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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011381
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】補修用部材
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/22 20060101AFI20240118BHJP
   B64D 13/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B64B1/22
B64D13/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113321
(22)【出願日】2022-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
(57)【要約】
【課題】飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を従来技術よりも確実に塞ぐ手段を提供する。
【解決手段】補修用部材1は、キャビン92に空いた孔O1を塞ぐように、キャビン92の内側に貼り付けられる。補修用部材1は第1層11が有する粘着層112によりキャビン92に結合される。第1層11の基層111は合成ゴム等の弾性体であり、第2層12は金属等の第1層11よりも剛性の高い部材である。キャビン92が飛翔体により上空へと搬送されると、キャビン92に生じた孔O1の部分にキャビン92の内外気圧差により内側から外側に向かう力が生じる。第1層11はその力により変形しその一部が孔O1に引き込まれるが、剛性の高い第2層12がキャビン92の内側から第1層11を保持するため、補修用部材1がキャビン92から剥がれて、孔O1を通って外部空間S2へと排出されることはない。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を前記容器の内側から塞ぐように配置される補修用部材であって、
前記孔を覆う部分である第1部分と、前記第1部分と連結された第2部分と
を備え、
前記第2部分は前記第1部分よりも剛性が高く、
前記容器の内部の圧力が外部の圧力よりも高い場合に、前記第1部分の一部は前記容器の内外に生じる圧力差によって前記孔に引き込まれ、前記第2部分は一部が前記孔に引き込まれた状態の前記第1部分を前記容器の内側から保持する
補修用部材。
【請求項2】
前記第1部分の前記容器に接触する部分は前記容器に対する粘着性を有する
請求項1に記載の補修用部材。
【請求項3】
前記第1部分は前記容器に接触する第1層に含まれ、
前記第2部分は前記第1層の前記容器に対向しない側に積層配置された第2層に含まれる
請求項1に記載の補修用部材。
【請求項4】
前記第2部分は、少なくとも一部が孔の外側に配置されるフレームに含まれ、
前記第1部分は、前記フレームの間を塞ぐように前記フレームと連結されたシート形状の部分に含まれる
請求項1に記載の補修用部材。
【請求項5】
前記第2部分は塑性変形する
請求項1に記載の補修用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛翔体により上空へと搬送される容器の気密性を保つための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
気球、飛行船等の飛翔体が上昇する際、その高度が高くなるにつれて周囲の気圧は低下する。従って、飛翔体により上空へと搬送される物(以下、「被搬送物」という)が生物や精密機器のように、所定範囲内の気圧下に置かれる必要のある物である場合、一般的に被搬送物は気密な容器に収容された状態で搬送される。
【0003】
被搬送物を収容する気密な容器に、他の物体との衝突等により孔が空く場合がある。孔の空いた容器が飛翔体により上空へと搬送されると、孔からキャビン内の空気が外部に漏れ出し、キャビン内の気圧が低下する。従って、容器に空いた孔は、容器内の気圧が許容範囲を超えて低下する前に塞がれる必要がある。
【0004】
気密性が保たれるべき空間を形成する壁体に孔が空いた場合に、その孔を塞ぐ技術として、例えば、タイヤのパンクをパッチにより補修する技術がある。タイヤのパンクを補修するためのパッチを開示している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、外側のカバー層と、タイヤの壁体を連接するための連接層と、カバー層と連接層を繋げるための中間層とを備えるタイヤ修復用のパッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-508198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の補修用パッチは、気密な空間を形成する壁体の外側に貼り付けられる。壁体に孔が空いた場合、壁体の内外圧力差により、内側から外側に向かい空気を押し出す力が生じる。従って、その空気を押し出す力に対し、補修用パッチと壁体との結合力(例えば、接着剤による粘着力)が不足すると、補修用パッチが壁体から剥がれ、孔から空気が漏れ出してしまう。
