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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113816
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ハンダ線材の供給体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20240816BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20240816BHJP
   B23K 35/40 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
B65D81/20 C
B23K35/14 B
B23K35/14 C
B23K35/40 340Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019027
(22)【出願日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】518164087
【氏名又は名称】株式会社マツオ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 進司
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA16
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BA15A
3E067BB15A
3E067CA06
3E067CA11
3E067CA24
3E067EA09
3E067EB07
3E067EE22
3E067FA01
3E067FB11
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】 酸化し易いフラックスを外部に露出させるように開放部が形成されたハンダ線材においてフラックスの酸化抑制が充分に達成できるようにしたハンダ線材の供給体の開発を技術課題とした。
【解決手段】 本発明の供給体1は、ハンダ線材2と、これを内包する包装体3とを具えて成り、ハンダ線材2は、中心部にフラックス22が充填され、且つ当該フラックス22を外部に露出させる開放部23がハンダ線材2の長手方向に沿って形成されるものであり、また包装体3は、非透気性であって、ヒートシールにより封鎖されるものであり、包装体3内に収められたハンダ線材2は、包装体3内を真空状態として外部環境から隔離状態に包装され、フラックス22の酸化が抑制されていることを特徴とする。またハンダ線材2の開放部23は、ハンダ線材2の長手方向に対し螺旋を描くスパイラル状に形成されることが好ましい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ線材と、これを内包する包装体とを具えたハンダ線材の供給体であって、
被包装体であるハンダ線材は、中心部にフラックスが充填され、且つ当該フラックスを外部に露出させるように開放部がハンダ線材の長手方向に沿って形成されるものであり、
一方、包装体は、非透気性であって、ヒートシールにより封鎖されるものであり、包装体に収められたハンダ線材は、包装体内を真空状態として外部環境から隔離状態に包装され、フラックスの酸化が抑制されていることを特徴とする、ハンダ線材の供給体。
【請求項2】
前記ハンダ線材の開放部は、ハンダ線材の長手方向に対し螺旋を描くスパイラル状に形成されることを特徴とする請求項1記載の、ハンダ線材の供給体。
【請求項3】
前記ハンダ線材は、直径Dが0.3mm~1.0mmに形成されることを特徴とする請求項2記載の、ハンダ線材の供給体。
【請求項4】
前記ハンダ線材における開放部の螺旋ピッチは、ハンダ線材の直径Dを基準として、D~9Dの範囲で形成され、開放部の外端幅は0.02mm~0.25mmに形成されることを特徴とする請求項3記載の、ハンダ線材の供給体。
【請求項5】
前記包装体は、小分け状態に形成された複数の個別収納部を具え、これら複数の個別収納部に、複数のハンダ線材が独立して収納されていることを特徴とする請求項1または2記載の、ハンダ線材の供給体。
【請求項6】
