揺動装置1の断面図である。図4は、図1のB-B位置で切断した揺動装置1の断面図である。図5は、ベース51およびカバー52を取り外した揺動装置1をZ1方向から見た分解斜視図である。図6は、ベース51およびカバー52を取り外した揺動装置1をZ2方向から見た分解斜視図である。
【0023】
揺動装置1は、反射部材であるミラー2を備える。揺動装置1は、円形のミラー2を反射面2aと平行な回転軸線周りに揺動させる。揺動装置1は、例えば、レーザー光などの走査光を射出して反射光を受光する計測装置に用いられる。揺動装置1は、走査光を反射するミラー2を所定の周波数で揺動させるチルト動作を行う。
【0024】
以下の説明では、互いに直交する3軸をX軸、Y軸、Z軸とする。X軸は第1軸である。Y軸は第2軸である。Z軸は第3軸である。X軸に沿う方向をX軸方向(第1軸方向)とし、Y軸に沿う方向をY軸方向(第2軸方向)とし、Z軸に沿う方向をZ軸方向(第3軸方向)とする。X軸方向の一方側をX1方向とし、X軸方向の他方側をX2方向とし、Y軸方向の一方側をY1方向とし、Y軸方向の他方側をY2方向とし、Z軸方向の一方側をZ1方向とし、Z軸方向の他方側をZ2方向とする。
【0025】
図1に示すように、揺動装置1は、可動体3と、揺動支持機構4と、揺動支持機構4を介して可動体3を支持する支持体5を備える。本形態では、可動体3はミラー2からなる。揺動支持機構4は、可動体3(ミラー2)をX軸周り(第1軸周り)およびY軸周り(第2軸周り)に揺動可能に支持する。また、揺動装置1は、可動体3をX軸周りに揺動させる第1磁気駆動機構6と、可動体3をY軸周りに揺動させる第2磁気駆動機構7を備える(図3図4参照)。
【0026】
図2図5図6に示すように、揺動支持機構4は、可動体3が固定されるフレーム8と、支持体5とフレーム8とを接続する接続機構9を備える。フレーム8は、可動体3をX軸周りに回転可能に支持する。支持体5は、接続機構9を介してフレーム8および可動体3をY軸周りに回転可能に支持する。
【0027】
本形態では、X軸とY軸の交点は、Z軸方向から見た可動体3の中心と重なる。揺動装置1は、例えば、ミラー2(可動体3)の反射面2aがZ1方向を向く位置を可動体3の基準位置とし、基準位置を中心としてX軸周り(第1軸周り)に所定の角度範囲でミラー2を揺動させるチルト動作、および、基準位置を中心としてY軸周り(第2軸周り)に所定の角度範囲でミラー2を揺動させるチルト動作を行う。例えば、X軸周りに数百Hzの周期でミラー2を揺動させながら、Y軸周りに数十Hzの周期でミラー2を揺動させる。
【0028】
(支持体)
図2図3図4に示すように、支持体5は、可動体3および揺動支持機構4を内側に収容するケース50と、ケース50にZ2方向から固定されるベース51と、ケース50にZ1方向から被せられてベース51との間にケース50を保持するカバー52と、ケース50とベース51との間に配置されるコイル支持板53を備える。ケース50は樹脂製であり、ベース51、カバー52、およびコイル支持板53は非磁性の金属からなる。
【0029】
図2図5に示すように、ケース50の中央には、Z2方向に凹む中央凹部54が設けられており、中央凹部54のY軸方向の両側には、X軸方向に延びるスリット状の貫通部55が設けられている。中央凹部54は、Z軸方向から見て略8角形の平面形状をしている。図2に示すように、中央凹部54には、可動体3およびフレーム8が収容される。2箇所の貫通部55はケース50をX軸方向に貫通している。貫通部55には、接続機構9が配置される。
【0030】
図6に示すように、ケース50の底面には、Z1方向に凹む凹部56が設けられており、凹部56の中央には、第1コイル配置穴57が設けられている。第1コイル配置穴57は、中央凹部54の底部を貫通する。また、第1コイル配置穴57のY軸方向の両側には、それぞれ、Z1方向に凹む第2コイル配置穴58が設けられている。2箇所の第2コイル配置穴58は、それぞれ、貫通部55と繋がる。
