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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113827
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20240816BHJP
   F16H 57/02 20120101ALI20240816BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H57/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019043
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓太
(72)【発明者】
【氏名】永田 俊顕
(72)【発明者】
【氏名】貴傳名 康生
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AB02
3J063AC01
3J063BB01
3J063BB11
3J063BB23
3J063BB50
3J063CA01
5H607AA06
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB25
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD02
5H607DD19
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】回転駆動部材に生じた汚れの飛散を抑制する。
【解決手段】アクチュエータ装置1は、ケース2内に収容されたモータ3を備える。また、アクチュエータ装置1は、このモータ3のロータ36と回転軸50を共有することにより、ケース2内において、そのロータ36と一体に同軸回転する回転駆動部材としての第1のギヤ部材51を備える。更に、アクチュエータ装置1は、そのモータ3のロータ36と第1のギヤ部材51との間の軸方向位置においてケース2内に設けられた隔壁部70を備えるとともに、この隔壁部70には、その回転軸50が挿通される挿通孔45が設けられる。そして、アクチュエータ装置1は、この挿通孔45に臨むロータ36の軸方向端部36xに設けられた回転軸50の径方向外側において周方向に延在する周壁部80を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に収容されたモータと、
前記モータのロータと回転軸を共有することにより前記ケース内において前記ロータと一体に同軸回転する回転駆動部材と、
前記ロータと前記回転駆動部材との間の軸方向位置において前記ケース内に設けられた隔壁部と、
前記隔壁部に設けられた前記回転軸が挿通される挿通孔と、
前記挿通孔に臨む前記ロータの軸方向端部に設けられた前記回転軸の径方向外側において周方向に延在する周壁部と、を備えるアクチュエータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータ装置において、
前記隔壁部により、前記ケース内が、前記モータを収容する第1の収容室と、前記回転駆動部材を収容する第2の収容室と、に区画されていること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアクチュエータ装置において、
第1及び第2のケース部材と、
前記第1及び第2のケース部材に挟み込まれる中間部材と、を備えるとともに、
前記中間部材に前記隔壁部が設けられていること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のアクチュエータ装置において、
前記挿通孔よりも前記周壁部の方が大きな直径を有していること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項5】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載のアクチュエータ装置において、
前記モータがインナーロータ型のブラシレスモータであること、
を特徴とするアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内に収容されたモータを駆動源とするアクチュエータ装置には、例えば、特許文献1のように、プーリやギヤ等の回転駆動部材が、そのモータのロータと回転軸を共有するものがある。そして、このような構成を採用することにより、装置の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-11828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクチュエータ装置においては、例えば、金属摩耗粉や発錆に伴う所謂錆汁等、回転駆動部材に生じた汚れが、その回転によりケース内に飛散する可能性がある。このため、上記のようなモータのロータと回転駆動部材とが同軸に一体回転する構成を採用する場合には、その回転駆動部材に対して、例えば耐摩耗性の向上や防錆のためのコーティングを施す等、対策が必要になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するアクチュエータ装置の各態様を記載する。