前記複数の個別収納部には、一部また全ての個別収納部において、仕様の異なるハンダ線材が収納されていることを特徴とする請求項5記載の、ハンダ線材の供給体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化し易いフラックスを中心部に配し、且つフラックスを外部に露出させる開放部が形成されたハンダ線材(糸ハンダ)を包装対象とした、ハンダ線材の供給体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンダによる各種、電気・電子部品等の端子接続・回路接続が行われているが、例えば手作業によって精密なハンダ付け作業を行う場合には、熟練したスキルとともに、使用機・器材にも相応の工夫を要する。
例えば、内部にフラックスが充填された円形断面のハンダ線材を、そのまま用いてハンダ付け作業を行った場合には、ハンダ線材をコテ先に触れさせると、ハンダよりも融点の低いフラックスが膨張するため、融点の高いハンダが溶けた際にフラックスが破裂するような現象を起こしてしまう。
【0003】
この結果、フラックスやハンダが周囲に飛散する、いわゆるハンダボールという現象の発生が知られている。そして、このようなハンダボールが、電子基板上に付着すると、場合によっては例えばショート等の電気的な不具合や電子機器のトラブルを生じさせかねない。加えて、このような精密なハンダ付け作業では、ハンダが溶け込む前に、ハンダ付け箇所にフラックスが先行的に正確に供給されることが必須の条件となっている。
【0004】
このようなことから、ハンダボールの発生を防ぎ、正確なハンダ付け作業を達成するため、ハンダ付け作業を行う直前にフラックス入りのハンダ線材に対し、外周側からフラックスに到達するV溝状の開放部を形成する工夫が行われている(例えば特許文献1参照)。すなわち、外部からフラックスに達する開放部をハンダ線材に形成することにより、膨張したフラックスの逃げ道を形成し(いわゆるガス抜き効果)、これによってフラックスの突沸、ひいてはハンダボールの発生を防止するものである。
また、本出願人は、フラックスのハンダ付け接合部への供給をより安定的なものすべく、前記開放部がハンダ線材の外周面において種々の方向を指向するようにした加工方法、具体的には開放部がハンダ線材に対し螺旋を描くようなスパイラル状に形成する手法を案出し、特許取得に至っている(例えば特許文献2参照)。そして、このような手法の開発により、精密なハンダ付け作業が、より一層、精緻に行えるようになったものである。つまり、精密なハンダ付け作業を行うにあたっては、外部に露出する開放部を有したハンダ線材の適用は実務上、必須のものとなっており、特に開放部はハンダ線材の長手方向に対し、スパイラル状に形成することが、ハンダ付け作業の不良率低減・生産性向上の観点から望ましいものであった。
【0005】
因みに、開放部をハンダ付け作業の直前に形成するのは、ハンダ線材内部のフラックスを流通過程から開放部によって広く外気に触れさせておくと、酸化や吸湿等によってフラックスが変質してしまい、満足な機能を発揮させることができないからである。
しかしながら、例えば直径1mm以下、特に0.3mm~0.8mm等の極細径のハンダ線材に対し、その外周面から内部のフラックスに到る開放部を形成すること自体、かなりの加工スキルが要求される。
【0006】
結果的に、このようなハンダ線材に対して開放部を形成する加工は、精密な回路接続等のためにハンダ付け作業を常時、行っている事業者が、ハンダ付け作業に伴う事前作業の段取りの一環としてなされているのが現状である。
このため専業的に精密なハンダ付け作業を常時行わないものの、機器材の補修等を業とする者が、付髄的に精密なハンダ付け作業を行う必要が生じた場合等には、フラックスを有しない単に極細径のハンダ線材を用意して、開放部の加工処理を行うことなくハンダ付け作業を行っているのが現状であり、先に述べたようなハンダボールの発生等に因み、正確なハンダ付け作業を行うことは難しかった。
【0007】
また一方で、精密なハンダ付け作業を常時行う事業者であり、且つハンダ線材に開放部を加工することができる場合であっても、常にハンダ付け作業の事前段取りとして、その都度、開放部を加工するについては、トータルな作業効率の向上を阻むものとなっている。
因みに、ハンダ線材を種々の食品と同様に真空包装する思想そのものは既に案出されている(例えば特許文献3)。
