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特開2024-113880硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113880
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240816BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20240816BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20240816BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240816BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08L33/10
C08K5/101
C08F265/06
C09D133/04
C09D7/63
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019142
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山澤 英人
(72)【発明者】
【氏名】小高 一義
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J011
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH46
4F100EH46A
4F100EJ08
4F100EJ08A
4F100EJ65
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JA07
4F100JB12
4F100JB12A
4F100JK10
4F100JK12
4F100JL06
4F100YY00A
4J002AB022
4J002BD082
4J002BG051
4J002EG047
4J002EH106
4J002EK007
4J002EN057
4J002EV127
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD147
4J002FD200
4J002GF00
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GL00
4J002GP00
4J002GQ00
4J011PA69
4J011PC02
4J011PC08
4J026AA45
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA30
4J026BB03
4J026BB04
4J026DA03
4J026DA07
4J026DA12
4J026DB16
4J026DB25
4J026FA05
4J026GA07
4J026GA08
4J038CG141
4J038JB01
4J038NA11
4J038NA12
4J038NA24
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】塗装作業性が良好であり、耐汚染性及び耐衝撃性がバランス良く優れた硬化物を形成できる硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物及び前記硬化物を含む積層体を提供する。
【解決手段】分子内に炭素数2~6個のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(A)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(B)と、炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を共重合成分として0~10質量%含むアクリル重合体(C)と、還元剤(D)と、を含み、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、化合物(A)及び化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びにアクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、化合物(A)を15~90質量部含む硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に炭素数2~6個のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(A)と、
水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(B)と、
炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を共重合成分として0~10質量%含むアクリル重合体(C)と、
還元剤(D)と、を含み、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記アクリル重合体(C)、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びに前記アクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、前記化合物(A)を15~90質量部含む硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記アクリル重合体(C)、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びに前記アクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、前記化合物(A)を25~60質量部含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記アクリル重合体(C)、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びに前記アクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、前記化合物(B)を20~70質量部含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
B型粘度計を用いて測定した23℃、回転速度60rpmにおける粘度が50~500mPa・sである請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
B型粘度計を用いて測定した23℃、回転速度60rpmにおける粘度が75~400mPa・sである請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記化合物(A)が(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルから選ばれる少なくとも一種を含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記化合物(A)がメタクリル酸-iso-ブチルを含む請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記化合物(B)が、ヒドロキシアルキル基の炭素数が2~5であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
被覆塗料用である、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物の層を含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物及び前記硬化物を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系の硬化性樹脂組成物は、低温硬化性、耐候性及び耐薬品性に優れることから、床面、壁面又は道路の舗装面等に塗布され、硬化されて、被覆材として用いられてきた。
例えば、特許文献1には、ウレタン(メタ)アクリレート(a)と重合性単量体(b)を含む樹脂(A)と、充填材(B)と、チクソトロピー性付与剤(C)とを必須とする樹脂モルタル組成物及び該樹脂モルタル組成物の硬化物が記載されている。そして、その組成物は、速硬化性に優れ、一度に厚塗りが可能であり、施工性が良好であり、その硬化物は、ゴム弾性や高伸張性、高復元性等が充分な軟質であることが記載されている。しかし、前記樹脂モルタル組成物は、重合性単量体(b)が引火性の高いメタクリル酸メチルを主成分としており、引火の可能性を有している。
【0003】
特許文献2には、炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレート(A)と、数平均分子量が3,000~18,000であるウレタン(メタ)アクリレート(B)と、前記成分(B)以外の重合体を含むシラップ組成物が記載されている。そして、その組成物は、塗装作業性が良好であり、その硬化物は、耐汚染性、耐衝撃性、及び引張破壊強度と引張破断伸度のバランスに優れていることが記載されている。しかし、前記シラップ組成物は、前記成分(A)が引火性の高いメタクリル酸メチルを主成分としている。
【0004】
