(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113806
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】放熱部材、放熱機構付き装置および発熱部材
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20240816BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L23/40 Z
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019010
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】390022471
【氏名又は名称】アオイ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB06
5E322FA04
5E322FA06
5E322FA09
5F136BA30
5F136BC06
5F136FA03
5F136FA23
5F136FA51
5F136FA62
5F136FA88
(57)【要約】
【課題】伝熱性が高い放熱部材、放熱機構付き装置および発熱部材を提供する。
【解決手段】放熱部材3Aは、筐体2Aと対向する基部33と、基部33に設けられ、基部33から筐体2Aへ向かって突出する複数の突起部35と、を備える。そして、筐体2Aと基部33との間と筐体2Aと突起部35との間に異方性導電膜4Aが充填されている。異方性導電膜4Aは、熱硬化性樹脂41と、熱硬化性樹脂41に分散した金属粒子42とを含むことが望ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部材と対向する基部と、
前記基部に設けられ、前記基部から前記発熱部材へ向かって突出する複数の突起部と、
を備え、
前記発熱部材と前記基部との間と前記発熱部材と前記突起部との間に熱伝導性材料が充填されている放熱部材。
【請求項2】
前記熱伝導性材料は、樹脂と、該樹脂に分散した導電性粒子とを含む、
請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記熱伝導性材料は、前記発熱部材と前記基部との間と前記発熱部材と前記突起部との間に充填されて異方性導電膜を形成している、
請求項2に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記基部は、グラファイトシートと、前記グラファイトシートの表面を覆う金属膜とを有し、
前記複数の突起部は、前記金属膜を形成する金属材料と同じ金属材料によって形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項5】
発熱部材と、
請求項1に記載の放熱部材と、
を備える放熱機構付き装置。
【請求項6】
放熱部材に対向する対向部と、
前記対向部に設けられ、前記対向部から前記放熱部材へ向かって突出する複数の突起部と、
を備え、
前記対向部と前記放熱部材との間と前記突起部と前記放熱部材との間に熱伝導性材料が充填されている発熱部材。
【請求項7】
請求項6に記載の発熱部材と、
前記対向部と対向する前記放熱部材と、
を備える放熱機構付き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱部材、放熱機構付き装置および発熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
放熱部材には、放熱効率を高めるため、金属板により形成されたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、パワー半導体素子が実装された基板と非鉛系はんだによって接合された金属放熱板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の金属放熱板は、基板と接合するときに、板面全体に一定の圧力がかかるため、基板と密着しにくく、その結果、基板と金属放熱板が一定の距離だけ離れてしまい、伝熱性が低下する要因となる。
【0006】
また、非鉛系はんだ自体の熱伝導率が低く、基板から金属放熱板への熱移動を阻害する。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、伝熱性が高い放熱部材、放熱機構付き装置および発熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る放熱部材は、