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明は、飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を従来技術よりも確実に塞ぐ手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一態様として、飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を前記容器の内側から塞ぐように配置される補修用部材であって、前記孔を覆う部分である第1部分と、前記第1部分と連結された第2部分とを備え、前記第2部分は前記第1部分よりも剛性が高く、前記容器の内部の圧力が外部の圧力よりも高い場合に、前記第1部分の一部は前記容器の内外に生じる圧力差によって前記孔に引き込まれ、前記第2部分は一部が前記孔に引き込まれた状態の前記第1部分を前記容器の内側から保持する補修用部材を提供する。
【0009】
前記第1部分の前記容器に接触する部分は前記容器に対する粘着性を有してもよい。
【0010】
前記第1部分は前記容器に接触する第1層に含まれ、前記第2部分は前記第1層の前記容器に対向しない側に積層配置された第2層に含まれてもよい。
【0011】
前記第2部分は、少なくとも一部が孔の外側に配置されるフレームに含まれ、前記第1部分は、前記フレームの間を塞ぐように前記フレームと連結されたシート形状の部分に含まれてもよい。
【0012】
前記第2部分は塑性変形してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる補修用部材によれば、飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を塞いだ場合、容器の内側から外側に向かう空気の力により補修用部材が剥がれることがない。その結果、孔を確実に塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態にかかる補修用部材の使用対象のキャビンを備えるガス気球の全体構成を示した図。
図2A】キャビンを鉛直方向に切断した断面を側方から見た模式図。
図2B】孔が空いた状態のキャビンの模式図。
図3A】第1実施形態にかかる補修用部材を正面方向に見た図。
図3B】第1実施形態にかかる補修用部材の断面図。
図4】第1実施形態にかかる補修用部材により孔が塞がれた状態のキャビンの断面図。
図5A】第2実施形態にかかる補修用部材を正面方向に見た図。
図5B】第2実施形態にかかる補修用部材の断面図。
図6】第2実施形態にかかる補修用部材により孔が塞がれた状態のキャビンの断面図。
図7】一変形例にかかる補修用部材を正面方向から見た図。
図8】一変形例にかかる補修用部材の断面図。
図9】一変形例にかかる補修用部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態にかかる補修用部材1を説明する。補修用部材1は、飛翔体により飛翔される容器に空いた孔を塞ぐために用いられる。
【0016】
図1は、ガス気球9の全体構成を示した図である。ガス気球9は飛翔体の一例である。ガス気球9は、空気より軽量なガス(ヘリウムガス等、以下、「軽量ガス」とう)の充填された袋体である気嚢91と、気嚢91に吊られて気嚢91と共に上昇するキャビン92と、気嚢91とキャビン92を連結する複数の索体である吊索93を備える。
【0017】
図2Aは、キャビン92を鉛直方向に切断した断面を側方から見た模式図である。キャビン92は、搭乗員H1を収容する容器である。キャビン92は、内側に気密な収容空間S1を形成する壁体で構成されている。搭乗員H1は収容空間S1に収容された状態で、ガス気球9により上空へと搬送される。
【0018】
例えば、キャビン92に対し搭乗員H1が誤って内側から尖った物をぶつける場合があり得る。また、ガス気球9が飛翔中に、気球に搭載した機材が脱落し、落下物がキャビンに衝突する場合や、低高度の飛行中に飛来物がキャビンに衝突する場合があり得る。それらの外部の物体のキャビン92に対する衝突等により、キャビン92に孔が空く場合がある。図2Bは、孔O1が空いた状態のキャビン92を模式的に示した図である。
【0019】
なお、本願において「孔」とは、壁体を貫通する開口を意味し、その形状は限定されない。従って、例えば、細長く拡がる亀裂も本願における孔の一種である。
【0020】
