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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011385
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】汚泥の脱水方法および脱水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/125 20190101AFI20240118BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20240118BHJP
【FI】
C02F11/125 ZAB
C02F11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113328
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 晃人
(72)【発明者】
【氏名】島本 仙
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真祐子
(72)【発明者】
【氏名】大津 秋人
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA23
4D059BE04
4D059BE26
4D059BE54
4D059BE55
4D059BE57
4D059BE58
4D059BE59
4D059BE60
4D059CB06
4D059CB07
4D059DA23
4D059DB11
4D059EA02
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】汚泥の処理量が変化したときに、汚泥を適切に処理して含水率の低い脱水ケーキを生成することができる汚泥の脱水方法を提供する。
【解決手段】汚泥の脱水方法は、凝集剤を第1注入率で汚泥に注入し、第1注入率で注入された凝集剤と汚泥とを第1撹拌装置11内で第1撹拌速度で撹拌し、第1撹拌装置11から排出された汚泥に凝集剤を第2注入率で注入し、第2注入率で注入された凝集剤と汚泥とを第2撹拌装置21内で第2撹拌速度で撹拌して凝集フロックを形成し、凝集フロックをスクリュープレス脱水機41により脱水することを含み、第1注入率および第1撹拌速度のそれぞれは、0を含む範囲内から選択され、汚泥の処理量が変化したときに、第1撹拌速度、第2撹拌速度、第1注入率、および第2注入率を変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤を第1注入率で汚泥に注入し、
前記第1注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第1撹拌装置内で第1撹拌速度で撹拌し、
前記第1撹拌装置から排出された前記汚泥に凝集剤を第2注入率で注入し、
前記第2注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第2撹拌装置内で第2撹拌速度で撹拌して凝集フロックを形成し、
前記凝集フロックをスクリュープレス脱水機により脱水することを含み、
前記第1注入率および前記第1撹拌速度のそれぞれは、0を含む範囲内から選択され、
前記汚泥の処理量が変化したときに、前記第1撹拌速度、前記第2撹拌速度、前記第1注入率、および前記第2注入率を変化させる、汚泥の脱水方法。
【請求項2】
前記汚泥の処理量が増加したときに、前記第1撹拌速度および前記第2撹拌速度を増加させ、前記第1注入率を増加させ、前記第2注入率を低下させる、請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
【請求項3】
前記スクリュープレス脱水機は、同軸上に配列された第1スクリューおよび第2スクリューを有する同軸差動スクリュープレス脱水機であり、
前記汚泥の処理量が増加したときに、前記第1スクリューの回転速度および前記第2スクリューの回転速度を増加させる、請求項1に記載の汚泥の脱水方法。
【請求項4】
凝集剤を第1注入率で汚泥に注入する第1注入装置と、
前記第1注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第1撹拌速度で撹拌する第1撹拌装置と、
前記第1撹拌装置から排出された前記汚泥に凝集剤を第2注入率で注入する第2注入装置と、
前記第2注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第2撹拌速度で撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌装置と、
