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  • 特開-カルボン酸無水物の分析方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113901
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】カルボン酸無水物の分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20240816BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240816BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01N30/02 N
G01N30/26 A
G01N30/88 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019172
(22)【出願日】2023-02-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月3日に第33回クロマトグラフィー科学会議にて発表 令和5年1月16日に第28回LC&LC/MSテクノプラザの要旨集に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100143096
【弁理士】
【氏名又は名称】山岸 忠義
(72)【発明者】
【氏名】増田 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】寺田 英敏
(57)【要約】
【課題】カルボン酸無水物と、カルボン酸エステルまたはカルボン酸とを一斉に分析することができる。
【解決手段】
カルボン酸無水物を含有する試料を分析する方法であって、超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、試料を第1移動相とともに、カラムに通過させて、カラムから溶出されるカルボン酸無水物を検出する第1工程と、カルボン酸無水物の保持時間経過後において、第1移動相から第2移動相に切り替えることによって、第2移動相をカラムに通過させて、カラムから溶出されるカルボン酸エステルおよびカルボン酸の少なくとも1種を検出する第2工程とを順に備える。第1移動相は、二酸化炭素と、ヒドロキシル基を有しない有機溶媒との混合物であり、第2移動相は、二酸化炭素と、酸と、ヒドロキシル基を有する有機溶媒との混合物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸無水物を含有する試料を分析する方法であって、
超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、前記試料を第1移動相とともに、カラムに通過させて、前記カラムから溶出されるカルボン酸無水物を検出する第1工程と、
前記カルボン酸無水物の保持時間経過後において、前記第1移動相から第2移動相に切り替えることによって、前記第2移動相を前記カラムに通過させて、前記カラムから溶出されるカルボン酸エステルおよびカルボン酸の少なくとも1種を検出する第2工程と
を順に備え、
前記第1移動相が、二酸化炭素と、ヒドロキシル基を有しない有機溶媒との混合物であり、
前記第2移動相が、二酸化炭素と、酸と、ヒドロキシル基を有する有機溶媒との混合物である、カルボン酸無水物の分析方法。
【請求項2】
前記酸が、リン酸またはギ酸である、請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基を有しない有機溶媒が、アセトニトリルであり、
前記ヒドロキシル基を有する有機溶媒が、メタノールまたはエタノールである、請求項1に記載の分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸無水物の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸無水物は、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミドなどの原料、熱硬化性樹脂の硬化剤などとして、利用されている。カルボン酸無水物は、2分子のカルボン酸を脱水縮合させた化合物(R-CO-O-CO-R’)であるが、ヒドロキシル基を有する化合物、水などと反応し、エステルまたはカルボン酸となる。
【0003】
