(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113892
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/30 20060101AFI20240816BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240816BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240816BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240816BHJP
B60W 20/20 20160101ALI20240816BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20240816BHJP
F01P 5/04 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B60W10/30 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/20
B60W20/15
F01P5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019159
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
(72)【発明者】
【氏名】笠松 佳介
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA10
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB47
3D202CC01
3D202CC23
3D202CC24
3D202CC59
3D202DD01
3D202DD16
3D202DD18
3D202DD19
3D202EE27
3D202FF12
(57)【要約】
【課題】電動式の冷却ファンを制御モードに応じて制御し、内燃機関をより適切に冷却可能なハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】車両1は、エンジンを駆動源として走行するエンジン走行モードと、エンジンの動力を発電に用いると共にフロントモータを駆動源として走行するシリーズ走行モードとを切り替える。コントロールユニットは、制御モードがエンジン走行モードであるとき、エンジン回転数Neに応じてファン回転数Nfを制御し、制御モードがシリーズ走行モードであるとき、エンジン回転数Neおよび車速Vに応じてファン回転数Nfを制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、走行用モータと、前記内燃機関を冷却する電動式の冷却ファンと、前記冷却ファンを制御する制御装置とを備え、
前記内燃機関を駆動源として走行するエンジン走行モードと、前記内燃機関の動力を発電に用いると共に前記走行用モータを駆動源として走行するシリーズ走行モードとを切り替えるハイブリッド車両において、
前記制御装置は、制御モードが前記エンジン走行モードであるとき、前記内燃機関の回転数に応じて前記冷却ファンの回転数を制御し、制御モードが前記シリーズ走行モードであるとき、前記内燃機関の回転数および車速に応じて前記冷却ファンの回転数を制御するハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御装置は、制御モードが前記シリーズ走行モードであるとき、車速が大きいほど前記冷却ファンの回転数を減少傾向に補正し、前記内燃機関の回転数が大きいほど前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正する請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
制御モードは、停車時に前記内燃機関で発電しながら、電力を外部に供給する外部給電モードをさらに含み、
前記制御装置は、制御モードが前記外部給電モードであるとき、制御モードが停車時の前記シリーズ走行モードであるときに比べて、前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正する請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記内燃機関の冷却水温が第1所定温度以上であると共に、前記内燃機関の油温が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度未満であるとき、前記冷却ファンの回転数を減少傾向に補正し、