前記凝集フロックを脱水するスクリュープレス脱水機と、
前記第1注入装置、前記第1撹拌装置、前記第2注入装置、および前記第2撹拌装置の動作を制御する動作制御部を備え、
前記第1注入率および前記第1撹拌速度のそれぞれは、0を含む範囲内から選択され、
前記動作制御部は、前記汚泥の処理量が変化したときに、前記第1撹拌装置および前記第2撹拌装置に指令を与えて前記第1撹拌速度および前記第2撹拌速度を変化させ、かつ前記第1注入装置および前記第2注入装置に指令を与えて前記第1注入率および前記第2注入率を変化させるように構成されている、汚泥の脱水装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記汚泥の処理量が増加したときに、前記第1撹拌装置および前記第2撹拌装置に指令を与えて前記第1撹拌速度および前記第2撹拌速度を増加させ、前記第1注入装置に指令を与えて前記第1注入率を増加させ、前記第2注入装置に指令を与えて前記第2注入率を低下させるように構成されている、請求項4に記載の汚泥の脱水装置。
【請求項6】
前記スクリュープレス脱水機は、同軸上に配列された第1スクリューおよび第2スクリューを有する同軸差動スクリュープレス脱水機であり、
前記動作制御部は、前記汚泥の処理量が増加したときに、前記スクリュープレス脱水機に指令を与えて、前記第1スクリューの回転速度および前記第2スクリューの回転速度を増加させるように構成されている、請求項4に記載の汚泥の脱水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の脱水方法および脱水装置に関し、特に、上水処理場、下水処理場、し尿処理場などの液体処理施設から排出される汚泥を脱水する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物量を削減し、環境負荷を低減することが求められる中、上水処理場、下水処理場、し尿処理場などの液体処理施設から排出される汚泥を減容化・減量化するための脱水処理技術は極めて重要であり、より効率的な汚泥の脱水処理技術が望まれている。一般的に、汚泥の脱水処理は、凝集剤を用いて汚泥を凝集させる凝集工程と、脱水装置を用いて凝集汚泥を脱水する脱水工程とから構成される。
【0003】
凝集剤を利用して汚泥を凝集させる凝集工程は、撹拌速度が異なる2段の撹拌槽によって実行される(例えば、特許文献1参照)。また、脱水工程は、汚泥を圧搾して、脱水ケーキを生成するスクリュープレス脱水機によって実行される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/108312号
【特許文献2】特開2018-51582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理すべき汚泥の量(以下、汚泥の処理量という)は常に一定ではなく、変化することがある。特に、汚泥の処理量が増加すると、以下のような問題が生じる。
・特許文献1に示すような、2つの撹拌槽のうちの後段の低速撹拌槽は、処理量が2倍等大幅に増加したときに汚泥を適切に凝集させることは困難であり、撹拌不足のため凝集の不十分なフロックが生成され、脱水ケーキの含水率の上昇やSS(Suspended Solids)回収率の低下を招く。
・汚泥の処理量が増加した際には、スクリュープレス脱水機のスクリュー回転速度の増加が必要となる。しかし、汚泥の処理量の増加によりろ過時間の低下が生じるため、より強い背圧をろ過筒内の汚泥に加える必要が生じる。一方、強い背圧を汚泥に加えた場合には汚泥の処理量の抑制が生じてしまうため、脱水ケーキの含水率を維持したまま汚泥の処理量を増大させることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、汚泥の処理量が変化したときに、汚泥を適切に処理して含水率の低い脱水ケーキを生成することができる汚泥の脱水方法および脱水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、凝集剤を第1注入率で汚泥に注入し、前記第1注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第1撹拌装置内で第1撹拌速度で撹拌し、前記第1撹拌装置から排出された前記汚泥に凝集剤を第2注入率で注入し、前記第2注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第2撹拌装置内で第2撹拌速度で撹拌して凝集フロックを形成し、前記凝集フロックをスクリュープレス脱水機により脱水することを含み、前記第1注入率および前記第1撹拌速度のそれぞれは、0を含む範囲内から選択され、前記汚泥の処理量が変化したときに、前記第1撹拌速度、前記第2撹拌速度、前記第1注入率、および前記第2注入率を変化させる、汚泥の脱水方法が提供される。
