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  • 特開-ガス腐食試験機 図1
  • 特開-ガス腐食試験機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113850
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ガス腐食試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019092
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】金原 英司
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA04
2G050EA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガス腐食試験の際の省資源化を図ることが可能なガス腐食試験機を提供する。
【解決手段】試験槽と、前記試験槽内に腐食性ガスを供給するガス供給配管と、前記試験槽から腐食性ガスを排出するガス排出配管とを備え、試験開始前に一定量の腐食性ガスを前記試験槽内に封入し、前記試験槽内で腐食性ガスを循環させたのちに試験を開始するガス腐食試験機。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽と、
前記試験槽内に腐食性ガスを供給するガス供給配管と、
前記試験槽から腐食性ガスを排出するガス排出配管とを備え、
試験開始前に一定量の腐食性ガスを前記試験槽内に封入し、
前記試験槽内で腐食性ガスを循環させたのちに試験を開始するガス腐食試験機。
【請求項2】
前記ガス供給配管上に供給配管バルブと、
前記ガス排出配管上に排出配管バルブと、
前記試験槽内に撹拌翼とを備え、
前記供給配管バルブおよび前記排出配管バルブを閉じた状態で前記撹拌翼により前記試験槽内で腐食性ガスを循環させる請求項1に記載のガス腐食試験機。
【請求項3】
前記試験槽内で循環している腐食性ガスの濃度を測定し、
腐食性ガスの濃度に応じて、腐食性ガスの供給動作と腐食性ガスの循環動作との切替えを行う請求項1又は2に記載のガス腐食試験機。
【請求項4】
前記ガス供給配管と前記ガス排出配管とを接続するバイパス配管を備え、
前記バイパス配管を通じて前記試験槽内の腐食性ガスを循環させる請求項1から3に記載のガス腐食試験機。
【請求項5】
前記バイパス配管上に循環用送風機を設けた請求項4に記載のガス腐食試験機。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性ガスが導入される試験槽を備えたガス腐食試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガス腐食試験機では、電子部品等の試料を載置した試験槽の内部に腐食性ガスが導入され、その試料の耐腐食性が評価される。試験手順として、例えば、非特許文献1では、試験槽内を試験開始前に、規定の温度、湿度、および腐食性ガスの濃度に安定化させることが記載されている。特に腐食性ガスは、試験槽の壁面等に吸着される性質によって、腐食性ガスの濃度を安定化させるのに多くの時間を必要とする場合がある。現在は、試験槽へ腐食性ガスを常時供給し続けることにより腐食性ガスの濃度を安定化させる方法が一般に行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JIS C 60068-2-60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなガス腐食試験機では一般に、ガス腐食試験の際の省資源化を図ることが求められている。
【0005】
したがって、ガス腐食試験の際の省資源化を図ることが可能なガス腐食試験機を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)試験槽と、
試験槽内に腐食性ガスを供給するガス供給配管と、
試験槽から腐食性ガスを排出するガス排出配管とを備え、
試験開始前に一定量の腐食性ガスを試験槽内に封入し、
試験槽内で腐食性ガスを循環させたのちに試験を開始するガス腐食試験機。
【0007】
(2)ガス供給配管上に供給配管バルブと、
ガス排出配管上に排出配管バルブと、
試験槽内に撹拌翼とを備え、
供給配管バルブおよび排出配管バルブを閉じた状態で撹拌翼により試験槽内で腐食性ガスを循環させる上記(1)に記載のガス腐食試験機。