発熱部材と対向する基部と、
前記基部に設けられ、前記基部から前記発熱部材へ向かって突出する複数の突起部と、
を備え、
前記発熱部材と前記基部との間と前記発熱部材と前記突起部との間に熱伝導性材料が充填されている。
【0009】
前記熱伝導性材料は、樹脂と、該樹脂に分散した導電性粒子とを含んでもよい。
【0010】
前記熱伝導性材料は、前記発熱部材と前記基部との間と前記発熱部材と前記突起部との間に充填されて異方性導電膜を形成していてもよい。
【0011】
前記基部は、グラファイトシートと、前記グラファイトシートの表面を覆う金属膜とを有し、
前記複数の突起部は、前記金属膜を形成する金属材料と同じ金属材料によって形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係る放熱機構付き装置は、
発熱部材と、
第1の観点に係る放熱部材と、
を備える。
【0013】
さらに、本発明の第3の観点に係る発熱部材は、
放熱部材に対向する対向部と、
前記対向部に設けられ、前記対向部から前記放熱部材へ向かって突出する複数の突起部と、
を備え、
前記対向部と前記放熱部材との間と前記突起部と前記放熱部材との間に熱伝導性材料が充填されている。
【0014】
本発明の第4の観点に係る放熱機構付き装置は、
第3の観点に係る発熱部材と、
前記対向部と対向する前記放熱部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、放熱部材は、基部に設けられ、基部から発熱部材へ向かって突出する複数の突起部を備える。このため、突起部それぞれから発熱部材までの距離が小さい。その結果、発熱部材から放熱部材への伝熱性が高い。
【0016】
また、発熱部材と基部との間と発熱部材と突起部との間に熱伝導性材料が充填されているので、発熱部材と基部との間と発熱部材と突起部との間の伝熱性が高い。その結果、放熱部材には発熱部材から熱が伝わりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る放熱機構付き装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II切断線の断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る放熱機構付き装置が備える放熱部材の斜視図である。
【
図4】(A)実施の形態1に係る放熱機構付き装置の組み立て方法で筐体に組み付けたときの放熱部材の断面図である。(B)同組み立て方法で筐体を接合するときの放熱部材の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る放熱機構付き装置の断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態3に係る放熱機構付き装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る放熱部材、放熱機構付き装置および発熱部材について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。また、図に示す直交座標系XYZにおいて、放熱部材が備える平面状の基部を水平にしたときの、水平方向がXY方向、鉛直方向がZ方向である。以下、適宜、この座標系を引用して説明する。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る放熱機構付き装置は、筐体に接合された放熱部材が、筐体に生じた熱を周辺の空気に放熱する装置である。また、筐体に局所的に生じた熱を放熱部材に伝えた後、その熱を、放熱部材を介して筐体の周辺領域に拡散させる装置である。以下、上述した放熱部材がグラファイトシートによって形成された形態を例に、
図1-
図3を参照して放熱機構付き装置の構成について詳細に説明する。
【0020】
図1は、実施の形態1に係る放熱機構付き装置1Aの斜視図である。
図2は、
図1に示すII-II切断線の断面図である。
図3は、放熱機構付き装置1Aが備える放熱部材3Aの斜視図である。
なお、
図1-
図3では、理解を容易にするため、放熱機構付き装置1Aの厚み、放熱部材3Aに設けられた突起部35の直径、高さ等の各部の大きさを強調している。また、各部の形状を単純化して概念化している。
【0021】
図1および
図2に示すように、放熱機構付き装置1Aは、筐体2A、放熱部材3Aおよび、異方性導電膜4Aにより構成されている。
【0022】
