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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113884
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/22 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B65D51/22 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019150
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】武井 弘彰
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084EA04
3E084EC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084GB08
3E084KB01
3E084LA07
3E084LA17
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】中栓の開封時にラチェット歯の強度不足による不具合が生じにくく、中栓の開封後において栓体の保持性を確保しつつ安定したシール性が得られ、注出口の口径が小さいものにも対応可能なキャップを提供すること。
【解決手段】薄肉弱化部16を破断して中栓11を開封するラチェット機構50を備えたキャップ10であって、ラチェット機構50を構成するキャップ側ラチェット歯41が栓体側ラチェット歯25の径方向内側に位置され、栓体側ラチェット歯25が、オーバーキャップ30を閉栓方向に回転させた時にキャップ側ラチェット歯41により弾性変形されるように構成される。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出口を画成する注出筒部及び前記注出筒部の内側において薄肉弱化部を介して前記注出筒部に接続された栓体を有する中栓と、前記中栓に対し着脱自在に装着されるオーバーキャップと、前記薄肉弱化部を破断して前記中栓を開封するラチェット機構とを備えたキャップであって、
前記ラチェット機構は、前記栓体に設けられた栓体側ラチェット歯と、前記オーバーキャップに設けられ前記中栓の開封時に前記オーバーキャップを開栓方向に回転させることで前記栓体側ラチェット歯と周方向に係合するキャップ側ラチェット歯とにより構成され、
前記オーバーキャップは、前記栓体の内側に位置される第1インナースリーブを有し、
前記キャップ側ラチェット歯が、前記第1インナースリーブの外周に設けられ、
前記栓体側ラチェット歯は、前記栓体の内周に設けられ、前記オーバーキャップを閉栓方向に回転させた時に前記キャップ側ラチェット歯により弾性変形されるように構成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記栓体側ラチェット歯は、径方向に沿って延びる係合面を有し、前記栓体の内周面から前記キャップ側ラチェット歯との係合時に前記オーバーキャップから受ける力が作用する方向に傾斜して延びるように設けられ、
前記係合面が前記キャップ側ラチェット歯の歯先を結んだ円より径方向内側領域に位置されていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記栓体側ラチェット歯の付け根部には、前記栓体側ラチェット歯の径方向への弾性変形を許容する空間部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項4】
前記オーバーキャップは、前記注出筒部と前記栓体との間の環状空間に位置され前記栓体の外周に当接する第2インナースリーブを有し、
前記第2インナースリーブの先端部内周には、分離される前記栓体を保持する栓体保持用係合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項5】
