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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113881
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ルーバ及び風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/15 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
F24F13/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019143
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山内 紘平
(72)【発明者】
【氏名】桑嶌 達彦
【テーマコード(参考)】
3L081
【Fターム(参考)】
3L081FA04
3L081FC03
(57)【要約】
【課題】気流が通過するルーバにおいて、気流渦に起因する気流の損失が発生することを抑制できるルーバ及び風向調整装置を提供する。
【解決手段】送風機における気流の流路に配置される基台の送風面上に設けられ、前記気流が通過するルーバであって、前記ルーバは、前記送風面に対して略垂直な板状の羽根を含み、前記羽根は、前記送風面と略平行な前後方向に延び、前記羽根の後辺部は、前記気流の上流側を向き、且つ少なくとも一つの凸部である後凸部を含み、前記後凸部は、前記送風面と直交する上下方向に並ぶ二つの辺部で挟まれた部位であり、且つ当該二つの辺部の各々が前記上下方向と交差する方向に延びる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機における気流の流路に配置される基台の送風面上に設けられ、前記気流が通過するルーバであって、
前記ルーバは、前記送風面に対して略垂直な板状の羽根を含み、
前記羽根は、前記送風面と略平行な前後方向に延び、

前記羽根の後辺部は、前記気流の上流側を向き、且つ少なくとも一つの凸部である後凸部を含み、
前記後凸部は、前記送風面と直交する上下方向に並ぶ二つの辺部で挟まれた部位であり、且つ当該二つの辺部の各々が前記上下方向と交差する方向に延びる、
ルーバ。
【請求項2】
前記少なくとも一つの後凸部は、前記上下方向に並ぶ二つの後凸部を含み、
前記羽根の後辺部は、前記二つの後凸部の間に形成された凹部である後凹部を含む、
請求項1に記載のルーバ。
【請求項3】
前記二つの後凸部は、第一後凸部と、前記第一後凸部よりも前記送風面側にある第二後凸部とを含み、
前記第二後凸部の後端部は、前記羽根の前記上下方向の中心よりも前記送風面側にある、
請求項2に記載のルーバ。
【請求項4】
前記後凸部は、前記後凸部を規定する前記二つの辺部と、前記後凹部の前端部を通って前記上下方向に延びる第一基準線とによって囲まれた面積を有し、
前記第二後凸部の面積は、前記第一後凸部の面積よりも大きい、
請求項3に記載のルーバ。
【請求項5】
前記後凸部の突出幅は、前記後凸部の後端部から前記第一基準線までの前記前後方向の長さであり、
前記第二後凸部の突出幅は、前記第一後凸部の突出幅よりも大きい、
請求項4に記載のルーバ。
【請求項6】
前記羽根の前辺部は、少なくとも一つの凸部である前凸部を含み、
前記前凸部は、前記上下方向に並ぶ二つの辺部で挟まれた部位であり、且つ当該二つの辺部の各々が前記上下方向と交差する方向に延びる、
請求項1に記載のルーバ。
【請求項7】
前記少なくとも一つの前凸部は、前記上下方向に並ぶ二つの前凸部を含み、
前記羽根の前辺部は、前記二つの前凸部の間に形成された凹部である前凹部を含む、
請求項6に記載のルーバ。
【請求項8】
前記二つの前凸部は、第一前凸部と、前記第一前凸部よりも前記送風面側にある第二前凸部とを含み、
前記第二前凸部の前端部は、前記羽根の前記上下方向の中心よりも前記送風面側にある、
請求項7に記載のルーバ。
【請求項9】
前記前凸部は、前記前凸部を規定する前記二つの辺部と、前記前凹部の後端部を通って前記上下方向に延びる第二基準線とによって囲まれた面積を有し、
前記第二前凸部の面積は、前記第一前凸部の面積よりも大きい、
請求項8に記載のルーバ。
【請求項10】
前記前凸部の突出幅は、前記前凸部の前端部から前記第二基準線までの前記前後方向の長さであり、
前記第二前凸部の突出幅は、前記第一前凸部の突出幅よりも大きい、
請求項9に記載のルーバ。
【請求項11】
少なくとも前記後凸部の後端部と前記前凸部の前端部とは、互いに前記上下方向の位置が異なる、
請求項6に記載のルーバ。
【請求項12】
前記前凸部の中心線は、前記前凸部を規定する前記二つの辺部における前記上下方向の中心を通り、且つ前側に向かって前記送風面側に傾くように延びる、
請求項1に記載のルーバ。
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載のルーバと、
左右方向に延びる前記送風面を有する前記基台と、
を備えた風向調整装置であって、