一方、メタクリル酸メチルを主成分として含まないアクリル系硬化性組物が種々提案されている。
例えば、特許文献3には、液状アクリル系モノマー(A)及び粉体成分(B)を含有し、前記成分(A)がアルキルシクロヘキシル骨格を有する(メタ)アクリレート類を主成分とするアクリル系レジンコンクリート組成物が記載されている。
【0005】
特許文献4には、(メタ)アクリレート単官能化合物(A)、アクリル系重合体(B)、及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能化合物(C)を含み、さらに可塑剤(D)を任意成分として含み、前記成分(A)が、ヘテロ環を有する(メタ)アクリレート単官能化合物(a1)としてメタクリル酸テトラヒドロフルフリルを含む路面被覆用シラップ組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-083845号公報
【特許文献2】特開2022-78856号公報
【特許文献3】特開平01-141851号公報
【特許文献4】特開2015-78264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の組成物を硬化して得られる硬化物は、表面硬度が不十分であるためにタイヤ痕が付着しやすく耐汚染性の改善の余地が認められた。また、特許文献1及び2に記載の組成物は、引火性の高いメタクリル酸メチルを含むため作業時の取り扱いに注意が必要である。
特許文献3に記載の組成物は、その硬化被膜の表面の硬化度が劣る傾向にある。
特許文献4に記載の組成物は、その硬化物の靭性が乏しく工具等の硬いものを落下させた際に、硬化物が割れることがあり耐衝撃性が十分でないという問題点を有していた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、塗装作業性が良好であり、耐汚染性及び耐衝撃性がバランス良く優れた硬化物を形成できる硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物及び前記硬化物を含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の[1]~[8]を要旨とする。
[1]分子内に炭素数2~6個のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(A)と、
水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(B)と、
炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を共重合成分として0~10質量%含むアクリル重合体(C)と、
還元剤(D)と、を含み、
前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記アクリル重合体(C)、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びに前記アクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、前記化合物(A)を15~90質量部含む硬化性樹脂組成物。
[2]前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記アクリル重合体(C)、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びに前記アクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、前記化合物(A)を25~60質量部含む[1]の硬化性樹脂組成物。
[3]前記化合物(A)、前記化合物(B)、前記アクリル重合体(C)、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外の任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、並びに前記アクリル重合体C以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、前記化合物(B)を20~70質量部含[1]又は[2]の硬化性樹脂組成物。
[4]B型粘度計を用いて測定した23℃、回転速度60rpmにおける粘度が50~500mPa・sである[1]~[3]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[5]B型粘度計を用いて測定した回転速度60rpmにおける粘度が75~400mPa・sである[1]~[4]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[6]前記化合物(A)が(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルから選ばれる少なくとも一種を含む[1]~[5]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[7]前記化合物(A)がメタクリル酸-iso-ブチルを含む[1]~[6]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[8]前記化合物(B)が、ヒドロキシアルキル基の炭素数が2~5であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、[1]~[7]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[9]被覆塗料用である、[1]~[8]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれかの硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
[11][10]の硬化物の層を含む積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗装作業性が良好であり、耐汚染性及び耐衝撃性がバランス良く優れた硬化物を形成できる硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物及び前記硬化物を含む積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲において適用される。
「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記の成分A、成分B、成分C及び成分Dを含み、必要に応じてさらに以下の任意成分として成分F及び/又は成分Gを含んでもよい。
この硬化性樹脂組成物と硬化剤(E)を混合することにより、該硬化性樹脂組成物を硬化することができる。
成分A:分子内に炭素数2~6個のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(A)
成分B:水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する1種以上の化合物(B)
成分C:炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を共重合成分として0~10質量%含むアクリル重合体(C)
成分D:還元剤(D)
成分E(硬化の際に加える成分):硬化剤(E)
成分F(任意成分):化合物(A)及び化合物(B)以外のラジカル重合性化合物(F)
成分G(任意成分):アクリル重合体(C)以外の重合体(G)
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分Aの含有率は、成分A、成分B、成分C、成分F及び成分Gの合計100質量部に対し、15~90質量部であり、25~60質量部が好ましく、30~55質量部がより好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分Bの含有率は、成分A、成分B、成分C、成分F及び成分Gの合計100質量部に対し、20~70質量部が好ましく、20~65質量部がより好ましく、30~65質量部がさらに好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分Cの含有率は、成分A、成分B、成分C、成分F及び成分Gの合計100質量部に対し、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、10~20質量部がさらに好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる還元剤(D)の含有量は、成分A、成分B、成分C、成分F及び成分Gの合計100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部がさらに好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物への硬化剤(E)の添加量は、化合物(A)、化合物(B)及びアクリル重合体(C)、並びに任意成分であるラジカル重合性化合物(F)及びアクリル重合体(C)以外の重合体(G)の合計100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部がさらに好ましい。
【0014】
(成分A:分子内に炭素数2~6個のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A))
