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特開2024-113848筐体装置、制御装置、コンピュータプログラム、および筐体装置内の無線通信装置の検出方法
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  • 特開-筐体装置、制御装置、コンピュータプログラム、および筐体装置内の無線通信装置の検出方法 図1
  • 特開-筐体装置、制御装置、コンピュータプログラム、および筐体装置内の無線通信装置の検出方法 図2
  • 特開-筐体装置、制御装置、コンピュータプログラム、および筐体装置内の無線通信装置の検出方法 図3
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  • 特開-筐体装置、制御装置、コンピュータプログラム、および筐体装置内の無線通信装置の検出方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113848
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】筐体装置、制御装置、コンピュータプログラム、および筐体装置内の無線通信装置の検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240816BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240816BHJP
   H04M 1/72 20210101ALI20240816BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
E05B49/00 K
H04M1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019090
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大屋 佳之
(72)【発明者】
【氏名】竹田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】横内 勇気
【テーマコード(参考)】
2E250
5K048
5K127
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250JJ03
2E250LL01
5K048AA04
5K048BA42
5K048BA52
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB02
5K048EB03
5K048EB12
5K048FB05
5K048FB15
5K048HA01
5K048HA02
5K127AA36
5K127BA03
5K127BB22
5K127BB33
5K127GA14
5K127GD16
5K127GD18
5K127HA08
5K127JA29
(57)【要約】
【課題】可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される筐体装置の利便性を高める。
【解決手段】筐体61は、可動部41が操作されることにより施解錠装置を遠隔制御する電子キー4が格納される空間を区画している。アクチュエータ62は、変位により可動部41を操作可能である。通信装置63は、施解錠信号を受信する。制御装置64は、施解錠信号に基づいてアクチュエータ62を変位させる。制御装置64は、アクチュエータ62の変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に電子キー4が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
変位により前記可動部を操作可能であるアクチュエータと、
トリガ信号を受信する通信装置と、
前記トリガ信号に基づいて前記アクチュエータを変位させる制御装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる、
筐体装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記単位時間あたりの変化量が前記第一閾値を上回り、かつ前記トリガ信号の受信から所定の時間の経過後に前記物理量の変化量が第二閾値を上回る場合、前記報知を行なわせる、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記トリガ信号は、ユーザにより携帯可能なモバイル装置から受信される、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記報知装置は、ユーザにより携帯可能なモバイル装置である、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項5】
開閉体により開閉される空間に配置されるように構成されており、