前記内燃機関の油温が前記第2所定温度よりも高い第3所定温度以上であるとき、前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正する
請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記内燃機関の負荷が大きいほど前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正する請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両に関し、特に内燃機関を冷却する電動式の冷却ファンを備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、電動式の冷却ファンにより内燃機関を冷却する技術が知られている。例えば、特許文献1には、エンジン冷却水の冷却水温が所定の温度範囲内で変化している間は冷却ファンの出力を変化させないで維持し、所定の温度範囲内を超えると冷却ファンの出力を段階的に上昇または下降させるように制御する車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関の動力で駆動される機械式の冷却ファンを用いる場合、冷却ファンは、内燃機関の回転数に応じた回転数で駆動されることになる。そこで、電動式の冷却ファンを用いる場合にも、機械式の冷却ファンを用いる場合と同様に、内燃機関の回転数に応じた回転数で冷却ファンを駆動することが考えられる。
【0005】
しかしながら、内燃機関に加えて走行用モータを備えるハイブリッド車両では、内燃機関の動力を発電に用いながら走行用モータを駆動源として走行する制御モードがある。この制御モードでは、車速が大きく走行風が取り込まれやすいものの内燃機関の回転数が小さい場合や、車速が小さく走行風が取り込まれづらいものの内燃機関の回転数が大きい場合が生じ得る。その結果、単に内燃機関の回転数に応じた回転数で冷却ファンを駆動すると、内燃機関を適切に冷却できない可能性がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電動式の冷却ファンを制御モードに応じて制御し、内燃機関をより適切に冷却可能なハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両は、内燃機関と、走行用モータと、前記内燃機関を冷却する電動式の冷却ファンと、前記冷却ファンを制御する制御装置とを備え、前記内燃機関を駆動源として走行するエンジン走行モードと、前記内燃機関の動力を発電に用いると共に前記走行用モータを駆動源として走行するシリーズ走行モードとを切り替えるハイブリッド車両において、前記制御装置は、制御モードが前記エンジン走行モードであるとき、前記内燃機関の回転数に応じて前記冷却ファンの回転数を制御し、制御モードが前記シリーズ走行モードであるとき、前記内燃機関の回転数および車速に応じて前記冷却ファンの回転数を制御する。
【0008】
この構成により、内燃機関の回転数と車速との間に相関関係が成立するエンジン走行モードでは、内燃機関の回転数に応じて冷却ファンの回転数を制御することで、内燃機関を適切に冷却することができる。一方、車速が大きく走行風が取り込まれやすいものの内燃機関の回転数が小さい場合や、車速が小さく走行風が取り込まれづらいものの内燃機関の回転数が大きい場合が生じ得るシリーズ走行モードでは、内燃機関の回転数に加えて、車速に応じて冷却ファンの回転数を制御する。そのため、車内への走行風の取り込みやすさを考慮した上で冷却ファンの回転数を制御することができる。したがって、本発明のハイブリッド車両によれば、電動式の冷却ファンを制御モードに応じて制御し、内燃機関をより適切に冷却可能となる。
【0009】
また、前記制御装置は、制御モードが前記シリーズ走行モードであるとき、車速が大きいほど前記冷却ファンの回転数を減少傾向に補正し、前記内燃機関の回転数が大きいほど前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正することが好ましい。
【0010】
この構成により、車速が大きく走行風が取り込まれやすい場合には、車速が大きいほど冷却ファンの回転数を小さくすることで、内燃機関を過剰に冷却しないようにすることができる。また、車速が小さく走行風が取り込まれづらい場合には、車速に応じて冷却ファンの回転数を小さくしすぎないようにし、内燃機関の回転数が大きいほど冷却ファンの回転数を大きくすることで、内燃機関を適切に冷却することができる。
【0011】