態様1のアクチュエータ装置は、ケース内に収容されたモータと、前記モータのロータと回転軸を共有することにより前記ケース内において前記ロータと一体に同軸回転する回転駆動部材と、前記ロータと前記回転駆動部材との間の軸方向位置において前記ケース内に設けられた隔壁部と、前記隔壁部に設けられた前記回転軸が挿通される挿通孔と、前記挿通孔に臨む前記ロータの軸方向端部に設けられた前記回転軸の径方向外側において周方向に延在する周壁部と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、回転駆動部材の回転によりケース内に飛散した汚れが、その隔壁部に設けられた回転軸の挿通孔を介してモータ側に侵入した場合であっても、この汚れが、そのロータの軸方向端部に設けられた周壁部に付着しやすい。そして、これにより、隔壁部により区画されたケースの内部空間について、そのモータ側における汚れの飛散を抑制することができる。
【0007】
更に、例えば、隔壁部により区画されたケース内の回転駆動部材側には電子部品を収容しない等、回転駆動部材側における汚れの飛散を許容可能であれば、防錆や耐摩耗等、その回転駆動部材のコーティング処理が不要になる。そして、これにより、低コスト化が可能になるとともに、併せて、回転駆動部材の材質についての制約が少なくなることで、その選択肢を拡大することができる。
【0008】
態様2のアクチュエータ装置は、態様1のアクチュエータ装置において、前記隔壁部により、前記ケース内が、前記モータを収容する第1の収容室と、前記回転駆動部材を収容する第2の収容室と、に区画されている。
【0009】
上記構成によれば、より効果的に、隔壁部により区画されたケースの内部空間について、その回転駆動部材の回転により飛散した汚れのモータ側への飛散を抑制することができる。
【0010】
態様3のアクチュエータ装置は、態様1又は態様2のアクチュエータ装置において、第1及び第2のケース部材と、前記第1及び第2のケース部材に挟み込まれる中間部材と、を備えるとともに、前記中間部材に前記隔壁部が設けられている。
【0011】
上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、回転軸を共有する状態で一体に同軸回転するモータのロータ及び回転駆動部材を収容するケース内を、その隔壁部によって、モータ側と回転駆動部材側とに区画することができる。
【0012】
態様4のアクチュエータ装置は、態様1~態様3の何れか一つに記載のアクチュエータ装置において、前記挿通孔よりも前記周壁部の方が大きな直径を有している。
上記構成によれば、ケースの内部空間を回転軸の軸方向に区画する隔壁部に設けられた挿通孔を介して、その回転駆動部材側からモータ側に侵入した汚れが、このモータのロータに設けられた周壁部に付着しやすい。そして、これにより、効果的に、隔壁部により区画されたケースの内部空間について、そのモータ側における汚れの飛散を抑制することができる。
【0013】
態様5のアクチュエータ装置は、態様1~態様4の何れか一つに記載のアクチュエータ装置において、前記モータがインナーロータ型のブラシレスモータである。
即ち、インナーロータ型のブラシレスモータは、多くの場合、そのロータが比較的単純な略円筒状の外形を有するものとなりやすい。従って、上記構成によれば、製造容易に、その隔壁部に設けられた挿通孔に臨むロータの軸方向端部に周壁部を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転駆動部材に生じた汚れの飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】アクチュエータ装置の正面図である。
図2】アクチュエータ装置の背面図である。
図3】アクチュエータ装置の側面図である。
図4】アクチュエータ装置の断面図である。
図5】隔壁部に設けられた回転軸の挿通孔及びモータのロータに設けられた周壁部近傍の拡大断面図である。
図6】回転駆動部材と回転軸を共有するロータ、及び、その周壁部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、アクチュエータ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1図4に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1は、扁平略箱状のケース2を備えている。また、このアクチュエータ装置1は、駆動源となるモータ3と、このモータ3の回転を減速する減速機構4と、を備えている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これらのモータ3及び減速機構4を、そのケース2内に収容する構成となっている。
