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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113886
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】粒状物撮影装置及び粒状物撮影方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019152
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(71)【出願人】
【識別番号】519244072
【氏名又は名称】キューブイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】木原 由光
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047KK30
4C047KK31
(57)【要約】
【課題】サイズが統一しない粒状物でも各方向からのクリアな画質で撮影可能な粒状物撮影装置の提供。
【解決手段】被写物体を載置する撮影ステージ(S)と、撮影ステージ上に置かれた被写物体を上方から撮影する撮像手段を備え、撮影ステージは、中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の右側縁部に回転軸が設けられた第1トレイ(11b)と、中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の左側縁部に回転軸が設けられ、該底板の左側縁部が第1トレイの底板の右側縁部に平行となるよう近接して配置された第2トレイ(11c)と、第1トレイの回転軸を回転駆動する第1トレイ回転手段(14)と、第2トレイの回転軸を回転駆動する第2トレイ回転手段(15)とを備えた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象の粒状物である被写物体を載置する撮影ステージと、
前記撮影ステージの上方に配設され、前記撮影ステージ上に置かれた被写物体を上方から撮影する撮像手段とを備え、
前記撮影ステージ上に載置される被写物体の撮影を行う粒状物撮影装置であって、
前記撮影ステージは、
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の右側縁部に回転軸が設けられた第1トレイと、
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の左側縁部に回転軸が設けられ、該底板の左側縁部が前記第1トレイの底板の右側縁部に平行となるよう近接して配置された第2トレイと、
前記第1トレイの回転軸を回転駆動する第1トレイ回転手段と、
前記第2トレイの回転軸を回転駆動する第2トレイ回転手段と、
を備えたことを特徴とする粒状物撮影装置。
【請求項2】
前記撮影ステージが一直線上に複数個配列された撮影ステージ列を一乃至複数列備え、
それぞれの前記撮影ステージ列の前記各撮影ステージは、前記各撮影ステージの前記第1トレイの回転軸が連結され、且つ、前記各撮影ステージの前記第2トレイの回転軸が連結されており、
すべての前記撮影ステージ列の前記第1トレイの回転軸は前記第1トレイ回転手段により連動して回転駆動されるように構成され、
すべての前記撮影ステージ列の前記第2トレイの回転軸は前記第2トレイ回転手段により連動して回転駆動されるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の粒状物撮影装置。
【請求項3】
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記第1トレイ及び前記第2トレイの上面には、
凹面状に形成された前記凹面部と、
前記回転軸が設けられた側の縁部に形成され、前記凹面部に連続に接続し、前記トレイ基準面に平行乃至該第1又は第2トレイの中心に向かって下向きに傾斜した平面状の平坦部と、が設けられており、
前記第1トレイ及び前記第2トレイは、前記第1トレイ及び前記第2トレイを前記トレイ基準面が水平となる位置に回動させた状態としたとき、前記第1トレイ及び前記第2トレイの前記平坦面部の前記回転軸が設けられた側の外側縁が同じ高さとなるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の粒状物撮影装置。
【請求項4】
前記撮像手段、前記第1トレイ回転手段、前記第2トレイ回転手段の動作を制御する制御手段を備え、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上面縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記制御手段は、
(1)前記第1トレイ及び前記第2トレイのトレイ基準面を水平とした第1姿勢状態で、前記第1トレイの前記底板上の被写物体を前記撮像手段により撮影するとともに、
(2)前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動した第2姿勢状態として被写物体を前記第2トレイへ移動させた後に前記第2トレイの前記底板上の被写物体を前記撮像手段により撮影を行うように、又は前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動して前記第2姿勢状態として被写物体を前記第2トレイへ移動させた後、前記第1トレイのトレイ基準面が水平となるまで回転駆動して前記第1姿勢状態としてから、前記第2トレイの前記底板上の被写物体を前記撮像手段により撮影を行うように、制御するものであることを特徴とする請求項1記載の粒状物撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記第1トレイ回転手段を、前記第1トレイのトレイ基準面を右下方に傾斜するように回転駆動して、前記第1姿勢状態から前記第2姿勢状態へ移行する間に、連続して又は断続的に、前記撮像手段により撮影を行うように制御するものであることを特徴とする請求項4記載の粒状物撮影装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記撮像手段により撮影された画像から被写物体の姿勢を検出する姿勢判定手段と、
撮影したい被写物体の撮影姿勢の情報を記憶する撮影姿勢記憶手段と、
前記姿勢判定手段により検出された被写物体の姿勢に基づき、前記撮影姿勢記憶手段に記憶された撮影姿勢となるように、前記第1トレイ回転手段及び前記第2トレイ回転手段により前記第1トレイ及び前記第2トレイの回転角を制御するトレイ回転角制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4記載の粒状物撮影装置。
【請求項7】
前記撮像手段、前記第1トレイ回転手段、前記第2トレイ回転手段の動作を制御する制御手段を備え、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上面縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記制御手段は、
(1)前記第1トレイ及び前記第2トレイのトレイ基準面を水平とした第1姿勢状態で、前記第1トレイの前記凹面部に載置される被写物体を前記撮像手段により撮影するとともに、
(2)前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動するとともに、前記第2トレイのトレイ基準面を前記第1トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動することで、前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態として、このV字谷状に折れ曲がったV字谷部分に被写物体を滑動させ、
(3)前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態を維持しつつ、前記第1トレイを立ち下げる方向に回転駆動するとともに、前記第2トレイをさらに立ち上げる方向に回転駆動して、被写物体を表裏反転させて前記第1トレイの前記凹面部へ滑動させ、
(4)前記第1トレイ及び前記第2トレイを前記第1姿勢状態に戻し、前記第1トレイの前記凹面部上の被写物体を前記撮像手段により撮影するように、制御するものであること
を特徴とする請求項3記載の粒状物撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段の制御によって前記撮像手段により撮影される被写物体の画像に基づき、該被写物体の種類を判別する被写物体判別手段を備えたことを特徴とする請求項4乃至7の何れか一記載の粒状物撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1トレイ回転手段及び前記第2トレイ回転手段の駆動制御をしている間に、連続して又は断続的に、前記撮像手段により撮影を行うように制御するものであり、
前記撮像手段により連続して又は断続的に撮影された画像に基づき、該被写物体の種類を判別するものであること特徴とする、請求項8記載の粒状物撮影装置。
【請求項10】
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の右側縁部に回転軸が設けられ、該凹面部から該回転軸にかけての該底板の上面縁部に、該凹面部に連続に接続し、水平又は該凹面部側に向かって下向きに傾斜した平面状の平坦部が形成されてなる第1トレイと、
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の左側縁部に回転軸が設けられ、該凹面部から該回転軸にかけての該底板の上面縁部に、該凹面部に連続に接続し、水平又は該凹面部側に向かって下向きに傾斜した平面状の平坦部が形成されてなる第2トレイと、を具備し、
前記第2トレイの前記底板の左側縁部が、前記第1トレイの前記底板の右側縁部に平行となるよう近接して且つ同じ高さとなるように配置された撮影ステージと、
前記撮影ステージの上方に配設された撮像手段と、
を用いて、前記撮影ステージ上に載置される、表裏のある粒体形状の被写物体の撮影を行う粒状物撮影方法であって、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上面縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのトレイ基準面を水平とした第1姿勢状態で、前記第1トレイの前記凹面部に載置される被写物体を前記撮像手段により撮影する第1ステップと、