本発明に用いられる成分Aは、分子内に炭素数2~6のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)である。引火性の観点から、化合物(A)中のアルキル基の炭素数は3以上が好ましく、4以上がより好ましい。一方、硬化物の表面硬度の観点から、化合物(A)中のアルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましい。また、硬化物の表面硬度の観点から、化合物(A)としては(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
【0015】
化合物(A)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル等の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル等の分岐状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。成分Aは、1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
これらの中でも、引火性と硬化物の表面硬度の観点から、(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸-iso-ブチルがより好ましい。
【0017】
(成分B:水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B))
本発明に用いられる成分Bは、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)であり、後述するアクリル重合体(C)の溶解性を向上する成分である。
【0018】
化合物(B)の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシノルボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等の環状構造を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
後述するアクリル重合体(C)の溶解性の点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ヒドロキシアルキル基の炭素数が2~5が好ましく、2~4がより好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。成分Bは、1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(成分C:アクリル重合体(C))
本発明に用いられる成分Cは、炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)を共重合成分として0~10質量%含むアクリル重合体(C)である。硬化性樹脂組成物がアクリル重合体(C)を含むことにより、その硬化物の表面硬度、耐汚染性及び耐衝撃性を良好にすることができる。
【0021】
アクリル重合体(C)は、炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)と化合物(c1)以外の単量体化合物(c2)との共重合体(ただし化合物(c1)由来の構成単位の含有率が10質量%以下)、または化合物(c1)以外の単量体化合物(c2)の(共)重合体である。この単量体化合物(c2)は(メタ)アクリル系単量体(化合物(c1)を除く)を含むことが好ましい。アクリル重合体(C)は、1種の重合体を単独で用いてもよく、2種以上の重合体を併用してもよい。
【0022】
ここで、アクリル重合体(C)における「アクリル重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)に由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体であり、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリレート(共)重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。
【0023】
前記(メタ)アクリル酸(共)重合体は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリル酸(共)重合体としては、例えば、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と他の単量体(ただし(メタ)アクリレートを除く)との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体が挙げられる。他の単量体を用いる場合、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記(メタ)アクリレート(共)重合体は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する単独重合体又は共重合体である。(メタ)アクリレート(共)重合体としては、例えば、1種以上の(メタ)アクリレートのみを重合した(共)重合体、1種以上の(メタ)アクリレートと他の単量体(ただし(メタ)アクリル酸を除く)との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体が挙げられる。他の単量体を用いる場合、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレート共重合体は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と(メタ)アクリレートに由来する構成単位とを有する共重合体である。
【0026】
アクリル重合体(C)における(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の含有率は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
また、アクリル重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系単量体としては、化合物(c1)の他に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、前記のビニル基を有する単量体等が挙げられ、中でも化合物(c1)、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
【0027】
アクリル重合体(C)の具体例としては、炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)と(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体(ただし化合物(c1)由来の構成単位の含有率が10質量%以下)、炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)と(メタ)アクリル酸メチルと他の単量体(化合物(c1)を除く)との共重合体(ただし化合物(c1)由来の構造単位の含有率が10質量%以下)、(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体、(メタ)アクリル酸メチルと他の単量体(化合物(c1)を除く)との共重合体が挙げられる。
【0028】
硬化物の表面硬度、耐汚染性の観点から、共重合成分である炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)のアルキル基の炭素数は2~8が好ましく、4~6がより好ましい。また、アクリル重合体(C)が共重合成分として化合物(c1)を含む場合は、その効果を十分に得る点から、化合物(c1)を共重合成分として1質量%以上含むことが好ましい。
【0029】
前記アクリル重合体(C)に用いられる、共重合成分である炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-iso-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-iso-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸-n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
【0030】
前記アクリル重合体(C)に用いられる、炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)と共重合する、化合物(c1)以外の化合物(c2)は、アクリル重合体としての特性が大きく損なわれず、化合物(c1)と共重合可能な化合物であれば、特に限定されない。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアクリル系単量体、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基を有する単量体が挙げられる。
【0031】