このようなカルボン酸無水物を分析する方法として、液体クロマトグラフィー(LC:Liquid Chromatography)が採用されており、その中でも、(1)逆相LCによる方法と、(2)順相LCによる方法とがある。(1)の方法では、前処理として、カルボン酸無水物にアルコール、水などを添加して、カルボン酸エステルおよび/またはカルボン酸(カルボン酸等)へと反応させた後に、これらを逆相LCによって検出することによって、間接的にカルボン酸無水物を検出する。(2)の方法では、ヒドロキシル基を有さない有機溶媒を移動相として用いて、直接的にカルボン酸無水物を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59-24153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、(1)の方法では、試料中に、カルボン酸無水物とカルボン酸等とが混合されている場合、前処理によって得られたカルボン酸等と、もともと試料に含まれていたカルボン酸等とが同時に溶出し、検出されるため、両者を区別して分析することができない。(2)の方法においても、上記の混合試料の場合、カルボン酸無水物は分析することができるが、カルボン酸等は分析することができない。よって、いずれの方法でも、カルボン酸無水物とカルボン酸等との混合試料において、両者のそれぞれを一斉に分析することができない。
【0006】
したがって、本発明は、カルボン酸無水物と、カルボン酸エステルまたはカルボン酸とを一斉に分析する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の分析方法は、カルボン酸無水物を含有する試料を分析する方法であって、超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、前記試料を第1移動相とともに、カラムに通過させて、前記カラムから溶出されるカルボン酸無水物を検出する第1工程と、前記カルボン酸無水物の保持時間経過後において、前記第1移動相から第2移動相に切り替えることによって、前記第2移動相を前記カラムに通過させて、前記カラムから溶出されるカルボン酸エステルおよびカルボン酸の少なくとも1種を検出する第2工程とを順に備え、前記第1移動相が、二酸化炭素と、ヒドロキシル基を有しない有機溶媒との混合物であり、前記第2移動相が、二酸化炭素と、酸と、ヒドロキシル基を有する有機溶媒との混合物である。
【発明の効果】
【0008】
第1の態様の分析方法によれば、カルボン酸無水物と、カルボン酸エステルまたはカルボン酸とを一斉に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態で用いる超臨界流体クロマトグラフ装置の一例の概略図を示す。
図2図2は、実施例1で測定して得られた液体クロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1の実施形態
本発明の第1の実施形態の分析方法は、超臨界流体クロマトグラフィーによって、カルボン酸無水物と、カルボン酸エステルまたはカルボン酸とを分析する方法であって、用意工程、第1工程および第2工程を順に備える。以下、各工程を詳述する。
【0011】
(用意工程)
本工程では、試料を超臨界流体クロマトグラフィー(SFC:Supercritical Fluid Chromatography)によって分析するための用意を実施する。
【0012】
用いる試料は、カルボン酸無水物を含有していればよいが、第1の実施形態では、カルボン酸無水物に加えて、カルボン酸エステルおよび/またはカルボン酸(以下、これらを「カルボン酸等」ともいう。)を含有する混合物である場合に、これらを一斉に検出することができるため、試料として、これらを含有する混合物であることが好ましい。カルボン酸エステルは、ジカルボン酸ジエステルであっても、ジカルボン酸モノエステルであってもよい。カルボン酸は、モノカルボン酸であってもよく、ジカルボン酸であってもよい。
【0013】
また、カルボン酸無水物のカルボン酸部分と、カルボン酸等のカルボン酸部分とは、同一であってもよく、また、異なっていてもよい。すなわち、試料として、カルボン酸無水物として、ビフタル酸無水物を含有する場合に、カルボン酸等として、ビタフタル酸エステルまたはビフタル酸を含有していてもよく、他のカルボン酸等(例えば、オキシジフタル酸エステルまたはオキシフタル酸)を含有してもよい。第1の実施形態では、カルボン酸部分が同一である試料を含む場合であっても、カルボン酸部分が互いに異なる試料を含む場合であっても、これらを一斉に分析することができる。さらに、試料は、異なる複数のカルボン酸無水物および/またはカルボン酸等を含有していてもよい。この場合、複数のカルボン酸無水物および/またはカルボン酸等は、互いに、構造異性体ないし光学異性体であってもよい。
【0014】
SFCは、移動相として超臨界流体を用いて試料を分離するクロマトグラフィーである。すなわち、移動相の物質を超臨界状態にして、試料を移動相とともにカラム(固定相)に通過および溶出させることにより、試料を分離する。なお、移動相の主物質、すなわち、二酸化炭素は、通常、超臨界状態にして実施するが、超臨界状態に至らず、亜臨界状態であってもよい。
【0015】
SFCに用いる装置は、公知または市販のものを用意すればよく、その一例の概略図を図1に示す。図1に示すSFC装置1は、少なくとも、移動相用容器2と、第1モディファイア用容器3と、第2モディファイア用容器4と、複数のポンプ5~7と、ミキシング部8と、試料導入部9と、カラム10と、検出部11と、背圧制御部12とを備える。なお、図示しないが、SFC装置1は、加熱部などのSFCを可能とするその他のユニットを備えており、また、メイクアップ溶媒用容器、質量分析装置などを付加的に備えていてもよい。
