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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113879
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車載用カメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20240816BHJP
   H04N 23/51 20230101ALI20240816BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240816BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240816BHJP
【FI】
G03B17/02
H04N23/51
H04N23/57
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019138
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】町田 智
(72)【発明者】
【氏名】亀山 真吾
(72)【発明者】
【氏名】吉江 将之
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AJ04
2H044AJ06
2H100AA01
2H100BB06
2H100BB11
5C122EA55
5C122GE01
5C122GE05
5C122GE07
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】車載用カメラ及び車両の一部の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラの位置決め精度を向上する。
【解決手段】車載用カメラは、レンズを収容する鏡筒部と、鏡筒部の外周において光軸から離れる方向に突出した面状の溶着リングと、回路基板と、回路基板に配置された撮像素子と、少なくとも撮像素子と回路基板を収容する筐体部と、を備える。溶着リングは、第3面と、第3面と反対の第4面と、第3面において光軸方向に沿って第4面から離れる方向に突出した少なくとも3つの突起部と、を備える。少なくとも筐体部の第2筒形状の一端面は、溶着リングの第4面の第1固着領域に固着され、溶着リングの少なくとも3つの突起部のそれぞれは、溶着リングの第3面において、第4面の第1固着領域に対応する第3面の第1固着対応領域より、鏡筒部側に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って配置された少なくとも1つのレンズと、
第1筒形状であり、前記少なくとも1つのレンズを収容する鏡筒部と、
前記鏡筒部の外周において前記光軸から離れる方向に突出した面状のフランジ部と、
第1面と、前記第1面と反対の第2面とを有する回路基板と、
前記回路基板の前記第1面に配置され、前記光軸上に配置された撮像素子と、
少なくとも一部が第2筒形状であり、少なくとも前記撮像素子と前記回路基板を収容する筐体部と、を備え、
前記フランジ部は、所定の波長の光に対して第1光透過率を備えた第1樹脂で構成され、第3面と、前記第3面と反対の第4面と、前記第3面において前記光軸方向に沿って前記第4面から離れる方向に突出した少なくとも3つの突起部と、を備え、
少なくとも前記筐体部の前記第2筒形状の一端面は、前記所定の波長の光に対して、前記第1光透過率より小さい第2光透過率を備えた第2樹脂で構成され、前記フランジ部の前記第4面の固着領域に固着され、
前記フランジ部の前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは前記フランジ部の前記第3面において、前記第4面の前記固着領域に対応する前記第3面の固着対応領域より、前記鏡筒部側に配置された、
車載用カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用カメラであって、
前記フランジ部の前記第4面の前記固着領域と、前記筐体部の前記第2筒形状の前記一端面とは、レーザ溶着によって固着された、
車載用カメラ。
【請求項3】
請求項1に記載の車載用カメラであって、
前記フランジ部の前記第4面の前記固着領域を、第1固着領域とし、
前記フランジ部の前記第3面の前記固着対応領域を、第1固着対応領域とし、
