(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113893
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホースの製造方法、及び当該ゴムホース
(51)【国際特許分類】
B29C 35/08 20060101AFI20240816BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20240816BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20240816BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20240816BHJP
B29K 105/24 20060101ALN20240816BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
B29C35/08
B29C35/04
F16L11/04
B29K21:00
B29K105:24
B29L23:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019162
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】青木 恒
【テーマコード(参考)】
3H111
4F203
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA12
3H111DB11
3H111DB20
3H111EA04
4F203AA45
4F203AB03
4F203AB04
4F203AG08
4F203AH16
4F203AK01
4F203AK03
4F203DA11
4F203DB01
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4F203DC08
4F203DD06
4F203DF02
4F203DF06
4F203DF16
4F203DK05
(57)【要約】
【課題】内燃機関用のブローバイガス排出用のゴムホースの製造方法及びそのゴムホースであって、比較的安価な材料が用いられ、且つ、当該ゴムホースのガスバリア性が高いとともに柔軟性を有する、ゴムホースの製造方法及びそのゴムホースを提供する。
【解決手段】内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホースの製造方法であって、1)前記ゴムホースの原料を混合して混合物を得る工程;2)前記混合物をゴムホースの形状に成形して未架橋のゴムホースを得る工程;3)前記未架橋のゴムホースを加熱することにより、架橋したゴムホースを得る工程;4)前記架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させて、前記外表面の架橋密度をさらに高める工程;を含むことを特徴とする、ゴムホースの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホースの製造方法であって、
1)前記ゴムホースの原料を混合して混合物を得る工程;
2)前記混合物をゴムホースの形状に成形して未架橋のゴムホースを得る工程;
3)前記未架橋のゴムホースを加熱することにより、架橋したゴムホースを得る工程;
4)前記架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させて、前記外表面の架橋密度をさらに高める工程;
を含むことを特徴とする、ゴムホースの製造方法。
【請求項2】
前記4)の工程が、前記架橋したゴムホースの外表面に光重合開始剤を塗布し、その後、紫外線照射することにより行われることを特徴とする、請求項1に記載のゴムホースの製造方法。
【請求項3】
前記1)の原料が、湿気硬化性ポリマーを含有し、且つ
前記4)の工程が、前記架橋したゴムホースの外表面に湿気硬化用の触媒を塗布し、その後、スチーム処理することにより行われることを特徴とする、請求項1に記載のゴムホースの製造方法。
【請求項4】
前記1)の原料が、湿気硬化性ポリマーを含有し、且つ
前記2)の工程で得られた未架橋のゴムホースの外表面に湿気硬化用の触媒を塗布し、その後、加熱及びスチーム処理することにより、3)の工程及び4)の工程を同時に行うことを特徴とする、請求項1に記載のゴムホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホースの製造方法、及び当該ゴムホースに関する。