【0008】
一態様では、前記汚泥の処理量が増加したときに、前記第1撹拌速度および前記第2撹拌速度を増加させ、前記第1注入率を増加させ、前記第2注入率を低下させる。
一態様では、前記スクリュープレス脱水機は、同軸上に配列された第1スクリューおよび第2スクリューを有する同軸差動スクリュープレス脱水機であり、前記汚泥の処理量が増加したときに、前記第1スクリューの回転速度および前記第2スクリューの回転速度を増加させる。
【0009】
一態様では、凝集剤を第1注入率で汚泥に注入する第1注入装置と、前記第1注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第1撹拌速度で撹拌する第1撹拌装置と、前記第1撹拌装置から排出された前記汚泥に凝集剤を第2注入率で注入する第2注入装置と、前記第2注入率で注入された前記凝集剤と前記汚泥とを第2撹拌速度で撹拌して凝集フロックを形成する第2撹拌装置と、前記凝集フロックを脱水するスクリュープレス脱水機と、前記第1注入装置、前記第1撹拌装置、前記第2注入装置、および前記第2撹拌装置の動作を制御する動作制御部を備え、前記第1注入率および前記第1撹拌速度のそれぞれは、0を含む範囲内から選択され、前記動作制御部は、前記汚泥の処理量が変化したときに、前記第1撹拌装置および前記第2撹拌装置に指令を与えて前記第1撹拌速度および前記第2撹拌速度を変化させ、かつ前記第1注入装置および前記第2注入装置に指令を与えて前記第1注入率および前記第2注入率を変化させるように構成されている、汚泥の脱水装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記動作制御部は、前記汚泥の処理量が増加したときに、前記第1撹拌装置および前記第2撹拌装置に指令を与えて前記第1撹拌速度および前記第2撹拌速度を増加させ、前記第1注入装置に指令を与えて前記第1注入率を増加させ、前記第2注入装置に指令を与えて前記第2注入率を低下させるように構成されている。
一態様では、前記スクリュープレス脱水機は、同軸上に配列された第1スクリューおよび第2スクリューを有する同軸差動スクリュープレス脱水機であり、前記動作制御部は、前記汚泥の処理量が増加したときに、前記スクリュープレス脱水機に指令を与えて、前記第1スクリューの回転速度および前記第2スクリューの回転速度を増加させるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、汚泥の処理に使用される凝集剤の全体の量はほとんど変化せずに、脱水装置はより多くの処理量の汚泥を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】汚泥の脱水装置の一実施形態を示す概略図である。
図2】スクリュープレス脱水機の一実施形態を示す断面図である。
図3図1に示す脱水装置を用いて実施した汚泥の脱水方法の一例の試験結果を示すグラフである。
図4図1に示す脱水装置を用いて実施した汚泥の脱水方法の他の例の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、汚泥の脱水装置の一実施形態を示す概略図である。図1に示す脱水装置は、第1撹拌装置11、第2撹拌装置21、濃縮装置31、およびスクリュープレス脱水機41を備えている。処理すべき汚泥は、供給ライン2を介して第1撹拌装置11に供給される。第2撹拌装置21は第1撹拌装置11に供給ライン3を介して接続されており、濃縮装置31は第2撹拌装置21に供給ライン4を介して接続されており、スクリュープレス脱水機41は濃縮装置31に供給ライン5を介して接続されている。第1撹拌装置11は凝集剤貯留槽46に第1凝集剤注入ポンプ44を経由して接続され、第2撹拌装置21は凝集剤貯留槽46に第2凝集剤注入ポンプ45を経由して接続されている。
【0014】
脱水装置は、その動作を制御する動作制御部10をさらに備えている。動作制御部10は、第1撹拌装置11、第2撹拌装置21、濃縮装置31、スクリュープレス脱水機41、第1凝集剤注入ポンプ44、および第2凝集剤注入ポンプ45に電気的に接続されており、これらの動作を制御するように構成されている。第1凝集剤注入ポンプ44および第2凝集剤注入ポンプ45は、凝集剤を汚泥に注入する注入装置の具体例である。
【0015】
