(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113902
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】包装用積層体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019173
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗央里
(72)【発明者】
【氏名】渕田 泰司
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB71
(57)【要約】
【課題】本発明では、少ない樹脂量で、良好なヒートシール性が得られる、新規な包装用積層体を提供する。
【解決手段】本発明の包装用積層体100は、
基材層10、及びシーラント積層体20を有し、
前記シーラント積層体20が、基材層10側から順に、第一の層22及び第二の層24を有し、
前記第一の層22が、第一のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、
前記第二の層24が、第二のシーラント樹脂を含有しており、かつ前記第二の層24における炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層22における炭酸カルシウムの含有率よりも低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、及びシーラント積層体を有し、
前記シーラント積層体が、基材層側から順に、第一の層及び第二の層を有し、
前記第一の層が、第一のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、
前記第二の層が、第二のシーラント樹脂を含有しており、かつ前記第二の層における炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層における炭酸カルシウムの含有率よりも低い、
包装用積層体。
【請求項2】
前記第二の層における炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層における炭酸カルシウムの含有率の1/10以下である、請求項1に記載の包装用積層体。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装用積層体の質量に対して、50質量%超である、請求項1又は2に記載の包装用積層体。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層の質量に対して、60~75質量%である、請求項1又は2に記載の包装用積層体。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記シーラント積層体の質量に対して、55~70質量%である、請求項1又は2に記載の包装用積層体。
【請求項6】
前記第一及び第二のシーラント樹脂が、いずれもポリエチレン系樹脂である、請求項1又は2に記載の包装用積層体。
【請求項7】
前記シーラント積層体が、前記基材層と前記第一の層との間に第三の層を有し、前記第三の層が、第三のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有している、請求項1又は2に記載の包装用積層体。
【請求項8】
前記ポリエチレン系樹脂の、JIS K7161-1:2014に準拠する引張破壊応力が、13N以上である、請求項7に記載の包装用積層体。
【請求項9】
前記ポリエチレン系樹脂の、JIS K7171:2016に準拠する曲げ弾性率が、170MPa以上である、請求項7又は8に記載の包装用積層体。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の包装用積層体を有する、包装袋。
【請求項11】
前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装袋の質量に対して、50質量%超である、請求項10に記載の包装袋。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の包装袋、及び前記包装袋に収納されている内容物を有する、内容物入り包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装の目的で、プラスチック製のシートが広く用いられている。このようなシートで得られた包装体は、耐水性に優れる等利点が多いことから、紙製の包装容器に代わる材料として用いられている。一方、環境の観点からは、石油系資源の利用はできる限り抑える必要があるとされている。このような観点から、プラスチック製のシートに炭酸カルシウムを混合することが行われている。
【0003】
特許文献1では、直鎖状低密度ポリエチレン10重量%、低密度ポリエチレン15重量%、炭酸カルシウム75重量%を、溶合剤を注入して高温で攪拌溶合し、還元成型機にて射出成型して樹脂組成物をつくり、この樹脂組成物30重量%と高密度ポリエチレン70重量%を80℃の乾燥機で攪拌溶合し、ポリ吹膜成型機にて成型することを特徴とする家庭用ゴミ袋が開示されている。
【0004】
特許文献2では、シートであって、熱可塑性樹脂と無機物質粒子とを、85:15~20:80の比率で含み、さらに、親水性基を有するポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物によって構成され、シートの弾性率が1,000MPa以上であるシートが開示されている。
【0005】
特許文献3では、ポリエチレン系樹脂に炭酸カルシウムが配合されたポリエチレン系樹脂組成物であって、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの少なくとも一部が、炭酸カルシウムとエチレン-酢酸ビニル樹脂とを含有するEVA系マスターバッチ由来の平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムであり、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合が30質量%以上である、ポリエチレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-114301号公報