キャビン92に孔が生じると、その孔からキャビン92内部の空気がキャビン92の外へと漏出し、キャビン92の内側の気圧が低下する。その状態が放置されると、キャビン92の内側の気圧が、人間が生存可能な気圧より低くなり、搭乗員H1の生命が危険に晒される場合がある。従って、キャビン92に孔が生じた場合、その孔を速やかに、かつ、確実に塞ぐ補修が必要になる。
【0021】
本実施形態にかかる補修用部材1は、キャビン92に生じた孔を塞ぐために用いられる。補修用部材1は、全体としてシート状の形状をしている。図3Aは、補修用部材1を、そのシート状の形状が拡がる面に垂直な方向(以下、「正面方向」とする)に見た図である。なお、図3Aに示される補修用部材1は正面方向に見た形状が円形であるが、補修用部材1の正面方向に見た形状は円形に限られず、矩形等のいずれの形状であってもよい。
【0022】
図3Bは、補修用部材1を図3Aの二点鎖線の位置で切断した断面を矢印Aの方向に見た図である。補修用部材1は、第1層11と、第1層11に積層配置された状態で第1層11に連結された第2層12と、第1層11と第2層12を連結させる接着層13と、第1層11の第2層12と接しない側の面を被覆する剥離シート14を備える。
【0023】
第1層11は、基層111と、基層111の第2層12に接しない側の面を覆うように配置された粘着層112を備える。基層111は、例えば合成ゴム等の弾性体で形成されている。粘着層112は、粘着剤の層であって、キャビン92の内側面と基層111とを結合する粘着力を生じる。なお、粘着剤の種類は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等のいずれでもよく、キャビン92の内側面の素材及び基層111の素材に応じて適した特性の粘着剤が採用される。
【0024】
剥離シート14は、使用前の状態の補修用部材1の粘着層112が、意図せず周囲の物に粘着することを防止するために、粘着層112を覆う役割を果たす。剥離シート14の粘着層112に接する側の面は剥離剤でコーティングされており、例えば搭乗員H1は補修用部材1の使用時に、剥離シート14を補修用部材1(剥離シート14を除く部分)から容易に剥がすことができる。
【0025】
第2層12は、第1層11より剛性が高い。例えば、第2層12は、金属又は硬質プラスチックで形成されている。
【0026】
接着層13は、接着剤の層であって、第1層11と第2層12とを連結する接着力を生じる。なお、接着剤の種類は、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤等のいずれでもよく、第1層11の素材及び第2層12の素材に応じて適した特性の接着剤が採用される。
【0027】
図4は、補修用部材1により孔O1が塞がれた状態のキャビン92を鉛直方向に切断した断面の孔O1の周辺部分を側方から見た模式図である。図4において、キャビン92の右側の空間が収容空間S1であり、キャビン92の左側の空間がキャビン92の外部の空間(以下、外部空間S2)である。
【0028】
例えば、搭乗員H1はキャビン92に孔O1が生じていることを発見すると、補修用部材1から剥離シート14を剥がし、粘着層112をキャビン92の内側面に対向させた状態で、孔O1を塞ぐように補修用部材1をキャビン92に貼り付ける。その結果、粘着層112により補修用部材1とキャビン92が結合されて、図4の状態となる。すなわち、第1層11がキャビン92に接触し、第2層12が第1層11のキャビン92に対向しない側に配置された状態になる。
【0029】
ところで、収容空間S1の気圧P1は概ね大気圧に維持される一方、ガス気球9が飛翔中には、外部空間S2の気圧P2は大気圧より低い。すなわち、気圧P1は気圧P2より高い。従って、補修用部材1の孔O1を塞いでいる部分は、キャビン92の内外に生じる圧力差によって、内側から外側に向かう力を受ける。その力によって、補修用部材1は図4に示すように変形する。すなわち、第1層11の孔O1に面している部分は、その一部が孔O1に引き込まれた状態となる。そして、第2層12は、一部が孔O1に引き込まれた状態の第1層11をキャビン92の内側から保持する状態となる。
【0030】
仮に、補修用部材1が第2層12を備えなければ、補修用部材1は粘着層112により生じる粘着力のみにより、キャビン92と結合される。従って、その粘着力がキャビン92の内外圧力差により生じる力に抗するだけの十分な大きさでなければ、弾性の高い第1層11のみで構成される補修用部材1は変形しつつキャビン92から剥がれ、孔O1を通って外部空間S2へと排出される危険性がある。
【0031】
しかしながら、第2層12を備える補修用部材1によれば、剛性の高い第2層12はキャビン92の内外圧力差により生じる力に抗してその形状を概ね維持できるため、孔O1を通って外部空間S2へと排出されることはない。そして、第1層11と第2層12は接着層13により強固に連結されているため、第1層11が第2層12から剥がれて孔O1を通って外部空間S2へと排出される危険性も低い。また、キャビン92の内外圧力差が大きい程、第1層11の孔O1に面していない部分が、キャビン92と第2層12とによって強く挟み込まれることになる。そのため、その部分における第1層11とキャビン92との間の結合力が増大し、第1層11がキャビン92から剥がれる危険性を低下させる。これらの作用によって、補修用部材1によれば、孔O1を確実に塞ぐことができる。