【0008】
(3)循環している腐食性ガスの濃度を測定し、
腐食性ガスの濃度に応じて、腐食性ガスの供給動作と腐食性ガスの循環動作との切替えを行う上記(1)又は(2)に記載のガス腐食試験機。
【0009】
(4)ガス供給配管とガス排出配管とを接続するバイパス配管を備え、
バイパス配管を通じて試験槽内の腐食性ガスを循環させる上記(1)から(3)に記載のガス腐食試験機。
【0010】
(5)バイパス配管上に循環用送風機を設けた上記(4)に記載のガス腐食試験機。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス腐食試験機によれば、試験開始前に所定の期間、腐食性ガスを試験槽内に供給し、試験槽内で腐食性ガスを循環させ、腐食性ガスの濃度を安定化させたのちに試験を開始するようにしたので、腐食性ガスの消費量が削減できる。よって、ガス腐食試験の際の省資源化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係るガス腐食試験機の概略構成例を表す模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るガス腐食試験機の概略構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一又は類似の符号が付されている。そして、同一又は類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0014】
また、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1を参照して、ガス腐食試験機の第1の実施形態について説明する。図1は、試験槽内で腐食性ガスを循環させる第1の実施形態に係るガス腐食試験機1の概略構成例を、模式的に表したものである。ガス腐食試験機1は、試験槽10、調温槽100、ガス供給配管11、ガス排出配管12、供給口13、排出口14、供給配管バルブ17、排出配管バルブ18、撹拌翼20、および制御部50を備えている。
【0016】
試験槽10は、側壁、上板および底板などからなる、例えば、直方体状の箱で底板に供給口13と、上板に排出口14があり、調温槽100の側壁、上板および底板によって取り囲まれている。試験槽10の側壁、上板および底板は、いずれも調温槽100の側壁、上板および底板とは接することなく離間しており、それらの間に空間が生じている。空間には、温度調節がなされた空気が満たされて、循環している。調温槽100内の空間には、図示しない冷却器と、ヒーターが設けられている。また、図示しない加湿器を用いて試験槽10内の湿度を調整している。試験槽10は、調温槽100の底板上の架台に設置され、例えば、図示しない留め具によって固定されている。なお、試験槽10および調温槽100はそれぞれ図示しない扉を有している。この扉は、試験片等を出し入れするものである。
【0017】
ガス供給配管11は、試験槽10内に腐食性ガスを供給するものである。ガス供給配管11は、その一端部が試験槽10に設けられた供給口13に接続され、一端部とは反対の他端部が図示しないガス供給部に接続されている。ガス供給部が作動することにより腐食性ガスがガス供給配管11を流れて試験槽10内へ供給される。この腐食性ガスは、例えば、H2S(硫化水素ガス)、NO2(二酸化窒素ガス)、Cl2(塩素ガス)およびSO2(二酸化硫黄ガス)などが挙げられる。また、ガス供給部は、例えば、図示しない腐食性ガス容器、空気供給部、ガス混合器で構成されている。
【0018】
ガス排出配管12は、試験槽10内の腐食性ガスを排出するものである。ガス排出配管12は、その一端部が試験槽10に設けられた排出口14に接続され、一端部とは反対の他端部が図示しない排気部に接続されている。排気部が作動することにより試験槽10内の腐食性ガスがガス排出配管12を流れて排気部から外部に排気される。この排気部は、例えば、図示しない排気送風機、排気処理装置で構成されている。
【0019】
供給配管バルブ17は、ガス供給配管11上に設けられ、ガス供給部から試験槽10内への流路を開閉可能にするものである。
【0020】
排出配管バルブ18は、ガス排出配管12上に設けられ、試験槽10から排気部への流路を開閉可能にするものである。
【0021】
供給配管バルブ17と排出配管バルブ18は、開放状態のときにガス供給配管11とガス排出配管12を介して試験槽10内とガス供給部と排気部とを連通させ、閉鎖状態のときに試験槽10内を密閉させる。
【0022】