これらの化合物(モノマー)を、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来知られる各種の方法で重合することによって、共重合成分として炭素数2~18のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(c1)を0~10質量%含むアクリル重合体(C)を得ることができる。その質量平均分子量は、5000~200000が好ましく、10000~180000がより好ましい。
この質量平均分子量は、重合体を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0032】
(成分F:化合物(A)及び化合物(B)以外のラジカル重合性化合物(F))
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望の効果を損なわない範囲内であれば、任意成分として、前記化合物(A)及び前記化合物(B)以外のラジカル重合性化合物(F)を含んでいてもよい。
ラジカル重合性化合物(F)は、ラジカル重合性を有する化合物であれば特に限定されないが、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-iso-オクチル、(メタ)アクリル酸-n-ノニル、(メタ)アクリル酸-iso-ノニル、(メタ)アクリル酸-n-デシル、(メタ)アクリル酸-iso-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸-2-ジシクロペンテノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸フェニルフェニル、(メタ)アクリル酸フェニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸(1-ナフチル)メチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0033】
また、ラジカル重合性化合物(F)としては、以下の多官能の(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、ジ(メタ)アクリル酸ジメタノール、ジ(メタ)アクリル酸ポリカーボネートジオール等の2官能の(メタ)アクリレート;トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
また、ラジカル重合性化合物(F)の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル基含有単量体、アクリロイル基と、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格、水素添加されたポリブタジエン骨格又は水素添加されたポリイソプレン骨格とを有する化合物等が挙げられる。
アクリロイル基と、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格、水素添加されたポリブタジエン骨格又は水素添加されたポリイソプレン骨格とを有する化合物としては、1,2-ポリブタジエンアクリレート(商品名:NISSO-PB TE-2000、日本曹達(株)製)、1,2-ポリブタジエンアクリレートの水素添加物(商品名:NISSO-PB TEAI-1000、日本曹達(株)製)が挙げられる。
【0035】
また、ラジカル重合性化合物(F)の他の具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
ラジカル重合性化合物(F)としてのウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するために用いるポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物である。前記ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2価フェノールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加反応生成物類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、メチルペンタンジオール等の多価アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸等の多塩基酸及びその無水物との反応で得られるポリエステルポリオール類;アルキレングリコールとラクトンとから得られるポリラクトンジオール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオールと、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のカーボネート化剤との反応で得られるカーボネート結合を有するポリカーボネートジオール類等が挙げられる。これらポリオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するために用いるポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。また、これら化合物と水やトリメチロールプロパン等とのアダクト化合物や三量体環化化合物等もポリイソシアネートとして使用できる。これらポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成するために用いる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトンと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物等が挙げられる。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、必要に応じて、水酸基含有(メタ)アクリレートの代わりにアリル基含有アルコールを使用してもよい。このアリル基含有アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0041】
ラジカル重合性化合物(F)としてのエポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により得ることができる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0042】
ラジカル重合性化合物(F)としてのポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、多塩基酸またはその無水物と、多価アルコール化合物と、(メタ)アクリル酸またはグリシジル(メタ)アクリレートとを、公知の方法で反応させて得ることができる。多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としては、前記多塩基酸の無水物が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0043】
前記ウレタン(メタ)アクリレート、前記エポキシ(メタ)アクリレート、前記ポリエステル(メタ)アクリレートの分子量について特に制限は無いが、塗工時の作業性の観点から、その質量平均分子量が30000以下であることが好ましい。
この質量平均分子量は、重合体を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算した値を意味する。
【0044】
(成分G:アクリル重合体(C)以外の重合体(G)について)
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望の効果を損なわない範囲内であれば、前述のアクリル重合体(C)以外の重合体(G)をさらに含んでいてもよい
重合体(G)を含有することにより、硬化性樹脂組成物の粘度や硬化性を良好にでき、また硬化物の機械特性を良好にできる。
重合体(G)としては、セルロースエステル系樹脂や、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂等が挙げられる。成分(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
セルロースエステル系樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
また、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート、アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができる。
セルロースエステル系樹脂としては、前述した中でも、硬化性樹脂組成物の粘度や硬化性、またその硬化物の機械特性の点から、セルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合樹脂は、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合した共重合樹脂である。硬化物の機械特性の点から、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、10~50質量%であることが好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、50~90質量%であることが好ましい。
【0045】
(還元剤(D)及び硬化剤(E))
