IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

特開2024-113861ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法
<>
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図1
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図2
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図3
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図4
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図5
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図6
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図7
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図8
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図9
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図10
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図11
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図12
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図13
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図14
  • 特開-ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113861
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/60 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B65G67/60 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019106
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】杉田 智洋
(72)【発明者】
【氏名】村本 正之
(72)【発明者】
【氏名】田中 正吉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝夫
【テーマコード(参考)】
3F077
【Fターム(参考)】
3F077AA04
3F077BA02
3F077BA06
3F077BB02
3F077BB03
3F077BB08
3F077DB09
3F077GA10
(57)【要約】
【課題】ブームレスト作業を安全かつ容易にする。
【解決手段】ニューマチックアンローダのブームレスト作業時に使用される治具40は、ニューマチックアンローダの垂直管の下端部に取り付けられるように構成された回転板41と、回転板の端縁部に取り付けられ、台車フレーム61上に着脱可能かつ回転可能に載置されるように構成された支軸42とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックアンローダのブームレスト作業時に使用される治具であって、
前記ニューマチックアンローダの垂直管の下端部に取り付けられるように構成された回転板と、
前記回転板の端縁部に取り付けられ、台車フレーム上に着脱可能かつ回転可能に載置されるように構成された支軸と、
を備えることを特徴とするブームレスト作業用治具。
【請求項2】
前記支軸の両端に設けられた支軸フランジ板を備える
請求項1に記載のブームレスト作業用治具。
【請求項3】
前記回転板に取り付けられたワイヤー取付具を備える
請求項1に記載のブームレスト作業用治具。
【請求項4】
前記回転板は、肉抜き穴を有する
請求項1に記載のブームレスト作業用治具。
【請求項5】
ニューマチックアンローダのブームレスト作業時に使用される台車装置であって、