前記フランジ部を、第1フランジ部とし、
前記鏡筒部は、前記鏡筒部の外周において前記光軸から離れる方向に突出し、第3樹脂で構成された第2フランジ部を備え、
前記第3樹脂は、前記所定の波長の光に対して、前記第1光透過率より小さい第3光透過率を備え、
前記第1フランジ部は、前記第1樹脂で形成されたリング形状部材を前記第2フランジ部に固着することにより構成され、
前記第1フランジ部の前記リング形状部材は、前記第3面と前記第4面を備える面状であり、
前記リング形状部材の前記第4面は、前記第1固着領域において前記筐体部の前記第2筒形状の前記一端面と固着されるとともに、第2固着領域において前記第2フランジ部と固着され、
前記第1フランジ部の前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは前記第3面において、前記第4面の前記第2固着領域に対応する前記第3面の第2固着対応領域より、前記鏡筒部側に配置された、
車載用カメラ。
【請求項4】
請求項3に記載の車載用カメラであって、
前記第1フランジ部の前記第4面の前記第2固着領域と、前記第2フランジ部とは、レーザ溶着によって固着された、
車載用カメラ。
【請求項5】
請求項3に記載の車載用カメラであって、
前記第2固着領域は、前記第1固着領域よりも、前記鏡筒部側に位置する、
車載用カメラ。
【請求項6】
請求項1に記載の車載用カメラであって、
前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは、前記光軸方向において所定の高さを備える、
車載用カメラ。
【請求項7】
請求項1に記載の車載用カメラであって、
前記鏡筒部の前記第1筒形状の、前記光軸方向に直交する第1断面は、円状であり、
前記筐体部の前記第2筒形状の、前記光軸方向に直交する第2断面は、四角形状であり、
前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは、前記四角形状の角に対応して配置された、
車載用カメラ。
【請求項8】
請求項7に記載の車載用カメラであって、
前記筐体部の前記第2筒形状の前記第2断面の前記四角形状は、少なくとも一つの角に切り欠きがあり、
前記切り欠きがある前記少なくとも一つの角に対応して配置された、前記少なくとも3つの突起部の内の一つは、
前記切り欠きの無い角に対応して配置された、前記少なくとも3つの突起部の内の一つより、前記鏡筒部に近く配置された、
車載用カメラ。
【請求項9】
請求項1に記載の車載用カメラであって、
前記少なくとも3つの突起部は、4つの突起部を備える、
車載用カメラ。
【請求項10】
請求項1に記載の車載用カメラであって、
前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは、車両の一部に当接するように構成された、
車載用カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性向上、自動運転機能の導入などの要請に伴い、車両に搭載され、車両の内外を撮影する車載用カメラの開発が活発になっている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-197798号公報
【特許文献2】実用新案登録第3234888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に求められる安全性、自動運転機能などに関する要求レベルは向上する一方であり、車載用カメラについてもさらなる性能向上などが求められている。
【0005】
本開示は、新たな車載用カメラを提供する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、光軸に沿って配置された少なくとも1つのレンズと、第1筒形状であり、前記少なくとも1つのレンズを収容する鏡筒部と、前記鏡筒部の外周において前記光軸から離れる方向に突出した面状のフランジ部と、第1面と、前記第1面と反対の第2面とを有する回路基板と、前記回路基板の前記第1面に配置され、前記光軸上に配置された撮像素子と、少なくとも一部が第2筒形状であり、少なくとも前記撮像素子と前記回路基板を収容する筐体部と、を備え、前記フランジ部は、所定の波長の光に対して第1光透過率を備えた第1樹脂で構成され、第3面と、前記第3面と反対の第4面と、前記第3面において前記光軸方向に沿って前記第4面から離れる方向に突出した少なくとも3つの突起部と