しかしながら、この特許文献3では、包装対象となるハンダ線材は、開放部を有するものではなく、フラックスを含有しない従来のハンダ線材である。すなわち、特許文献3では、特に精密なハンダ付け作業を前提とした、フラックス入りハンダ線材については何ら想定されておらず、酸化防止の要求度合いが、精密なハンダ付け作業の場合と大きく相違する。換言すれば、特許文献3は、単にハンダ線材の保護を目的としたものであるのに対し、本願はハンダ線材の内側に設けられるフラックスが開放部によって酸化してしまうことを防止する目的で案出されたものである。また、特許文献3では、実質的に包装対象となるハンダ線材は、ボビンに巻き取られた状態のハンダ線材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-200290号公報
【特許文献2】特許第6470449号公報
【特許文献3】実用新案登録第3120383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景に鑑みなされたものであって、酸化し易いフラックスを内包し、且つ当該フラックスが外部に露出(連通)するように開放部が形成されたハンダ線材に対して、フラックスの酸化抑制が充分に達成できる供給体の開発を課題としたものである。すなわち、上述した従来手法に鑑みると、開放部を形成したフラックス入りハンダ線材にあっては、基本的に長時間ないしは長期間にわたる流通保管が行えない(なじまない)という思想が固定観念化され、上記課題についての解決の試みすらなかったのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず請求項1記載の、ハンダ線材の供給体は、
ハンダ線材と、これを内包する包装体とを具えたハンダ線材の供給体であって、
被包装体であるハンダ線材は、中心部にフラックスが充填され、且つ当該フラックスを外部に露出させるように開放部がハンダ線材の長手方向に沿って形成されるものであり、
一方、包装体は、非透気性であって、ヒートシールにより封鎖されるものであり、包装体に収められたハンダ線材は、包装体内を真空状態として外部環境から隔離状態に包装され、フラックスの酸化が抑制されていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項2記載の、ハンダ線材の供給体は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記ハンダ線材の開放部は、ハンダ線材の長手方向に対し螺旋を描くスパイラル状に形成されることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項3記載の、ハンダ線材の供給体は、前記請求項2記載の要件に加え、
前記ハンダ線材は、直径Dが0.3mm~1.0mmに形成されることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項4記載の、ハンダ線材の供給体は、前記請求項3記載の要件に加え、
前記ハンダ線材における開放部の螺旋ピッチは、ハンダ線材の直径Dを基準として、D~9Dの範囲で形成され、開放部の外端幅は0.02mm~0.25mmに形成されることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項5記載の、ハンダ線材の供給体は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記包装体は、小分け状態に形成された複数の個別収納部を具え、これら複数の個別収納部に、複数のハンダ線材が独立して収納されていることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項6記載の、ハンダ線材の供給体は、前記請求項5記載の要件に加え、
前記複数の個別収納部には、一部また全ての個別収納部において、仕様の異なるハンダ線材が収納されていることを特徴として成るものである。
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0016】