また、制御モードは、停車時に前記内燃機関で発電しながら、電力を外部に供給する外部給電モードをさらに含み、前記制御装置は、制御モードが前記外部給電モードであるとき、制御モードが停車時の前記シリーズ走行モードであるときに比べて、前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正することが好ましい。この構成により、外部への電力供給のため内燃機関による発電量が大きくなりやすく、停車時であっても内燃機関が高温となり得る外部給電モードにおいて、内燃機関をより適切に冷却することができる。
【0012】
また、前記制御装置は、前記内燃機関の冷却水温が第1所定温度以上であると共に、前記内燃機関の油温が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度未満であるとき、前記冷却ファンの回転数を減少傾向に補正し、前記内燃機関の油温が前記第2所定温度よりも高い第3所定温度以上であるとき、前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正することが好ましい。この構成により、内燃機関の冷却水温および油温に応じて冷却ファンの回転数を増減させるため、内燃機関をより適切に冷却することができる。
【0013】
また、前記制御装置は、前記内燃機関の負荷が大きいほど前記冷却ファンの回転数を増加傾向に補正することが好ましい。この構成により、内燃機関の負荷に応じて冷却ファンの回転数を増減させるため、内燃機関をより適切に冷却することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド車両によれば、電動式の冷却ファンを制御モードに応じて制御し、内燃機関をより適切に冷却可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態のハイブリッド車両の走行駆動系の概略構成図である。
【
図2】冷却ファン駆動制御の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】基本回転数とエンジン回転数との関係の一例を示す説明図である。
【
図4】エンジン目標トルクと第1補正値との関係の一例を示す説明図である。
【
図5】第2補正値と油温との関係の一例を示す説明図である。
【
図6】第3補正値と車速との関係の一例を示す説明図である。
【
図7】シリーズ走行モードにおける車速とエンジン回転数とファン回転数との関係を模式的に示す説明図である
【
図8】外部給電モードにおけるエンジン回転数と基本回転数との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態のハイブリッド車両の走行駆動系の概略構成図である。ハイブリッド車両1(以下、「車両1」と称する)は、エンジン(内燃機関)2の出力によって車輪を駆動して走行可能であるとともに、車輪を駆動する電動のフロントモータ(走行用モータ)4を備えたプラグインハイブリッド車である。
【0017】
エンジン2は、フロントトランスアクスル7を介して駆動輪としての前輪3の駆動軸8を駆動すると共に、フロントトランスアクスル7を介してモータジェネレータ9を駆動して発電させる。エンジン2と前輪3とは、フロントトランスアクスル7内に配置されたクラッチ16を介して接続されている。なお、車両1には、エンジン2に燃料を供給する燃料を貯留する燃料タンク17が設けられている。また、エンジン2は、潤滑および冷却用のエンジンオイルが流通する図示しないオイルギャラリーや、冷却用の冷却水が流通する図示しないウォータージャケットを有しており、エンジン2には、エンジンオイルの温度(以下、「油温」と称する)を検出する油温検出センサ41と、冷却水の温度(以下、「冷却水温」と称する)を検出する水温検出センサ42とが設けられている。
【0018】
さらに、車両1には、エンジン2を冷却するための電動式の冷却ファン30が設けられている。冷却ファン30は、電動モータ35により駆動され、車体に取り込まれた走行風をエンジン2側に送る。冷却ファン30(すなわち電動モータ35)は、コントロールユニット20により駆動制御される。
【0019】
フロントモータ4は、車両1に搭載された駆動用バッテリ11およびモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。モータジェネレータ9は、発電した電力により駆動用バッテリ11を充電可能であるとともに、フロントモータ4に電力を供給可能である。駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されており、その充電率(SOC:State Of Charge)を検出する充電率検出部11aが設けられている。また、車両1には、駆動用バッテリ11に蓄電された電力を外部機器に供給する外部給電装置50が設けられている。外部給電装置50は、図示しないインバータといった各種機器を含み、駆動用バッテリ11からの直流電流を交流電流に変換して外部機器に供給する。