前記被制御装置は、前記開閉体の施解錠を行なう施解錠装置を含んでいる、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項6】
前記開閉体は、移動体の一部である、
請求項5に記載の筐体装置。
【請求項7】
可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に搭載される制御装置であって、
トリガ信号を受け付けるインタフェースと、
前記トリガ信号に基づいて前記可動部を操作可能なアクチュエータを変位させるプロセッサと、
を備えており、
前記プロセッサは、前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる、
制御装置。
【請求項8】
可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に搭載されるプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記筐体装置は、
トリガ信号を受信し、
前記トリガ信号に基づいて前記可動部を操作可能なアクチュエータを変位させ、
前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる、
コンピュータプログラム。
【請求項9】
筐体装置が備える筐体により区画される空間に可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納されているかを検出する方法であって、
前記筐体装置にトリガ信号を受信させ、
前記トリガ信号に基づいて前記可動部を操作可能なアクチュエータを変位させ、
前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる、
筐体装置内の無線通信装置の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に関連する。本開示は、当該筐体装置に搭載される制御装置にも関連する。本開示は、当該筐体装置に搭載されるプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。本開示は、当該空間に当該無線通信装置が格納されているかを検出する方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車室内に配置される筐体装置を開示している。筐体装置は、無線通信装置の一例としての電子キーが格納される空間を区画している筐体を備えている。筐体装置は、電子キーの可動部を操作可能なアクチュエータを備えている。電子キーは、可動部が操作されることにより、被制御装置の一例としての施解錠装置を遠隔制御する。筐体装置は、通信装置と制御装置を備えている。ユーザによる携帯が可能であるモバイル装置から通信装置が施解錠信号を受信すると、制御装置は、アクチュエータを変位させて電子キーの可動部を操作する。これにより、車室内に電子キーを残した状態で、例えば車室外からモバイル装置を通じて施解錠装置の動作を遠隔制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3418985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような筐体装置の利便性を高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される態様例の一つは、筐体装置であって、
可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
変位により前記可動部を操作可能であるアクチュエータと、
トリガ信号を受信する通信装置と、
前記トリガ信号に基づいて前記アクチュエータを変位させる制御装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる。
【0006】
本開示により提供される態様例の一つは、可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に搭載される制御装置であって、
トリガ信号を受け付けるインタフェースと、
前記トリガ信号に基づいて前記可動部を操作可能なアクチュエータを変位させるプロセッサと、
を備えており、
前記プロセッサは、前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる。
【0007】
本開示により提供される態様例の一つは、可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に搭載されるプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記筐体装置は、
トリガ信号を受信し、
前記トリガ信号に基づいて前記可動部を操作可能なアクチュエータを変位させ、
前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる。
【0008】