前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転させるとともに、前記第2トレイのトレイ基準面を前記第1トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転させることで、前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態として、このV字谷状に折れ曲がったV字谷部分に被写物体を滑動させる第2ステップと、
前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態を維持しつつ、前記第1トレイを立ち下げる方向に回転駆動するとともに、前記第2トレイをさらに立ち上げる方向に回転させて、被写物体を表裏反転させて前記第1トレイの前記凹面部へ滑動させる第3ステップと、
前記第1トレイ及び前記第2トレイを前記第1姿勢状態に戻し、前記第1トレイの前記凹面部上の表裏反転した被写物体を前記撮像手段により撮影する第4ステップと、
を有する粒状物撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状薬剤等の粒状物の撮像を行う撮影装置に関し、特に、粒状物の表裏両面の撮像を行う粒状物撮影装置及び粒状物撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や薬局などにおいて、患者により持ち込まれる、現在患者が服用している錠剤やカプセルなどの粒状の持参薬の判別では、判別間違いがあってはならず、厳格な判別が求められている。然し乍ら、一般に持参薬はサイズが小さく、類似した形状,色,印刷・刻印表示のものが多いため、薬剤師の目視による判別では、一定の確率でヒューマンエラーが発生することは避けられないと考えられる。従って、機械による持参薬の厳格な自動判別技術が求められている。
【0003】
このような持参薬の自動判別を行う自動判別装置を構成する場合、判別のために複数の未知の粒状持参薬を撮影ステージ上に置いて撮影し、得られた画像に基づき判別が行われる。然し乍ら、粒状持参薬を撮影ステージ上に適当に置いた場合、粒状持参薬の印刷・刻印表示がカメラ向きを向いていて見える場合と、カメラ向きとは逆向きになって見えない場合が発生する。これでは、撮影画像から個々の粒状持参薬が何であるかを識別することができない。
【0004】
そこで、従来は、透明ガラスなど光透光性の支持板からなる撮影ステージ上に置いた粒状薬剤を、2つのカメラを使って、上側と下側とから撮影し、上側画像と下側画像とを撮影する方法があった(特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献2には、錠剤を左右から搬送用の無端ベルトで挟み込んだ状態で撮影位置へ搬送し、撮影位置において、無端ベルトで挟み込まれた錠剤の上方位置及び下方位置に反射鏡を斜めに配置するとともに、錠剤から上下の反射鏡に入射して反射鏡で反射されるレイの反射経路上に1台のカメラ(撮影装置)を配置し、上下の反射鏡に写る錠剤の表面像及び裏面像を1台のカメラで同時に撮影する割線情報取得装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、錠剤印刷装置の一部として、空気吸引機構を備えた第1の搬送ベルトに撮影対象の錠剤の裏面側を吸着させて搬送し、この搬送途中で、第1の搬送ベルトの上方に設けたカメラで錠剤の表面側を撮影した後、もう一つの空気吸引機構を備えた搬送ベルトに錠剤の表面側を吸着させて搬送し、この搬送途中で、第2の搬送ベルトの上方に設けたカメラで錠剤の裏面側を撮影する薬剤撮影装置が記載されている。
【0007】
一方、粒状薬剤の撮影を目的とするものではないが、球状物体の表面と裏面を撮影する撮影装置として、特許文献4に記載の球状物体外観検査装置が開示されている。この球状物体外観検査装置は、表側面に縦横に配列して格子状に設けられた半球状の凹処が形成され、且つそれぞれの凹処の底部に裏面へ貫通する吸気孔が形成された、平板状の第1ステージと、第1ステージと同型に形成された第2ステージとを備えている。第1ステージの表側面を上にして各凹処に球状物体を嵌め込んで吸気孔から真空吸引して球状物体を凹処に固定して上方から各球状物体の上半面をカメラにより撮影する。次いで、第2ステージの表側面を下にして、第1ステージの上向きの表側面と合掌した状態で合着させ、各球状物体の第2ステージの(下向きの)表側面の各凹処に嵌め込んだ状態とし、第2ステージの各凹処の底部の吸気孔から真空吸引して球状物体を第2ステージの各凹処に固定して、第1ステージの真空吸引を停止した後、合着した第1ステージ及び第2ステージを上下反転させる。そして、上側となった第1ステージを第2ステージの上面(表側面)から退避させた後、第2ステージの上方から上下反転した各球状物体の下半面をカメラにより撮影する。これにより、各球状物体の上半面と下半面とが撮影できる。
【0008】
また、特許文献5には、レンズなどの部品を反転させる部品反転装置として、略水平に配置されて多孔質部材で形成された被反転部品を載置する第一パッドと、該第一パッドに被反転部品を挟んで密着可能な、多孔質部材で形成された第二パッドと、第一パッドに対して第二パッドを密着位置と離間位置との間で変位させる第二パッド移動機構と、第一パッドと第二パッドとが密着した状態で、両パッドを反転させる反転機構と、第二パッドに対して第一パッドを密着位置と離間位置との間で変位させる第一パッド移動機構とを備えたものが記載されている。第一パッド,第二パッドの裏面から真空吸引して部品を第一パッド,第二パッドに吸着させることができる。そして、第一パッド,第二パッドに吸着された部品の一方の面を撮影部により撮影するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-37373号公報
【特許文献2】特開2020-174902号公報
【特許文献3】特開2017-64213号公報
【特許文献4】特開2022-19003号公報
【特許文献5】特開2004-292065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の薬剤撮影装置のように、透光板の撮影ステージの上下から2つのカメラを使って粒状薬剤の上側画像と下側画像とを撮影する方式では、下側画像は透光板を通して撮影されることになる。この場合、透光板を透過する光の屈折により、撮影される下側画像が歪んだり、カメラの焦点が合わずに撮影される画像がボケてしまうケースがあり、錠剤の判別が難しくなるという問題があった。
【0011】
特許文献2に記載の薬剤撮影装置のように、2つの無端ベルトで錠剤を挟んだ状態で上下から撮影する方式では、装置が大がかりとなり簡易に導入しにくい。また、2つの無端ベルトで錠剤を挾持する際に、錠剤の上下をカメラ方向に合わせる必要があり、簡便な撮影が出来ないという問題がある。特に、カプセル錠剤では、錠剤の形状ではなく、錠剤表面の印刷向きで上下が決まるため、機械的な上下合わせが困難であり人手に頼る必要が生じる。特許文献3に記載の薬剤撮影装置も同様の問題がある。
【0012】
この点、特許文献4,5に記載の装置のように、第1の撮影ステージ上に載せた錠剤を上方から撮影した後、撮影対象を上から第2の撮影ステージで挟み上下反転させた後、第1の撮影ステージを退避させ、第2の撮影ステージ上に載せた錠剤を上方から撮影する方式では、透光板による撮影画像のぼけや、錠剤の上下あわせの問題が生じない。然し乍ら、患者の持参する粒状持参薬は、サイズや形状が千差万別であり、撮影ステージ上に全ての粒状持参薬の形状に合致する凹処を設けるのは困難である。また、凹処を設けない場合、サイズの異なる粒状持参薬を撮影ステージ上に同時に載せた場合、複数の撮影ステージで粒状持参薬を挾持する際に、両撮影ステージの間隔は最も高さの高い粒状持参薬の高さに合い、高さの低い粒状持参薬は両撮影ステージ間に十分に滑らず挾持された状態とはならない。そのため、両撮影ステージを上下反転する際に高さの低い粒状持参薬が位置ずれを生じたり、転がり落ちたりする問題がある。
【0013】
また、カプセル錠剤のように、形状的に表裏のない錠剤では、撮影ステージ上にカプセル錠剤を置いた際に、錠剤の種類が印刷された面が横向きになっていた場合には、その状態で錠剤を撮影しても撮影された画像からその錠剤の種類を判定することができないという問題があった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、サイズが統一していない粒状薬剤等の粒状物であっても、粒状物の各方向からのボケがなくクリアな画質での撮影が可能な粒状物撮影技術を提供することにある。また、本発明の目的は、カプセル錠剤のように、形状的に表裏のない錠剤であっても、錠剤の種類が印刷された面を確実に撮影することが可能な粒状物撮影技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る粒状物撮影装置の第1の構成は、撮影対象の粒状物である被写物体を載置する撮影ステージと、
前記撮影ステージの上方に配設され、前記撮影ステージ上に置かれた被写物体を上方から撮影する撮像手段とを備え、
前記撮影ステージ上に載置される被写物体の撮影を行う粒状物撮影装置であって、
前記撮影ステージは、
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の右側縁部に回転軸が設けられた第1トレイと、
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の左側縁部に回転軸が設けられ、該底板の左側縁部が前記第1トレイの底板の右側縁部に平行となるよう近接して配置された第2トレイと、
前記第1トレイの回転軸を回転駆動する第1トレイ回転手段と、
前記第2トレイの回転軸を回転駆動する第2トレイ回転手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第1トレイ回転手段,第2トレイ回転手段によって第1トレイと第2トレイを回動させて、被写物体を第1トレイと第2トレイの間で転がせて又は滑らせて撮像手段により撮像することで、被写物体の表面全体を撮影することができる。また、撮像手段と被写物体との間にはガラスなどの透光板がないので、カメラの焦点が合わずに撮影される画像がボケてしまうこともなくなる。また、被写物体のサイズや形状がどのようなものであっても、被写物体の表面全体を撮影することができる。また、カプセル形状の被写物体のように形状的に表裏のない被写物体であっても、被写物体を第1トレイと第2トレイの間で転がせて撮像手段により撮像することで、被写物体の種類などが印刷された面を確実に撮影することが可能となる。
【0017】
本発明に係る粒状物撮影装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記撮影ステージが一直線上に複数個配列された撮影ステージ列を一乃至複数列備え、