撹拌翼20は、試験槽10内の腐食性ガスを循環させるものである。試験槽10内で撹拌翼20が回転することにより試験槽10内の腐食性ガスが、例えば、図1に示す矢印のように循環するようになっている。
【0023】
制御部50は、供給配管バルブ17、排出配管バルブ18、および撹拌翼20の動作を制御するものである。また、制御部50は、冷却器、ヒーター、加湿器の動作も制御する。
【0024】
[第1の実施形態の作用・効果]
(ガス腐食試験機1の動作)
ガス腐食試験機1においてガス腐食試験を行うにあたっては、まず、試験開始前に試験槽10内の雰囲気が所定温度となるように、調温槽100内の冷却器、ヒーターを制御する。併せて、加湿器を用いて試験槽10内の湿度の調節を行うと同時に撹拌翼20を回転させる。次に、所定の期間、試験槽10内にガス供給部から腐食性ガスを供給する(供給動作)。
【0025】
次に、ガス供給部からの腐食性ガスの供給を停止すると共に、供給配管バルブ17と排出配管バルブ18を閉じ、試験槽10内を密閉させてから撹拌翼20により試験槽10内の腐食性ガスを循環させて安定化させる(循環動作)。
【0026】
試験槽10内の腐食性ガスの濃度の安定化が終了したのち、撹拌翼20を停止させ、調温槽100に収容された試験槽10内の図示しない試験片支持部材に試験片を取り付け、ガス腐食試験を開始する。
【0027】
(ガス腐食試験機1の効果)
第1の実施形態に係るガス腐食試験機1は、試験開始前に所定の期間、試験槽10内に腐食性ガスを供給したのちに、ガス供給部からの腐食性ガスの供給を停止する。そして、供給配管バルブ17と排出配管バルブ18を閉じ、試験槽10内を密閉させてから撹拌翼20で腐食性ガスを循環させることで、試験槽10内の腐食性ガスの濃度を安定化させる。よって、腐食性ガスの消費量を削減することができる。
【0028】
また、供給配管バルブ17と排出配管バルブ18を閉じ、試験槽10内を密閉させてから撹拌翼20で腐食性ガスを循環させることで、試験槽へ腐食性ガスを常時供給し続ける場合と比較して、腐食性ガスの温湿度の変動を少なくし、冷却器、ヒーター、加湿器の動作を低減させる。よって、電力および、水の消費量を削減することができるため、ガス腐食試験の際の省資源化が実現できる。
【0029】
[第2の実施形態]
図2を参照して、ガス腐食試験機の第2の実施形態について説明する。図2は、試験槽内で腐食性ガスを循環させる第2の実施形態に係るガス腐食試験機1Aの概略構成例を、模式的に表したものである。
【0030】
ガス腐食試験機1Aは、第1の実施形態に係るガス腐食試験機1の構成に加えて、ガス濃度計40と、バイパス配管30と、切替えバルブ31と、循環用送風機32を備えている。なお、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0031】
ガス採取管40は、試験槽10および調温槽100の側壁を貫通する管であり、試験槽10内の腐食性ガスの成分等を適宜確認するためのものである。ガス採取管40は、その一端部が試験槽10に接続され、一端部とは反対の他端部が図示しない測定器に接続されている。この測定器は、腐食性ガスの濃度を測定するものである。
【0032】
バイパス配管30は、ガス供給配管11と、ガス排出配管12を接続するものである。バイパス配管30は、その一端部がガス供給配管11に接続され、一端部とは反対の他端部がガス排出配管12に接続されている。
【0033】
切替えバルブ31は、ガス排出配管12とバイパス配管30の接続部に設けられ、ガス排出配管12を流れる腐食性ガスを、バイパス配管30への流路もしくは、排気部への流路に切替えるものである。
【0034】
循環用送風機32は、バイパス配管30上に設けられ、バイパス配管30内を流れる腐食性ガスをガス供給配管11側へ効率よく送るものである。
【0035】
制御部50は、ガス採取管40と図示しない測定器によって測定された腐食性ガスの濃度に応じて、切替えバルブ31、循環用送風機32を制御するものである。
【0036】
[第2の実施形態の作用・効果]
(ガス腐食試験機1Aの動作)
ガス腐食試験機1Aにおいてガス腐食試験を行うにあたっては、まず、試験開始前に試験槽10内の雰囲気が所定温度となるように、調温槽100内の冷却器、ヒーターを制御する。併せて、加湿器を用いて試験槽10内の湿度の調節を行うと同時に撹拌翼20を回転させる。次に、所定の期間、試験槽10内にガス供給部から腐食性ガスを供給する(供給動作)。
【0037】