【0020】
コントロールユニット20は、車両1の制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)およびタイマなどを含んで構成される。コントロールユニット20は、制御モード、フロントモータ4の出力、モータジェネレータ9の発電量および出力、エンジン2における燃料噴射量及び燃料噴射時期、フロントトランスアクスル7におけるクラッチ16の断接等を制御する機能を有する。
【0021】
制御モードは、EV走行モード、エンジン走行モード、パラレル走行モード、シリーズ走行モードおよび外部給電モードを含む。EV走行モードでは、エンジン2を停止し、駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4を駆動して走行させる。
【0022】
エンジン走行モードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を接続し、フロントモータ4を作動させることなく、エンジン2から機械的に動力を伝達して前輪3を駆動させる。エンジン走行モードでは、エンジン2の動力が前輪3に伝達されるため、エンジン回転数が増加すれば車速が増加し、エンジン回転数が減少すれば車速が減少するという相関関係が成立する。
【0023】
パラレル走行モードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を接続し、エンジン2から機械的に動力を伝達するとともにフロントモータ4を駆動して前輪3を駆動させる。パラレル走行モードでは、上記エンジン走行モードと同様に、エンジン回転数と車速との間に上記相関関係が成立する。
【0024】
シリーズ走行モードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動して発電させる。そして、モータジェネレータ9により発電された電力および駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4を駆動して走行させる。なお、シリーズ走行モードでは、エンジン回転数を効率の良い値に設定する。シリーズ走行モードでは、エンジン2の動力が前輪3へと伝達されないため、エンジン回転数が増加すれば車速が増加し、エンジン回転数が減少すれば車速が減少するという相関関係が成立しない。
【0025】
外部給電モードは、車両1の停車時に、駆動用バッテリ11の電力を外部に供給するモードである。外部給電モードでは、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動させて発電した電力を駆動用バッテリ11に充電しつつ、駆動用バッテリ11の電力を外部給電装置50から外部機器へと供給する。
【0026】
コントロールユニット20は、車速、エンジン2の負荷(目標トルク)、駆動用バッテリ11の充電率といった複数の条件に応じて制御モードを切り替える。具体的には、コントロールユニット20は、車速が所定車速以上のときや目標トルクが所定トルク以上のときには、駆動用バッテリ11の充電率SOC(充電量)に基づいて制御モードをエンジン走行モードとパラレル走行モードとの間で切り替える。また、コントロールユニット20は、車速が所定車速未満のときや目標トルクが所定トルク未満のときには、駆動用バッテリ11の充電率に基づいて制御モードをEV走行モードとシリーズ走行モードとの間で切り替える。それにより、高速領域のようにエンジン2の効率が良い領域ではエンジン走行モードまたはパラレル走行モードによって走行に要求される出力を応答性良く得ることができ、中低速領域ではシリーズ走行モードによって燃費を向上させることができる。また、コントロールユニット20は、外部機器へと給電を行うべきというユーザーからの要求に応じて、制御モードを外部給電モードとする。
【0027】
次に、コントロールユニット20による冷却ファン30の駆動制御について説明する。
図2は、冷却ファン駆動制御の処理の一例を示すフローチャートである。
図2に示す処理は、エンジン2が稼働しており、制御モードがパラレル走行モード、エンジン走行モードおよびシリーズ走行モードのいずれかに設定されている間に、コントロールユニット20により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0028】
コントロールユニット20は、まず、エンジン2のオイルの油温T、エンジン回転数Ne、エンジン目標トルクTe、車速V、車両1の制御モードの情報を取得する(ステップS10)。油温Tは、油温検出センサ41で検出された値が取得される。エンジン回転数Neは、図示しない回転数検出センサにより検出されたエンジン2のクランクシャフトの回転角に基づいて算出された値が取得される。エンジン目標トルクTeは、ドライバーからの要求駆動力(アクセルペダルの操作量)などに基づいて設定される。同様に、車両1の制御モードは、上述したようにコントロールユニット20により設定される。
