(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113828
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/12 20060101AFI20240816BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F04D29/12 Z
F04D29/08 B
F04D29/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019045
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】葛山 達夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 真一
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA20
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA53A
3H130BA53F
3H130BA91A
3H130BA91F
3H130BA95A
3H130BA95F
3H130CA21
3H130CA23
3H130DA02X
3H130DB08Z
3H130DC05X
3H130DC12X
3H130DC20X
3H130DH05X
3H130EB01A
3H130EB01F
(57)【要約】
【課題】シール部からのフレーム周囲への汚損の広がりを抑制し、洗浄性を向上させたシール構造を備える遠心ポンプを提供する。
【解決手段】遠心ポンプ1は、駆動軸2を回転自在に支持するフレーム10と、フレーム10の前面に固定されるケーシング5と、ケーシング5内に収容されるとともに駆動軸2の先端に同軸に設けられるインペラ3と、フレーム10の前部中央に駆動軸2と同軸の円環状段部13を有して形成されたシール装着部12と、シール装着部12に設けられて駆動軸2の周囲をシール部材40,50でシールするシール部20と、を備える。シール装着部12は、円環状段部13の最下部に、軸方向に沿ってドレン溝15が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を回転自在に支持するフレームと、該フレームの前面に固定されるケーシングと、該ケーシング内に収容されるとともに前記駆動軸先端に同軸に設けられるインペラと、前記フレームの前部中央のシール装着部に設けられて前記駆動軸の周囲をシール部材でシールするシール部と、を備え、
前記シール装着部は、前記フレームの前部中央に前記シール部材を装着可能に形成された円環状段部を有し、該円環状段部の最下部には、軸方向に沿ってドレン溝が形成されている、ことを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項2】
前記フレームの前記シール装着部に対して軸方向前側に突設する円環状突設部を有し、
前記円環状段部は、前記円環状突設部の径方向内側に形成されており、前記ドレン溝の排出口は、前記円環状突設部の軸方向前側の端部に位置している請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記ドレン溝は、前記円環状段部の内周面に開口して下方に凸の半円弧状に切削加工によって形成されている請求項2に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
前記駆動軸の外周面に同軸に装着される円筒部および該円筒部の前側から径方向に張り出して前記シール装着部を全周に亘って覆うように前記シール装着部に対向する円盤部を有するシールホルダと、
前記シールホルダの前記円筒部の外周面に摺接するように配置されて前記駆動軸の周囲をシールする環状の第一のシール部材と、
前記円環状段部に固定されるとともに前記第一のシール部材を自身を介して前記フレームの前部中央の位置に保持する第二のシール部材と、を有し、
前記第二のシール部材には、前側を向く端面に円環状のラビリンス溝が形成され、
前記シールホルダの前記円盤部には、前記ラビリンス溝に嵌まり込むように後方に向けて張り出す環状張出部が形成されている、請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項5】