本開示により提供される態様例の一つは、筐体装置が備える筐体により区画される空間に可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納されているかを検出する方法であって、
前記筐体装置にトリガ信号を受信させ、
前記トリガ信号に基づいて前記可動部を操作可能なアクチュエータを変位させ、
前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる。
【0009】
例えば、本来は無線通信装置を筐体装置に格納しておかねばならないところ、無線通信装置を携帯したまま筐体装置を離れてしまったユーザが被制御装置の遠隔制御を指示した場合、筐体装置に無線通信装置が格納されていない事実が報知装置を通じて当該ユーザに報知されうる。
【0010】
すなわち、上記の各態様例に係る構成によれば、無線通信装置が筐体装置に格納されている状態での運用が想定されている遠隔制御システムにおいて、無線通信装置が筐体装置に格納されていないことにより生じる不具合の発生を抑制できる。無線通信装置が筐体装置に格納されているか否かはアクチュエータの変位に伴って変化する物理量に基づいて判断され、アクチュエータの動作自体に特別な変更はない。すなわち、当該抑制効果を得るために、アクチュエータなどのハードウェア構成に物理的・機械的な変更を施す必要がない。したがって、可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される筐体装置の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る遠隔制御システムの構成を例示している。
図2図1の筐体装置の構成を例示している。
図3図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図4図2のアクチュエータの変位に伴う駆動電圧レベルの経時変化を例示している。
図5図2の筐体装置の動作の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照しつつ、実施形態例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いられる各図面においては、例示された各要素を認識可能な大きさとするために、縮尺が適宜に変更されている。
【0013】
図1は、一実施形態に係る遠隔制御システム1の構成を例示している。遠隔制御システム1は、制御装置2を含んでいる。制御装置2は、車両3に搭載されている。制御装置2は、車両3に搭載された施解錠装置31の動作を制御するように構成されている。施解錠装置31は、車両3の車室32を開閉するドア33を施解錠する装置である。ドア33は、開閉体の一例である。車室32は、開閉体により開閉される空間の一例である。施解錠装置31は、被制御装置の一例である。車両3は、移動体の一例である。
【0014】
遠隔制御システム1は、電子キー4を含んでいる。電子キー4は、ユーザ5により携帯が可能な装置である。電子キー4は、第一無線通信に基づいて制御装置2に施解錠装置31の動作制御を行なわせることが可能な無線通信装置である。第一無線通信は、第一周波数帯を用いる第一信号S1と第二周波数帯を用いる第二信号S2の送受信を含んでいる。第一周波数帯と第二周波数帯は相違している。第一周波数帯の例としては、長波(LF)帯が挙げられる。第二周波数帯の例としては、極超短波(UHF)帯が挙げられる。換言すると、電子キー4は、施解錠装置31の制御に必要な情報を出力する。
【0015】
具体的には、制御装置2は、車両3における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第一信号S1を送信する。第一信号S1の送信は、連続的になされてもよいし、断続的になされてもよい。電子キー4は、第一信号S1の受信と第二信号S2の送信が可能なアンテナを含む通信装置を備えている。電子キー4は、第一信号S1を受信すると第二信号S2を送信するように構成されている。第二信号S2は、電子キー4の認証に必要な認証情報を含むように構成されている。認証情報は、電子キー4とユーザ5の少なくとも一方を特定可能な情報である。
【0016】
制御装置2は、車両3における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第二信号S2を受信すると、認証処理を実行するように構成されている。具体的には、制御装置2は、第二信号S2に含まれる認証情報を、不図示の記憶装置に予め格納されている電子キー4の認証情報と照合するように構成されている。両情報の一致度が閾値を上回る場合、制御装置2は、電子キー4の認証が成立したと判断する。
【0017】
制御装置2は、電子キー4の認証が成立したと判断されると、施解錠装置31による施解錠動作を許可する許可信号ENを出力するように構成されている。例えば、施解錠装置31は、許可信号ENを受け付けた状態でユーザ5がドアハンドルに設けられたタッチセンサに触れると、ドア33の施解錠を行なうように構成されうる。
【0018】