本発明の硬化性樹脂組成物は、レドックス系重合開始剤から発生するラジカルによって、重合反応が進行し、硬化物となる。レドックス系重合開始剤は、還元剤Dと硬化剤Eを併用した重合開始剤である。
【0046】
レドックス系重合開始剤に用いられる還元剤(D)と硬化剤(E)の組み合わせの例として、例えば、下記の(i)~(iv)が挙げられる。
【0047】
(i)還元剤(D)としての芳香族3級アミン類と、硬化剤(E)としてのジベンゾイルパーオキサイドとの組み合わせ。
芳香族3級アミン類としては、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N-(2-ヒドロキシエチル)N-メチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが挙げられる。
また、芳香族3級アミン類として、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン又はN,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
前記芳香族3級アミン類は、p(パラ)体に限定されず、o(オルト)体、m(メタ)体でもよい。
【0048】
(ii)還元(D)としての金属石鹸類と、硬化剤(E)としてのハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
金属石鹸類としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸ニッケル、コバルトアセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネートが挙げられる。
【0049】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドが挙げられる。
【0050】
(iii)還元剤(D)としてのチオ尿素化合物と、硬化剤(E)としてのハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
チオ尿素化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジプロピルチオ尿素、N,N’-ジ-n-ブチルチオ尿素、N,N’-ジラウリルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、1-アセチル-2-チオ尿素、1-ベンゾイル-2-チオ尿素が挙げられる。
ハイドロパーオキサイドとしては、前記(ii)に記載のハイドロパーオキサイドと同じ化合物を使用することができる。
【0051】
(iv)還元剤(D)としてのチオ尿素化合物と、硬化剤(E)としてのモノカーボネート型過酸化物との組み合わせ。
チオ尿素化合物としては、前記(ii)に記載のチオ尿素化合物と同じ化合物を使用することができる。
モノカーボネート型過酸化物としては、例えば、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンが挙げられる。
【0052】
還元剤(D)及び硬化剤(E)は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤(D)と硬化剤(E)との組み合わせとしては、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短くして生産性を向上する点から、前記(i)の組み合わせが好ましい。前記(i)の組み合わせにおける芳香族3級アミン類としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが好ましい。
【0053】
(他の成分)
本発明の硬化性樹脂組成物は、所望の効果を損なわない範囲内であれば、前述した化合物(A)、化合物(B)、重合体(C)、化合物(A)及び化合物(B)以外のラジカル重合性化合物(F)、アクリル重合体(C)以外の重合体(G)、還元剤(D)及び硬化剤(E)以外の成分(以下、「他の成分」とも記す)をさらに含んでいてもよい。
【0054】
他の成分としては、例えば、パラフィンワックス、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、揺変剤、消泡剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、その他の各種添加剤、硬化剤(E)以外のラジカル重合開始剤(熱重合開始剤、光重合開始剤等)が挙げられる。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物には、酸素による硬化阻害を抑制するために、パラフィンワックスを加えてもよい。
パラフィンワックスの融点は、40~80℃が好ましい。融点が40℃以上であれば、硬化性樹脂組成物を硬化させる際に十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。融点が80℃以下であれば、硬化性樹脂組成物を調製する際、パラフィンワックスの溶解性が良好となる。
【0056】
パラフィンワックスは、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。融点の異なるパラフィンワックスを併用することによって、温度が変わったときであっても、十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。パラフィンワックスを併用する際には、融点の差が5~20℃程度のパラフィンワックスを併用することが好ましい。
【0057】
パラフィンワックスとしては、表面硬化性を向上させる点で、有機溶剤に分散したワックスを用いてもよい。ワックスが有機溶剤に分散状態にあり、分散状態のワックスの粒子径が0.1~50μmに微粒子化されていることにより、空気遮断作用を効果的に発現することができる。分散状態のパラフィンワックスは市販されており、市販品のパラフィンワックスをそのまま本発明の硬化性樹脂組成物に添加することができる。
【0058】
パラフィンワックスの具体的な製品名としては、例えば、パラフィン115(商品名、カタログ記載の融点:47℃、日本精蝋(株)製)、パラフィン130(商品名、カタログ記載の融点:55℃、日本精蝋(株)製)、パラフィン150(商品名、カタログ記載の融点:66℃、日本精蝋(株)製)が挙げられる。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化時の収縮の低減を図るために可塑剤を加えてもよい。可塑剤を加えることで、化合物(A)、化合物(B)の配合割合を低くでき、硬化性樹脂組成物の硬化時の収縮を低減することができる。
【0060】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル等のフタル酸エステル;ジ-2-エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル;ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル;ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソペンチルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンジカルボン酸エステル;塩素化パラフィン等のパラフィン(ただし、前記パラフィンワックスを除く)が挙げられる。可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物の酸化劣化を防止するために、酸化防止剤を加えてもよい。酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト等のリン系酸化防止剤;ジヘキシルスルフィド、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物の光劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を加えてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-オクチルオキシベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノンの誘導体;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジターシャリイブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、又はこれらのハロゲン化物;フェニルサリシレート、p-ターシャリイブチルフェニルサリシレート等のフェニルサリシレート類が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物には、揺変剤を加えてもよい。揺変剤としては、例えば、ウレタンウレア系揺変剤、脂肪酸アマイド、有機ベントナイト等の有機系揺変剤;微粒子シリカ等の無機系揺変剤が挙げられる。揺変剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性樹脂組成物中の気泡を取り除くために、消泡剤を加えてもよい。消泡剤としては、例えば、アクリル系重合物を溶剤に溶解させたアクリル系消泡剤、ビニル系重合物を溶剤に溶解させたビニル系消泡剤が挙げられる。
【0065】