前記第二のシール部材の前面と前記シールホルダの円盤部との対向空間が、前記シール装着部の前記ドレン溝に連通している、請求項4に記載の遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプに係り、特に、ポンプ用フレームのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプは、例えば特許文献1に開示されるように、駆動軸を回転自在に支持するフレームと、フレーム前面に固定されるケーシングと、ケーシング内に収容されるとともに駆動軸先端に同軸に設けられるインペラと、を備える。この種の遠心ポンプでは、フレーム内の軸支部の前面中央に、駆動軸の周囲をシールするシール部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、この種の遠心ポンプでは、潤滑油等の廃液がシール部からフレーム表面に漏出して、長期の使用によりフレーム周囲に汚損が広がるという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、シール部からのフレーム周囲への汚損の広がりを抑制し、洗浄性を向上させたシール構造を備える遠心ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る遠心ポンプは、駆動軸を回転自在に支持するフレームと、該フレームの前面に固定されるケーシングと、該ケーシング内に収容されるとともに前記駆動軸先端に同軸に設けられるインペラと、前記フレームの前部中央のシール装着部に設けられて前記駆動軸の周囲をシール部材でシールするシール部と、を備え、前記シール装着部は、前記フレームの前部中央に前記シール部材を装着可能に形成された円環状段部を有し、該円環状段部の最下部には、軸方向に沿ってドレン溝が形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る遠心ポンプによれば、フレームのシール装着部には、円環状段部の下部に、軸方向に沿ってドレン溝が形成されているので、シール部から漏出する潤滑油等の廃液をシール部の最下部に意図的に導くことで、フレーム周囲へのシール部からの汚損の広がりを抑制し、洗浄性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、本発明によれば、フレーム周囲へのシール部からの汚損の広がりを抑制し、洗浄性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一態様に係る遠心ポンプの一実施形態の説明図であり、同図では駆動軸の軸線に沿った断面を示している。
【
図2】シール部の要部拡大図(
図1でのA部)である。
【
図3】シール部を
図1のB矢視方向から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の遠心ポンプ1は、フレーム10と、フレーム10の前部の端面に装着されたケーシング5と、ケーシング5内に突設する駆動軸2の先端に支持されたインペラ3と、インペラ3の後方に設けられたエキスペラ4と、エキスペラ4の後方に設けられた軸封部80と、を備える。軸封部80のシール方式としては、同図のシールリングの他、グランドパッキンやメカニカルシールなど適宜採用できる。
【0011】
インペラ3は、ケーシング5内の空間に片持ち支持される。本実施形態のインペラ3は、自身の前面に複数枚の羽根3aが設けられるとともに、背面に複数枚の裏羽根3bが設けられている。ケーシング5は、前面が軸方向に沿って前方に張り出す吸込側5inとされ、上部中央が吐出側5outとされている。
【0012】
駆動軸2は、基端側がケーシング5の後方を貫通してフレーム10内に延びている。フレーム10内には、軸方向前後に離隔した二つの軸受け61,62を有する軸支部60が設けられ、この軸支部60によって駆動軸2の基端側が水平に且つ回転自在に支持されている。駆動軸2の後端部には、例えば駆動プーリ8が同軸に装着され、不図示のモータの出力が不図示の駆動ベルトを介して伝達可能に接続される。
【0013】
本実施形態の遠心ポンプ1は、ケーシング5の内周面の接液部を覆うように、耐摩耗に優れたゴム製のライナ70が装着される。本実施形態のライナ70は、駆動軸2と直交する面に沿って略中央で二分割可能に構成され、軸方向前側のフロントライナ71と、軸方向後側のバックライナ72と、を含んで構成される。また、本実施形態のケーシング5は、駆動軸2と直交する面に沿って略中央で二分割された分割型とされ、フロントライナ71を覆うフロントケーシング6と、バックライナ72を覆うバックケーシング7と、を含んで構成される。