動作制御部10は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。例えば、動作制御部10は、エッジサーバおよびクラウドサーバの組み合わせであってもよい。動作制御部10は、プログラムが格納された記憶装置10aと、これらプログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置10bを備えている。記憶装置10aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置10bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部10の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0016】
第1撹拌装置11は、撹拌槽12と、駆動機13と、駆動機13により回転される回転軸14と、回転軸14に連結され、撹拌槽12内に配置された撹拌翼15とを備えている。動作制御部10は、第1撹拌装置11に指令を与えて、撹拌翼15を設定された撹拌速度で回転させるように構成される。
【0017】
第2撹拌装置21は、撹拌槽22と、駆動機23と、駆動機23により回転される回転軸24と、回転軸24に連結され、撹拌槽22内に配置された撹拌翼25とを備えている。動作制御部10は、第2撹拌装置21に指令を与えて撹拌翼25を設定された撹拌速度で回転させるように構成される。一実施形態では、第2撹拌装置21の撹拌翼25は、第1撹拌装置11の撹拌翼15よりも低い回転速度で回転される。
【0018】
脱水装置は、凝集剤貯留槽46および供給ライン2に接続された第1凝集剤ライン51を備えている。第1凝集剤ライン51は、凝集剤貯留槽46から供給ライン2まで延びている。第1凝集剤注入ポンプ44は第1凝集剤ライン51に接続されている。第1凝集剤ライン51を流れる凝集剤の流量は、第1凝集剤注入ポンプ44の動作速度によって決まる。脱水装置は、第1凝集剤ライン51を流れる凝集剤の流量を測定する第1凝集剤流量計55を備えている。動作制御部10は、第1凝集剤注入ポンプ44に指令を与えて、供給ライン2を流れる汚泥に凝集剤を第1注入率で注入させるように構成される。
【0019】
汚泥は供給ライン2を通じて第1撹拌装置11の撹拌槽12内に導入される。供給ライン2には、汚泥流量計1が取り付けられており、供給ライン2を流れる汚泥、すなわち脱水装置によって処理すべき汚泥の流量は、汚泥流量計1によって測定される。
【0020】
凝集剤は、第1凝集剤注入ポンプ44により、供給ライン2内を流れる汚泥に第1注入率で注入される。汚泥と凝集剤は、第1撹拌装置11の撹拌槽12内に流入する。第1撹拌装置11は、回転する撹拌翼15により汚泥と凝集剤とを撹拌し、混合汚泥を形成する。より具体的には、動作制御部10は、第1撹拌装置11に指令を与えて、撹拌翼15により汚泥と凝集剤とを第1撹拌速度で撹拌させる。第1撹拌速度は、撹拌翼15の回転速度である。
【0021】
撹拌翼15の回転速度、すなわち第1撹拌速度は、1000min-1以上が好ましい。より好ましい回転速度は1500min-1以上である。さらにより好ましい回転速度は2000min-1以上である。撹拌翼15の回転速度の上限は特に設ける必要はないが、撹拌翼15の回転速度が10000min-1までは特に問題が生じないことが実験により確認されている。実用的には、撹拌翼15の回転速度は、1000min-1以上5000min-1以下である。
【0022】
処理すべき汚泥の量が少ない場合は、汚泥への凝集剤の第1注入率、および第1撹拌装置11の第1撹拌速度は0であることもある。言い換えれば、凝集剤は供給ライン2に注入されず(すなわち、凝集剤は第1撹拌装置11には導入されず)、撹拌翼15は回転しない。
【0023】
一実施形態では、第1凝集剤ライン51は第1撹拌装置11の撹拌槽12に接続され、凝集剤は、撹拌槽12内の汚泥に注入されてもよい。第1撹拌装置11から排出された汚泥(混合汚泥)は、供給ライン3を通じて第2撹拌装置21の撹拌槽22内に供給される。
【0024】
脱水装置は、凝集剤貯留槽46および供給ライン3に接続された第2凝集剤ライン52を備えている。第2凝集剤ライン52は、凝集剤貯留槽46から供給ライン3まで延びている。第2凝集剤注入ポンプ45は第2凝集剤ライン52に接続されている。第2凝集剤ライン52を流れる凝集剤の流量は、第2凝集剤注入ポンプ45の動作速度によって決まる。脱水装置は、第2凝集剤ライン52を流れる凝集剤の流量を測定する第2凝集剤流量計56を備えている。動作制御部10は、第2凝集剤注入ポンプ45に指令を与えて、供給ライン3を流れる汚泥に凝集剤を第2注入率で注入させるように構成される。
【0025】