【0032】
また、仮に補修用部材1が第1層11を備えず、第2層12がキャビン92に対向する面に粘着層を有する構成が採用された場合、第2層12は弾性が低いため、キャビン92の孔O1の周辺部分の内側面が平坦でなく、例えば湾曲している場合や凹凸がある場合、第2層12とキャビン92の内側面との間に隙間が生じ、その隙間と孔O1を通じてキャビン92内の空気が孔O1へと漏れ出す危険性がある。
【0033】
しかしながら、第1層11を備える補修用部材1によれば、弾性の高い第1層11がキャビン92の内側面の形状に応じて変形し、キャビン92との間に隙間を生じることがないため、キャビン92の内側から外側へと空気が漏れ出す危険性がない。
【0034】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態にかかる補修用部材2を説明する。補修用部材2は、第1実施形態にかかる補修用部材1と同様に、飛翔体により飛翔される容器に空いた孔を塞ぐために用いられる。
【0035】
補修用部材2は、補修用部材1と同様に、全体としてシート状の形状をしている。図5Aは、補修用部材2を、そのシート状の形状が拡がる面に垂直な方向(以下、「正面方向」とする)に見た図である。なお、図5Aに示される補修用部材2は正面方向に見た形状が円形であるが、補修用部材2の正面方向に見た形状は円形に限られず、矩形等のいずれの形状であってもよい。
【0036】
図5Bは、補修用部材2を図5Aの二点鎖線の位置で切断した断面を矢印Bの方向に見た図である。補修用部材2は、シート状の部材である第1部材21と、第1部材21の外縁部を一周するように配置され第1部材21と連結された環形状のフレームである第2部材22と、第1部材21のキャビン92に対向する側の面を被覆する剥離シート23を備える。
【0037】
第1部材21は、基部211と、基部211のキャビン92に対向する側の面を覆うように配置された粘着層212を備える。基部211は、例えば合成ゴム等の弾性体で形成されている。粘着層212は、粘着剤の層であって、キャビン92の内側面と基部211とを結合する粘着力を生じる。なお、粘着剤の種類は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等のいずれでもよく、キャビン92の内側面の素材及び基部211の素材に応じて適した特性の粘着剤が採用される。
【0038】
剥離シート23は、補修用部材1が有する剥離シート14と同様のものである。
【0039】
第2部材22は、第1部材21より剛性が高い。例えば、第2部材22は、金属又は硬質プラスチックで形成されている。
【0040】
第1部材21は、第2部材22を内包するように成型されることにより、第2部材22と連結されている。なお、例えば、第2部材22の表面に接着剤が塗布された状態で第1部材21が第2部材22を内包するように成型されることによって、第1部材21と第2部材22が接着剤を介して連結されてもよい。その場合、接着剤の種類は、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤等のいずれでもよく、第1部材21の素材及び第2部材22の素材に応じて適した特性の接着剤が採用される。
【0041】
図6は、補修用部材2により孔O1が塞がれた状態のキャビン92を鉛直方向に切断した断面の孔O1の周辺部分を側方から見た模式図である。図6において、キャビン92の右側の空間が収容空間S1であり、キャビン92の左側の空間が外部空間S2である。
【0042】
第1実施形態における場合と同様に、例えば、搭乗員H1はキャビン92に孔O1が生じていることを発見すると、補修用部材2から剥離シート23を剥がし、粘着層212をキャビン92の内側面に対向させた状態で、孔O1を塞ぐように補修用部材2をキャビン92に貼り付ける。その結果、粘着層212により補修用部材2とキャビン92が結合されて、図6の状態となる。すなわち、第2部材22が孔O1の周りを囲むように配置され、第2部材22の内側の開口部を塞ぐように第2部材22と連結されている第1部材21が孔O1を塞いだ状態となる。
【0043】
第1実施形態における場合と同様に、補修用部材2の孔O1を塞いでいる部分は、キャビン92の内外圧力差により生じる力によって図6に示すように変形する。すなわち、第1部材21の孔O1に面している部分は、その一部が孔O1に引き込まれた状態となる。そして、第2部材22は、一部が孔O1に引き込まれた状態の第1部材21をキャビン92の内側から保持する状態となる。
【0044】