それぞれの前記撮影ステージ列の前記各撮影ステージは、前記各撮影ステージの前記第1トレイの回転軸が連結され、且つ、前記各撮影ステージの前記第2トレイの回転軸が連結されており、
すべての前記撮影ステージ列の前記第1トレイの回転軸は前記第1トレイ回転手段により連動して回転駆動されるように構成され、
すべての前記撮影ステージ列の前記第2トレイの回転軸は前記第2トレイ回転手段により連動して回転駆動されるように構成されていること
を特徴とする。
【0018】
この構成によれば、撮影ステージ列の各撮影ステージのそれぞれに被写物体を載せて撮影することで、同時に複数の被写物体の表面全体を撮影することができる。
【0019】
本発明に係る粒状物撮影装置の第3の構成は、前記第1の構成において、前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記第1トレイ及び前記第2トレイの上面には、
凹面状に形成された前記凹面部と、
前記回転軸が設けられた側の縁部に形成され、前記凹面部に連続に接続し、前記トレイ基準面に平行乃至該第1又は第2トレイの中心に向かって下向きに傾斜した平面状の平坦部と、が設けられており、
前記第1トレイ及び前記第2トレイは、前記第1トレイ及び前記第2トレイを前記トレイ基準面が水平となる位置に回動させた状態としたとき、前記第1トレイ及び前記第2トレイの前記平坦面部の前記回転軸が設けられた側の外側縁が同じ高さとなるように配置されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第1トレイ及び第2トレイの上面に凹面部と平坦部を設けたことにより、第1トレイと第2トレイの間で形状的に表裏がある被写物体を移動させるときに、トレイの回転によって折れ曲げられた第1及び第2トレイの平坦部で被写物体を表裏反転させることができる。また、第1トレイ及び第2トレイの前記平坦面部の外側縁が同じ高さとなるように配置することで、第1トレイと第2トレイの間で被写物体を移動させるとき引っ掛かって止まることが防止され、また、死点(被写物体の移動の駆動外力が作用しない点)がなくなるので、被写物体がトレイ間を移動中に両トレイの間で動かなくなることも防止できる。
【0021】
本発明に係る粒状物撮影装置の第4の構成は、前記第1の構成において、前記撮像手段、前記第1トレイ回転手段、前記第2トレイ回転手段の動作を制御する制御手段を備え、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上面縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記制御手段は、
(1)前記第1トレイ及び前記第2トレイのトレイ基準面を水平とした第1姿勢状態で、前記第1トレイの前記底板上の被写物体を前記撮像手段により撮影するとともに、
(2)前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動した第2姿勢状態として被写物体を前記第2トレイへ移動させた後に前記第2トレイの前記底板上の被写物体を前記撮像手段により撮影を行うように、又は前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動して前記第2姿勢状態として被写物体を前記第2トレイへ移動させた後、前記第1トレイのトレイ基準面が水平となるまで回転駆動して前記第1姿勢状態としてから、前記第2トレイの前記底板上の被写物体を前記撮像手段により撮影を行うように、制御するものであることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1トレイの底板上の被写物体を撮像した後、第2姿勢状態として被写物体を第2トレイへ移動させることで、被写物体を転がして向きを変化させて、第2トレイの底板上の被写物体を撮像することができる。
【0023】
本発明に係る粒状物撮影装置の第5の構成は、前記第4の構成において、前記制御手段は、
前記第1トレイ回転手段を、前記第1トレイのトレイ基準面を右下方に傾斜するように回転駆動して、前記第1姿勢状態から前記第2姿勢状態へ移行する間に、連続して又は断続的に、前記撮像手段により撮影を行うように制御するものであることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、被写物体が球状,円柱状,カプセル形状のように形状的な表裏のない粒状物の場合、第1姿勢状態から第2姿勢状態へ移行する間に、連続して又は断続的に撮像手段により撮影することで、滑って又は転げている被写物体の表面全体を撮影することができる。また、転がり方の特徴の情報も得ることができる。
【0025】
本発明に係る粒状物撮影装置の第6の構成は、前記第4の構成において、前記制御手段は、
前記撮像手段により撮影された画像から被写物体の姿勢を検出する姿勢判定手段と、
撮影したい被写物体の撮影姿勢の情報を記憶する撮影姿勢記憶手段と、
前記姿勢判定手段により検出された被写物体の姿勢に基づき、前記撮影姿勢記憶手段に記憶された撮影姿勢となるように、前記第1トレイ回転手段及び前記第2トレイ回転手段により前記第1トレイ及び前記第2トレイの回転角を制御するトレイ回転角制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、被写物体の姿勢を検出しながら第1トレイ及び第2トレイの回転角を制御することで、形状的に表裏のある被写物体の場合、より確実に表裏反転を行わせることが出来る。
【0027】
本発明に係る粒状物撮影装置の第7の構成は、前記第3の構成において、前記撮像手段、前記第1トレイ回転手段、前記第2トレイ回転手段の動作を制御する制御手段を備え、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上面縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記制御手段は、
(1)前記第1トレイ及び前記第2トレイのトレイ基準面を水平とした第1姿勢状態で、前記第1トレイの前記凹面部に載置される被写物体を前記撮像手段により撮影するとともに、
(2)前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動するとともに、前記第2トレイのトレイ基準面を前記第1トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転駆動することで、前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態として、このV字谷状に折れ曲がったV字谷部分に被写物体を滑動させ、
(3)前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態を維持しつつ、前記第1トレイを立ち下げる方向に回転駆動するとともに、前記第2トレイをさらに立ち上げる方向に回転駆動して、被写物体を表裏反転させて前記第1トレイの前記凹面部へ滑動させ、
(4)前記第1トレイ及び前記第2トレイを前記第1姿勢状態に戻し、前記第1トレイの前記凹面部上の被写物体を前記撮像手段により撮影するように、制御するものであること
を特徴とする。
【0028】
この構成によれば、制御手段による上記第1トレイ及び第2トレイの駆動制御により、形状的に表裏のある被写物体を確実に表裏反転させて撮影を行うことが出来る。
【0029】
本発明に係る粒状物撮影装置の第8の構成は、前記第4乃至7の何れか一の構成において、前記制御手段の制御によって前記撮像手段により撮影される被写物体の画像に基づき、該被写物体の種類を判別する被写物体判別手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る粒状物撮影装置の第9の構成は、前記第8の構成において、前記制御手段は、前記第1トレイ回転手段及び前記第2トレイ回転手段の駆動制御をしている間に、連続して又は断続的に、前記撮像手段により撮影を行うように制御するものであり、
前記撮像手段により連続して又は断続的に撮影された画像に基づき、該被写物体の種類を判別するものであること特徴とする。
【0031】
本発明に係る粒状物撮影方法は、中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の右側縁部に回転軸が設けられ、該凹面部から該回転軸にかけての該底板の上面縁部に、該凹面部に連続に接続し、水平又は該凹面部側に向かって下向きに傾斜した平面状の平坦部が形成されてなる第1トレイと、
中央に向かって凹む凹面部が上面に形成された底板を有し、該底板の左側縁部に回転軸が設けられ、該凹面部から該回転軸にかけての該底板の上面縁部に、該凹面部に連続に接続し、水平又は該凹面部側に向かって下向きに傾斜した平面状の平坦部が形成されてなる第2トレイと、を具備し、
前記第2トレイの前記底板の左側縁部が、前記第1トレイの前記底板の右側縁部に平行となるよう近接して且つ同じ高さとなるように配置された撮影ステージと、
前記撮影ステージの上方に配設された撮像手段と、
を用いて、前記撮影ステージ上に載置される、表裏のある粒体形状の被写物体の撮影を行う粒状物撮影方法であって、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのそれぞれの上面縁を含む面をトレイ基準面とすると、
前記第1トレイ及び前記第2トレイのトレイ基準面を水平とした第1姿勢状態で、前記第1トレイの前記凹面部に載置される被写物体を前記撮像手段により撮影する第1ステップと、
前記第1トレイのトレイ基準面を前記第2トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転させるとともに、前記第2トレイのトレイ基準面を前記第1トレイに向かって斜め下に傾斜するように回転させることで、前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態として、このV字谷状に折れ曲がったV字谷部分に被写物体を滑動させる第2ステップと、
前記第1トレイの前記平坦部と前記第2トレイの前記平坦部とがV字谷状に折れ曲がった状態を維持しつつ、前記第1トレイを立ち下げる方向に回転駆動するとともに、前記第2トレイをさらに立ち上げる方向に回転させて、被写物体を表裏反転させて前記第1トレイの前記凹面部へ滑動させる第3ステップと、