【0016】
移動相用容器2には、超臨界状態とするための二酸化炭素を含有させる。具体的には、移動相用容器2として、二酸化炭素ボンベを用いる。
【0017】
第1モディファイア用容器3には、ヒドロキシル基を有しない有機溶媒を含有させる。これにより、カルボン酸無水物の加水分解等を抑制でき、分離溶出性能を良好にすることができる。ヒドロキシル基を有しない有機溶媒(以下、「非ヒドロキシル系溶媒」ともいう。)としては、例えば、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、イソオクタン、4-ジオキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、好ましくは、アセトニトリルが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0018】
第2モディファイア用容器4には、酸と、ヒドロキシル基を有する有機溶媒との混合溶媒を含有させる。このような混合溶媒を使用することにより、移動相に対するカルボン酸等の溶出力を高めることができる。酸としては、例えば、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上併用してもよい。カルボン酸等をカラムから効率よく溶出できる観点から、好ましくは、リン酸またはギ酸が挙げられ、より好ましくは、リン酸が挙げられる。ヒドロキシル基を有する有機溶媒(以下、「ヒドロキシル系溶媒」ともいう。)としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどが挙げられ、好ましくは、メタノールまたはエタノールが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上併用してもよい。混合溶媒中の酸の濃度は、例えば、0.01(v/v)%以上、好ましくは、0.1(v/v)%以上であり、また、例えば、10(v/v)%以下、好ましくは、5(v/v)%以下である。なお、第2モディファイア用容器4は、複数の容器として構成され、各容器のそれぞれに、酸またはヒドロキシル系溶媒が個別に含まれていてもよい。すなわち、分析前から混合溶媒の形で用意していてもよく、また、分析時に、個別の容器から各成分を吸引および混合して、混合溶媒を調製してもよい。
【0019】
複数のポンプ5~7は、移動相用容器2中の二酸化炭素を送液するためのポンプ5、第1モディファイア用容器3中の溶媒を送液するためのポンプ6、および、第2モディファイア用容器3中の溶媒を送液するためのポンプ7である。各ポンプには、それぞれ、バルブ(図示せず)が付いており、カラム9に送り出す移動相成分を個別に調整することができる。なお、モディファイア用のポンプ6、7は兼用することにより、一つのポンプとしてもよい。
【0020】
試料導入部(オートサンプラー)9は、所望量の試料を移動相の経路に注入して、移動相と共にカラムに導入するためのユニットであって、上記試料が投入される。
【0021】
カラム10内に配置される固定相としては、カルボン酸無水物およびカルボン酸等の両方を保持ないし分離できるものであればよく、カルボン酸無水物などの試料に応じて適宜決定される。このような固定相は、機能性基を有する担体または機能性を有しない担体が挙げられる。機能性基としては、例えば、オクタデシルシリル基、ポリブチレンテレフタレート基、ペンタプロモベンジル基、ポリ(4-ビニルピリジン)基、ジオール基、3-ヒドロキシフェニル基、カルバモイル基、コレステリル基などが挙げられる。好ましくは、ポリブチレンテレフタレート基、ペンタプロモベンジル基が挙げられ、より好ましくは、ポリブチレンテレフタレート基が挙げられる。これにより、第1工程においてカルボン酸無水物を保持および分離するとともにカルボン酸等を保持し、第2工程においてカルボン酸等を確実に分離することができる
【0022】
機能性基が修飾されている担体としては、例えば、シリカビーズ、アクリル系ビーズ、アガロース系ビーズなどが挙げられる。
【0023】
このような固定相を備えるカラムとしては、例えば、島津製作所社製のShim-pack USシリーズ(登録商標)、ダイセル社製のCHIRAL PAKシリーズ(登録商標)、YMC社製のCellulose-Cシリーズなどが挙げられる。
【0024】
検出部11は、カラムから溶出されるカルボン酸無水物およびカルボン酸等を検出する装置であり、例えば、紫外可視光検出器、フォトダイオードアレイ検出器、蒸発光散乱検出器などが挙げられる。
【0025】
(第1工程)
本工程では、試料に対して、SFCを実施する。具体的には、試料を第1移動相とともに、カラムに通過させて、カラムから溶出されるカルボン酸無水物を検出する。
【0026】
第1の実施形態の第1工程に用いる移動相(第1移動相)としては、二酸化炭素と、非ヒドロキシル系溶媒との混合物を用いる。二酸化炭素は、移動相として、超臨界状態となる主成分である。非ヒドロキシル系溶媒は、測定試料における移動相への溶解性を調整する。第1工程では、このような非ヒドロキシル系溶媒を二酸化炭素と混合させることにより、カルボン酸無水物の加水分解やエステル化などを防止するとともに、カルボン酸無水物をカラムの固定相に保持および分離した後、溶出させることができる。加えて、カルボン酸エステルおよびカルボン酸をカラムの固定相に保持させたままにすることができる。
