IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社MKバイオの特許一覧

<>
  • 特開-水質浄化材およびその製造方法 図1
  • 特開-水質浄化材およびその製造方法 図2
  • 特開-水質浄化材およびその製造方法 図3
  • 特開-水質浄化材およびその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113832
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】水質浄化材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/06 20230101AFI20240816BHJP
   C12N 11/04 20060101ALI20240816BHJP
   C02F 3/34 20230101ALI20240816BHJP
   C02F 3/10 20230101ALI20240816BHJP
   C12N 11/084 20200101ALN20240816BHJP
   C12N 11/10 20060101ALN20240816BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C02F3/06
C12N11/04
C02F3/34 A
C02F3/34 101D
C02F3/10 A
C12N11/084
C12N11/10
C12N1/20 D
C12N1/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019061
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】518056601
【氏名又は名称】株式会社MKバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】河添 真美
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4B033NA11
4B033NA12
4B033NB24
4B033NB35
4B033NB48
4B033NB50
4B033NB54
4B033NB58
4B033NB68
4B033ND04
4B033ND20
4B033NG01
4B033NG02
4B033NH10
4B065AA01X
4B065AA15X
4B065AA41X
4B065BC42
4B065BC46
4B065BC47
4B065BD05
4B065CA55
4D003AA01
4D003CA08
4D003EA14
4D003EA22
4D003EA24
4D003FA10
4D040BB02
4D040BB07
4D040BB42
4D040BB52
4D040BB63
4D040BB82
4D040DD04
4D040DD31
(57)【要約】
【課題】水槽に投与するだけで容易にアンモニア態窒素の浄化などの微生物に応じた様々な除去ができる水質浄化材やその製造方法を提供する。
【解決手段】水質汚濁物質を分解や除去する微生物、およびゲル化用材料を含む微生物液と、多孔質ブロック材とを接触させて、前記多孔質ブロック材に前記微生物液を含侵させる工程と、前記多孔質ブロック材の孔内で前記ゲル化用材料をゲル化させ固定する工程と、を有する、水質浄化材の製造方法。多孔質ブロック材と、前記多孔質ブロック材の孔内に固定されたゲルと、前記多孔質ブロック材の孔内に担持された硝化菌と、脱窒菌、アンモニア同化菌とを含む水質浄化材。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質汚濁物質を分解および/または除去する微生物、およびゲル化用材料を含む微生物液と、多孔質ブロック材とを接触させて、前記多孔質ブロック材に前記微生物液を含侵させる工程と、
前記多孔質ブロック材の孔内で前記ゲル化用材料をゲル化させ固定する工程と、を有する水質浄化材の製造方法。
【請求項2】
前記多孔質ブロック材が、中性のセラミック材であり、
前記水質浄化材の含水時の比重が1~1.8g/cm3である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記微生物が、硝化菌、脱窒菌、およびアンモニア同化菌からなる群から選択される1以上の菌を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル化用材料が、アルギン酸ナトリウムであり、前記固定する工程が、カルシウムイオンを含む液を加えることで、ゲル化させるものである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ゲル化用材料が、コラーゲン、ゼラチン、寒天、ポリアクリルアミド、カラギーナンおよびポリビニルアルコールからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