【0017】
(ケース)
詳述すると、本実施形態のアクチュエータ装置1は、第1及び第2のケース部材11,12と、これら第1及び第2のケース部材11,12に挟み込まれる中間部材13と、を備えている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、これらの構成部品を互いに締結することにより、そのモータ3及び減速機構4を収容する内部空間20を有したケース2が形成されている。
【0018】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ装置1において、中間部材13は、互いに相反する方向に開口する第1及び第2の開口部21,22を有した無蓋無底の扁平略箱型形状をなしている。更に、第1のケース部材11は、第1の開口部21を覆う状態で、中間部材13に固定されるとともに、第2のケース部材12は、第2の開口部22を覆う状態で、その中間部材13に固定されている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これにより、第1及び第2のケース部材11,12が中間部材13を挟み込む状態で、そのケース2の内部空間20が形成される構成となっている。
【0019】
さらに詳述すると、本実施形態の中間部材13は、その第1の開口部21と第2の開口部22との間の位置において、これらの第1及び第2の開口部21,22を覆う第1及び第2のケース部材11,12に対向する中間壁部23を備えている。更に、本実施形態のケース2においては、この中間壁部23が内部空間20を区画する態様で、第1及び第2の収容室31,32が形成されている。本実施形態のアクチュエータ装置1は、その第1のケース部材11側に形成された第1の収容室31内にモータ3を収容するとともに、その第2のケース部材12側に形成された第2の収容室32内に減速機構4を収容する。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、モータ3の制御基板33についてもまた、そのモータ3とともに第1の収容室31内に収容する構成となっている。
【0020】
(モータ)
図4に示すように、本実施形態のモータ3は、環状をなすステータ35と、このステータ35の内側で回転するロータ36と、を備えたインナーロータ型の構成を有している。更に、このモータ3は、ロータ36側にマグネット37を有したブラシレスモータとしての構成を有している。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、第1のケース部材11に対向する中間壁部23の第1面23aにステータ35が固定された状態で、その中間壁部23及び第1のケース部材11が形成する第1の収容室31側にモータ3を収容する構成となっている。
【0021】
詳述すると、本実施形態のアクチュエータ装置1は、第1のケース部材11に設けられた第1の軸受部41と、第2のケース部材12に設けられた第2の軸受部42と、を備えている。尚、本実施形態のアクチュエータ装置1において、これら第1及び第2の軸受部41,42は、ともに転がり軸受44としての構成を有している。また、本実施形態のアクチュエータ装置1は、そのケース2の中間壁部23に設けられた挿通孔45を備えている。更に、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、その第1のケース部材11に設けられた第1の軸受部41と第2のケース部材12に設けられた第2の軸受部42とが、この挿通孔45を挟んで互いに対向する位置に配置されている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、その中間壁部23に設けられた挿通孔45に対してモータ3の回転軸50が挿通される。つまり、ケース2内に収容された回転体であるロータ36の回転軸50が中間壁部23の挿通孔45に挿通された状態で、その回転軸50を第1及び第2のケース部材11,12に設けられた第1及び第2の軸受部41,42が回転自在に支持する構成になっている。
【0022】
また、本実施形態のアクチュエータ装置1は、このモータ3よりも第1のケース部材11側(図4中、下側)の位置において、その第1の収容室31側にモータ3の制御基板33を収容する。具体的には、本実施形態のアクチュエータ装置1において、この制御基板33は、中間壁部23に対向する状態で、その第1のケース部材11に沿って配置される。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、この状態で、そのモータ3の制御基板33が第1のケース部材11とともに中間部材13に固定される構成となっている。
【0023】
(減速機構)