【0027】
具体的には、移動相用容器2のポンプ5、および、第1モディファイア用容器3のポンプ6を稼働させることにより、二酸化炭素と、非ヒドロキシル系溶媒とがミキシング部8にて混合されるともに、SFC装置1内の温度および圧力を調整することより、二酸化炭素は超臨界状態にする。その後、超臨界状態二酸化炭素と非ヒドロキシル系溶媒とを含有する混合流体である第1移動相は、試料導入部9からの試料と混合され、カラム10に送液される。カラム10において、試料中のカルボン酸無水物は、カラム10の固定相に一定の時間保持された後、カラムから第1移動相とともに溶出される。カラム10から溶出されたカルボン酸無水物は、検出部11によって検出され、クロマトグラムのピークとして出力される。試料に含まれるカルボン酸無水物が複数である場合は、そのカルボン酸無水物に応じてカラム10に保持され、それぞれの保持時間で溶出され、クロマトグラムにおいて、分離されたピークとして出力される。一方、試料中のカルボン酸等は、カラム10の固定相に保持され続け、第1工程中においてはカラム10からは溶出されない。
【0028】
カルボン酸無水物の保持時間は、カルボン酸無水物および固定相の種類に応じて適宜決定されるが、例えば、2分以上、好ましくは、3分以上であり、また、例えば、15分以下、好ましくは、12分以下、より好ましくは、8分以下である。
【0029】
第1移動相中における非ヒドロキシル系溶媒の混合割合は、例えば、3(v/v)%以上、好ましくは、5(v/v)%以上であり、例えば、30(v/v)%以下、好ましくは、20(v/v)%以下である。
【0030】
カラム温度、背圧およびその温度(BPR圧力、BPR温度)などは、SFC装置の内蔵の条件に応じて適宜調整すればよい。
【0031】
(第2工程)
本工程では、カルボン酸無水物の保持時間経過後において、移動相を第1移動相から第2移動相に切り替える。これにより、第2移動相をカラムに通過させて、カラムから溶出されるカルボン酸無水物等を検出することができる。
【0032】
すなわち、上記保持期間後を経過した後に、二酸化炭素と混合する物質を、第1モディファイア用容器3に含まれる非ヒドロキシル系溶媒から、第2モディファイア用容器4に含まれる混合溶媒に変更する。これにより、カラムに送液される第2移動相は、超臨界状態二酸化炭素と、酸と、ヒドロキシル系溶媒との混合物となる。
【0033】
具体的には、第2モディファイア用容器4のポンプ7を稼働させ、ポンプ6、7内蔵のバルブを切り替えることにより、第1モディファイア用容器3からの非ヒドロキシル系溶媒の送液を中止し、第2モディファイア用容器4からの混合溶媒の送液を開始する。これにより、ミキシング部8にて、二酸化炭素と混合溶媒とが混合され、超臨界状態二酸化炭素と、酸と、ヒドロキシル系溶媒とを含有する混合流体である第2移動相となる。そして、この第2移動相が、カラム10を通過すると、カラム10の固定相に保持されているカルボン酸等は、第2移動相に溶解し、第2移動相とともにカラム10から溶出され、検出部11で検出される。
【0034】
移動相の切替時間は、上記カルボン酸無水物の保持期間経過後であり、例えば、第1工程開始時を基準にして、例えば、5分以上、30分以下の時点、好ましくは、6分以上、15分以下の時点、より好ましくは、8分以上、12分以下の時点で切り替えればよい。
【0035】
カルボン酸等の保持時間は、カルボン酸等および固定相の種類に応じて適宜決定されるが、切替時(第2工程開始時)を基準にして、例えば、5分以上、好ましくは、15分以上であり、また、例えば、90分以下、好ましくは、50分以下である。
【0036】
第2移動相中における混合溶媒の混合割合は、例えば、3(v/v)%以上、好ましくは、5(v/v)%以上であり、例えば、30(v/v)%以下、好ましくは、20(v/v)%以下である。
【0037】
カラム温度、背圧およびその温度(BPR圧力、BPR温度)などは、第1工程と同様の条件で引き続き実施すればよい。
【0038】
この方法によれば、カルボン酸無水物と、カルボン酸等とを試料液中の成分を時間ごとに分離して検出することができるため、カルボン酸無水物とカルボン酸エステル等との混合物を一斉に検出することができる。特に、カルボン酸無水物と、カルボン酸無水物のエステル化物および/または加水分解物(好ましくは、カルボン酸無水物の加水分解物)とを一斉に検出することができる。また、この方法によれば、カラムの固定相は交換せずに、移動相の切り替え、すなわち、第1モディファイア用容器3からの送液と第2モディファイア用容器4からの送液を切り替えるだけで、容易に分析することができる。さらに、既知の含有量のカルボン酸無水物、および、カルボン酸等に対して上記SFCを実施して、検量線を作成することにより、含有量が未知であるカルボン酸無水物およびカルボン酸等を定量することができる。
【0039】