多孔質ブロック材と、
前記多孔質ブロック材の孔内に固定されたゲルと、
前記多孔質ブロック材の孔内に担持された水質汚濁物質を分解および/または除去する微生物とを含む水質浄化材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水質浄化材に関する。また、水質浄化材の製造方法に関する。特に観賞用や陸上養殖用の魚類を飼育する水槽などで用いられる水質浄化材に関する。
【背景技術】
【0002】
アクアリウムともよばれる水生生物の飼育設備は、古くから水族館のような大型のものから個人用の水槽など様々な規模で、観賞や趣味などのために普及している。さらに、最近の社会情勢によるいわゆる巣ごもりともよばれる生活様式からで観賞魚に関する製品の需要が高まっている。また、人類の食糧確保の観点から、大型水槽に食用魚を飼育する陸上養殖が注目されつつある。
【0003】
魚類などを含む水生生物の飼育にあたっては、水中に蓄積する様々な水質汚濁物質が問題となる。水質汚濁物質の典型的なものの一つとして、例えば、水中に蓄積する無機態窒素が問題となる。無機態窒素の中でも特にアンモニアは、毒性が強く、速やかに除去しなければ魚類に悪影響を及ぼすものである。アンモニア態窒素の除去には、物理的に水替えを行う方法や、ゼオライトなどを利用した化学的な吸着を行う方法、自然の自己浄化能を模した微生物による硝化・脱窒による方法がある。
【0004】
特許文献1は、次のような手段の水質浄化装置等を開示している。水槽の排水を微生物学的に処理する微好気処理槽と好気処理槽を有している。微好気処理槽に通じる水槽排水導入路において排水中の空気を自然抜気させており、水槽排水を微好気処理槽の下部から導入する。微好気処理槽と好気処理槽は外ケースに収容されている。微好気処理槽には脱窒菌の菌床収容容器が配置され好気処理槽にはpH調整材収容容器が配置されている。これらの上方にはイオン交換材等の物理濾過材収容容器が配置される。外ケースは蓋体で覆われている。
【0005】
特許文献2は、硝化細菌と鉱物質からなる硝化モジュル5と、硝化モジュル5に空気を含んだ水を供給するイジェクター3と、殺菌殺藻モジュル6と、水槽底部に脱窒細菌と濾過砂10からなる脱窒ろ床9を設け、食べ残しの餌や排泄物等の有機物を利用して、硝酸を水中から取り除くため、硝酸の蓄積、pHの低下、鉱物質の目詰まりを防止するものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-029324号公報
【特許文献2】特開平5-277495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のようにアクアリウムの水槽などでの水質管理にあたっては、各種水質汚濁物質の分解や除去が重要であり、典型的なものとして蓄積する無機態窒素の除去も重要である。飼育している魚類の排泄物等に由来する水中アンモニア態窒素を微生物により減少させるためには、同化によるものの他、好気的条件で行われるアンモニアから硝酸へ変化させる硝化反応と、嫌気的条件で行われる硝酸や亜硝酸の脱窒反応が重要である。これらは、その反応条件や寄与する微生物の菌種が異なる。
また、水槽の中には、空気中由来の微生物と原生生物が自然発生する。そのため、水槽へ水質浄化微生物を投入しても、自然発生した微生物と拮抗したり、原生生物に捕食されたりするリスクがある。従って、効果的な水質浄化のためには、有用な微生物を保護する必要がある。
【0008】
例えば、特許文献1、2のように、比較的小型の水槽の維持管理を想定しているときも、硝化と、脱窒を別々に行う槽やモジュルを設けることがある。しかし、このような設備の維持管理は費用や場所、手間などの負担が大きい。このため、初心者も含めて容易な作業で水質を浄化できる手法が求められている。
【0009】
かかる状況下、本発明は、水槽に投与するだけで容易に無機態窒素などの水質汚濁物質の分解や除去などに用いることができる水質浄化材やその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0011】
<1> 水質汚濁物質を分解および/または除去する微生物、およびゲル化用材料を含む微生物液と、多孔質ブロック材とを接触させて、前記多孔質ブロック材に前記微生物液を含侵させる工程と、前記多孔質ブロック材の孔内で前記ゲル化用材料をゲル化させ固定する工程と、を有する水質浄化材の製造方法。
<2> 前記多孔質ブロック材が、中性のセラミック材であり、前記水質浄化材の含水時の比重が1~1.8g/cm3である、前記<1>に記載の製造方法。
<3> 前記微生物が、硝化菌、脱窒菌、およびアンモニア同化菌からなる群から選択される1以上の菌を含む、前記<1>または<2>に記載の製造方法。