筐体2Aは、発熱する部材に接する部品、または発熱する部材を収容する部品であり、結果的に熱を発することから特許請求の範囲では発熱部材ともいう部品である。
【0023】
詳細には、筐体2Aは、直方体の形状に形成されている。図示しないが、筐体2Aの内部には、電力が供給されることにより発熱する電子部品、電気部品等が収容されていてもよい。また、筐体2Aは、金属材料、例えば、アルミニウム合金、鉄鋼、純銅、銅合金等の伝熱性が高い材料により形成されている。そして、筐体2Aには、上述した電子部品、電気部品等が直接または間接的な手段により熱的に接触している。その結果、筐体2Aには、電子部品、電気部品等が発熱した場合に、その熱が高い効率で伝わる。一方、筐体2Aの上面部21には、伝わった熱を放熱するため、放熱部材3Aが設けられている。なお、
図1および
図2では、理解を容易にするため、筐体2Aを簡略化した形状で示しているが、筐体2Aの形状はこれに限定されず、放熱部材3Aが接合可能であればよい。
【0024】
放熱部材3Aは、筐体2Aから伝わった熱を放熱部材のXY平面方向に拡散するため、伝熱性が高い材料により形成されている。そして、表面積を大きくして、その熱を高い効率で放熱、または拡散させるため、平板状に形成されている。詳細には、放熱部材3Aは、
図2に示すように、グラファイトシート31と、グラファイトシート31の表面を覆う金属層32とにより構成されている。
【0025】
グラファイトシート31は、図示しないが、複数のグラファイトが積層する層構造を有する。それらグラファイトでは、ベーサル面が延在する方向への伝熱性が高いところ、そのベーサル面がシート面方向、すなわち、
図2でいうXY平面方向に向けられている。その結果、グラファイトシート31は、シートが延在するXY平面の方向に、高い効率で熱を拡散する。一方、グラファイトシート31は、強度を向上させるため、または他部材との接合性を高めるため、金属層32により覆われている。
【0026】
金属層32は、熱伝導性が高い金属材料、例えば、電気銅、無酸素銅、脱酸銅等の純銅または銅合金によって形成されている。上述したグラファイトシート31は、表面処理により表面に微細な凹凸が多数形成されているところ、金属層32は、それら微細な凹凸の上に金属が積層されることにより、グラファイトシート31に強く密着している。これにより、金属層32は、グラファイトシート31からの剥離が防がれている。また、グラファイトシート31からの伝熱性が高められている。
【0027】
グラファイトシート31と金属層32は、このような構成により、放熱部材3Aの基部33を形成している。その基部33の下面部34には、筐体2Aから伝わる熱を高い効率で伝えるため、
図3に示すように、複数の突起部35(ピラーともいう)が設けられている。
【0028】
複数の突起部35は、放熱部材3Aの基部33と筐体2Aとの接合部分での伝熱性向上のために設けられている。詳細には、基部33の下面部34と筐体2Aの上面部21が粘着テープ、グリース、接着材等の材料により接合されることがある。そして、接合する材料がある程度の厚みの層を形成する結果、筐体2Aから基部33への熱伝導性が低下してしまうことがある。突起部35は、その接合する材料の層の厚みが小さくなる領域を設けて、この課題を解決するために設けられている。
【0029】
突起部35それぞれは、基部33からの熱伝導性を高めるため、熱伝導性が高い金属材料により形成されている。例えば、基部33が備える金属層32と同じ金属材料、具体的には純銅または銅合金によって、基部と一体的に形成されている。そして、突起部35それぞれは、円柱の形状に形成されている。なお、放熱部材3Aと筐体2Aとの距離が離れすぎないようにするため、突起部35の鉛直方向の高さは、30μm以下であるとよい。
【0030】
突起部35それぞれの円柱軸は、下面部34に対して垂直な方向に延びている。その円柱長さは互いに同じである。また、突起部35の突端面36は円柱軸に垂直な結果、下面部34に平行である。そして、突起部35は、マトリックス状に配置され、下面部34全体にわたって均等に配置されている。
【0031】
放熱部材3Aの基部33は、
図2に示すように、このような突起部35の突端面36を筐体2Aの上面部21に向けた状態で、筐体2Aの上面部21に重ね合わされている。そして、基部33では、突起部35が上述した形状、配置であることにより、一部の突起部35だけが筐体2Aの上面部21に近接し、その他の突起部35が筐体2Aの上面部21から離れている、いわゆる片当たり状態が防がれている。
【0032】