【特許文献2】特開2018-48229号公報
【特許文献3】特開2022-6831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、少ない樹脂量で、良好なヒートシール性が得られる、新規な包装用積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉基材層、及びシーラント積層体を有し、
前記シーラント積層体が、基材層側から順に、第一の層及び第二の層を有し、
前記第一の層が、第一のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、
前記第二の層が、第二のシーラント樹脂を含有しており、かつ前記第二の層における炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層における炭酸カルシウムの含有率よりも低い、
包装用積層体。
〈態様2〉前記第二の層における炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層における炭酸カルシウムの含有率の1/10以下である、態様1に記載の包装用積層体。
〈態様3〉前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装用積層体の質量に対して、50質量%超である、態様1又は2に記載の包装用積層体。
〈態様4〉前記炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層の質量に対して、60~75質量%である、態様1~3のいずれか一項に記載の包装用積層体。
〈態様5〉前記炭酸カルシウムの含有率が、前記シーラント積層体の質量に対して、55~70質量%である、態様1~4のいずれか一項に記載の包装用積層体。
〈態様6〉前記第一及び第二のシーラント樹脂が、いずれもポリエチレン系樹脂である、態様1~5のいずれか一項に記載の包装用積層体。
〈態様7〉前記シーラント積層体が、前記基材層と前記第一の層との間に第三の層を有し、前記第三の層が、第三のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有している、態様1~6のいずれか一項に記載の包装用積層体。
〈態様8〉前記ポリエチレン系樹脂の、JIS K7161-1:2014に準拠する引張破壊応力が、13N以上である、態様7に記載の包装用積層体。
〈態様9〉前記ポリエチレン系樹脂の、JIS K7171:2016に準拠する曲げ弾性率が、170MPa以上である、態様7又は8に記載の包装用積層体。
〈態様10〉態様1~9のいずれか一項に記載の包装用積層体を有する、包装袋。
〈態様11〉前記炭酸カルシウムの含有率が、前記包装袋の質量に対して、50質量%超である、態様10に記載の包装袋。
〈態様12〉態様10又は11に記載の包装袋、及び前記包装袋に収納されている内容物を有する、内容物入り包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない樹脂量で、良好なヒートシール性が得られる、新規な包装用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の包装用積層体の側面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の包装用積層体と、従来の包装用積層体を比較した図である。
【
図3】
図3は、他の従来の包装用積層体の概略図である。
【
図4】
図4(a)は、製袋適性の評価のためのピロー袋の背面図である。
図4(b)は、
図4(a)の線b-bにおける断面図である。
【
図5】
図5(a)は、ヒートシール強さの評価のための評価用積層体の正面図である。
図5(b)は、
図5(a)の線b-bにおける側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《包装用積層体》
本発明の包装用積層体100は、
基材層10、及びシーラント積層体20を有し、
前記シーラント積層体20が、基材層10側から順に、第一の層22及び第二の層24を有し、
前記第一の層22が、第一のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、
前記第二の層24が、第二のシーラント樹脂を含有しており、かつ前記第二の層24における炭酸カルシウムの含有率が、前記第一の層22における炭酸カルシウムの含有率よりも低い。
【0012】
本発明者らは、
図2(a)に示すように、第一のシーラント樹脂及び炭酸カルシウムを含有している第一の層22、及び炭酸カルシウムの含有率が第一の層22における炭酸カルシウムの含有率よりも低い第二の層24を有する、シーラント積層体20を用いることにより、少ない樹脂量で、シール不良を生じることなく十分なヒートシール強さを得ることができることを見出した。
【0013】
これに対し、
図2(b)に示す従来の包装用積層体200aの、樹脂のみからなるシーラント層20aを、樹脂の使用量を低減させるべく、
図3(a)に示すように、全体に炭酸カルシウムを含有しているシーラント層20bに単純に変更した場合、ヒートシール強さが十分に得られないことがあった。
【0014】
また、
図3(b)に示すように、厚さを薄くしたシーラント層20cを用いることにより樹脂の使用量を低減させた場合には、ヒートシールを行った際に、特にピロー袋の背シール部のようなシール部の交点において、ピンホール等のシール不良が生じることがあった。
【0015】
本発明の包装用積層体における炭酸カルシウムの含有率は、包装用積層体の質量に対して、50質量%超、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、また70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0016】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0017】
〈基材層〉
基材層は、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されていてよい。基材層は、単層であってもよく、又は積層体であってもよい。