補修用部材2においても、キャビン92の内外圧力差により生じる力によって孔O1を通って外部空間S2へと排出されようとする第1部材21を、剛性の高い第2部材22がキャビン92の内側に留まり保持する。従って、補修用部材2によれば、孔O1を確実に塞ぐことができる。
【0045】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一例であって、種々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す変形例の2つ以上が適宜、組み合わされてもよい。
【0046】
(1)上述した実施形態において、補修用部材の使用対象の容器は人間を収容するキャビンであるものとしたが、本発明にかかる補修用部材の使用対象の容器は人間を収容しない容器であってもよい。容器内に人間が収容されない場合であっても、容器内に気圧の変化によって故障するおそれのある精密機器等が収容されている場合、その容器内の気圧は所定範囲内に維持される必要がある。そのような場合、例えば、容器内に収容されるロボットが容器に生じた孔を検知し、本発明にかかる補修用部材を用いてその孔を塞いでもよい。
【0047】
(2)上述した実施形態において、補修用部材の使用対象の容器を上空へと搬送する飛翔体はガス気球であるものとしたが、飛翔体の種類はガス気球に限られない。例えば、飛翔体が熱気球、ロジェ気球、飛行船、航空機、ロケット等であってもよい。
【0048】
(3)上述した第1実施形態にかかる補修用部材1は、第1層11と、第1層11よりも剛性の高い第2層12とが積層配置された積層体を備える。本発明にかかる補修用部材が積層体を備える場合、その積層体に含まれる層の数は限定されない。例えば、第1層11と第2層12の間に、第1層11よりも剛性が高いが第2層12よりも剛性の低い第3層が設けられてもよい。また、それらの層の境界は明確でなくてもよい。例えば、第1層11を形成するための溶融されたプラスチック材料を型に流し込み、そのプラスチック材料が固まる前に、第2層12を形成するための溶融されたプラスチック材料をその型に流し込んだ後、冷却すると、第1層11と第2層12の境界が明確でない積層体が製造される。そのような積層体が補修用部材1に採用されてもよい。
【0049】
(4)上述した第1実施形態にかかる補修用部材1においては、第1層11と第2層12は接着層13により連結されている。第1層11と第2層12の連結の方法は接着に限られない。例えば、第1層11と第2層12が熱溶着により連結されてもよい。
【0050】
(5)上述した第2実施形態にかかる補修用部材2は、主に、環形状のフレームである第2部材22と、第2部材22の間を塞ぐように第2部材22に連結されたシート形状の第1部材21を備える。第2部材22の形状は環形状に限られない。図7は、第2部材22の形状が環形状でない変形例にかかる補修用部材2を正面方向から見た図である。図7の補修用部材2が備える第2部材22は格子状である。この例のように、第2部材22(フレーム)の間を塞ぐように第1部材21が配置される限り、第2部材22の形状はいずれの形状であってもよい。
【0051】
(6)上述した第2実施形態にかかる補修用部材2においては、第1部材21と第2部材22は異なる物質で形成される。第1部材21と第2部材22が同じ物質で形成されてもよい。図8は、第1部材21の基部211と第2部材22が同じ物質で形成される変形例にかかる補修用部材2の断面図である。図8の補修用部材2が備える第1部材21の基部211と第2部材22は同じ物質で形成されているが、第2部材22が第1部材21の基部211よりも肉厚に形成されている。その結果、第2部材22の剛性が第1部材21の剛性よりも高くなっている。
【0052】
(7)上述した実施形態にかかる補修用部材は、容器(例えば、キャビン92)に接触する部分が粘着性を有する。本発明にかかる補修用部材は、容器に接触する部分に粘着性を有しなくてもよい。例えば、キャビン92に生じた孔O1を塞ぐように補修用部材1が配置されると、キャビン92の内外圧力差により生じる力によって補修用部材1がキャビン92の内側から外側に向かい押し付けられる。その結果、第1層11のキャビン92に接触する部分に粘着性がなくても、第1層11とキャビン92との間の摩擦力によって補修用部材1がキャビン92の内側面上に保持された状態となる。
【0053】
なお、補修用部材の容器に接触する部分に粘着性がない場合、飛翔体が高度を下げるにつれて補修用部材を容器の内側面に押し付ける力は小さくなり、容器の内側面から補修用部材が剥がれ落ちる場合がある。ただし、そのような場合は、容器の外側の空間の気圧が十分に大気圧に近づいているため、仮に補修用部材により塞がれていた孔が開いても、容器内の気圧が許容範囲を超えて低下する可能性は低い。しかしながら、より確実に孔を塞ぐ観点からは、補修用部材が容器に接触する部分に粘着性を有している方が望ましい。
【0054】
なお、補修用部材1の第1層11を構成する基層111が粘着性を有している場合、第1層11は粘着層112を有しなくてもよい。同様に、補修用部材2の第1部材21を構成する基部211が粘着性を有している場合、第1部材21は粘着層212を有しなくてもよい。