【0031】
図3図4に示すように、第1コイル配置穴57には、第1磁気駆動機構6の第1コイル61が配置される。2箇所の第2コイル配置穴58には、それぞれ、第2磁気駆動機構7の第2コイル71A、71Bが配置される。第1コイル61および第2コイル71A、71Bは、凹部56の底面にZ2方向から固定されるコイル支持板53によりZ2方向から支持される。
【0032】
ベース51は、ケース50にZ2方向から当接する底板部511と、底板部511のX軸方向の両端、および軸方向の両端からそれぞれZ1方向に延びる縁部512を備える。カバー52は、ケース50をZ1方向から覆う端板部521と、端板部521の外縁からZ2方向に延びる側板部522を備える。端板部521には、ミラー2およびフレーム8にZ1方向から重なる部分を切り欠いた開口部523が設けられている。
【0033】
(接続機構)
接続機構9は、支持体5とフレーム8をY軸周りに相対回転可能に接続する。図2図3図5図6に示すように、接続機構9は、フレーム8のY軸方向の両端に固定される一対の球体91と、フレーム8のY軸方向の両側に配置される一対のばね部材92を備える。球体91は金属製であり、溶接によりフレーム8に固定される。一対のばね部材92は、ケース50の貫通部55に固定される。ばね部材92は、金属板の曲げ加工により製造した板ばねである。ばね部材92は、X軸方向に延びる板部94と、板部94のX軸方向の両端におけるZ2方向の端部からZ1方向に屈曲した2箇所のばね部95を備える。板部94のX軸方向の中央には、球体91が点接触する凹曲面96が設けられている。凹曲面96は、球体91が位置する側とは反対側に半球状に凹む。
【0034】
図2図5に示すように、ベース51の貫通部55は、X軸方向の両端にばね部95と板部94が圧入される幅の溝部551が設けられている。貫通部55にばね部材92を装着したとき、板部94のX軸方向の中央部分は、Y軸方向の両側に隙間がある状態で保持される。貫通部55のX軸方向の中央部分と中央凹部54とは、中央凹部54のY軸方向の両端に設けられた開口部552を介して繋がる。
【0035】
支持体5とフレーム8とを接続機構9により接続する際、ケース50のY軸方向の両端
に設けられた2箇所の貫通部55に、それぞれ、ばね部材92を装着する。これにより、凹曲面96がY軸上の位置に位置決めされる。しかる後に、Y軸方向に対向する板部94の中央部分を撓ませて間隔を広げ、その間にフレーム8を挿入して、フレーム8のY軸方向の両端に固定された球体91をY軸上の2点で凹曲面96に点接触させる。ばね部材92は、板部94が撓んだ形状から元の形状に復帰する際、凹曲面96を球体91に押し付ける方向の与圧を付与する。従って、Y軸上において各凹曲面96と球体91とが点接触する状態を維持でき、フレーム8が支持体5に対してY軸周りに回転可能に支持される。フレーム8がY軸周りに回転する際、球体91(フレーム側摺動部)と、凹曲面96(支持体側摺動部)とが摺動する。
【0036】
(フレーム)
図7は、フレーム8と一体になってY軸周りに揺動する部材の分解斜視図である。図5図6図7に示すように、フレーム8は、Z軸方向を板厚方向とする平板状の板金部材である。フレーム8は、可動体ホルダ10と第1磁石ホルダ11が一体になった樹脂部品がインサート成形により固定される可動体保持部81と、可動体保持部81の外周を囲む枠部82と、可動体保持部81と枠部82とを接続する一対の軸部83A、83Bと、枠部82のY軸方向の両端から突出する一対の突出部84A、84Bを備える。可動体保持部81には、可動体ホルダ10を介して可動体3(ミラー2)が固定される。一対の軸部83A、83Bは、可動体保持部81からX軸方向の両側へ直線状に延びており、Z軸方向から見た場合にX軸と重なる。従って、可動体3(ミラー2)は、一対の軸部83A、83Bを回転軸として、X軸周りに揺動可能に支持される。
【0037】