また、突端面36と筐体2Aの上面部21との間には、異方性導電膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)4Aが設けられているところ、突端面36が筐体2Aの上面部21に近接することにより、これらの間の熱伝導性が高められている。そして、突起部35のいわゆる片当たり状態が防がれていることにより、基部33全体で突起部35と筐体2Aとの間の熱伝導性が均一に高い。
【0033】
一方、異方性導電膜4Aは、突起部35と筐体2Aを接合するためと、基部33と筐体2Aを接合するために設けられている。また、それらの間の熱伝導性を高めるために設けられている。
【0034】
その構成について説明すると、異方性導電膜4Aは、熱硬化性樹脂41と、熱硬化性樹脂41に分散され、熱硬化性樹脂41よりも熱伝導率が高い複数の金属粒子42(特許請求の範囲では導電性粒子ともいう)とにより形成されている。
なお、熱硬化性樹脂41と金属粒子42は、後述するように熱伝導率が高いため、特許請求の範囲で熱伝導性材料とも称される構成である。
【0035】
熱硬化性樹脂41は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を主成分とする接着剤が熱硬化することにより形成されている。
【0036】
これに対して、金属粒子42は、樹脂により形成された球体が導電膜、例えば、金、ニッケル等の金属膜に被覆されることにより形成されている。金属粒子42は、金属膜に被覆されることにより、上述した熱硬化性樹脂41よりも熱伝導率が高められている。
【0037】
なお、金属粒子42の直径は、後述する異方性導電膜4Aによる接合を容易にするため、突起部35同士の間に入り込み可能な大きさかつ、突起部35の円柱長さよりも小さいことが望ましい。例えば、金属粒子42には、直径が3~4μmであるものを用いることが出来る。
【0038】
このような構成の熱硬化性樹脂41と金属粒子42を含む異方性導電膜4Aが、上述した突起部35と筐体2Aの上面部21との間のほか、基部33の下面部34と筐体2Aの上面部21との間に配置されている。その結果、上述した特許文献1に記載の非鉛系はんだを用いて接合する場合よりも熱伝導性が高められている。
【0039】
さらに、突起部35と筐体2Aの上面部21との間では、後述する放熱機構付き装置1Aの組み立て時に、突起部35が筐体2Aの上面部21に押し付けられている結果、それらの間にある金属粒子42が弾性変形または塑性変形している。これにより、金属粒子42は、突起部35の突端面36と筐体2Aの上面部21とに密着して、これらを導通させている。また、押圧時の圧力が突端面36に集中することにより、金属粒子42への圧力が増し、突起部35と筐体2Aの上面部21との密着性をより強くすることができる。その結果、突起部35と筐体2Aの上面部21との間の熱伝導性が、基部33の下面部34と筐体2Aの上面部21との間の熱伝導性よりも高められている。これにより、放熱機構付き装置1Aでは、熱が筐体2Aから放熱部材3Aへ伝わりやすく、放熱されやすい。
【0040】
続いて、
図4(A)、
図4(B)を参照して、放熱機構付き装置1Aの組み立て方法について説明する。
【0041】
図4(A)は、放熱機構付き装置1Aの組み立て方法で筐体2Aに組み付けたときの放熱部材3Aの断面図である。
図4(B)は、同組み立て方法で筐体2Aを接合するときの放熱部材3Aの断面図である。
なお、
図4(A)と
図4(B)は、
図1に示すII-II切断線で筐体2Aと放熱部材3Aを切断した場合の断面図を示している。
【0042】
まず、図示しないが、未加工のグラファイトシート31に表面処理、例えば、サンドブラストを施し、続いて、そのグラファイトシート31の表面に無電解メッキ法を用いて金属層32を形成する。これにより、上述した基部33を作製する。さらに、スクリーン印刷、若しくは、ディスペンサにより、金属ペースト、例えば、銅ペーストを基部33に塗布する。これにより、上述した突起部35を基部33に形成する。または、メッキ防止材、例えば、ドライフィルムレジストを用いた電解メッキにより、上述した突起部35を基部33に形成する。以上の工程により、上述した基部33および突起部35を備える放熱部材3Aを作製する。
【0043】
並行して上述した構成の筐体2Aを用意する。そして、
図4(A)に示すように、筐体2Aの上面部21に、未硬化状態の異方性導電膜5を配置し、さらに、その上に放熱部材3Aを重ねる。このとき、未硬化状態の異方性導電膜5の代わりに、アクリル樹脂、エポキシ樹脂を主成分とするペーストに金属粒子42が混ぜられた異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)を用いてもよい。
【0044】
次に、