前記第1トレイ及び前記第2トレイを前記第1姿勢状態に戻し、前記第1トレイの前記凹面部上の表裏反転した被写物体を前記撮像手段により撮影する第4ステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、第1トレイ回転手段,第2トレイ回転手段によって第1トレイと第2トレイを回動させて、被写物体を第1トレイと第2トレイの間で転がして又は滑らせて撮像手段により撮像することで、被写物体の表面全体を撮影することができる。また、撮像手段と被写物体との間にはガラスなどの透光板がないので、カメラの焦点が合わずに撮影される画像がボケてしまうこともなくなる。また、被写物体のサイズや形状がどのようなものであっても、被写物体の表面全体を撮影することができる。また、カプセル形状の被写物体のように形状的に表裏のない被写物体であっても、被写物体を第1トレイと第2トレイの間で転がせて撮像手段により撮像することで、被写物体の種類などが印刷された面を確実に撮影することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施例1に係る粒状物撮影装置の機構部の構成を表す模式透視図である。(a)は斜視図、(b)は側面図を表す。
図2】本発明の実施例1に係る粒状物撮影装置の全体構成を表す機能ブロック図である。
図3図1の粒状物撮影装置の機構部1の撮影ステージアセンブリ3を示す斜視図である。
図4図3の個々の撮影ステージSの拡大斜視図である。
図5図3の各撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cの動作範囲を示す図である。
図6図3の左駆動トランスミッション12及び右駆動トランスミッション13の周辺の分解斜視図である。
図7】実施例1の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の動作を説明する図である。
図8】実施例2の粒状物撮影装置の撮影ステージSの(a)拡大斜視図、及び(b)A-A線断面図である。
図9】実施例2の粒状物撮影装置の撮影ステージSの動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。
図10】実施例2の粒状物撮影装置の撮影ステージSの動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。
図11】実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの(a)拡大斜視図、(b)平面図、及び(b)A-A線断面図である。
図12】実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの駆動機構を表す図である。
図13】実施例3の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の第1の動作を説明する図である。
図14】実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第1の動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。
図15】実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第1の動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。
図16】実施例3の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の第2の動作を説明する図である。
図17】実施例3の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の第2の動作を説明する図である。
図18】実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第2の動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。
図19】実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第2の動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。
図20】実施例4の粒状物撮影装置の撮影ステージSの(a)拡大斜視図、(b)平面図、及び(b)A-A線断面図である。
図21】実施例4の粒状物撮影装置による撮影時の被写物体の反転動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例0035】
(1)粒状物撮影装置の構成
図1は、本発明の実施例1に係る粒状物撮影装置の機構部の構成を表す模式透視図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は側面図を表す。尚、図1に於いては、本発明の内容に関係のない構成部分は省略されている。
【0036】
図1に於いて、粒状物撮影装置の機構部1は、筺体2、撮影ステージアセンブリ3、撮影装置4、及び照明装置5を備えている。
【0037】
筺体2は、遮光性の箱状体であり、撮影の際に外部からの光を遮蔽するように構成されている。撮影ステージアセンブリ3は、撮影時に、撮影対象の粒状物である被写物体を載置する台である。撮影ステージアセンブリ3は、筺体2の内部の底面に設置され、抽斗のように、筺体2内へ出し入れ可能に設置されている。この撮影ステージアセンブリ3の詳細については後述する。
【0038】
撮影装置4は、筺体2内に設置された撮影ステージアセンブリ3の中央の真上に、筺体2の天井付近に固定設置されたカメラである。撮影装置4には、通常のCCD撮像装置などのデジタル画像撮影装置が使用される。尚、図1の例では、撮影装置4は1つとしているが、複数の角度から被写物体を撮影可能とするように、撮影装置4を複数個設けるように構成することも出来る。照明装置5は、筺体2の内部の撮影ステージアセンブリ3の上方に固定設置された、撮影ステージアセンブリ3上に光を照射するための照明である。照明装置5は、LEDなどの発光素子が使用される。照明装置5は、筺体2の内部の各所に複数個設置されており、様々な角度から撮影ステージアセンブリ3上に光を照射することが可能に構成されている。尚、図1の照明装置5の配置例は一例であり、本発明では照明装置5の個数や位置は目的に合わせて任意に変更することが出来る。
【0039】
図2は、本発明の実施例1に係る粒状物撮影装置の全体構成を表す機能ブロック図である。図2に於いて、図1の構成部分に対応する構成部分には同符号を付している。粒状物撮影装置は、図1で説明した機構部1に加えて、コンピュータで構成される制御装置100を備えている。この制御装置100は、制御部101、撮影画像記憶部102、テンプレート記憶部103、判定部104、入力部105、出力部106、姿勢判定部107及び撮影姿勢記憶部108を備えている。
【0040】
制御部101は、機構部1の撮影ステージアセンブリ3の動作制御や、撮影装置4による撮影及び画像取り込みや、各照明装置5による照明の制御を行う機能モジュールである。撮影画像記憶部102は、撮影装置4により撮影された画像を記憶保存する機能モジュールである。テンプレート記憶部103は、各被写物体の判別のためのテンプレート画像などの識別情報(テンプレート情報)を記憶保存する機能モジュールである。判定部104は、テンプレート記憶部103に記憶されたテンプレート情報に基づき、撮影装置4により撮影された画像から被写物体の種類の判別を行う機能モジュールである。姿勢判定部107は、撮影装置4により撮影された画像から被写物体Pの姿勢を検出する機能モジュールである。撮影姿勢記憶部108は、撮影対象の各種の種被写物体Pの撮影姿勢の情報(各姿勢において撮影された画像の情報)を記憶する機能モジュールである。入力部105は、キーボードやマウス等のコンピュータの入力装置である。出力部106は、ディスプレイなどのコンピュータの出力装置である。
【0041】
尚、本実施例に於いては、制御部101,撮影画像記憶部102,テンプレート記憶部103,判定部104の各機能モジュールは、コンピュータにプログラムを読み込ませて実行することにより、コンピュータ内に機能的に構成されているものとする。
【0042】
図3は、図1の粒状物撮影装置の機構部1の撮影ステージアセンブリ3を示す斜視図である。図3に於いて、撮影ステージアセンブリ3は、ベースプレート10、撮影ステージ行列11、左駆動トランスミッション12、右駆動トランスミッション13、左駆動モータ14、及び右駆動モータ15を備えている。
【0043】
ベースプレート10は、前側辺の中央に把手10aが突出形成された略矩形状の平板である。ベースプレート10は、金属、硬質樹脂(プラスチック等)、又は木材で構成されており、その表面は、ベンタブラック(登録商標)などの光反射を抑制する黒色塗料により塗層されている(図3では、図示の便宜上、色彩は省略)。尚、以下では、ベースプレート10の把手10aがある側を「前側」とし、前側からベースプレート10を視て左を「左側」、右を「右側」とする。
【0044】
撮影ステージ行列11は、ベースプレート10の上面に配設され、被写物体を載置し又は反転させるトレイ反転機構が縦横格子状に配列された平面視で矩形状の組立体である。この撮影ステージ行列11は、パーティション11a、左トレイ11b(第1トレイ)、右トレイ11c(第2トレイ)、左駆動軸11d、右駆動軸11e、及び軸カバー11fを備えている。パーティション11aは、撮影ステージ行列11の占める直方体状の空間を、平面視で格子状に区劃する格子板状の隔壁である。このパーティション11aにより仕切られた各区劃空間のそれぞれに、撮影ステージSが設けられている。撮影ステージ行列11に行列状に配列された撮影ステージSに於いて、前後方向を「列方向」、左右方向を「行方向」とする。図3の例では、撮影ステージ行列11には、3列×5行の撮影ステージSが配列されている。これら其々の撮影ステージSには、左トレイ11b、右トレイ11c及び軸カバー11fが配設されている。
【0045】
図4に、図3の個々の撮影ステージSの拡大斜視図を示す。図4では、説明の便宜上、軸カバー11fは透過表示している。左トレイ11b(第1トレイ)は、上面が中央に向かって凹む凹面状に形成された、平面視で矩形状の底板を有し、該底板の右側縁辺に回転軸(左駆動軸11d)が設けられている。右トレイ11c(第2トレイ)は、上面が中央に向かって凹む凹面状に形成された、平面視で矩形状の底板を有し、該底板の左側縁辺に回転軸(右駆動軸11e)が設けられている。撮影ステージSの一対の左トレイ11b及び右トレイ11cは、左トレイ11bの回転軸と右トレイ11cの回転軸とが平行となるよう近接して配置されている。そして、左トレイ11bの回転軸と右トレイ11cの回転軸を上下から挟み込んで囲うように軸カバー11fが設けられている。列方向に配列された各撮影ステージSの左トレイ11bの回転軸は一直線に連結されている。この列方向に連結された左トレイ11bの回転軸が左駆動軸11dである。また、列方向に配列された各撮影ステージSの右トレイ11cの回転軸も一直線に連結されている。この列方向に連結された右トレイ11cの回転軸が右駆動軸11eである。左駆動軸11d及び右駆動軸11eは、それぞれ、撮影ステージSの各列に1本であり、図3の撮影ステージ行列11の例では、それぞれ、3本の左駆動軸11d及び右駆動軸11eが設けられている。