フレーム8のY軸方向の両端に設けられた突出部84A、84Bの先端には、それぞれ、接続機構9を構成する金属製の球体91が溶接により固定される。枠部82は、突出部84A、84Bに対してY軸方向で内側の位置に内周側へ張り出す磁石保持部85A、85Bを備える。磁石保持部85A、85Bには、樹脂製の第2磁石ホルダ12A、12Bがインサート成形により固定される。
【0038】
枠部82は、Z軸方向から見て略8角形の平面形状をしている。枠部82は、磁石保持部85A、85BのX1方向に設けられた一方側枠部分86Aと、磁石保持部85A、85BのX2方向に設けられた他方側枠部分86Bを備える。本形態では、一方側枠部分86Aは、全体として、X1方向へ向かうに従ってY軸方向の幅が狭まる形状(すなわち、先細り形状)をしており、他方側枠部分86Bは、全体として、X2方向へ向かうに従ってY軸方向の幅が狭まる形状(すなわち、先細り形状)をしている。
【0039】
より詳細には、一方側枠部分86Aは、軸部83Aの先端からY軸方向の両側へ直線状に延びる先端部87Aと、磁石保持部85A、85BのX1方向の端部から先端部87Aの両端へ向かって直線状に延びる2本の一方側直線部88Aを備える。2本の一方側直線部88Aは、X1方向へ向かうに従ってY軸方向の間隔が狭まる方向に傾斜する。同様に、他方側枠部分86Bは、軸部83Bの先端からY軸方向の両側へ直線状に延びる先端部87Bと、磁石保持部85A、85BのX2方向の端部から先端部87Bの両端へ向かって直線状に延びる2本の他方側直線部88Bを備える。2本の他方側直線部88Bは、X2方向へ向かうに従ってY軸方向の間隔が狭まる方向に傾斜する。本形態では、一方側直線部88Aおよび他方側直線部88Bは、いずれも、X軸方向およびY軸方向に対して45度傾斜する。
【0040】
図6図7に示すように、第1磁石ホルダ11は、フレーム8における可動体保持部81の中央部810のZ2方向に位置する。第1磁石ホルダ11は、インサート成形の際に中央部810に設けられたスリット811に充填される樹脂を介して、可動体保持部81に一体化される。可動体ホルダ10は、可動体保持部81の中央部810のZ1方向を覆
うと共に、可動体保持部81の外周部をZ1方向およびZ2方向から覆う。可動体ホルダ10は、インサート成形の際に中央部810のスリット811およびそのY軸方向の両側に設けられたスリット812に充填される樹脂を介して、第1磁石ホルダ11および可動体保持部81に一体化される。第2磁石ホルダ12A、12Bは、インサート成形の際に磁石保持部85A、85Bのスリット851に充填される樹脂を介して、磁石保持部85A、85Bに一体化される。
【0041】
図7に示すように、可動体保持部81と枠部82とを接続する一対の軸部83A、83Bのそれぞれは、可動体保持部81のX軸方向の両端から中央部810までX軸方向に切り欠いた一対の切欠き部813A、813Bの内側をX軸方向に延びる第1部分831と、切欠き部813A、813Bの外側をX軸方向に延びて先端部87A、87Bに接続される第2部分832を備える。可動体ホルダ10は、X軸方向の両端から中央に向かって切欠き部813A、813Bと重なる部分を切り欠いた2箇所の切欠き部13A、13Bを備える。
【0042】
図4図5図7に示すように、可動体3(ミラー2)は円形であり、可動体ホルダ10の切欠き部13A、13は、可動体ホルダ10に固定された可動体3(ミラー2)によってZ2方向から覆われている。本形態では、可動体保持部81に切欠き部813A、813Bを設けたことによって、軸部83A、83Bの長さが第1部分831の長さの分だけ長くなるように構成されている。図4の部分拡大図に示すように、可動体ホルダ10に切欠き部13A、13Bを設けたことにより、可動体3(ミラー2)と軸部83A、83Bの第1部分831との間には、Z軸方向の隙間Sが形成されている。従って、可動体3がX軸周りに揺動する際、軸部83A、83がX軸周りにねじれることが阻害されない構造になっている。
【0043】