請求項1に記載のブームレスト作業用治具と、
前記支軸が着脱可能かつ回転可能に載置される台車フレームと、
前記台車フレームに設けられたキャスターと、
を備えることを特徴とするブームレスト作業用台車装置。
【請求項6】
前記台車フレーム上における前記支軸の転動を規制するストッパ部材を備える
請求項5に記載のブームレスト作業用台車装置。
【請求項7】
前記台車フレームは枠状に形成され、
前記台車装置は、前記台車フレームの枠内に固定される支持板を備え、
前記ストッパ部材は、前記支持板上に固定される
請求項6に記載のブームレスト作業用台車装置。
【請求項8】
前記台車フレームと前記支軸の間に挟まれて配置され、前記支軸の高さを調節するための調節板を備える
請求項5に記載のブームレスト作業用台車装置。
【請求項9】
ニューマチックアンローダのブームレスト作業方法であって、
請求項に記載のブームレスト作業用台車装置を用意する第1ステップと、
前記垂直管を空中に保持した状態で、前記垂直管の下端部に前記ブームレスト作業用治具の前記回転板を取り付ける第2ステップと、
前記垂直管と前記ブームレスト作業用治具を下降させ、前記支軸を前記台車フレーム上に載置する第3ステップと、
前記ニューマチックアンローダのブームを下降させながら、前記回転板を引っ張って前記台車装置を走行移動させ、前記回転板を回転させつつ前記垂直管を傾斜させる第4ステップと、
を備えることを特徴とするブームレスト作業方法。
【請求項10】
前記垂直管は伸縮可能であり、
前記第4ステップにおいて、前記垂直管を伸縮させながら前記台車装置を走行移動させる
請求項9に記載のブームレスト作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニューマチックアンローダのブームレスト作業時に使用される治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に港湾には、船舶によって運搬されてきた穀物等のばら物である荷を吸い上げて荷揚げするニューマチック(空気式)アンローダが設置されている。
【0003】
このニューマチックアンローダでは、ブームのメンテナンス時、あるいは台風等による暴風時に、ブームを地上に置く(預ける)ブームレストというものを行う。
【0004】
ブームレスト作業時には、汎用台車上に盤木を積み、その上にニューマチックアンローダの垂直管の下端を載せ、ブームを下降させながら台車を引っ張り、垂直管を徐々に傾斜させ、最終的に水平の姿勢にする。そしてブームの先端部を、地上に置いた盤木の上に載せる。これによりブームの荷重が地上に預けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-171440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、現状のブームレスト作業は比較的困難で危険を伴う作業であり、熟練した作業者が十分な時間を掛けて慎重に行わざるを得ない作業である。
【0007】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、ブームレスト作業を安全かつ容易にすることができるブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、
ニューマチックアンローダのブームレスト作業時に使用される治具であって、
前記ニューマチックアンローダの垂直管の下端部に取り付けられるように構成された回転板と、
前記回転板の端縁部に取り付けられ、台車フレーム上に着脱可能かつ回転可能に載置されるように構成された支軸と、
を備えることを特徴とするブームレスト作業用治具が提供される。
【0009】
好ましくは、前記治具は、前記支軸の両端に設けられた支軸フランジ板を備える。
【0010】
好ましくは、前記治具は、前記回転板に取り付けられたワイヤー取付具を備える。
【0011】
好ましくは、前記回転板は、肉抜き穴を有する。
【0012】
本開示の他の態様によれば、
ニューマチックアンローダのブームレスト作業時に使用される台車装置であって、
前記ブームレスト作業用治具と、
前記支軸が着脱可能かつ回転可能に載置される台車フレームと、
前記台車フレームに設けられたキャスターと、
を備えることを特徴とするブームレスト作業用台車装置が提供される。
【0013】
好ましくは、前記台車装置は、前記台車フレーム上における前記支軸の転動を規制するストッパ部材を備える。
【0014】
好ましくは、前記台車フレームは枠状に形成され、