消泡剤の具体的な製品名としては、例えば、楠本化成(株)製のディスパロンシリーズである、OX-880EF、OX-881、OX-883、OX-8040、1922、1927、P-410EF、P-420、P-425、PD-7、1970、230、230HF、LF-1982;ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK-052、BYK-1752が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上するために、重合禁止剤を加えてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物には、アスファルトやコンクリート等の基材との密着性を向上するために、シランカップリング剤を加えてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上するために、熱重合開始剤を加えてもよい。熱重合開始剤としては、公知の過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。また、本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上するために、公知の光重合開始剤を加えてもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物は、成形時の硬化収縮の抑制、強度の向上、耐摩耗性等の耐久性の向上を目的として、他の成分として骨材をさらに含むことができる。骨材としては、例えば、砂、硅砂、川砂、寒水石、エメリー、大理石、炭酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化ホウ素粉、アルミナ、スラグ、ガラス粉末、セラミック骨材、陶器屑、着色骨材が挙げられる。骨材は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0070】
骨材の粒径は、硬化性樹脂組成物の硬化物の厚さにもよるが、ふるい分けによる粒径で5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。骨材の粒子径が5mm以下であれば、硬化物の柔軟性が得られやすい。骨材の粒度分布は、硬化性樹脂組成物の粘度、骨材の形状、成形する硬化物の厚さ等に起因するため、特に規定されるものではなく、適宜調整すればよい。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物は、着色のために顔料を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、有機顔料(アゾ顔料、フタロシアニン顔料等)、無機顔料(セラミック顔料、酸化鉄、酸化チタン等)が挙げられる。顔料は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0072】
[各成分の配合量]
本発明の硬化性樹脂組成物中の成分A(分子内に炭素数2~6個のアルキル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A))の含有量は、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、及びアクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、15~90質量部である。化合物(A)の含有量が15質量部以上であれば、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎず、塗工時の作業性を良好にできる。化合物(A)の含有量が90質量部以下であれば、硬化性樹脂組成物の硬化性が低くなりすぎず、良好な硬化物を得ることができる。化合物(A)の含有量は、25~60質量部が好ましく、30~55質量部がより好ましい。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物中の成分B(水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B))の含有量は、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、及びアクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、20~70質量部が好ましく、20~65質量部がより好ましく、30~65質量部がさらに好ましい。化合物(B)の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物中のアクリル重合体(C)の溶解性を向上させることができる。また、化合物(B)の含有量が少ないほど、耐衝撃性に優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物中のアクリル重合体(C)の含有量は、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、及びアクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましく、10~20質量部がさらに好ましい。アクリル重合体(C)の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化時間が短縮され、表面硬度、耐汚染性及び耐衝撃性に優れた硬化性樹脂組成物の硬化物を得ることができる。また、アクリル重合体(C)の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物の粘度が低くなる傾向がある。
【0075】
本発明の硬化性樹脂組成物中の還元剤(D)の含有量は、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、及びアクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましい。硬化性とポットライフや作業性とのバランス等の観点から、還元剤(D)の含有量は、前記合計100質量部に対し、0.2~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部がさらに好ましい。還元剤(D)の含有量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。また、還元剤(D)の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物のゲル化時間が長くなり、硬化性樹脂組成物の撹拌作業を行いやすくなる。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物への硬化剤(E)の添加量は、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、任意成分であるラジカル重合性化合物(F)、及びアクリル重合体(C)以外の任意成分である重合体(G)の合計100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部がさらに好ましい。硬化剤(E)の添加量が多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となる。また、硬化剤(E)の含有量が少ないほど、硬化性樹脂組成物のゲル化時間が長くなり、硬化性樹脂組成物の撹拌作業を行いやすくなる。
【0077】
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては、通常使用される撹拌機を用いて前述の各成分を混合撹拌する方法を挙げることができる。
【0078】
[硬化性樹脂組成物の粘度]
本発明の硬化性樹脂組成物の粘度は、23℃においてB型粘度計を用いた回転速度60rpmにおける測定値が50~500mPa・sであることが好ましく、75~400mPa・sであることがより好ましく、85~350mPa・sであることがさらに好ましい。硬化性樹脂組成物の粘度が上記範囲内であれば、塗工における作業性が良好となる。
【0079】
[硬化性樹脂組成物の硬化物を得る方法]
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る方法としては、以下の方法が好ましい。すなわち、まず、化合物(A)、化合物(B)、アクリル重合体(C)、及び還元剤(D)、並びに必要に応じてこれら以外の成分(ラジカル重合性化合物(F)、アクリル重合体(C)以外の重合体(G)、他の成分)を混合して硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物を調製する。そして、この硬化性樹脂組成物の硬化物を得る直前に、硬化剤(E)を、硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物に添加混合して重合反応を開始し、硬化物を得る。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物の塗工手段としては、ローラー、金鏝、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられる。
また、施工性の点から、硬化性樹脂組成物の塗工時の温度は-30℃~60℃が好ましく、-10℃~40℃がより好ましい。