(磁気駆動機構)
第1磁気駆動機構6は、可動体3のZ2方向に配置される。図3図5図6に示すように、第1磁気駆動機構6は、可動体保持部81に第1磁石ホルダ11を介して固定される第1磁石62と、第1磁石62にZ軸方向で対向し、支持体5に固定される第1コイル61を備える。上記のように、第1コイル61は、コイル支持板53を介してケース50に固定され、ケース50の第1コイル配置穴57に配置される。図5に示すように、第1コイル61は、X軸方向に長い長円形の空芯コイルである。
【0044】
図3に示すように、第1磁石62は、Z2方向の端部が第1コイル61の内側に配置される。第1磁石62の着磁方向は、Y軸方向である。すなわち、第1磁気駆動機構6は、第1磁石62の着磁方向が、第1コイル61と第1磁石62とが対向する方向(すなわち、Z軸方向)と直交する方向(すなわち、Y軸方向)になっている。このようにした場合、第1磁石62の磁力線の方向は第1コイル61の位置でZ軸方向に対して傾斜した方向になる。第1コイル61に通電した際、第1コイル61と第1磁石62との間に作用するローレンツ力は、磁力線の方向に直交する方向となるので、ローレンツ力の向きは、X軸周りの回転方向の成分が大きい。従って、このような着磁方向にした場合、発生するローレンツ力を効率よく利用できる。
【0045】
第2磁気駆動機構7は、第1磁気駆動機構6とY軸方向で並ぶ位置に配置される。本形態では、第1磁気駆動機構6のY1側およびY2側の2箇所に第2磁気駆動機構7が配置される。第2磁気駆動機構7は、第1磁気駆動機構6のY1側に配置される第2磁石72Aおよび第2コイル71Aと、第1磁気駆動機構6のY2側に配置される第2磁石72Bおよび第2コイル71Bを備える。第2磁石72Aと第2コイル71A、および第2磁石72Bと第2コイル71Bは、それぞれ、Z軸方向に対向する。図5に示すように、第2コイル71A、71Bは、Y軸方向に長い長円形の空芯コイルである。
【0046】
図3に示すように、第2磁石72A、72Bは、Z2方向の端部が第2コイル71A、71Bの内側に配置される。第2磁石72A、72Bの着磁方向は、X軸方向である。従って、第2磁気駆動機構7は、第1磁気駆動機構6と同様に、第2磁石72A、72Bの着磁方向が、第2コイル71A、71Bと第2磁石72A、72Bとが対向する方向(すなわち、Z軸方向)と直交する方向(すなわち、X軸方向)になっている。従って、第1磁気駆動機構6と同様に、第2磁気駆動機構7においても、第2コイル71A、71Bに通電した際、第2コイル71A、71Bと第2磁石72A、72Bとの間に作用するローレンツ力を効率よく利用できる。
【0047】
図3図4に示すように、コイル支持板53には、第1コイル61の中央に、可動体3のX軸周りの揺動角度を検出するためのセンサ63が配置される。また、Y2側の第2コイル71Bの中央に、可動体3のY軸周りの揺動角度を検出するためのセンサ73が配置される。
【0048】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の揺動装置1は、可動体3および支持体5と、可動体3と支持体5とを接続する揺動支持機構4と、を有する。可動体3は、揺動支持機構4を介して、支持体5に対してX軸周り(第1軸周り)の方向に揺動可能に支持されるとともに、支持体5に対してY軸周り(第2軸周り)の方向に揺動可能に支持される。揺動支持機構4は、Z軸方向(第3軸方向)を板厚方向とする平板状のフレーム8と、フレーム8と支持体5とを接続する接続機構9を備える。接続機構9は、フレーム8のY軸方向の両端に設けられた一対の球体91(フレーム側摺動部)と、支持体5に配置される一対のばね部材92に設けられた一対の凹曲面96(支持体側摺動部)と、を備えており、各凹曲面96に球体91を点接触させることにより、フレーム8がY軸周りに回転可能に支持される。