すなわち、電子キー4を携帯したユーザ5が第一信号S1を受信可能な領域に進入すると、第一無線通信を通じて電子キー4の認証がなされる。認証が成立すると、ユーザ5は、キーをキーシリンダに挿入して回すといった動作を行なうことなく、ドア33を施解錠できる。
【0019】
遠隔制御システム1は、筐体装置6を含んでいる。筐体装置6は、車両3の車室32内に設置されるように構成されている。筐体装置6は、電子キー4を格納できるように構成されている。すなわち、電子キー4は、車室32内に配置されうる。
【0020】
図2に例示されるように、筐体装置6は、筐体61を備えている。筐体61は、少なくとも第二信号S2が透過可能な材料により形成されている。筐体61は、電子キー4が格納される空間を区画している。
【0021】
筐体装置6は、アクチュエータ62を備えている。アクチュエータ62は、変位により筐体61に格納された電子キー4の可動部41を操作可能に構成されている。電子キー4は、可動部41に対して所定の操作がなされると、第一信号S1の受信状態に依らず第二信号S2を送信するように構成されている。可動部41は、ボタンやレバーなどにより実現されうる。アクチュエータ62は、ソレノイド、カム機構、ラックピニオン機構などにより実現されうる。電子キー4に第二信号S2を送信させるための可動部41の操作の例としては、少なくとも一回の押下操作などが挙げられる。
【0022】
筐体装置6は、通信装置63を備えている。通信装置63は、モバイル装置7と第二無線通信を行なうためのアンテナを備えている。図1に例示されるように、モバイル装置7は、ユーザ5による携帯が可能な装置である。モバイル装置7の例としては、スマートフォンなどの汎用携帯情報端末が挙げられる。本例においては、第二無線通信は、短距離無線通信である。
【0023】
本明細書において用いられる「短距離無線通信」という語は、標準規格であるIEEE802.15またはIEEE802.11に準拠して行なわれる無線通信を意味する。そのような無線通信を実行可能な技術としては、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などが挙げられる。本明細書における「短距離無線通信」は、読取装置から送信される電波から微小な電力を得てモバイル装置が情報の送信を行なう非接触通信技術を用いる「近接無線通信」とは区別される。近接無線通信を実行可能な技術としては、RF-IDやNFCなどが挙げられる。
【0024】
筐体装置6に電子キー4が格納された状態で車両3のドア33の施解錠を希望するユーザ5は、モバイル装置7に対して所定の操作を行なう。図1に例示されるように、モバイル装置7は、当該所定の操作に基づいて施解錠信号LKを送信するように構成されている。筐体装置6の通信装置63は、施解錠信号LKを受信可能に構成されている。施解錠信号LKは、トリガ信号の一例である。
【0025】
図2に例示されるように、筐体装置6は、制御装置64を備えている。制御装置64は、アクチュエータ62の変位動作を制御するように構成されている。
【0026】
制御装置64は、入力インタフェース641を備えている。図3に例示されるように、入力インタフェース641は、通信装置63から施解錠信号LKを受け付けるハードウェアインタフェースとして構成されている。なお、施解錠信号LKに代えて、通信装置63が施解錠信号LKを受信したことを示す受信信号が入力インタフェース641に受け付けられてもよい。
【0027】
施解錠信号LKは、通信装置63の仕様に応じてアナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。施解錠信号LKがアナログ信号である場合、入力インタフェース641は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、入力インタフェース641が受け付け可能な他の信号についても同様に適用される。
【0028】
制御装置64は、プロセッサ642と出力インタフェース643を備えている。プロセッサ642は、入力インタフェース641により施解錠信号LKが受け付けられると、電子キー4に第二信号S2を送信させるための可動部41の操作をアクチュエータ62に行なわせる動作制御信号OCを、出力インタフェース643から出力するように構成されている。
【0029】
出力インタフェース643は、動作制御信号OCを出力可能なハードウェアインタフェースとして構成されている。動作制御信号OCは、アクチュエータ62の仕様に応じて、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。動作制御信号OCがアナログ信号である場合、出力インタフェース643は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、出力インタフェース643が出力可能な他の信号についても同様に適用される。
【0030】
図2に例示されるように、本例に係るアクチュエータ62は、初期状態において電子キー4の可動部41と間隙を挟んで対向している。制御装置64から動作制御信号OCが入力されると、図3に例示されるように、アクチュエータ62は、可動部41に対して所定の操作を行なうように変位する。すなわち、通信装置63が施解錠信号LKを受信すると、電子キー4からは第二信号S2が送信される。