前記台車装置は、前記台車フレームの枠内に固定される支持板を備え、
前記ストッパ部材は、前記支持板上に固定される。
【0015】
好ましくは、前記台車装置は、前記台車フレームと前記支軸の間に挟まれて配置され、前記支軸の高さを調節するための調節板を備える。
【0016】
本開示の他の態様によれば、
ニューマチックアンローダのブームレスト作業方法であって、
請求項に記載のブームレスト作業用台車装置を用意する第1ステップと、
前記垂直管を空中に保持した状態で、前記垂直管の下端部に前記ブームレスト作業用治具の前記回転板を取り付ける第2ステップと、
前記垂直管と前記ブームレスト作業用治具を下降させ、前記支軸を前記台車フレーム上に載置する第3ステップと、
前記ニューマチックアンローダのブームを下降させながら、前記回転板を引っ張って前記台車装置を走行移動させ、前記回転板を回転させつつ前記垂直管を傾斜させる第4ステップと、
を備えることを特徴とするブームレスト作業方法が提供される。
【0017】
好ましくは、前記垂直管は伸縮可能であり、
前記第4ステップにおいて、前記垂直管を伸縮させながら前記台車装置を走行移動させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、ブームレスト作業を安全かつ容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の実施形態に係るニューマチックアンローダの通常状態を示す概略図である。
図2】アンローダのブームレスト状態を示す概略図である。
図3】台車装置を示す側面図である。
図4】台車装置を示す平面図である。
図5】治具を示す正面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7図4のVII-VII断面図である。
図8図4のVIII-VIII断面図である。
図9図7の要部拡大図である。
図10】ブームレスト作業方法を説明するための側面図である。
図11】ブームレスト作業方法を説明するための側面図である。
図12】ブームレスト作業方法を説明するための側面図である。
図13】ブームレスト作業方法を説明するための側面図である。
図14】ブームレスト作業方法を説明するための平面図である。
図15】変形例に係る治具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0021】
図1に示すように、港湾には、穀物等のばら物である荷Bを船倉K内に搭載した船舶Sが停泊している。そして港湾の岸壁Qには、船倉K内に貯留された荷Bを吸い上げて払い出すためのニューマチックアンローダ(以下、単にアンローダという)100が設置されている。便宜上、図1における前後左右上下の各方向を図示のように定める。海側ないし船舶S側が前方、陸側ないしアンローダ100側が後方である。
【0022】
アンローダ100は、陸上すなわち岸壁Q上に設置された基部1と、基部1上に旋回可能に設けられた旋回部2とを有する。基部1は陸上で走行可能である。すなわち岸壁Qに沿って前後一対のレール3が設けられ、基部1はこのレール3上を走行可能である。基部1は、前後の脚部4と、脚部4の下端に回転可能に設けられレール3上を転動する車輪5と、前後の脚部4を掛け渡して連結するガーダ6とを備える。
【0023】
旋回部2は、鉛直方向に延びる旋回軸C1回りに矢印aの如く回動もしくは旋回するよう、旋回環ないし旋回軸受7を介して基部1に取り付けられる。旋回部2には、吸引した荷Bを一時的に受け入れるレシーバタンク8が設けられる。レシーバタンク8は、上下方向に長い円筒状に形成され、旋回部2に同軸に固定されると共に、旋回軸C1を中心に旋回可能である。
【0024】
旋回部2には、機械室9が設けられ、機械室9内には真空ポンプ10が配置されている。真空ポンプ10は吸引管11を介してレシーバタンク8に接続され、レシーバタンク8内に負圧を発生させる。吸引管11はレシーバタンク8の上端に接続される。レシーバタンク8内において、吸引管11の接続部手前にはバグフィルタ12が設けられる。バグフィルタ12は真空ポンプ10に向かって荷Bが吸い込まれるのを防止する。
【0025】
レシーバタンク8の下端には荷Bの出口13が設けられる。この出口にはシュート14が接続される。シュート14には図示しないロータリーフィーダが設けられる。シュート14を通じて落下された荷Bは最終的に二次払い出し装置としての地上コンベヤ15に払い出される。地上コンベヤ15は荷Bを図示しない貯蔵設備に搬送する。なお、二次払い出し装置をトラックとし、荷Bをトラックの荷台に直接払い出して搬送してもよい。