【0046】
また、本実施例1に於ける左トレイ11b及び右トレイ11c(以下、纏めて「トレイ」という。)の上面の形状は、トレイ上面の中心点(高さの最低点)を通る垂直面で切断した断面形状が、どの向きの垂直面で切断した場合でも、上面の切断線が円弧状となるように形成されている。
【0047】
尚、左トレイ11b、右トレイ11c、及び軸カバー11fは、ベースプレート10と同様、光反射を抑制する黒色塗料により塗層されている(図3図4では、図示の便宜上、色彩は省略)。パーティション11aは、ガラスや透明樹脂などの無色透明の材料により構成されている。
【0048】
また、撮影対象である被写物体Pに傷がつくのを防止するため、左トレイ11b及び右トレイ11cの表面にゴムやスポンジなどの弾性体シートを敷設するようにしてもよい。
【0049】
図5に、図3の各撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cの動作範囲を示す。図5(a)は左トレイ11bを最大角度まで立ち上げた状態、図5(b)は左トレイ11b及び右トレイ11cを最小角度に開いた状態、図5(c)は右トレイ11cを最大角度まで立ち上げた状態である。
【0050】
左駆動トランスミッション12及び右駆動トランスミッション13は、複数の同型のインボリュート歯車を横一列に配列して隣接する歯車同士を噛咬させてなる伝動機構である。図6に、図3の左駆動トランスミッション12及び右駆動トランスミッション13の周辺の分解斜視図を示す。左駆動トランスミッション12と右駆動トランスミッション13とは、ベースプレート10上に同じ高さで配置されており、右駆動トランスミッション13が左駆動トランスミッション12よりも前側に配置されている。従って、3本の左駆動軸11dは右駆動トランスミッション13を貫通しており、各左駆動軸11dが貫通する部分の右駆動トランスミッション13の歯車には、左駆動軸11dと干渉しないように逃げ溝13aが設けられている。図5に於いて、左駆動トランスミッション12の符号Aが附されたギア軸に左駆動モータ14の回転軸が接続される。また、右駆動トランスミッション13の符号Bが附されたギア軸に右駆動モータ15の回転軸が接続される。各左駆動軸11dは、左駆動トランスミッション12の符号Aのギアから数えて偶数番目のギアのギア軸に接続される。各右駆動軸11eは、右駆動トランスミッション13の符号Bのギアから数えて偶数番目のギアのギア軸に接続される。従って、左駆動モータ14の回転軸を回転させることにより、各左駆動軸11dはすべて同じ回転向きに回転駆動され、右駆動モータ15の回転軸を回転させることにより、各右駆動軸11eはすべて同じ回転向きに回転駆動される。
【0051】
左駆動モータ14(第1トレイ回転手段)及び右駆動モータ15(第2トレイ回転手段)は、それぞれ、左駆動軸11d,右駆動軸11eを介して、左トレイ11b,右トレイ11cを回転駆動するモータであり、ステッピングモータのように回転量を正確に制御可能なモータが用いられる。
【0052】
(2)粒状物撮影装置の動作
次に、本実施例1の粒状物撮影装置の動作について説明する。図7は、実施例1の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の動作を説明する図である。図7の表の「側面透視」の列は、1つの撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cを前側から視た側面透視図であり、「上面」の列は、1つの撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cを真上から視た平面図である。ここでは、被写物体Pとして、構造的に明確な表面と裏面とがあるような構造の粒状物(例えば、膨円板形の錠剤)を撮影する場合について説明する。
【0053】
ステップ1では、まず、左トレイ11b及び右トレイ11cを水平とし、被写物体Pを左トレイ11bの上面に載せた状態として、入力部105から撮影開始の指示を制御装置100に入力する。制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最初の画像情報として撮影画像記憶部102へ保存する。
【0054】
次に、ステップ2~ステップ3では、制御装置100は、左駆動モータ14を駆動して左トレイ11bを最大角度まで立ち上げる。このとき、急速に立ち上げると左トレイ11b上の被写物体Pが跳ね上がるため、左トレイ11bは被写物体Pが跳ねない程度の速度で立ち上げ、被写物体Pが左トレイ11bの上面を滑りながら右トレイ11cの方向へ移動するようにする。被写物体Pは左トレイ11bの上面を滑りつつ右トレイ11cの方向へ移動して軸カバー11fの左上コーナーに当たると、被写物体Pには左トレイ11bの回転によるトルクと右方向への慣性力とが働くため、被写物体Pは回転し、上下反転する。そして、そのまま軸カバー11fの上面から右トレイ11cの上面を滑って移動し、中央が凹んだ右トレイ11cの中央付近まで移動して停止する。この間、制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いつつ、撮影装置4により被写物体Pを連続的又は断続的に撮影し、撮影した画像情報を、途中経過の画像情報として、撮影画像記憶部102へ保存する。
【0055】
また、ステップ2~ステップ3においては、制御部101は、姿勢判定部107により検出された被写物体の姿勢に基づき、撮影姿勢記憶部108に記憶された撮影姿勢となるように、左駆動モータ14及び右駆動モータ15により左トレイ11b及び右トレイ11cの回転角と回転速度を調整しながら制御するようにしてもよい。
【0056】
次に、ステップ4では、制御装置100は、左駆動モータ14を駆動して左トレイ11bを全開状態まで立ち下げる。そして、制御装置100は、右トレイ11cの中央付近で停止した、反転した被写物体Pし対し、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最後の画像情報として、撮影画像記憶部102へ保存する。
【0057】
尚、必要に応じて、さらに続けて、同様の方法で、右トレイ11cから左トレイ11bへ被写物体Pを移動・反転させて被写物体Pを撮影することもできるし、これらを複数回繰り返して被写物体Pを左トレイ11bと右トレイ11cの間で移動・反転させて被写物体Pを撮影することもできる。
【0058】
判定部104は、撮影画像記憶部102に保存された撮影画像の情報を、テンプレート記憶部103に記憶されたテンプレート情報と照合することにより、被写物体Pの種類を判別し、出力部106に出力する。被写物体Pの種類の判別方法としては、簡単には、最初の画像情報と最後の画像情報を用いて、テンプレート情報の画像とテンプレートマッチングを行うことで、被写物体Pの種類の判別する。また、より精度のよい判別が求められる場合には、途中経過の画像情報を用いてテンプレートマッチングを行い被写物体Pの種類の判別することもできる。更に、被写物体Pの形状・大きさ・質量・材質(摩擦係数・弾性係数)により、被写物体Pの転がり方に特徴が生じるので、テンプレート情報として、被写物体の種類毎に各種被写物体の転がり経過を撮影した連続画像を教師データとして学習させた学習済みのニューラルネットワーク型フィルタを用いて、撮影画像記憶部102に保存された被写物体Pの途中経過の画像情報をこのニューラルネットワーク型フィルタに入力することによって、被写物体Pの種別を判別する方法を採用することもできる。
【実施例0059】
実施例2の粒状物撮影装置は、機構部1に於いて、各撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cの形状のみが異なり、それ以外は実施例1と同様の構成である。
【0060】
図8は、実施例2の粒状物撮影装置の撮影ステージSの(a)拡大斜視図、及び(b)A-A線断面図である。実施例2の左トレイ11b及び右トレイ11cの形状も、実施例1と同様、平面視で矩形状で、上面が中央に向かって凹む凹面状となるように形成されされているが、実施例2では、図8に示すように、左トレイ11b及び右トレイ11c(以下、纏めて「トレイ」という。)の上面を左駆動軸11d及び右駆動軸11e(回転軸)に垂直な垂直切断面で切断した断面形状のみが円弧状となり、回転軸方向に対して並進対称となるような凹円弧筒面状の湾曲面に形成されている。
【0061】
本実施例2の粒状物撮影装置の動作は、実施例1の粒状物撮影装置の動作と同様である。そこで、ここでは、実際に物理演算シミュレータを用いて実施例2の粒状物撮影装置の動作をシミュレーションした結果を示す。図9及び図10は、実施例2の粒状物撮影装置の撮影ステージSの動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。物理演算シミュレータは、オープンソースライブラリである物理演算エンジンODE(Open Dynamics Engine)を用いてプログラミングしたものを作成して用いた。図9では、カプセル形の被写物体P1を用いて計算を行い、図10では、膨円盤形の被写物体P2を用いて計算を行った。カプセル形の被写物体P1では、形状的に明確な表面と裏面とは存在しない。一方、膨円盤形の被写物体P2では形状的に明確な表面と裏面とが存在する。回転の様子を明確に表示するため、被写物体P1,P2ともに、向きを示すための刻印を設けている。計算に用いた被写物体P1,P2の具体的な形状は、図9図10の表の下に示している。図9図10に於いて、表内の各図の上に附された番号は時刻を表し、番号が小さい方から大きい方に向かって時刻が経過している。また、図9図10の表中の各図は、撮影ステージSの中心点の真上から、真下に向かって撮影したものである。
【0062】
カプセル形の被写物体P1の場合(図9参照)、被写物体P1の長軸方向は、左トレイ11b又は右トレイ11cの円弧筒面状湾曲面の円筒軸(以下「トレイ湾曲軸」と呼ぶ。)方向に対し平行に近づくように力が働く。従って、図9に示すように、左トレイ11b上に被写物体P1を自由落下させると、被写物体P1は左トレイ11b上で跳ねたり滑ったり転げたりして、最終的に図9の表の時刻1のように、被写物体P1の長軸方向は、トレイ湾曲軸に近い方向を向いた状態で静止する。この状態から、左トレイ11bを立ち上げると、左トレイ11bの上面は、右向きに下がる傾斜が大きくなり、被写物体P1は、その長軸を回転軸として右向きに転がり始める(時刻2~6)。次いで、被写物体P1は軸カバー11fの左コーナーに衝突して被写物体P1を乗り越え(時刻6~9)、水平に置かれている右トレイ11c上に落下し、右トレイ11c上を転がって、最終的に右トレイ11cの上面の最低位置である中央付近で静止する。
【0063】