<4> 前記ゲル化用材料が、アルギン酸ナトリウムであり、前記固定する工程が、カルシウムイオンを含む液を加えることで、ゲル化させるものである、前記<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> 前記ゲル化用材料が、コラーゲン、ゼラチン、寒天、ポリアクリルアミド、カラギーナンおよびポリビニルアルコールからなる群から選択されるいずれかを含む、前記<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> 多孔質ブロック材と、前記多孔質ブロック材の孔内に固定されたゲルと、前記多孔質ブロック材の孔内に担持された水質汚濁物質を分解および/または除去する微生物とを含む水質浄化材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水質浄化材は、水槽に投与するだけで容易に、利用している微生物に対応した様々な水質汚濁物質の除去などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の水質浄化材の製造フローの一例を示すフロー図である。
図2】本発明の水質浄化材の像である。
図3】本発明の水質浄化材を用いてメダカを飼育したときの水槽の像である。
図4】実施例における硝酸態窒素除去試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0015】
[本発明の水質浄化材の製造方法]
本発明の製造方法は、水質汚濁物質を分解および/または除去する微生物、およびゲル化用材料を含む微生物液と、多孔質ブロック材とを接触させて、前記多孔質ブロック材に前記微生物液を含侵させる工程と、前記多孔質ブロック材の孔内で前記ゲル化用材料をゲル化させ固定する工程と、を有する水質浄化材の製造方法である。
【0016】
[本発明の水質浄化材]
本発明の水質浄化材は、多孔質ブロック材と、前記多孔質ブロック材の孔内に固定されたゲルと、前記多孔質ブロック材の孔内に担持された水質汚濁物質を分解および/または除去する微生物とを含む。
【0017】
なお、本願において本発明の製造方法により、本発明の水質浄化材を得ることもでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。本発明の水質浄化材は、水槽に投与するだけで容易に、あらかじめ担持させた微生物に対応した様々な水質汚濁物質の分解や除去などができる。
【0018】
本発明者らは、水槽で室内飼育できる魚類の飼育を試みた。特に、淡水魚で小型であり、比較的、小さい水槽で飼育でき、塩濃度の調整を行う必要性が低く、比較的準備が容易と考えられているメダカなどの飼育を検討した。しかし、実際にメダカを飼育すると、水質管理の難易度が高いことが知られている。これは、メダカがアンモニアを排出し、蓄積することによって、その毒性により生育できなくなることが一因と考えられる。
【0019】
このような室内飼育等の需要に応えるために、本発明者らは、従来の飼育設備を検討した結果、水質維持に寄与する容易に利用できる水質浄化材を検討した。
【0020】
水槽に供給された餌は、有機物として魚類の体内に入り、消化された後、水中に放出される。消化された有機物のうち、炭素分は、呼気の二酸化炭素として排出され、窒素分は、アンモニア態窒素などの無機態窒素として排出される。アンモニア態窒素は、魚類にとって有害であるため、同化による消費や、硝化によって亜硝酸や硝酸にする必要がある。さらに、アンモニアよりは有害性は低くなるものの、亜硝酸や硝酸も濃度が高くなると有害であるため、適宜除去する必要があり、脱窒も重要である。
【0021】
この硝化・脱窒を行うための菌を利用することも考えられているが、セメントなどで固定すると、その固定化剤のセメントがpH変化などの原因となってしまう。また、液状のものを利用すると液の循環により流失したり、自然発生による微生物と拮抗したり、原生生物により捕食されたりする。
【0022】
そこで、種々検討した結果、多孔質材に、硝化菌と脱窒菌をゲル化用材料とともに含侵させて、多孔質材内でゲル化させて作製した水質浄化材を得た。この水質浄化材を、水槽内に投入するだけで、アンモニア態窒素や硝酸を除去できていることが確認された。これは、多孔質材の孔内が微生物の生息する場となり、かつ、孔内のゲルにより酸素などの気体が侵入しにくい嫌気的な場が確保されていると考えられる。そして、脱窒を促進させる嫌気的環境ができ、一方で硝化を促進させる好気的環境もできていることを見出した。また、ゲル内を各種菌は適宜移動もできると考えられ、さらに、硝化と脱窒とが近接する場で効率よく行われているとも考えられる。また、中性の多孔質材を用いれば、pHの影響が少なくそのまま水槽に投入することもできる。本発明はかかる知見に基づく。
【0023】
さらに、本発明の水質浄化剤は、孔内の閉塞していない開放している部分や浄化材周囲の溶存酸素を含む水が循環しやすい好気性の場と、ゲルにより孔内が閉塞されており酸素が到達しにくい嫌気性の場とが併存していると考えられ、双方の条件で生じるそれぞれの反応が行われやすいと考えられる。さらに、孔内がゲルにより部分的に閉塞されることで、浄化材の周囲から他の菌や原生動物が侵入しにくく、初めに担持させた菌が優位な状態が維持できると考えられる。これにより、微生物を適宜設定することで、多様な機能を、安定して奏することができる浄化剤として利用できるものと考えられる。