【0026】
ロータリーフィーダは、真空切り出し装置または送り出し装置として機能する。ロータリーフィーダによって、地上コンベヤ15への荷Bの排出流量(単位時間当たりの荷Bの排出量)が略一定となるよう制御されると共に、真空側と大気側が隔離される。ロータリーフィーダより上側が真空側、下側が大気側である。
【0027】
レシーバタンク2の下部側面には荷Bの入口である投入口16が設けられる。この投入口16には、後方から前方に向かって延びる水平管17の基端ないし後端が、ボール状のスイングジョイント16Aを介して回動可能に接続されている。特に水平管17はレシーバタンク2に対し、水平方向(具体的には左右方向)に延びる回動軸回りに矢印bの如く回動可能である。すなわち水平管17はレシーバタンク2に起伏可能に取り付けられている。
【0028】
また旋回部2には、後方から前方に向かって延びるブーム18の基端ないし後端が、図示しない軸受を介して回動可能に接続されている。ブーム18も旋回部2に対し起伏可能であり、ブーム18の回動軸は水平管17の回動軸と同軸とされる。ブーム18は水平管17を長手方向の複数箇所で支持する。
【0029】
水平管17は矢印cの如く長手方向に伸縮可能であり、レシーバタンク8に接続される後側部分17Aと、後側部分17Aから前方に向かって伸縮可能な前側部分17Bとを備える。
【0030】
ブーム18の先端側ないし前端側には、矢印dの如くブーム18の長手方向に移動可能な水平台車19が設けられている。水平台車19は、ブーム18に取り付けられた図示しないレール上を走行可能である。水平管17の伸縮時、水平管17の前側部分17Bが水平台車19によって支持されながら、前側部分17Bと水平台車19が同時に移動する。
【0031】
水平管17はその先端部に、下向きに約90°曲げられた曲管20を一体的に有する。そして曲管20の先端には、鉛直方向に延びる垂直管21の基端ないし上端が、円筒状のスイングジョイント22を介して、矢印eの如く回動可能に接続されている。垂直管21の回動軸も、水平方向(具体的には左右方向)に延びている。
【0032】
垂直管21の先端ないし下端には、荷Bの吸込口をなすノズル23が取り付けられている。垂直管21は矢印fの如くその長手方向に伸縮可能であり、ノズル23の高さ位置を、荷Bや船舶Sの高さ位置に応じて調節できるようになっている。垂直管21は、スイングジョイント22に接続される上側部分21Aと、上側部分21Aから下方に向かって伸縮可能な下側部分21Bとを備える。
【0033】
水平台車19には、垂直管21を伸縮させるための垂直伸縮装置25が設けられている。垂直伸縮装置25は、ワイヤ26(図10参照)を介して下側部分21Bを昇降させるウインチにより構成される。下側部分21Bを昇降させることによりノズル23の高さ位置を変更することが可能である。
【0034】
ノズル7の位置および向きを微調節できるようにするため、上側部分21Aの上端部と、下側部分21Bの下端部とには可撓管24が設けられている。
【0035】
荷役作業時、垂直管21は船舶SのハッチHを通じて船倉K内に挿入される。そして真空ポンプ10が作動され、船倉K内の荷Bがノズル23から吸引される。
【0036】
吸引された荷Bは、垂直管21、スイングジョイント22、水平管17、スイングジョイント16Aを順に通過してレシーバタンク2内に入る。レシーバタンク2内の空気は、バグフィルタ12、吸引管11を順に通過して真空ポンプ10に至る。一方、レシーバタンク2内の荷Bは落下して出口13、シュート14を通じてロータリーフィーダに至り、ロータリーフィーダによって制御された流量で送り出される。そしてさらにシュート14を通じて地上コンベヤ15に払い出される。
【0037】
ノズル7の位置を水平方向(具体的には前後方向)に変えるときには、水平台車19の移動と同時に水平管17が伸縮される。ブーム18には、水平管17を伸縮させるための水平伸縮装置(図示せず)が設けられている。併せて、ブーム18の起伏と垂直管21の伸縮が行われてもよい。
【0038】
さて、かかるアンローダ100においては、ブーム18、水平台車19、垂直伸縮装置25、またはそれらに付帯する機器のメンテナンス時、あるいは台風等による暴風時に、ブーム18を地上に置く(預ける)ブームレストというものを行う。
【0039】