【背景技術】
【0002】
エピクロロヒドリンゴム、例えばECOゴムは、比較的安価であることから、自動車の内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホース、例えばブローバイホースの材料として広く使用されているゴムである。
【0003】
しかしながら他方では、エピクロロヒドリンゴム製のブローバイガス排出用ゴムホースは、そのホース内を通過するブローバイガスに含まれる臭気成分、例えばナフタレン誘導体を、そのホース壁を介して比較的透過させやすいという特性をも有している。このため、近年、自動車の使用者から、車内外において臭気成分の不快な臭いがするとの指摘が為されていた。
【0004】
このような、ブローバイガス排出用ゴムホースからの臭気成分の透過を抑制するためには、例えば、ブローバイガス排出用ゴムホース全体又はその一部の材質を、そのような臭気成分を透過しない構造又は特性のものとすることが考えられる。例えば、ブローバイガス排出用ゴムホースの材料を、従来のエピクロロヒドリン製のゴムから、フッ素ゴム(例えばFKMゴム)のようなガス透過性の低いゴムに代えることが挙げられる。
【0005】
しかし、ブローバイガス排出用ゴムホース全体をフッ素ゴムとすると、その高いコストが製造効率上ネックとなる。
【0006】
あるいは、そのコストを抑えるために、ブローバイガス排出用ゴムホース全体をフッ素ゴムとはせずに、従来のゴムを外側層とし、フッ素ゴムをその内側層とする2層構造とすることも考えられる。ところが、フッ素ゴムそれ自体が他のゴムとの接着性に乏しいため、フッ素ゴムを使用した2層化の実用化は技術的に容易であるとはいえない。
【0007】
また一方では、上記のように2層構造とはせずに、ブローバイガス排出用ゴムホースを単一材料から成るものとし、且つその外表面を硬化させた構造とすることも考えられる。
【0008】
例えば、特許文献1は、未加硫ゴムホースの表面に紫外線を照射して、当該未加硫ゴムホースの外表面を硬化させ、さらには加熱により加硫させる、ゴムホースの製造方法を提案している。この方法により製造されるゴムホースは、その外表面が硬化されて架橋密度が高まっていると予測されるため、臭気ガスの透過の抑制が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、ブローバイガス排出用ゴムホースに求められる特性として、臭気成分の透過の抑制が抑制されること、即ちガスバリア性が必要である。またその一方で、ゴムホース本来の特性として、対象物への挿入性、すなわち、ホース内表面が硬いと、製造現場の作業者がホースを対象物(ホースニップル)に挿し込むのに大きな力が必要になってしまい、作業性が悪化することから、柔軟さが要求され、また漏れを防ぐためには対象物への密着性が維持されていることもまた必要であるため、ブローバイガス排出用ゴムホースの内表面の柔軟性も必要とされる。
【0011】
この点、特許文献1に記載の製造方法においては、ゴムホース表面への紫外線照射によって、ゴムホース外表面の硬さはある程度担保されるかもしれない。しかしその反面、さらにその後の加硫によってゴムホースが全体的に加熱されるため、硬化反応がゴムホース外表面だけでなくその内表面にまで必要以上にすすみ、内表面の柔軟性が損なわれてしまうおそれがある。
【0012】
他方で、さらに別の技術として、ゴムホースの外表面に熱架橋剤を塗布し、その上で熱架橋して外表面の架橋密度を高める手段も考えられるが、この場合も同様に、加熱によるゴムホース内表面の必要以上の硬化が懸念される。
【0013】
以上の観点から、必要とされるブローバイガス排出用ゴムホースの特性としては、比較的安価な材料が用いられ、且つ、当該ゴムホースのガスバリア性が高いとともに柔軟性を有すること、が挙げられる。
【0014】
そこで本発明は、そのような特性を併せ持つブローバイガス排出用ゴムホースの製造方法及び当該ブローバイガス排出用ゴムホースの提供をその目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホースの製造方法であって、
1)前記ゴムホースの原料を混合して混合物を得る工程;
2)前記混合物をゴムホースの形状に成形して未架橋のゴムホースを得る工程;
3)前記未架橋のゴムホースを加熱することにより、架橋したゴムホースを得る工程;
4)前記架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させて、前記外表面の架橋密度をさらに高める工程;