フレーム8は、可動体3に対してZ軸方向に重なる可動体保持部81と、可動体保持部81の外周を囲む枠部82と、可動体保持部81からX軸方向の両側に延びて枠部82に接続される一対の軸部83A、83Bと、を備える。枠部82は、可動体保持部81のY軸方向の両側からX1方向(X軸方向の一方側)へ先細り形状に延びて軸部83Aの先端に接続される一方側枠部分86Aと、可動体保持部81のY軸方向の両側からX2方向(X軸方向の他方側)へ先細り形状に延びて軸部83Bの先端に接続される他方側枠部分86Bと、を備える。
【0049】
本形態では、単一の部品である平板状のフレーム8にX軸周りの回転軸となる軸部83A、83Bを設けるとともに、フレーム8のY軸方向の両端と支持体5との間に摺動部(球体91と凹曲面96)を設けてフレーム8全体をY軸周りに回転可能に支持する。これにより、2方向に揺動可能な揺動支持機構4の構造を単純化でき、部品点数を削減し、部品同士の接合部を少なくして耐久性を高めることができる。従って、高い周波数でミラー2のチルト動作を行うことができる。また、フレーム8は、Y軸方向の両側に向かって先細り形状となる平面形状をしているので、軸部83A、83Bの長さを確保してX軸周りの回転負荷を低減させる構成でありながら、Y軸周りに回転させる際のイナーシャを少なくして回転負荷を低減させることができる。
【0050】
本形態では、X軸周りの駆動力を発生させる第1磁気駆動機構6は、X軸上の位置で可動体保持部81に固定される第1磁石62と、第1磁石62にZ軸方向で対向する第1コイル61を備える。Y軸周りの駆動力を発生させる第2磁気駆動機構7は、可動体保持部81のY軸方向の両側においてY軸上の位置で枠部82に固定される第2磁石72A、72Bと、第2磁石72A、72BにZ軸方向で対向する第2コイル71A、71Bを備える。このように、可動体3のX軸周りの回転中心であるX軸に近い位置に第1磁石62を配置し、且つ、可動体3のY軸周りの回転中心であるY軸に近い位置に第2磁石72A、
72Bを配置することにより、可動体3をX軸周りおよびY軸周りに揺動させるときのイナーシャを小さくすることができる。従って、回転負荷を低減させることができ、少ない消費電流で可動体3を揺動させることができる。また、可動体3を高い周波数で揺動させることができる。
【0051】
本形態では、フレーム8は板金部材であり、可動体保持部81および枠部82には、それぞれ、樹脂製の磁石ホルダ(第1磁石ホルダ11および第2磁石ホルダ12A、12B)がインサート成形により固定される。第1磁石62および第2磁石72A、72Bは、第1磁石ホルダ11、第2磁石ホルダ12A、12Bを介してフレーム8に固定される。このように、金属製のフレーム8に樹脂製の磁石ホルダをインサート成形により一体化させた構造では、高い周波数で揺動させてもフレーム8から磁石ホルダが分離しない。従って、耐久性が高い。
【0052】
本形態では、第1磁石62の着磁方向は、Y軸方向であり、第2磁石72A、72Bの着磁方向は、X軸方向である。このような方向に着磁した場合には、第1磁石62と第2磁石72A、72Bは、いずれも分極着磁した磁石を用いる必要がないので、磁石のサイズを小さくすることができ、イナーシャを小さくして回転負荷を低減させることができる。また、このような方向に着磁した場合には、発生するローレンツ力は、可動体3の回転方向の成分を多く含む方向となるので、発生するローレンツ力を効率よく利用できる。従って、少ない消費電流で可動体3を揺動させることができる。
【0053】
本形態では、フレーム8は、板金部材であり、可動体保持部81には、樹脂製の可動体ホルダ10がインサート成形により固定される。可動体保持部81のY軸方向の中央には、X軸方向の両端からX軸方向の中央に向かって切り欠かれた一対の切欠き部813A、813Bが設けられており、一対の軸部83A、83Bは、一対の切欠き部813A、813Bの内側に配置される第1部分831を備える。可動体ホルダ10は、切欠き部813A、813Bと重なる部分が切り欠かれており、可動体3と第1部分831との間にZ軸方向の隙間Sが設けられている。このように、軸部83A、83Bと可動体3(ミラー2)との間にZ軸方向の隙間Sを形成したことにより、軸部83A、83Bがねじり変形する際に可動体3(ミラー2)と干渉しない。従って、軸部83A、83Bの長さを確保してX軸周りの回転負荷を低減させることができる構成でありながら、フレーム8の外形が大型化することを抑制できる。よって、Z軸方向から見た揺動装置1の製品サイズを小型化することができる。