、を備え、少なくとも前記筐体部の前記第2筒形状の一端面は、前記所定の波長の光に対して、前記第1光透過率より小さい第2光透過率を備えた第2樹脂で構成され、前記フランジ部の前記第4面の固着領域に固着され、前記フランジ部の前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは前記フランジ部の前記第3面において、前記第4面の前記固着領域に対応する前記第3面の固着対応領域より、前記鏡筒部側に配置される、車載用カメラを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車載用カメラにおいて、少なくとも3つの突起部が車両の一部に当接し、車両との位置関係が定められるため、車載用カメラ及び車両の一部の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラの位置決め精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施の形態に係る車載用カメラの上面斜視図
図1B】実施の形態に係る車載用カメラの下面斜視図
図2】実施の形態に係る車載用カメラの分解斜視図
図3】実施の形態に係る車載用カメラの上面図
図4図3のA-A線に沿った断面図
図5図4のX部分の拡大図
図6】車載用カメラが車体に取り付けられた状態での断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を適宜参照しつつ、本開示に係る車載用カメラを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1Aは、実施の形態に係る車載用カメラ100の上面斜視図である。図1Bは、実施の形態に係る車載用カメラ100の下面斜視図である。図2は、実施の形態に係る車載用カメラ100の分解斜視図である。図3は、実施の形態に係る車載用カメラ100の上面図である。
【0011】
車載用カメラ100は、車両の車体の前後端、左右側面などに設置され、車両の車体の内外を撮影(撮像)する撮影装置である。近年、車両の安全性向上、自動運転機能の導入などの要請に伴い、車載用カメラ100の開発が活発になっている。
【0012】
本実施の形態の車載用カメラ100は、少なくとも1つのレンズ32と、鏡筒部30と、溶着リング20と、回路基板40(図2参照)と、撮像素子50(図2参照)と、筐体部60とを備えている。
【0013】
少なくとも1つのレンズ32は、図3の紙面に垂直な方向に延びる光軸に沿って配置される。鏡筒部30は、少なくとも鏡筒本体部31が第1筒形状を有し、鏡筒本体部31の内部において少なくとも1つのレンズ32を収容する。複数のレンズが鏡筒部30に設けられる場合、各レンズは、それぞれの光軸を一致させた状態に並べられ、車両の車体の内外の撮像に用いられるレンズ群を構成している。
【0014】
さらに鏡筒部30は、鏡筒本体部31の外周において光軸から離れる方向に突出し、第3樹脂で構成された第2フランジ部34を備えている。第3樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂などを用いることができるように構成される。なお、第3樹脂として用いる樹脂は、1種類であっても複数種類であってもよい。また、主となる樹脂に、レーザ光を吸収する吸収剤或いは着色材料又はその両方を含有させてもよい。
【0015】
第3樹脂は、所定の波長の光に対して、後述する溶着リング20を構成する第1樹脂の第1光透過率より小さい第3光透過率を有している。第2フランジ部34は、鏡筒本体部31と一体的に成形されてよく、この場合、鏡筒本体部31も第3樹脂で構成される。
【0016】
第3樹脂の第3光透過率は、例えば350nm~1200nmの波長域の光に対して、0%以上5%以下であってもよい。特に、第3樹脂の第3光透過率は、例えば第1樹脂が透過するレーザ光の波長域である800nm~1200nmの光に対して、0%以上5%以下である。
【0017】
面状の溶着リング20は、鏡筒部30の外周において光軸から離れる方向に突出し、見かけ上、鏡筒部30から突出するフランジ部を構成する。溶着リング20はフランジ部を構成するが、鏡筒部30の第2フランジ部34に対して、第1フランジ部とも呼ばれる。本実施の形態において、溶着リング20は、平面視で矩形環状の平板であるリング形状部材により構成され、鏡筒部30及び筐体部60に対し固着されている。溶着リング20の内周面は、鏡筒部30の外周面と対向している。溶着リング20の内径は、鏡筒部30が挿入可能な長さを有する。