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、比較的安価な材料が用いられ、且つ、ガスバリア性が高いとともに柔軟性を有する内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホース、とりわけブローバイホースに適したゴムホースが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にあっては、内燃機関用のブローバイガス排出用ゴムホースにおいて、ゴムホース内のブローバイガス流中の臭気成分がゴムホース壁から透過することを抑制できるように、ゴムホース外表面の架橋密度がさらに高められている。それとともに、ゴムホースの内表面を含む外表面以外の部分については、さらなる架橋の前のままの架橋密度に抑えられているため、その柔軟性が維持されている。
【0018】
かかる構成によって、ゴムホース内からの臭気成分の透過を、架橋密度がさらに高められたゴムホースの外表面が抑制し、且つ、架橋密度が抑えられ柔軟性が損なわれていない内表面によって、ゴムホースに挿入される対象との密着性が維持される。
【0019】
即ち、ゴムホースを上記のとおりの特性とするためには、ゴムホースのさらなる架橋密度の上昇をゴムホースの外表面及びその付近にとどめる手段が必要である。
【0020】
この点、本発明においては、以下詳述するが、主として2通りの手段を挙げることができる。
【0021】
第1の手段は、上記4)の工程を、架橋したゴムホースの外表面に光重合開始剤を塗布し、その後紫外線照射することにより行う手段である。
【0022】
他方、第2の手段は、上記1)の原料が湿気硬化性ポリマーを含有し、且つ、上記4)の工程を、架橋したゴムホースの外表面に湿気硬化用の触媒を塗布し、その後スチーム処理することにより行う手段である。
【0023】
[第1の手段]
当該第1の手段においては、まず、ゴムホースの原料として、主成分となるポリマー、架橋剤、充填剤、及び必要に応じてその他の成分を、ロール又はニーダーなどの混錬機内で均質となるよう混合して、ゴム原料の混合物を得る。
【0024】
次に、得られた混合物を金型に仕込み、プレス成形機又は押出成形機などの成形機を使用して、ホースの形状に成形して、未架橋のゴムホースを得る。
【0025】
その後、得られた未架橋のゴムホースを加熱してゴムホース全体を架橋させて、架橋したゴムホースを得る。この時点では、得られた架橋したゴムホースは、外表面及び内表面いずれも臭気成分の透過を十分に抑制できる程度までは架橋密度が高められていない。その一方では、ゴムホースとしての柔軟性は損なわれずに全体的に維持されている。
【0026】
そこで次に、架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させる工程において、架橋したゴムホースの外表面に光重合開始剤を塗布し、その後、紫外線照射することによって、架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させてその架橋密度を高めるという手段が採られる。
【0027】
この場合、架橋したゴムホースのうち、光重合開始剤が塗布された外表面のみ紫外線によってさらなる架橋反応が生ずる。これに対して、光重合開始剤が塗布されていない内表面にはさらなる架橋反応が抑えられる。その結果、ゴムホースの架橋密度のさらなる上昇を、その外表面及びその付近にとどめることができるとともに、内表面の架橋密度のさらなる上昇による硬化を抑えることができる。
【0028】
[第2の手段]
第2の手段においては、ゴムホースの原料として、主成分となるポリマー、架橋剤、充填剤、及び必要に応じてその他の成分に加えて、湿気硬化性ポリマーをさらに含有させて、ロール又はニーダーなどの混錬機内で均質となるよう混合し、混合物を得る。
【0029】
次に、得られた混合物を金型に仕込み、プレス成形機又は押出成形機などの成形機を使用して、ホースの形状に成形して、未架橋のゴムホースを得る。
【0030】
その後、上記第1の手段と同様、得られた未架橋のゴムホースを加熱してホース全体を架橋させて、架橋したゴムホースを得る。この時点では、得られた架橋したゴムホースは、外表面及び内表面いずれも臭気成分の透過を十分に抑制できる程度までは架橋密度が高められていない。その一方では、ゴムホースとしての柔軟性は損なわれずに全体的に維持されている。また、ゴムホースに含有される湿気硬化性ポリマーは湿気による反応を起こしていない段階である。