このように、カプセル形の被写物体P1の場合には、被写物体P1は左トレイ11b上面から軸カバー11f上面を通って右トレイ11c上面を転がるので、被写物体P1が転がる経過を連続的に又は断続的に撮影装置4で撮影することで、被写物体P1の側面全体を撮影することが可能となる。そして、判定部104は、撮影した被写物体P1の側面全体の画像情報に基づき、被写物体P1の種別を正確に判別することが出来る。
【0064】
一方、膨円盤形の被写物体P2の場合(図10参照)、図10に示すように、左トレイ11b上に被写物体P2を自由落下させると、被写物体P2は左トレイ11b上で跳ねたり滑ったり転げたりして、最終的に図10の表の時刻1のように、被写物体P2の下面(又は場合によっては上面)を上に向けた状態で静止する。この状態から、左トレイ11bを立ち上げると、左トレイ11bの上面は、右向きに下がる傾斜が大きくなり、被写物体P2は、左トレイ11bの上面を滑るようにして右へ移動し(時刻1~4)、左トレイ11bの右縁辺まで移動して軸カバー11fの左コーナーに衝突する(時刻5)。このとき、被写物体P2は上面と下面がほぼ垂直な状態となるように立ち上がっており、軸カバー11fの左コーナーに衝突することで、被写物体P2は上下が反転するように軸カバー11fの上面で転がる(時刻5~7)。そして、被写物体P2は上下が反転した状態で右トレイ11cの上面に落下し、そのまま右トレイ11cの上面を滑って、最終的に右トレイ11cの上面の最低位置である中央付近で静止する(時刻7~16)。
【0065】
このように、膨円盤形の被写物体P2の場合には、被写物体P2は左トレイ11b上面から軸カバー11f上面を通って右トレイ11c上面へ上下反転して転がるので、被写物体P2が転がる経過を連続的に又は断続的に撮影装置4で撮影することで、被写物体P2の上面及び下面(また必要があれば側面)を撮影することが可能となる。そして、判定部104は、撮影した被写物体P2の上面及び下面(また必要があれば側面)の画像情報に基づき、被写物体P2の種別を正確に判別することが出来る。
【実施例0066】
実施例1,2の粒状物撮影装置では、被写物体Pの移動に対して軸カバー11fの上面が死点(被写物体Pの移動の駆動外力が作用しない点)となっている。従って、左トレイ11b及び右トレイ11cの上面形状,駆動速度や、被写物体Pの形状・サイズ・摩擦係数などの条件によっては、被写物体Pがトレイ間を移動中に軸カバー11fの上面で停止して動かなくなる可能性がある(死点停止の問題)。また、特に被写物体Pのサイズが小さい場合や摩擦係数が大きい場合には、トレイの上面を滑って軸カバー11fの左右のコーナーに衝突した際に、引っかかって停止する可能性もある(引っ掛かり問題)。また、特に被写物体Pが円板形のように明確な表面と裏面を有するような場合、被写物体Pの摩擦係数が小さい場合などでは、被写物体Pがトレイ間を移動する際にうまく反転しない可能性がある(非反転の問題)。そこで、本実施例では、これらの問題を解決する為の本発明の構成例について説明する。尚、本実施例の粒状物撮影装置では、粒状物撮影装置の機構部1のみが実施例1と異なるものとし、制御装置100の構成は実施例1と同様であるとする。
【0067】
(1)撮影ステージSの構成
図11は、実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの(a)拡大斜視図、(b)平面図、及び(b)A-A線断面図である。図11において、図4の各構成部分に対応する構成部分には同符号を付している。本実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSは、実施例1,2と同様、左トレイ11b,右トレイ11c,左駆動軸11d,及び右駆動軸11eを備えているが、軸カバー11fは備えていない。
【0068】
左トレイ11b及び右トレイ11cは平面視で矩形状に形成されており、左トレイ11b及び右トレイ11cの上面には、其々、凹面状に形成された凹面部11g,11hが設けられている。凹面部11g,11hは、凹円弧筒面状に形成されており、凹円弧筒面の中心軸はトレイの左右側辺に平行とされている。
【0069】
左トレイ11b及び右トレイ11cのそれぞれの上縁を含む面をトレイ基準面とする(図11(c)参照)。左トレイ11bの凹面部11gの右縁辺には、該右縁辺全体に亘って、トレイ基準面に平行な平坦部11iが設けられており、右トレイ11cの凹面部11hの左縁辺には、該左縁辺全体に亘って、トレイ基準面に平行な平坦部11jが設けられている。平坦面部11iは凹面部11gの右縁辺に折れ曲がるようにして連続に接続し、平坦面部11jは凹面部11hの左縁辺に折れ曲がるようにして連続に接続している。
【0070】
左トレイ11bの右縁辺以外の各辺には、コの字状の側壁部11kが垂直に設けられ、該側壁部11kの上縁は、凹面部11g右縁辺の近傍部分が右に向かって下向きに傾斜し、それ以外の部分は同じ高さとなるように形成されている。右トレイ11cの左縁辺以外の各辺にも、コの字状の側壁部11kが垂直に設けられ、該側壁部11kの上縁は、凹面部11hの左縁辺の近傍部分が左に向かって下向きに傾斜し、それ以外の部分は同じ高さとなるように形成されている。
【0071】
左トレイ11bの平坦面部11iの中央には、右に向かってヒンジ部11lが突出形成されており、右トレイ11cの平坦面部11jの両端には、左に向かってヒンジ部11m,11mが突出形成されている。ヒンジ部11lの上面は平坦面部11iと面一の平面に形成され、ヒンジ部11m,11mの上面は平坦面部11jと面一の平面に形成されている。左トレイ11bのヒンジ部11lには、左トレイ11bの右縁辺と平行に貫通孔が形成され、この貫通孔に左駆動軸11dが挿通されており、ヒンジ部11lは、この左駆動軸11dに固定されている。右トレイ11cのヒンジ部11m,11mには、右トレイ11cの左縁辺と平行に貫通孔が形成され、この貫通孔に左駆動軸11dが回転自在に挿通されている。また、ヒンジ部11m,11mの外側端には、円筒状の右駆動軸11eが連接されている。左駆動軸11dは、この右駆動軸11eの筒内に回転自在に挿通されている。従って、本実施例では、長尺円柱状の左駆動軸11dと、円筒状の右駆動軸11eとは同軸となるように配設されている。
【0072】
この左駆動軸11dによって、左トレイ11bのヒンジ部11lと右トレイ11cのヒンジ部11m,11mとは回転自在に結合されている。図11のように、左トレイ11b及び右トレイ11cを、それぞれのトレイ基準面が水平となる位置に回動させた状態としたとき、左トレイ11bの平坦面部11iと右トレイ11cの平坦面部11jとは面一となる。すなわち、左トレイ11b及び右トレイ11cの平坦面部11i,11jの回転軸(左駆動軸11d,右駆動軸11e)が設けられた側の外側縁は、同じ高さとなる。
【0073】
(2)駆動機構の構成
図12は、実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの駆動機構を表す図である。図12(a)は部分透視平面図を表しており、図12(b)は左駆動軸11d,右駆動軸11eと左駆動トランスミッション12,右駆動トランスミッション13との接続部周辺の拡大透視斜視図を表している。尚、説明の便宜上、図12では1つの撮影ステージSのみを表示しているが、図3と同様に複数の撮影ステージSを行列状に配列した構成としてもよい。
【0074】
本実施例の駆動機構も、実施例1の場合と同様、左駆動軸11dを駆動する左駆動モータ14(図示せず)と、右駆動軸11eを駆動する右駆動モータ15(図示せず)と、左駆動モータ14の回転軸の回転を左駆動軸11dに伝達する左駆動トランスミッション12と、右駆動モータ15の回転軸の回転を右駆動軸11eに伝達する右駆動トランスミッション13とを備えている。左駆動軸11dは左駆動トランスミッション12の中の一つの歯車のギア軸12bに接続されており、右駆動軸11eは右駆動トランスミッション13の中の一つの歯車のギア軸13bに接続されている。
【0075】
本実施例では、長尺円柱状の左駆動軸11dと、円筒状の右駆動軸11eとが同軸となるように配設されているので、右駆動軸11eを駆動する右駆動トランスミッション13の各歯車のギア軸13bには、中心軸に沿って貫通孔13cが設けられており、左駆動軸11dはこの貫通孔13cを貫通するように回転自在に遊挿されている。図12において、左駆動トランスミッション12の符号Aが附されたギア軸12bに、左駆動モータ14(図示せず)の回転軸が接続され、右駆動トランスミッション13の符号Bが附されたギア軸13bに、右駆動モータ15(図示せず)の回転軸が接続される。あとは、実施例1で説明したものと同様であり、詳細な説明は省略する。
【0076】
(3)撮影ステージSの動作1
まず、単純な撮影ステージSの第1の動作パターンについて説明する。図13は、実施例3の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の第1の動作を説明する図である。図13の表の「側面透視」の列は、1つの撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cを前側から視た側面透視図であり、「上面透視」の列は、1つの撮影ステージSの左トレイ11b及び右トレイ11cを真上から視た平面透視図である。ここでは、被写物体Pとして、構造的に明確な表面と裏面とがあるような構造の粒状物(例えば、膨円板形の錠剤)を撮影する場合について説明する。尚、実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSは、左右のトレイ上面が左右対称に形成されているので、最初に左右のトレイの何れに被写物体Pを置いて始めてもよいが、ここでは最初に左トレイ11bに被写物体Pを置いた状態を例にとって説明する。
【0077】
ステップ1では、まず、被写物体Pを左トレイ11bの上面に載せた状態として、入力部105から撮影開始の指示を制御装置100に入力する。制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最初の画像情報として撮影画像記憶部102へ保存する。
【0078】
次に、ステップ2では、制御装置100は、左駆動モータ14を駆動して左トレイ11bを最大角度まで立ち上げる。図13では、立ち上げ角度は60~70度とされている。このとき、急速に立ち上げると左トレイ11b上の被写物体Pが跳ね上がるため、左トレイ11bは被写物体Pが跳ねないで且つ転がらず滑る程度の速度で立ち上げ、被写物体Pが左トレイ11bの上面を滑りながら右トレイ11cの方向へ移動するようにする。被写物体Pは左トレイ11bの上面を滑りつつ右トレイ11cの方向へ移動して凹面部11gの右端に達する。凹面部11gの右端と平坦面部11iとの境界は折れ曲がっているので、凹面部11gの右端では、被写物体Pには右方向の慣性力と、下方向の重力が働くことで、右回りのトルクが作用し、被写物体Pは上下反転して、右トレイ11cの凹面部11hへ落下し、そのまま右トレイ11cの凹面部11h上を滑る。