【0018】
溶着リング20は、車載用カメラ100の外側に向いた第3面23と、第3面23と反対側であって、筐体部60の側に向いた第4面24(図4参照)を有する。更に溶着リング20は、第3面23において配置された少なくとも3つの突起部22、本例では4つの突起部22(22a、22b、22c、22d)を備える。突起部22は、レンズ32の光軸方向に沿って第4面24から離れた方向に突出している(図4参照)。突起部22の役割は後述する。
【0019】
溶着リング20は、所定の波長の光に対し、第1光透過率を有する第1樹脂で構成される。例えば、第1樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などから形成される。ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。なお、用いる第1樹脂は、1種類であっても複数種類であってもよい。また、後述するレーザ溶着を用いる場合、一定水準以上の透過性能を実現可能であれば、主となる光透過性樹脂に、着色材料或いは充填材又はその両方を含有させてもよい。
【0020】
第1樹脂の第1光透過率は、例えばレーザ溶着に用いられるレーザ光の波長である800nm~1200nmの波長域の光に対して、20%以上である。また、第1樹脂の第1光透過率は、例えば可視光の波長域である350nm~800nmの光に対して、0%以上5%以下である。
【0021】
なお、溶着リング20は本実施の形態において平板矩形環状であるが、これに限らず、溶着部分が平板状であればよい。したがって、矩形環状のような多角形に限らず、円環状、楕円の環状などのように円環状以外の環状であってもよい。また、溶着部以外の部分については段差、厚みなどが一様でなくてもよい。
【0022】
回路基板40は、筐体部60の内部空間に配置され、鏡筒部30に対向する第1面41と、第1面41と反対側に位置する第2面42(図4参照)とを有する。撮像素子50は、回路基板40の第1面41上であって、レンズ32の光軸上に配置され、レンズ32を透過した光を撮像する。
【0023】
筐体部60は、内部空間を有する少なくとも一部が第2筒形状を有する部材であり、大径筒状部61と小径筒状部62とを有する。レンズ32の光軸に対して垂直な断面で見たときに、大径筒状部61は、小径筒状部62に比べて大きな断面積を有し、ともに矩形の断面を有する。大径筒状部61は、上述した回路基板40及び撮像素子50を少なくとも収容する。小径筒状部62は、もっぱら車載用カメラ100の外部との電気的接続を確保するコネクタ(図示せず)を収容する。大径筒状部61と小径筒状部62とは、一体成形することが可能であるが、あらかじめ用意された個別の大径筒状部61と小径筒状部62とを溶着若しくはビス止めなどの方法により接合してもよい。なお、筐体部60は本実施の形態において矩形筒状であるが、これに限らず、矩形以外の多角形の筒状、円形や楕円形の筒状、その他の形状の筒であってもよい。
【0024】
筐体部60は、少なくとも第2筒形状の一端面64、すなわち大径筒状部61の一端面64が、所定の波長の光に対し、溶着リング20の第1光透過率より小さい第2光透過率を有する第2樹脂で構成される。筐体部60の大部分が金属により構成され、一端面64の部分のみが樹脂であってもよい。一端面64は、溶着リング20の第4面24と固着される(図4参照)。
【0025】
第2樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂などを用いることができる。なお、用いる樹脂は、1種類であっても複数種類であってもよい。また、後述するレーザ溶着を用いる場合、主となる光吸収性樹脂に、レーザ光を吸収する吸収剤或いは着色材料又はその両方を含有させてもよい。
【0026】
第2樹脂の第2光透過率は、例えば350nm~1200nmの波長域の光に対して、0%以上5%以下である。
【0027】
図4は、図3のA-A線に沿った断面図を示す。図5は、図4のX部分の拡大図を示す。溶着リング20は、鏡筒部30及び筐体部60に対し固着されている。この固着は、例えばレーザ溶着による溶着により実現可能である。
【0028】