硬化性樹脂組成物の硬化のための重合時間は10分間~300分間が好ましい。重合時間が20分間以上であると、硬化性樹脂組成物の良好な塗装作業性が得られ、300分間以下であると、全体の塗工作業時間を短くすることができる。還元剤(D)及び硬化剤(E)の配合量を塗工時の温度に応じて調整することで、重合時間を調整できる。
【0081】
重合反応を伴う塗工作業の終了後、養生を行うことが好ましい。養生温度は、-10℃~65℃が好ましく、10℃~60℃がより好ましく、15℃~55℃がさらに好ましい。養生温度を-10℃~65℃とすることで、硬化性樹脂組成物の重合反応が十分に進行し、硬化物の特性が良好となる。養生時間は、養生温度によって異なるが、10分間~24時間が好ましい。
【0082】
また、硬化物中の気泡を抑制するために、硬化性樹脂組成物に硬化剤を配合した後に、硬化性樹脂組成物に対して真空脱泡や振動脱泡等を実施してもよい。
【0083】
[硬化性樹脂組成物の用途]
本発明の硬化性樹脂組成物の用途としては、例えば、塗料、注型材料、バインダー材、接着剤、補修材、目地材が挙げられる。
【0084】
塗料としては、例えば、下記のものが挙げられる。道路用塗料:滑り止め用塗料、排水性塗料、遮熱塗料、道路マーキング用塗料、床版防水工法用塗料等。土木建築用塗料:壁面用塗料、床用塗料、屋根用塗料、橋梁用塗料、プラント用塗料、鉄構造物用塗料、コンクリート用塗料等。家具用塗料、装飾品用塗料、電子機器用塗料、モバイル機器用塗料、家電用塗料、防水用塗料、自動車用塗料、バイク用塗料、重機用塗料、鉄道車両用塗料、船舶用塗料等。
【0085】
注型材料として用いた場合に得られる成形品としては、例えば、フィルム、シート、レンズ、光導波路、封止材が挙げられる。成形品は、例えば、発光ダイオードモジュール、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピューター、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、プロジェクターに用いられる。成形品は、光学部材として用いることもできる。
【0086】
バインダー材としては、例えば、人工大理石、繊維強化プラスチック、点字タイル等のバインダーが挙げられる。
接着剤としては、例えば、ガラス用接着剤、樹脂用接着剤、金属用接着剤、第二世代のアクリル系接着剤(SGA)が挙げられる。
補修材としては、例えば、コンクリート用補修材、道路用補修材が挙げられる。
目地材としては、例えば、タイル用目地材、石材用目地材、コンクリート用目地材、アスファルト用目地材が挙げられる。
【0087】
これら用途のうち、本発明の硬化性樹脂組成物の用途としては、道路用塗料、土木建築用塗料、補修材、目地材等が好ましい。
【0088】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物を含む積層体であり、道路用塗料、土木建築用塗料、補修材、目地材等の土木建築用途における土木建築用積層体として好適に使用できる。
土木建築用積層体は、本発明の積層体として、アスファルトやコンクリート等の床面、壁面、道路の舗装面等の被覆材料として使用できる。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、例えば、施工面に直接形成した被覆層、施工面に下塗り層及び上塗り層の2層を少なくとも含む積層体を形成する場合の少なくとも一方の層に用いたり、施工面に下塗り層、中塗り層及び上塗り層の3層を少なくとも含む積層体を形成する場合の少なくとも1つの層に用いたりすることができる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐汚染性及び耐衝撃性のバランスに優れるため、上塗り層として好適に使用できる。例えば、道路の滑り止め舗装においては、骨材を配合したモルタル組成物を塗工して形成した下塗り層又は中塗り層の上に、上述した本発明の硬化性樹脂組成物を塗料として塗工し、硬化して本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物からなる上塗り層を設けることが好ましい。ここで、前記下塗り層と前記中塗り層との間、及前記中塗り層と前記上塗り層との間のうちの少なくとも1方には、他の層が設けられていてもよい。
【実施例0089】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中、「部」は「質量部」を意味する。
【0090】
[合成例1:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)の合成]
攪拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置内に、135部の脱イオン水、及び分散剤として0.4部のポリビニルアルコール(ケン化度:80モル%、重合度:1700)を加えて攪拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、一旦攪拌を停止した。100部のメタクリル酸メチル(MMA)、重合開始剤として0.2部の2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、連鎖移動剤として0.8部のn-ドデシルメルカプタン、電解質として0.1部の炭酸ナトリウムを加えて再度攪拌し、75℃に昇温して2.5時間反応させた。さらに、98℃に昇温して1.5時間保持した後、反応を終了させた。
40℃に冷却した後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水した後、40℃で16時間乾燥して、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー1)のガラス転移温度(Tg)は105℃であり、質量平均分子量は40,000であった。
【0091】
[合成例2:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー2)の合成]
100部のメタクリル酸メチルにかえて92.5部のメタクリル酸メチル、7.5部のアクリル酸メチルとした以外は合成例1と同様の操作を行うことで、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー2)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー2)のガラス転移温度(Tg)は87℃であり、質量平均分子量は73,000であった。
【0092】
[合成例3:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー3)の合成]
100部のメタクリル酸メチルにかえて80部のメタクリル酸メチル、20部のメタクリル酸-n-ブチルとした以外は合成例1と同様の操作を行うことで、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー3)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー3)のガラス転移温度(Tg)は84℃であり、質量平均分子量は82,000であった。
【0093】
[合成例4:(メタ)アクリル系重合体(ポリマー4)の合成]
100部のメタクリル酸メチルにかえて60部のメタクリル酸メチル、40部のメタクリル酸-n-ブチルとした以外は合成例1と同様の操作を行うことで、粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー4)を得た。
得られた粒状(メタ)アクリル系重合体(ポリマー4)のガラス転移温度(Tg)は65℃であり、質量平均分子量は42,000であった。
【0094】
[実施例1]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた1Lフラスコに、化合物(A)として50部のメタクリル酸-iso-ブチルと、化合物(B)として22部の2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、還元剤(D)として0.5部のN,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン(以下、「PTEO」と略す)と、ラジカル重合性化合物(F)として、5部の1,3-ブチレングリコールジメタクリレート(以下、「BDMA」と略す)、6部の3官能ウレタンアクリレート(亜細亜工業(株)製、商品名:RUA-049X、数平均分子量:1,600)と、他の成分として0.2部のパラフィン115(日本精蝋(株)製)、0.6部のパラフィン130(日本精蝋(株)製)、0.4部のパラフィン150(日本精蝋(株)製)、0.5部の消泡剤(楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン230EF)、1部の有機アミド化合物(三木理研工業(株)製、商品名:リケンレジンFCS-42)及び0.05部の2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(以下、「BHT」と略す)とを投入した後、攪拌しながら、アクリル重合体(C)として17部のポリマー1を投入した。引き続き、撹拌しながら、60℃で2時間加熱して溶解した。
固形分の溶解を確認後、40℃に冷却し、樹脂組成物(S-1)を得た。得られた樹脂組成物(S-1)の配合組成を表1に示す。
【0095】
[実施例2~8、比較例1~5]
表1に記載の配合組成にした以外は、樹脂組成物(S-1)の調製と同様にして樹脂組成物(S-2)~(S-13)を得た。