第1撹拌装置11から排出された汚泥と、第2注入率で注入された凝集剤は、供給ライン3を通じて第2撹拌装置21の撹拌槽22内に流入する。第2撹拌装置21は、回転する撹拌翼25により汚泥と凝集剤とを撹拌し、凝集フロックを形成する。より具体的には、動作制御部10は、第2撹拌装置21に指令を与えて、撹拌翼25により汚泥と凝集剤とを第2撹拌速度で撹拌させる。第2撹拌速度は、撹拌翼25の回転速度である。本実施形態では、撹拌翼25の回転速度は、10~500min-1である。一実施形態では、第2凝集剤ライン52は第2撹拌装置21の撹拌槽22に接続され、凝集剤は、撹拌槽22内の汚泥に注入されてもよい。
【0026】
本実施形態では、第1撹拌装置11内で汚泥と撹拌される凝集剤は、第2撹拌装置21内で汚泥と撹拌される凝集剤と同じである。一実施形態では、第1撹拌装置11内で汚泥と撹拌される凝集剤は、第2撹拌装置21内で汚泥と撹拌される凝集剤と異なってもよい。この場合は、第1凝集剤ライン51および第2凝集剤ライン52は、異なる凝集剤貯留槽にそれぞれ連結される。
【0027】
第2撹拌装置21により形成された凝集フロックは、供給ライン4を通じて濃縮装置31に送られる。濃縮装置31は、凝集フロックを濃縮させ、濃縮汚泥を形成する。濃縮方法としては、重力濃縮方式や機械濃縮方式が採用されるのが一般的であるが、特に限定されない。
【0028】
濃縮された汚泥(すなわち、濃縮された凝集フロック)は、供給ライン5を通じてスクリュープレス脱水機41に送られ、スクリュープレス脱水機41により脱水される。脱水された凝集フロックは脱水ケーキとしてスクリュープレス脱水機41から排出される。
【0029】
図2は、スクリュープレス脱水機41の一実施形態を示す断面図である。図2に示すように、スクリュープレス脱水機41は、同軸上に配列された第1スクリュー61および第2スクリュー62を有する同軸差動スクリュープレス脱水機である。具体的には、スクリュープレス脱水機41は、円筒状のろ過筒60と、ろ過筒60内で、該ろ過筒60と同心状に配置され、凝集フロックを含む汚泥(以下、単に汚泥という)を所定の移送方向Dに移送する第1スクリュー61および第2スクリュー62と、第1スクリュー61を回転させる第1スクリューモータ65と、第1スクリュー61とは独立に第2スクリュー62を回転させる第2スクリューモータ66を備えている。
【0030】
投入口68からろ過筒60に投入された汚泥(凝集フロック)は、回転する第1スクリュー61および第2スクリュー62によりろ過筒60内で所定の移送方向Dに移送される。第1スクリューモータ65と第2スクリューモータ66の動作、すなわち第1スクリュー61の回転速度、および第2スクリュー62の回転速度および回転方向は、動作制御部10によって制御される。
【0031】
第2スクリュー62は、第1スクリュー61とは独立に回転可能なように、第1スクリュー61に連結されている。第1スクリュー61および第2スクリュー62の全体は、ろ過筒60および排出室70をそれぞれ貫通して延びている。排出室70は、ろ過筒60に接続されている。脱水ケーキは、ろ過筒60から排出室70に排出される。
【0032】
第1スクリュー61は、汚泥の移送方向Dにおける下流側に向かってその径が徐々に大きくなる円錐台形状(テーパ形状)の第1スクリュー軸61Aと、第1スクリュー軸61Aの外面に固定された第1スクリュー羽根61Bとを有している。
【0033】
第2スクリュー62は、円筒形状の第2スクリュー軸62Aと、第2スクリュー軸62Aの外面に固定された第2スクリュー羽根62Bを有している。第2スクリュー62の軸方向の長さは、第1スクリュー61の軸方向の長さよりも短い。さらに、第2スクリュー羽根62Bのピッチは、第1スクリュー羽根61Bのピッチよりも小さい。さらに、第2スクリュー羽根62Bは、その巻数が3巻き未満である。
【0034】
第2スクリュー62の第2スクリュー軸62Aは、第1スクリュー軸61Aと同心状に配置される。第2スクリュー軸62Aの外径は第1スクリュー軸61Aの最大径と同一である。第2スクリュー軸62Aは、排出室70を貫通して延びている。
【0035】
閉塞壁69を貫通して延びる第1スクリュー軸61Aの上流側端部は、軸受71,72により回転可能に支持されている。第1スクリュー軸61Aは、第1スクリュー61を回転させるための第1スクリューモータ65に連結されている。第2スクリュー軸62Aは、第2スクリュー62を回転させるための第2スクリューモータ66に連結されている。
【0036】
本実施形態では、第2スクリュー羽根62Bの巻き方向(すなわち、螺旋方向)は、第1スクリュー羽根61Bの巻き方向とは逆である。したがって、投入口68から投入された汚泥を、排出室70へ送り出すときは、図2に示されるように、第2スクリュー62を第1スクリュー61とは逆方向に回転させる。
【0037】