【0031】
そして次に、架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させる工程において、架橋したゴムホースの外表面に湿気硬化用の触媒を塗布し、その後、触媒塗布後の架橋したゴムホースをスチーム処理することによって、架橋したゴムホースの外表面をさらに架橋させてその架橋密度を高める手段が採られる。
【0032】
この場合、架橋したゴムホースには、成分として湿気硬化性ポリマーが含有されているため、湿気硬化用の触媒が塗布された外表面のみにおいて、スチームによって湿気硬化性ポリマーが反応してさらなる架橋反応が生ずる。これに対して、湿気硬化用の触媒が塗布されていない内表面にはさらなる架橋反応が抑えられる。その結果、ゴムホースの架橋密度のさらなる上昇を、その外表面及びその付近にとどめることができるとともに、内表面の架橋密度のさらなる上昇による硬化を抑えることができる。
【0033】
ここで、湿気硬化用の触媒を塗布する際には、塗布後の触媒がゴムホースの内表面に回り込むことを防止するために、ゴムホースの両端部を塞ぐことが好ましい。
【0034】
上記第2の手段においては、未架橋のゴムホースを架橋する際の加熱と、さらに架橋させる際のスチーム処理とを別途に行う態様を挙げたが、これら加熱及びスチーム処理を同時に行うことも可能である。
【0035】
この場合には、成形して得られた未架橋のゴムホースの外表面に湿気硬化用の触媒を塗布し、そしてその後、加熱及びスチーム処理を同時に、即ちスチーム加熱を行う。こうすると、加熱によってゴムホース全体が架橋する一方で、湿気硬化用の触媒が塗布されたゴムホース外表面のみはスチームによってさらに架橋が進む。従って、ゴムホースの内表面の架橋密度の必要以上の上昇を抑える一方で、その外表面の架橋密度を、臭気成分の透過を抑制できる程度にまでさらに高めることができる。
【0036】
次に、本発明で用いる各物質、各成分、及び本発明の製造方法における条件について説明する。
【0037】
[ゴムホース]
本発明の対象となるゴムホースとしては、例えばナフタレン、2-メチルナフタレン又は1-メチルナフタレンなどの臭気成分を含むガスを排出するための、又は導くためのゴムホースが挙げられる。より具体的には、例えば、自動車のエンジンルーム内で用いられるゴムホース、特に、内燃機関からのブローバイガスを排出するためのゴムホース、例えばブローバイホース又はPCVホースが挙げられる。
【0038】
このようなゴムホースを構成する主原料しては、例えば、エピクロロヒドリンの単重合体、又は、エピクロロヒドリンとエチレンオキサイド又はグリシジルエーテルなどの他のモノマーとの共重合体を挙げることができる。このうちECOゴムが汎用的に用いられる。
【0039】
その他、ゴムホースの細かな使用目的又は所望の特性に応じて、各種の添加剤を材料として添加することが可能である。
【0040】
[架橋剤及び架橋条件]
本発明において用いられる架橋剤は、ゴムホースの製造において通常用いられるものであればよく、特別の構造又は特性を有するものである必要は特に無い。架橋剤は通常、他の原料と共にゴム原料の混合物中に含有される。
【0041】
架橋剤としては例えば、キノイド系架橋剤、ジアミン系架橋剤、ポリアミン系架橋剤などが挙げられる。なお、ラジカル重合を起こす架橋剤、例えばパーオキサイド系架橋剤は避けることが好ましい。
【0042】
架橋条件は、使用する架橋剤の種類に応じて決めれば良いが、未架橋のゴムホースを、通常、およそ150℃~300℃の温度範囲にて、およそ1分~24時間の間加熱することによって架橋する。
【0043】
架橋剤は、ゴム原料の混合物に対して、およそ0.1~10質量%の範囲で含有される。
【0044】
[光重合開始剤及び紫外線照射]
本発明において用いられる光重合開始剤は、紫外線によって活性化し、ゴムの分子構造を架橋させ得るものであれば、通常用いられるものであればよい。もちろん、ゴムの特性に適合したものが選択されるのは言うまでもない。
【0045】
本発明において光重合開始剤は、後の架橋反応のために、成形したゴムホースの外表面にとどまるように塗布される必要がある。そのため、光重合開始剤は、ゴムホースの表面から脱落しない態様で塗布される。例えば、光重合開始剤が固体状態のものについては、それを適切な溶媒に溶解し、必要に応じてアエロジルなどの増粘剤を用いて粘度を上げることにより、光重合開始剤のゴムホース表面への付着性を高めることが好ましい。
【0046】