複数の前記ルーバが、互いに間隔を空けて前記左右方向に並ぶように、前記送風面上に設けられる、風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ルーバ及び風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の室内機の吹出口に、ルーバを有する風向案内装置を設けることが公知である。例えば、特許文献1に開示の風向変更装置では、空気吹出口において複数の縦風向板が、互いに間隔を空けて横方向に並んで設置される。これらの縦風向板は、板面方向を縦方向とし、横方向にほぼ直交する回転軸まわりに回転自在である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-70050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような風向案内装置では、吹出口から吹き出される気流が複数の縦風向板を通過するとき、これらの縦風向板によって気流の向きを左右に変更可能である。しかしながら、縦風向板を通過する気流が縦風向板の縁部に接触すると、縦風向板の縁部において気流渦を生じるおそれがある。気流に対する縦風向板の迎角が大きいほど、この気流渦を生じ易い。気流渦が縦風向板を通過する気流の流体抵抗を増加させ、気流の風速や風量の損失を生じるおそれがある。
【0005】
本開示の一態様は、気流が通過するルーバにおいて、気流渦に起因する気流の損失が発生することを抑制できるルーバ及び風向調整装置の提供を目的とする。なお、本開示の一態様は、クマタカの翼形状に着目した技術的思想を含んでいるため、バイオミメティクスに関係するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、送風機における気流の流路に配置される基台の送風面上に設けられ、前記気流が通過するルーバであって、前記ルーバは、前記送風面に対して略垂直な板状の羽根を含み、前記羽根は、前記送風面と略平行な前後方向に延び、前記羽根の後辺部は、前記気流の上流側を向き、且つ少なくとも一つの凸部である後凸部を含み、前記後凸部は、前記送風面と直交する上下方向に並ぶ二つの辺部で挟まれた部位であり、且つ当該二つの辺部の各々が前記上下方向と交差する方向に延びる。
【0007】
本開示の一態様は、前記ルーバと、左右方向に延びる前記送風面を有する前記基台と、を備えた風向調整装置であって、複数の前記ルーバが、互いに間隔を空けて前記左右方向に並ぶように、前記送風面上に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】吹出口が閉じられた送風機の正面図である。
図2】吹出口が開かれた送風機の平面図である。
図3】吹出口が開かれた送風機の右側面図である。
図4】ルーバの側面図である。
図5】風向調整装置の模式的な平面図である。
図6】ルーバを斜め上方から視た斜視図である。
図7】第一変形例に係るルーバの側面図である。
図8】第一変形例に係るルーバの模式的な平面図である。
図9】第二変形例に係るルーバの側面図である。
図10】第三変形例に係るルーバの側面図である。
図11A】第四変形例に係るルーバの側面図である。
図11B】第四変形例に係るルーバを斜め上方から視た斜視図である。
図12A】第五変形例に係るルーバの側面図である。
図12B】第五変形例に係るルーバを斜め上方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
[送風機]
図1図3を参照して、送風機1の構造を説明する。図1は、吹出口4が閉じられた送風機1の正面図である。図2は、吹出口4が開かれた送風機1の平面図である。図3は、吹出口4が開かれた送風機1の右側面図である。以下の説明では、図1の上側、下側、左側、右側、紙面手前側、及び紙面奥側を、送風機1の上側、下側、左側、右側、前側、及び後側とする。
【0011】
本例の送風機1は、空気調和機であり、詳細には冷凍サイクル運転を行う空気調和システムの室内機である。送風機1は、左右方向に延びる箱状のケーシング2を有する。ケーシング2の上面には、吸込口3が形成される。ケーシング2の前面下部には、吹出口4が形成される。ケーシング2の内部には、図示外の熱交換器に囲まれた空調部7が配置される。空調部7は、例えばクロスフローファンからなる室内ファンである。
【0012】
ケーシング2の内部には、制御部を含む各種の電気部品が設けられる。制御部は、例えば図示外のリモコン等から所定の指示を受けると、送風機1の運転を開始する。詳細には、空調部7の回転駆動によって、外部の空気が吸込口3からケーシング2内に取り込まれる。この空気が熱交換器において熱交換された後、空調部7から前側下方に延びる気流の流路8を通って、流路8の最下流部である吹出口4から前側に送出される。吹出口4には、気流の向きを調整するための風向調整装置10が設けられる。
【0013】
[風向調整装置]
風向調整装置10は、基台20及びルーバ40を含む。本例の基台20は、吹出口4から送出される気流の風向きを上下に変更する横ルーバである。基台20は、左右方向に長い矩形板状の羽根を主体とする。基台20は、風向調整装置10の左右方向を中心として回転可能に支持され、吹出口4を開閉するように変位可能である。制御部9は、運転中に図示外の回転駆動機構を制御することで、基台20の向きを調整する。空調部7から吹出口4に流れる気流は、基台20に沿って室内に送出される。基台20のうちで上側を向く面は、吹出口4と対向する送風面21である。
【0014】
ルーバ40は、送風機1における気流の流路8に配置される基台20の送風面21上に設けられ、気流が通過する。先述のように基台20は、流路8のうちで最下流部の吹出口4に設けられているが、吹出口4よりも上流側に設けられてもよい。本例のルーバ40は、吹出口4から送出される気流の風向きを左右に変更する横ルーバである。複数(図2の例では9つ)のルーバ40が、互いに間隔を空けて左右方向に並ぶように、送風面21上に設けられる。
【0015】
[ルーバ]