前記第2インナースリーブの基端部外周には、前記中栓の開封後に、前記注出筒部の内周面に係合して前記注出口を密閉するシール用係合部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のキャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プルリングを用いない中栓開封機構を備えたキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えばドレッシングや調味料などを収容する容器においては、開封時まで中栓により容器内を密封状態にし、オーバーキャップを開けると同時に中栓が開封されると共に中栓の開封後にオーバーキャップを再装着することでリシール可能に構成されたキャップが好適に用いられている。
【0003】
中栓の開封機構としては、オーバーキャップを開栓する際の回転力をラチェット機構により中栓の注出口を閉塞する栓体に伝えることで、栓体の周囲に形成した薄肉弱化部を剪断して中栓から栓体を分離すると共に、分離した栓体をオーバーキャップに保持させるタイプのものが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1のキャップにおいては、オーバーキャップを螺脱させるときのみ係合するラチェット機構を構成する第1歯部及び第2歯部が、中栓の注出筒内周面に薄肉弱化部を介して連結された栓体の筒状壁の外周及び筒状壁の外側に位置されるオーバーキャップの切断筒部の内周に設けられ、栓体の筒状壁の内周及び筒状壁の内側に位置されるオーバーキャップの係着部の外周の各々に互いに係合する係合部が設けられた構成とされている。
また、切断筒部の先端外周には、注出筒の内周面に当接して注出口を密閉するシール部が形成され、中栓開封後にオーバーキャップを装着することで容器内が密封されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6230447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、特許文献1に記載のキャップのように、第1歯部の設けられた栓体の筒状壁を、第2歯部の設けられたオーバーキャップの切断筒部に対し内側に配置し、オーバーキャップの締め込み時にオーバーキャップ側の第2歯部を弾性変形させる構成とした場合には、中栓の開封時にオーバーキャップの回転により付与される回転力は、薄肉弱化部を破断させる力と、オーバーキャップ側の第2歯部を変形させる力とに分散され、効率よく回転力を伝達することができない。
また、オーバーキャップからの回転力は回転接線方向に作用するが、該回転力を実質的に栓体側の第1歯部のみで受けることとなるため、薄肉弱化部の破断強度(スコア膜厚設定)によっては、中栓の開封時に栓体側の第1歯部をなめてしまい、中栓の開封不良を起こすことがある。また、第1歯部の設けられる筒状壁が小口径となると共に、中栓は一般にオーバーキャップよりも軟質の樹脂材料により構成されるため、栓体側の第1歯部の強度が低下しやすく、この点においても、上記問題が生じやすくなる。
さらにまた、中栓開封後において栓体を保持する係着部は、栓体の筒状壁のさらに内側に配置されるため、係着部の外径が小さくなり、強度不足や成形不良を生じるといった不具合がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のキャップは、中栓から分離した栓体を係着部の外周先端で保持している。係着部が最内周で小径になるため、栓体最外周に力がかかった際に力点と支点(保持点)の距離によりモーメントがかかりやすく、かつ係着部が最内周で小径になるので周長も短くなり保持力を出しにくい。このため、栓体が動きやすく、栓体と係着部の各々の係合部間でクリアランスが生じて係合が外れることがあり、中栓開封後における栓体保持性が低い、という問題がある。
さらにまた、特許文献1に記載のキャップは、切断筒部の先端外周に係合部が形成され、中栓開封後において容器内を密封するようになっている。しかしながら、切断筒部の内周に第2歯部が形成されていることから、切断筒部は厚薄差が大きなものとなる。このため、先端外周のシール部によるシール面は成形上のヒケによる影響を受けやすく、中栓開封後におけるシール性が低い、といった問題もある。
【0008】