図4(B)に示すように、放熱部材3Aを筐体2Aに押し付ける。その押し付けは、金属粒子42が弾性変形または塑性変形する程度の圧力を加えることにより行う。これにより、突起部35の突端面36から筐体2Aの上面部21までの距離D1が金属粒子42の直径よりも小さくなり、金属粒子42が圧縮されて弾性変形または塑性変形する。そして、金属粒子42が突起部35の突端面36と筐体2Aの上面部21に密着する。また、熱硬化性樹脂41が圧縮されて突起部35同士の隙間に充填される。
【0045】
この状態で、未硬化状態の異方性導電膜5の接着剤51が硬化する温度まで加熱する。これにより、放熱部材3Aを筐体2Aに接合する。その結果、放熱機構付き装置1Aが完成する。
【0046】
金属粒子42が突起部35の突端面36と筐体2Aの上面部21に密着したまま、放熱部材3Aと筐体2Aが接合するので、完成した放熱機構付き装置1Aでは、筐体2Aから放熱部材3Aへ熱が伝わりやすい。また、突起部35同士の隙間が熱硬化性樹脂41で充填されたまま、放熱部材3Aと筐体2Aが接合するので、放熱機構付き装置1Aでは、筐体2Aから放熱部材3Aへ熱が伝わりやすい。その結果、放熱機構付き装置1Aでは、放熱効率が高い。
【0047】
以上のように、実施の形態1に係る放熱機構付き装置1Aでは、放熱部材3Aが基部33の下面部34に設けられ、その下面部34から筐体2Aの上面部21へ向かって突出する複数の突起部35を備える。このため、突起部35それぞれから筐体2Aまでの距離が小さく、筐体2Aから放熱部材3Aへ熱が伝わりやすい。その結果、放熱機構付き装置1Aでは、放熱部材3Aの放熱効率が高い。
【0048】
また、突起部35それぞれと筐体2Aとの間に金属粒子42が配置され、その金属粒子42が、突起部35それぞれと筐体2Aの上面部21とに密着する。このため、筐体2Aから突起部35への伝熱性が高い。例えば、筐体2Aと放熱部材3Aの基部33を、上述した特許文献1に記載の非鉛系はんだを用いて接合する場合よりも伝熱性が高い。その結果、放熱部材3Aの放熱効率が高い。
【0049】
さらに、筐体2Aと基部33とを、熱硬化性樹脂41と金属粒子42を介して、すなわち、熱伝導性材料を介して、接合する際に、圧力が筐体2Aの面全体に一定にかかるのではなく、突起部35の突端面に強くかかるので、突起部36が熱伝導性材料へ深く圧入される。これにより、突端部35と筐体2Aとの間に金属粒子42が挟まれやすく密着性が高まる。その結果、放熱部材3Aの伝熱性を高めることができる。
【0050】
(変形例)
なお、実施の形態1では、グラファイトシート31を形成する、図示しない複数のグラファイトのベーサル面がXY平面方向に延在している、しかし、ベーサル面の向きは、任意である。例えば、ベーサル面は、グラファイトシート31の厚み方向へ向いていてもよい。このような向きの場合、グラファイトシート31は厚み方向へ熱を伝えやすくなるが、金属層32が形成されている結果、シート面方向へ熱が十分に拡散するからである。
【0051】
また、実施の形態1では、グラファイトシート31を被覆する金属層32と突起部35が純銅または銅合金である例を説明しているが、金属層32と突起部35は、純銅または銅合金以外の金属材料、例えば、アルミニウム合金等で形成されていてもよい。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態1に係る放熱機構付き装置1Aでは、筐体2Aと放熱部材3Aが異方性導電膜4Aにより接合されている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、筐体2Aと放熱部材3Aとの間が熱伝導性材料によって充填されていればよい。詳細には、筐体2Aが有する上面部21と放熱部材3Aの基部33が有する下面部34との間と、筐体2Aの上面部21と放熱部材3Aの突起部35との間に熱伝導性材料が充填されていればよい。
ここで、熱伝導性材料とは、空気よりも熱伝導率が高い材料のことをいう。また、充填とは、空間に熱伝導性材料がある程度詰まって、その空間の熱伝導率が高まることをいう。
【0053】
実施の形態2に係る放熱機構付き装置1Bでは、筐体2Aと放熱部材3Aが、その熱伝導性材料である熱硬化性樹脂41により接合されている。以下、
図5を参照して、実施の形態2に係る放熱機構付き装置1Bについて説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同じ構成の説明を省略し、実施の形態1と異なる構成について説明する。
【0054】
図5は、実施の形態2に係る放熱機構付き装置1Bの断面図である。
なお、
図5は、