【0018】
ビニル系樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0019】
ポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0020】
ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、シーラント積層体の第一の層に関して言及する樹脂を用いることができる。
【0022】
基材層の厚さは、7μm以上、又は10μm以上であることが、包装用積層体の機械的強度の観点から好ましく、また55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることが、包装用積層体全体としての炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。
【0023】
基材層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0024】
なお、基材層は、予め成形されたフィルムから作製されることが好ましい。基材層となるフィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0025】
〈シーラント積層体〉
シーラント積層体は、基材層側から順に、第一の層及び第二の層を有する。また、第二の層の炭酸カルシウムの含有率は、第一の層における炭酸カルシウムの含有率よりも低い。
【0026】
シーラント積層体における炭酸カルシウムの含有率は、シーラント積層体の質量に対して、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。この含有率は、70質量%以下であることが、ヒートシール強さの観点から好ましい。
【0027】
また、シーラント積層体は、基材層と第一の層との間に第三の層を有していてよい。すなわち、シーラント積層体は、基材層側から順に、第三の層、第一の層及び第二の層を有していてよい。
【0028】
シーラント積層体は、各層を構成する樹脂組成物を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロール、コニカルミキサー等のバッチ式混練機や、2軸混練機等の連続混練機等を用いて混練し、次いで混練した樹脂を、インフレーション法、Tダイ法等の押出成形法によりフィルム状に成型することにより製造することができる。また、シーラント積層体の製造においては、多層インフレーション法、又は多層Tダイ法等の共押出法により、製膜及び積層を同時に行ってもよい。
【0029】
(第一の層)
第一の層は、第一のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、かつ第二の層よりも基材層側に存在している層である。
【0030】
第一のシーラント樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を用いることができる。
【0031】
ポリエチレン系樹脂は、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂は、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
第一のシーラント樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、このポリエチレン系樹脂の、JIS K7161-1:2014に準拠する引張破壊応力は、13N以上、14N以上、15N以上、16N以上、17N以上、18N以上、又は19N以上であることが、ヒートシール強さの観点から好ましい。この引張破壊応力は、例えば100N以下、90N以下、80N以下、70N以下、60N以下、50N以下、又は40N以下であってよい。
【0034】
第一のシーラント樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、このポリエチレン系樹脂の、JIS K7171:2016に準拠する曲げ弾性率は、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、150MPa以上、160MPa以上、170MPa以上、180MPa以上、190MPa以上、200MPa以上、220MPa以上、250MPa以上、280MPa以上、又は300MPa以上であることが、ヒートシール強さの観点から好ましい。この曲げ弾性率は、1000MPa以下、900MPa以下、800MPa以下、700MPa以下、600MPa以下、500MPa以下、又は400MPa以下であってよい。
【0035】
第一の層における炭酸カルシウムの含有率は、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。この含有率は、75質量%以下であることが、ヒートシール強さの観点から好ましい。
【0036】
第一の層の厚さは、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、45μm以上、50μm以上、又は55μm以上であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点、及び製袋適性の観点から好ましい。この厚さは、100μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、又は65μm以下であってよい。
【0037】
第一の層の厚さは、包装用積層体全体の厚さに対して、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、又は65%以上であってよく、また85%以下、80%以下、75%以下、又は70%以下であってよい。
【0038】
(第二の層)
第二の層は、第二のシーラント樹脂を含有しており、かつ第一の層よりも外側に存在している層である。この第二の層は、包装袋とした際に、内容物側に位置する層となることができる。第二のシーラント樹脂としては、第一のシーラント樹脂として挙げた樹脂を用いることができる。第二のシーラント樹脂は、第一のシーラント樹脂と同種の樹脂であってもよく、又は異種の樹脂であってもよい。例えば、第一及び第二のシーラント樹脂は、いずれもポリエチレン系樹脂であってよい。