また、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、上記のように中間壁部23に設けられた挿通孔45を介して第2の収容室32内に突出したモータ3の回転軸50に、その減速機構4を構成する第1のギヤ部材51が設けられている。更に、本実施形態のアクチュエータ装置1は、この第1のギヤ部材51に噛合する第2のギヤ部材52と、この第2のギヤ部材52とともに一体回転する第3のギヤ部材53と、この第3のギヤ部材53に噛合する第4のギヤ部材54と、を備えている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、この第4のギヤ部材54の回転軸55を介して、その減速機構4を構成する第1~第4のギヤ部材51~54により減速したモータ3の回転をケース2外に出力する構成になっている。
【0024】
詳述すると、本実施形態のアクチュエータ装置1において、第2及び第3のギヤ部材52,53は、共通の回転軸56に固定されることにより、軸方向に並ぶ状態で、その中間壁部23と第2のケース部材12との間の第2の収容室32内に配置されている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これらの中間壁部23及び第2のケース部材12に設けられた一対の軸受部57a,57bによって、その回転軸56を回転自在に軸支する構成になっている。
【0025】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ装置1において、中間壁部23側の軸受部57aには、転がり軸受58が用いられている。そして、第2のケース部材12側の軸受部57bには、滑り軸受60が用いられている。
【0026】
また、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、第4のギヤ部材54の回転軸55も同様に、その中間壁部23及び第2のケース部材12に設けられた一対の軸受部61a,61bによって回転自在に軸支されている。そして、これらの軸受部61a,61bについてもまた、その中間壁部23側の軸受部61aに転がり軸受62を用いるとともに、その第2のケース部材12側の軸受部61bに滑り軸受63を用いる構成となっている。
【0027】
更に、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、これらの両軸受部61a,61bに軸支された回転軸55の軸方向一端側が、その第2のケース部材12に設けられた孔部64を介してケース2外に突出する。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、このケース2の外側に配置された回転軸55の軸方向端部55xを、その出力部65に利用する構成となっている。
【0028】
(汚れ飛散抑制構造)
図4及び図5に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、ケース2の中間部材13が形成する中間壁部23に設けられた挿通孔45に、モータ3のロータ36及び第1のギヤ部材51が固定された回転軸50が挿通されている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これにより、その中間壁部23が、軸方向に並んで一体回転するモータ3のロータ36及び回転駆動部材としての第1のギヤ部材51の間の軸方向位置においてケース2内に設けられた隔壁部70を構成する。
【0029】
また、本実施形態のアクチュエータ装置1においては、この隔壁部70に設けられた挿通孔45に臨むロータ36の軸方向端部36xに対し、回転軸50の径方向外側において、その周方向に延在する周壁部80が設けられている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、このロータ36の軸方向端部36xに設けられた周壁部80によって、その第1のギヤ部材51に生じた汚れの飛散を抑制する構成となっている。
【0030】
詳述すると、図4図6に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置1において、モータ3のロータ36は、回転軸50に固定されたマグネットホルダ81と、このマグネットホルダ81に保持されたリングマグネット82と、を備えている。そして、本実施形態のモータ3は、これにより、これらのマグネットホルダ81及びリングマグネット82が、略円柱状の外形を有したロータ36を形成する状態で、その回転軸50と同軸に一体回転する構成となっている。
【0031】
また、本実施形態のアクチュエータ装置1において、マグネットホルダ81は、樹脂を用いて構成されている。尚、第1のギヤ部材51及び回転軸50は、金属を用いて形成されている。更に、本実施形態のモータ3は、そのロータ36を構成するマグネットホルダ81の軸端面81sが、隔壁部70に設けられた挿通孔45に臨む構成となっている。そして、本実施形態の周壁部80は、このマグネットホルダ81の軸端面81sから、その軸方向に対向する隔壁部70側(図5中、上側)に向かって突出する態様で設けられている。