【0024】
[水質浄化材の製造フロー]
図1は、本発明の水質浄化材の製造フローに関する一例を示すフロー図である。本発明の製造方法は、微生物液と多孔質ブロック材を接触させて含侵させるステップS11を有する。また、本発明の製造方法は、多孔質ブロック材内で微生物液をゲル化させるステップS21を有する。さらに、乾燥させるステップを有するものとしてもよい。
【0025】
[含侵させる工程(含侵工程)]
含侵させる工程は、微生物液と、多孔質ブロック材とを接触させる。そして、多孔質ブロック材内に微生物液を含侵させる。
【0026】
[微生物液]
微生物液は、多孔質ブロック材に含侵させる微生物を含む液である。微生物液は、水質汚濁物質を分解や除去する微生物を含む。また、微生物液は、ゲル化用材料も含む。
【0027】
微生物液は、水槽内での飼育に伴う水質汚濁物質等を分解や除去する微生物を含む。分解や除去対象の水質汚濁物質等は、飼育環境にかかる、残餌等に由来するような各種有機物等や、生き物の排せつ物等を想定した構成とすることができる。
【0028】
本願における分解・除去対象の水槽内での飼育に伴う水質汚濁物質は、水槽内での飼育にともない発生して、水槽内の水質を汚したり濁りの原因となったりする有機物およびその分解産物である。この水質汚濁物質は、有機物を対象とすることができ、これらの分解や除去の過程に伴い発生するようなアンモニアや硝酸、亜硝酸などの無機態窒素も含むものとする。水槽内での飼育に伴う水質汚濁物質は、典型的なものとしては、主要な元素として、炭素や、窒素、リンを含むものなどがあげられる。また、これらの他の元素(例えば、硫黄や、ミネラル等)を含むものとしてもよい。
【0029】
水処理においては、飼育対象などの処理対象に合わせて、各成分の影響などを考慮して設計された微生物や、適宜馴養された微生物などが利用されている。微生物としては、例えば、好気性微生物や、嫌気性微生物などの水質汚濁物質分解菌等を用いることができる。これらの中でも、比較的、様々な飼育条件で含有量が多く影響が大きくなりやすい無機態窒素の除去に関与する硝化菌や脱窒菌、アンモニア同化菌などを用いることが好ましい。
【0030】
微生物液は、例えば、無機態窒素の除去を行うためのものを作製するときは、ゲル化用材料と、硝化菌や、脱窒菌、アンモニア同化菌を含有する。特に、アンモニアの分解を開始するために重要な硝化菌やアンモニア同化菌を少なくとも含むことが好ましい。微生物液は、媒質として主に水を含む。このため、微生物液に含まれる各成分は、水に溶解や分散しやすいものや分散等しやすい状態として用いることが好ましい。微生物液は、さらに他の成分を含むものでもよい。
【0031】
[微生物]
微生物は、好気性微生物を用いてもよい。好気性微生物は、特に、炭水化物や脂質、タンパク質などの元素として炭素を含む成分の分解などにも大きく寄与している。また、嫌気性微生物等を併用するものとしてもよい。好気性微生物や、嫌気性微生物等は、分解や除去対象に合わせて様々なものを適宜利用できる。また、好気性の場と、嫌気性の場とを安定して得ることができ、硝化と脱窒など複数の機能を奏するような菌なども用いることができる。
【0032】
微生物は、例えば、アンモニア同化菌や、硝酸同化菌、硝酸塩還元菌、脱窒菌、脱硫菌、有機物分解菌、乳酸菌、枯草菌、光合成細菌、酵母菌、納豆菌などを用いることができる。アンモニア同化菌は、アンモニアを窒素源としてエネルギーを得る菌である。アンモニア同化菌によれば、アンモニアは消失するが、亜硝酸は発生しない。硝酸同化菌は、硝酸を窒素源としてエネルギーを得る菌である。硝酸塩還元菌は、硝酸から亜硝酸を生成する菌であり、広義の脱窒菌に含まれる。狭義の脱窒菌は、硝酸や亜硝酸から、酸化窒素、酸化二窒素、窒素ガスとなる過程に関与する菌である。脱硫菌は、硫黄を除去する菌である。有機物分解菌は、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼなどの有機物分解酵素を生産する菌である。また、乳酸菌や、枯草菌、光合成細菌、酵母菌、納豆菌なども用いることができる。
【0033】
[硝化菌]
硝化菌は、アンモニア(NH3、NH4 +)から亜硝酸(NO2 -)や硝酸(NO3 -)を生ずる硝化作用に関する微生物である。硝化菌は、アンモニアを酸化して亜硝酸を生ずるアンモニア酸化細菌等や、亜硝酸を酸化して硝酸を生ずる亜硝酸酸化細菌を含む。
【0034】
このような微生物としては、例えば、アンモニア酸化菌(もしくは亜硝酸生成菌)は、Nitrosomonas属や、Nitorosococcus属、Nitrosospira属(Nitrosolobus属、Nitrosovibrio属を含む)などがあげられる。また、亜硝酸酸化菌(もしくは硝酸生成菌)は、Nitrobacter属や、Nitrospira属などがあげられる。また、芽胞を形成するBacillus属とその類縁菌なども用いることができる。
【0035】
[脱窒菌]