【0039】
第二の層における炭酸カルシウムの含有率は、第一の層における炭酸カルシウムの含有率よりも低く、特に第一の層における炭酸カルシウムの含有率の1/5以下、1/10以下、1/15以下、1/20以下、1/30以下、1/40以下、若しくは1/50以下であるか、又は0質量%であることが、ヒートシール強度を得る観点から好ましい。
【0040】
第二の層の厚さは、5μm以上、7μm以上、又は9μm以上であることが、製袋適性の観点から好ましい。この厚さは、20μm以下、17μm以下、15μm以下、又は12μm以下であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。
【0041】
第二の層の厚さは、包装用積層体全体の厚さに対して、5%以上、7%以上、又は10%以上であってよく、また25%以下、22%以下、20%以下、15%以下、又は13%以下であってよい。
【0042】
(第三の層)
第三の層は、第三のシーラント樹脂、及び炭酸カルシウムを含有しており、かつ第一の層よりも基材層側に存在している随意の層である。第三のシーラント樹脂としては、第一のシーラント樹脂として挙げた樹脂を用いることができる。第三のシーラント樹脂は、第一のシーラント樹脂と同種の樹脂であってもよく、又は異種の樹脂であってもよい。例えば、第一及び第三のシーラント樹脂は、いずれもポリエチレン系樹脂であってよい。
【0043】
第三の層における炭酸カルシウムの含有率は、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。この含有率は、80質量%以下、又は75質量%以下であることが、ヒートシール強さの観点から好ましい。この含有率は、特に第一の層における炭酸カルシウムの含有率と同じであってよい。特に、第三の層は、第一の層と同じ樹脂組成物で構成することが、製造の容易さの観点から好ましい。
【0044】
第三の層の厚さは、5μm以上、7μm以上、又は9μm以上であることが、包装用積層体全体における炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。この厚さは、20μm以下、17μm以下、15μm以下、又は12μm以下であってよい。
【0045】
第三の層の厚さは、包装用積層体全体の厚さに対して、5%以上、7%以上、又は10%以上であってよく、また25%以下、22%以下、20%以下、15%以下、又は13%以下であってよい。
【0046】
〈他の層〉
本発明の包装用積層体は、随意の他の層を有していてよい。他の層としては、例えば補強層と基材樹脂層との間の接着層、アンカーコート層、及びバリア層等を用いることができる。
【0047】
上記の接着層としては、例えばドライラミネート接着剤、ホットラミネート接着剤等を用いることができる。
【0048】
バリア層としては、外部からの水分や有機ガス及び無機ガスがガス吸収層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。かかるバリア層としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等の単体金属箔層、ステンレス箔等の合金箔層、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリクロロトリフルオロエチレンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。
【0049】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コーティング膜を用いる場合、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、包装用積層体全体の厚さを薄くする観点、及び包装用積層体全体としての樹脂の含有率を低減させる観点から好ましい。
【0050】
バリア層として金属箔層、バリア性樹脂層を用いる場合、バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、包装用積層体全体の厚さを薄くする観点から好ましい。
【0051】
《包装袋》
本発明の包装袋は、上記の包装用積層体を有する、包装袋である。
【0052】
特に、本発明の包装袋は、上記の包装用積層体を1枚又は複数枚具備しており、かつ
1枚又は複数枚の包装用積層体の一部がこの包装用積層体の他の部分又は他のフィルムとヒートシールされていることによって袋状にされている。
【0053】
ここで、他のフィルムは、他の包装用積層体であってもよく、又は包装用積層体以外の他のフィルムであってもよいが、他の包装用積層体を用いることが、包装袋全体の炭酸カルシウムの含有率を高くする観点から好ましい。
【0054】
本発明の包装袋は、上記の包装袋及びこの包装袋に収納されている内容物を有する、内容物入り包装袋であることができる。
【0055】
本発明の包装袋は、例えば3方シール袋、4方シール袋、ピロー袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等の形態であってよい。
【0056】
本発明の包装袋における炭酸カルシウムの含有率は、包装袋の質量に対して、50質量%超、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、また70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。
【0057】
〈内容物〉
内容物は、包装袋に収納されている内容物である。内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であれば限定されるものではなく、薬剤の他、食品、化粧品、医療器具、医療機器、電子部材、精密機械、記録材料等を挙げることができる。また、薬剤としては、医薬品製剤の他、洗浄剤、農薬等を含む。
【実施例0058】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0059】
《炭酸カルシウムの有無による比較》
〈包装用積層体の作製〉
(実施例1)
共押出成形機(KZW15TW-45MG-NH-2200、株式会社テクノベル)を用い、共押出Tダイ法により、厚さ10μmの第三の層、厚さ60μmの第一の層、及び厚さ10μmの第二の層を有する、2種3層のシーラント積層体を得た。