すなわち請求項1記載の発明によれば、酸化し易いフラックスが充填されたハンダ線材であって、且つ当該フラックスが外部に露出(連通)するように、開放部が形成されたハンダ線材を、包装体内に真空包装してハンダ線材の供給体とし、この状態で市場に提供するため、例えばハンダ線材に開放部を形成する加工装置を持たない事業者(作業者)であっても、ハンダ付け作業の直前に、真空パックされた包装体からハンダ線材を取り出すことによって、フラックスの酸化が充分に抑制されたハンダ線材を使用することができ、精密なハンダ付け作業が、いつでも、どこでも、誰でも行い得るものである。
また包装されるハンダ線材としては、鉛入りハンダ、鉛フリーハンダ、及び鉛フリーハンダの組成成分である銀系・ニッケル系を問わず、品質や作業性・生産性を向上させることができる。
【0017】
また請求項2記載の発明によれば、ハンダ線材の外周面からフラックスに達するように形成される開放部は、ハンダ線材の長手方向に対しスパイラル状に形成されるため、開放部がハンダ線材の外周面において種々の方向を指向するように形成される。このため例えばハンダ付け作業において、ワークに対するハンダ線材の繰出姿勢が安定しなくても、開放部のワークに対する指向状況をほぼ均一にすることができ、結果的にワークへのフラックスの供給量を安定させることができ、精密なハンダ付け作業をより精緻に行うことができる。
【0018】
また請求項3記載の発明によれば、ハンダ線材の直径寸法を具体的に特定することができる。
【0019】
また請求項4記載の発明によれば、開放部の螺旋ピッチや外端幅等の形成状況を具体的に特定することができる。
【0020】
また請求項5または6記載の発明によれば、ハンダ線材は複数のものが個別収納部に小分け状態に真空パックされているから、ハンダ付け作業に応じて必要な仕様、例えば直径や長さなどを選んで使用することができる。従って、使用後に余るハンダ線材の量を極力最小限に抑えることができる。
因みに、開放部が形成されたハンダ線材が使用後に余ってしまった場合、フラックスが空気に触れる状態で空気保管すると、フラックスが酸化してしまい、その後の使用は不可となる。このため余ったハンダ線材は、廃棄処分せざる得ないものであった。
この点、本発明では、ハンダ線材が小分けされているため、所望のハンダ線材を必要な量だけ使用することができ、余った場合の廃棄量を大きく減少させることができる。これは、言わば環境に優しい商品形態としてハンダ線材を市場に提供することができるものである。もちろん、ハンダ付け作業を行う事業所等が真空包装機を所持していれば、残ったハンダ線材を、再度、真空包装することにより、次回のハンダ付け作業時まで酸化を防止した状態で保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明であるハンダ線材の供給体を示す斜視図(a)、並びに本図(a)のI-I線における断面図(b)、並びにハンダ線材を拡大して示す説明図(c)である。
図2】ハンダ線材を真空包装する際の一例を示す説明図である。
図3】ハンダ線材の仕様を記載した用紙をハンダ線材と一緒に真空包装する構成例を示す説明図である。
図4】直径や長さ等の仕様が同一のハンダ線材を小分け状態で個別に真空包装した供給体の構成例を示す説明図(a)、並びにシール部に切離し弱化部を設け、小分けした包装体を切り取り易くした様子を示す説明図(b)である。
図5】直径や長さ等の仕様が異なるハンダ線材を小分け状態で個別に真空包装した供給体の構成例を示す説明図(a)、並びにシール部に切離し弱化部を設け、小分けした包装体を切り取り易くした様子を示す説明図(b)である。
図6】リール体(糸巻き)に巻回されたハンダ線材を、リール体とともに真空包装した供給体を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例0023】
以下、本発明のハンダ線材の供給体1(以下、「供給体1」と略記することがある)について具体的に説明する。
本発明の供給体1は、一例として図1(a)・(b)に示すように、ハンダ線材2と、これを内包する包装体3とを具えて成るものであり、被包装体たるハンダ線材2を包装体3によって外部環境から隔離状態に包装して成るものである。なお、図中符号3gは切り口ガイドであり、真空包装されたハンダ線材2を包装体3から取り出す際、切り口を容易に形成するための案内部位である。
以下、供給対象となるハンダ線材2について説明する。
【0024】