本発明は、上述の問題点を解決するものであり、中栓の開封時にラチェット歯の強度不足による不具合が生じにくく、中栓の開封後において栓体の保持性を確保しつつ安定したシール性が得られ、注出口の口径が小さいものにも対応可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャップは、注出口を画成する注出筒部及び前記注出筒部の内側において薄肉弱化部を介して前記注出筒部に接続された栓体を有する中栓と、前記中栓に対し着脱自在に装着されるオーバーキャップと、前記薄肉弱化部を破断して前記中栓を開封するラチェット機構とを備えたキャップであって、前記ラチェット機構は、前記栓体に設けられた栓体側ラチェット歯と、前記オーバーキャップに設けられ前記中栓の開封時に前記オーバーキャップを開栓方向に回転させることで前記栓体側ラチェット歯と周方向に係合するキャップ側ラチェット歯とにより構成され、前記オーバーキャップは、前記栓体の内側に位置される第1インナースリーブを有し、前記キャップ側ラチェット歯が、前記第1インナースリーブの外周に設けられ、前記栓体側ラチェット歯は、前記栓体の内周に設けられ、前記オーバーキャップを閉栓方向に回転させた時に前記キャップ側ラチェット歯により弾性変形されるように構成されることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明によれば、一般に軟質の樹脂材料が用いられる栓体側ラチェット歯がキャップ側ラチェット歯より外周側に位置されることで栓体の外径を大きくすることができるため、栓体側ラチェット歯の強度を高くすることができ、栓体側ラチェット歯をなめることによる開封不良が生ずることを回避することができる。また、栓体側ラチェット歯がオーバーキャップの締め込み時に弾性変形されるように形成されることで、中栓開封時にキャップ側ラチェット歯が変形することなくキャップ側ラチェット歯からの回転力を効率よく伝達することができるので、中栓を確実に開封することが可能となる。さらにまた、中栓開封後において分離された栓体の保持機構及び容器内を密封するシール機構を、栓体の外側に設けることができるようになり、中栓の開封後における栓体の保持性を確保しつつ安定したシール性を得ることが容易となる。
【0011】
本請求項2に係る発明によれば、栓体側ラチェット歯が栓体の周壁部の内周面からキャップ側ラチェット歯との係合時にオーバーキャップから受ける力が作用する方向に延びるように形成されることで、中栓の開封時に、キャップ側ラチェット歯からの回転力を栓体側ラチェット歯だけでなく栓体側ラチェット歯の設けられた栓体全体で受けることとなる。このため、栓体側ラチェット歯の強度不足による中栓の開封不良が生ずることを一層確実に防止することが可能である。
【0012】
本請求項3に係る発明によれば、栓体側ラチェット歯の付け根部に空間部が形成されることで、オーバーキャップを締め込み方向に回転させてキャップ側ラチェット歯が栓体側ラチェット歯を乗り越えるときに、十分な大きさの撓み代を確保することができるので、栓体側ラチェット歯が潰れるなどの変形が生じたままセット状態とされることを回避することができ、中栓の開封時に栓体側ラチェット歯とキャップ側ラチェット歯とを確実に係合させることができる。
【0013】
本請求項4に係る発明によれば、分離された栓体の外周にオーバーキャップの第2インナースリーブの内周が当接することで栓体を保持可能であると共に第2インナースリーブの先端内周に設けられた栓体保持用係合部が栓体側の係合部に係合することで栓体を保持可能であるので、高い栓体保持性を得ることができる。
【0014】
本請求項5に係る発明によれば、キャップ側ラチェット歯が設けられた第1インナースリーブとは別個に設けられた第2インナースリーブにシール用係合部が形成されることで、第2インナースリーブを厚薄差が小さいものとして構成することが可能となる。このため、成形上のヒケによる影響を受けにくく、第2インナースリーブにおけるシール面を精度よく形成することができて、中栓の開封後において安定したシール性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のキャップの一構成例を示す分解図である。
図2】中栓の構成を示す、軸心に沿った平面で切断した断面図である。
図3】中栓の構成を示す平面図である。
図4】オーバーキャップの構成を示す、軸心に沿った平面で切断した断面図である。
図5】オーバーキャップの構成を示す底面図である。
図6図1に示すキャップを組み立てた状態における、軸心に沿った平面で切断した断面図である。
図7図6の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図8】セット状態とされているときの、栓体側ラチェット歯及びキャップ側ラチェット歯の状態を示す図である。