【0060】
第三及び第一の層としては、80質量%の炭酸カルシウム及び20質量%のポリエチレンを含有している、90質量部のマスターバッチ、及び10質量部の直鎖状低密度ポリエチレン(PE1、密度0.925g/cm3、引張破壊応力20N、曲げ弾性率320MPa)を混練した樹脂組成物を用いた。第二の層としては、このPE1を単独で用いた。
【0061】
次いで、基材層としての15μmのナイロンフィルムと、得られたシーラント積層体の第三の層とをドライラミネートにより積層させて、実施例1の包装用積層体を得た。ドライラミネートにおいては、ウレタン系二液型ドライラミネート接着剤を用いた。
【0062】
(比較例1)
第一、第二及び第三の層として、いずれも上記の樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして、比較例1の包装用積層体を得た。
【0063】
(比較例2)
第一、第二及び第三の層として、82.8質量部の上記のマスターバッチ及び16.2質量部のPE1を混練した樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様にして、比較例2の包装用積層体を得た。
【0064】
(比較例3)
第一、第二及び第三の層として、上記のPE1を単独で用いたことを除き、実施例1と同様にして、比較例3の包装用積層体を得た。
【0065】
(比較例4)
上記のPE1を単独で26μmのフィルムに製膜し、これをシーラント積層体の代わりに用いたことを除き、実施例1と同様にして、比較例4の包装用積層体を得た。比較例4のこのフィルムの厚さは、実施例のシーラント積層体に含有されているPEと同じ質量のPEを有するように設定したものである。
【0066】
〈評価〉
(製袋適性)
製袋適性の評価は、
図4(a)及び(b)に示すように、各包装用積層体100をピロー袋300に成形して行った。より具体的には、作製した包装用積層体100を、420mm×380mmに切り出し、第二の層同士を対向させて下部シール部310及び背シール部320をヒートシールにより得て、外寸200mm×380mmのピロー袋を作製した。ヒートシールは、インパルスシーラー(電動シーラーFA-300-10W、富士インパルス株式会社)を用いて加熱温度1.0秒、冷却温度2.0秒の条件で行った。
【0067】
作製したピロー袋300の下部シール部310及び背シール部320の交点330に向け、霧吹きでエージレスチェッカーを噴霧し、1分間放置し、この交点の外観を目視により確認した。評価基準は以下のとおりである。
A:交点において、エージレスチェッカーのリークがなかった。
B:交点において、エージレスチェッカーのリークがあった。
【0068】
(ヒートシール強さ)
JIS Z1707:2019に準拠して、
図5(a)及び(b)に示すようにして、同じ包装用積層体100の第二の層24側を対向させて、上型温度140℃、下型温度140℃、シール時間0.5秒、シール圧0.2MPaの条件でヒートシールして得た評価用積層体400を、幅15mm、チャック間距離50mm、引張速度:300mm/minの条件で、Xの方向にT形剥離を行い、ヒートシール強さを測定した。シール部410の剥離方向の幅410Aは10mmとし、剥離方向に垂直な方向の幅410Bは15mmとした。
【0069】
(焼却適性)
焼却適性の評価基準は以下のとおりである。
A:樹脂含有率が、包装用積層体の質量に対して50質量%未満である。
B:樹脂含有率が、包装用積層体の質量に対して50質量%以上である。
【0070】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
表1から、第一のシーラント樹脂及び炭酸カルシウムを含有している第一の層、及び炭酸カルシウムの含有率が第一の層における炭酸カルシウムの含有率よりも低い第二の層を有する、実施例1の包装用積層体は、製袋適性、ヒートシール強さ及び焼却適性のいずれも良好であったことが理解できよう。
【0073】
《樹脂種及び厚さによる比較》
〈包装用積層体の作製〉
各層の炭酸カルシウム含有率が表1に示す値となるように上記のマスターバッチの含有率を調節し、残部の樹脂として、表1に示すポリエチレンを用い、各層の厚さを表1に示す厚さになるようにして、実施例1と同様にして、実施例2~10の包装用積層体を作製した。用いた各ポリエチレンの詳細は以下のとおりである。
PE2:直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.930g/cm3、引張破壊応力20N、曲げ弾性率340MPa
PE3:直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.920g/cm3、引張破壊応力14N、曲げ弾性率170MPa
PE4:直鎖状低密度ポリエチレン、密度0.898g/cm3、引張破壊応力8N、曲げ弾性率50MPa
PE5:低密度ポリエチレン、密度0.918g/cm3、引張破壊応力12N、曲げ弾性率110MPa
【0074】
〈評価〉
(ヒートシール強さ)
JIS Z1707:2019に準拠して、
図5(a)及び(b)に示すようにして、同じ包装用積層体100の第二の層24側を対向させて、上型温度140℃、下型温度140℃、シール時間0.5秒、シール圧0.2MPaの条件でヒートシールして得た評価用積層体400を、幅15mm、チャック間距離50mm、引張速度:300mm/minの条件で、Xの方向にT形剥離を行い、ヒーシール強さを測定した。シール部410の剥離方向の幅410Aは10mmとし、剥離方向に垂直な方向の幅410Bは15mmとした。
【0075】
実施例1~10の構成及び評価結果を表2に示す。
【0076】
【0077】
表2から、実施例の中でも、ポリエチレンとして、PE1、PE2及びPE3を用いた場合に、ヒートシール強さが特に良好になることが理解できよう。PE1、PE2及びPE3は、いずれも引張応力が12N以上であり、かつ曲げ弾性率が、170MPa以上であるポリエチレンである。
【0078】
なお、PE4及びPE5を用いた例についても、比較例1と同様に、第一の層及び第二の層として、炭酸カルシウムの含有率が同じである層を用いた場合には、ヒートシール強さが更に低減することが推測できよう。