図2は、ブームレスト状態のアンローダ100を示す。図1に示したような通常状態から旋回部2が旋回され、ブーム18が地面(岸壁Q)の上方に位置される。そしてブーム18は下降され、その先端部が盤木31を介して地上に置かれる。これによりブーム18の荷重が地上に預けられる。そしてこのような状態を実現するため、垂直管21が垂直の姿勢から水平の姿勢に倒されて地上に置かれる。
【0040】
本実施形態の場合、詳しくは後述するが、治具40を含む台車装置60が垂直管21の下端部を支持する。また別の台車32が垂直管21の上端部を支持する。台車32は汎用台車により形成される。台車32の上に盤木(図示せず)が置かれ、盤木の上に垂直管21の上端部が載置される。
【0041】
アンローダ100を通常状態からブームレスト状態にするとき、ブームレスト作業を行うが、現状のブームレスト作業は比較的困難で危険を伴う作業であり、熟練した作業者が十分な時間を掛けて慎重に行わざるを得ない作業である。
【0042】
そこで本発明者らは、ブームレスト作業を安全かつ容易にすることができるブームレスト作業用治具および台車装置、ならびにブームレスト作業方法を創案するに至った。以下、これらについて説明する。
【0043】
図3および図4に、治具40を含む台車装置60を示し、図5および図6に治具40を単独で示す。これら図を参照してまず治具40を説明する。
【0044】
治具40は、垂直管21の下端部に取り付けられるように構成された回転板41と、回転板41の端縁部に取り付けられ、台車装置60の台車フレーム61上に着脱可能かつ回転可能に載置されるように構成された支軸42とを備える。
【0045】
また治具40は、支軸42の両端に設けられた支軸フランジ板43と、回転板41に取り付けられたワイヤー取付具44とを備える。
【0046】
治具40は金属製(具体的には鉄製)で、各部材を溶接等により組み立てて一体に形成される。
【0047】
回転板41は、垂直管21の下端面に取り付けられるように構成されたフランジ板からなる(図10参照)。回転板41は概ね長方形で、支軸42側に位置する基端縁部45と、支軸42の反対側に位置する先端縁部46とを有する。回転板41は、軽量化のための肉抜き穴47を有し、これにより回転板41は図5に示すように、基端縁部45の中央部が開放されたU字状に形成される。回転板41には垂直管21の下端面にボルト止めするためのボルト挿通穴48が設けられる。垂直管21の下端面には周方向等間隔で複数(具体的には6個)のボルト挿通穴が設けられており、これに対応して複数(具体的には5個)のボルト挿通穴48が、肉抜き穴47の部分を除いて、回転板41に周方向等間隔で設けられている。
【0048】
支軸42は、断面円形の中空パイプにより形成されている。支軸42には回転板41の基端縁部45を差し込むための2つのスリット49が設けられる。回転板41の基端縁部45が、支軸42の内周面に突き当たるまでスリット49に差し込まれる。そしてその後、基端縁部45が支軸42に溶接される。これにより回転板41は支軸42に強固に固定される。
【0049】
支軸42は、台車フレーム61の幅Wdより僅かに長い長さLsを有する。そして支軸42の両端面には、支軸フランジ板43が溶接にて取り付けられる。支軸フランジ板43は支軸42より大径であり、支軸42の径方向外側に突出する。これにより詳しくは後述するが、両端の支軸フランジ板43が台車フレーム61をその幅方向に挟むようになり、平面視において支軸42が台車フレーム61に対し左右方向に位置ずれしたり傾いたりすることを抑制できる。
【0050】
本実施形態の支軸フランジ板43は正八角形であるが、その形状は限定されず、円形等であってもよい。
【0051】
ワイヤー取付具44は、アイプレートにより形成され、回転板41の先端中央部にボルト(図示せず)により取り付けられている。ワイヤー取付具44には、ブームレスト作業時に、ワイヤーフック52が着脱可能に取り付けられる。便宜上、ワイヤー取付具44が取り付けられる回転板41の一方の片面を裏(うら)面50とし、その反対側の他方の片面を表(おもて)面51とする。垂直管21は表面51に取り付けられる(図10参照)。
【0052】
次に、図7図9も参照して台車装置60を説明する。図7図4のVII-VII断面図、図8図4のVIII-VIII断面図、図9図7の要部拡大図である。
【0053】
台車装置60は、前述の治具40と、支軸42が着脱可能かつ回転可能に載置される台車フレーム61と、台車フレーム61に設けられたキャスター62とを備える。また台車装置60は、台車フレーム61上における支軸42の転動を規制するストッパ部材63を備える。
【0054】