図1に示すII-II切断線で放熱機構付き装置1Bを切断した場合の断面図を示している。
【0055】
図5に示すように、筐体2Aと放熱部材3Aとの間には、熱硬化性樹脂41が充填されている。
【0056】
熱硬化性樹脂41は、金属粒子42が混ぜられていない接着剤が硬化することにより、形成されている。その熱硬化性樹脂41は、実施の形態1で説明したように空気よりも熱伝導率が高い。熱硬化性樹脂41は、筐体2Aと放熱部材3Aとの間に充填されることにより、筐体2Aから放熱部材3Aへの熱伝導性を高めている。
【0057】
放熱機構付き装置1Bも、実施の形態1に係る放熱機構付き装置1Aと同じ放熱部材3Aを備える結果、基部33に複数の突起部35が設けられている。突起部35それぞれと筐体2Aの上面部21までの距離D2は小さく、その結果、その部分での熱硬化性樹脂41の層の厚みが小さい。これにより、金属粒子42が存在しなくとも、筐体2Aの上面部21から突起部35までの伝熱性が十分に高い。その結果、放熱機構付き装置1Bでも、放熱部材3Aの放熱効率が十分に高い。
【0058】
以上のように、実施の形態2に係る放熱機構付き装置1Bでも、実施の形態1の場合と同様に、突起部35それぞれから筐体2Aまでの距離が小さく、筐体2Aから放熱部材3Aへ熱が伝わりやすい。その結果、放熱部材3Aの放熱効率が高い。
【0059】
(実施の形態3)
実施の形態1、2に係る放熱機構付き装置1A、1Bでは、放熱部材3Aに複数の突起部35が設けられている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、放熱部材3Aではなく、発熱部材、例えば、筐体2Aが複数の突起部35を備えてもよい。
【0060】
実施の形態3に係る放熱機構付き装置1Cでは、筐体2Cが複数の突起部25を備える。以下、
図6を参照して、実施の形態3に係る放熱機構付き装置1Cについて説明する。なお、実施の形態3では、実施の形態1、2と同じ構成の説明を省略し、実施の形態1、2と異なる構成について説明する。
【0061】
図6は、実施の形態3に係る放熱機構付き装置1Cの断面図である。
なお、
図6は、
図5と同様に、
図1に示すII-II切断線で放熱機構付き装置1Cを切断した場合の断面図を示している。
【0062】
図6に示すように、筐体2Cは、上面部21に複数の突起部25が設けられている。
【0063】
突起部25それぞれは、伝熱性を高めるため、筐体2Cと同じ金属材料により形成されている。また、上面部21と一体的に成型されている。突起部25それぞれは、実施の形態1で説明した突起部35と同じ形状、大きさの円柱の形状に形成されている。また、突起部25それぞれは、実施の形態1で説明した基部33の下面部34に対する配置と同じ配置で筐体2Cの上面部21に設けられている。そして、突起部25の突端面26は、放熱部材3Cの下面部34と対向している。
なお、複数の突起部25が設けられた筐体2Cの上面部21は、放熱部材3Cと対向することから、特許請求の範囲では対向部ともいう。
【0064】
これに対して、放熱部材3Cの下面部34は、実施の形態1、2の場合と異なり、平らであり、突出する構造物が存在しない。そして、下面部34に対して筐体2Cの突起部25が突出することにより、下面部34と筐体2Cの突起部25との間の距離D3が小さい。この下面部34と筐体2Cの突起部25との間には、実施の形態2の場合と同様に、接着剤が硬化することにより形成された熱硬化性樹脂41が充填されている。その熱硬化性樹脂41は、空気よりも熱伝導率が高い。その結果、筐体2Cの突起部25から放熱部材3Cの下面部34への熱伝導性が高められている。これにより、放熱機構付き装置1Cでも、放熱部材3Cの放熱効率が十分に高い。
【0065】
以上のように、実施の形態3に係る放熱機構付き装置1Cでは、筐体2Cが有する突起部25それぞれから放熱部材3Cまでの距離が小さく、突起部25から放熱部材3Cへ熱が伝わりやすい。その結果、放熱部材3Cの放熱効率が高い。
【0066】
(変形例)
なお、実施の形態3では、放熱部材3Cの下面部34が平らで突起部35を有していないが、放熱部材3Cの下面部34に、実施の形態1、2の場合と同様に、複数の突起部35が形成されてもよい。その場合、筐体2Cが有する突起部25それぞれが、放熱部材3Cの下面部34に設けられた突起部35それぞれと対向して、それらの距離が小さいとよい。これにより、筐体2Cの突起部25から放熱部材3Cの突起部35までの熱伝熱性を高めることができるからである。
【0067】