次に、ガス供給部からの腐食性ガスの供給を停止すると共に、供給配管バルブ17と排出配管バルブ18を閉じ、ガス腐食試験機1A内を密閉させてから切替えバルブ31をバイパス配管30への流路に切替え、撹拌翼20、および循環用送風機32により試験槽10内の腐食性ガスを循環させて安定化させる(循環動作)。
【0038】
その際に、制御部50は、ガス採取管40と図示しない測定器によって測定された試験槽10内の腐食性ガスの濃度に応じて、腐食性ガスの供給動作と腐食性ガスの循環動作の切替えを行う。
【0039】
試験槽10内と、ガス供給配管11の腐食性ガスの濃度の安定化が終了したのち、撹拌翼20、および循環用送風機32を停止させ、調温槽100に収容された試験槽10内の図示しない試験片支持部材に試験片を取り付け、ガス腐食試験を開始する。
【0040】
(ガス腐食試験機1Aの効果)
第2の実施形態でも第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係るガス腐食試験機1Aは、試験開始前に所定の期間、試験槽10内とガス供給配管11に腐食性ガスを供給したのちに、ガス供給部からの腐食性ガスの供給を停止する。そして、供給配管バルブ17と排出配管バルブ18を閉じ、ガス腐食試験機1A内を密閉させてから切替えバルブ31をバイパス配管30への流路に切替え、撹拌翼20、および循環用送風機32で腐食性ガスを循環させることで、ガス腐食試験機1A内の腐食性ガスの濃度を安定化させる。よって、腐食性ガスの消費量を削減することができる。
【0041】
また、供給配管バルブ17と排出配管バルブ18を閉じ、ガス腐食試験機1A内を密閉させてから切替えバルブ31をバイパス配管30への流路に切替え、撹拌翼20、および循環用送風機32で腐食性ガスを循環させることで、試験槽10へ腐食性ガスを常時供給し続ける場合と比較して、腐食性ガスの温湿度の変動を少なくし、冷却器、ヒーター、加湿器の動作を低減させる。よって、電力および、水の消費量を削減することができるため、ガス腐食試験の際の省資源化が実現できる。
【0042】
第2の実施形態に係るガス腐食試験機1Aは、ガス採取管40と図示しない測定器を備えたことで、試験槽10内に循環される腐食性ガスの濃度測定が可能となる。したがって、試験槽10内の腐食性ガスの濃度に応じて、腐食性ガスの供給動作と腐食性ガスの循環動作の切替えを行うことができ、ガス腐食試験機1Aでの腐食性ガスの循環を効率よく行うことができる。
【0043】
第2の実施形態に係るガス腐食試験機1Aは、バイパス配管30を備えたことで、試験槽10から排出された腐食性ガスが、ガス排出配管12からバイパス配管30を通じてガス供給配管11に戻り、再度、試験槽10内に供給されることで腐食性ガスを循環させることができる。したがって、試験槽10内だけでなく、ガス供給配管11を含めて腐食性ガスを循環させるため、試験槽10壁面とガス供給配管11とに腐食性ガスを馴染ませることができ、ガス腐食試験機1Aでの腐食性ガスの循環を効率よく行うことができる。
【0044】
第2の実施形態に係るガス腐食試験機1Aは、バイパス配管30上に循環用送風機32を設けたことで、バイパス配管30を流れる腐食性ガスをガス供給配管11側へ効率よく送ることができる。したがって、ガス腐食試験機1Aでの腐食性ガスの循環を効率よく行うことができる。
【0045】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、上記実施の形態において説明した形状などは例示であって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態において説明した各部材の配置位置や形状、個数等は例示であって、上記実施の形態において説明したものに限定されない。また、上記実施の形態において説明した以外の部材を備えるようにしてもよいし、上記実施の形態において説明した部材の一部を備えていなくてもよい。
【0046】
また、図1図2に示した本発明の概略構成例において、腐食性ガスは試験槽下部の供給口から供給する状態で示したが、別の位置に設けてもよい。具体的には、例えば、腐食性ガスが試験槽上部から供給されてもよいし、上記実施の形態において説明したものに限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1,1A…ガス腐食試験機、10…試験槽、100…調温槽、11…ガス供給配管、12…ガス排出配管、13…供給口、14…排出口、17…供給配管バルブ、18…排出配管バルブ、20…撹拌翼、30…バイパス配管、31…切替えバルブ、32…循環用送風機、40…ガス採取管、50…制御部。

図1
図2