台車フレーム61は枠状に形成されるが、台車装置60は、台車フレーム61の枠内に固定される支持板64を備える。ストッパ部材63は支持板64上に固定される。
【0055】
また台車装置60は、台車フレーム61と支軸42の間に挟まれて配置され、支軸42の高さを調節するための調節板65を備える。
【0056】
台車フレーム61とキャスター62は台車を構成し、特に汎用台車を構成する。台車フレーム61は、金属製の角材(具体的には鉄製の角パイプ)により平面視で四角(具体的には長方形)枠状に形成され、長さLdと幅Wd(<Ld)を有する。キャスター62は、台車フレーム61の底面の四隅にそれぞれ取り付けられる。本実施形態のキャスター62は全て自在キャスターであり、車輪66が鉛直軸67回りにフリーに回転可能である。
【0057】
台車フレーム61の枠内における幅方向両端部の最下位置に、支持板64を下から支持するための金属製(具体的には鉄製)載置板68が、溶接により一体的に設けられている。載置板68は枠内の全長に延びる。これら幅方向両端部の載置板68を掛け渡すようにして、支持板64が載置板68上に載置され、図示しないボルトにより固定される。
【0058】
支持板64の長さは、台車フレーム61の枠内の長さより短くされ、支持板64の長さ方向前後には、台車フレーム61との間の隙間69,70が形成される。なお便宜上、図3,4,7,8,9の左側を長さ方向の前方、右側を長さ方向の後方とする。
【0059】
支持板64の幅は、台車フレーム61の枠内の幅とほぼ等しくされる。よって支持板64は、幅方向については台車フレーム61の内側にぴったりと嵌合され、長さ方向については台車フレーム61との間に隙間69,70を空けた状態で嵌合される。支持板64は、台車フレーム61の枠内の長さ方向略中央に配置される。支持板64の上面は台車フレーム61の上面とほぼ面一に配置される。本実施形態の支持板64は木製であり、特に汎用材料であるベニヤ板からなる。
【0060】
ストッパ部材63は、汎用材料である木製の角材により形成され、支持板64上にボルト止め、接着等により固定される。ストッパ部材63は、台車フレーム61の幅方向に延び、支持板64の幅と同一の長さを有する。ストッパ部材63の長さ方向の両端面は、支持板64の左右の両側面とほぼ面一に配置される。
【0061】
支持板64上の長さ方向中央部において、前後一対のストッパ部材63が、互いに間隔を隔てて平行に設けられている。そしてこれら前後のストッパ部材63の間に支軸42を配置することにより、支軸42の回転時における長さ方向の転動を前後のストッパ部材63により規制するようになっている。前後のストッパ部材63の間隔は支軸42の直径Dとほぼ等しくされている。
【0062】
調節板65も、汎用材料である木製の板材により形成されている。本実施形態の調節板65は、単に台車フレーム61の上に載置されているだけで、台車フレーム61に固定されていない。但し、台車フレーム61に固定する変形例も可能である。
【0063】
調節板65は、台車フレーム61の左右の辺部71L,71Rの上にそれぞれ配置される。これら左右の調節板65を掛け渡して、支軸42が調節板65の上に着脱可能かつ回転可能に載置される。こうして支軸42は、台車フレーム61の幅方向に平行な状態で台車フレーム61上に載置される。
【0064】
調節板65は、台車フレーム61の長さ方向に延び、支軸42の直径Dより長い長さと、辺部71L,71Rの幅と略同一の幅とを有する(図4参照)。調節板65の幅方向両側面は、辺部71L,71Rの幅方向両側面とほぼ面一に配置される。
【0065】
図9に示すように、支軸42が調節板65に載置され回転板41が水平位置Paにあるとき、ストッパ部材63が回転板41に干渉せず回転板41より低い高さとなるよう、調節板65の厚さtcが設定されている。言い換えれば、ストッパ部材63の高さHsと調節板65の高さHcとの差ΔHs(=Hs-Hc)は、水平位置Paにある回転板41と支軸42の下端との間の高さ方向の距離ΔHkよりも小さくされる。これによる利点は後述する。
【0066】
図3に示すように、支軸42が調節板65に載置されたとき、支軸フランジ板43は左右の辺部71L,71Rの上面より下方の位置まで存在する。これにより、支軸42が台車フレーム61に対し左右方向に位置ずれしたり、平面視で傾いたりしようとしても、支軸フランジ板43が辺部71L,71Rに当接することでそれらを抑制できる。
【0067】
こうして、台車フレーム61に対する支軸42の前後方向の位置ずれは、前後のストッパ部材63によって抑制され、左右方向の位置ずれは左右の支軸フランジ板43によって抑制される。そして支軸42は、台車フレーム61の幅方向に平行な一定位置に保持される。