【0054】
フレーム8は、Z軸方向から見て略矩形状、あるいは、略8角形に構成することができる。本形態では、フレーム8は、Z軸方向から見て略8角形である。従って、一方側枠部分86Aは、可動体保持部81のY軸方向の両側に位置する磁石保持部85A、85BからそれぞれX1方向(X軸方向の一方側)へ向かうに従ってX軸に近づく方向に直線状に延びる一対の一方側直線部88Aを備える。他方側枠部分86Bは、可動体保持部81のY軸方向の両側に位置する磁石保持部85A、85BからそれぞれX2方向(X軸方向の他方側)へ向かうに従ってX軸に近づく方向に直線状に延びる一対の他方側直線部88Bを備える。このような構成にすることで、一方側枠部分86Aおよび他方側枠部分86Bが先細り形状となり、且つ、フレーム8の外形を単純化することができる。
【0055】
本形態では、フレーム8と支持体5とを接続する接続機構9は、球体91と凹曲面96との間にY軸方向の与圧を付与するばね部材92を備えているので、球体91と凹曲面96とを確実に接触させることができる。
【0056】
(変形例)
(1)図8は、変形例のフレーム108を備えた揺動支持機構および可動体3の斜視図で
ある。以下、上記形態と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。図8に示すフレーム108は、枠部182の形状がZ軸方向から見て環状であることを除き、上記形態と同様に構成される。枠部182は、可動体保持部81のY軸方向の両側に位置する磁石保持部185A、185Bと、磁石保持部185A、185BからX1方向に円弧状に延びる一方側枠部分86Aと、磁石保持部85A、85BからX2方向に円弧状に延びる他方側枠部分186Bを備える。
【0057】
図8に示すように、一方側枠部分186Aは、X1方向へ先細り形状に延びて軸部83Aの先端に接続されており、他方側枠部分186Bは、X2方向へ先細り形状に延びて軸部83Bの先端に接続されている。従って、上記形態と同様に、軸部83A、83Bの長さを確保してX軸周りの回転負荷を低減させる構成でありながら、フレーム8をY軸周りに回転させる際のイナーシャを少なくして回転負荷を低減させることができる。また、フレーム108の外形が略円形状であるため、フレーム108の外形を単純化することができ、製造が容易である。
【0058】
(2)図9は、変形例の接続機構109を備えた揺動支持機構および可動体3の斜視図である。以下、上記形態と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。図9に示すように、フレーム208のY軸方向の両端に配置される一対の接続機構109は、ベアリングからなる。ベアリング(接続機構109)は、Y軸を中心として同軸に配置される内輪191および外輪192と、内輪191と外輪192との間に配置される球体などの転動体(図示せず)を備える。内輪191と外輪192は、転動体を介してY軸周りに摺動する。フレーム208のY軸方向の両端には、Z軸方向に屈曲した一対の突出部284A、284Bが設けられている。各突出部284A、284Bを貫通する軸部材193を介して、フレーム208のY軸方向の両端に内輪191が固定される。外輪192を支持体(図示せず)に固定することにより、フレーム208全体が接続機構109を介してY軸周りに回転可能に支持される。
【0059】