【0032】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ装置1において、隔壁部70に設けられた挿通孔45は、この挿通孔45に挿通される回転軸50の直径R0よりも、その直径R1が大きい円孔形状をなしている(R1>R0)。また、マグネットホルダ81は、その軸端面81sが、この挿通孔45の直径R1よりも大きな直径R2を有した円形状となっている(R2>R1)。更に、本実施形態の周壁部80は、この円形状をなす軸端面81sの周縁部において、その全周に亘って延設されている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置1は、これにより、この周壁部80が、その隔壁部70に設けられた挿通孔45の直径R1よりも大きな直径R3を有する(R3>R1)。詳しくは、円環状に延びる周壁部80の内径を、その直径R3として、この直径R3が挿通孔45の直径R1よりも大きい構成となっている。
【0033】
(作用)
即ち、摩耗や発錆等により回転駆動部材としての第1のギヤ部材51に生じた汚れが、この第1のギヤ部材51の回転によって周囲に飛散する可能性がある。更に、このケース2内に飛散した汚れが、隔壁部70に設けられた回転軸50の挿通孔45を介して、その隔壁部70に区画された軸方向反対側の内部空間20に侵入する。つまりは、その第1のギヤ部材51から飛散した汚れが、この第1のギヤ部材51を収容する第2の収容室32側からモータ3を収容する第1の収容室31側に侵入する可能性がある。そして、これにより、その第1のギヤ部材51に生じた汚れが、電機子83としての構成を有したモータ3のステータ35や制御基板33に付着する可能性が生ずる。
【0034】
しかしながら、上記のように、その挿通孔45に臨むロータ36の軸方向端部36xに設けられた周壁部80を備えることで、この挿通孔45から侵入した汚れが、その周壁部80に付着しやすくなる。そして、これにより、そのモータ3及び制御基板33を収容する第1の収容室31内に侵入した汚れの飛散が抑制される。
【0035】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)アクチュエータ装置1は、ケース2内に収容されたモータ3を備える。また、アクチュエータ装置1は、このモータ3のロータ36と回転軸50を共有することにより、ケース2内において、そのロータ36と一体に同軸回転する回転駆動部材としての第1のギヤ部材51を備える。更に、アクチュエータ装置1は、そのモータ3のロータ36と第1のギヤ部材51との間の軸方向位置においてケース2内に設けられた隔壁部70を備えるとともに、この隔壁部70には、その回転軸50が挿通される挿通孔45が設けられる。そして、アクチュエータ装置1は、この挿通孔45に臨むロータ36の軸方向端部36xに設けられた回転軸50の径方向外側において周方向に延在する周壁部80を備える。
【0036】
上記構成によれば、第1のギヤ部材51の回転によりケース2内に飛散した汚れが、隔壁部70に設けられた回転軸50の挿通孔45を介してモータ3側に侵入した場合でも、この汚れがロータ36の軸方向端部36xに設けられた周壁部80に付着しやすい。そして、これにより、隔壁部70により区画されたケース2の内部空間20について、そのモータ3側における汚れの飛散を抑制することができる。
【0037】
更に、例えば、隔壁部70により区画されたケース2内の第1のギヤ部材51側には電子部品を収容しない等、第1のギヤ部材51側における汚れの飛散を許容可能であれば、防錆や耐摩耗等、その第1のギヤ部材51のコーティング処理が不要になる。そして、これにより、低コスト化が可能になるとともに、併せて、第1のギヤ部材51の材質についての制約が少なくなることで、その選択肢を拡大することができる。
【0038】
(2)アクチュエータ装置1は、その隔壁部70によって、ケース2内が、モータ3を収容する第1の収容室31と、その回転駆動部材としての第1のギヤ部材51を収容する第2の収容室32と、に区画される。
【0039】
上記構成によれば、より効果的に、隔壁部70により区画されたケース2の内部空間20について、その第1のギヤ部材51の回転により飛散した汚れのモータ3側への飛散を抑制することができる。
【0040】
(3)アクチュエータ装置1は、第1及び第2のケース部材11,12と、これら第1及び第2のケース部材11,12に挟み込まれる中間部材13と、を備えるとともに、その中間部材13に設けられた隔壁部70を備える。
【0041】
上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、回転軸50を共有する状態で一体に同軸回転するモータ3のロータ36及び第1のギヤ部材51を収容するケース内を、その隔壁部70によって、モータ3側と第1のギヤ部材51側とに区画することができる。
【0042】
(4)ロータ36の軸方向端部36xに設けられた周壁部80の直径R3の方が、隔壁部70に設けられた挿通孔45の直径R1よりも大きい(R3>R1)。