脱窒菌は、窒素循環の最終段階で窒素化合物を分子状窒素(N2)として大気中へ放散させる脱窒作用に関する微生物である。脱窒菌は、例えば、Pseudomonas denitrificansや、Paracoccus denitrificansなどがあげられる。また、芽胞を形成するBacillus属とその類縁菌なども用いることができる。
【0036】
[ゲル化用材料]
ゲル化用材料は、ゲル化させることができる材料である。ゲル化用材料は、含侵工程では、液状を維持できるものを用いて、多孔質ブロック材に含侵させた後にゲル化させる。含侵時には液状であることで、多孔質ブロック材の孔内に侵入しやすい状態である。その後、多孔質ブロック材の孔内でゲル化することで、微生物液に含まれていた硝化菌や脱窒菌なども、多孔質ブロック材の孔内に固定させる。
【0037】
ゲル化用材料は、他の成分と接触することでゲル化するものや、加熱等の処理や、経時変化などでゲル化するものを用いることができる。例えば、アルギン酸ナトリウムや、ポリビニルアルコール、コラーゲン、ゼラチン、寒天、ポリアクリルアミド、カラギーナンなどを用いることができる。アルギン酸ナトリウムは、水に溶解させた状態では流動性を有する液状であり、カルシウムイオンを含む液と接することでゲル化する。
【0038】
[微生物液の調製]
微生物液は、媒質に、各成分を、溶解や分散して調製する。微生物液に含まれるゲル化用材料は、ゲル化させるために適した濃度で混合する。ゲル化用材料の濃度が低すぎるとゲル化しにくく、高すぎると流動化しにくい。例えば、アルギン酸ナトリウムの場合、10~40g/L程度を溶解させることが好ましい。
【0039】
水質汚濁物質を分解や除去する微生物は、水質浄化材の使用に伴い培養・馴化されるため、その濃度は使用に伴っても適宜調整されるが、予め水質浄化材に高濃度で担持させておくことで、保管等に伴う性能低下の影響も小さく、水槽での使用開始時から優れた効果が得られる。このため、それぞれ、菌の種類にもよるが、104~109CFU(Colony forming unit(コロニー形成単位))程度を溶解・分散させることが好ましい。
【0040】
微生物液は、ゲル化用材料や、硝化菌、脱窒菌、アンモニア同化菌の他にも、任意の成分を含むものとしてもよい。例えば、緩衝成分や炭素源などの栄養分、他の種類の菌、鉄やマグネシウムなどのミネラルを補強するために含むものとしてもよい。
【0041】
[多孔質ブロック材]
多孔質ブロック材は、微生物液を含侵させるものである。多孔質ブロック材は、中性のものであることが好ましい。中性のものを用いることで、水槽にいれるときに飼育水のpHに影響を与える恐れが低いものとなる。このため、使用者は、特段調整等をすることなく、容易に水質浄化材を使用することができる。
【0042】
このような多孔質ブロック材としては、例えば、セラミック材、コンクリート、レンガ、石灰などを用いることができる。ただし、pHがアルカリ性を示す成分を含むものは、微生物の性能を低下させたり、魚類に悪影響を与えたりする恐れがあるため、あらかじめ一定時間水に浸漬させるなどの前処理をすることが好ましい。
【0043】
水質浄化材の含水時の比重は、1~1.8g/cm3であることが好ましい。より好ましくは、1.2~1.6g/cm3であり、さらに好ましくは、1.3~1.5g/cm3である。このような比重とすることで、水槽内に沈み、水槽内に流れが生じても移動しにくいものとなる。このため、長時間、水中で安定して効果を奏することができる。このような水質浄化材とするために、その比重は多孔質ブロック材の比重が支配的なものとなるため、多孔質ブロック材もこのような比重のものとすることが好ましい。
【0044】
多孔質ブロック材は、中性であることが好ましい。多孔質ブロック材の性質の評価にあたっては、1Lの水に、使用量を想定した、10gを入れて撹拌したときにpH計で測定したときのpHが、6以上8未満であることをもって、中性のものとすることができる。より好ましくは、pH6.5~7.5のものを用いることが好ましい。
【0045】
多孔質ブロック材は、多孔性の材質を用いたブロック材である。なお、多孔質ブロック材は、乾燥状態のとき、開放気孔率60~95%、比重0.3~0.8g/cm3程度のものを用いることができる。この孔は、気孔率(気孔径分布、かさ密度)が、70%以上のものを用いることがより好ましい。
【0046】
多孔質ブロック材は、ブロック状である。ブロックの形状は、特に限定はなく、無作為に破砕されたままのものを用いてもよいし、略円柱状のものや、略多角柱状、筒状、板状のものなどを用いることができる。取り扱いやすさや、内部にゲルを保持できるスペースなどを確保できることなどを考慮して、具体的な大きさは設計できる。
【0047】
例えば、室内飼育等の水槽用の場合、比較的、水槽が小さいことから、外形の幅・高さ・厚み・径などが、1cm以上や、2cm以上程度のものなどを用いることができる。水槽の大きさに合わせて上限などは適宜設定できる。
【0048】
また、陸上養殖など大型の水槽へ投入する場合は、設置場所の把握や変更も行いやすく、回収等も行いやすいように、10cm以上のものを用いても良い。