図9】オーバーキャップを閉栓方向に回転させたときの栓体側ラチェット歯及びキャップ側ラチェット歯の状態を示す図である。
図10】オーバーキャップを開栓方向に回転させたときに、栓体側ラチェット歯とキャップ側ラチェット歯とが係合した状態を示す図である。
図11】中栓の開封動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明に係るキャップ10は、容器の口部に装着される中栓11と、中栓11に対し着脱自在に装着されるオーバーキャップ30とにより構成され、中栓11を開封するラチェット機構を備える。
【0018】
中栓11は、多段円筒状をなすよう形成された樹脂製の一体成形品であって、図2及び図3にも示すように、オーバーキャップ装着部12と、オーバーキャップ装着部12の軸方向上端に連設された注出筒部15と、注出筒部15の内側において薄肉弱化部16を介して注出筒部15に接続された栓体20と、オーバーキャップ装着部12の軸方向下端に連設された筒状取付部17とを備える。オーバーキャップ装着部12、注出筒部15及び筒状取付部17は、それぞれの軸心が共通軸X上に位置されるよう形成されている。
【0019】
オーバーキャップ装着部12は、外周面に連続的にらせん状に延びるネジ部13が形成され、オーバーキャップ30が螺合装着されるように構成されている。
【0020】
注出筒部15は、外径がオーバーキャップ装着部12より小さく形成され、内容物を注出する注出口を画成する。
注出筒部15の先端部内周には、中栓11の開封後において容器内を密封するための中栓側シール用係合部21が形成されている。中栓側シール用係合部21は、周方向の全周にわたって延びるよう形成された径方向内方に突出する突部により構成されている。
【0021】
栓体20は、有底円筒状に形成され、栓体20の周壁部20aの外周と注出筒部15の内周との間に環状空間が形成されるように底壁部20bの外周が薄肉弱化部16を介して注出筒部15に接続されている。
栓体20の周壁部20aの外周の基端側部分には、周方向全周にわたって延びるよう形成された栓体側係合部22が形成されている。
また、栓体20の周壁部20aの内周には、栓体側ラチェット歯25が周方向に等間隔で形成されている。
【0022】
筒状取付部17は、外筒部17a、内筒部17b及び上壁部17cにより構成され、外筒部17aと内筒部17bとの間に容器の口部が嵌入される環状空間が形成されている。
【0023】
オーバーキャップ30は、樹脂製の一体成形品であって、図4及び図5にも示すように、円板状の天壁部31と、天壁部31の周縁から軸方向下方に向かって延びる外周側壁部32とを備える。天壁部31の内面には、軸方向下方に向かって延びるよう形成され中栓11に対する装着部を構成する内周側壁部33が設けられていると共に、内周側壁部33の内側において軸心側から順に第1インナースリーブ40及び第2インナースリーブ45が設けられている。外周側壁部32、内周側壁部33、第1インナースリーブ40及び第2インナースリーブ45は、それぞれの軸心が共通軸X上に位置されるよう設けられている。
【0024】
内周側壁部33は、内周面に連続的にらせん状に延びるネジ部34が形成され、中栓11のオーバーキャップ装着部12に対し螺合装着可能となるように構成されている。
【0025】
第1インナースリーブ40の外周には、オーバーキャップ30が開栓方向に回転されたときに、栓体側ラチェット歯25と周方向に係合可能に構成されたキャップ側ラチェット歯41が周方向に等間隔で形成されている。
【0026】
第2インナースリーブ45は、内周の一部が栓体20の外周に当接可能となるように設けられ、第2インナースリーブ45の先端部内周には、栓体保持用係合部46が周方向の全周にわたって延びるよう形成されている。これにより、第2インナースリーブ45により栓体20の外周が保持されると共に栓体保持用係合部46が栓体側係合部22に係合されることで、中栓11の開封後において分離された栓体20が保持され、中栓11の開封後において高い栓体保持性を得ることが可能となっている。
【0027】