第2スクリュー羽根62Bの巻き方向を、第1スクリュー羽根61Bの巻き方向と同一にしてもよい。この場合、投入口68から投入された汚泥を、排出室70へ送り出すときは、第2スクリュー62を第1スクリュー61と同方向に回転させることになる。
【0038】
図2に示すように、ろ過筒60は、第1スクリュー61が配置された脱水領域100Aと、第2スクリュー62が配置されたプラグ形成領域100Bとに分割される。脱水領域100Aで汚泥が移送される空間は、ろ過筒60の内面と、第1スクリュー羽根61Bと、第1スクリュー軸61Aとによって形成される。この移送空間の断面積は、汚泥の移送方向Dに沿って漸次減少する。したがって、投入口68から投入された汚泥(凝集フロック)がこの移送空間を第1スクリュー羽根61Bによって移送されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。ろ過筒60を通過したろ液は、ろ過筒60の下方に配置されたろ液受け73によって集められる。ろ液受け73には、ドレイン74が接続されており、ろ液受け73によって集められたろ液は、ドレイン74を介してスクリュープレス脱水機41から排出される。
【0039】
プラグ形成領域100Bで汚泥が移送される空間は、ろ過筒60の内面と、第2スクリュー羽根62Bと、第2スクリュー軸62Aとによって形成される。図2に示されるように、この移送空間の断面積は一定である。プラグ形成領域100Bでは、脱水領域100Aで脱水された汚泥からなる脱水ケーキによって、プラグケーキが形成される。
【0040】
動作制御部10は、第2スクリュー62を第1スクリュー61の回転方向とは逆方向に回転させ、第2スクリュー羽根62Bによってプラグケーキを少しずつ排出室70に送り出す(すなわち、排出する)。第2スクリュー62上のプラグケーキは、後続の脱水ケーキに背圧を加えながら、第2回転機構20によって回転される第2スクリュー62の第2スクリュー羽根62Bによって排出室70に排出される。
【0041】
動作制御部10は、第2スクリュー62の回転速度を変更することによって、排出室70に排出されるプラグケーキの量を調整することができる。より具体的には、動作制御部10が第2スクリュー62の回転速度を低下させると、プラグケーキの排出量が減少し、動作制御部10が第2スクリュー62の回転速度を増加させると、プラグケーキの排出量が増加する。プラグケーキの排出量が減少すると、後続の脱水ケーキが脱水領域100Aに滞留して、該後続の脱水ケーキに加えられる背圧が増加する。したがって、動作制御部10が第2スクリュー62の回転速度を低下させることにより、後続の脱水ケーキの含水率を低下させることができる。一実施形態では、第2スクリュー62の回転と停止とを交互に繰り返す間欠運転を行うことにより、後続の脱水ケーキに加えられる背圧を調整してもよい。
【0042】
次に、図1および図2を参照して説明した脱水装置を用いた汚泥の脱水方法の一実施形態について説明する。
脱水装置によって処理すべき汚泥の量(以下、汚泥の処理量という)は、変化することがある。特に、汚泥の処理量が増加すると、脱水ケーキの含水率の上昇やSS(Suspended Solids)回収率の低下を招きやすい。そこで、動作制御部10は、汚泥の処理量が変化したときに、第1撹拌装置11および第2撹拌装置12に指令を与えて第1撹拌速度および第2撹拌速度を変化させ、かつ第1凝集剤注入ポンプ44および第2凝集剤注入ポンプ45に指令を与えて凝集剤の汚泥への第1注入率および第2注入率を変化させるように構成されている。
【0043】
より具体的には、動作制御部10は、汚泥の処理量が現在の処理量から増加したときに、第1撹拌装置11および第2撹拌装置12に指令を与えて第1撹拌速度および第2撹拌速度を増加させ、かつ第1凝集剤注入ポンプ44に指令を与えて凝集剤の汚泥への第1注入率を増加させ、かつ第2凝集剤注入ポンプ45に指令を与えて凝集剤の汚泥への第2注入率を低下させるように構成されている。
【0044】
第1注入率が増加する一方で、第2注入率が低下するので、汚泥の処理に使用される凝集剤の全体の量はほとんど変化せずに、脱水装置はより多くの量の汚泥を処理することができる。
【0045】
スクリュープレス脱水機41が、増加した処理量の汚泥(凝集フロック)を脱水することを可能とするために、動作制御部10は、汚泥の処理量が増加したときに、スクリュープレス脱水機41に指令を与えて、第1スクリュー61の回転速度および第2スクリュー62の回転速度を増加させるように構成されている。このようにスクリュープレス脱水機41の運転条件を変更することで、スクリュープレス脱水機41は、脱水ケーキの含水率を低く保ちつつ、より多くの処理量の汚泥を脱水することができる。