【0068】
次に、アンローダ100を図1に示した通常状態から図2に示したブームレスト状態にするときのブームレスト作業方法を説明する。
【0069】
前述したように、通常状態から旋回部2が旋回され、ブーム18が地面(岸壁Q)の上方に位置される。そして垂直管21が鉛直状態とされ、ノズル23が地上に置かれる。これと並行して、台車装置60が用意される。
【0070】
次に、ノズル23と可撓管24が順次取り外される。これにより垂直管21は図1に符号gで示す、可撓管24と垂直管21の接続位置で分割され、下側部分21Bが空中に保持される。この下側部分21Bに、治具40が取り付けられる。
【0071】
図10に、治具40が取り付けられた垂直管21の下側部分21Bを示す。下側部分21Bは基本的に、上側部分21Aに対し自由に昇降可能であり、自重により下降しようとする。しかし、垂直伸縮装置25のワイヤー26が下側部分21Bを引っ張り上げているので、下側部分21Bの下降が防止される。ワイヤー26はぴんと張った緊張状態にあり、下側部分21Bは上側部分21Aから所定長さΔLだけ下方に突出した状態にある。この長さΔLを最大突出長という。
【0072】
下側部分21Bの下端面には可撓管24との接続のためのフランジが設けられており、このフランジに治具40の回転板41が重ね合わされ、複数の締結具すなわちボルト72およびナット73により固定される。このとき、回転板41の表面51が下側部分21Bのフランジに重ね合わされ、ボルト72は下方から、回転板41のボルト挿通穴48およびフランジのボルト挿通穴に挿通される。ナット73は上方からボルト72に締め込まれる。
【0073】
このように、軽量な治具40を、空中に保持された(あるいは宙に浮かせた)下側部分21Bに取り付けるだけなので、作業が非常に容易である。
【0074】
次に、図11に示すように、ブーム18を下降させて垂直管21を鉛直状態のままゆっくりと下降させ、治具40の支軸42を、台車フレーム61上の左右の調節板65の上、かつ前後のストッパ部材63の間に載置する。これにより治具40が台車と合体され、下側部分21Bの重量が台車に預けられる。このとき、ワイヤー26が弛緩し、下側部分21Bが最大突出長ΔLより短い長さだけ上側部分21Aから突出するよう(つまり突出量がゼロより大きくΔL未満となるよう)、ブーム18の高さが調節される。
【0075】
図9を参照して説明したように、ストッパ部材63の高さHsと調節板65の高さHcとの差ΔHs(=Hs-Hc)は、水平位置Paにある回転板41と支軸42の下端との間の高さ方向の距離ΔHkよりも小さくされている。よって垂直管21を鉛直状態、回転板41を水平状態のまま、下降させて台車に載せることができ、このときのストッパ部材63の回転板41への干渉を防止することができる。そして回転板41ひいては垂直管21を傾けようとする無駄な力がストッパ部材63から付与されることを防止できる。
【0076】
この後、適宜のタイミングで、ワイヤー74が接続されたワイヤーフック52を、ワイヤー取付具44に取り付ける。図示例の場合、ワイヤー取付具44は支持板64より後方の隙間70に挿入され、台車側との干渉が防止される。なおワイヤーフック52は、垂直管21を下降させる前に取り付けてもよい。
【0077】
次に、図12に示すように、フォークリフト等の重機によりワイヤー74を矢印aの如く後方に引っ張り、台車装置60を矢印bの如く後方に走行移動させながら、ブーム18を徐々に下降させ、垂直管21を矢印cの如くゆっくりと傾斜させていく。このとき、垂直管21の重量を台車装置60に預けながら作業を行える。垂直管21の傾斜に伴って、治具40(特に回転板41と支軸42)が、支軸42を中心として、台車フレーム61上で回転する。支軸42は調節板65上で、前後移動をストッパ部材63により規制されながら転動(自転)する。台車フレーム61に加わる水平方向の力(水平荷重)は、台車装置60の走行移動により逃される。よって台車フレーム61には鉛直方向の力(垂直荷重)のみが付加されることになり、台車がバランスを崩したり転倒したりすることを防止できる。それ故、熟練した作業者でなくても、ブームレスト作業を安全かつ容易に行うことができる。
【0078】
この垂直管21の傾倒時、矢印dで示すように、上側部分21Aに対する下側部分21Bの突出量を変化させ、すなわち垂直管21を伸縮させながら作業を行う。これにより、重機による引っ張り力の大小の加減を見ながら作業を行え、作業の安全性および容易性を増すことができる。