一般的なレーザ溶着方法においては、樹脂に圧力を加えた状態で、光透過性樹脂にレーザを照射すると、レーザは光透過性樹脂では吸収されずに透過し、光吸収性樹脂の表面で吸収される。吸収されたレーザのエネルギーは熱に変換され、光吸収性樹脂の表面は加熱される。更には、熱伝導により、光吸収性樹脂の表面に当接する光透過性樹脂の表面も加熱される。これにより、光吸収性樹脂と光透過性樹脂の境界面において樹脂が溶融される。レーザの照射を停止すると、溶融された樹脂が固化し、両樹脂が溶着される。
【0029】
本実施の形態においては、まず、第1フランジ部を構成する溶着リング20の第4面24を、鏡筒部30の第2フランジ部34に押圧した状態でレーザを照射し、溶着リング20の第4面24と第2フランジ部34とを溶着する。その後、第2フランジ部34と溶着した溶着リング20の第4面24を筐体部60の一端面64に押圧した状態でレーザを照射し、第2フランジ部34と溶着した溶着リング20の第4面24と一端面64とを溶着する。
【0030】
筐体部60の一端面64は、筐体部60の筒形状の全周に渡り、溶着リング20と固着(レーザ溶着を含む)されることが望ましい。これにより、溶着リング20と筐体部60とを強固に固着することができる。
【0031】
なお、鏡筒部30と溶着リング20は、筐体部60への取り付け前に、あらかじめ結合された一つの部材であってもよい。この結合は上述したレーザ溶着により実現してもよい。このような部材を用いることにより、鏡筒部30と溶着リング20との固着工程を省略できるため、車載用カメラ100の組立工程を簡略化することができる。
【0032】
図5を用いて溶着の態様の詳細について説明する。
【0033】
筐体部60の一端面64は、フランジ部(第1フランジ部)を構成する溶着リング20の第4面24の固着領域24aに、レーザ溶着によって固着されている。これにより、溶着リング20を筐体部60に対し強固に固着することができる。
【0034】
そして、溶着リング20の少なくとも3つの突起部22、本例では4つの突起部22(図5では突起部22d)のそれぞれは、溶着リング20の第3面23において、第4面24の固着領域24aに対応する第3面23の固着対応領域23aより、鏡筒部30側に配置されている。固着領域24aと固着対応領域23aとは、溶着リング20の厚み方向において対応した位置に存在しており、ほぼ光軸方向に沿って存在している。
【0035】
さらに、溶着リング20の第4面24の固着領域24aを、第1固着領域24aと定義し、溶着リング20の第3面23の固着対応領域23aを、第1固着対応領域23aと定義する。すると、溶着リング20の第4面24は、第1固着領域24aにおいて筐体部60の第2筒形状の一端面64と固着される。さらに、溶着リング20の第4面24は、第2固着領域24bにおいて、第2フランジ部34と固着される。第2固着領域24bは、第1固着領域24aよりも鏡筒部30側に位置する。
【0036】
そして、溶着リング20の少なくとも3つの突起部22、本例では4つの突起部22(図5では突起部22d)のそれぞれは、溶着リング20の第3面23において、第4面24の第2固着領域24bに対応する第3面23の第2固着対応領域23bより、鏡筒部30側に配置されている。第2固着領域24bと第2固着対応領域23bは、溶着リング20の厚み方向において対応した位置に存在しており、ほぼ光軸方向に沿って存在している。
【0037】
これにより、鏡筒部30の第2フランジ部34と筐体部60の一端面64が、溶着リング20に固着されるため、鏡筒部30と溶着リング20と筐体部60とを、一体に組み立てることができる。
【0038】
当然ながら、溶着リング20の第4面24の第2固着領域24bと、第2フランジ部34とは、レーザ溶着によって固着される。溶着リング20と第2フランジ部34とを強固に固着することができる。
【0039】
また、第2固着領域24bは、第1固着領域24aよりも鏡筒部30側に位置している。よって、鏡筒部30と溶着リング20とを、筐体部60の内側において固着することができる。
【0040】
図6は、実施の形態の車載用カメラ100が、車両の一部である車体200に取り付けられた状態での断面図を示す。弾性部材により構成されたブラケット203が、ねじ210を用いて車載用カメラ100に固定される。ブラケット203の係合突起204が、車体200から突出した取り付け部201の係合穴202に係合することにより、車載用カメラ100が車体200に取り付けられる。
【0041】
車載用カメラ100の取り付け時においては、少なくとも3つの突起部22、本例では4つの突起部22(22a、22b、22c、22d)が車体200に当接し、車両との位置関係が定められる。よって、車載用カメラ100及び車体200の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラ100の位置決め精度を向上することができ、また車載用カメラ100の撮像画像(撮像映像)のぶれも抑制可能となる。