このように、フレーム208のY軸方向の両端をベアリングにより支持体に接続すると、2方向に揺動可能な揺動支持機構の構造を単純化することができ、部品点数を削減し、部品同士の接合部を少なくして耐久性を高めることができる。また、衝撃が加わったときに支持体(図示せず)からフレーム208が外れにくいため、耐衝撃性を高めることができる。
【0060】
(3)図9の接続機構109は、フレーム側摺動部が内輪191を備え、支持体側摺動部が外輪192を備える構成であったが、内輪191を支持体に設け、外輪192をフレーム208に設ける構成であってもよい。また、上記形態の接続機構9において、球体91と凹曲面96の配置を逆にしてもよい。
【0061】
(4)本発明の揺動支持機構は、平板状のフレームのY軸方向の両端に設けられた一対のフレーム側摺動部と、支持体に配置されて一対のフレーム側摺動部をY軸周りに回転可能に支持する一対の支持体側摺動部と、を備える構成であればよく、Y軸周りに摺動可能なフレーム側摺動部と支持体側摺動部の構成は、上記形態及びその変形例とは異なる構成であってもよい。
【0062】
(他の実施形態)
(1)上記形態の第2磁気駆動機構7は、可動体保持部81のY軸方向の両側に第2磁石72Aと第2コイル71Aの組、および、第2磁石72Bと第2コイル71Bの組を配置しているが、第2磁気駆動機構7を構成する磁石とコイルの組は、1組であってもよい。
【0063】
(2)第1磁気駆動機構6は、第1磁石62のZ2方向の端部を第1コイル61の内側に
配置しなくてもよい。同様に、第2磁気駆動機構7は、第2磁石72A、72BのZ2方向の端部を第2コイル71A、71Bの内側に配置しなくてもよい。また、第1磁石62の着磁方向をZ軸方向として、第1コイル61と対向する面で異なる極性の磁極(S極とN極)がY軸方向に並ぶように分極着磁される構成とすることができる。同様に、第2磁石72A、72Bの着磁方向をZ軸方向として、第2コイル71A、71Bと対向する面で異なる極性の磁極(S極とN極)がY軸方向に並ぶように分極着磁される構成とすることができる。
【0064】
(3)上記形態の揺動装置1は、可動体3として、走査光を反射するミラー2を揺動させるものであるが、揺動させる部品(可動体)は、ミラー2とは異なる部品であってもよい。すなわち、揺動装置1は、走査光を射出して反射光を受光する計測装置以外の用途に用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…揺動装置、2…ミラー、2a…反射面、3…可動体、4…揺動支持機構、5…支持体、6…第1磁気駆動機構、7…第2磁気駆動機構、8…フレーム、9…接続機構、10…可動体ホルダ、11…第1磁石ホルダ、12A、12B…第2磁石ホルダ、13A、13B…切欠き部、50…ケース、51…ベース、52…カバー、53…コイル支持板、54…中央凹部、55…貫通部、56…凹部、57…第1コイル配置穴、58…第2コイル配置穴、61…第1コイル、62…第1磁石、63…センサ、71A、71B…第2コイル、72A、72B…第2磁石、73…センサ、81…可動体保持部、82…枠部、83A、83B…軸部、84A、84B…突出部、85A、85B…磁石保持部、86A…一方側枠部分、86B…他方側枠部分、87A、87B…先端部、88A…一方側直線部、88B…他方側直線部、91…球体、92…ばね部材、94…板部、95…ばね部、96…凹曲面、108…フレーム、109…接続機構、182…枠部、185A、185B…磁石保持部、186A…一方側枠部分、186B…他方側枠部分、191…内輪、192…外輪、193…軸部材、208…フレーム、284A、284B…突出部、511…底板部、512…縁部、521…端板部、522…側板部、523…開口部、551…溝部、552…開口部、810…中央部、811、812…スリット、813A、813B…切欠き部、831…第1部分、832…第2部分、851…スリット、S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9