第2インナースリーブ45の基端部外周には、キャップ側シール用係合部47が周方向の全周にわたって延びるよう形成されており、注出筒部15の中栓側シール用係合部21と係合されることで中栓11の開封後において容器内を密封(リシール)できるようになっている。第2インナースリーブ45がキャップ側ラチェット歯41の設けられた第1インナースリーブ40とは別個に設けられることで、第2インナースリーブ45を厚薄差が小さいものとして構成することが可能となる。このため、成形上のヒケによる影響を受けにくく、第2インナースリーブ45におけるシール面を精度よく形成することができて、中栓11の開封後において安定したシール性を確保することが可能となる。
【0028】
オーバーキャップ30を中栓11に装着した状態にあっては、図6乃至図8に示すように、第1インナースリーブ40が栓体20の周壁部20aの内側に位置されると共に、第2インナースリーブ45が栓体20の周壁部20aと注出筒部15との間の環状空間において栓体20の外周に当接するように位置される。
また、栓体保持用係合部46が栓体側係合部22に係合されることで、中栓11の開封後における栓体20の保持機構が構成され、キャップ側シール用係合部47が中栓側シール用係合部21に係合されることで、中栓11の開封後において容器内を密封するシール機構が構成されている。
【0029】
而して、本実施例に係るキャップ10においては、中栓11を開封するためのラチェット機構50が、栓体20の周壁部20a内面に設けられた栓体側ラチェット歯25と、栓体20に対し径方向内側に位置されるオーバーキャップ30における第1インナースリーブ40外面に設けられたキャップ側ラチェット歯41とにより構成され、栓体側ラチェット歯25がオーバーキャップ30の締め付け時に弾性変形されるように構成されている。
【0030】
キャップ側ラチェット歯41は、略三角形状をなすよう形成され、第1インナースリーブ40の外周に連続し円弧に沿った曲面からなる非係合面42と、非係合面42に滑らかに連続し径方向内方に向かって延びる係合面43とを有する。
キャップ側ラチェット歯41の歯の高さは、例えば、第1インナースリーブ40の厚さと同等の大きさもしくは第1インナースリーブ40の厚さより小さく形成されている。
【0031】
栓体側ラチェット歯25は、栓体20の周壁部20a内周面からキャップ側ラチェット歯41との係合時にオーバーキャップ30から受ける力が作用する方向である回転接線方向に傾斜して延びるように設けられており、先端に径方向に沿って延びる係合面26を有する。栓体側ラチェット歯25の係合面26は、キャップ側ラチェット歯41の歯先を結んだ円(歯先円)Cより径方向内側領域に位置されており、これにより、中栓11の開封時に、キャップ側ラチェット歯41からの回転力を栓体側ラチェット歯25だけでなく栓体側ラチェット歯25の設けられた栓体20全体で受けることとなり、栓体側ラチェット歯25の強度不足による中栓11の開封不良が生ずることを確実に防止することができるようになっている。
【0032】
栓体側ラチェット歯25の付け根部には、栓体側ラチェット歯25を先端側が周壁部20a内周に接近する方向への弾性変形を許容する空間部27が設けられており、栓体側ラチェット歯25の十分な大きさの撓み代が確保されている。このため、オーバーキャップ30が閉栓方向に回転されたときにキャップ側ラチェット歯41が栓体側ラチェット歯25を乗り越えることが可能となり、栓体側ラチェット歯25が潰れるなどの変形が生じたままセット状態とされることを回避することができて、中栓11の開封時に栓体側ラチェット歯25とキャップ側ラチェット歯41とを確実に係合させることが可能となる。
【0033】
上記のキャップ10においては、オーバーキャップ30を中栓11に対し閉栓方向に回転させてオーバーキャップ30を最後まで締め付けることで、キャップ側ラチェット歯41が栓体側ラチェット歯25に直ちに係合可能なセット状態とされる。オーバーキャップ30の締め付け時には、図9に示すように、キャップ側ラチェット歯41により栓体側ラチェット歯25を弾性的に変形させ、キャップ側ラチェット歯41が栓体側ラチェット歯25を乗り越えるようにしてフリーに回転するようになっている。
【0034】