図4を参照して、ルーバ40の構造を説明する。図4は、ルーバ40の側面図である。以下の説明では、図4の上側、下側、左側、右側、紙面手前側、及び紙面奥側を、ルーバ40の上側、下側、後側、前側、左側、及び右側とする。なお、ルーバ40の上下前後方向は、基台20の回転に応じて、送風機1の上下前後方向に対して変化する。ルーバ40の前後左右方向は、ルーバ40の回転に応じて、送風機1の前後左右方向に対して変化する。つまり、送風機1の座標系とルーバ40の座標系とは、互いに一致しない場合がある。先述の図1図3の右下部分に示す座標系は、送風機1の座標系を示す。図4の右下部分に示す座標系は、ルーバ40の座標系を示す。
【0016】
ルーバ40は、送風面21に対して略垂直な板状の羽根41を含む。羽根41は、送風面21と略平行な前後方向に延びる。本例では、羽根41は基台20の送風面21の上側で垂直に延び、且つ羽根41の両面が左右両側を向く。羽根41の周面は、側面視でルーバ40の輪郭を形成する。羽根41の周面のうちで、ルーバ40の前側、後側、上側、及び下側を夫々向く部分は、前辺部411、後辺部412、上辺部413、及び下辺部414である。
【0017】
下辺部414は、全体として送風面21と略平行に延びる。下辺部414の前側部分には、側面視で上側に凹む段差414Aが形成される。ルーバ40は、羽根41から下方に突出する二つの突起42、43を有する。後側の突起42は、下辺部414の後側部分から下方に突出する円柱状である。突起42は、基台20の送風面21に設けられた支持孔に上方から挿入され、この支持孔によって回転可能に支持される。これによりルーバ40は、上下方向に延びる突起42を中心として、基台20上で左右両側に回転可能となる。即ちルーバ40では、突起42を回転軸として羽根41の全体が回転するため、羽根41の回転に伴って前辺部411及び後辺部412の両方が左右に変位する。
【0018】
前側の突起43は、段差414Aから下方に突出する円柱状である。突起43は、図示外の連結板に設けられた支持孔に上方から挿入され、この支持孔によって回転可能に支持される。これにより、基台20に配置される複数のルーバ40は、連結板によって互いに連結される。一つのルーバ40が手動又は自動で回転されると、連結板を介して他のルーバ40も連動して回転するため、複数のルーバ40が互いに同じ方向を向く(図2参照)。
【0019】
先述のように、ルーバ40は上下方向を中心として回転可能である。ルーバ40は、ルーバ40の前後方向が送風機1の前後方向と一致する基準位置から、左右両側の夫々に90度以内で回転可能である。従って、ルーバ40が何れの回転位置にある場合でも、前辺部411は送風機1の前側を向き、後辺部412は送風機1の後側を向く。送風機1の流路8では、後側から前側に向けて気流が流れる。従って、後辺部412はルーバ40を通過する気流の上流側を向き、前辺部411はルーバ40を通過する気流の下流側を向く。
【0020】
[羽根の後辺部]
羽根41の後辺部412は、気流の上流側を向き、且つ少なくとも一つの凸部である後凸部50を含む。後凸部50は、送風面21と直交する上下方向に並ぶ二つの辺部51、52で挟まれた部位であり、且つ二つの辺部51、52の各々が上下方向と交差する方向に延びる。上下方向と交差する方向は、側面視で上下方向とは異なる方向であり、換言すると前後方向又は斜め前後方向である。
【0021】
具体的には、各辺部51、52は何れも後凸部50の後端部50Aから前側に延び、且つ辺部51は辺部52の上側を延びる。各辺部51、52が後端部50Aから前側に延びることは、後端部50Aから前方又は斜め前方に延びることを意味し、例えば上下方向や後方向に延びることを含まない。羽根41のうち、側面視で二つの辺部51、52で上下に挟まれた領域が、後凸部50である。
【0022】
本例では、少なくとも一つの後凸部50は、上下方向に並ぶ二つの後凸部50を含む。二つの後凸部50は、後辺部412において互いに異なる上下方向の位置にある。上側の後凸部50の辺部51は、後端部50Aから前側上方に向かって延び、且つ若干上側に膨らむ円弧状である。上側の後凸部50の辺部52は、前側下方に向かって延び、且つ若干前側に膨らむ円弧状である。下側の後凸部50の辺部51は、後端部50Aから前側上方に向かって延び、且つ若干前側に膨らむ円弧状である。下側の後凸部50の辺部52は、後端部50Aから前方に向かって直線状に延びる。
【0023】
羽根41の後辺部412は、二つの後凸部50の間に形成された凹部である後凹部60を含む。本例では、上側の後凸部50の辺部52と、下側の後凸部50の辺部51とは、滑らかに連続した一つの円弧状の辺部を形成する。この円弧状の辺部によって、上下方向に並ぶ二つの後凸部50の間に、一つの後凹部60が前側に凹むように形成される。
【0024】
二つの後凸部50は、第一後凸部と、第一後凸部よりも送風面21側にある第二後凸部とを含む。本例では、送風面21が羽根41の下側に位置する。下側の後凸部50は、上側の後凸部50よりも送風面21に近い。従って、上側の後凸部50が第一後凸部であり、下側の後凸部50が第二後凸部である。
【0025】
第二後凸部の後端部50Aは、羽根41の上下方向の中心よりも送風面21側にある。具体的には、下側の後凸部50は、羽根41の上下方向の中心を通る仮想線である中心線Cよりも下側に位置する。詳細には、下側の後凸部50のうち、少なくとも後端部50Aが、中心線Cよりも下側に位置すればよい。本例では、下側の後凸部50の全体が中心線Cよりも下側に位置する。更に、下側の後凸部50は、羽根41のうちで最も送風面21に近い下端部にある。
【0026】