【0029】
次に、コントロールユニット20は、ステップS10で取得した油温Tが第1油温T1(
図5参照)以上であるか否かを判定する(ステップS11)。第1油温T1は、エンジン2の暖機が必要と判断される温度であり、より詳細には、冷却水温が暖気温度である第1所定温度(サーモスタットが開く温度)未満であると推定される温度である。コントロールユニット20は、油温Tが第1油温T1未満であると判定したとき(ステップS11でNo)、冷却ファン30を駆動停止させ(ステップS12)、再びステップS10以降の処理を実行する。なお、コントロールユニット20は、水温検出センサ42で検出された冷却水温を取得し、油温T及び冷却水温の両方の値を用いて冷却ファン30を駆動停止させるか否かを判定してもよい。
【0030】
コントロールユニット20は、油温Tが第1油温T1以上であると判定したとき(ステップS11でYes)、エンジン回転数Neに基づいて冷却ファン30の基本回転数Nf0を設定する(ステップS13)。
図3は、エンジン回転数Neと基本回転数Nf0との関係の一例を示す説明図である。
図3および後述する
図4から
図6、
図8に示す関係は、予め定められたマップとしてコントロールユニット20に記憶されている。図示するように、基本回転数Nf0は、エンジン回転数Neが大きくエンジン2が高温になりやすいほど大きくなる。コントロールユニット20は、
図3に示す関係から、ステップS10で取得したエンジン回転数Neに応じた基本回転数Nf0を設定する。
【0031】
次に、コントロールユニット20は、エンジン2の負荷、すなわち、ステップS10で取得したエンジン目標トルクTeに基づいて基本回転数Nf0を補正し、第1補正回転数Nf1を設定する(ステップS14)。
図4は、エンジン目標トルクTeと第1補正値ΔNf1との関係の一例を示す説明図である。図示するように、第1補正値ΔNf1、エンジン目標トルクTeが最小トルクTe1までの間は一定値であり、エンジン目標トルクTeが最小トルクTe1から最大トルクTe2までの間はエンジン目標トルクTeが大きくなるほど大きくなる。ここでの最小トルクTe1とは、エンジン2が失火しない最低トルクである。また、ここでの最大トルクTe2とは、あるエンジン回転数Neにおいてエンジン2から出力可能な最大のトルクであり、エンジン回転数Neに応じて設定される。
【0032】
コントロールユニット20は、
図4に示す関係からエンジン目標トルクTeに応じた第1補正値ΔNf1を設定し、設定した第1補正値ΔNf1を基本回転数Nf0に加算して第1補正回転数Nf1を設定する。したがって、第1補正回転数Nf1は、エンジン目標トルクTeが大きくエンジン2が高温になりやすいほど大きくなる傾向に設定される。なお、第1補正値ΔNf1は、補正係数であってもよく、当該補正係数を基本回転数Nf0に乗算して第1補正回転数Nf1を設定してもよい。
【0033】
次に、コントロールユニット20は、ステップS10で取得した油温Tに基づいて第1補正回転数Nf1を補正し、第2補正回転数Nf2を設定する(ステップS15)。
図5は、第2補正値ΔNf2と油温Tとの関係の一例を示す説明図である。ここで、一般にエンジン2では、冷却水温が油温Tよりも先に上昇し、冷却水温が高くとも油温Tが低い場合があり得る。そこで、油温Tが第1油温T1以上かつ所定の第2油温T2(第2所定温度)未満の間では、第2補正値ΔNf2は、減少傾向の補正値とされ、油温Tが小さいほど負側に大きくなる。第2油温T2とは、油温Tの暖気温度(粘度が所定以下となる温度)である。すなわち、油温Tが第1油温T1以上かつ第2油温T2未満の間では、冷却水温は十分に上昇しているが、油温Tが十分に上昇しておらず、エンジン2を過剰に冷却することは好ましくない。また、油温Tが第2油温T2以上かつ所定の第3油温(第3所定温度)T3未満の間では、第2補正値ΔNf2は、値0とされる。ここで、第3油温T3とは、エンジンオイルの冷却が必要な温度である。油温Tが第3油温T3以上では、冷却ファン30によるエンジン2の冷却を促進する必要があると判断される。そのため、油温Tが第3油温T3以上では、第2補正値ΔNf2は増加傾向の補正値とされ、油温Tが大きくなるほど正側に大きくなる。このように、油温Tを監視することで、冷却ファン30によるエンジン2の冷却をどの程度行うべきであるかを、より適切に判断することができる。
【0034】
コントロールユニット20は、