【0042】
また、各突起部22の高さ寸法を変更することにより、車両に対する車載用カメラ100の搭載傾きを任意に調整することができる。
【0043】
また、図6において説明した様に、各突起部22は、固着領域24aと固着対応領域23aを避けて配置されるため、溶着リング20と鏡筒部30及び筐体部60との固着の際に、突起部22が破損するのを抑制することができる。
【0044】
さらに、各突起部22は、溶着リング20の第3面23において、第4面24の第2固着領域24bに対応する第3面23の第2固着対応領域23bより、鏡筒部30側に配置されている。すなわち、各突起部22が、第1固着領域24a及び第1固着対応領域23aならびに第2固着領域24b及び第2固着対応領域23bを避けて配置されるため、溶着リング20、鏡筒部30、筐体部60の固着の際に、突起部22が破損するのを抑制することができる。
【0045】
また、少なくとも3つの突起部22のそれぞれは、光軸方向において所定の高さを備えている。この高さは、溶着リング20の第3面23から光軸方向に沿った高さである。これにより、車載用カメラ100の位置決め精度を向上することができる。なお、突起部22の形状は円筒状であるが、突起部22の形状は限定されず、半球状等であってもよい。
【0046】
実施の形態においては、鏡筒部30の第1筒形状の光軸方向に直交する第1断面は、円状であり、筐体部60の第2筒形状の光軸方向に直交する第2断面は四角形状である。これに対応して、少なくとも3つの突起部22のそれぞれは、四角形状の角に対応して配置されている。これにより、車載用カメラ100を車体200に対し、安定的に位置決めすることができる。
【0047】
さらに実施の形態において、筐体部60の第2断面の四角形状は、少なくとも一つの角に頂点を含む角を切り落として形成される切り欠き66を有する。ここで、少なくとも3つの突起部22の内の一つである突起部22aは、切り欠き66がある少なくとも一つの角に対応して配置されている。切り欠き66は、例えば筐体部60の成型時に形成することができる。
【0048】
そして、突起部22aは、切り欠き66の無い角に対応して配置された、少なくとも3つの突起部22b、22c、22dの内の一つより、鏡筒部30の近くに配置されている。特に本実施の形態においては、突起部22aは、3つの突起部22b、22c、22dのすべてより、鏡筒部30の近くに配置されている。
【0049】
これにより、突起部22の配置を維持しつつ、切り欠き66により車載用カメラ100の正しい姿勢、特に光軸に垂直な面における周方向における位置を確保しながら、車載用カメラ100を車体200に取り付けることができる。また、溶着リング20も切り欠き26を備えるとともに、鏡筒部30も第2フランジ部34の角において切り欠き36を備えている。切り欠き26及び切り欠き36が、切り欠き66に対応して配置される。
【0050】
上述した様に、少なくとも3つの突起部22は、4つの突起部22a、22b、22c、22dを備える。これにより、車載用カメラ100を車体200に対し、より安定的に位置決めすることができる。もちろん突起部22の数は少なくとも3つであればよいが、5つ以上であってもよい。
【0051】
図6に示す様に、少なくとも3つの突起部22のそれぞれは、車体200に当接するように構成される。これにより、少なくとも3つの突起部22が車体200に当接し、車両との位置関係が定められるため、車載用カメラ100及び車体200の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラ100の位置決め精度を向上することができる。
【0052】
また、各突起部22の高さ寸法を変更することにより、車両に対する車載用カメラ100の搭載傾きを任意に調整することができる。
【0053】
以上説明したように、本開示に係る車載用カメラは、少なくとも以下の事項に係る特徴を有する。なお、括弧内には、上記した実施の形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
(1)本開示に係る車載用カメラは、
光軸に沿って配置された少なくとも1つのレンズ(レンズ32)と、
第1筒形状であり、前記少なくとも1つのレンズを収容する鏡筒部(鏡筒部30)と、