後凸部50は、後凸部50を規定する二つの辺部51、52と、後凹部60の前端部60Aを通って上下方向に延びる第一基準線B1とによって囲まれた面積を有する。第二後凸部の面積は、第一後凸部の面積よりも大きい。本例では、上側の後凸部50の前後方向長さと、下側の後凸部50の前後方向長さとが略等しい。しかしながら、下側の後凸部50の上下方向長さは、上側の後凸部50の上下方向長さよりも大きい。そのため、下側の後凸部50の面積は、上側の後凸部50の面積よりも大きくなっている。
【0027】
後凸部50の突出幅H1は、ルーバ40を通過する気流の主流方向の長さであり、本例では後凸部50の前後方向長さである。換言すると、後凸部50の突出幅H1は、後凸部50の後端部50Aから第一基準線B1までの前後方向の長さである。後凸部50の突出幅H1は、後凸部50と隣り合う後凹部60の主流方向の深さと等しい。本例では、第二後凸部の突出幅H1は、第一後凸部の突出幅H1と同程度である。これに代えて、第二後凸部の突出幅H1は、第一後凸部の突出幅H1よりも大きくてもよい。
【0028】
[羽根の前辺部]
羽根41の前辺部411は、気流の下流側を向き、且つ少なくとも一つの凸部である前凸部70を含む。前凸部70は、送風面21と直交する上下方向に並ぶ二つの辺部71、72で挟まれた部位であり、且つ二つの辺部71、72の各々が上下方向と交差する方向に延びる。
【0029】
具体的には、各辺部71、72は何れも前凸部70の前端部70Aから後側に延び、且つ辺部71は辺部72の上側を延びる。各辺部71、72が前端部70Aから後側に延びることは、前端部70Aから後方又は斜め後方に延びることを意味し、例えば上下方向や前方向に延びることを含まない。羽根41のうち、側面視で二つの辺部71、72で上下に挟まれた領域が、前凸部70である。
【0030】
本例では、少なくとも一つの前凸部70は、上下方向に並ぶ三つの前凸部70を含む。三つの前凸部70は、前辺部411において互いに異なる上下方向の位置にある。各前凸部70の辺部71は、前端部70Aから後側上方に向かって延び、且つ若干上側に膨らむ円弧状である。各前凸部70の辺部72は、前端部70Aから後方に向かって直線状に延びる。三つの前凸部70は、送風面21に近い下側の前凸部70であるほど、より前方に突出する。
【0031】
羽根41の前辺部411は、二つの前凸部70の間に形成された凹部である前凹部80を含む。本例では、上側の前凸部70の辺部72と、下側の前凸部70の辺部71とは、鋭角状に湾曲又は屈曲した一つの辺部を形成する。この湾曲又は屈曲した辺部によって、上下方向に並ぶ二つの前凸部70の間に、一つの前凹部80が後側に凹むように形成される。
【0032】
二つの前凸部70は、第一前凸部と、第一前凸部よりも送風面21側にある第二前凸部とを含む。本例では、三つの前凸部70のうち、最も下側の前凸部70は、その上側にある前凸部70よりも送風面21に近い。従って、最も下側の前凸部70が第二前凸部であり、その上側にある前凸部70が第一前凸部である。
【0033】
第二前凸部の前端部70Aは、羽根41の上下方向の中心よりも送風面21側にある。具体的には、最も下側の前凸部70は先述の中心線Cよりも下側に位置する。詳細には、最も下側の前凸部70のうち、少なくとも前端部70Aが、中心線Cよりも下側に位置すればよい。本例では、最も下側の前凸部70の全体が中心線Cよりも下側に位置する。更に、最も下側の前凸部70は、羽根41のうちで最も送風面21に近い下端部にある。
【0034】
前凸部70は、前凸部70を規定する二つの辺部71、72と、前凹部80の後端部80Aを通って上下方向に延びる第二基準線B2とによって囲まれた面積を有する。第二前凸部の面積は、第一前凸部の面積よりも大きい。本例では、最も下側の前凸部70の前後方向長さは、他の前凸部70の前後方向長さよりも大きく、且つ、最も下側の前凸部70の上下方向長さは、他の前凸部70の上下方向長さよりも大きい。そのため、三つの前凸部70のうち、最も下側の前凸部70の面積が最も大きい。
【0035】
前凸部70の突出幅H2は、ルーバ40を通過する気流の主流方向の長さであり、本例では前凸部70の前後方向長さである。換言すると、前凸部70の突出幅H2は、前凸部70の前端部70Aから第二基準線B2までの前後方向の長さである。前凸部70の突出幅H2は、前凸部70と隣り合う前凹部80の主流方向の深さと等しい。本例では、第二前凸部の突出幅H2は、第一前凸部の突出幅H2よりも大きい。そのため、最も下側の前凸部70は、その上側にある他の前凸部70よりも前方に延びている。これに代えて、第二後凸部の突出幅H2は、第一後凸部の突出幅H2と同程度でもよい。
【0036】
なお、前凸部70を規定する辺部71、72の後端部の両方に前凹部80の後端部80Aがある場合、前側の後端部80Aを通る第二基準線B2から前端部70Aまでの長さが、この前凸部70の突出幅H2である。前凹部80を規定する辺部71、72の前端部の両方に前凸部70の前端部70Aがある場合、第二基準線B2から後側の前端部70Aまでの長さが、この前凹部80の深さに相当する突出幅H2である。この定義は、後凸部50の突出幅H1及び後凹部60の深さにも同様に適用できる。
【0037】
前凸部70の中心線Mは、前凸部70を規定する二つの辺部71、72における上下方向の中心を通り、且つ前側に向かって送風面21側に傾くように延びる。図4の例では、最も下側の前凸部70の中心線Mを示す。この中心線Mは、下側の前凹部80の後端部80Aから最も下側の前端部70Aまで、前側下方に向かって円弧状に延びる。図示しないが、他の前凸部70の中心線Mも同様である。本例では、各前凸部70は、中心線Mに沿って前側下方に向かいつつ、側面視で先細りするように延びる。