【0031】
電子キー4から送信された第二信号S2は、車両3に搭載された制御装置2により受信される。前述の通り、制御装置2は、第二信号S2を受信すると、電子キー4の認証処理を行なうとともに、施解錠装置31によるドア33の施解錠を許可する許可信号ENを出力する。
【0032】
よって、車室32内に設置された筐体装置6に電子キー4が格納された状態でユーザ5がモバイル装置7から施解錠信号LKを送信すると、ドア33を施解錠できる。換言すると、ユーザ5は、電子キー4を携帯せずとも、車室32の外からモバイル装置7に対する所定の操作を通じてドア33を施解錠できる。
【0033】
制御装置64は、アクチュエータ62を駆動するために不図示の電源から供給される電圧のレベルをモニタするように構成されている。電圧は、アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の一例である。具体的には、駆動電圧レベルに対応する検出信号DTが入力インタフェース641により受け付けられる。
【0034】
図4は、アクチュエータ62の変位に伴う駆動電圧レベルの経時変化を例示している。時点t1において動作制御信号OCが入力されると、アクチュエータ62の変位を開始させるために駆動電圧レベルが第一の値V1まで上昇する。アクチュエータ62が電子キー4の可動部41に接触するまでは、第一の値V1が維持される。
【0035】
時点t2においてアクチュエータ62が可動部41に接触すると、変位に対する抵抗が生じる。アクチュエータ62は当該抵抗に抗いつつ可動部41を操作するので、駆動電圧レベルは徐々に上昇する。
【0036】
時点t3において可動部41が可動限界位置に達すると、アクチュエータ62のさらなる変位が不能とされる。これにより、アクチュエータ62の変位に対する抵抗が最大となり、駆動電圧レベルが第二の値V2に達する。
【0037】
時点t4において可動部41に対する操作が解除されると、アクチュエータ62は初期状態へ復帰するための変位を行なう。アクチュエータ62に対する抵抗が減少するので、駆動電圧レベルは第二の値V2から第一の値V1まで減少する。
【0038】
図5は、電子キー4が筐体装置6に格納されていないにも関わらずアクチュエータ62に動作制御信号OCが入力された状態を例示している。アクチュエータ62は、可動部41を操作することなく変位限界位置に到達する。変位限界位置は、例えば適宜に設けられたストッパにより規定されうる。
【0039】
図5に例示される状態におけるアクチュエータ62の駆動電圧の経時変化は、図4において一点鎖線で例示されている。時点t2におけるアクチュエータ62の位置に可動部41が存在しないので、アクチュエータ62の変位に対する抵抗は生じず、駆動電圧レベルは第一の値V1を維持する。抵抗の不在により、アクチュエータ62は、可動部41が存在する場合よりも早く変位限界位置に到達する。
【0040】
時点t5においてアクチュエータ62が変位限界位置に到達すると、アクチュエータ62のさらなる変位が不能とされる。したがって、アクチュエータ62の変位に対する抵抗が最大となり、駆動電圧レベルが第二の値V2に達する。
【0041】
可動部41による緩衝を受けつつアクチュエータ62が変位するので、電子キー4が筐体装置6内に格納されている場合におけるアクチュエータ62の駆動電圧レベルの上昇は、電子キー4が筐体装置6内に格納されていない場合よりも緩やかである。換言すると、電子キー4が筐体装置6内に格納されていない場合におけるアクチュエータ62の駆動電圧の単位時間あたりの変化量は、電子キー4が筐体装置6内に格納されている場合における当該変化量よりも大きい。
【0042】
制御装置64のプロセッサ642は、施解錠信号LKに基づくアクチュエータ62の変位に伴う駆動電圧レベルの単位時間あたりの変化量が閾値を上回る場合、筐体装置6に電子キー4が格納されていないと判断するように構成されている。
【0043】
加えて、プロセッサ642は、筐体装置6に電子キー4が格納されていないと判断された場合、報知制御信号NCを出力インタフェース643から出力するように構成されている。報知制御信号NCは、通信装置63からモバイル装置7へ送信される。報知制御信号NCは、筐体装置6に電子キー4が格納されていないことを示す報知をモバイル装置7に行なわせるように構成されている。
【0044】
すなわち、プロセッサ642は、施解錠信号LKに基づくアクチュエータ62の変位に伴う駆動電圧レベルの単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、筐体装置6に電子キー4が格納されていないことを示す報知をモバイル装置7に行なわせる。報知は、視覚的報知、聴覚的報知、および触覚的報知の少なくとも一つを通じてなされうる。モバイル装置7は、報知装置の一例である。
【0045】