ゴムホース外表面への光重合開始剤の塗布としては、均一な塗布の観点から、例えば、噴霧による塗布が好ましい。
【0047】
使用される光重合開始剤としては例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、4,4'-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類が挙げられる。
【0048】
光重合開始剤として市販品を用いることも勿論可能である。例えばIrgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur l116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)が挙げられる。
【0049】
用いられる光重合開始剤の量は、架橋したゴムホースの外表面の架橋密度を、臭気成分の透過を抑制できる程度にさらに高めることができるような範囲内で決定される。その量は、例えば、ゴムホースの表面積当り、おおむね0.01g/m2~100g/m2となる量である。
【0050】
光重合開始剤をゴムホース表面に塗布した後に行われる紫外線照射は、照射効率の観点から、積算光量が20mJ/cm2~1000mJ/cm2となるような光量で照射されるのが好ましい。
【0051】
また、紫外線照射により生じる硬化反応は、酸素の存在により阻害されてしまうため、不活性ガス雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で行うのが好ましい。
【0052】
[湿気硬化性ポリマー]
本発明において用いられる湿気硬化性ポリマーとは、湿気、言い換えると、空気中の微量水分、例えば、水蒸気又はスチームの存在下で硬化反応を生じるポリマーをいう。
【0053】
本発明においては、通常、湿気硬化性ポリマーは、他の原料と共にゴム原料の混合物中に含有される。湿気硬化性ポリマーは、材料となるゴムとともに、ゴムホースの構成成分の一部となるものであるため、他のゴムとの相溶性を有しないものの使用は避けることが好ましい。
【0054】
本発明において用いられる湿気硬化性ポリマーとしては、例えば、シリル基末端変性ポリマーを挙げることができる。
【0055】
また、湿気硬化性ポリマーの含有量は、ゴムホース原料の混合物全体の質量に対して、およそ10~50質量%の範囲が好ましく、20~40質量%の範囲がより好ましい。
【0056】
[湿気硬化用の触媒]
本発明において、湿気硬化用の触媒は、湿気によって活性化して、ゴム成分中の湿気硬化性ポリマーを架橋させ得るものであれば、通常用いられるものであればよい。
【0057】
湿気硬化用の触媒は、後のスチーム処理のために、未架橋の又は架橋したゴムホースの外表面にとどまるように塗布される必要がある。そのため、湿気硬化用の触媒は、ゴムホースの表面から脱落しない態様で塗布される。例えば、湿気硬化用の触媒を適切な溶媒に溶解し、必要に応じてアエロジルなどの増粘剤を用いて粘度を上げることにより、ゴムホースの外表面への付着性を高めることが好ましい。
【0058】
ゴムホース外表面への湿気硬化用の触媒の塗布としては、均一な塗布の観点から、例えば、噴霧による塗布が好ましい。
【0059】
使用される湿気硬化用の触媒としては、例えばスズ系の触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ラウレートオキサイド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、又はジオクチル錫ジラウレートを挙げることができる。
【0060】
用いられる湿気硬化用の触媒の量は、最終的に、ゴムホースの外表面の架橋密度を、臭気成分の透過を抑制できる程度にさらに高めることができるような範囲内で決定される。その量は、例えば、ゴムホースの表面積当り、おおむね0.01g/m2~100g/m2となる量である。
【0061】
また、湿気硬化用の触媒をゴムホース表面に塗布した後に行われるスチーム処理は、通常、100℃~200℃の温度範囲の水蒸気によって、1~24時間の間行われる。
【0062】
以上説明したとおりの本発明の製造方法によって得られたゴムホースを、自動車の内燃機関用のブローバイガス排出用のゴムホース、例えばブローバイホースとして使用すると、従来のゴムホースを使用した場合と比較して、臭気成分による異臭の漏れが効果的に抑えられる。さらには、ゴムホースとしての柔軟性も維持されているため、対象への挿入性も優れ、アセンブリの効率を低下させるおそれも低い。