【0038】
少なくとも後凸部50の後端部50Aと前凸部70の前端部70Aとは、互いに上下方向の位置が異なる。本例では、二つの後凸部50が後辺部412に設けられ、三つの前凸部70が前辺部411に設けられる。各後凸部50の後端部50Aと、各前凸部70の前端部70Aとは、何れも上下方向の位置が異なる。具体的には、三つの前凸部70の前端部70Aは何れも、上側の後凸部50よりも下側にあり、且つ下側の後凸部50よりも上側にある。
【0039】
[風向調整装置の動作態様]
風向調整装置10の動作態様を説明する。図5は、風向調整装置10の模式的な平面図である。図6は、ルーバ40を斜め上方から視た斜視図である。基台20は、吹出口4を閉鎖する閉位置(図1参照)と吹出口4を開放する開位置(図2図3参照)とに変位可能である。基台20が開位置に変位した状態で、送風機1の運転が実行される。なお、図5の右下部分に示す座標系は、送風機1の座標系を示す。図6の右下部分に示す座標系は、ルーバ40の座標系を示す。
【0040】
図5に示すように、空調部7から流路8に送出される気流Fの主流は、送風面21に沿って後側から前側に流れると共に、送風面21上に設けられた複数のルーバ40を通過して、吹出口4から排出される。このとき気流Fの向きが、送風面21に沿って上下に調整され、且つ複数のルーバ40に沿って左右に調整される。以下では、複数のルーバ40のうち、一つのルーバ40における気流の挙動を説明するが、他のルーバ40における気流の挙動も同様である。
【0041】
ルーバ40の前後方向が気流Fの主流方向に対して傾斜している場合、羽根41の左右両面が正圧面41A及び負圧面41Bとして機能する。正圧面41Aは気流Fの主流と対向する面であり、負圧面41Bは正圧面41Aの反対面である。気流Fがルーバ40を通過するとき、負圧面41B側に流れ込む気流が気流渦を生じること、および正圧面41A側を流れる気流の一部がルーバ40の下流側で負圧面41B側に回り込むことにより、負圧面41B側で気流渦を生じることが知られている。
【0042】
詳細には、気流Fが羽根41の後辺部412から負圧面41B側に流れ込むとき、負圧面41Bに付着しきれず剥離することで気流渦F1を生じる。また正圧面41A側を流れる気流の一部が、羽根41の前辺部411から負圧面41B側に回り込むことにより、気流渦F2を生じる。図5の例では、気流渦F1はルーバ40の上方から視て時計回り方向に回転し、気流渦F2はルーバ40の上方から視て反時計回り方向に回転する。気流渦F1、F2は、ルーバ40を通過する気流Fの流体抵抗を増加させ、気流Fの風速や風量の損失を生じるおそれがある。
【0043】
本開示によれば、以下に説明するように、気流渦に起因する気流Fの損失が発生することを抑制できる。図6に示すように、気流Fが後辺部412から負圧面41B側に流れ込むときに生じる気流は、後辺部412に設けられた後凸部50によって、複数の気流F11に分散される。これにより各気流F11は、その風量及び風速が減少するため、負圧面41Bへの付着が促進され、気流渦F1を生成し難くなる。
【0044】
正圧面41A側を流れる気流のうち、前辺部411から負圧面41B側に回り込む気流は、前辺部411に設けられた前凸部70によって、複数の気流F12に分散される。これにより各気流F12は、その風量及び風速が減少するため、負圧面41B側に回り込む力が弱くなり、気流渦F2を生成し難くなる。
【0045】
更に、複数の後凸部50及び前凸部70の各々は、以下のような気流の挙動を生じる。以下では、複数の後凸部50のうち、一つの後凸部50における気流の挙動を説明するが、他の後凸部50における気流の挙動も同様である。複数の前凸部70のうち、一つの前凸部70における気流の挙動を説明するが、他の前凸部70における気流の挙動も同様である。
【0046】
図5及び図6に示すように、後凸部50では、気流F11の一部が上側の辺部51から負圧面41B側に回り込むことにより、負圧面41B側で気流渦F21を生じる。また後凸部50では、気流F11の一部が下側の辺部52から負圧面41B側に回り込むことにより、負圧面41B側で気流渦F22を生じる。後凸部50の辺部51、52は、後端部50Aで接続されて上下方向に隣り合うため、辺部51、52から生じる気流渦F21、F22は、互いに上下に隣接した位置で発生する。
【0047】
図6の例では、気流渦F21はルーバ40の後方から視て反時計回り方向に回転し、気流渦F22はルーバ40の後方から視て時計回り方向に回転する。つまり気流渦F21、F22は、互いに反対方向に回転する。気流渦F21、F22は、互いに打ち消し合うように作用して、互いの風量及び風速を減少させる。これにより、各気流F11の負圧面41B側に回り込む力が更に弱くなるため、気流渦F1を生成し難くなる。
【0048】
同様に、前凸部70では、気流F12の一部が上側の辺部71から負圧面41B側に回り込むことにより、負圧面41B側で気流渦F31を生じる。また前凸部70では、気流F12の一部が下側の辺部71から負圧面41B側に回り込むことにより、負圧面41B側で気流渦F32を生じる。前凸部70の辺部71、72は、前端部70Aで接続されて上下方向に隣り合うため、辺部71、72から生じる気流渦F31、F32は、互いに上下に隣接した位置で発生する。
【0049】
図6の例では、気流渦F31はルーバ40の前方から視て時計回り方向に回転し、気流渦F32はルーバ40の前方から視て反時計回り方向に回転する。つまり気流渦F31、F32は、互いに反対方向に回転する。気流渦F31、F32は、互いに打ち消し合うように作用して、互いの風量及び風速を減少させる。これにより、各気流F12の負圧面41B側に回り込む力が更に弱くなるため、気流渦F2を生成し難くなる。