【0014】
バックケーシング7は、その背面に装着部90が設けられ、固定用のボルト・ナット91,92でフレーム10の前端面に装着部90が固定される。また、フロントケーシング6は、フロントライナ71とバックライナ72とをバックケーシング7の前面との間に挟持するようにしてボルト・ナット93で相互に固定される。これにより、ライナ70の内部にインペラ3の収容空間が画成される。
【0015】
ここで、本実施形態の遠心ポンプ1では、フレーム10の前部中央に、凹円筒状のシール装着部12が形成され、このシール装着部12に駆動軸2の周囲をシール部材40,50でシールするシール部20が設けられている。
特に、本実施形態のシール装着部12は、
図2に要部を拡大図示するように、フレーム10の前部中央に、軸方向前方に突設された円環状の突設部17が形成され、この突設部17の内径側を座繰るように、フレーム10の前部中央にシール部材40,50を装着可能に形成された円環状段部13が形成されている。そして、この円環状段部13の最下部に、軸方向に沿ってドレン溝15が形成されている。
【0016】
詳しくは、シール部20には、シールホルダ30が設けられるとともに、シール部材として、第一のシール部材としてシールパッキン40が設けられ、また、第二のシール部材としてラビリンスシール50が設けられている。
【0017】
シールホルダ30は、駆動軸2の外周面に同軸に装着される円筒部31と、シール装着部12に対向する円盤部32と、を有する。円盤部32は、円筒部31の前側から径方向に張り出しており、凹のシール装着部12を全周に亘って覆うように、径方向に僅かな対向隙間Tを隔ててシール装着部12に対向している。円盤部32の後面の径方向略中央には、後方に向けて張り出す環状張出部34が形成されている。
また、円盤部32の外周縁部の後面には、後方に向けて円環状に張り出す返り部33が全周に亘って形成されており、返り部33の外周面が、円環状段部13の内周面に対して干渉しない僅かな隙間Tを隔てて対向配置されている。
【0018】
シールパッキン40は、エラストマ製の円環状部材であり、外側環状部43と、内側環状部44と、を有する。内側環状部44には、径方向内側に向けて張り出す第一リップ部41と、第二リップ部42と、が設けられ、第一リップ部41と、第二リップ部42と、がシールホルダ30の円筒部31の外周面に摺接するように配置されて駆動軸2の周囲をシールしている。
【0019】
ラビリンスシール50は、エラストマ製の円筒状部材であり、円環状段部13に固定されるとともに、シールパッキン40を自身を介してフレーム10の中央の位置に保持している。
本実施形態のラビリンスシール50は、略円筒状のシール本体部51と、シール本体部51の外周面の中央から径方向外側に向けて円盤状に張り出すパッキン保持部54と、シール本体部51の内周面であってシールパッキン40の外側環状部43に嵌合されるシール固定部53と、を有する。
シール固定部53の前側縁部には、径方向内側に張り出す鍔部55が設けられ、鍔部55がシールパッキン40の外側環状部43の前側端面に当接することでシールパッキン40の軸方向前方への移動が規制されている。
【0020】
本実施形態のラビリンスシール50には、前側を向く側面に、凹円筒溝からなるラビリンス溝52が形成されている。シールホルダ30の円盤部32には、ラビリンス溝52に嵌まり込むように後方に向けて張り出す環状張出部34が形成されている。
これにより、シールホルダ30の環状張出部34が凹円筒溝内に嵌め合わされることでラビリンス構造が構成される。ラビリンスシール50の前面とシールホルダ30の円盤部32との対向空間が、シール装着部12のドレン溝15に連通している。
本実施形態のドレン溝15は、フレーム10に対して軸方向前側に突設する円環状の突設部17の最下部に軸方向に沿って形成され、その軸方向前側の端部開口がドレンの排出口になっている。また、ドレン溝15の横断面形状は、
図3に示すように、下方に凸の半円弧状に切削加工によって形成されている。
【0021】
次に、本実施形態の遠心ポンプ1が備えるシール構造の作用効果について説明する。
ここで、上述したように、この種の遠心ポンプでは、潤滑油等の廃液がシール部からフレーム表面に漏出して、長期の使用によりフレーム周囲に汚損が広がるという問題がある。
【0022】
これに対し、本実施形態の遠心ポンプ1によれば、フレーム10前部のシール装着部12には、
図2および