【0049】
多孔質ブロック材は、最も典型的なものとして、セラミック材であり、pH7.0~7.2、開放気孔率80~90%、仮比重0.3~0.5g/cc、比重0.3~0.8g/cm3程度のものなどを用いることができる。
【0050】
[接触・含侵]
微生物液への多孔質ブロック材の接触は、任意の手段でよい。多孔質ブロック材は、多孔質のため、吸水性を有する。このため、例えば、多孔質ブロック材の上部に微生物液を滴下したり、微生物液内に多孔質ブロック材を浸漬させたりすることで接触させる。接触させることで、所定の時間が経過すれば、多孔質ブロック材の吸水性や微生物液の粘性などに応じて、多孔質ブロック材の孔内に微生物液が含侵する。なお、多孔質ブロック材の大きさや、気孔率などにより、吸水可能な量の微生物液を含侵するため、その含侵量に適した量比で接触させる。
【0051】
[固定する工程]
本発明の製造方法は、多孔質ブロック材の孔内でゲル化用材料をゲル化させ固定する工程を有する。固定する工程は、ゲル化用材料の種類に合わせて、適宜選択される。例えば、ゲル化させるための他の成分と接触させたり、加熱等の処理を行ったり、経時変換に伴いゲル化させるために熟成させたりする。
【0052】
例えば、アルギン酸ナトリウムをゲル化用材料として用いる場合、カルシウムイオンを含む水溶液に、含侵後の多孔質ブロック材を接触させることでアルギン酸ナトリウムのナトリウムがカルシウムに置換されて、ゲル化する。ゲル化させることでゲル内に、硝化菌や脱窒菌、アンモニア同化菌などの微生物が固定された状態となる。
【0053】
[乾燥する工程]
固定する工程を行った後の微生物液をゲル化させたものを含む多孔質ブロック材は、そのままで水質浄化材として用いることもできる。また、固定する工程や、使用までの保管期間などに応じて、適宜、乾燥などを行ってもよい。乾燥させる場合は、通気性が良い場所で静置して自然乾燥させたり、温風乾燥や、凍結乾燥させたりすることができる。なお、硝化菌や脱窒菌は、芽胞菌として存在することができるものも用いることができ、これらは休眠状態の芽胞を形成できるため、加熱や乾燥などを行っても増殖性を維持でき保存にも適している。
【0054】
[水質浄化材]
図2は、本発明の水質浄化材の製造例の像である。水質浄化材は、中性の多孔質ブロック材を用いたものである。また、この多孔質ブロック材の内部にゲルを含んでいる。また、硝化菌や脱窒菌が固定されており、水中に配置することで生育環境が整い、硝化・脱窒の作用を奏する。図2(a)は、室内飼育用などに適した大きさとして設計した例であり、ここでは、直径2.5cm、高さ2cmの略円柱状のものを用いた。図2(b)は、陸上養殖用などに適した大きさとして設計した例であり、ここでは直径9cm、高さ4cm程度の放射状の形状で中央に開口部を有するものを用いた。
【0055】
本発明の水質浄化材は、水槽に入れることで、硝化・脱窒の作用を奏することができる。また、水槽内の液の循環ラインに配置してもよい。水質浄化材を水中に配置することで、多孔質ブロック材に固定されていた硝化菌や脱窒菌、アンモニア同化菌、その他の有機物分解菌などが増殖しながら、水中のアンモニア態窒素など水質汚濁物質等の分解や除去に寄与する。
【0056】
図3は、本発明の水質浄化材を、メダカの飼育に利用した例である。図3左側の水槽は、対象試験として本発明の水質浄化材を使用しなかった(ブロックなし)。図3右側の水槽は、本発明の水質浄化材を使用した(ブロックあり)。この飼育例では、水槽は4L、メダカの個体数は4匹として、馴致期間10日を設けて、飼育開始から11日目に右側にのみ水質浄化材を1つ入れた。本発明の水質浄化材は、硝化菌と脱窒菌をアルギン酸ナトリウム水溶液に混合した微生物液を、多孔質ブロックに浸透させて、カルシウム水溶液に浸漬させることでブロック内で微生物を含むアルギン酸のゲル化をさせたものを用いた。ブロックなしの場合、アンモニア態窒素が上昇し続けて、14日程度でメダカは死滅した。一方、本発明にかかるブロックありの場合、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素、硝酸態窒素も低減して、濁度も低く維持できて1か月を超えて2か月以上のような長期間もアンモニア態窒素等の上昇を抑制してメダカを飼育できた。
【0057】
以上のように、本発明の水質浄化材等は、ブロックに固定化することで次のような特徴を有することができる。(1)好気環境と嫌気環境の両方を作り出すことができる。(2)自然発生する雑菌との拮抗や原生動物による捕食から保護できる。(3)ゲル中に最小限の栄養分を添加しておくことで、初発の低栄養状態でもブロックの気孔内で増殖することができる。(4)比重が高くなり、取り扱いが容易になる。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
1.菌液の調整