前記鏡筒部の外周において前記光軸から離れる方向に突出した面状のフランジ部(溶着リング20)と、
第1面(第1面41)と、前記第1面と反対の第2面(第2面42)とを有する回路基板(回路基板40)と、
前記回路基板の前記第1面に配置され、前記光軸上に配置された撮像素子(撮像素子50)と、
少なくとも一部が第2筒形状であり、少なくとも前記撮像素子と前記回路基板を収容する筐体部(筐体部60)と、を備え、
前記フランジ部は、所定の波長の光に対して第1光透過率を備えた第1樹脂で構成され、第3面(第3面23)と、前記第3面と反対の第4面(第4面24)と、前記第3面において前記光軸方向に沿って前記第4面から離れる方向に突出した少なくとも3つの突起部(突起部22)と、を備え、
少なくとも前記筐体部の前記第2筒形状の一端面(一端面64)は、前記所定の波長の光に対して、前記第1光透過率より小さい第2光透過率を備えた第2樹脂で構成され、前記フランジ部の前記第4面の固着領域(第1固着領域24a)に固着され、
前記フランジ部の前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは前記フランジ部の前記第3面において、前記第4面の前記固着領域に対応する前記第3面の固着対応領域(第1固着対応領域23a)より、前記鏡筒部側に配置された、
車載用カメラ(車載用カメラ100)である。
【0055】
これにより、車載用カメラにおいて、少なくとも3つの突起部が車両の一部に当接し、車両との位置関係が定められるため、車載用カメラ及び車両の一部の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラの位置決め精度を向上することができる。
【0056】
また、各突起部の高さ寸法を変更することにより、車両に対する車載用カメラの搭載傾きを任意に調整することができる。
【0057】
また、各突起部が、固着領域および固着対応領域を避けて配置されるため、フランジ部と鏡筒部の固着の際に、溶着リングの厚みが均一な領域にて固着することができ、固着の品質を安定化することができる。また、突起部が破損するのを抑制することができる。
【0058】
(2)本開示に係る車載用カメラは、(1)に記載の車載用カメラであって、
前記フランジ部の前記第4面の前記固着領域と、前記筐体部の前記第2筒形状の前記一端面とは、レーザ溶着によって固着された、
車載用カメラである。
【0059】
これにより、車載用カメラにおいて、フランジ部を筐体部に対し強固に固着することができる。
【0060】
(3)本開示に係る車載用カメラは、(1)に記載の車載用カメラであって、
前記フランジ部の前記第4面の前記固着領域を、第1固着領域(第1固着領域24a)とし、
前記フランジ部の前記第3面の前記固着対応領域を、第1固着対応領域(第1固着対応領域23a)とし、
前記フランジ部を、第1フランジ部(溶着リング20)とし、
前記鏡筒部は、前記鏡筒部の外周において前記光軸から離れる方向に突出し、第3樹脂で構成された第2フランジ部(第2フランジ部34)を備え、
前記第3樹脂は、前記所定の波長の光に対して、前記第1光透過率より小さい第3光透過率を備え、
前記第1フランジ部は、前記第1樹脂で形成されたリング形状部材を前記第2フランジ部に固着することにより構成され、
前記第1フランジ部の前記リング形状部材は、前記第3面と前記第4面を備える面状であり、
前記リング形状部材の前記第4面は、前記第1固着領域において前記筐体部の前記第2筒形状の前記一端面と固着されるとともに、第2固着領域(第2固着領域24b)において前記第2フランジ部と固着され、
前記第1フランジ部の前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは前記第3面において、前記第4面の前記第2固着領域に対応する前記第3面の第2固着対応領域(第2固着対応領域23b)より、前記鏡筒部側に配置された、
車載用カメラである。
【0061】
これにより、車載用カメラにおいて、鏡筒部の第2フランジ部と筐体部の一端面が、第1フランジ部に固着されるため、鏡筒部と第1フランジ部と筐体部とを、一体に組み立てることができる。
【0062】
また、各突起部が、第1固着領域及び第1固着対応領域ならびに第2固着領域及び第2固着対応領域を避けて配置されるため、溶着リングの厚みが均一な領域にて固着することができ、固着の品質を安定化することができる。また、第1フランジ部、鏡筒部、筐体部の固着の際に、突起部が破損するのを抑制することができる。