ハンダ線材2は、多くの場合、精密な手作業によるハンダ付けに適した極めて小径な糸ハンダであって、製造段階において、直径が1.2mm程度、より好ましくは0.3mm~1.0mmのものである。そして、ハンダ線材2の製造段階では、始発形状としてハンダ本体から成るハンダ層21の中心部に、フラックス22が充填された形態を採る。
【0025】
このようなフラックス22を有したハンダ線材2に対し、外周側からフラックス22に達する開放部23が、ハンダ線材2の長手方向に沿って加工される。すなわち、ハンダ線材2は、開放部23によって大気に露出(連通)した状態に形成される。
ここで開放部23の形成にあたっては、本出願人が既に提案し特許取得に及んでいる特許第6470449号に開示した手法、具体的には、ねじり加工によって開放部23が螺旋を描くスパイラル状に加工する手法が好ましい。なお、このねじり加工においては、例えば図1(c)に示すように、ハンダ線材2の直径をDとした場合、螺旋ピッチPはD~9Dの範囲で形成され、開放部23の外端幅Wは0.02mm~0. 25mmの範囲で形成されることが好ましい。更に好ましくは、ハンダ線材2の直径Dが0.5mmの場合、螺旋ピッチPは0.8mm~1.2mmであることが好ましい。
【0026】
次に包装体3について説明する。包装体3は、適宜の非透気性とヒートシール性とを具えて成るものである。また包装体3は、一例として図1図2に示すように、平折形状ないしは封筒形と称される可透視平袋が適用され、素材としてはポリエチレン等が多く適用されている。
この包装体3の内部に上記ハンダ線材2を収容する際の基本構成としては、包装体3に対し、上述したような巻束状に巻回したハンダ線材を一束ないし複数束、収納するものが挙げられる(例えば図1(a)参照)。
また供給体1としての全体的な剛性向上や商品の仕様を明確にアピールすること等を目的として、板紙等の台紙31を、ハンダ線材2と併せて内包しても構わず、例えば図3に示す構成例は、仕様が印刷された台紙31等の上にハンダ線材2を載せるようにしてから、これらを一緒に真空包装した供給体1を示している。
なお包装体3は、必ずしも可透視性である必要はなく、例えば内側に熱可塑性樹脂をラミネートした紙との合成シート材から成る袋(ヒートシール用の真空袋)を適用することも可能である。
【0027】
そして本発明の供給体1としては、ハンダ線材2が包装体3内に収納されるにあたり、内部を真空状態として封緘する、いわゆる真空包装(真空パック)の形態を採ることが特徴の一つである。
なおハンダ線材2を真空包装するには、従来公知の真空包装機4が適宜採り得るものであり、例えば図2に示すように、真空袋たる包装体3内にハンダ線材2(巻回体)を収容した状態で、真空チャンバーとなる脱気室41に収め、その状態でヒートシールバー42により包装体3の開口部3aを閉鎖するような手法が採り得る。
以下、上記図2に基づき、具体的に真空包装の手順の一例を説明する。
【0028】
(1)脱気室内へのセット
まず、例えば巻回状態のハンダ線材2を真空袋(包装体3)に収容し、この包装体3を真空チャンバーとなる脱気室41に収めるようにセットする。この際、当然ながら包装体3は、開口部3aが開放された非封鎖状態である。
【0029】
(2)脱気室内の脱気
その後、脱気室41内を密閉した後、脱気管43を介して真空ポンプ等により、脱気室41内を脱気して気圧を下げ、いわゆる真空状態とする。これにより脱気室41はもちろん、包装体3内も気圧が低下し、この状態で包装体3の開口部3aを密閉する。
【0030】
(3)包装体の圧縮
その後、この状態で今度は、エア供給管44から脱気室41内にエアを供給するものであり、これにより包装体3の内外で圧力差を生じさせる。すなわち包装体3内では低圧状態(真空状態)が維持される一方、包装体3外では脱気室41内に導入したエアによって常圧状態となるため、この脱気室41の陽圧に押されて、包装体3が圧縮し、包装体3の内表面がハンダ線材2に密着するようになる。
【0031】
(4)ヒートシールと供給体の取り出し
次いで、この状態となった包装体3の開口部3a(上述した密閉された開口部3a)が、ヒートシールバー42、より詳細にはヒータ42aと押さえバー42bとにより挟み込まれ、当該部位がヒートシールされる。また包装体3が、ロール状など長尺物である場合には、ヒートシール部(後述するシール部32)を含む適宜の長さで切断された後、脱気室41から取り出され、ハンダ線材2を包装体3内に真空包装した供給体1が得られる。