5mLの液体培地を試験管に入れ、種菌を植菌して24時間培養した。得られた培養液を液体培地20mLが入った200mL爪付きフラスコに植え継いで24時間培養したものを培養液とした。遠心分離機で培養液から菌体を得、培養液と等量の蒸留水に溶解し、微生物を含む菌液とした。
【0060】
2.ゲルの比較試験
ゲルの強度を比較するために、200mL爪付きフラスコに20mLの水を入れ、ゲルボール1gを入れて、3日間100rpmで撹拌し、物理的安定性を評価した。
【0061】
2-1.PVAを用いたゲルの作成
20%PVA(株式会社クラレ ポバールPVA-117,PVA-124)溶液10mLに菌液10mLを混合し、飽和ホウ酸溶液中に滴下して1時間撹拌しゲルボールを作成した。
さらに、二次架橋として硫酸カリウム17.4%(w/v)溶液中に1時間撹拌して強度を高めた。
【0062】
2-2.アクリルアミドを用いたゲルの作成
アクリルアミド0.6g、N,N´-メチレンビス(アクリルアミド)0.04gを分取し、水2.0mLを加えて溶解し、さらに菌液2mLを加えて混合した。β-DMAPN 25μLを含む溶液500μLを加え、ペルオキソ二硫酸カリウム12.5mgを含む溶液500μLを加えて軽く混合した後15分静置した。その後、成形し試験に使用した。
【0063】
2-3.PEGを用いたゲルの作成
アクリルアミド作成法のアクリルアミドをPEG(和光純薬製ポリエチレングリコール20,000)に変更して作成した。
【0064】
2-4.アルギン酸ナトリウムを用いたゲルの作成
2%アルギン酸ナトリウム(キミカ製キミカアルギンI-3、I-3G、IL-6M)と菌液を1対1で混合した後、10%塩化カルシウム溶液に滴下した。
【0065】
【表1】
【0066】
ブロックにゲルを固定化して長期使用する場合、物理的安定性が重要である。試験の結果、ポリビニルアルコールを使用する場合は、ほう酸で架橋したのちに、硫酸で二次架橋する必要があり、また、アルギン酸ナトリウムは、重合度により強度に違いがあるため、重合度を選ぶほうが好ましいことが分かった。
【0067】
[実施例2]ブロックへの菌の固定化
1.試験方法
直径2.5cm・高さ2cmの多孔質ブロック(アクアクリーン製3Dフィルターメディウム)に、2%アルギン酸ナトリウム(キミカ製キミカアルギンI-3G)と菌液を1対1で混合した微生物液の溶液を1mL滴下し、5%塩化カルシウム溶液を1mL滴下した。その後、1時間自然乾燥させた。
【0068】
[実施例3]アンモニア態窒素除去試験
1.試験方法
供試菌株:アンモニア同化菌NBRC13719(製品評価技術基盤機構) Bacillus subtilis
培養液:NB培地で30℃、24時間振とう培養
NB培地組成:ペプトン5g、酵母エキス3g、塩化ナトリウム5g、水1L
試験液:コハク酸二ナトリウム 1.7g、硫酸マグネシウム 0.20g、リン酸二水素カリウム 0.15g、微量金属 2mL、硫酸アンモニウム 0.09g(アンモニア態窒素20ppm相当)、蒸留水 1L(pH7)
【0069】
・微量金属 前述の試験液の微量金属は、以下の組成である。
MnCl24H2O:1.5g/L, EDTA:15g/L, CuSO45H2O:0.5 g/L, ZnSO4:0.2g/L, CoCl26H2O:0.3g/L, FeSO47H2O:0.5g/L, Na2MoO42H2O:0.2g/L, CaCl2:0.1g/L
【0070】
ビーカーにアンモニア態窒素を含む試験液1Lを入れて蓋をして滅菌した後に用いて、マグネティックスターラーで撹拌し、1日毎に分取したサンプルを0.45μmのフィルターでろ過してアンモニア態窒素の分析をした。
【0071】
・対照:菌液の添加をせずに撹拌した。
・ブロックのみ:菌液を添加せずブロックのみを吊り下げた。
・液:菌液を500μL添加して撹拌した。
・固定化ブロック:固定化ブロックを吊り下げて撹拌した。
【0072】
<アンモニア態窒素の定量>
0~2mg/LのNH4 +を含むように調製した溶液0.3mLに蒸留水0.6mLを加え撹拌した。次にフェノール・ニトロプルシッドナトリウム溶液0.15mLと次亜塩素酸溶液0.15mLを加えて撹拌した。25℃で45分静置した後、635nmで吸光度を測定した。
【0073】
・フェノール・ニトロプルシッドナトリウム溶液 フェノール 60g、ニトロプルシドナトリウム 0.2g、緩衝液 1L
・緩衝液 リン酸三ナトリウム 30g、クエン酸三ナトリウム 30g、EDTA・2Na 3g、蒸留水 1L
・次亜塩素酸溶液 次亜塩素酸ナトリウム 1g、水酸化ナトリウム 16g、蒸留水1L
【0074】
【表2】
【0075】
表2は、アンモニア態窒素除去試験の結果を示す表である。菌液を液状で供給した場合と固定化ブロックを適用した場合を比較すると、固定化ブロックの方が効率的にアンモニア態窒素を除去する結果となった。アンモニアの除去は、酸化と同化どちらの反応においても好気条件で促進されるが、本試験では、曝気は行っていないため、ブロック内に固定化された菌がブロックの気孔部分に含まれていた酸素を利用することでアンモニアの除去が促進されたと推測した。
このことにより、酸素の供給が少ない環境でもブロック内に部分的に好気条件を作り出すことができると考えられる。