図3にも示すように、円環状段部13の下部に、軸方向に沿ってドレン溝15が形成されているので、シール部20から漏出する潤滑油等の廃液をシール部20の最下部に意図的に導くことで、フレーム10の周囲へのシール部20からの汚損の広がりを抑制し、洗浄性を向上させることができる(発明1)。
【0023】
特に、本実施形態のドレン溝15は、フレーム10に対して軸方向前側に突設する円環状突設部17の最下部に軸方向に沿って形成されるとともに、その軸方向前側の端部開口がドレン溝15の排出口になっているので、ドレン溝15の排出口とフレーム本体とが軸方向で離間する。そのため、フレーム10自体をドレンで汚染する可能性を低くでき、フレーム本体の直接汚染を防止または抑制できる(発明2)。
【0024】
さらに、本実施形態のドレン溝15では、円環状段部の内周面に開口して下方に凸の半円弧状に切削加工によって形成されているので、ドリルで一方向から切削加工できる(吸込口から回転軸と平行に切削工具を入れられる)ので、加工性に優れるとともに、ドレンの排出性にも優れている。
つまり、ドレン溝15の横断面形状は、例えば矩形状のスリットや円形の貫通孔からでも構成し得るものの、矩形溝状のスリットであると、直角に工具を入れる必要があるため加工性に難がある上、矩形溝は下方に凸の半円弧状の溝よりもドレンの排出性が低下する可能性がある。また、円形の貫通孔の場合はドレンによって貫通孔が詰まる場合がある。これに対して本実施形態のドレン溝15であれば、簡素な構成としつつも、これらの問題が解消されることから、単なる設計変更の範疇を超える格別顕著な作用効果を奏するものである(発明3)。
【0025】
さらに、本実施形態の遠心ポンプ1では、ラビリンスシール50には、前側を向く端面に円環状のラビリンス溝52が形成され、シールホルダ30の円盤部32には、ラビリンス溝52に嵌まり込むように後方に向けて張り出す環状張出部34が形成されているので、ラビリンス構造により、シール部20からの潤滑油等の廃液の漏出を可及的に抑制する上で好適である。
さらに、シールホルダ30の円盤部32が、凹のシール装着部12を全周に亘って覆うように、径方向に僅かな対向隙間Tを隔ててシール装着部12に対向するとともに、円盤部32よりも内側にラビリンスシール50が設けられ、シールホルダ30の環状張出部34にラビリンス溝52が嵌め合わされることでラビリンス構造が構成されているので、遠心ポンプ1を水洗した際に発生する洗浄水が、円盤部32の外部から軸支部60の内部に向けて侵入するのを防ぐことができる。そのため、遠心ポンプ1の水洗で発生する洗浄水が軸支部60を汚損することも防止できる(発明4)。
【0026】
また、本実施形態の遠心ポンプ1では、ラビリンスシール50の前面とシールホルダ30の円盤部32との対向空間が、シール装着部12のドレン溝15に連通している。
これにより、本実施形態の遠心ポンプ1によれば、ラビリンス構造により、シール部20からの廃液の漏出を可及的に抑制しつつ、仮に廃液が漏出した場合であっても、ラビリンスシール50の前面とシールホルダ30の円盤部32との対向空間の内部に留め置ける。そのため、シール部20からの汚損の広がりを抑制する上で優れた構造であるといえる(発明5)。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の遠心ポンプ1によれば、シール部からのフレーム周囲への汚損の広がりを抑制し、洗浄性を向上させることができる。なお、本発明に係るポンプ用ケーシングは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 遠心ポンプ
2 駆動軸
3 インペラ
3a 羽根
3b 裏羽根
4 エキスペラ
5 ケーシング
5in 吸込側
5out 吐出側
6 フロントケーシング
7 バックケーシング
8 駆動プーリ
10 フレーム
11 軸受装着部
12 シール装着部
13 円環状段部
14 環状端面
15 ドレン溝
16 段付き穴
17 円環状の突設部
20 シール部
21 シール固定ねじ
30 シールホルダ
31 円筒部
32 円盤部
33 返り部
34 環状張出部
40 シールパッキン(第一のシール部材)
41 第一リップ部
42 第二リップ部
43 外側環状部
44 内側環状部
50 ラビリンスシール(第二のシール部材)
51 シール本体部
52 ラビリンス溝
53 シール固定部
54 パッキン保持部
55 鍔部
60 軸支部
61 軸受
62 軸受
70 ライナ
71 フロントライナ
72 バックライナ
80 軸封部
90 装着部
91 バックケーシング固定ボルト(六角穴付きボルト)
92 バックライナ固定ボルト(スタッドボルト)
93 ボルト・ナット