【0079】
次に、ステップ3では、制御装置100は、右駆動モータ15を右回り駆動して右トレイ11cを水平よりも右に傾けるように緩やかに沈降回転させる。このとき沈降角は5~15度程度とする。これにより、右トレイ11cの凹面部11h上に落下した被写物体Pが跳ねたり転げたりするのを抑制し、上下反転した被写物体Pを右トレイ11cの凹面部11h上で滑らせて停止される。右トレイ11cを沈降回転させるタイミングは、被写物体Pが右トレイ11cの凹面部11h上に落下するくらいのタイミングとするが、これは予め時間を設定しても良いし、照明装置5が撮影する映像から、被写物体Pが左トレイ11bと右トレイ11cの境界を通過することを検出して、そのタイミングで右トレイ11cを沈降回転させるように制御してもよい。最終的に、被写物体Pは、右トレイ11cの凹面部11h上の最も低い位置周辺で、初期状態から反転した状態で停止する。この間、制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いつつ、撮影装置4により被写物体Pを連続的又は断続的に撮影し、撮影した画像情報を、途中経過の画像情報として、撮影画像記憶部102へ保存する。
【0080】
最後に、ステップ4で、制御装置100は、左駆動モータ14を駆動して左トレイ11bを水平状態に回転させるとともに、右駆動モータ15を駆動して右トレイ11cを水平状態に回転させる。この間も、制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いつつ、撮影装置4により被写物体Pを連続的又は断続的に撮影し、撮影した画像情報を、途中経過の画像情報として、撮影画像記憶部102へ保存する。
【0081】
また、必要に応じて、さらに続けて、同様の方法で、右トレイ11cから左トレイ11bへ被写物体Pを移動・反転させて被写物体Pを撮影することもできるし、これらを複数回繰り返して被写物体Pを左トレイ11bと右トレイ11cの間で移動・反転させて被写物体Pを撮影することもできる。
【0082】
判定部104は、撮影画像記憶部102に保存された撮影画像の情報を、テンプレート記憶部103に記憶されたテンプレート情報と照合することにより、被写物体Pの種類を判別し、出力部106に出力する。これは、実施例1と同様である。
【0083】
図14及び図15は、実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第1の動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。シミュレーションの方法は、実施例2で説明したものと同様である。図14では、被写物体Pとして、図10と同様の膨円盤形の被写物体P2を使用している。図15では、被写物体Pとして、図15の表の下に表示したような、平面視で帯直円(レーストラック形)の上下に膨らみ側面が筒面状の被写物体P3を使用している。図9及び図10と同様、図14及び図15の表内の各図の上に附された番号は時刻を表し、番号が小さい方から大きい方に向かって時刻が経過している(但し、時刻は不等間隔)。また、図14及び図15の表中の各図は、撮影ステージSの中心点の真上から、真下に向かって撮影した透視図(各トレイを透視した図)である。
【0084】
図14においては、被写物体P2は、左トレイ11bから右トレイ11cへ移動する。図15においては、被写物体P3は、右トレイ11cから左トレイ11bへ移動する。
【0085】
図14の場合では、被写物体P2は時刻1~7で、左トレイ11bの立ち上がりに伴って、凹面部11g上を右へ滑って移動し、時刻8でV字状に折れた平坦面部11i,11jを超える。このとき、回転が加わり、時刻9~11で反転し、時刻12~20で、右トレイ11cの凹面部11h上を滑って凹面部11hの中央付近で停止する。
【0086】
図15の場合では、被写物体P3は時刻1~8で、右トレイ11cの立ち上がりに伴って、凹面部11h上を左へ滑って移動し、時刻8~9でV字状に折れた平坦面部11i,11jを超える。このとき、回転が加わり、時刻9~12で反転し、時刻13~20で、左トレイ11bの凹面部11g上を滑って凹面部11gの中央付近で停止する。
【0087】
このように、本実施例の撮影ステージSでは、左トレイ11b及び右トレイ11cの間に死点や引っ掛かり構造を有さないため、被写物体Pが左トレイ11bと右トレイ11cとの間を引っ掛かったり停止したりするすることなく移動することが可能となり、前述した死点停止の問題や引っ掛かり問題が解消される。また、左トレイ11bと右トレイ11cの接する部分に平坦面部11i,11jを設けたことにより、凹面部11g(又は凹面部11h)を滑って右(又は左)に移動する被写物体Pは、凹面部11g(又は凹面部11h)と平坦面部11i,11jとの間に生じる段差によって回転するように付勢されて反転するため、前述した非反転の問題も解消することができる。
【0088】
(4)撮影ステージSの動作2
次に、形状的に明確な表裏があるような被写物体Pを確実に反転させるための撮影ステージSの第2の動作パターンについて説明する。図16及び図17は、実施例3の粒状物撮影装置による被写物体の撮影時の第2の動作を説明する図である。以下の説明では、被写物体Pは、膨円板形形状のように、形状的に明確な表裏があるような形状であるものとする。また、左トレイ11bを水平状態よりも右回りに回転させることを「立ち上げ」、水平状態よりも右回りに回転した状態から水平状態に向かって左回りに回転させることを「立ち下げ」、水平状態よりも左回りに回転させることを「沈降」、水平状態よりも左回りに回転した状態から水平状態に向かって右回りに回転させることを「浮上」と呼ぶ。同様に、右トレイ11cを水平状態よりも左回りに回転させることを「立ち上げ」、水平状態よりも左回りに回転した状態から水平状態に向かって右回りに回転させることを「立ち下げ」、水平状態よりも右回りに回転させることを「沈降」、水平状態よりも右回りに回転した状態から水平状態に向かって左回りに回転させることを「浮上」と呼ぶ。
【0089】
ステップ1では、まず、左トレイ11b及び右トレイ11cを水平とし、被写物体Pを左トレイ11bの上面に載せた状態として、入力部105から撮影開始の指示を制御装置100に入力する。制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最初の画像情報として撮影画像記憶部102へ保存する。以下、便宜上、このステップ1において左トレイ11b上に置かれた被写物体Pの上面を「表面」、下面を「裏面」とする。
【0090】
次に、ステップ2では、制御装置100は、左トレイ11b及び右トレイ11cを立ち上げる向きに駆動する。このとき、左トレイ11bが最終的に到達する立上角θは、右トレイ11cが最終的に到達する立上角θよりも大きくする。また、左トレイ11bの立上角θは、左トレイ11bの凹面部11gの内側端(右側端)は略水平となるようにする。より、具体的には、左トレイ11bの立上角θは45~70度、右トレイ11cの立上角θは25~45度(但し、θ<θ)とするのが好適である(図16の例では、θ=50度,θ=30度)。このとき、左トレイ11bの平坦面部11iと右トレイ11cの平坦面部11jとはV字谷状となる。これにより、被写物体Pは左トレイ11bの凹面部11gの上面を右トレイ11cの側に向けて滑動する。凹面部11gの内側端では、平坦面部11iが下向きに曲折しているので、凹面部11gの内側端に達した被写物体Pは、慣性によりジャンプし、重力によって落下して、左下向きに傾斜した右トレイ11cの平坦面部11jに当たって、平坦面部11iと平坦面部11jとが成すV字谷の底へ滑り落ちる。
【0091】
次に、ステップ3では、制御装置100は、ステップ2の最終時刻の状態で、左トレイ11b及び右トレイ11cを一定時間静止させる。これにより、平坦面部11iと平坦面部11jとが成すV字谷の底へ滑り落ちた被写物体Pは、安定した状態となるまで揺れ動いて、完全に静止する。ここで、右トレイ11cの平坦面部11jの傾斜角は、左トレイ11bの平坦面部11iの傾斜角よりも小さいので、最終的に、被写物体Pは、表面を上に向けた状態で、右トレイ11cの平坦面部11jに裏面を接するようにして止まる(図16参照)。
【0092】
次に、ステップ4では、制御装置100は、左トレイ11b及び右トレイ11cをさらに立ち上げる向きに駆動する。このとき、左トレイ11bの平坦面部11iと右トレイ11cの平坦面部11jが成す角θLRは90度以下となるようにし、右トレイ11cの立上角θは90度よりも小さく且つ左トレイ11bの立上角θよりも小さい角度とする(図16参照)。より、具体的には、左トレイ11bの立上角θは70~90度、右トレイ11cの立上角θは45~70度(但し、θ<θ)とするのが好適である(図16の例では、θ=70度,θ=40度)。これにより、被写物体Pは、裏面が右トレイ11cの平坦面部11jに接した状態で、平坦面部11i,11jな成すV字谷内に自由に動ける状態でに挟まれた状態となる。また、このとき、被写物体Pの表面は、左トレイ11bの平坦面部11iの法線よりも平坦面部11i側に寄るように傾いた状態となる。
【0093】
次に、ステップ5~7では(図17参照)、制御装置100は、左トレイ11bを左回りに回転駆動して立ち下げつつ、それに追随するように右トレイ11cを更に左回りに回転駆動しする。このとき、左トレイ11bが最終的に立上角θは0度以下とし、右トレイ11cが最終的に立上角θは90度以上とする。より、具体的には、左トレイ11bの立上角θは0~-15度、右トレイ11cの立上角θは90~130度とするのが好適である(図17の例では、θ=-12度,θ=120度)。これにより、被写物体Pは、平坦面部11i,11jが成すV字谷に挟まれた状態で、右トレイ11cの平坦面部11jに押されて左トレイ11bの平坦面部11iへ押し倒されるように表裏反転させられた後、続けて左トレイ11bの凹面部11g上の傾斜を左方向に滑り落ちて、摩擦により減速し凹面部11g上の最も低くなった部分の周辺へ滑動する。ここで、左トレイ11bを沈降向きの傾斜が大きすぎるか又は小さすぎると、被写物体Pは滑らずに転がってしまうため、左トレイ11bの傾斜角は、左トレイ11bの凹面部11gの上面中央付近の傾斜を被写物体Pが転がりを生じない程度の緩傾斜とするように調整する。
【0094】
次に、ステップ8では、制御装置100は、ステップ7の最終時刻の状態で、左トレイ11b及び右トレイ11cを一定時間静止させる。これにより、左トレイ11bの平坦面部11i上で滑動する被写物体Pは、安定した状態となるまで滑動して、完全に静止する。
【0095】
最後に、ステップ9で、制御装置100は、左駆動モータ14を駆動して左トレイ11b及び右駆動軸11eを水平状態まで戻す。そして、制御装置100は、右トレイ11cの中央付近で停止した、反転した被写物体Pし対し、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最後の画像情報として、撮影画像記憶部102へ保存する。