例えば、本来は電子キー4を筐体装置6に格納しておかねばならないところ、電子キー4を携帯したまま降車してしまったユーザ5がモバイル装置7でドア33の施錠を指示した場合、筐体装置6に電子キー4が格納されていない事実がモバイル装置7を通じてユーザ5に報知されうる。
【0046】
すなわち、本実施形態例に係る構成によれば、電子キー4が筐体装置6に格納されている状態での運用が想定されている遠隔制御システム1において、電子キー4が筐体装置6に格納されていないことにより生じる不具合の発生を抑制できる。電子キー4が筐体装置6に格納されているか否かはアクチュエータ62の変位に伴って変化する駆動電圧レベルに基づいて判断され、アクチュエータ62の動作自体に特別な変更はない。すなわち、当該抑制効果を得るために、アクチュエータ62などのハードウェア構成に物理的・機械的な変更を施す必要がない。したがって、可動部41が操作されることにより施解錠装置31を遠隔制御する電子キー4が格納される筐体装置6の利便性を高めることができる。
【0047】
制御装置64のプロセッサ642は、アクチュエータ62の駆動電圧レベルの単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回り、かつ施解錠信号LKの受信から所定の時間の経過後に駆動電圧レベルの変化量が第二閾値を上回る場合に、電子キー4が筐体装置6に格納されていないことをモバイル装置7に報知させるように構成されうる。第二閾値は、図4に例示される駆動電圧レベルの電位差Vdに対応する値とされうる。
【0048】
このような構成によれば、電気的ノイズなどに起因してアクチュエータ62の駆動電圧レベルが予期せず短時間に大きな変化を呈した場合に、当該変化に基づいて筐体装置6内における電子キー4の不在が報知される事態の発生を抑制できる。
【0049】
これまで説明した様々な機能を有する制御装置64のプロセッサ642は、当該機能を実現するためのコンピュータプログラムがプリインストールされた記憶素子を備えたマイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの専用集積回路によって実現されうる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。
【0050】
プロセッサ642は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されてもよい。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、当該機能を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されうる。当該汎用メモリは、コンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。プロセッサ642は、専用集積回路と汎用マイクロプロセッサの組合せによって実現されてもよい。
【0051】
これまでに参照した各構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。上記各構成例は、本開示の趣旨の範囲内において、適宜の変更や他の構成例との組合せがなされうる。
【0052】
上記の実施形態例においては、アクチュエータ62の駆動電圧レベルに基づいて筐体装置6内における電子キー4の不在が検出されている。しかしながら、アクチュエータ62の変位に伴って変化するのであれば、適宜の物理量がプロセッサ642によるモニタの対象とされうる。例えば、アクチュエータ62の駆動電圧レベルに代えて、駆動電流レベルがモニタされてもよい。あるいは、アクチュエータ62の変位が磁気的または光学的に検出されるのであれば、アクチュエータ62の変位に基づいて変化しうる磁気的パラメータまたは光学的パラメータがモニタされてもよい。
【0053】
上記の実施形態例においては、アクチュエータ62自身の変位限界位置に到達したことによる駆動電圧レベルの変化に基づいて、筐体装置6内における電子キー4の不在が検出されている。しかしながら、筐体61内の底壁など不動の構造体にアクチュエータ62が接触することによる駆動電圧レベルの変化に基づいて、筐体装置6内における電子キー4の不在が検出されてもよい。そのような不動の構造体にアクチュエータ62が接触することによる駆動電圧レベルの単位時間あたりの変化量は、電子キー4の可動部41をアクチュエータ62が操作するときの駆動電圧レベルの単位時間あたりの変化量よりも大きい。
【0054】
電子キー4が備える可動部は、複数であってもよい。例えば、操作されることにより施解錠装置31に施錠を行なわせる第二信号S2を出力する可動部と、操作されることにより施解錠装置31に解錠を行なわせる第二信号S2を出力する可動部とが設けられうる。この場合、筐体装置6は、各可動部を操作するために複数のアクチュエータ62を備える。電子キー4の不在は、いずれかのアクチュエータ62の変位がなされる際に行なわれうる。
【0055】
上記の実施形態例においては、アクチュエータ62を変位させることによる電子キー4の不在の検出は、ユーザ5に携帯されるモバイル装置7から送信された施解錠信号LKに基づいて行なわれている。しかしながら、他の信号をトリガとして電子キー4の不在の検出が行なわれてもよい。