上記構成によれば、ケース2の内部空間20を回転軸50の軸方向に区画する隔壁部70に設けられた挿通孔45を介して、その第1のギヤ部材51側からモータ3側に侵入した汚れが、このモータ3のロータ36に設けられた周壁部80に付着しやすい。そして、これにより、効果的に、隔壁部70により区画されたケース2の内部空間20について、そのモータ3側における汚れの飛散を抑制することができる。
【0043】
(5)モータ3は、インナーロータ型のブラシレスモータである。
即ち、インナーロータ型のブラシレスモータは、多くの場合、そのロータ36が比較的単純な略円筒状の外形を有するものとなりやすい。従って、上記構成によれば、製造容易に、その隔壁部70に設けられた挿通孔45に臨むロータ36の軸方向端部36xに周壁部80を設けることができる。
【0044】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・上記実施形態では、ケース2の中間部材13が形成する中間壁部23が、その隔壁部70を構成することとした。しかし、これに限らず、モータ3のロータ36と回転駆動部材としての第1のギヤ部材51との間の軸方向位置に設けられることによりケース2の内部空間20をモータ3側と回転駆動部材側との区画するものであれば、隔壁部70の構成は任意に変更してもよい。例えば、そのケース2が二分割されたケース部材の組付けにより形成される構成である場合等、必ずしも、中間部材13に隔壁部70が設けられていなくともよい。そして、例えば、必ずしも、その隔壁部70によって、そのケース2内が、モータ3を収容する第1の収容室31と、その回転駆動部材としての第1のギヤ部材51を収容する第2の収容室32とに、完全には区画されていなくともよい。
【0046】
・上記実施形態では、ロータ36の軸方向端部36xに設けられた周壁部80の直径R3の方が、隔壁部70に設けられた挿通孔45の直径R1よりも大きいこととした。しかし、これに限らず、例えば、周壁部80の直径R3と挿通孔45の直径R1とが略等しい構成であってもよい(R3≒R1)。更に、周壁部80の直径R3が挿通孔45の直径R1よりも僅かに小さい構成であっても一定の飛散抑制効果が得られる場合がある。例えば、汚れの侵入口となる挿通孔45と周壁部80との軸方向距離が近い場合には、周壁部80の直径R3が小さくとも、その挿通孔45から侵入した汚れがロータ36の軸方向端部36xに設けられた周壁部80に付着しやすい。そして、これにより、そのモータ3側における汚れの飛散を抑制することができる。
【0047】
・上記実施形態では、モータ3のロータ36を構成するマグネットホルダ81において、その軸方向端部36xとなる軸端面81sに周壁部80が設けられる。そして、この周壁部80は、円形状をなす軸端面81sの周縁部において、その全周に亘って延設されることとした。しかし、これに限らず、ロータ36の軸方向端部36xにおける周壁部80の形成位置については任意に変更してもよい。また、周壁部80は、必ずしも円環形状を有していなくともよい。例えば、多角形状に延在する構成であってもよい。更に、その周方向の一部が切り欠かれていてもよい。そして、隔壁部70に設けられた挿通孔45についてもまた、必ずしも円孔形状でなくともよい。
【0048】
・また、例えば、マグネットホルダ81に保持されたリングマグネット82を軸方向に延長することにより、その軸端部をマグネットホルダ81の軸端面81sよりも隔壁部70側に突出させる。そして、これにより、その円筒状をなすリングマグネット82の軸端部が周壁部80を形成する構成としてもよい。このような構成を採用することで、回転駆動部材が鉄系の金属を用いて構成されている場合に、より効果的に、この回転駆動部材から飛散した金属摩耗粉を付着させることができる。
【0049】
・更に、その軸方向端部36xに周壁部80を形成可能であれば、そのロータ36の構成は、任意に変更してもよい。例えば、ロータ36は、ロータコアの周面に板状のマグネットを固着させた構成であってもよく、そのロータコアに板状のマグネットを埋設したものであってもよい。そして、ブラシレスモータに限らず、誘導モータや、ブラシ付きモータを用いる構成に適用してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、ギヤとしての第1のギヤ部材51を回転駆動部材とする構成に具体化したが、回転駆動部材は、必ずしもギヤに限らず、プーリ等であってもよい。そして、回転駆動部材の材質についてもまた、必ずしも金属に限らず、例えば、強化繊維入りの樹脂材料等を用いてもよい。
【0051】
・アクチュエータ装置1は、例えば、パワースライドドア装置等の開閉体駆動装置に用いることができる。そして、例えば、グリルシャッタ等の空力装置や、リッド装置等、その他用途の駆動源に用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…アクチュエータ装置
2…ケース
3…モータ
36…ロータ
36x…軸方向端部
45…挿通孔
50…回転軸
51…第1のギヤ部材(回転駆動部材)
70…隔壁部
80…周壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6