【0076】
[実施例4]硝酸態窒素除去試験
1.試験方法
供試菌株 脱窒菌NBRC13596(製品評価技術基盤機構) Pseudomonas stutzeri
培養液:LB培地で30℃、24時間振とう培養
LB培地組成:トリプトン 10g、酵母エキス 5g、塩化ナトリウム 10g
試験液:コハク酸二ナトリウム 1.7g、硫酸マグネシウム 0.20g、リン酸二水素カリウム 0.15g、微量金属 2mL、硝酸カリウム 0.14g(硝酸態窒素20ppm相当)、蒸留水 1L(pH7)
【0077】
・微量金属
MnCl24H2O:1.5g/L, EDTA:15g/L, CuSO45H2O:0.5g/L, ZnSO4:0.2g/L, CoCl26H2O:0.3g/L, FeSO47H2O:0.5g/L, Na2MoO42H2O:0.2g/L, CaCl2:0.1g/L
【0078】
サンプル瓶に散気管とマグネティックスターラー、および硝酸態窒素を含む試験液200mLを入れて蓋をして滅菌した後に、曝気と撹拌をした。1日毎に分取したサンプルを0.45μmのフィルターでろ過して硝酸態窒素の減少度を評価した。
【0079】
・対照:菌株の添加をせずに撹拌した。
・液:前培養液を500μL添加して撹拌した。
・固定化ブロック:固定化ブロックを吊り下げて撹拌した。
【0080】
<亜硝酸態窒素の定量>
0~1mg/LのNO2 -を含むように調製した溶液0.35mLに蒸留水を0.55mL加え、0.8%(w/v)スルファニル酸-30%酢酸溶液を0.2mLと0.6%(w/v)ナフチルエチレンジアミン-30%酢酸溶液0.02mLを加えて撹拌した。15℃で10分静置して550nmで吸光度を測定した。
【0081】
<硝酸態窒素の定量>
0~5mg/LのNO3 -を含むように調製した0.66mLの溶液に0.8%(w/v)スルファニル酸-30%酢酸溶液を0.22mL入れて撹拌した。100℃で10分加熱後に15~30℃まで冷却した。パックテスト(硝酸)で転倒撹拌することで着色させ、539nmで吸光度を測定した。
【0082】
<全窒素の定量>
0~2mg/Lの全窒素を含むように調製した溶液10mLを分解瓶に入れ、3%(w/v)ペルオキソ二硫酸カリウム-4%(w/v)水酸化ナトリウム溶液を2mL加え、120℃で30分間加熱し、室温まで冷却させたら、上澄みを0.85mL分取し、塩酸(1+16)を0.17mL加えて220nmで吸光度を測定した。
【0083】
2.試験結果
硝酸態窒素除去試験の結果は図4、表3に示すものとなった。表3は、硝酸態窒素除去試験(4日目)の結果である。図4は、硝酸態窒素除去試験の経日変化を示すグラフである。
【0084】
【表3】
【0085】
液状で植菌したものは、硝酸態窒素の減少が認められなかったが、ブロックを適用したものは、試験4日目に硝酸態窒素値が約60%減少した。また、固定化ブロックを適用したものについては、硝酸が窒素ガスに変換する際の中間体である亜硝酸が生成していることが分かった。液状による植菌の場合は、曝気により硝酸の還元および脱窒が抑制されたのに対して、ブロックを適用したものはブロック内に嫌気条件が作り出されたことにより、硝酸の還元および脱窒が促進されたと推測した。
【0086】
[実施例5]保存安定性試験
2%アルギン酸ナトリウム(キミカ製キミカアルギンI-3G)とNBRC13596の培養液を1対1で混合した。この液を0.5%塩化カルシウム溶液に滴下してゲルボールを作成した。試験管に菌液200μLを入れたものとシャーレにゲルボールを乗せたものを用意し、それぞれ風乾した。
30日後、それぞれについて生存の有無を確認すべく、脱窒活性試験を行った。
【0087】
<脱窒活性試験方法>
試験管にGiltay培地10mLとダーラム管を入れ、オートクレーブ後に急冷することでダーラム管内の空気を抜いた。試験管内に試験液およびゲルボールを入れて30℃で10日間培養した。ガスの発生とBTB濃青色を呈するものを陽性とした。
【0088】
Giltay培地組成:
(1)KNO3 1.0g、アスパラギン 1.0g、1%ブロモチモールブルー・アルコール溶液5mLを蒸留水500mLに溶解する。
(2)クエン酸ナトリウム:8.5g、MgSO4・7H2O:1.0g、FeCl3・6H2O:0.05g、KH2PO4:1.0g、CaCl2・2H2O:0.2g、を蒸留水500mLに溶解する。
(1)、(2)を混合し、pHを調整した(NaOH、HClでpH7.0~7.2)。
【0089】
<試験結果>
培養液をそのまま風乾させたものについては、脱窒活性陰性であったが、ゲルボールは、脱窒活性陽性であり、ゲルボールの方は、風乾後も菌が生存していることが分かった。芽胞を形成しない菌は、乾燥に弱いとされているが、ゲル内に固定化することで保存性が高まることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、アクアリウムや陸上養殖などの水槽内の水質浄化に利用することができ、産業上有用である。
図1
図2
図3
図4