なお、第1移動相には、二酸化炭素および非ヒドロキシル系溶媒以外にも、そのほかの添加物を含有させてもよいが、ヒドロキシル系溶媒は実質的に含有させない。第2移動相には、二酸化炭素、酸およびヒドロキシル系溶媒以外にも、その他の添加物を含有させてもよい。この場合、各種添加物は、第1モディファイア用容器3、第2モディファイア用容器4に混合させてもよく、また、それ以外のモディファイア用容器を用意し、ミキシング部8にてまたはその上流にて混合してもよい。
【0040】
2.態様
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0041】
(第1項)一態様に係るカルボン酸無水物の分析方法は、カルボン酸無水物を含有する試料を分析する方法であって、超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、前記試料を第1移動相とともに、カラムに通過させて、前記カラムから溶出されるカルボン酸無水物を検出する第1工程と、前記カルボン酸無水物の保持時間経過後において、前記第1移動相から第2移動相に切り替えることによって、前記第2移動相を前記カラムに通過させて、前記カラムから溶出されるカルボン酸エステルおよびカルボン酸の少なくとも1種を検出する第2工程とを順に備え、前記第1移動相が、二酸化炭素と、ヒドロキシル基を有しない有機溶媒との混合物であり、前記第2移動相が、二酸化炭素と、酸と、ヒドロキシル基を有する有機溶媒との混合物であってよい。
【0042】
(第2項)第1項の記載の分析方法において、前記酸が、リン酸またはギ酸であってもよい。
【0043】
(第3項)第1項または第2項の記載の分析方法において、前記ヒドロキシル基を有しない有機溶媒が、アセトニトリルであり、前記ヒドロキシル基を有する有機溶媒が、メタノールまたはエタノールであってもよい。
【実施例0044】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されない。
【0045】
<実施例1>
下記に示す2種のビフタル酸無水物の異性体(s-BPDA、a-BPDA)および2種のオキシジフタル酸無水物の異性体(ODPA-C、a-ODPA)をそれぞれ50mg/Lずつを混合した4種混合試料をサンプルAとして用意した。また、これらの加水分解物、すなわち、2種のビフタル酸の異性体および2種のオキシジフタル酸の異性体をそれぞれ50mg/Lずつを混合した4種混合試料をサンプルBとして用意した。また、移動相Aとして、移動相容器に二酸化炭素を充填した。移動相Bとして、第1モディファイア用容器にアセトニトリルを、第2モディファイア用容器に0.1%リン酸メタノール溶液を充填した。サンプルA、Bのそれぞれに対して、下記の条件でSFC分析を実施した。分析の際、移動相Aと混合する移動相Bについて、開始時点ではアセトニトリルを選択しておき、開始8分後に、アセトニトリルからリン酸メタノール溶液に切り替えた。
【0046】
【化1】
【0047】
装置名:Nexera US(超臨界流体クロマトグラフシステム、島津製作所製)
カラム:Shim-pack UC-PolyBT (250 mm×4.6 mm I.D., 5μm)(ポリブチレンテレフタレート基を有する固定相)
移動相A:CO
移動相B:アセトニトリル(0~8分)
移動相B:0.1%リン酸メタノール溶液(8~50分)
流速:3.0mL/分
時間プログラム:B濃度10%(0~8分)、5%(8~50分)
カラム温度:40℃
BPR圧力:15MPa
BPR温度:50℃
検出:250~300nm(高圧フローセル付きフォトダイオードアレイ)
注入量:2μL(アセトニトリル中)
バイアル:SHIMADZU Lab Total for LC 1.5ml, Glass
【0048】
このときに得られたサンプルAおよびサンプルBのクロマトグラムを図2にまとめて示す。図2から明らかなように、カルボン酸無水物のピークは移動相Bの切替前(保持時間3~7分)に出現し、その加水分解物(ジカルボン酸)のピークは移動相Bの切替後(保持時間28~47分)に出現していることから、この分析方法は、カルボン酸無水物およびその加水分解物を一斉に分析できることが分かる。
【0049】
また、上記測定と同様の測定を6回繰り返し、各ピーク面積の再現性を測定した。この結果を下記表に示す。標準偏差がいずれのピークにおいても1.1%以下であることから、非常に高い再現性を有し、高精度の定量分析が可能となることが分かった。なお、サンプルAおよびサンプルBについて、さらに、濃度を5mg/L、10mg/L、25mg/L、125mg/Lに変更した混合試料も調製し、同様の分析を実施し、各試料(s-BPDA、a-BPDA、DPA-C、および、a-ODPAの4種)の検量線を作成したところ、いずれの検量線の寄与率(R)が0.999以上であり、定量の精度が優れていることを示した。
【0050】
【表1】
【符号の説明】
【0051】
1 SFC装置
2 移動相用容器
3 第1モディファイア用容器
4 第2モディファイア用容器
5~7 ポンプ
8 ミキシング部
9 試料導入部
10 カラム
11 検出部
12 背圧制御部
図1
図2