【0050】
本例では、二つの後凸部50の間に、後凹部60が設けられている。後凹部60から負圧面41B側に流れ込む気流F11の一部は、上側の後凸部50の辺部52から負圧面41B側に流れ込み、且つ下側の後凸部50の辺部51から負圧面41B側に流れ込む。これにより、上側の後凸部50の辺部52から気流渦F22が発生し、且つ、下側の後凸部50の辺部51から気流渦F21を発生する。このように気流渦F21、F22を確実に発生させることで、各後凸部50における気流渦F21、F22の相殺を促進できる。
【0051】
同様に、二つの前凸部70の間に、前凹部80が設けられている。正圧面41A側で前凹部80に向かう気流F12の一部は、上側の前凸部70の辺部72から負圧面41B側に回り込み、且つ下側の前凸部70の辺部71から負圧面41B側に回り込む。これにより、上側の前凸部70の辺部72から気流渦F32が発生し、且つ、下側の前凸部70の辺部71から気流渦F31を発生する。このように気流渦F31、F32を確実に発生させることで、各前凸部70における気流渦F31、F32の相殺を促進できる。
【0052】
ルーバ40に沿って流れる気流は、送風面21に近いほど流速が遅い。つまり正圧面41Aのうち、中心線Cよりも上側は相対的に気流の流速が速く、中心線Cよりも下側は相対的に気流の流速が遅い。本例では、第二後凸部である下側の後凸部50の後端部50Aが、中心線Cよりも下側に設けられる。これにより、中心線Cよりも下側を流れる相対的に遅い気流を、下側の後凸部50に沿って前側に案内することで、流速が遅い気流の誘導性能を向上できる。更に言えば、第二後凸部の全体を中心線Cよりも下側に設けることで、流速が遅い気流の誘導性能を更に向上できる。
【0053】
本例では、第二後凸部である下側の後凸部50の面積が、第一後凸部である上側の後凸部50の面積よりも大きい。後凸部50の面積が大きいほど、後凸部50に沿って流れる気流の誘導性能が向上する。従って、第二後凸部の面積を相対的に大きくすることで、流速が遅い気流の誘導性能を更に向上できる。
【0054】
同様に、第二前凸部である最も下側の前凸部70の前端部70Aが、中心線Cよりも下側に設けられる。これにより、中心線Cよりも下側を流れる相対的に遅い気流を、最も下側の前凸部70に沿って前側に案内することで、流速が遅い気流の誘導性能を向上できる。更に言えば、第二前凸部の全体を中心線Cよりも下側に設けることで、流速が遅い気流の誘導性能を更に向上できる。
【0055】
本例では、第二前凸部である最も下側の前凸部70の面積が、第一前凸部である上側の前凸部70の面積よりも大きい。前凸部70の面積が大きいほど、前凸部70に沿って流れる気流の誘導性能が向上する。従って、第二前凸部の面積を相対的に大きくすることで、流速が遅い気流の誘導性能を更に向上できる。
【0056】
更に、第二前凸部である最も下側の前凸部70の突出幅H2は、第一前凸部である上側の前凸部70の突出幅H2よりも大きい。前凸部70の突出幅H2が大きいほど、前凸部70の突出方向である前方への気流の誘導性能が向上する。従って、第二前凸部の突出幅H2を相対的に大きくすることで、流速が遅い気流の前方への誘導性能を向上できる。
【0057】
先述のように、各後凸部50では、互いに相反する気流渦F21、F22によって、気流F11が相殺される。そのため気流F11が、後凸部50が設けられていない上下方向の位置から、負圧面41B側に流れ込む場合がある。同様に、各前凸部70では、互いに相反する気流渦F31、F32によって、気流F12が相殺される。そのため気流F12が、前凸部70が設けられていない上下方向の位置から、負圧面41B側に回り込む場合がある。仮に気流F11と気流F12とが互いに同じ上下方向の位置から負圧面41B側に移動すると、これらの気流F11、F12によって気流渦F1、F2が同じ高さで発生して合流し、気流Fの損失が大きくなる場合がある。
【0058】
本例では、各後凸部50の後端部50Aと、各前凸部70の前端部70Aとが、何れも異なる上下方向の位置にある。そのため、気流F11と気流F12とは、互いに異なる上下方向の位置から負圧面41B側に移動する。従って、気流F11、F12が負圧面41B側に移動した場合でも、気流渦F1、F2が互いに異なる高さで発生する。そのため、これらの気流渦F1、F2が負圧面41B側で合流することが抑制され、気流Fの損失を低減できる。
【0059】
本例では、各前凸部70の中心線Mは、前側に向かって送風面21側に傾くように延びる。羽根41の正圧面41A側では、前辺部411に向けて流れる気流が、先述のように複数の気流F12に分散される。これらの気流F12の一部は、負圧面41B側に流出することなく、複数の前凸部70に沿って前側に進む。このとき気流F12は、各前凸部70の先細り形状に従って流速が高まると共に、各前凸部70から斜め下方の送風面21側に送出される。このように、正圧面41Aに沿って流れる気流を送風面21側に誘導することで、相対的に流速が遅い送風面21側における気流Fの流速を向上できる。また、気流Fが確実に送風面21に沿って流れるため、送風面21において気流Fの上下向きを正確に調整できる。
【0060】