中栓11を開封するときには、オーバーキャップ30を開栓方向に回転させると、図10に示すように、キャップ側ラチェット歯41が栓体側ラチェット歯25と係合し、オーバーキャップ30の回転力が栓体20に伝わることで、栓体20が回転して薄肉弱化部16を剪断する。このとき、栓体側ラチェット歯25がオーバーキャップ30の締め込み時に弾性変形されるように形成されることで、図11に示すように、キャップ側ラチェット歯41が変形することなくオーバーキャップ30の回転力を栓体側ラチェット歯25に効率よく伝達することができる。しかも、栓体側ラチェット歯25は、栓体20の周壁部20aの内周面から回転接線方向に延びるように形成されているため、オーバーキャップ30からの回転力は、栓体側ラチェット歯25だけでなく栓体側ラチェット歯25の設けられた栓体20全体で受けることとなる。このため、栓体側ラチェット歯25の強度不足による中栓11の開封不良が生ずることが防止され、栓体20を中栓11から分離させて中栓11を開封することができる。中栓11の開封後においては、分離した栓体20は、第2インナースリーブ45により保持された状態となっており、オーバーキャップ30を再装着することで、キャップ側シール用係合部47が中栓側シール用係合部21と係合して容器内を密封し、再利用に備えた状態となる。
【0035】
而して、上記のキャップ10によれば、一般に軟質の樹脂材料が用いられる栓体側ラチェット歯25がキャップ側ラチェット歯41より外周側に位置されることで栓体20の外径を大きくすることができるため、栓体側ラチェット歯25の強度を高くすることができ、栓体側ラチェット歯25をなめることによる開封不良が生ずることを回避することができる。また、栓体側ラチェット歯25がオーバーキャップ30の締め込み時に弾性変形されるように形成されることで、中栓11の開封時にキャップ側ラチェット歯41を変形させることなくキャップ側ラチェット歯41からの回転力を効率よく伝達することができるので、中栓11を確実に開封することが可能となる。さらにまた、中栓11の開封後において分離された栓体20の保持機構及び容器内を密封するシール機構を、栓体20の外側に設けることができるようになり、中栓11の開封後における栓体20の保持性を確保しつつ安定したシール性を得ることが容易となる。
以上のように、上記のキャップ10によれば、栓体側ラチェット歯25がキャップ側ラチェット歯41より外周側に位置されることで、中栓11の開封時に各ラチェット歯の強度不足による不具合が生じにくく、中栓11の開封後において栓体20の保持性を確保しつつ安定したシール性が得られるので、注出口の口径が小さい場合に、特に有用なものとなる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、栓体側ラチェット歯及びキャップ側ラチェット歯の材質、歯数、歯の形状及びその他の具体的な構成は、上記実施形態に係るものに限定されず、目的に応じて適宜変更することができる。
また、上記実施形態においては、オーバーキャップにおける第2インナースリーブに栓体保持用係合部を設けたいわゆるアンダーカット方式による栓体の保持機構を備えた構成について説明したが、中栓の開封後における栓体の保持機構は、アンダーカット方式に限定されるものではなく、例えばフラップ折り込みによる保持機構であってもよい。
さらにまた、キャップの取付対象となる容器の種類は如何なるものでもよく、例えば、樹脂製容器、ガラス容器や紙パック等でもよい。また、内容物の具体的態様についても特に限定されるものではなく、液体状や粉末状など如何なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ・・・ キャップ
11 ・・・ 中栓
12 ・・・ オーバーキャップ装着部
13 ・・・ ネジ部
15 ・・・ 注出筒部
16 ・・・ 薄肉弱化部
17 ・・・ 筒状取付部
17a ・・・ 外筒部
17b ・・・ 内筒部
17c ・・・ 上壁部
20 ・・・ 栓体
20a ・・・ 周壁部
20b ・・・ 底壁部
21 ・・・ 中栓側シール用係合部
22 ・・・ 栓体側係合部
25 ・・・ 栓体側ラチェット歯
26 ・・・ 係合面
27 ・・・ 空間部
30 ・・・ オーバーキャップ
31 ・・・ 天壁部
32 ・・・ 外周側壁部
33 ・・・ 内周側壁部
34 ・・・ ネジ部
40 ・・・ 第1インナースリーブ
41 ・・・ キャップ側ラチェット歯
42 ・・・ 非係合面
43 ・・・ 係合面
45 ・・・ 第2インナースリーブ
46 ・・・ 栓体保持用係合部
47 ・・・ キャップ側シール用係合部
50 ・・・ ラチェット機構

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11