【0032】
ここで、図中符号41aは、脱気室41の上部を構成するアッパーチャンバーであり、符号41bは脱気室41の下部を構成するロアチャンバーである。因みに包装対象物を出し入れする際には、例えばアッパーチャンバー41aを上方に回動状態に開放させるようにして、包装対象物の出し入れを行うことが可能である。
また図中符号32は、包装体3をヒートシールすることにより閉鎖したラインたるシール部を示している。
なお、ここでは包装体3を収める脱気室41を設け、この脱気室41内全体を脱気して真空状態を形成する手法を示したが、ハンダ線材2を収容した包装体3を一つずつ個別に真空包装する場合には、真空吸引ノズルを未封鎖の包装体3内に挿入して内部を真空状態とした後、開口部3aをヒートシールする等の手法も採り得る。
【0033】
本発明は、以上のような構成を基本構成とするものであるが、供給体1を一旦開封して、包装体3からハンダ線材2を取り出すと、その時点からフラックス22の酸化が始まってしまうため、使用者は、目的の作業量に応じた長さのハンダ線材2が得られることが好ましい(いわゆる使い切り)。
このため、例えば図4に示すように、包装体3が、小分けされた複数の個別収納部33を具えるように形成しておき、各個別収納部33に、同一の長さ(仕様)のハンダ線材2を真空包装しておくことが可能である。このような構成により、作業者は、ハンダ付け作業の都度、個別収納部33を切り離して、一袋分ずつハンダ線材2を取り出して用いることができ、使用後に残るハンダ線材2の量を、極力、減らすことができるものである。なお、従来は、上述したようにフラックス22が酸化したハンダ線材2では、特に精密なハンダ付け作業が行い得なかったため、使用後に残ったハンダ線材2は、多くの場合、産業廃棄物として処分することを余儀なくされていたが、このような小分け包装であれば、廃棄量を格段に抑えることができる。
また、このような個別収納部33を切り離す作業を容易にするためヒートシール時には、シール部32に、例えばいわゆるミシン目状の切離し弱化部34を設けるようにすることが可能である。
【0034】
因みに、上記図4では、縦三列×横四行の計12個の個別収納部33を有する形態を示したが、個別収納部33を複数形成するにあたっては、種々の方法が取り得る。具体的には、例えば縦一例で複数の個別収納部33を直列状に連続形成することが可能である。また上記図4では、各個別収納部33に直径0.5mm・長さ5mの同一仕様のハンダ線材2を真空包装した構成例を示したが、仕様を変更するようにしても構わない。
具体的には、例えば図5に示すように、それぞれの個別収納部33に収納するハンダ線材2の長さや、太さ(径寸法)等、いわゆる異仕様のものを収納してもよい。もちろん例えば縦列などで仕様を区別し、縦一列は同じ仕様で統一するような小分け形態も想定される。
また収納されるハンダ線材2については、必ずしも巻回状に束ねる必要はなく、例えば図6に示すように、糸巻きとも称されるリール体35にハンダ線材2を巻いた状態、すなわちリール体35と併せて、より立体的な厚み寸法が増した状態で、真空包装することも可能である。
【0035】
そして、このような状態でハンダ線材2の供給体1が流通ないしは供給された後、使用者は当日の作業に応じた長さまたは必要数のハンダ線材2を選び、包装体3を開封して使用する。なお使用者が真空包装機4等を自ら所有しているときには、別途汎用の真空袋を利用、ないしは開封後の包装体3を再利用して、使い残りのハンダ線材2を真空包装して保存することもでき、ハンダ線材2を無駄なく使い切ることが可能である(ハンダ線材2を最大限、有効利用することができる)。
【符号の説明】
【0036】
1 供給体(ハンダ線材の供給体)
2 ハンダ線材
3 包装体
3a 開口部
3g 切り口ガイド
4 真空包装機

21 ハンダ層
22 フラックス
23 開放部

31 台紙
32 シール部
33 個別収納部
34 切離し弱化部
35 リール体

41 脱気室(真空チャンバー)
41a アッパーチャンバー
41b ロアチャンバー
42 ヒートシールバー
42a ヒータ
42b 押さえバー
43 脱気管
44 エア供給管

P 螺旋ピッチ(開放部の螺旋ピッチ)
W 外端幅(開放部の外端幅)
D 直径(ハンダ線材の直径)
図1
図2
図3
図4
図5
図6