先述のように、後凸部50の主流方向長さ、及び後凹部60の主流方向深さは、何れも突出幅H1である。前凸部70の主流方向長さ、及び前凹部80の主流方向深さは、何れも突出幅H2である。図4に示すように、突出幅H1、H2は何れも、羽根41の主流方向長さである全長Lの25%以下である。これにより、後凸部50及び後凹部60が羽根41の全長Lに対して十分小さくなるため、羽根41の風誘導性を損なうことなく、細かい気流F11への分散と、気流渦F21、F22の相殺とを実現できる。同様に、前凸部70及び前凹部80は、羽根41の風誘導性を損なうことなく、細かい気流F12への分散と気流渦31、32の相殺とを実現できる。
【0061】
本例では、後凸部50は側面視で後端部50Aを頂点とする三角形状であり、後凹部60は側面視で前端部60Aを頂点とする円弧状である。仮に後端部50Aが上下方向に延びる辺部である場合、後凸部50において気流F11の一部が後端部50Aから負圧面41B側に流れ込み、気流渦F21、22とは異なる気流渦を生じる可能性がある。同様に、仮に前端部60Aが上下方向に延びる辺部である場合、後凹部60において気流F11の一部が前端部60Aから負圧面41B側に流れ込み、気流渦F21、22とは異なる気流渦を生じる可能性がある。
【0062】
これに対し、本例の後端部50A及び前端部60Aは、上下方向に延びる辺部を含まないため、気流渦F21、22とは異なる不要な気流渦を生じ難い。更に後端部50Aでは辺部51、52が接続されるため、辺部51で生じる気流渦F21と、辺部52で生じる気流渦F22との距離が小さくなり、気流渦F21、F22の相殺を促進できる。
【0063】
また、前凸部70は側面視で前端部70Aを頂点とする三角形状であり、前凹部80は側面視で後端部80Aを頂点とする三角形状である。上記と同様に、本例の前端部70A及び後端部80Aは上下方向に延びる辺部を含まないため、気流渦F31、32とは異なる不要な気流渦を生じ難い。更に前端部70Aでは辺部71、72が接続されるため、辺部71で生じる気流渦F31と、辺部72で生じる気流渦F32との距離が小さくなり、気流渦F31、F32の相殺を促進できる。
【0064】
[備考]
本開示は上述した実施形態に限定されず、各種変形が可能である。例えば送風機1は、冷風を送風する冷房機でもよいし、温風を送風する暖房機でもよいし、単に送風する送風機でもよい。基台20は、横ルーバに代えて縦ルーバでもよい。複数のルーバ40は、縦ルーバである基台20に設けられた横ルーバでもよい。ルーバ40は、以下に説明するように各種変形が可能である。
【0065】
第一変形例を説明する。図7は、第一変形例に係るルーバ40の側面図である。図8は、第一変形例に係るルーバ40の模式的な平面図である。図7に示すように、第一変形例のルーバ40では、実施形態と同様に、二つの後凸部50と一つの後凹部60とが後辺部412に設けられる。但し、これらの後凸部50及び後凹部60の形状は、実施形態と異なる。具体的には、後凹部60の前端部60Aは、実施形態よりも前側下方に位置する。そのため、後凸部50及び後凹部60の前後方向長さは、実施形態よりも大きい。下側の後凸部50の面積は、実施形態とは異なり、上側の後凸部50の面積よりも小さい。
【0066】
また、第一変形例のルーバ40では、前辺部411に設けられる前凸部70及び前凹部80の数量が、実施形態と異なる。具体的には、二つの前凸部70と一つの前凹部80とが、前辺部411に設けられる。これらの前凸部70及び前凹部80の形状は、実施形態と異なる。例えば、下側の前凸部70では、辺部71が前端部70Aから段差状に後方上側に延びる。前凹部80は、側面視で略U字状に凹み、実施形態よりも面積が大きい。
【0067】
第一変形例のルーバ40は、上記したように実施形態と相違点を有するが、気流Fがルーバ40を通過する場合には、実施形態と同様の作用を生じる。具体的には、図8に示すように、後辺部412から負圧面41B側に流れ込む気流が、各後凸部50によって複数の気流F11に分散され、更に各後凸部50で生じた気流渦F21、22が相殺される。前辺部411から負圧面41B側に回り込む気流が、各前凸部70によって複数の気流F12に分散され、更に各前凸部70で生じた気流渦F31、32が相殺される。
【0068】
第二変形例を説明する。図9は、第二変形例に係るルーバ40の側面図である。図9に示すように、第二変形例のルーバ40は、側面視で前後方向に長い矩形状の羽根41を有する。後辺部412は、実施形態と異なり、後凸部50及び後凹部60が設けられておらず、上下方向に延びる直線状である。実施形態と同様に、三つの前凸部70と二つの前凹部80とが前辺部411に設けられるが、これらの前凸部70及び前凹部80の形状は実施形態と異なる。
【0069】
具体的には、前辺部411では、前凸部70と前凹部80とが交互に並ぶように、三つの同一形状の前凸部70が上下に並び、二つの同一形状の前凹部80が上下に並ぶ。各前凸部70は、側面視で四角形状に前方へ突出する。各前凸部70では、前端部70Aが上下方向へ直線状に延び、且つ、辺部71、72が前端部70Aの上端及び下端から後方へ直線状に延びる。
【0070】
気流Fが第二変形例のルーバ40を通過する場合には、実施形態と同様に気流の挙動を生じる。具体的には、前辺部411から負圧面41B側に回り込む気流が、各前凸部70によって複数の気流F12に分散され、更に各前凸部70で生じた気流渦F31、32が相殺される。
【0071】
第三変形例を説明する。図10は、第三変形例に係るルーバ40の側面図である。以下では、第三変形例のルーバ40について、第二変形例と異なる点のみを説明する。図10に示すように、第三変形例のルーバ40では、三つの前凸部70の各々が、側面視で三角形状に前方へ突出する。各前凸部70では、辺部71が前端部70Aから後側上方へ直線状に延び、且つ、辺部72が前端部70Aから後側下方へ直線状に延びる。気流Fが第三変形例のルーバ40を通過する場合、第二変形例と同様に気流の挙動を生じる。