【0056】
一例として、車室32内に設置された装置にユーザ5が適宜の操作を入力することにより、筐体装置6の通信装置63により受信可能な確認信号が当該装置から送信されうる。制御装置64は、通信装置63により確認信号が受信されると、施解錠信号LKの場合と同様にしてアクチュエータ62を変位させ、電子キー4の不在を確認しうる。この場合、確認信号は、トリガ信号の一例である。このような構成によれば、車室32内においても任意のタイミングで筐体装置6内に電子キー4が格納されているかを確認できる。
【0057】
別例として、遠隔制御システム1は、筐体装置6と無線通信ネットワークを介して通信可能な管理装置を含みうる。例えば当該管理装置に電子キー4を管理するユーザが適宜の操作を入力することにより、筐体装置6の通信装置63により受信可能な確認信号が当該装置から送信されうる。制御装置64は、通信装置63により確認信号が受信されると、施解錠信号LKの場合と同様にしてアクチュエータ62を変位させ、電子キー4の不在を確認しうる。この場合、確認信号は、トリガ信号の一例である。このような構成によれば、車両3の外部から任意のタイミングで筐体装置6内に電子キー4が格納されているかを確認できる。
【0058】
上記の実施形態例においては、ユーザ5に携帯されるモバイル装置7を通じて筐体装置6内に電子キー4が不在であることが報知されている。しかしながら、筐体装置6の通信装置63から報知制御信号NCを受信可能であれば、他の装置を通じて報知がなされてもよい。他の装置の例としては、車両3に搭載された報知機能を有する装置、筐体装置6と無線通信ネットワークを介して通信可能な報知機能を有する装置が挙げられる。
【0059】
上記の実施形態例においては、モバイル装置7から送信される施解錠信号LKに基づいて筐体装置6に格納された電子キー4が遠隔操作され、施解錠装置31による車両3のドア33の施解錠が行なわれる。これにより、ドア33により開閉される車室32のセキュリティ性を高めることができる。また、盗難の対象にされやすい移動体である車両3のセキュリティ性も高めることができる。
【0060】
しかしながら、制御装置2と施解錠装置31が搭載される移動体は、車両3に限られない。その他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。当該移動体は、運転者を必要としなくてもよい。
【0061】
また、施解錠装置により施解錠される開閉体は、車両3のドア33に限られない。住宅や施設における扉や窓もまた開閉体の一例になりうる。この場合、開閉体により開閉される空間のセキュリティ性を高めることができる。
【0062】
モバイル装置7からの遠隔操作を通じて電子キー4により動作制御がなされる被制御装置は、車両3に搭載された施解錠装置31に限られない。車両3のイグニッション電源や盗難防止装置、車両3または上記の住宅や施設における警備装置、照明装置、空調機器、映像音響機器などの動作が適宜に制御されうる。これらの各被制御装置を動作させるためにモバイル装置7から送信される信号は、トリガ信号の一例になりうる。
【0063】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
可動部が操作されることにより被制御装置を遠隔制御する無線通信装置が格納される空間を区画している筐体と、
変位により前記可動部を操作可能であるアクチュエータと、
トリガ信号を受信する通信装置と、
前記トリガ信号に基づいて前記アクチュエータを変位させる制御装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記アクチュエータの変位に伴い変化する物理量の単位時間あたりの変化量が第一閾値を上回る場合、前記空間に前記無線通信装置が格納されていないことを示す報知を報知装置に行なわせる、
筐体装置。

項目2:
前記制御装置は、前記単位時間あたりの変化量が前記第一閾値を上回り、かつ前記トリガ信号の受信から所定の時間の経過後に前記物理量の変化量が第二閾値を上回る場合、前記報知を行なわせる、
項目1に記載の筐体装置。

項目3:
前記トリガ信号は、ユーザにより携帯可能なモバイル装置から受信される、
項目1または2に記載の筐体装置。

項目4:
前記報知装置は、ユーザにより携帯可能なモバイル装置である、
項目1から3のいずれか一項に記載の筐体装置。

項目5:
開閉体により開閉される空間に配置されるように構成されており、
前記被制御装置は、前記開閉体の施解錠を行なう施解錠装置を含んでいる、
項目1から4のいずれか一項に記載の筐体装置。

項目6:
前記開閉体は、移動体の一部である、
項目5に記載の筐体装置。
【符号の説明】
【0064】
3:車両、31:施解錠装置、32:車室、33:ドア、4:電子キー、41:可動部、5:ユーザ、6:筐体装置、61:筐体、62:アクチュエータ、63:通信装置、64:制御装置、641:入力インタフェース、642:プロセッサ、7:モバイル装置、LK:施解錠信号
図1
図2
図3
図4
図5