【0079】
こうして最終的に、垂直管21が図13および図14に示すような水平状態とされる。そして図2に示したように、垂直管21の上端部が別の台車32に支持され、ブーム18の先端部が盤木31を介して地上に置かれると、ブームレスト作業が終了する。
【0080】
このように本実施形態のブームレスト作業方法は、次のステップを備える。
(1)台車装置60を用意する第1ステップ。
(2)垂直管21(具体的には下側部分21B)を空中に保持した状態で、垂直管21の下端部に治具40の回転板41を取り付ける第2ステップ。
(3)垂直管21と治具40を下降させ、支軸42を台車フレーム61上に載置する第3ステップ。
(4)ブーム18を下降させながら、回転板41を引っ張って台車装置60を走行移動させ、回転板41を回転させつつ垂直管21を傾斜させる第4ステップ。
【0081】
さて、現状のブームレスト作業では、汎用台車上に盤木を積み、盤木の上に垂直管の下端を載せ、ブームを下降させながら台車を引っ張り、垂直管を徐々に傾斜させ、最終的に水平の姿勢にする。そしてブームの先端部を、地上に置いた盤木の上に載せる。これによりブームの荷重が地上に預けられる。
【0082】
しかし、台車に付加される垂直荷重を把握することが難しく、ブームの下降と台車の引っ張り力とのバランスが崩れると、垂直管や台車に無理な力が掛かり、台車がバランスを崩して転倒し、垂直管や台車が破損する虞がある。また台車上に載せられる垂直管の下端は垂直管の傾斜に伴い受点の形状が変化するため、汎用的な台車ではその変化に対応できず台車を壊す虞がある。
【0083】
このように現状のブームレスト作業は比較的困難な危険を伴う作業であり、熟練した作業者が十分な時間を掛けて慎重に行わざるを得ないものである。
【0084】
一方、本実施形態によれば、垂直管21の傾斜に合わせて治具40が台車上で回転するので、上述のように台車がバランスを崩したり転倒したりすることを抑制ないし防止できる。よって熟練した作業者でなくてもブームレスト作業を安全かつ容易に行うことができる。
【0085】
また、台車装置60を治具40とそれ以外の台車側部分とに分割して構成し、治具40のみを予め垂直管21に取り付けられるようにしたので、ブームレスト作業を容易にすることができる。
【0086】
治具40は軽量(例えば20kg程度)であるので、取り扱いが容易であり、またシンプルであるので、安価に製作可能である。他方、台車側部分には汎用台車を利用できるので、台車装置60を全体として安価なものとすることができる。ブームレスト作業後は、治具40と台車側部分とを分割して保管できる。汎用台車は積み重ねることができるので、保管スペースの節約に有利である。
【0087】
ストッパ部材63と調節板65も、汎用の木材を使用できるので、低コスト化に有利であり、また現場合わせによる製作も容易に可能である。
【0088】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は様々考えられる。
【0089】
(1)例えば、図15に示すように、回転板41から肉抜き穴47を省略することも可能である。こうすると、肉抜き穴47を有する前述の回転板41より重くなるが、その分剛性を増すことができる。肉抜き穴47の省略に併せて、肉抜き穴47があった部位にボルト挿通穴48が追加で設けられる。
【0090】
(2)前記実施形態では、支軸42が断面円形の中空構造であったが、これに限らず、支軸42は他の断面形状(例えば正多角形)であってもよいし、中実構造であってもよい。
【0091】
(3)調節板65を省略し、支軸42を台車フレーム61上に直接載置してもよい。この場合、図9を参照して、ストッパ部材63の高さHsと調節板65の高さHcとの差ΔHs(=Hs-Hc)は、ストッパ部材63の高さHsと台車フレーム61の高さHdとの差に置き換えられる。
【0092】
(4)ストッパ部材63は、台車フレーム61上に設けてもよい。
【0093】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
100 ニューマチックアンローダ
18 ブーム
21 垂直管
40 治具
41 回転板
42 支軸
43 支軸フランジ板
44 ワイヤー取付具
47 肉抜き穴
60 台車装置
61 台車フレーム
62 キャスター
63 ストッパ部材
64 支持板
65 調節板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15