【0072】
なお、各前凸部70で生じた気流渦F31と気流渦32との間の距離Dは、気流渦F31が生成される上側の辺部71と、気流渦F32が生成される下側の辺部72との距離に依存する。第二変形例(図9参照)では、辺部71、72が互いに上下に離れているため、辺部71と辺部72との距離が相対的に大きく、距離Dも相対的に大きい。第三変形例(図10参照)では、辺部71、72が前端部70Aに向かって互いに近づくため、辺部71と辺部72との距離が相対的に小さく、距離Dも相対的に小さい。距離Dが小さいほど、気流渦F31と気流渦32とが相互干渉によって相殺されやすい。
【0073】
第四変形例を説明する。図11Aは、第四変形例に係るルーバ40の側面図である。図11Bは、第四変形例に係るルーバ40を斜め上方から視た斜視図である。以下では、第四変形例のルーバ40について、実施形態と異なる点のみを説明する。図11Aに示すように、第四変形例のルーバ40は、後凸部50及び後凹部60が後辺部412に設けられておらず、上下方向に延びる直線状である。
【0074】
前辺部411には、前凸部70と前凹部80とが交互に並ぶように、五つの同一形状の前凸部70と四つの同一形状の前凹部80とが設けられる。これらの前凸部70及び前凹部80は、側面視で斜め上下方向に並ぶ。五つの前凸部70は、互いに若干異なる方向に向かって突出しており、上側の前凸部70であるほど上側に傾き、下側の前凸部70であるほど前側に傾く。各前凸部70では、辺部71と辺部72とが側面視で斜め上下方向に並ぶ。
【0075】
気流Fが第四変形例のルーバ40を通過する場合には、実施形態と同様に気流の挙動を生じる。但し、第四変形例では、各前凸部70が互いに異なる方向に向かって突出しているため、以下のような気流の挙動も生じ得る。気流Fの主流は送風面21に沿って、正圧面41A側で前方に流れる。しかしながら、正圧面41A側で流れる気流の一部が、上方に拡散する場合がある。この場合、図11Bに示すように、第四変形例のルーバ40では、正圧面41A側で上方に拡散して負圧面41B側に回り込む気流F12を、上側に傾く前凸部70によって分散及び相殺できる。
【0076】
本例では、図4に示すように、各前凸部70の主流方向長さである突出幅H2は、その前凸部70に向かって前側上方へ拡散する気流の方向の長さである。隣り合う二つの前凸部70の突出端を結ぶ距離は、ピッチ幅Pである。突出幅H2とピッチ幅Pとは、「P≦3×H2」の関係が成り立つ。これにより、隣り合う二つの前凸部が過剰に離隔することが抑制されて、気流の分散と気流渦の相殺とを効果的に実行できる。
【0077】
上記の関係式は、突出幅H2を前凹部80の気流方向の深さとし、且つピッチ幅Pの隣り合う二つの前凸部70の底部を結ぶ距離としても成り立つ。また、後凸部50及び後凹部60を後辺部412に設けた場合には、各後凸部50に向かって後側上方へ拡散する気流の方向の長さを突出幅H1とし、隣り合う二つの後凸部50の突出端を結ぶ距離をピッチ幅Pとして、上記と同様に「P≦3×H1」の関係が成り立てばよい。
【0078】
第五変形例を説明する。図12Aは、第五変形例に係るルーバ40の側面図である。図12Bは、第五変形例に係るルーバ40を斜め上方から視た斜視図である。以下では、第五変形例のルーバ40について、第四変形例と異なる点のみを説明する。図11Aに示すように、第五変形例のルーバ40では、前凸部70と前凹部80とが交互に並ぶように、四つの前凸部70と三つの前凹部80とが前辺部411に設けられる。これらの前凸部70及び前凹部80は、側面視で斜め上下方向に並ぶ。
【0079】
四つの前凸部70は、何れも前方に向かって突出している。但し、最も上側の前凸部70は、残り三つの前凸部70と比べて、突出幅及び面積が大きい。前凸部70は、その突出幅及び面積が大きいほど、より大きな気流渦F31、32を生成及び相殺することが可能である。従って、図12Bに示すように、例えば相対的に速い気流が正圧面41Aの上側部分から負圧面41B側に回り込む場合、最も上側の前凸部70によって大きな気流渦F31、32を生成及び相殺することで、気流Fの損失を抑制できる。
【0080】
また、残り三つの前凸部70では、各前凸部70の面積が相対的に小さいため、隣り合う二つの前凸部70の上下間隔が相対的に狭い。複数の前凸部70が狭い間隔で上下に並ぶほど、複数の前凸部70によって気流を細かく分散可能である。従って、図12Bに示すように、例えば相対的に遅い気流が正圧面41Aの下側部分から負圧面41B側に回り込む場合、相対的に小さい三つの前凸部70によって気流を分散することで、気流Fの損失を抑制できる。このように、前凸部70及び前凹部80の数量、形状、面積、及び配置に応じて、ルーバ40の各部位に機能的な差異を設定できる。
【0081】
上記の各種変形例では、説明の便宜のため、後凸部50及び後凹部60が後辺部412に設けられていない場合を例示したが、後凸部50及び後凹部60が後辺部412に設けられてもよい。上記の各種変形例において、前凸部70及び前凹部80が前辺部411に設けるのに代えて、後凸部50及び後凹部60が後辺部412に設けられてもよい。
【0082】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態に夫々開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態に夫々開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B