【0055】
(8)本発明にかかる補修用部材の構成は、飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を容器の内側から塞ぐように配置され、孔を覆う部分である第1部分と、第1部分と連結された第2部分を備え、第2部分が第1部分より剛性が高く、容器の内部の圧力が外部の圧力よりも高い場合に、第1部分の一部が容器の内外に生じる圧力差によって孔に引き込まれ、第2部分が、一部が孔に引き込まれた状態の第1部分を容器の内側から保持する、という構成を備える限り、上述した補修用部材1又は補修用部材2の構成に限られない。
【0056】
例えば、図9は補修用部材1及び補修用部材2の構成と異なる構成を備える変形例にかかる補修用部材3の断面図である。補修用部材3は、中央に凹部を有する板状(椀形状又は皿形状)の部材である第2部材32と、第2部材32の凹部を満たすように配置された第1部材31と、第1部材31及び第2部材32のキャビン92に対向する面を覆うように設けられた粘着層33と、粘着層33のキャビン92に対向する面を被覆するように配置された剥離シート34を備える。第1部材31は弾性体であり、第2部材32は第1部材31よりも剛性の高い金属等である。なお、第1部材31と第2部材32は接着剤等により強固に連結されている。このような構成の補修用部材3によっても、キャビン92に生じた孔O1を確実に塞ぐことができる。
【0057】
(9)上述した実施形態において、補修用部材は全体としてシート状の形状をしているものとしたが、本発明にかかる補修用部材の形状はシート状に限られない。
【0058】
(10)補修用部材1が備える第2層12や補修用部材2が備える第2部材22で例示される剛性の高い部分が、金属のように塑性変形する素材で構成される場合、例えば搭乗員H1が、孔O1の周辺のキャビン92の内側面の形状に沿うように、補修用部材を変形させた後に、その補修用部材をキャビン92に貼り付けてもよい。このように、剛性の高い部分が塑性変形する場合、例えば、大きく湾曲しているキャビン92の部分に孔O1が生じた場合であっても、その孔O1を補修用部材で塞ぐことができる。
【符号の説明】
【0059】
1…補修用部材、2…補修用部材、3…補修用部材、9…ガス気球、11…第1層、12…第2層、13…接着層、14…剥離シート、21…第1部材、22…第2部材、23…剥離シート、31…第1部材、32…第2部材、33…粘着層、34…剥離シート、91…気嚢、92…キャビン、93…吊索、111…基層、112…粘着層、211…基部、212…粘着層
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を前記容器の内側から塞ぐように配置される補修用部材であって、
前記孔を覆う部分である第1部分と、前記孔が生じる前に前記第1部分と連結されている第2部分と
を備え、
前記第2部分は前記第1部分よりも剛性が高く、
前記容器の内部の圧力が外部の圧力よりも高い場合に、前記第1部分の一部は前記容器の内外に生じる圧力差によって弾性変形して前記孔に引き込まれ、前記第1部分は一部が前記孔に引き込まれた状態で前記孔を気密に塞ぎ、前記第2部分は前記第1部分が前記孔を通って前記容器の外部空間へと排出されないように一部が前記孔に引き込まれた状態の前記第1部分を前記容器の内側から保持する
補修用部材。
【請求項2】
前記第1部分の前記容器に接触する部分は前記容器に対する粘着性を有する
請求項1に記載の補修用部材。
【請求項3】
前記第1部分は前記容器に接触する第1層に含まれ、
前記第2部分は前記第1層の前記容器に対向しない側に積層配置された第2層に含まれる
請求項1に記載の補修用部材。
【請求項4】
前記第2部分は、少なくとも一部が孔の外側に配置されるフレームに含まれ、
前記第1部分は、前記フレームの間を塞ぐように前記フレームと連結されたシート形状の部分に含まれる
請求項1に記載の補修用部材。
【請求項5】
前記第2部分は塑性変形する
請求項1に記載の補修用部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、一態様として、飛翔体により上空へと搬送される気密な容器に生じた孔を前記容器の内側から塞ぐように配置される補修用部材であって、前記孔を覆う部分である第1部分と、前記孔が生じる前に前記第1部分と連結されている第2部分とを備え、前記第2部分は前記第1部分よりも剛性が高く、前記容器の内部の圧力が外部の圧力よりも高い場合に、前記第1部分の一部は前記容器の内外に生じる圧力差によって弾性変形して前記孔に引き込まれ、前記第1部分は一部が前記孔に引き込まれた状態で前記孔を気密に塞ぎ、前記第2部分は前記第1部分が前記孔を通って前記容器の外部空間へと排出されないように一部が前記孔に引き込まれた状態の前記第1部分を前記容器の内側から保持する補修用部材を提供する。