また、実施の形態3では、熱硬化性樹脂41に金属粒子42が分散されてないが、この熱硬化性樹脂41に代えて、実施の形態1で説明した異方性導電膜4Aが用いられてもよい。この場合、異方性導電膜4Aに含まれる金属粒子42が、放熱部材3Cの下面部34と筐体2Cの突起部25とを導通されて、より伝熱性が高まるからである。
【0068】
以上、本発明の実施の形態1-3に係る放熱部材3A、3C、放熱機構付き装置1A-1Cおよび発熱部材について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
例えば、実施の形態1-3では、筐体2A、2C内の部品が発熱することにより、筐体2A、2Cが熱を持つ。すなわち、筐体2A、2Cが発熱部材として機能する。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、放熱機構付き装置1A-1Cが発熱部材を備えていればよい。従って、筐体2A、2Cは、他の発熱部材に置き換えられてもよい。例えば、筐体2A、2Cは、電力の供給により発熱する電子部品が実装された基板であってもよい。なお、筐体2A、2Cは、実施の形態1-3では直方体状であるが、他の形状、例えば、板状であってもよい。
【0070】
また、実施の形態1-3では、発熱部材である筐体2A、2Cの上面部21に放熱部材3A、3Cが設けられている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、放熱部材3A、3Cが、発熱部材と対向する基部33と、基部33に設けられ、基部33から発熱部材へ向かって突出する複数の突起部35と、を備えるか、または、発熱部材、例えば、筐体2A、2Cが放熱部材3A、3Cに対向する対向部と、対向部に設けられ、対向部から放熱部材3A、3Cへ向かって突出する複数の突起部25と、を備えていればよい(以下、このことを発明の条件という)。従って、放熱部材3A、3Cと筐体2A、2Cの各部分の向きは、これら発明の条件を満たす限りにおいて、任意である。例えば、上記の上面部21は、これら発明の条件を満たすのであれば、下に向けられてもよいし、左右方向に向けられてもよい。
【0071】
実施の形態1、2では、放熱部材3Aが備える基部33の平面状の下面部34に突起部35が設けられている。また、実施の形態3では、筐体2Cの平面状の上面部21に突起部25が設けられている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、放熱部材3A、3Cが上述した発明の条件を満たすか、または、発熱部材が上述した発明の条件を満たしていればよい。従って、基部33の下面部34と筐体2Cの上面部21の形状は、上述した発明の条件を満たす限りにおいて、任意である。例えば、基部33の下面部34と筐体2Cの上面部21は、曲面状であってもよい。
【0072】
実施の形態1-3では、突起部25、35それぞれが円柱状である。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、突起部35が基部33に設けられ、基部33から発熱部材へ向かって突出するか、または、突起部25が対向部に設けられ、対向部から放熱部材3A、3Cへ向かって突出していればよい。従って、突起部25、35それぞれの形状は、この条件を満たす限りにおいて任意である。例えば、突起部25、35それぞれは、楕円柱、円錐、角柱、角錐または錘台等の形状であってもよい。また、突起部25、35同士で外径が異なっていてもよい。また、一部の突起部25、35が円柱状であり、残りの突起部25、35が楕円柱状であってもよい。
【0073】
実施の形態1-3では、放熱部材3Aが備える基部33が、グラファイトシート31と金属層32により形成されている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、基部33は発熱部材と対向していればよい。また、基部33は、基部33から発熱部材へ向かって突出する複数の突起部35が設けられていればよい。従って、基部33は、この条件を満たすものであれば、グラファイトシート31と金属層32を備えていなくてもよい。例えば、基部33は、グラファイトシート31を備えず、伝熱率が高い金属材料によって全体が形成されていてもよい。このような基部33でも十分な放熱性能が得られるからである。
【符号の説明】
【0074】
1A-1C 放熱機構付き装置
2A,2C 筐体
3A,3C 放熱部材
4A 異方性導電膜
5 未硬化状態の異方性導電膜
21 上面部
25 突起部
26 突端面
31 グラファイトシート
32 金属層
33 基部
34 下面部
35 突起部
36 突端面
41 熱硬化性樹脂
42 金属粒子
51 接着剤
D1-D3 距離