図5に示す関係から、油温Tに応じた第2補正値ΔNf2を設定し、設定した第2補正値ΔNf2を第1補正回転数に加算して第2補正回転数Nf2を設定する。したがって、第2補正回転数Nf2は、油温Tが小さいほど小さく、油温Tが大きいほど大きくなる傾向に設定される。なお、第2補正値ΔNf2は、補正係数であってもよく、当該補正係数を第1補正回転数Nf1に乗算して第2補正回転数Nf2を設定してもよい。
【0035】
次に、コントロールユニット20は、車両1の制御モードがシリーズ走行モード以外であるか否かを判定する(ステップS16)。コントロールユニット20は、車両1の制御モードがシリーズ走行モード以外、すなわち、エンジン走行モードまたはパラレル走行モードであると判定したとき(ステップS16でYes)、ステップS15で設定した第2補正回転数Nf2を冷却ファン30の回転数であるファン回転数Nfに設定し(ステップS17)、再びステップS10以降の処理を実行する。これにより、設定されたファン回転数Nf(ここでは第2補正回転数Nf2)で冷却ファン30が回転するように電動モータ35が駆動制御される。エンジン走行モードまたはパラレル走行モードでは、車速Vとエンジン回転数Neとの相関関係が成立する。そのため、車速Vを考慮せずにファン回転数Nfを設定しても、エンジン2を適切に冷却することができる。
【0036】
一方、コントロールユニット20は、車両1の制御モードがシリーズ走行モードであると判定したとき(ステップS16でNo)、ステップS10で取得した車速Vに基づいて第2補正回転数Nf2を補正してファン回転数Nfを設定し(ステップS18)、再びステップS10以降の処理を実行する。
図6は、第3補正値ΔNf3と車速Vとの関係の一例を示す説明図である。図示するように、第3補正値ΔNf3は、車速Vが大きくなるほど小さく、すなわち、負側に大きくなる。コントロールユニット20は、
図6の関係から、車速Vに応じた第3補正値ΔNf3を設定し、設定した第3補正値ΔNf3を第2補正回転数Nf2に加算してファン回転数Nfを設定する。なお、第3補正値ΔNf3は、補正係数であってもよく、当該補正係数を第2補正回転数Nf2に乗算して第3補正回転数Nf3を設定してもよい。
【0037】
図7は、シリーズ走行モードにおける車速Vとエンジン回転数Neとファン回転数Nfとの関係を模式的に示す説明図である。図示するように、ファン回転数Nfは、図中の“Nf大”に示すように、車速Vが小さくエンジン回転数Neが大きいほど大きくなる。また、ファン回転数Nfは、図中の“Nf小”に示すように、車速Vが大きくエンジン回転数Neが小さいほど小さくなる。また、ファン回転数Nfは、車速Vが小さくエンジン回転数Neが小さい場合や車速Vが大きくエンジン回転数Neが大きい場合には、“Nf中”に示すように、上記“Nf大”、“Nf小”の中間の値となる。
【0038】
このように、シリーズ走行モードにおいては、エンジン回転数Neに加えて車速Vに応じてファン回転数Nfが設定される。シリーズ走行モードでは、上述したように、エンジン走行モードやパラレル走行モードとは異なりエンジン回転数Neと車速Vとの間に上記相関関係が成立しない。そこで、車速Vが大きく走行風が取り込まれやすい場合には、ファン回転数Nfを減少傾向に補正することで、エンジン2を過剰に冷却することを抑制することができる。また、車速Vが小さく走行風が取り込まれづらい場合には、ファン回転数Nfの減少傾向の補正を小さくすることで、エンジン2を適切に冷却することができる。
【0039】
次に、制御モードが外部給電モードであるときの冷却ファン30の駆動制御について説明する。外部給電モードでは、外部機器への電力供給のために、停車時のシリーズ走行モードに比べてエンジン2による発電量が大きくなる。また、外部給電モードでは車両が停車している状態なので、走行風が取り込まれない。したがって、エンジン2がより高温になる可能性がある。そこで、コントロールユニット20は、以下の手法によりファン回転数Nfを設定する。
図8は、外部給電モードにおけるエンジン回転数Neと基本回転数Nf0との関係の一例を示す説明図である。なお、
図8における一点鎖線は、
図3で示した他の制御モード(エンジン走行モード、パラレル走行モードおよびシリーズ走行モード)におけるエンジン回転数Neと基本回転数Nf0との関係を示すものである。
図8の実線に示すように、外部給電モードにおいては、他の制御モードに比べて、エンジン回転数Neに対する基本回転数Nf0が大きく設定される。
【0040】
コントロールユニット20は、制御モードが外部給電モードであるとき、
図2と同様の処理を実行し、ステップS13の処理において、
図8の実線で例示する関係からエンジン回転数Neに応じた基本回転数Nf0を設定する。それにより、ステップS17において最終的に設定されるファン回転数Nfは、他の制御モードに比べて、増加傾向に補正されることになる。その結果、外部給電モードにおいて、エンジン2をより適切に冷却することができる。なお、外部給電モードにおいても、増加傾向の補正値や補正係数を用いて、最終的なファン回転数Nfを増加傾向に補正してもよい。