【0063】
(4)本開示に係る車載用カメラは、(3)に記載の車載用カメラであって、
前記第1フランジ部の前記第4面の前記第2固着領域と、前記第2フランジ部とは、レーザ溶着によって固着された、
車載用カメラである。
【0064】
これにより、車載用カメラにおいて、第1フランジ部と第2フランジ部とを強固に固着することができる。
【0065】
(5)本開示に係る車載用カメラは、(3)に記載の車載用カメラであって、
前記第2固着領域は、前記第1固着領域よりも、前記鏡筒部側に位置する、
車載用カメラである。
【0066】
これにより、車載用カメラにおいて、鏡筒部と第1フランジ部とを、筐体部の内側において固着することができる。
【0067】
(6)本開示に係る車載用カメラは、(1)に記載の車載用カメラであって、
前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは、前記光軸方向において所定の高さを備える、
車載用カメラである。
【0068】
これにより、車載用カメラにおいて、車載用カメラの位置決め精度を向上することができる。
【0069】
(7)本開示に係る車載用カメラは、(1)に記載の車載用カメラであって、
前記鏡筒部の前記第1筒形状の、前記光軸方向に直交する第1断面は、円状であり、
前記筐体部の前記第2筒形状の、前記光軸方向に直交する第2断面は、四角形状であり、
前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは、前記四角形状の角に対応して配置された、
車載用カメラである。
【0070】
これにより、車載用カメラにおいて、車載用カメラを車両の一部に対し、安定的に位置決めすることができる。
【0071】
(8)本開示に係る車載用カメラは、(7)に記載の車載用カメラであって、
前記筐体部の前記第2筒形状の前記第2断面の前記四角形状は、少なくとも一つの角に切り欠き(切り欠き66)があり、
前記切り欠きがある前記少なくとも一つの角に対応して配置された、前記少なくとも3つの突起部の内の一つは、
前記切り欠きの無い角に対応して配置された、前記少なくとも3つの突起部の内の一つより、前記鏡筒部に近く配置された、
車載用カメラである。
【0072】
これにより、車載用カメラにおいて、突起部の配置を維持しつつ、切り欠きにより車載用カメラの正しい姿勢を確保しながら、車載用カメラを車両の一部に取り付けることができる。
【0073】
(9)本開示に係る車載用カメラは、(1)に記載の車載用カメラであって、
前記少なくとも3つの突起部は、4つの突起部(突起部22a、22b、22c、22d)を備える、
車載用カメラである。
【0074】
これにより、車載用カメラにおいて、車載用カメラを車両の一部に対し、より安定的に位置決めすることができる。
【0075】
(10)本開示に係る車載用カメラは、(1)に記載の車載用カメラであって、
前記少なくとも3つの突起部のそれぞれは、車両の一部(車体200)に当接するように構成された、
車載用カメラである。
【0076】
これにより、車載用カメラにおいて、少なくとも3つの突起部が車両の一部に当接し、車両との位置関係が定められるため、車載用カメラ及び車両の一部の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラの位置決め精度を向上することができる。
【0077】
また、各突起部の高さ寸法を変更することにより、車両に対する車載用カメラの搭載傾きを任意に調整することができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示は、車載用カメラ及び車両の一部の寸法誤差の影響を排除し、車載用カメラの位置決め精度を向上する、車載用カメラとして有用である。
【符号の説明】
【0080】
20 溶着リング(フランジ部、第1フランジ部)
22 突起部
23 第3面
23a 第1固着対応領域(固着対応領域)
23b 第2固着対応領域
24 第4面
24a 第1固着領域(固着領域)
24b 第2固着領域
26 切り欠き
30 鏡筒部
31 鏡筒本体部
32 レンズ
34 第2フランジ部
36 切り欠き
40 回路基板
41 第1面
42 第2面
50 撮像素子
60 筐体部
61 大径筒状部
62 小径筒状部
66 切り欠き
100 車載用カメラ
200 車体(車両の一部)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6