【0096】
表中の略号は下記の通りである。
i-BMA:メタクリル酸-iso-ブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
HPMA:2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
ポリマー1:合成例1で製造したMMAの単独重合体、質量平均分子量は40,000
ポリマー2:合成例2で製造したMMA/アクリル酸メチル(質量比)=92.5/7.5の共重合体、質量平均分子量は73,000
THFMA:メタクリル酸テトラヒドロフルフリル
MMA:メタクリル酸メチル
BDMA:1,3-ブチレングリコールジメタクリレート
PDP-400N:ポリプロピレングリコールジメタクリレート(商品名:ブレンマーPDP-400N、日油(株)製)
RUA-049X:数平均分子量1,600の3官能ウレタンアクリレート(商品名:RUA-049X、亜細亜工業(株)製)
TE-2000:1,2-ポリブタジエンアクリレート(商品名:NISSO-PB TE-2000、日本曹達(株)製)
ポリマー3:合成例3で製造したMMA/メタクリル酸-n-ブチル(質量比)=80/20の共重合体、質量平均分子量は82,000
ポリマー4:合成例4で製造したMMA/メタクリル酸-n-ブチル(質量比)=60/40の共重合体、質量平均分子量は42,000
PTEO:N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン(日本乳化剤(株)製)
パラフィン115、パラフィン130、パラフィン150:パラフィンワックス(商品名:パラフィン115、パラフィン130、パラフィン150、日本精蝋(株)製)
ディスパロン230EF:消泡剤(商品名:ディスパロン230EF、楠本化成(株)製)
FCS-42:有機アミド化合物(商品名:リケンレジンFCS-42、三木理研工業(株)製)
BHT:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
【0097】
(質量平均分子量)
ポリマーを溶剤であるテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定した分子量をポリスチレン換算して質量平均分子量を求めた。
(粘度)
硬化性樹脂組成物の液温を23℃とし、B型粘度計を用いて回転速度60rpmの条件にて粘度を測定した。
【0098】
<硬化性樹脂組成物の塗装作業性の評価>
JIS A 5371:2016「プレキャスト無筋コンクリート製品」で規定された300mm×300mm×60mmのコンクリート平板((株)ユーコウ商会製)の一方の面をディスクグラインダーで表面研磨してレイタンスを取り除いた。研磨面の削り粉を払い落とした後、温度23℃でラジカル重合型アクリル樹脂系プライマー(商品名:XD-115、(株)三菱ケミカルインフラテック製)100部に過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)GB-50L、化薬ヌーリオン(株)製、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合し、0.3kg/mの塗布量となるようにローラーを用いて塗布し、硬化させて、下塗り層を形成した。
次いで、温度23℃で、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物100部に、過酸化ベンゾイル(商品名:ナイパーNS、日油(株)製、純度40%)3部を加えて、撹拌、混合し、過酸化ベンゾイルを加えた時点から3分後に、下塗り層の表面に0.3kg/mの塗布量で、ウーローラーを用いて塗装した。そのときの塗装作業性を以下の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0099】
(評価基準)
○:硬化性樹脂組成物の糸曳及び塗工ムラが発生しない
△:硬化性樹脂組成物の軽微な塗工ムラは発生するが、糸曳が生じない
×:硬化性樹脂組成物の糸曳及び塗工ムラが発生する
【0100】
<積層体の作製>
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を用いて、以下のとおり、積層体を作製した。
JIS A 5371:2016「プレキャスト無筋コンクリート製品」で規定された300mm×300mm×60mmのコンクリート平板((株)ユーコウ商会製)の一方の面をディスクグラインダーで表面研磨してレイタンスを取り除いた。研磨面の削り粉を払い落とした後、室内温度23℃の室内でラジカル重合型アクリル樹脂系プライマー(XD-115、(株)三菱ケミカルインフラテック製)100部に過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)GB-50L、化薬ヌーリオン(株)製、純度50%)2部を加えて、撹拌、混合し、0.3kg/mの塗布量となるようにローラーを用いて塗布し、硬化させて、下塗り層を形成した。
【0101】
次いで、温度23℃でラジカル重合型アクリル樹脂系ベースコート(商品名:XD-3009、(株)三菱ケミカルインフラテック製)100部に、骨材(商品名:アクリトーンフロアーKC-1A、(株)三菱ケミカルインフラテック製)213部を混合した。得られた混合物に、過酸化ベンゾイル(商品名:パーカドックス(登録商標)GB-50L、化薬ヌーリオン(株)製、純度50%)2部を添加して、中塗り塗料を調製した。調製した中塗り塗料を下塗り層の表面に金鏝を用いて厚み3mmとなるように塗布し、硬化させた。硬化した表面をNo.400のサンドペーパーを用いて研磨し、削り粉を払い落として、中塗り層を形成した。
中塗り層の表面に、温度23℃で、硬化剤未配合の硬化性樹脂組成物100部に、過酸化ベンゾイル(商品名:ナイパーNS、日油(株)製、純度40%)3部を加えて、撹拌、混合した硬化剤入り硬化性樹脂組成物を、0.3kg/mの塗布量になるようにローラーを用いて塗布して上塗り塗膜を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体について、以下のとおり、鉛筆硬度、耐汚染性及び耐衝撃性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
<鉛筆硬度の評価>
実施例及び比較例にて得た硬化性樹脂組成物を用いて作製した積層体を試験体として用い、JIS K-5600-5-4(塗料一般試験方法 塗膜の機械的性質 引っかき硬度(鉛筆法))に従って試験を行い、各例の上塗り塗膜の鉛筆硬度を以下の評価基準に基づいて評価した。上塗り塗膜に傷が付きにくい程、耐汚染性に優れる。
【0103】
(評価基準)
塗り層の表面を目視により観察し、以下の評価基準で評価した。
◎:硬度3Hの鉛筆で上塗り塗膜の表面を引っ掻いた際に傷が付かなかった。
〇:硬度2Hの鉛筆で上塗り塗膜の表面を引っ掻いた際に傷が付かなかった。
×:硬度2Hの鉛筆で上塗り塗膜の表面を引っ掻いた際に傷が付いた。
【0104】
<耐汚染性の評価>
タイヤ据え切り試験機(インテスコ(株)製)を用いて、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を用いて作製した積層体を試験体としてタイヤ据え切り試験機に装着して、以下の条件で据え切り試験を行った。据え切り部におけるタイヤ痕付着状況を、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0105】
(試験条件)
試験体駆動方式:試験体反復角度:±30°
反復速度:6rpm
載荷荷重:3KN
測定温度:23℃
据え切り回数:10往復
【0106】
(評価基準)
○:上塗り塗膜にタイヤ痕が残らない
△:タイヤ痕が薄く残るが消しゴムで擦ると消えた
×:上塗り塗膜にタイヤ痕がはっきりと残り、消しゴムで擦っても消えなかった
【0107】
<耐衝撃性の評価>
実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を用いて作製した積層体の耐衝撃試験を、下記の方法に従って実施した。
温度23℃において、積層体の上塗り塗膜の表面から鉛直方向に100cmの位置から平タガネ(刃幅:22mm、全長:200mm、重さ430g、直径38mm、(株)小山刃物製作所製)を前記上塗り塗膜の表面に落下した。目視にて上塗り塗膜の割れの発生の有無を観察して、以下の評価基準に基づいて耐衝撃性を評価した。試験は5回実施した。
【0108】
(評価基準)
〇:5回中0回~1回、上塗り塗膜の割れが確認された
△:5回中2回~4回、上塗り塗膜の割れが確認された
×:5回中5回、上塗り塗膜の割れが確認された
【0109】
【表1】
【0110】
表1に示すように、実施例1~8に係る硬化性樹脂組成物は、塗装作業性が良好であり、その硬化物は、耐汚染性、耐衝撃性のバランスに優れていた。
これに対して、比較例1に係る硬化性樹脂組成物は、化合物(B)を含まないため、アクリル重合体(C)の溶解性が悪く、硬化性樹脂組成物から分離し、硬化物の評価を実施できなかった。
比較例2、3に係る硬化性樹脂組成物は、アクリル重合体(C)を含まないため、鉛筆硬度及び耐汚染性が低位であった。
比較例4に係る硬化性樹脂組成物は、化合物(A)を含まないため、塗装作業性、鉛筆硬度、耐汚染性及び耐衝撃性のいずれも低位であった。
比較例5に係る硬化性樹脂組成物は、化合物(A)及び化合物(B)を含まないため、特に塗装作業性が低位となった。