【0046】
汚泥の処理量は、単位時間当たりに脱水装置によって処理すべき汚泥の量である。より具体的には、汚泥の処理量は、汚泥に含まれる固形物(懸濁物質)の単位時間当たりの量である。汚泥の処理量(kgDS/h)は、汚泥の濃度(gDS/LまたはkgDS/m3)に汚泥の流量(L/hまたはm3/h)を乗算することで求められる。
汚泥の処理量=汚泥の濃度×汚泥の流量
【0047】
汚泥の濃度は、DS(Dry Sludge)またはTS(Total Solid)とも呼ばれる。汚泥の濃度は、汚泥を一定量採取して乾燥させ、その乾燥重量から算出される。汚泥の流量は、図1に示す汚泥流量計1によって測定される。
【0048】
凝集剤の注入率(%)は、汚泥の処理量に対する凝集剤の量を表す。より具体的には、凝集剤の注入率は、凝集剤の濃度(kg/m3)に凝集剤の流量(m3/h)を乗算して得られた数値を、汚泥の上記処理量で割り算することで求められる。
凝集剤の注入率=凝集剤の濃度×凝集剤の流量/汚泥の処理量×100
【0049】
処理の対象となる汚泥は、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれでもよい。
有機性汚泥の例としては、下水処理、し尿処理、各種産業の排水処理において発生する有機性汚泥などを挙げることができる。より具体的には、最初沈殿池汚泥、余剰汚泥、嫌気性消化汚泥、好気性消化汚泥、生し尿、浄化槽汚泥、凝集沈殿汚泥、凝集加圧浮上汚泥などを挙げることができる。有機性汚泥は無機物を含んでもよい。
無機性汚泥としては、例えば浄水処理、建設工事の排水処理、各種産業の排水処理において発生する無機性汚泥などを挙げることができる。ここで、浄水処理で発生する汚泥とは、浄水処理施設における沈殿池、排泥池、濃縮槽などから排出される汚泥などである。無機性汚泥は有機物を含んでもよい。
【0050】
本脱水方法では、有機性汚泥、無機性汚泥のいずれも被処理物とすることができるが、本発明の効果をより享受できるという観点からすると、有機性汚泥が好ましく、その中でも下水処理の消化汚泥での効果が特に高い。
但し、以上は例示であり、処理の対象となる汚泥はこれらに限定されるものではない。
【0051】
凝集剤としては、カチオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤などが挙げられる。第1撹拌装置11内で汚泥と撹拌される凝集剤と、第2撹拌装置21内で混合汚泥と撹拌される凝集剤は同じであってもよいし、異なってもよい。
【0052】
次に、図1に示す脱水装置を用いて実施した汚泥の脱水方法の試験結果を記載する。試験に使用されたスクリュープレス脱水機41のろ過筒60は、直径300mmであった。処理対象の汚泥は下水の消化汚泥であった。図3は、凝集剤を汚泥に添加した試験の結果を示し、図4は、凝集剤およびポリ硫酸第二鉄を汚泥に添加した試験の結果を示す。ポリ硫酸第二鉄は濃縮装置31の出口の濃縮汚泥に添加した。脱水ケーキの含水率は、安定運転時の脱水ケーキを採取し、105℃で一晩乾燥させて計測した。
【0053】
図3および図4に示すように、汚泥の処理量が2倍以上であっても、脱水ケーキの含水率は概ね一定に保たれている。したがって、これらの試験結果から、脱水装置は、その運転条件を変えることにより、汚泥を適切に脱水できることが分かる。
【0054】
汚泥の処理量が現在の汚泥の処理量から減少したときは、動作制御部10は、第1撹拌速度および第2撹拌速度を低下させ、スクリュープレス脱水機41の第1スクリュー61の回転速度および第2スクリュー62の回転速度を低下させる。凝集剤の第1注入率および第2注入率は、汚泥の処理量によっては、増加させることもあれば、低下させることもある。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 汚泥流量計
2,3,4,5 供給ライン
10 動作制御部
11 第1撹拌装置
12 撹拌槽
13 駆動機
14 回転軸
15 撹拌翼
21 第2撹拌装置
22 撹拌槽
23 駆動機
24 回転軸
25 撹拌翼
31 濃縮装置
41 スクリュープレス脱水機
44 第1凝集剤注入ポンプ
45 第2凝集剤注入ポンプ
46 凝集剤貯留槽
51 第1凝集剤ライン
52 第2凝集剤ライン
55 第1凝集剤流量計
56 第2凝集剤流量計
60 ろ過筒
61 第1スクリュー
61A 第1スクリュー軸
61B 第1スクリュー羽根
62 第2スクリュー
62A 第2スクリュー軸
62B 第2スクリュー羽根
65 第1スクリューモータ
66 第2スクリューモータ
70 排出室
71,72 軸受
73 ろ液受け
74 ドレイン
100A 脱水領域
100B プラグ形成領域
図1
図2
図3
図4