【0096】
尚、上記説明では、被写物体Pを左トレイ11bの上面を滑らせて反転させる動作を説明したが、本実施例の撮影ステージSは左右対称なので、同様の動作で、被写物体Pを右トレイ11cの上面を滑らせて反転させる動作を行うことも出来る。
【0097】
また、必要に応じて、さらに続けて、同様の方法で、左トレイ11b又は右トレイ11cで被写物体Pを移動・反転させて被写物体Pを撮影することもできるし、これらを複数回繰り返して被写物体Pを左トレイ11b又は右トレイ11cで移動・反転させて被写物体Pを撮影することもできる。さらに、上述の撮影ステージSの第1の動作パターンと組合わせて、第2の動作パターンと第1の動作パターンとを交互に1乃至複数回行って被写物体Pを撮影することもできる。
【0098】
判定部104は、撮影画像記憶部102に保存された撮影画像の情報を、テンプレート記憶部103に記憶されたテンプレート情報と照合することにより、被写物体Pの種類を判別し、出力部106に出力する。これは、実施例1と同様である。
【0099】
図18及び図19は、実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第2の動作を物理演算シミュレータによりシミュレーションした結果を示す図である。シミュレーションの方法は、実施例2で説明したものと同様である。図18では、被写物体Pとして、図10と同様の膨円盤形の被写物体P2を使用している。図19では、被写物体Pとして、図19の表の下に表示したような、平面視で帯直円(レーストラック形)の上下に膨らみ側面が筒面状の被写物体P4を使用している。図9及び図10と同様、図18及び図19の表内の各図の上に附された番号は時刻を表し、番号が小さい方から大きい方に向かって時刻が経過している(但し、時刻は不等間隔)。また、図18及び図19の表中の各図は、撮影ステージSの中心点の真上から、真下に向かって撮影した透視図(各トレイを透視した図)である。
【0100】
図18に於いて、時刻1が図16のステップ1、時刻2~8が図16のステップ2~3、時刻8~9が図16のステップ4、時刻9~17が図17のステップ5~8、時刻17~20が図17のステップ8~9に対応する。また、図19に於いて、時刻1が図16のステップ1、時刻2~7が図16のステップ2~3、時刻7~8が図16のステップ4、時刻8~18が図17のステップ5~8、時刻18~20が図17のステップ8~9に対応する。
【0101】
図18の場合では、被写物体P2は時刻1~4で、左トレイ11bの立ち上がりに伴って、凹面部11g上を右へ滑って移動し、時刻5~6で凹面部11gの右端から平坦面部11i,11jが成すV字谷(以下、単に「V字谷」という。)に飛び込む。時刻6で被写物体P2の底面の右側が右トレイ11cの平坦面部11jの上縁(右縁)に衝突して、慣性力と重力によって被写物体P2は左回りに回転し、時刻7~8で、被写物体P2は、裏面が右トレイ11cの平坦面部11jに接触した状態で、V字谷内に斜め向きに停止する。被写物体P2がV字谷内に飛び込んでしばらくは、被写物体P2はV字谷内で滑りながら左右前後に揺れているが、図16のステップ3で左トレイ11b及び右トレイ11cを一定時間停止することで、被写物体P2はV字谷内に静止する。その後、時刻8~9で、左トレイ11b及び右トレイ11cを立ち上がり方向に回動させることで、V字谷の谷幅が狭まって被写物体P2は、V字谷内に挟まれた状態で表面、裏面が水平向きに近づくように立ち上がる。次いで、時刻9~17で、平坦面部11i,11jがV字状に折れ曲がった状態を保ちつつ、左トレイ11b及び右トレイ11cを左向きに回転させ平坦面部11iが左下に傾き、平坦面部11jを左上に傾いた状態とすることで、被写物体P2は平坦面部11i上で平坦面部11jに押されてひっくり返される。そして、その勢いで、左トレイ11bの凹面部11gの曲面上を滑り落ちてゆき、滑る間の摩擦によって凹面部11gの最も低い位置の周辺で停止する。そして、時刻17~20で、左トレイ11b及び右トレイ11cを水平状態まで戻すと、被写物体P2は、左トレイ11bの凹面部11gの曲面上を滑り、凹面部11gの中央付近で停止する。
【0102】
図19の場合、被写物体P4は被写物体P2に比べてより転がりやすい形状であるが、図18の場合と同様の反転動作を行うことが分かる。
【0103】
このように、実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSの第2の動作を行うことで、前述した非反転の問題をより確実に解消することができる。
【実施例0104】
図20は、実施例4の粒状物撮影装置の撮影ステージSの(a)拡大斜視図、(b)平面図、及び(b)A-A線断面図である。図11において、図4の各構成部分に対応する構成部分には同符号を付している。本実施例3の粒状物撮影装置の撮影ステージSは、実施例1,2と同様、左トレイ11b,右トレイ11c,左駆動軸11d,及び右駆動軸11eを備えているが、軸カバー11fは備えていない。
【0105】
実施例3の図11と比較すると、本実施例4の撮影ステージSは、左トレイ11bの平坦面部11iが、左トレイ11bの中心に向かって下向き(撮影ステージSの外側に向かって下向き)に傾斜した平面状である点、及び右トレイ11cの平坦面部11jが、右トレイ11cの中心に向かって下向き(撮影ステージSの外側に向かって下向き)に傾斜した平面状である点が相違しており、それ以外は、実施例3の図11と同様である。より具体的には、平坦面部11i,11jは、それぞれ、水平面に対し撮影ステージSの外側に向かって下向きに、15度以下(より好ましくは5~10度)の緩い傾斜面となっている(図20の例では、傾斜角は5度としている)。このように、左トレイ11b及び右トレイ11cの平坦面部11i,11jを、それぞれのトレイの中心に向かって下向きに傾斜した平面状とすることによって、実施例3の第2の動作パターン(実施例3の「(4)撮影ステージSの動作2」参照)と同様の方法で、形状的に明確な表裏があるような形状の被写物体Pの表面及び裏面の撮影を行う際に、被写物体Pの表裏反転をより容易に行うことが出来るようになる。
【0106】
図21は、実施例4の粒状物撮影装置による撮影時の被写物体の反転動作を説明する図である。実施例3の撮影ステージSの第2の動作パターン(図16及び図17)と比較すると、図16のステップ4の動作を省略した点、及び、図17のステップ8に対応する動作に於いて水平面に対する左トレイ11bの傾斜角度が異なる点が相違する。
【0107】
図21に於いて、ステップ1では、まず、左トレイ11b及び右トレイ11cを水平とし、被写物体Pを左トレイ11bの上面に載せた状態として、入力部105から撮影開始の指示を制御装置100に入力する。制御装置100は、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最初の画像情報として撮影画像記憶部102へ保存する。
【0108】
次に、ステップ2では、制御装置100は、左トレイ11b及び右トレイ11cを立ち上げる向きに駆動する。このとき、左トレイ11bが最終的に到達する立上角θは、右トレイ11cが最終的に到達する立上角θよりも大きくする。そして、制御装置100は、左トレイ11b及び右トレイ11cが最終的に到達する立上角θ,θに到達した状態で、左トレイ11b及び右トレイ11cを一定時間静止させる。これにより、被写物体Pは左トレイ11bの凹面部11gの上面を右トレイ11cの側に向けて滑動し、凹面部11gの内側端に達するとジャンプし、重力によって落下して、平坦面部11iと平坦面部11jとが成すV字谷の底へ滑り落ち、表面を上に向けた状態で、右トレイ11cの平坦面部11jに裏面を接するようにして止まる。ここで、平坦面部11i,11jは、撮影ステージSの外側に向かって下向きに傾斜しているため、実施例3(図16のステップ3)の場合に比べて、左トレイ11b及び右トレイ11cの立上角θ,θを大きくとることが出来る。
【0109】
次に、ステップ3~4では、制御装置100は、左トレイ11b及び右トレイ11cの平坦面部11iと平坦面部11jがV字谷状に折れ曲がった状態を維持しつつ、左トレイ11b及び右トレイ11cを左回りに回転させ、最終的に左トレイ11bの平坦面部11iが略水平となり、且つ右トレイ11cの平坦面部11jが垂直よりも左トレイ11bの側に傾いた状態になるまで左トレイ11b及び右トレイ11cを回転させた後、一定時間停止させる。これにより、被写物体Pは、右トレイ11cの平坦面部11jに起こし上げられて左トレイ11bの平坦面部11i上に立ち上がり、さらに平坦面部11jに押されて左トレイ11bの側に倒され、その後、表裏反転した状態で左トレイ11bの凹面部11g上を滑り落ちて、摩擦により減速し凹面部11g上の最も低くなった部分の周辺で停止する。
【0110】
最後に、ステップ5で、制御装置100は、左駆動モータ14を駆動して左トレイ11b及び右駆動軸11eを水平状態まで戻す。そして、制御装置100は、右トレイ11cの中央付近で停止した、反転した被写物体Pし対し、照明装置5により被写物体Pの照明を行いながら、撮影装置4により被写物体Pを撮影し、撮影した画像情報を、最後の画像情報として、撮影画像記憶部102へ保存する。
【0111】
このように、平坦面部11i,11jを、撮影ステージSの外側に向かって下向きに傾斜させることで、被写物体Pを反転させる動作を一部簡略化することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 機構部
2 筺体
2a 駆動モータ
3 撮影ステージアセンブリ
4 撮影装置
5 照明装置
10 ベースプレート
10a 把手
11 撮影ステージ行列
11a パーティション
S 撮影ステージ
11b 左トレイ
11c 右トレイ
11d 左駆動軸
11e 右駆動軸
11f 軸カバー
11g,11h 凹面部
11i,11j 平坦面部
11k 側壁部
11l,11m ヒンジ部
12 左駆動トランスミッション
12b ギア軸
13 右駆動トランスミッション
13a 逃げ溝
13b ギア軸
13c 貫通孔
14 左駆動モータ
15 右駆動モータ
100 制御装置
101 制御部
102 撮影画像記憶部
103 テンプレート記憶部
104 判定部
105 入力部
106 出力部
107 姿勢判定部
108 撮影姿勢記憶部
P 被写物体
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図11
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図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21