【0041】
以上説明したように、実施形態の車両(ハイブリッド車両)1は、エンジン(内燃機関)2と、フロントモータ(走行用モータ)4と、エンジン2を冷却する電動式の冷却ファン30と、冷却ファン30を制御するコントロールユニット(制御装置)20とを備え、エンジン2を駆動源として走行するエンジン走行モードと、エンジン2の動力を発電に用いると共にフロントモータ4を駆動源として走行するシリーズ走行モードとを切り替える車両1において、コントロールユニット20は、制御モードがエンジン走行モードであるとき、エンジン回転数Neに応じてファン回転数Nfを制御し、制御モードがシリーズ走行モードであるとき、エンジン回転数Neおよび車速Vに応じてファン回転数Nfを制御する。
【0042】
この構成により、エンジン回転数Neと車速Vとの間に相関関係が成立するエンジン走行モードでは、エンジン回転数Neに応じてファン回転数Nfを制御することで、エンジン2を適切に冷却することができる。一方、エンジン回転数Neと車速Vとの間に相関関係が成立しないシリーズ走行モードでは、エンジン回転数Neに加えて、車速Vに応じてファン回転数Nfを制御するため、車内への走行風の取り込みやすさを考慮した上でファン回転数Nfを制御することができる。したがって、実施形態の車両1によれば、電動式の冷却ファン30を制御モードに応じて制御し、エンジン2をより適切に冷却可能となる。
【0043】
また、コントロールユニット20は、制御モードがシリーズ走行モードであるとき、車速Vが大きいほどファン回転数Nfを減少傾向に補正し、エンジン回転数Neが大きいほどファン回転数Nfを増加傾向に補正する。
【0044】
この構成により、車速Vが大きく走行風が取り込まれやすい場合には、車速Vが大きいほどファン回転数Nfを小さくすることで、エンジン2を過剰に冷却することを抑制することができる。また、車速Vが小さく走行風が取り込まれづらい場合には、車速Vに応じてファン回転数Nfを小さくしすぎないようにし、エンジン回転数Neが大きいほどファン回転数Nfを大きくすることで、エンジン2を適切に冷却することができる。
【0045】
また、制御モードは、停車時にエンジン2で発電しながら、電力を外部に供給する外部給電モードをさらに含み、コントロールユニット20は、制御モードが外部給電モードであるとき、制御モードが停車時のシリーズ走行モードであるときに比べて、ファン回転数Nfを増加傾向に補正する。この構成により、停車時のエンジン2による発電量が大きくなりやすい外部給電モードにおいて、エンジン2をより適切に冷却することができる。
【0046】
また、コントロールユニット20は、エンジン2の冷却水温が第1所定温度以上であると共に、エンジン2の油温Tが第1所定温度よりも高い第2油温(第2所定温度)T2未満であるとき、ファン回転数Nfを減少傾向に補正し、エンジン2の油温Tが第2油温T2よりも高い第3油温(第3所定温度)T3以上であるとき、ファン回転数Nfを増加傾向に補正する。この構成により、エンジン2の冷却水温および油温Tに応じてファン回転数Nfを増減させるため、エンジン2をより適切に冷却することができる。
【0047】
また、コントロールユニット20は、エンジン2のエンジン目標トルクTeが大きいほどファン回転数Nfを増加傾向に補正する。この構成により、エンジン2の負荷に応じてファン回転数Nfを増減させるため、エンジン2をより適切に冷却することができる。
【0048】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態のハイブリッド車両1は、EV走行モード、エンジン走行モード、パラレル走行モード、シリーズ走行モードおよび外部給電モードを切り換えるものとした。ただし、ハイブリッド車両1は、少なくともエンジン走行モードとシリーズ走行モードとを実行できるものであればよい。
【0049】
また、
図2のステップS14、S15、ステップS16からS18の処理は、いずれが先に実行されてもよい。すなわち、基本回転数Nf0を第1補正値ΔNf1、第2補正値ΔNf2および第3補正値ΔNf3により補正する順番は、いずれが先であってもよい。また、
図2のステップS14、S15の処理は、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン(内燃機関)
4 フロントモータ(走行用モータ)
11 駆動用バッテリ
20 コントロールユニット(制御装置)
30 冷却ファン
35 電動モータ
41 油温検出センサ
42 水温検出センサ
50 外部給電装置
Ne エンジン回転数
Nf ファン回転数
T 油温
T1 第1油温
T2 第2油温(第2所定温度)
T3 第3油温(第3所定温度)
V 車速